説明

移動通信端末及び基地局装置

【課題】高速移動する移動通信端末に対しても安定した通信を提供可能とする。
【解決手段】各移動通信端末のハンドオーバ制御を行うハンドオーバ制御部11aを備えた基地局11,…,15に、ハンドオーバ制御及び待ち受け制御用のパラメータとなる基地局毎の移動速度閾値対応の受信品質オフセット値11bを備え、通信中の移動通信端末で検出した移動速度と各基地局11,…,15からの受信信号品質を含む基地局情報とを該移動通信端末から受信した基地局11が該移動通信端末の移動速度に応じた最適な基地局を選択しハンドオーバ制御をする。該移動通信端末は基地局11からのハンドオーバ指示情報に基づき最適の基地局にハンドオーバする。待ち受け中の移動通信端末は、基地局から受信した基地局毎の移動速度閾値対応の受信品質オフセット値11bと、検出した基地局情報と移動速度とにより、最適の待ち受け基地局を選択して切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信端末及び基地局装置に関し、特に、複数の周波数チャネルを有する移動通信システムにおけるハンドオーバ制御及び待ち受け制御に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動通信システムが広く普及しており、高速マルチメディア通信が可能になる次世代移動通信システムの開発が行われている。また、多くのユーザを収容するために1つの通信事業者が同一地域で複数の周波数チャネルを運用する移動通信システムを構築することが一般的である。このように複数の周波数チャネルを有する移動通信システムの一例としては、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)システムがあり、次世代通信システムとしてOFCDM(Orthogonal Frequency and Code Division Multiplexing)システム等が検討されている。従来の移動通信システムの一例を以下に示す。
【0003】
W−CDMAシステムは、3GPP(3rd Generation Partnership Project)と呼ばれる標準化団体で通信方式が規格化されており、図7の一例に示すような構成からなっている。図7は、W−CDMAシステムの構成の一例を示すシステム構成図である。
図7に示すように、W−CDMAシステムは、或る間隔で配置された複数の基地局71,72,73と移動通信端末74間で無線通信を行うシステムである。ここで、移動通信端末74では、一般的に、各基地局71,72,73からの受信信号の品質を測定することにより、最適な基地局例えば基地局71を選択して通信を行っている。待ち受け中には、最も受信電波が強い1つの基地局例えば基地局71からの情報を受信しているが、移動通信端末74が移動することにより、該基地局71からの受信信号の品質が劣化した場合や、周辺基地局例えば基地局72からの受信信号の品質の方が良くなった場合には、非特許文献1に記載のような3GPP規格の「アイドルモード時のセル選択とセル再選択(Cell selection and reselection in idle mode)」の判定基準に基づいて、信号を受信する基地局をより品質の良い基地局72に変更する処理を行っている。
【0004】
一方、移動通信端末74が通信中の場合には、一般的に、W−CDMAシステムの特徴であるソフトハンドオーバ機能(複数の基地局と同時に通信を行う機能)を使用して継続した通信を実現している。即ち、移動通信端末74が移動することにより、通信している基地局71及び周辺基地局72,73からの受信信号の品質が変化した場合には、より品質の良い基地局との通信を行うために、移動通信端末74は、非特許文献2に記載のような3GPP規格の「イントラ周波数品質測定(Intra-frequency measurements)」の判定基準に基づいて、新たに通信したい基地局例えば基地局72の情報を基地局71に送信し、基地局71が新たに通信する基地局72を決定して、移動通信端末74に対して通知する。この結果、通信する基地局を基地局71から基地局72に適切に変更する処理を行いながら、通信を途絶することなく、通信を継続するようにしている。
【0005】
また、移動通信端末74が、前述のような、通信中の基地局71と同一の周波数2GHz帯で通信する基地局72にハンドオーバして通信を継続する場合ではなく、通信中の基地局71の周波数2GHzとは異なる周波数例えば800MHzの基地局73を選択して通信を切り替える場合は、非特許文献3に記載のような3GPP規格の「インタ周波数品質測定(Inter-frequency measurements)」の判定基準に基づいて、ハードハンドオーバ機能(通信する基地局を瞬間的にすべて切り替えて通信を維持する機能)を用いて、通信する基地局を、基地局71から基地局73に変更する処理を行いながら、通信を途絶することなく、通信を継続している。
【0006】
但し、3GPP規格においては、待ち受け中及び通信中において最適な基地局を選択する際に、一般的に、受信品質を基準にして切り替えるべき基地局を選択しており、移動通信端末74の移動速度や基地局71,72,73のセル半径に関する情報は使用されていない。この結果、待ち受け中や通信中において、移動通信端末74が高速に移動する場合、待ち受けする基地局や通信する基地局を変更する頻度が高くなるという問題が発生する。また、待ち受け中においては、情報を受信する基地局を変更する処理を行っている間は、移動通信端末74には着信することができないため、着信失敗の確率が高くなり、また、情報を受信する基地局を変更する際に移動通信端末74の消費電流も多くなるため、待ち受け時間が短くなるという問題がある。更に、移動通信端末74が高速に移動する場合、通信中において通信するセル即ち基地局を頻繁に変更するため、ネットワークの負荷が増大するという問題がある。
【0007】
