説明

移動通信装置および移動通信方法

【課題】ハードハンドオーバ処理における移動網における異種網ハンドオーバ処理中のデータ転送量を抑制することを可能にする移動通信装置および移動通信方法を提供すること。
【解決手段】複数種の無線通信インタフェースを搭載し、使用中の無線通信インタフェースから他の無線通信インタフェースへの切替を要求する異種網間ハンドオーバ実施要求を移動通信網から受信し、異種網間ハンドオーバを実施する移動通信装置において、複数種の種無線通信インタフェースの接続品質をそれぞれ測定するメジャーメント処理部と、接続品質に基づいて、異種網間ハンドオーバが実施されるか否かを予測するハンドオーバ実行予測部と、ハンドオーバ実行予測部が、異種網間ハンドオーバが実施されることを予測する場合、使用中のウィンドウサイズよりも小さいウィンドウサイズに設定するTCPウィンドウ制御部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の異なる無線通信インタフェースを有する移動通信装置および移動通信方法に関し、さらに詳しくは、通信中における異種無線通信インタフェース切替時の通信流量を制御する移動通信装置および移動通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムの標準規格を行っている3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、次世代移動通信システムとして、3GPP−LTE/SAE(Long Term Evolution/System Architecture Evolution)の標準化を進めている。
【0003】
3GPP−LTE/SAE標準では、これまで3GPPにて標準化が行われてきたそれぞれの無線アクセス技術(Radio Access Technology、以下、RATとする。)が提案されている。そして、3GPP−LTE/SAE標準では、第二世代(GSM: Global System for Mobile Communication, GPRS: General Packet Radio Service)、第三世代(UMTS: Universal Mobile Telecommunication System)の移動通信システム用の通信インタフェースと、3GPP−LTE用の通信インタフェースとを切り替えて使用する、RAT間ハンドオーバ(Inter-RAT handover)の手順が開示されている。
【0004】
RAT間ハンドオーバは、いわゆる異種網ハンドオーバ(Vertical Handover)のことであり、異なるシステム(あるいはネットワーク)間のハンドオーバを示している。
【0005】
3GPPで規定されるシステムにおけるRAT間ハンドオーバは、移動通信網側でハンドオーバ判定を行う。
【0006】
RAT間ハンドオーバの実施条件が満たされている場合、移動通信装置にて現在接続中の通信インタフェースが利用するアクセス網から、切替後の通信インタフェースが利用するアクセス網へのデータ転送用の通信経路が網内で確保される。その後、移動通信装置に対してハンドオーバ実施命令メッセージ(ハンドオーバコマンド)を送信し、移動通信装置にRAT間ハンドオーバ処理を実施させる。
【0007】
移動通信装置は、ハンドオーバコマンドを受信すると、現在使用中の通信インタフェースの接続を切断し、ハンドオーバコマンドにて指示された通信インタフェースでの接続処理を行い、利用する通信インタフェースを切り替える。
【0008】
RAT間ハンドオーバ中に切替前のアクセス網に届けられた通信データは、前述にて確保したデータ転送用の通信経路にて切替後の通信インタフェースにて使用されるアクセス網に転送、もしくはバイキャストされる(例えば、非特許文献1)。
【0009】
また、インターネットや、移動体通信システムにおけるデータ通信の一手法として、主にTCPプロトコルが用いられている。TCPプロトコルでは、広告ウィンドウ(Advertised Window)と、輻輳ウィンドウ(Congestion Window)とからデータの実際の連続送信量が定まる(例えば、非特許文献2)。広告ウィンドウは、TCPデータセグメントの受信側の装置が、自装置において現在受信可能なデータ量をアクセス網に示す。また、輻輳ウィンドウは、TCP送信側の装置が連続的に送信してもネットワーク輻輳を起こないと推測した連続データ量をアクセス網に示す。
【0010】
