説明

移動通信方法

【課題】ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)に対して、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)と移動局UEとの間の通信で用いられるセキュリティ鍵KeNBを秘密にする。
【解決手段】本発明に係る移動通信方法は、ハンドオーバ元無線基地局が、交換局に対して、NCCとPCIとKeNB*とを含むハンドオーバ要求を送信する工程と、交換局が、NCCを変更すると共に、PCIに基づいてKeNB*を変更し、ハンドオーバ先無線基地局に対して、変更されたNCCと変更されたKeNB*とを含むハンドオーバ要求を送信する工程と、ハンドオーバ先無線基地局が、KeNB*に基づいて第1鍵を生成する工程と、移動局が、ハンドオーバ指示に含まれているNCCとPCIとに基づいて第1鍵を生成する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局が、ハンドオーバ元無線基地局配下のハンドオーバ元セルからハンドオーバ先無線基地局配下のハンドオーバ先セルにハンドオーバする移動通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、LTE(Long Term Evolution)方式の移動通信システムでは、移動局UEが、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)からハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)にハンドオーバする際に、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、事前に、ハンドオーバ準備処理(Handover Preparation)において、当該移動局UEの「UE context」を、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)に送信するように構成されている。
【0003】
ここで、「UE context」には、「AS(Access Stratum)」の「security protection(ciphering及びintegrity protection)」に必要な「security context」が含まれる。
【0004】
ASの「security protection」は、無線基地局eNBと移動局UEとの間で共通に用いられるセキュリティ鍵KeNBを用いて行われる。
【0005】
なお、ハンドオーバ処理において、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)に対して、セキュリティ鍵KeNBそのものではなく、セキュリティ鍵KeNB、或いは、事前に交換局MMEから取得している「NH(Next Hop)」というパラメータから派生された「KeNB*」というパラメータを転送するように構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP TS33.401 v8.0.0
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の移動通信システムでは、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)と移動局UEとの間の通信で用いられるセキュリティ鍵KeNBが、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)によって通知されるパラメータKeNB*によって所定規則(KDF:Key Derivation Function)に基づいて生成されるため、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)が、かかるセキュリティ鍵KeNBを知ることができ、セキュリティ上、脆弱となるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)に対して、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)と移動局UEとの間の通信で用いられるセキュリティ鍵KeNBを秘密にすることが可能な移動通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の特徴は、移動局が、ハンドオーバ元無線基地局配下のハンドオーバ元セルからハンドオーバ先無線基地局配下のハンドオーバ先セルにハンドオーバする移動通信方法であって、前記ハンドオーバ元無線基地局が、交換局に対して、カウンタと前記ハンドオーバ先セルに係る物理セル識別情報と前記ハンドオーバ先セルに係る所定パラメータとを含むハンドオーバ要求を送信する工程Aと、前記交換局が、前記カウンタを変更すると共に、前記物理セル識別情報に基づいて前記所定パラメータを変更する工程Bと、前記交換局が、前記ハンドオーバ先無線基地局に対して、変更された前記カウンタと変更された前記所定パラメータとを含む前記ハンドオーバ要求を送信する工程Cと、前記ハンドオーバ先無線基地局が、前記所定パラメータに基づいて第1鍵を生成する工程Dと、前記移動局が、前記ハンドオーバ先無線基地局によって送信されたハンドオーバ指示に含まれている前記カウンタと前記物理セル識別情報と前記一時的識別情報とに基づいて前記第1鍵を生成する工程Eと、前記ハンドオーバ先セルにおいて、前記移動局と前記ハンドオーバ先無線基地局との間で前記第1鍵を用いて通信を開始する工程Fとを有することを要旨とする。
【0010】
本発明の第1の特徴において、前記ハンドオーバ先無線基地局が、前記ハンドオーバ先セルにおいて前記移動局に対して割り当てられる一時的識別情報と前記所定パラメータとに基づいて第1鍵を生成してもよい。
【0011】
本発明の第1の特徴において、前記工程Aにおいて、前記ハンドオーバ元無線基地局が、前記ハンドオーバ先無線基地局配下の前記ハンドオーバ先セル以外の第1セルに係る物理セル識別情報及び所定パラメータを送信してもよい。
【0012】
本発明の第1の特徴において、前記工程Bにおいて、前記交換局は、前記カウンタを変更すると共に、前記第1セルに係る物理セル識別情報に基づいて該第1セルに係る所定パラメータを全て変更してもよい。
【0013】