以上のような問題のうち、通信中のハンドオーバ制御に関して、特許文献1に示す特開2002−27522号公報「移動通信端末及びセル選択制御プログラムを記憶した記憶媒体」に開示されている技術がある。該特許文献1の技術は、移動通信端末が、各基地局のセル半径の大きさを判断し、当該移動通信端末の移動速度や送信パワー、通信する情報の要求品質などの情報に基づいて、セル半径の大きな基地局又はセル半径の小さな基地局のいずれを優先して選択すべきかを判定して、判定したセル半径を有する基地局を優先的に選択するという技術である。
【特許文献1】特開2002−27522号公報
【非特許文献1】3rd Generation Partnership Project;「User Equipment(UE) procedures in idle mode and procedures for cell reselection in connected mode」,3GPP TS25.304 V3.14.0,Section5.2,(2004−03)
【非特許文献2】3rd Generation Partnership Project;「Radio Resource Control(RRC) protocol specification」,3GPP TS25.331 V3.18.0,Section14.1,(2004−03)
【非特許文献3】3rd Generation Partnership Project;「Radio Resource Control(RRC) protocol specification」,3GPP TS25.331 V3.18.0,Section14.2,(2004−03)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術では、各基地局のセル半径を判断する手段や最適な基地局を優先的に選択するための具体的な手段については述べられていないし、また、ハンドオーバ制御をすべて移動通信端末側で行うことにしている。しかし、ハンドオーバ制御は、移動通信端末側のみではなく、実際には、基地局側の制御も必要である。更には、基地局側において、移動通信端末から受信した情報に基づいて、様々な条件を組み合わせることにより、最適な基地局を選択するようなハンドオーバ制御を行う方が、移動通信システム全体としての効率を良くすることができる。
【0009】
そこで、本発明の目的は、基地局と移動通信端末とが協調して、移動通信端末の移動速度に応じて最適な基地局を選択するハンドオーバ制御を基地局側で行い、移動通信端末では基地局から指定された最適な基地局に変更して通信を継続するハンドオーバ制御に関する動作を行い、移動通信端末が高速に移動する場合に、安定した接続状態を維持し移動通信端末の消費電流の低減を達成すると共に、移動通信ネットワークの負荷を軽減することを可能とすることにある。また、本発明の他の目的は、移動通信システムに予め設定されている条件により、移動通信端末側で各基地局のセル半径に関する情報が簡単に判別できる場合においては、通信中に基地局で行うハンドオーバ制御の一部及び待ち受け中の待ち受け制御を、移動通信端末で行うことを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前述の課題を解決するために以下のような技術手段により構成されている。
第1の技術手段は、複数の基地局装置との間の受信品質に所定の制御パラメータを適用して求めた基準に基づいて、待ち受けする基地局装置を前記複数の基地局装置から選択する移動通信端末であって、当該移動通信端末の移動速度に応じて前記制御パラメータを変更することを特徴とする。
【0011】
第2の技術手段は、第1の技術手段に記載の移動通信端末において、前記制御パラメータを基地局装置から取得することを特徴とする。
【0012】
第3の技術手段は、第2の技術手段に記載の移動通信端末において、前記制御パラメータは、前記基地局装置からの報知情報から取得することを特徴とする。
【0013】
第4の技術手段は、第2の技術手段に記載の移動通信端末と通信可能な基地局装置であって、前記制御パラメータを移動体通信端末へ送信することを特徴とする。
【0014】
第5の技術手段は、第4の技術手段に記載の基地局装置であって、前記制御パラメータを移動体通信端末へ報知情報によって送信することを特徴とする。
【0015】
第6の技術手段は、複数の基地局装置との間の受信品質を含む情報を基地局装置に送信し、送信された前記情報を考慮して決定されたハンドオーバ先の基地局装置にハンドオーバする移動通信端末であって、当該移動通信端末の移動速度と前記基地局から取得したパラメータに応じてハンドオーバに関する制御をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上に記載のごとき技術手段から構成される本発明によれば、移動通信端末の移動速度と基地局毎のセル半径の大きさとに応じて、最適な基地局を優先的に選択するようなハンドオーバ制御や待ち受け制御を行うことにより、移動通信端末が待ち受け中にある場合に、着信の失敗の確率を低減することができ、また、情報を受信する基地局を変更する頻度を低減することにより消費電流の増加を防ぐことができる。また、移動通信端末が通信中にある場合においても、通信する基地局を変更するハンドオーバの発生頻度を低減し、基地局及び移動通信端末双方の負荷を低減することができ、移動通信ネットワークのサービス品質を確保することができると共に、特定の基地局との通信に偏ることもなく、安定した移動通信システムを提供することができる。更には、移動通信端末を識別可能な固有の情報を用いて、移動通信端末のうち特定の移動通信端末に対してのみ、優先的に、ハンドオーバ制御及び待ち受け制御を行うようにすることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る移動通信端末及び基地局装置に関する実施形態の一例について、以下に図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明を適用する移動通信システムのセル構成の一例を示す構成図である。図1に示すように、移動通信システムは、様々なセル半径からなるセル11z,12z,…,15zをそれぞれ有する基地局11,12,…,15が、各セルが互いに重なり合う状態で配置されて構成されている。ここに、セル半径は、基地局の送信電力、使用する周波数など様々な要因によって決定されるものであり、例えば、基地局送信電力が大きい方が、セル半径は大きくなり、使用する周波数が低い方が、伝播損失が少なくなるためセル半径は大きくなる。図1に示す例においては、セル11z,12z,13z,14zが、セル半径が小さいセルであり、セル15zが、セル半径が大きいセルである。
