説明

移動車輌におけるボンネット構造

【課題】 ボンネットカバーの開放時に点検保守のための作業空間を広く確保して作業性の向上を図ることができる移動車輌におけるボンネット構造を提供する。
【解決手段】 ボンネットカバー2を、機体フレーム3の左右幅と略同幅に形成された上下開閉自在な合成樹脂製の開放カバー部2aと、運転席9の前面に近接する当該開放カバー部2aの後域2´aで内方に向けて対向状に絞り込まれ、かつ機体フレーム3上に着脱自在に固定された鉄板製の一対の左右側面カバー部2b、2cで構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボンネットカバー内にエンジンおよび周辺機構を搭載した移動車輌に係り、特にボンネットカバーにおいて、その開放時に点検保守のための作業空間を広く確保して作業性の向上を図ることができる移動車輌におけるボンネット構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタや耕耘機のような移動車輌では、機体フレーム上に搭載したエンジンおよびその他の周辺機構を開閉自在なボンネットカバーで包覆し、ボンネットカバーの開放状態で内部の点検、保守作業を行うようになっており、近年では製造コストの低減とボンネットカバー自体の軽量化のために、鉄板製に代えて合成樹脂製のボンネットカバーが採用されるようになっている。
【0003】
しかしながら、従来のボンネットカバーは、上述の合成樹脂製および鋼鉄板製を問わずカバー全体を一体に構成していたため、点検保守作業に際してボンネットカバーを開放すると、当該開放したカバーの最下部分が他のカバー部分より低位にあるため、これにより内部空間が遮られてしまい作業性が損なわれる、という改善の余地を依然として残すものであった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の如き実状に鑑み移動車輌におけるボンネット構造を改善する研究、開発の課程で創案されたものであって、その目的とするところは、ボンネットカバーを開閉自在に支持するものでありながら、カバー開放時における内部空間への進入を容易にし、点検保守作業の作業性を向上させると共に、上下開閉自在な開放カバー部と機体フレーム側に着脱自在に固定する左右側面カバー部とにボンネットカバーを分離別体として、ボンネットカバーを容易に製造することができる移動車輌におけるボンネット構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
課題を解決するため、本発明が採用した第1の技術的手段は、機体の前部に設けたエンジン、ラジエータおよびエアフィルタ等を上方から包覆するボンネットカバーを運転席の前方に装備するに、上記ボンネットカバーは、後部側を回動基端として前部が上下開閉自在な開放カバー部と、当該開放カバー部の運転席の前面側に近接した後域で、機体に着脱自在に固定された一対の左右側面カバー部とからなり、上記開放カバー部は、合成樹脂製として、その後域を上面側から左右側面域に亘って下方および前方に延びる切り欠き形状を有しており、また、上記左右側面カバー部は、その前縁部を、前記切り欠き形状と同形状に構成され、前記開放カバー部を上方に向けて開放するとき、左右側面カバー部の前縁部と開放カバー部側の切り欠き形状との間が開放されることを特徴とし、第2の技術的手段として、上記左右側面カバー部を鉄板製としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、機体の前部に設けたエンジン、ラジエータおよびエアフィルタ等を上方から包覆するボンネットカバーを運転席の前方に装備するに、上記ボンネットカバーは、後部側を回動基端として前部が上下開閉自在な開放カバー部と、当該開放カバー部の運転席の前面側に近接した後域で、機体に着脱自在に固定された一対の左右側面カバー部とからなり、上記開放カバー部は、合成樹脂製として、その後域を上面側から左右側面域に亘って下方および前方に延びる切り欠き形状を有しており、また、上記左右側面カバー部は、その前縁部を、前記切り欠き形状と同形状に構成され、前記開放カバー部を上方に向けて開放するとき、左右側面カバー部の前縁部と開放カバー部側の切り欠き形状との間が開放され、また上記左右側面カバー部を鉄板製としたから、合成樹脂製の開放カバー部と鉄板製の左右側面カバー部をそれぞれ別体として、ボンネットカバーを容易に製造し得てコスト低減を図ることができると共に、開放カバー部を開放してエンジンや周辺機構の点検保守を行う際にも、開放カバー部の回動基端側が左右側面カバー部から上方に大きく開放されるので、従来のように開放したボンネットカバーの最下部分により内部空間が遮られてしまうような不具合を一掃して、ボンネットカバー内に配置された周辺機構群に対する点検保守作業を容易に行える。