本発明の第2の特徴は、移動局が、ハンドオーバ元無線基地局配下のハンドオーバ元セルからハンドオーバ先無線基地局配下のハンドオーバ先セルにハンドオーバする移動通信方法であって、前記ハンドオーバ元無線基地局が、交換局を介して、前記ハンドオーバ先無線基地局に対して、ハンドオーバ準備信号によって、前記ハンドオーバ先セル及び該ハンドオーバ先無線基地局配下の該ハンドオーバセル以外の第1セルに係る検証情報を送信する工程と、前記移動局の前記ハンドオーバ先セルに対するハンドオーバが失敗した場合に、該移動局が、セル選択を行う工程と、前記セル選択によって前記第1セルが選択された場合に、前記移動局が、前記ハンドオーバ先無線基地局に対して、前記第1セルに係る検証情報を含む該第1セルに対する再接続要求を送信する工程と、前記ハンドオーバ先無線基地局が、前記ハンドオーバ元無線基地局によって送信された前記第1セルに係る検証情報と、前記移動局によって送信された前記第1セルに係る検証情報とが一致するか否かについて判定する工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)に対して、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)と移動局UEとの間の通信で用いられるセキュリティ鍵KeNBを秘密にすることが可能な移動通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの全体構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおいて鍵KeNBを更新する様子を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおけるハンドオーバ動作について示すシーケンス図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおいてパラメータKeNB*を送信する方法について説明するための図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおける再接続の様子を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおけるハンドオーバ準備処理の動作について示すシーケンス図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおいてパラメータshortMAC-Iを送信する方法について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システム)
図1乃至図7を参照して、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムについて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る移動通信システムは、LTE方式の移動通信システムである。
【0017】
本実施形態では、移動局UEが、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)配下のハンドオーバ元セル(セル#0)からハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)配下のハンドオーバ先セル(セル#1)にハンドオーバするケースを挙げながら、本実施形態に係る移動通信システムについて説明する。
【0018】
図2に示すように、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、ハンドオーバ処理において、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)から通知されたパラメータ(所定パラメータ)KeNB*に基づいて、ハンドオーバ先セル(セル#1)において移動局UEとの間の通信(ASの「security protection」)で用いるセキュリティ鍵(第1鍵)KeNBを生成するように構成されている。
【0019】
なお、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、ハンドオーバ処理において、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)から通知されたパラメータ(所定パラメータ)KeNB*及びハンドオーバ先セル(セル#1)において移動局UEに対して割り当てる識別子C-RNTI(Cell-Radio Network Temporary ID)に基づいてに基づいて、ハンドオーバ先セル(セル#1)において移動局UEとの間の通信(ASの「security protection」)で用いるセキュリティ鍵(第1鍵)KeNBを生成するように構成されていてもよい。
【0020】
ここで、パラメータKeNB*は、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)によって、ハンドオーバ元セル(セル#0)においてハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)と移動局UEとの間の通信で用いられている第1鍵及びハンドオーバ先セル(セル#1)の物理セル識別情報PCIとに基づいて生成されるものである。
【0021】
或いは、パラメータKeNB*は、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)によって、パラメータNH及びハンドオーバ先セル(セル#1)の物理セル識別情報PCIとに基づいて生成されるものである。
【0022】
なお、パラメータNHは、交換局MMEによって鍵KASMEを用いて生成され、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)に通知されているものである。
【0023】
以下、図3乃至図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムにおいて、移動局UEが、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)配下のハンドオーバ元セル(セル#0)からハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)配下のハンドオーバ先セル(セル#1)にハンドオーバするケースにおける動作について説明する。
【0024】