従来、異なる通信インタフェースを搭載した移動通信装置として、移動通信網用の通信インタフェースと、無線LAN用の通信インタフェースとを搭載した移動通信装置がある。この移動通信装置において、通信インタフェース切替時の通信をスムーズに行う手法として、ウィンドウ制御手法が知られている。このウィンドウ制御手法では、それぞれの通信インタフェース用のTCP初期ウィンドウサイズをあらかじめ設定しておく。そして、移動通信装置は、低速の通信インタフェースから高速のインタフェースへの切替を行う際に、切替先の通信インタフェース用のウィンドウサイズに設定したTCP−ACKパケット(以下、ACKパケットとする。)を通信インタフェースの切替処理前に送信する。
【0011】
本手法では、移動通信装置が、ハンドオーバ処理を起動する構成となっている。そして、本手法では、基地局からの受信電界強度によってリンクの切替を行い、モバイルIPプロトコル処理によってIP層の切替を行い、TCPウィンドウの設定を行う。
【0012】
したがって、IP層の切替が生じてからデータ転送を行うため、ハンドオーバ処理開始時から終了するまでに広告ウィンドウサイズを通信相手に伝達するために、切替後の通信インタフェースで接続をする一方で、ハンドオーバ中に切替前の通信インタフェースでの接続を維持するソフトハンドオーバ処理をしなければならない(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−153321号公報
【非特許文献1】"3GPP TS23.401 V1.2.1"、[online]、平成20年1月23日検索、インターネット<URL:http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html-info/23401.htm>
【非特許文献2】RFC 2581 TCP、[online]、平成20年1月23日検索、インターネット<URL:http://www.ietf.org/rfc/rfc2581.txt?number=2581>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、GPS、GPRS、UMTS、LTEのような3GPPシステム内でのRAT間ハンドオーバ処理では、ハンドオーバ判定は移動通信網側で行い、ハンドオーバコマンドを移動通信装置に送信する前に移動網間でのデータ転送処理のリソースを確保する。このように、従来は、移動網側にてハンドオーバ判定を行うため、必ずしも基地局からの受信電界強度だけではハンドオーバ実施判定ができないという問題があった。
【0014】
また、移動通信装置側のハンドオーバ処理では、切替前の通信インタフェースの接続を切断し、切替後の通信インタフェースでの接続を行うハードハンドオーバ処理を行う。そのため、移動通信装置は、ハンドオーバ処理中に新たな広告ウィンドウサイズを通信相手に通知することができず、ハンドオーバ処理中のデータ転送量の抑制ができないという問題があった。
【0015】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、ハードハンドオーバ処理における移動網における異種網ハンドオーバ処理中のデータ転送量を抑制することを可能にする移動通信装置および移動通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の移動通信装置は、複数種の無線通信インタフェースを搭載し、使用中の無線通信インタフェースから他の無線通信インタフェースへの切替を要求する異種網間ハンドオーバ実施要求を移動通信網から受信し、異種網間ハンドオーバを実施する移動通信装置において、前記複数種の種無線通信インタフェースの接続品質をそれぞれ測定するメジャーメント処理部と、前記接続品質に基づいて、前記異種網間ハンドオーバが実施されるか否かを予測するハンドオーバ実行予測部と、前記ハンドオーバ実行予測部が、前記異種網間ハンドオーバが実施されることを予測する場合、使用中のウィンドウサイズよりも小さいウィンドウサイズに設定するTCP制御部と、を有する構成を採る。
【0017】
本発明の移動通信方法は、複数種の無線通信インタフェースを搭載し、使用中の無線通信インタフェースから他の無線通信インタフェースへの切替を要求する異種網間ハンドオーバ実施要求を移動通信網から受信し、異種網間ハンドオーバを実施する移動通信装置の移動通信方法において、各種無線通信インタフェースの接続品質を測定し、前記接続品質に基づいて、前記異種網間ハンドオーバが実施されるか否かを予測し、前記ハンドオーバ実行予測ステップが、前記異種網間ハンドオーバが実施されると予測する場合、使用中のウィンドウサイズよりも小さいウィンドウサイズに設定するようにした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハードハンドオーバ処理における移動網における異種網ハンドオーバ処理中のデータ転送量を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1〜図9は、本発明の一実施の形態における通信装置および移動通信方法の一例を示す図である。