【0018】
移動通信端末は、このように互いに重なり合うセル内を移動しながら通信を行うものであり、移動通信端末は、例えば、図1においては、矢印で示すように、セル11z,15z即ち基地局11,15の通信範囲の位置16から、セル14z,15z即ち基地局14,15の通信範囲を経由して、セル13z,15z即ち基地局13,15の通信範囲の位置17に向かって移動する。
【0019】
また、各基地局11,12,…,15のそれぞれには、複数の受信品質オフセット値と、基地局間のハンドオーバ制御を行うハンドオーバ制御部とが備えられている。ここに、受信品質オフセット値は、ハンドオーバ制御用に用いるハンドオーバ制御パラメータや待ち受け制御用に用いる待ち受け制御パラメータとなるものであり、移動通信端末の移動速度と各基地局のセル半径の大きさとに対応する値として予め設定されていて、移動速度の大きさに応じて、最適の基地局を選択して、通信する基地局をハンドオーバしたり、待ち受けする基地局を変更したりするために適用される。
【0020】
例えば、通信中の移動通信端末が高速移動する場合に、セル半径が大きい基地局ほど、受信品質オフセット値の値を大きい値とし、セル半径が大きい基地局ほど、移動通信端末が実際に受信した受信信号品質よりも品質の良い受信信号を受信しているように、受信品質オフセット値を用いて更新することにより、セル半径が大きい基地局を優先して選択して、ハンドオーバ切り替えを行わせ、高速移動時にハンドオーバ制御が頻発しないように制御するものである。なお、図1には、基地局11にのみハンドオーバ制御部11aと受信品質オフセット値11b(ハンドオーバ制御パラメータ、待ち受け制御パラメータ)を示していないが、その他の各基地局12,13,…,15にも同様に備えられている。また、各基地局11,12,…,15に備えられている受信品質オフセット値は同じ値を保持していても良いし、それぞれ異なる値を保持していても良い。
【0021】
図2は、本発明に係わる移動通信端末の一例を示すブロック図であり、図1に示すような移動通信システムに適用される端末の一例である。図2において、移動通信端末20は、少なくとも、基地局との間で信号を送受信する通信ユニット21、基地局との間の送受信信号を処理する信号処理部22、当該移動通信端末20の移動速度を検出する速度検出部23、各部を制御する制御部24を備えている。
【0022】
ここで、制御部24は、通信中の基地局を切り替えるハンドオーバの制御に関する動作や待ち受ける基地局を変更する待ち受け中のセル選択制御に関する動作を含め、当該移動通信端末20の移動通信に必要な各種処理を行うものであり、少なくとも、ハンドオーバ制御に関する動作を基地局のハンドオーバ制御に併せて行うハンドオーバ制御部24a,待ち受け中の状態における最適な基地局への切り替えを行う待ち受け制御に関する動作を制御する待ち受け制御部24b,各基地局の情報を検出する基地局情報検出部24cが備えられている。ここに、基地局情報検出部24cは、各基地局(図1の場合、基地局11,12,…,15)を特定する情報、各基地局からの受信信号品質値を含む基地局情報をそれぞれ基地局毎に検出しており、更には、場合によっては、各基地局のセル半径を推定する情報をも含めて検出している。
【0023】
次に、本発明の第1の実施例について、図1及び図2に示す構成を例に取って、図3の処理フロー図を用いて説明する。図3は、本発明の第1の実施例を示す処理フロー図である。ここで、最初に、移動通信端末20は、図1の位置16に存在していて、基地局11と通信している状態にあるものとする。
【0024】
まず、移動通信端末20は、通信している基地局11とその周辺の基地局12,13,14,15からそれぞれ受信した信号の受信品質を通信ユニット21において測定し、各基地局を特定する情報と共に、基地局の情報として基地局情報検出部24cにおいて検出する(ステップS1)。次に、移動通信端末20は、当該移動通信端末20の移動速度Vを速度検出部23において測定する(ステップS2)。移動通信端末20は、ステップS1、S2で測定及び検出した各基地局11,12,…,15の受信品質を含む基地局の情報、及び、当該移動通信端末20の移動速度Vの情報を、基地局11に送信する(ステップS3)。
【0025】
各基地局11,12,…,15の受信品質を含む基地局の情報、及び、当該移動通信端末20の移動速度Vの情報を受信した基地局11は、各基地局11,12,…,15の送信電力や、使用する周波数の情報などを基にして、移動通信端末20から受信した基地局の情報に含まれる各基地局11,12,…,15のセル半径を判断し、セル半径が大きな基地局(図1の場合、基地局15)グループ、セル半径が小さな基地局(図1の場合、基地局11〜14)グループにグループ分けする(ステップS4)。例えば、2GHz及び800MHzを使用した移動通信システムの場合は、伝播損失の大小により、2GHzを使用した基地局のセル半径が小さくなり、800MHzを使用した基地局のセル半径が大きくなるため、使用する周波数の情報を基にして、かかるグループ分けを即座に行うことができる。
【0026】
次に、基地局11は、移動通信端末20の移動速度Vが予め定めた移動速度閾値Vth1以上か否かを判定する(ステップS5)。移動通信端末20の移動速度Vが移動速度閾値Vth1以上の場合(ステップS5のYES)、通信する基地局の切り替えが頻繁に生じないように、セル半径が大きな基地局グループに属する基地局(図1の場合、基地局15)を優先的に選択できるようにするために、セル半径が大きな基地局グループに属する基地局の受信品質に対して、受信品質オフセット値Loff1を適用し、当該基地局の受信品質を更新するようにする(ステップS6)。例えば、受信品質の指標として、3GPP規格で定義したEc/N0(Ratio of energy per modulating bit to the noise spectral density)を用いる場合は、値が大きいほど品質が良いと判断されるため、受信品質オフセット値Loff1としては、正の値を設定しておき、セル半径が大きな当該基地局の信号の受信品質の測定値に対して、受信品質オフセット値Loff1を加算することにより、見かけ上、セル半径が大きな当該基地局の受信品質が良いと判断されるようにする。