図3に示すように、ステップS1001において、移動局UEは、現在通信中のセル(セル#0)を管理するハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)に対して、「RRC Measurement Report(測定報告)」を送信する。
【0025】
ステップS1002において、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、移動局UEを、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)配下のハンドオーバ先セル(セル#1)に対してハンドオーバさせることを決定し、セル#0における移動局UEとの間の通信で使用しているセキュリティ鍵KeNB及びハンドオーバ先セル(セル#1)の物理セル識別情報PCIに基づいて、パラメータKeNB*を算出する。
【0026】
或いは、ステップS1002において、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、移動局UEを、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)配下のハンドオーバ先セル(セル#1)に対してハンドオーバさせることを決定し、パラメータNH及びハンドオーバ先セル(セル#1)の物理セル識別情報PCIに基づいて、パラメータKeNB*を算出する。
【0027】
ステップS1003において、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、ハンドオーバ元交換局(Source MME)に対して、かかるパラメータKeNB*を含む「S1-AP:HO Required」を送信する。
【0028】
ここで、「S1-AP:HO Required」には、カウンタNCC(Nexr hop Chaining Count)と、ハンドオーバ先セル(セル#1)に係る物理セル識別情報PCIと、ハンドオーバ先セル(セル#1)に係るパラメータ(所定パラメータ)KeNB*とが含まれている。
【0029】
例えば、図4に示すように、カウンタNCC、ハンドオーバ先セル(セル#1)に係る物理セル識別情報PCI、及び、ハンドオーバ先セル(セル#1)に係るパラメータKeNB*は、「S1-AP:HO Required」内の情報要素「SecurityCotextInfo」によって送信されるように構成されている。
【0030】
ここで、情報要素「SecurityCotextInfo」は、「UE context」の一部として送信されるが、S1−APプロトコル上「Transparent Container」としてではなく、「S1-AP:HO Required」内の1つの情報要素として送信されるように構成されている。このようにすることで、「SecurityContextInfo」を交換局MMEで操作することができる。
【0031】
なお、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、「S1-AP:HO Required」によって、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)配下のハンドオーバ先セル(セル#1)以外の第1セル(セル#2やセル#3)に係る物理セル識別情報PCI(Target PCI)及びパラメータKeNB*を送信するように構成されていてもよい。
【0032】
かかる場合、図4に示すように、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、1つのNCCに対して、複数の物理セル識別情報PCI(Target PCI)及びパラメータKeNB*の組み合わせ(List of KeNB*)を送信するように構成されていてもよい。
【0033】
また、図4に示すように、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、カウンタNCC、ハンドオーバ先セル(セル#1)に係る物理セル識別情報PCI(Target PCI)、及び、ハンドオーバ先セル(セル#1)に係るパラメータKeNB*に加えて、ハンドオーバ先セル(セル#1)に係る下りキャリア周波数(Target EARFCN-DL)を送信するように構成されていてもよい。
【0034】
ステップS1004において、ハンドオーバ元交換局(Source MME)は、ハンドオーバ先交換局(Target MME)に対して、「Relocation Request」を送信する。
【0035】
ここで、ハンドオーバ元交換局(Source MME)及びハンドオーバ先交換局(Target MME)は、同一の交換局であってもよい。
【0036】
ステップS1005において、ハンドオーバ先交換局(Target MME)は、「Relocation Request」に含まれているカウンタNCCを変更すると共に、「Relocation Request」に含まれている物理セル識別情報(Target PCI)に基づいて、「Relocation Request」に含まれているパラメータKeNB*を変更する。
【0037】
例えば、ハンドオーバ先交換局(Target MME)は、「NCC」を2回インクリメントすると判断した場合、鍵KASMEに基づいて2回インクリメントした「NCC」に対応する「NH」を生成し、生成した「NH」及び「Relocation Request」に含まれている物理セル識別情報(Target PCI)に基づいて、新たなパラメータKeNB*を生成する。
【0038】
なお、上述のパラメータKeNB*等は、S1-APにおける情報要素として送信されているため、ハンドオーバ元交換局(Source MME)及びハンドオーバ先交換局(Target MME)は、上述のパラメータKeNB*等を知ることができる。
【0039】
ここで、ハンドオーバ先交換局(Target MME)は、「NCC」を変更する場合、かかる「NCC」に対応する全ての物理セル識別情報(Target PCI)に基づいて、「NCC」に対応する全てのパラメータKeNB*を変更してもよい。
【0040】
ステップS1006において、ハンドオーバ先交換局(Target MME)は、変更されたカウンタNCCと変更されたパラメータKeNB*とハンドオーバ先セルに係る物理セル識別情報(Target PCI)を含む「S1-AP:HO Request」を、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)に対して送信する。