【0021】
図1は、本実施の形態の移動通信装置の構成を示すブロック図である。図1において、移動通信装置は、LTE通信インタフェース101、UMTS通信インタフェース102、通信インタフェース制御部103、IP処理部109、TCP制御部111、および端末制御部110から構成されている。
【0022】
なお、図示していないが、本移動通信装置は、移動通信装置の利用者が本移動通信装置の動作を選択して実行するためのユーザインタフェースであるキーや、ディスプレイ、コーデック、マイク、スピーカ、カメラ、バイブレータ、プログラムの格納および実行のためのメモリなどの機能も有している。
【0023】
LTE通信インタフェース101は、3GPP−LTE方式の通信方式にてデータの送受信を行う。また、UMTS通信インタフェース102は、W−CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)方式の通信方式にてデータの送受信を行う。異種網ハンドオーバは、LTE通信インタフェース101とUMTS通信インタフェース102間で、インタフェースを切り替えることにより行われる。
【0024】
通信インタフェース制御部103は、送受信フレーム処理部104、ハンドオーバコマンド処理部105、メジャーメント処理部106、ハンドオーバ実行予測部107、およびハンドオーバ条件記憶部108から構成される。
【0025】
通信インタフェース制御部103は、使用中の通信インタフェースを管理し、LTE通信インタフェース101とUMTS通信インタフェース102間の切替処理(ハンドオーバ処理)や、メディアアクセス制御処理(MAC:Media Access Control)、無線リンク制御処理(RLC:Radio Link Control)、無線リソース制御処理(RRC:Radio Resource Control)などの無線処理等を行う。
【0026】
送受信フレーム処理部104は、LTE通信インタフェース101およびUMTS通信インタフェース102で受信した信号のフレーム解析を行う。送受信フレーム処理部104は、受信信号に上位層のデータが含まれている場合は、フレームヘッダとトレイラを分離し、パケット部をIP処理部109に渡す。また、送受信フレーム処理部104は、IP処理部109から受け取ったパケットにフレームヘッダとトレイラを付加(フレーム化)し、使用中の通信インタフェースに渡す。
【0027】
送受信フレーム処理部104は、受信信号がハンドオーバコマンド(ハンドオーバ実施要求)である場合には、ハンドオーバコマンド処理部105に渡す。また、送受信フレーム処理部104は、受信ハンドオーバコマンドに対する応答をハンドオーバコマンド処理部105から受け取り、フレーム化し、使用中の通信インタフェースに渡す。また、送受信フレーム処理部104は、メジャーメント処理部106にて生成されたメジャーメントレポートメッセージを、使用している通信インタフェースに渡す処理を行う。
【0028】
ハンドオーバコマンド処理部105は、使用中の通信インタフェース経由で受信したハンドオーバコマンドを送受信フレーム処理部104から受け取り、ハンドオーバコマンドを受信する直前の測定結果をハンドオーバ条件記憶部108に渡すようにメジャーメント処理部106に指示する。また、ハンドオーバコマンド処理部105は、ハンドオーバコマンドを受信した際にウィンドウ制御タイマ117を停止するようにウィンドウ制御タイマ管理部116に要求する処理や、ハンドオーバコマンドに基づいてハンドオーバを実施して通信インタフェースを切り替える処理等を行う。
【0029】
メジャーメント処理部106は、メジャーメントタイミングにて各通信インタフェースの接続品質等の測定処理を行う。メジャーメント処理部106は、メジャーメント処理部106内の記憶領域に設けている測定結果テーブルに測定結果を記憶する。メジャーメント処理部106は、測定結果を格納したメジャーメントレポートメッセージを生成し、送受信フレーム処理部104にメジャーメントレポートメッセージを渡す。また、メジャーメント処理部106は、メジャーメント開始時刻情報をウィンドウ制御タイマ管理部116に渡す処理や、移動通信装置においてハンドオーバコマンドを受信した際に測定結果情報をハンドオーバ条件記憶部108に渡す処理等を行う。