また、ボンネットカバー内の後方にマフラーを配置する構成とした際には、当該マフラーの左右側方を鉄板製の側面カバー部で覆うことになるので、マフラー近傍で発生する熱に対して耐性を有するカバー構成とすることができると共に、開放カバー部を開放した場合にも、オペレータが不用意にマフラーに接触するような危険性を回避でき、またボンネットカバー全体を合成樹脂製とする構成に比してマフラー近傍の熱による変形、ゆがみを誘発することがない。
等という極めて有用な新規的効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の構成を、図面に示した一実施例について詳細に説明する。図1ないし図5において、1はクローラトラクタであって、該クローラトラクタ1は、後述するボンネットカバー2内の機体フレーム3上に、エンジン4、ラジエータ5、エアフィルタ6等とその他の配管パイプ群6aを搭載し、かつ機体フレーム3の左右側方にはそれぞれクローラ走行装置7、7を装備すると共に、上記機体フレーム3の略中央には、操作ハンドル8および図示しない計器類を配したコンソール部、屋根部等からなる運転席9が設けられており、該運転席9内にオペレータAが着座して走行操作および圃場での作業操作を行うように構成されている。
【0008】
ここで上記ボンネットカバー2は、機体フレーム3の左右幅と略同幅に形成された上下開閉自在な開放カバー部2aと、運転席9の前面に近接する当該開放カバー部2aの後域で内方に向けて対向状に絞り込まれ、かつ機体フレーム3上に着脱自在に固定された一対の左右側面カバー部2b、2cとからなり、上記開放カバー部2aは合成樹脂で成形され、左右側面カバー部2b、2cは鉄板で成形されており、クローラトラクタ1の走行中においてオペレータAが上体を前傾させることにより、運転席9からの前方下方域における左右方向の視認性が向上し、クローラ走行装置7の足周り状態を走行中においても容易に確認できるようになっている。
【0009】
即ち上記開放カバー部2aは、運転席9の前面に位置する支柱フレーム10、10側を回動基端とし、その後域2´aは上面から左右側面域に亘って下方および前方に延びる切り欠き形状11を有しており、図示しない蝶番と油圧ダンパー10bを介して上下開閉自在に構成されている。
【0010】
上記左右側面カバー部2b、2cは、図5に示すように、傾斜上面部12と下側面部13との間に、内方に絞り込まれて複数の放熱孔14a、14a…を穿設した中間面部14を一体に形成して成り、その外周縁は、前記切り欠き形状11と同形状の前縁部15と、支柱フレーム10に沿う後縁部16と、機体フレーム3の上面に沿う底縁部17を有して構成されている。
【0011】
また上記各下側面部13、13の裏面には係止フック18、18がそれぞれ設けられており、当該係止フック18、18を機体フレーム3の上面に配設したピン19、19に係止させて、各側面カバー部2b、2cの下半側を機体フレーム3上に着脱自在に固定すると共に、左側面カバー部2bの中間面部14裏面には、断面コ字形の板スプリング20が装着されており、機体フレーム3側の図示しない固定ピンに嵌脱自在に固定することにより左側面カバー部2bを機体フレーム3側に固定する構成となっている。
【0012】
一方、右側面カバー部2cの中間面部14には、エアフィルタ6に連通する吸入口21が外方に向けて一体に突成されており、かつ傾斜上面部12の裏面に機体フレーム3側の図示しない固定ブラケットに螺着される取付ブラケット22が装備されて、前記左側面カバー部2bと同様に機体フレーム3側に右側面カバー部2cを固定するようになっている。23は吸入口21に充填したフィルタ材である。
【0013】