【0027】
反対に、受信品質の指標としてPathloss(通路損失)を用いる場合は、値が小さいほど品質が良いと判断されるため、受信品質オフセット値Loff1としては、負の値を設定しておき、セル半径が大きな当該基地局の信号の受信品質の測定値に対して、受信品質オフセット値Loff1を加算することにより、見かけ上、セル半径が大きな当該基地局の受信品質が良いと判断されるようにする。
【0028】
このように、受信品質オフセット値Loff1としては、受信品質の指標の採り方に応じて、正,負の異なる値を用いることも可能であるし、また、オフセット値の絶対値をセル半径の大きさに応じて比例した値とすることも可能であるし、更には、詳細は後述の第2の実施例で説明するが、移動通信端末20の移動速度に応じて、セル半径の大きい基地局とセル半径の小さい基地局とのそれぞれに適用するオフセット値として異なる値を用いることも可能であり、いずれにしても、唯一の値のみに限るものではなく、状況に応じて、複数の値を用いることが可能である。
【0029】
次に、基地局11は、ステップS6で更新した受信品質(即ち更新受信信号品質)を基にして、最適の基地局(移動通信端末20が高速移動する場合には、セル半径が大きな基地局15)を選択し、該最適の基地局へのハンドオーバ制御を行うと共に、移動通信端末20に対して、選択した最適の基地局の情報をハンドオーバ指示情報として通知する(ステップS7)。移動通信端末20は、受信したハンドオーバ指示情報に基づき、最適の基地局へのハンドオーバ制御に関する動作を行い、通信する基地局を、基地局11から最適の基地局(高速移動する場合、セル半径が大きな基地局15)に通信しながら切り替えることにより、通信を途絶することなく、通信を継続する(ステップS8)。
【0030】
以上のように、通信していた基地局11は、ハンドオーバ制御パラメータとして保持している受信品質オフセット値Loff1及び移動速度閾値Vth1と移動通信端末20から受信した基地局情報と移動速度Vとに基づいて、当該移動通信端末20のハンドオーバ制御を行い、移動通信端末20が基地局11からのハンドオーバ指示情報によりハンドオーバ動作に関する動作を行うことにより、高速に移動する場合には、セル半径の大きな基地局(図1の場合、基地局15)が優先的に選択されて、ハンドオーバの回数を少なくすることが可能となり、移動通信端末20及び各基地局の負荷を低減すると共に、通信の安定性を確保することができる。
【0031】
次に、本発明の第2の実施例について、図1及び図2に示す構成を例に取って、図4の処理フロー図を用いて説明する。図4は、本発明の第2の実施例を示す処理フロー図である。ここで、最初に、移動通信端末20は、図1の位置16に存在して、基地局11と通信している状態にあり、図1の矢印の方向に向かって移動するものとする。
【0032】
図3の処理フロー図に示した第1の実施例に係わる移動通信システムでは、移動通信端末20の移動速度Vが移動速度閾値Vth1以上の場合に、セル半径が大きな基地局の受信品質に対して測定品質オフセット値Loff1を適用していたが、第1の実施例に係わる移動通信システムの場合、高速移動した移動通信端末20が停止した状態になっても、セル半径が大きい基地局(図1の場合、基地局15)と通信していることになり、セル半径が大きい基地局との通信が多くなり、高速移動の可能性がある移動通信端末20は、セル半径が大きい基地局との通信に偏る可能性がある。
【0033】
そこで、ハンドオーバ制御パラメータとして用いる移動速度閾値及び受信品質オフセット値として、それぞれ、第1移動速度閾値Vth1,第2移動速度閾値Vth2及び第1受信品質オフセット値Loff1,第2受信品質オフセット値Loff2の2種類を用意し、移動通信端末20の移動速度Vが第1移動速度閾値Vth1以上に速い場合には、セル半径が大きな基地局を優先的に選択できる第1移動速度閾値Vth1を適用するようにし、一方、移動速度Vが第2移動速度閾値Vth2以下と遅い場合には、セル半径が小さな基地局を優先的に選択できる第2受信品質オフセット値Loff2を適用できるようにすることにより、特定の基地局との通信に偏ることを避ける例を、本第2の実施例として説明する。
【0034】
具体的には、まず、図4のステップS11において、図3のステップS1からS6までの各ステップの処理(即ち、図3のフロー図の破線で囲んだA1の範囲の処理)を行う。説明を繰返すと、移動通信端末20は、通信している基地局11とその周辺の基地局12,13,14,15からそれぞれ受信した信号の受信品質を通信ユニット21及び基地局情報検出部24cにおいて測定し、各基地局を特定する情報と共に、基地局の情報として基地局情報検出部24cにおいて検出する(ステップS1)。次に、移動通信端末20は、当該移動通信端末20の移動速度Vを速度検出部23において測定する(ステップS2)。移動通信端末20は、ステップS1、S2で測定及び検出した各基地局11,12,…,15の受信品質を含む基地局の情報、及び、当該移動通信端末20の移動速度Vの情報を、基地局11に送信する(ステップS3)。
【0035】
各基地局11,12,…,15の受信品質を含む基地局の情報、及び、当該移動通信端末20の移動速度Vの情報を受信した基地局11は、各基地局11,12,…,15の送信電力や、使用する周波数の情報を基にして、移動通信端末20から受信した基地局の情報に含まれる各基地局11,12,…,15のセル半径を判断し、セル半径が大きな基地局(図1の場合、基地局15)グループ、セル半径が小さな基地局(図1の場合、基地局11〜14)グループにグループ分けする(ステップS4)。次に、基地局11は、移動通信端末20の移動速度Vが予め定めた第1移動速度閾値Vth1以上か否かを判定する(ステップS5)。
【0036】