【0030】
図2は、メジャーメント処理部106に格納される測定結果テーブルの一例を示したものである。測定結果テーブルは、LTE通信インタフェース101における時刻T1での測定を行った際の受信電界強度が−11dBm、UMTS通信インタフェース102における時刻T2での測定を行った際の受信電界強度が2dBmであったことを示している。この他、測定結果テーブルには測定時の位置情報等を含んでいてもよい。
【0031】
ハンドオーバ実行予測部107は、メジャーメント処理部106に記憶されている測定結果に基づいて、Inter−RATハンドオーバが実行されることを予測する処理を行う。また、ハンドオーバ実行予測部107は、Inter−RATハンドオーバが実行されると予測した場合にウィンドウ制御タイマ管理部116にウィンドウ制御タイマ117を活性化するように指示する処理等を行う。
【0032】
ハンドオーバ条件記憶部108は、ハンドオーバ実施条件テーブルおよびハンドオーバ未実施条件テーブルを有し、各テーブルに該当する情報を記憶する処理を行う。
【0033】
ハンドオーバ実施条件テーブルは、ハンドオーバが実行された際にメジャーメント処理部106にて管理している測定結果を測定時の時刻や位置情報とともに記憶するためのテーブルである。また、ハンドオーバ未実施条件テーブルは、ウィンドウ制御タイマ117が満了した際にメジャーメント処理部106にて管理している測定結果を測定時の時刻や位置情報とともに記憶するためのテーブルである。
【0034】
図3は、ハンドオーバ実施条件テーブルの一例を示している。本例では、一方のハンドオーバ実施条件テーブルは、切替後の通信インタフェースがUMTS通信インタフェース102であったときの測定結果であり、測定時刻T1、位置座標P1、UMTS通信インタフェース102における受信電界強度2dBm、LTE通信インタフェース101における受信電界強度−11dBmというエントリを示している。そして、他方のハンドオーバ実施条件テーブルは、切替後の通信インタフェースがLTE通信インタフェース101であったときの測定結果であり、測定時刻T3、位置座標P3、UMTS通信インタフェース102における受信電界強度−20dBm、LTE通信インタフェース101における受信電界強度5dBmというエントリを示している。このようなエントリが、Inter−RATハンドオーバが実施されるたびに追加して記憶される。
【0035】
図4は、ハンドオーバ未実施条件テーブルの一例を示している。本例では、一方のハンドオーバ未実施条件テーブルは、利用中の通信インタフェースがLTE通信インタフェース101であったときの測定結果であり、測定時刻T2、位置座標P2、UMTS通信インタフェース102における受信電界強度7dBm、LTE通信インタフェースにおける受信電界強度1dBmというエントリを示している。また、他方のハンドオーバ未実施条件テーブルは、利用中の通信インタフェースがUMTS通信インタフェース102であったときの測定結果であり、測定時刻T4、位置座標P4、UMTSインタフェースにおける受信電界強度−5dBm、LTE通信インタフェースにおける受信電界強度3dBmというエントリを示している。このようなエントリが、ウィンドウ制御タイマが満了となるたびに追加して記憶される。また、これらエントリは、統計情報として処理されて記憶されていてもよい。
【0036】
IP処理部109は、通信インタフェース制御部103から渡されたIPパケットの受信処理を行い、必要に応じてTCP制御部111に渡す処理や、TCP制御部111からTCPセグメントを受け取りIPパケットの送信処理を行い通信インタフェース制御部103に渡す処理など、IPプロトコル全般の処理を行う。
【0037】
端末制御部110は、本移動通信装置におけるシステム管理処理や、アプリケーション処理等を行う。
【0038】
TCP制御部111は、TCPプロトコル処理部112、TCPウィンドウ制御部113、ウィンドウ制御タイマ管理部116、およびウィンドウ制御タイマ117から構成される。
【0039】
そして、TCP制御部111は、TCPプロトコル全般の処理、および、ウィンドウ制御タイマ管理部116の指示により輻輳ウィンドウサイズや広告ウィンドウサイズの値をInter−RATハンドオーバ時に変更する処理等を行う。
【0040】