本発明は叙上の如く構成されているから、クローラトラクタ1の点検、保守作業においてボンネットカバー2の開放カバー部2aを開放すると、該開放カバー部2aは、図6(a)に示すように、支柱フレーム10、10側を回動基端として上方に開放される。この時、上記ボンネットカバー2の左右側面カバー部2b、2cは機体フレーム3上に固定されており、上記開放カバー部2aの開放によって左右側面カバー部2b、2cの前縁部15、15と開放カバー部2a側の切り欠き形状11との間が大きく開放されるので、同図(b)に示すような従来構成をなすボンネットカバーBの最下部分B´の面域により内部空間が遮られてしまうような不具合がなく、ボンネットカバー2内に配置されたエンジン4、エアフィルタ6および配管パイプ群6a等に対する点検保守作業を容易に行うことができる。
【0014】
ここで同図に示すように、ボンネットカバー2内の後方にマフラーCを配置する構成とした際には、当該マフラーCの左右側方が鉄板製の左右側面カバー部2b、2cで覆われるので、マフラー近傍で発生する熱に対して耐性を有するカバー構成とすることができ、開放カバー部2aを開放した場合にも、オペレータが不用意にマフラーCに接触するような危険性を回避でき、またボンネットカバー全体を合成樹脂製とする同図(b)の構成に比してマフラーC近傍の熱による変形、ゆがみを誘発することがない上、右側面カバー部2cに設けた吸入口21のフィルタ材23の交換を行う場合にも、右側面カバー部2cの前縁部15と開放カバー部2a側の切り欠き形状11との間に形成される開放空間から手を入れて簡単に作業を進めることができる。
【0015】
また図7に示すように、開放カバー部2aを開放した状態で左右側面カバー部2b、2cを機体フレーム3上から取り外せば、機体フレーム3上の前面および左右側面が更に大きく全面開放された状態となるので、点検保守作業をより一層容易に行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)はクローラトラクタの全体平面図である。(b)は同上全体側面図である。
【図2】クローラトラクタの正面図である。
【図3】クローラトラクタの一部省略要部拡大側面図である。
【図4】クローラトラクタの一部省略要部拡大平面図である。
【図5】(a)は右側面カバー部の裏面側の斜視図である。(b)は左側面カバー部の表面側の斜視図である。
【図6】(a)は本発明の開放カバー部を開放した状態を示す要部側面図である。(b)は従来構成のボンネットカバーを開放した状態を示す要部側面図である。
【図7】本発明の開放カバー部を開放し、かつ左右側面カバー部を取り外した状態を示す要部側面図である。
【符号の説明】
【0017】
3 機体フレーム
4 エンジン
5 ラジエータ
6 エアフィルタ
2 ボンネットカバー
9 運転席
2a 開放カバー部
2´a 後域
2b 左側面カバー部
2c 右側面カバー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前部に設けたエンジン(4)、ラジエータ(5)およびエアフィルタ(6)等を上方から包覆するボンネットカバー(2)を運転席(9)の前方に装備するに、上記ボンネットカバー(2)は、後部側を回動基端として前部が上下開閉自在な開放カバー部(2a)と、当該開放カバー部(2a)の運転席(9)の前面側に近接した後域で、機体に着脱自在に固定された一対の左右側面カバー部(2b),(2c)とからなり、上記開放カバー部(2a)は、合成樹脂製として、その後域(2’a)を上面側から左右側面域に亘って下方および前方に延びる切り欠き形状(11)を有しており、また、上記左右側面カバー部(2b),(2c)は、その前縁部(15)を、前記切り欠き形状(11)と同形状に構成され、前記開放カバー部(2a)を上方に向けて開放するとき、左右側面カバー部(2b),(2c)の前縁部(15)と開放カバー部(2a)側の切り欠き形状(11)との間が開放されることを特徴とする移動車輌におけるボンネット構造。
【請求項2】
上記左右側面カバー部を鉄板製としたことを特徴とする請求項1記載の移動車輌におけるボンネット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−191150(P2007−191150A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−66105(P2007−66105)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【分割の表示】特願平11−360238の分割
【原出願日】平成11年12月20日(1999.12.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】