移動通信端末20の移動速度Vが第1移動速度閾値Vth1以上の場合(ステップS5のYES)、通信する基地局の切り替えが頻繁に生じないように、セル半径が大きな基地局グループに属する基地局(図1の場合、基地局15)を優先的に選択できるようにするために、セル半径が大きな基地局グループに属する基地局の受信品質に対して、第1受信品質オフセット値Loff1を適用し、当該基地局の受信品質を更新するようにする(ステップS6)。
【0037】
しかる後、本第2の実施例においては、第1の実施例の場合とは異なる処理を行う。即ち、基地局11は、移動通信端末20の移動速度Vが予め定めた第2移動速度閾値Vth2以下か否かを判定する(ステップS12)。移動通信端末20の移動速度Vが第2移動速度閾値Vth2以下の場合(ステップS12のYES)、通信する基地局が偏らないように、セル半径が小さな基地局グループに属する基地局(図1の場合、基地局11〜14)を優先的に選択できるようにするために、セル半径が小さな基地局グループに属する基地局の受信品質に対して、第2受信品質オフセット値Loff2を適用し、当該基地局の受信品質を更新するようにする(ステップS13)。
【0038】
次に、基地局11は、ステップS11におけるステップS6又はステップS13で更新した受信品質(即ち更新受信信号品質)を基にして、最適の基地局(移動通信端末20が高速移動する場合には、セル半径が大きな基地局15、第2移動速度閾値Vth2以下の低速移動になっている場合、セル半径が小さな基地局12,13,14のうち、移動方向にあって最も受信品質が良い基地局14、次いで基地局13)を選択し、該最適の基地局へのハンドオーバ制御を行うと共に、移動通信端末20に対して、選択した最適の基地局の情報をハンドオーバ指示情報として通知する(ステップS14)。移動通信端末20は、受信したハンドオーバ指示情報に基づき、最適の基地局へのハンドオーバ制御に関する動作を行い、通信する基地局を、基地局11から最適の基地局(高速移動する場合、セル半径が大きな基地局15、低速移動する場合、セル半径が小さな基地局14、次いで基地局13)に通信しながら切り替えることにより、通信を途絶することなく、通信を継続する(ステップS15)。
【0039】
以上のように、通信していた基地局11は、ハンドオーバ制御パラメータとして保持していた第1受信品質オフセット値Loff1,第2受信品質オフセット値Loff2及び第1移動速度閾値Vth1,第2移動速度閾値Vth2とを用いて、移動通信端末20から受信した移動速度Vが、予め定めた第1移動速度閾値Vth1以上であった場合、当該移動通信端末20から受信した基地局毎の受信信号品質値に第1受信品質オフセット値Loff1を加算して更新した値を、各基地局の更新受信信号品質とし、一方、当該移動通信端末20から受信した移動速度Vが、予め定めた第2移動速度閾値Vth2以下であった場合、当該移動通信端末20から受信した基地局毎の受信信号品質値に第2受信品質オフセット値Loff2を加算して更新した値を、各基地局の更新受信信号品質とし、最も更新受信信号品質が良い基地局を、ハンドオーバに最適の基地局と判定するようにしている。
【0040】
これにより、高速に移動する場合には、セル半径の大きな基地局(図1の場合、基地局15)が優先的に選択され、低速に移動する場合には、セル半径の小さな基地局(図1の場合、基地局14、次いで基地局13の順)が優先的に選択されることにより、高速移動時にはハンドオーバの回数を少なくすることが可能となり、移動通信端末20及び各基地局の負荷を低減し、通信の安定性を確保すると共に、低速移動に移行した際にはセル半径の大きな基地局からセル半径の小さな基地局にハンドオーバすることにより、特定の基地局との通信に偏ることなく、移動通信システムとして安定した動作を行うことができる。
【0041】
次に、本発明の第3の実施例について、図1及び図2に示す構成を例に取って、図5の処理フロー図を用いて説明する。図5は、本発明の第3の実施例を示す処理フロー図である。ここで、本第3の実施例においては、最初に、移動通信端末20は、図1の位置16に存在しているが、図3に示した第1の実施例とは異なり、基地局11と通信している状態又は基地局11から待ち受けしている状態にあるものとする。
【0042】
即ち、図3の処理フロー図に示した第1の実施例に係わる移動通信システムでは、移動通信端末20が通信中の状態にある場合について説明したが、第3の実施例として示す本実施例においては、移動通信端末20が通信中の場合に最適な基地局にハンドオーバすることを可能とするのみならず、待ち受け中の状態にある場合においても最適な待ち受けとなる基地局に変更することを可能とする場合について説明する。
【0043】
図5に示す第3の実施例においては、まず、移動通信端末20は、通信している又は待ち受けしている基地局11からの報知情報を受信することにより、基地局11が予め定めた値として保持している移動速度閾値Vth1と受信品質オフセット値Loff1とを取得する(ステップS21)。ここに、移動速度閾値Vth1と受信品質オフセット値Loff1とは、前述したように、ハンドオーバ制御パラメータ及び待ち受け制御パラメータとして用いられるものであり、移動通信端末20が移動速度閾値Vth1以上で高速移動している場合に、受信品質オフセット値Loff1をセル半径が大きい基地局からの受信信号品質に対するオフセット値として適用するものである。
【0044】
次に、移動通信端末20は、通信している又は待ち受けしている基地局11とその周辺の基地局12,13,14,15からそれぞれ受信した信号の受信品質を通信ユニット21において測定し、各基地局を特定する情報と共に、基地局の情報として基地局情報検出部24cにおいて検出する(ステップS22)。更に、移動通信端末20は、当該移動通信端末20の移動速度Vを速度検出部23において測定する(ステップS23)。
【0045】