TCPプロトコル処理部112は、IP処理部109から受け取ったTCPデータセグメントを処理し、上位アプリケーションに渡す処理、および上位アプリケーションから受け取ったデータをTCPセグメント化し、IP処理部109に渡す処理を行う。また、TCPプロトコル処理部112は、受信TCPセグメントの送達確認のためのTCP−ACK処理、およびTCPセッションの開設・受付などのセッション管理等のTCPプロトコル全般の処理を行う。
【0041】
また、TCPプロトコル処理部112は、各種TCPセグメントの連続送信量を示す輻輳ウィンドウサイズを、輻輳ウィンドウ制御部114にて管理されている値と、通信相手から送信されるTCPセグメントに格納されている連続受信量を示す広告ウィンドウサイズとのいずれか小さい方の値に設定する。そして、TCPプロトコル処理部112は、通信相手に自身の連続受信可能な量を知らせる広告ウィンドウサイズを、広告ウィンドウ制御部115にて管理されている値に基づいて設定する。
【0042】
また、TCPプロトコル処理部112では、Inter−RATハンドオーバ実施予測期間中の広告ウィンドウが0に設定されている場合、ハンドオーバ実施後、もしくは、ウィンドウ制御タイマ117の計時満了後にウィンドウ制御タイマ管理部116からのTCP−ACK送信要求に伴い、再設定後の広告ウィンドウサイズにてTCP−ACKを生成し、IP処理部109に渡す。
【0043】
TCPウィンドウ制御部113は、輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115から構成され、TCPウィンドウの管理を行う。
【0044】
輻輳ウィンドウ制御部114は、送信側の処理として、輻輳制御を行うために、輻輳ウィンドウサイズを管理するウィンドウサイズテーブルを有している。そして、TCPプロトコル処理部112は、本テーブルの情報に基づいて、連続送信可能なTCPデータセグメントの量を設定する。
【0045】
ウィンドウサイズテーブルは、初期値、Inter−RATハンドオーバが実施されると予測された期間中に設定する値を示すハンドオーバ実施予測期間の設定値、およびInter−RATハンドオーバ予測判定を行う直前までに使用していた輻輳ウィンドウサイズの値を示すハンドオーバ実行前の設定値を管理している。TCPウィンドウ制御部113は、Inter−RATハンドオーバが実施されると予測された場合、ハンドオーバ実施予測期間の設定値を、”0”、または、通常使用するウィンドウサイズよりも小さく、または使用中のウィンドウサイズよりも小さく設定する。
【0046】
図5は、輻輳ウィンドウ制御部114が管理するウィンドウサイズテーブルの一例を示している。本例では、ウィンドウサイズテーブルは、LTE通信インタフェース101を使用する際の輻輳ウィンドウサイズの初期値が128KB、ハンドオーバ実施予測期間の設定値が16KB、およびハンドオーバ実行前の設定値が96KBであることを示している。また、ウィンドウサイズテーブルは、UMTS通信インタフェースを使用する際の輻輳ウィンドウサイズの初期値が32KB、ハンドオーバ実施予測期間の設定値が16KB、およびハンドオーバ実行前の設定値が32KBであることを示している。
【0047】
広告ウィンドウ制御部115は、自身が現在どれくらいの量の受信処理が可能かを通信相手に対し通知するためにTCPセグメントに格納する広告ウィンドウサイズを管理するウィンドウサイズテーブルを有している。広告ウィンドウ制御部115は、本テーブルの情報に基づいて、広告ウィンドウサイズをTCPセグメントに格納してIP処理部109に渡す。ウィンドウサイズテーブルは、初期値、Inter−RATハンドオーバ実施予測期間中に設定する値を示すハンドオーバ実施予測期間の設定値、およびInter−RATハンドオーバ予測判定を行う直前までに使用していた広告ウィンドウサイズの値を示すハンドオーバ実行前設定値を管理している。TCPプロトコル処理部112は、ハンドオーバ実施予測期間の設定値を、”0”、または、通常使用するウィンドウサイズよりも小さく、または使用中のウィンドウサイズよりも小さく設定する。
【0048】
図6は、広告ウィンドウ制御部115が管理するウィンドウサイズテーブルの一例を示している。本例では、ウィンドウサイズテーブルは、LTE通信インタフェースを使用する際の広告ウィンドウサイズの初期値が128KB、ハンドオーバ実施予測期間の設定値が16KB、およびハンドオーバ実行前の設定値が96KBであることを示している。また、ウィンドウサイズテーブルは、UMTS通信インタフェースを使用する際の輻輳ウィンドウサイズの初期値が32KB、ハンドオーバ実施予測期間の設定値が16KB、およびハンドオーバ実行前設定値が32KBであることを示している。