【0041】
ステップS1007において、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、ハンドオーバ先交換局(Target MME)に対して「S1-AP:HO Request Ack」を送信する。
【0042】
このとき、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、移動局UEに対して送信すべく「RRC HO Command」を作成し、前記「S1−AP:HO Request Ack」に含めて「RRC HO Command」をハンドオーバ先交換局(Target MME)に対して送信する。前記「RRC HO Command」には、前記ハンドオーバ先交換局(Target MME)から前記「S1−AP:HO Request」によって受信されたカウンタNCCが含まれる。
【0043】
ステップS1008において、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、「S1-AP:HO Request」に含まれているパラメータ(所定パラメータ)KeNB*を用いてセキュリティ鍵(第1鍵)KeNBを生成する。
【0044】
具体的には、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、「S1-AP:HO Request」に含まれていたパラメータKeNB*に基づいて、セキュリティ鍵KeNBを生成する。
【0045】
なお、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、「S1-AP:HO Request」に含まれていたパラメータKeNB*及びハンドオーバ先セル(セル#1)において移動局UEに対して割り当てる一時的識別情報C-RNTIに基づいて、セキュリティ鍵KeNBを生成してもよい。
【0046】
ステップS1009において、ハンドオーバ先交換局(Target MME)は、ハンドオーバ元交換局(Source MME)に対して、「Relocation Request Ack」を送信する。このとき、前記「S1−AP:HO Request Ack」に含まれていた「RRC HO Command」を前記「Relocation Request Ack」に含めて送信する。
【0047】
ステップS1010において、ハンドオーバ元交換局(Source MME)は、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)に対して、「S1-AP:HO Required Ack」を送信する。このとき、前記「Relocation Request Ack」に含まれていた「RRC HO Command」を前記「S1−AP:HO Required Ack」に含めて送信する。
【0048】
ステップS1011において、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、移動局UEに対して、「RRC HO Command」を送信する。
【0049】
ステップS1012において、移動局UEは、「RRC HO Command」に含まれているハンドオーバ先セル(セル#1)において、前記「RRC HO Command」に含まれているカウンタNCCに基づいて、パラメータ(所定パラメータ)KeNB*を生成し、前記パラメータKeNB*用いて、セキュリティ鍵(第1鍵)KeNBを生成する。
【0050】
なお、パラメータKeNB*は、前記カウンタNCCに基づいて、パラメータNH或いはハンドオーバ元セルにおける通信で用いられていた第1鍵KeNBのどちらか一方及び「RRC HO Command」に含まれているハンドオーバ先セル(セル#1)の物理識別情報PCIに基づいて生成されるものである。パラメータNHは、移動局UEが保持している鍵KASMEに基づき移動局UE内部にて生成される。
【0051】
ステップS1013において、移動局UEは、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)に対して、「RRC HO Complete」を送信し、ステップS1014において、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、ハンドオーバ先交換局(Target MME)に対して、「S1-AP:HO Complete」を送信する。
【0052】
ステップS1015において、ハンドオーバ先交換局(Target MME)は、ハンドオーバ元交換局(Source MME)に対して、「Relocation Complete」を送信し、ステップS1016において、ハンドオーバ元交換局(Source MME)は、ハンドオーバ先交換局(Target MME)に対して、「Relocation Complete Ack」を送信する。
【0053】
なお、ハンドオーバ先セル(セル#1)において、移動局UEとハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)との間では、ステップS1008及びステップS1012において生成されたセキュリティ鍵(第1鍵)KeNBを用いた通信が行われる。
【0054】
ここで、図5に示すように、移動局UEは、セル#1に対するハンドオーバが失敗した場合、セル選択を行い、新たに見つかったセル#2に対して再接続(Re-establishment)を試みる。
【0055】
具体的には、移動局UEは、新たに見つかったセル#2に対して、検証情報「shortMAC-I」を含む「RRC Connection Re-establishment Request(再接続要求)」を送信する。
【0056】
検証情報「shortMAC-I」は、移動局UEの「UE Context」を無線基地局において特定し、移動局UEの正当性を確認するためのtoken(shared secret)のようなものである。
【0057】
ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、交換局MMEを介して、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)に対して、ハンドオーバ先セルにおける当該移動局UEの検証情報「shortMAC-I」を含む「UE context」を含む「Handover Preparation(ハンドオーバ準備信号)」を送信する。