次に、移動通信端末20は、適用する移動通信システム全体として予め定めた情報に基づいて、ステップS22で測定及び検出した各基地局11,12,…,15の受信品質を含む基地局の情報から、各基地局のセル半径を判断し、セル半径が大きな基地局(図1の場合、基地局15)グループ、セル半径が小さな基地局(図1の場合、基地局11〜14)グループにグループ分けする(ステップS24)。例えば、2GHz及び800MHzを使用した移動通信システムの場合は、一般的に、800MHzを使用した基地局の方が、2GHzを使用した基地局よりも、伝播損失が小さいために、セル半径を大きくすることができる。従って、移動通信システム全体の各基地局に関する予め定めた情報として、各基地局が使用する周波数の情報を基にして、800MHzを使用した基地局をセル半径が大きな基地局グループに、また、2GHzを使用した基地局をセル半径が小さな基地局グループに、グループ分けを行うようにすることができる。
【0046】
次に、移動通信端末20は、当該移動通信端末20の移動速度VがステップS21で基地局11から取得した移動速度閾値Vth1以上か否かを判定する(ステップS25)。当該移動通信端末20の移動速度Vが移動速度閾値Vth1以上の場合(ステップS25のYES)、通信又は待ち受けする基地局の切り替えが頻繁に生じないように、セル半径が大きな基地局グループに属する基地局(図1の場合、基地局15)を優先的に選択できるようにするために、セル半径が大きな基地局グループに属する基地局の受信品質に対して、受信品質オフセット値Loff1を適用し、当該基地局の受信品質を更新するようにする(ステップS26)。
【0047】
しかる後、移動通信端末20は、当該移動通信端末20が通信中あるいは待ち受け中のいずれの状態にあるかを判定する(ステップS27)。当該移動通信端末20が通信中の状態にある場合(ステップS27の通信中の場合)、移動通信端末20は、ステップS26で更新した基地局の受信品質(即ち更新受信信号品質)を含む基地局の情報を、ハンドオーバ要求情報として、通信中の基地局11に送信する(ステップS28)。
【0048】
基地局11は、移動通信端末20からハンドオーバ要求情報として受信した、更新受信信号品質を含む基地局の情報を基にして、最適の基地局(移動通信端末20が高速移動する場合には、セル半径が大きな基地局15)を選択し、該最適の基地局へのハンドオーバ制御を行うと共に、移動通信端末20に対して、選択した最適の基地局の情報をハンドオーバ指示情報として通知する(ステップS29)。
【0049】
移動通信端末20は、受信したハンドオーバ指示情報に基づき、最適の基地局へのハンドオーバ制御に関する動作を行い、通信する基地局を、基地局11から最適の基地局(高速移動する場合、セル半径が大きな基地局15)に通信しながら切り替えることにより、通信を途絶することなく、通信を継続する(ステップS30)。
【0050】
一方、当該移動通信端末20が待ち受け中の状態にある場合(ステップS27の待ち受け中の場合)、移動通信端末20は、ステップS26で更新した基地局の受信品質を含む基地局の情報を基にして、現在待ち受けしている基地局11よりも品質の良い基地局(移動通信端末20が高速移動する場合には、セル半径が大きな基地局15)が存在している場合には、待ち受けする基地局を、基地局11から待ち受け情報の受信品質が良い基地局(例えば基地局15)に変更する待ち受け制御に関する動作を行う(ステップS31)。
【0051】
以上のように、通信中又は待ち受け中の基地局11からハンドオーバ制御パラメータ及び待ち受け制御パラメータとして受信した受信品質オフセット値Loff1及び移動速度閾値Vth1と当該移動通信端末20で検出した基地局情報と移動速度Vとに基づいて、通信中の場合は、基地局に対して当該移動通信端末20のハンドオーバ要求情報を送信して、基地局11と協調して、当該移動通信端末20自身のハンドオーバ制御を行うことにより、高速に移動する場合には、セル半径の大きな基地局(図1の場合、基地局15)が優先的に選択されて、ハンドオーバの回数を少なくすることが可能となり、移動通信端末20及び各基地局の負荷を低減すると共に、通信の安定性を確保することができ、一方、待ち受け中の場合にも、同様に、受信品質が最も良い最適の基地局を待ち受け基地局として優先的に選択することも可能となる。
【0052】
次に、本発明の第4の実施例について、図1及び図2に示す構成を例に取って、図6の処理フロー図を用いて説明する。図6は、本発明の第4の実施例を示す処理フロー図である。ここで、本第4の実施例においては、最初に、移動通信端末20は、図1の位置16に存在して、図1の矢印の方向に向かって移動するものとするが、図4に示した第2の実施例とは異なり、基地局11と通信している状態又は基地局11から待ち受けしている状態にあるものとする。
【0053】
即ち、図4の処理フロー図に示した第2の実施例に係わる移動通信システムでは、移動通信端末20が通信中の状態にある場合について説明したが、第4の実施例として示す本実施例においては、移動通信端末20が通信中の場合に最適な基地局にハンドオーバすることを可能とするのみならず、待ち受け中の状態にある場合においても最適な待ち受けとなる基地局に変更することを可能とする場合について説明する。
【0054】
ここで、第4の実施例においても、第2の実施例の場合と同様に、特定の基地局との通信や待ち受けに偏ることを避けるために、ハンドオーバ制御パラメータ及び待ち受け制御パラメータとして用いる移動速度閾値及び受信品質オフセット値として、それぞれ、第1移動速度閾値Vth1,第2移動速度閾値Vth2及び第1受信品質オフセット値Loff1,第2受信品質オフセット値Loff2の2種類を用意し、移動通信端末20の移動速度Vが第1移動速度閾値Vth1以上に速い場合には、セル半径が大きな基地局を優先的に選択できるようにし、一方、移動速度Vが第2移動速度閾値Vth2以下と遅い場合には、セル半径が小さな基地局を優先的に選択できるようにしている。
【0055】
図6に示す第4の実施例においては、まず、移動通信端末20は、通信している又は待ち受けしている基地局11からの報知情報を受信することにより、基地局11が予め定めた値として保持している第1移動速度閾値Vth1,第2移動速度閾値Vth2及び第1受信品質オフセット値Loff1,第2受信品質オフセット値Loff2を取得する(ステップS41)。ここに、第1移動速度閾値Vth1,第2移動速度閾値Vth2及び第1受信品質オフセット値Loff1,第2受信品質オフセット値Loff2とは、前述したように、ハンドオーバ制御パラメータ及び待ち受け制御パラメータとして用いられるものであり、移動通信端末20が第1移動速度閾値Vth1以上で高速移動している場合に、第1受信品質オフセット値Loff1を、セル半径が大きい基地局からの受信信号品質に対するオフセット値として適用するものであり、一方、移動通信端末20が第2移動速度閾値Vth2以下の低速で移動している場合には、第2受信品質オフセット値Loff2を、セル半径が小さい基地局からの受信信号品質に対するオフセット値として適用するものである。
【0056】
次に、移動通信端末20は、通信している又は待ち受けしている基地局11とその周辺の基地局12,13,14,15からそれぞれ受信した信号の受信品質を通信ユニット21において測定し、各基地局を特定する情報と共に、基地局の情報として基地局情報検出部24cにおいて検出する(ステップS42)。更に、移動通信端末20は、当該移動通信端末20の移動速度Vを速度検出部23において測定する(ステップS43)。
【0057】
次に、移動通信端末20は、適用する移動通信システム全体として予め定めた情報に基づいて、ステップS42で測定及び検出した各基地局11,12,…,15の受信品質を含む基地局の情報から、各基地局のセル半径を判断し、セル半径が大きな基地局(図1の場合、基地局15)グループ、セル半径が小さな基地局(図1の場合、基地局11〜14)グループにグループ分けする(ステップS44)。
【0058】
次に、移動通信端末20は、当該移動通信端末20の移動速度VがステップS41で基地局11から取得した第1移動速度閾値Vth1以上か否かを判定する(ステップS45)。当該移動通信端末20の移動速度Vが第1移動速度閾値Vth1以上の場合(ステップS45のYES)、通信又は待ち受けする基地局の切り替えが頻繁に生じないように、セル半径が大きな基地局グループに属する基地局(図1の場合、基地局15)を優先的に選択できるようにするために、セル半径が大きな基地局グループに属する基地局の受信品質に対して、受信品質オフセット値Loff1を適用し、当該基地局の受信品質を更新するようにする(ステップS46)。
【0059】
更に、前述した図5の第3の実施例とは異なり、移動通信端末20は、当該移動通信端末20の移動速度VがステップS41で基地局11から取得した第2移動速度閾値Vth2以下か否かを判定する(ステップS47)。当該移動通信端末20の移動速度Vが第2移動速度閾値Vth2以下の場合(ステップS47のYES)、通信又は待ち受けする基地局が偏らないように、セル半径が小さな基地局グループに属する基地局(図1の場合、基地局11〜14)を優先的に選択できるようにするために、セル半径が小さな基地局グループに属する基地局の受信品質に対して、第2受信品質オフセット値Loff2を適用し、当該基地局の受信品質を更新するようにする(ステップS48)。
【0060】
しかる後、移動通信端末20は、当該移動通信端末20が通信中あるいは待ち受け中のいずれの状態にあるかを判定する(ステップS49)。当該移動通信端末20が通信中の状態にある場合(ステップS49の通信中の場合)、移動通信端末20は、ステップS46又はステップS48で更新した基地局の受信品質(即ち更新受信信号品質)を含む基地局の情報を、ハンドオーバ要求情報として、通信中の基地局11に送信する(ステップS50)。
【0061】
基地局11は、移動通信端末20からハンドオーバ要求情報として受信した、更新受信信号品質を含む基地局の情報を基にして、最適の基地局(移動通信端末20が高速移動する場合には、セル半径が大きな基地局15、第2移動速度閾値Vth2以下の低速移動になっている場合、セル半径が小さな基地局12,13,14のうち、移動方向にあって最も受信品質が良い基地局14、次いで基地局13)を選択し、該最適の基地局へのハンドオーバ制御を行うと共に、移動通信端末20に対して、選択した最適の基地局の情報をハンドオーバ指示情報として通知する(ステップS51)。
【0062】
移動通信端末20は、受信したハンドオーバ指示情報に基づき、最適の基地局へのハンドオーバ制御に関する動作を行い、通信する基地局を、基地局11から最適の基地局(高速移動する場合、セル半径が大きな基地局15、低速移動する場合、セル半径が小さな基地局14、次いで基地局13)に通信しながら切り替えることにより、通信を途絶することなく、通信を継続する(ステップS52)。
【0063】
一方、当該移動通信端末20が待ち受け中の状態にある場合(ステップS49の待ち受け中の場合)、移動通信端末20は、ステップS46又はステップS48で更新した基地局の受信品質を含む基地局の情報を基にして、現在待ち受けしている基地局11よりも品質の良い基地局(移動通信端末20が高速移動する場合には、セル半径が大きな基地局15、低速移動する場合、セル半径が小さな基地局14、次いで基地局13)が存在している場合には、待ち受けする基地局を、基地局11から待ち受け情報の受信品質が良い基地局(例えば、基地局15や、基地局14次いで基地局13)に変更する待ち受け制御に関する動作を行う(ステップS53)。
【0064】
以上のように、通信中又は待ち受け中の基地局11からハンドオーバ制御パラメータ及び待ち受け制御パラメータとして受信した第1受信品質オフセット値Loff1,第2受信品質オフセット値Loff2及び第1移動速度閾値Vth1,第2移動速度閾値Vth2と当該移動通信端末20で検出した基地局情報と移動速度Vとに基づいて、当該移動通信端末20が検出した移動速度Vが、基地局11から受信した第1移動速度閾値Vth1以上であった場合、検出した基地局毎の受信信号品質値に基地局11から受信した第1受信品質オフセット値Loff1を加算して更新した値を、各基地局の更新受信信号品質とし、一方、当該移動通信端末20が検出した移動速度Vが、基地局11から受信した第2移動速度閾値Vth2以下であった場合、検出した基地局毎の受信信号品質値に基地局11から受信した第2受信品質オフセット値Loff2を加算して更新した値を、各基地局の更新受信信号品質とし、最も更新受信信号品質が良い基地局を、ハンドオーバ又は待ち受けに最適の基地局と判定するようにしている。
【0065】