【0058】
ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、移動局UEから受信した検証情報「shortMAC-I」と、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)から事前に転送された検証情報「shortMAC-I」との一致を確認することで、移動局UEの正当性を確認する。
【0059】
正当性が確認された場合は、「RRC Connection Re-establishment」を移動局UEに対して返し、再接続が成功する。
【0060】
一方、両者の一致が確認できなかった場合や、当該移動局UEの検証情報「shortMAC-I」或いは「UE context」が存在しなかった場合は、「RRC Connection Re-establishment Reject」を移動局UEに返し、再接続が失敗する。再接続が失敗すると、移動局UEは、ASの接続を解放し、RRC_IDLE状態となる。
【0061】
したがって、図5の例において、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)配下のセル#1乃至#3に、移動局UEの「UE context」が記憶されている場合であっても、セル#2及びセル#3における当該移動局UEの検証情報「shortMAC-I」が記憶されていない場合には、当該移動局UEのセル#2に対する再接続が失敗となってしまう。
【0062】
以下、かかる場合に、図6及び図7を参照して、かかる再接続処理を成功させるためのハンドオーバ準備処理(Handover Preparation)の動作について説明する。
【0063】
図6に示すように、ステップS2001において、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)が、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)に対して、「Handover Preparation」を送信する。
【0064】
ここで、「Handover Preparation(ハンドオーバ準備信号)」には、ハンドオーバ元セル(セル#0)に係る物理セル識別情報(Source PCI)と、ハンドオーバ元セル(セル#1)において移動局UEに対して割り当てられている識別子(Source C-RNTI)と、検証情報(shortMAC-I)とが含まれている。
【0065】
例えば、図7に示すように、ハンドオーバ元セル(セル#0)に係る物理セル識別情報(Source PCI)、ハンドオーバ元セル(セル#1)において移動局UEに対して割り当てられている識別子(Source C-RNTI)、及び、検証情報(shortMAC-I)は、「Handover Preparation」内の情報要素「ReestablishmentInfo」によって送信されるように構成されている。
【0066】
ここで、情報要素「ReestablishmentInfo」は、「UE context」の一部として送信されるように構成されている。
【0067】
なお、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)は、「Handover Preparation」によって、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)配下のハンドオーバ先セル(セル#1)以外の第1セル(セル#2やセル#3)に係る検証情報(shortMAC-I)を送信するように構成されていてもよい。
【0068】
ここで、各移動局UE用の検証情報(shortMAC-I)は、各セルによって異なるように構成されている。
【0069】
ステップS2002において、移動局UEのセル#1に対するハンドオーバが失敗した場合に、ステップS2003において、移動局UEは、再接続先のセルとしてセル#2を発見する。
【0070】
ステップS2004において、移動局UEは、セル#2を管理するハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)に対して、移動局UEの検証情報「shortMAC−I」を含む「RRC Connection Re-establishment Request」を送信する。
【0071】
ここで、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、ステップS2001において、セル#2における移動局UEの検証情報「shortMAC−I」を取得しているため、ステップS2005において、「RRC Connection Re-establishment Request」に含まれる移動局UEの検証情報「shortMAC−I」と、ステップS2001において取得したセル#2における移動局UEの検証情報「shortMAC−I」とが一致するか否かについて判定する。
【0072】
両者が一致すると判定した場合には、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)は、当該移動局UEの正当性が確認されたものと判断して、「RRC Connection Re-establishment」を移動局UEに対して返し、再接続が成功する。
【0073】
(本発明の第1の実施形態に係る移動通信システムの作用・効果)
本実施形態に係る移動通信システムによれば、交換局MMEが、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)によって生成されたパラメータKeNB*を変更することができるため、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)に対して、ハンドオーバ先無線基地局(Target eNB)と移動局UEとの間の通信で用いられるセキュリティ鍵KeNBを秘密にすることができる。
【0074】
本実施形態に係る移動通信システムによれば、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)が、ハンドオーバ先セルにおける係るパラメータ「KeNB*」に加えて、ハンドオーバ先基地局(Target eNB)配下のハンドオーバ先セル以外の第1セルにおける係るパラメータ「KeNB*」を送信することによって、移動局UEのハンドオーバ先セルへのハンドオーバが失敗した場合に、「UE context」が記憶されている第1セルに対する再接続の失敗を回避することができる。