これにより、高速に移動する場合には、セル半径の大きな基地局(図1の場合、基地局15)が優先的に選択され、低速に移動する場合には、セル半径の小さな基地局(図1の場合、基地局14、次いで基地局13)が優先的に選択されることにより、高速移動時に、通信中の場合におけるハンドオーバの回数、又は、待ち受け中の場合における待ち受けする基地局の変更の回数を少なくすることが可能となり、移動通信端末20及び各基地局の負荷を低減し、通信の安定性を確保すると共に、低速移動に移行した際に、通信中の場合にはセル半径の大きな基地局からセル半径の小さな基地局にハンドオーバ制御し、待ち受け中の場合にはセル半径の大きな基地局からセル半径の小さな基地局に待ち受け基地局を切り替えることにより、特定の基地局に偏ることなく、移動通信システムとして安定した動作を行うことができる。
【0066】
なお、本発明の実施形態に係わる移動通信システムにおいては、基地局が各移動通信端末を識別可能な固有の情報(例えば、電話番号など)を用いて、移動通信端末毎に、前述のごとき移動速度V及び基地局のセル半径に応じた最適の基地局の選択を行うようなハンドオーバ制御や待ち受け制御の実行の是非を決定することも可能であり、選択した特定の移動通信端末に対してのみ、優先的に安定した移動通信サービスを提供することも可能である。
【0067】
また、移動通信端末の移動速度Vを測定する手段としては種々の方法が考えられる。例えば、加速度センサーを使用して移動速度Vを検出する方法、受信電波信号の周波数・位相情報から移動速度Vを検出する方法、GPS等他の速度検出手段の情報から移動速度Vを得る方法、通信中のハンドオーバの頻度や待ち受け中の基地局変更の頻度により移動速度Vを類推する方法、移動通信端末を搭載する自動車の速度計等外部機器から移動速度Vを取得する方法等が考えられる。
【0068】
また、ハンドオーバや待ち受けの制御に用いる各種情報を基地局と移動通信端末との間で伝送し合うチャネルとしては、報知情報を伝える報知用チャネルを用いる方法や各移動通信端末に対する個別チャネルメッセージを用いる方法等、種々の伝送経路やチャネルを用いることが考えられる。
また、ハンドオーバのための最適な基地局の選択時において、移動通信端末から受信した各基地局の受信品質の最も良いものを選択する方法以外に、各基地局の使用状況(各移動通信端末との通信状況)も考慮して比較的空いている基地局を優先的に選択するなど、様々な条件を組み合わせて最適な基地局を選択する方法も考えられる。
また、本特許でのハンドオーバの定義としてはソフトハンドオーバおよびハードハンドオーバを含み、待ち受けの定義としては3GPPで規定されているIdle−modeだけではなく、CELL_PCH、CELL_FACH、URA_PCHなどの共通チャネルを使用した通信状態も含まれる。
また、本特許での基地局の定義としては、基地局およびその基地局に接続されたネットワークコントローラ、バックボーンネットワークも含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に適用される移動通信システムのセル構成の一例を示す構成図である。
【図2】本発明に係わる移動通信端末の一例を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施例を示す処理フロー図である。
【図4】本発明の第2の実施例を示す処理フロー図である。
【図5】本発明の第3の実施例を示す処理フロー図である。
【図6】本発明の第4の実施例を示す処理フロー図である。
【図7】W−CDMAシステムの構成の一例を示すシステム構成図である。
【符号の説明】
【0070】
11,12,13,14,15…基地局、11a…ハンドオーバ制御部、11b…受信日品質オフセット値(ハンドオーバ制御パラメータ、待ち受け制御パラメータ)、11z,12z,13z,14z…セル半径が小さなセル、15z…セル半径が大きなセル、16,17…移動通信端末の位置、20…移動通信端末、21…通信ユニット、22…信号処理部、23…速度検出部、24…制御部、24a…ハンドオーバ制御部、24b…待ち受け制御部、24c…基地局情報検出部、71,72…基地局(2GHz)、73…基地局(800MHz)、74…移動通信端末。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局装置との間の受信品質に所定の制御パラメータを適用して求めた基準に基づいて、待ち受けする基地局装置を前記複数の基地局装置から選択する移動通信端末であって、
当該移動通信端末の移動速度に応じて前記制御パラメータを変更することを特徴とする移動通信端末。
【請求項2】
請求項1記載の移動通信端末において、
前記制御パラメータを基地局装置から取得することを特徴とする移動通信端末。
【請求項3】
請求項2記載の移動通信端末において、
前記制御パラメータは、前記基地局装置からの報知情報から取得することを特徴とする移動通信端末。
【請求項4】
請求項2記載の移動通信端末と通信可能な基地局装置であって、前記制御パラメータを移動体通信端末へ送信することを特徴とする基地局装置。
【請求項5】
請求項4記載の基地局装置であって、前記制御パラメータを移動体通信端末へ報知情報によって送信することを特徴とする基地局装置。
【請求項6】
複数の基地局装置との間の受信品質を含む情報を基地局装置に送信し、送信された前記情報を考慮して決定されたハンドオーバ先の基地局装置にハンドオーバする移動通信端末であって、
当該移動通信端末の移動速度と前記基地局から取得したパラメータに応じてハンドオーバに関する制御をすることを特徴とする移動通信端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−10989(P2009−10989A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216623(P2008−216623)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【分割の表示】特願2004−179043(P2004−179043)の分割
【原出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】