【0075】
本実施形態に係る移動通信システムによれば、ハンドオーバ元無線基地局(Source eNB)が、ハンドオーバ先セルにおける係る移動局UEの検証情報「shortMAC−I」に加えて、ハンドオーバ先基地局(Target eNB)配下のハンドオーバ先セル以外の第1セルにおける係る移動局UEの検証情報「shortMAC−I」を送信することによって、移動局UEのハンドオーバ先セルへのハンドオーバが失敗した場合に、「UE context」が記憶されている第1セルに対する再接続の失敗を回避することができる。
【0076】
なお、上述の移動局UEや無線基地局eNBや交換局MMEの動作は、ハードウェアによって実施されてもよいし、プロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールによって実施されてもよいし、両者の組み合わせによって実施されてもよい。
【0077】
ソフトウェアモジュールは、RAM(Random Access Memory)や、フラッシュメモリや、ROM(Read Only Memory)や、EPROM(Erasable Programmable ROM)や、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)や、レジスタや、ハードディスクや、リムーバブルディスクや、CD-ROMといった任意形式の記憶媒体内に設けられていてもよい。
【0078】
かかる記憶媒体は、プロセッサが当該記憶媒体に情報を読み書きできるように、当該プロセッサに接続されている。また、かかる記憶媒体は、プロセッサに集積されていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ASIC内に設けられていてもよい。かかるASICは、移動局UEや無線基地局eNBや交換局MME内に設けられていてもよい。また、かかる記憶媒体及びプロセッサは、ディスクリートコンポーネントとして移動局UEや無線基地局eNBや交換局MME内に設けられていてもよい。
【0079】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0080】
UE…移動局
Source eNB…ハンドオーバ元無線基地局
Target eNB…ハンドオーバ元無線基地局
MME…交換局

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局が、ハンドオーバ元無線基地局配下のハンドオーバ元セルからハンドオーバ先無線基地局配下のハンドオーバ先セルにハンドオーバする移動通信方法であって、
前記ハンドオーバ元無線基地局が、交換局に対して、カウンタと前記ハンドオーバ先セルに係る物理セル識別情報と前記ハンドオーバ先セルに係る所定パラメータとを含むハンドオーバ要求を送信する工程Aと、
前記交換局が、前記カウンタを変更すると共に、前記物理セル識別情報に基づいて前記所定パラメータを変更する工程Bと、
前記交換局が、前記ハンドオーバ先無線基地局に対して、変更された前記カウンタと変更された前記所定パラメータとを含む前記ハンドオーバ要求を送信する工程Cと、
前記ハンドオーバ先無線基地局が、前記ハンドオーバ先セルにおいて前記所定パラメータに基づいて第1鍵を生成する工程Dと、
前記移動局が、受信したハンドオーバ指示に含まれている前記カウンタと前記物理セル識別情報と前記一時的識別情報とに基づいて前記第1鍵を生成する工程Eと、
前記ハンドオーバ先セルにおいて、前記移動局と前記ハンドオーバ先無線基地局との間で前記第1鍵を用いて通信を開始する工程Fとを有することを特徴とする移動通信方法。
【請求項2】
前記工程Dにおいて、前記ハンドオーバ先無線基地局が、前記移動局に対して割り当てられる一時的識別情報と前記ハンドオーバ先セルにおいて前記所定パラメータとに基づいて第1鍵を生成することを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項3】
前記工程Aにおいて、前記ハンドオーバ元無線基地局が、前記ハンドオーバ先無線基地局配下の前記ハンドオーバ先セル以外の第1セルに係る物理セル識別情報及び所定パラメータを送信することを特徴とする請求項1に記載の移動通信方法。
【請求項4】
前記工程Bにおいて、前記交換局は、前記カウンタを変更すると共に、前記第1セルに係る物理セル識別情報に基づいて該第1セルに係る所定パラメータを全て変更することを特徴とする請求項2に記載の移動通信方法。
【請求項5】
移動局が、ハンドオーバ元無線基地局配下のハンドオーバ元セルからハンドオーバ先無線基地局配下のハンドオーバ先セルにハンドオーバする移動通信方法であって、
前記ハンドオーバ元無線基地局が、交換局を介して、前記ハンドオーバ先無線基地局に対して、ハンドオーバ準備信号によって、前記ハンドオーバ先セル及び該ハンドオーバ先無線基地局配下の該ハンドオーバセル以外の第1セルに係る検証情報を送信する工程と、
前記移動局の前記ハンドオーバ先セルに対するハンドオーバが失敗した場合に、該移動局が、セル選択を行う工程と、
前記セル選択によって前記第1セルが選択された場合に、前記移動局が、前記ハンドオーバ先無線基地局に対して、前記第1セルに係る検証情報を含む該第1セルに対する再接続要求を送信する工程と、
前記ハンドオーバ先無線基地局が、前記ハンドオーバ元無線基地局によって送信された前記第1セルに係る検証情報と、前記移動局によって送信された前記第1セルに係る検証情報とが一致するか否かについて判定する工程とを有することを特徴とする移動通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−74830(P2010−74830A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−209830(P2009−209830)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【分割の表示】特願2008−243404(P2008−243404)の分割
【原出願日】平成20年9月22日(2008.9.22)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】