【0049】
ウィンドウ制御タイマ管理部116は、異種網間ハンドオーバが実施されると予測する場合、小さいウィンドウサイズでデータを送受信するハンドオーバ実施予測期間を決定する。また、ウィンドウ制御タイマ管理部116は、ハンドオーバ実行予測部107からの要求に応じてウィンドウ制御タイマ117の計時を開始させる処理と、ハンドオーバコマンド処理部105からのハンドオーバコマンド受信通知によりウィンドウ制御タイマ117を停止する処理とを行う。
【0050】
また、ウィンドウ制御タイマ管理部116は、ウィンドウ制御タイマ117の計時中に、ハンドオーバ実施予測期間の設定値に基づいて設定した値をTCPプロトコル処理部112が使用するように、輻輳ウィンドウサイズおよび広告ウィンドウサイズを輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115にそれぞれ指示する。
【0051】
また、ウィンドウ制御タイマ管理部116は、ウィンドウ制御タイマ117の停止時に、輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115が管理するハンドオーバ実行前の設定値に基づいて計算した値をTCPプロトコル処理部112が使用するように、輻輳ウィンドウサイズおよび広告ウィンドウサイズを輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115にそれぞれ指示する。
【0052】
また、ウィンドウ制御タイマ管理部116は、これまでのメジャーメント実施時刻からハンドオーバコマンドを受信するまでの値に基づいて、ウィンドウ制御タイマ117の満了時間を設定する処理と、ウィンドウ制御タイマ117の満了を判定する処理とを行う。言い換えると、ウィンドウ制御タイマ管理部116は、ハンドオーバ実施予測期間が経過したか否かを判定する処理を行う。
【0053】
そして、ウィンドウ制御タイマ117の計時満了時には、輻輳ウィンドウサイズおよび広告ウィンドウサイズをハンドオーバ実施前の設定値に基づいて設定した値をTCPプロトコル処理部112が使用するように、輻輳ウィンドウサイズおよび広告ウィンドウサイズを輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115にそれぞれ指示する。ハンドオーバ予測により変更する前のウィンドウサイズ値に再設定することにより、異種網ハンドオーバ予測後、異種網ハンドオーバ実施要求を受信しない場合のデータ転送量抑制を停止することができるため、通信が低スループットにて継続実行されることを防ぐことができる。
【0054】
図7は、ウィンドウ制御タイマ管理部116が管理しているウィンドウ制御タイマテーブルの一例を示している。ウィンドウ制御タイマテーブルでは、各切替方向ごと、すなわち、LTE通信インタフェース101からUMTS通信インタフェース102へのInter−RATハンドオーバ時、およびUMTS通信インタフェース102からLTE通信インタフェース101へのInter−RATハンドオーバ時、それぞれに関して、初期値、最新値、設定値を示すエントリを保有している。ここで、初期値とは、該当するInter−RATハンドオーバに関し、ウィンドウ制御タイマ満了を判定するためのデフォルト値を示す。また、最新値とは、各切替方向にて、前回実施したInter−RATハンドオーバにおける、メジャーメント実施時刻からハンドオーバコマンド受信時刻までの時間を示している。また、設定値は、各切替方向にてこれまでに実施したInter−RATハンドオーバにおける最新値の履歴を最新値エントリ群として管理して各値を集計し、その集計値に基づいて決定した値である。
【0055】
図7では、LTE通信インタフェース101からUMTS通信インタフェース102へのInter−RATハンドオーバが予測された場合のウィンドウ制御タイマテーブルの各値は以下のようになっている。ウィンドウ制御タイマ117の満了値が初期値は2sec、最新値は50ms、設定値は1secである。また、UMTS通信インタフェースからLTE通信インタフェースへのInter−RATハンドオーバ予測が予測された場合のウィンドウ制御タイマテーブルの各値は以下のようになっている。ウィンドウ制御タイマ117の満了値が、初期値は5sec、最新値が70ms、および設定値が1secであることを示している。ハンドオーバ実施予測期間に相当するウィンドウ制御タイマ117の満了値としてはそれぞれの方向の切替時共に1secに設定されている。
【0056】
ここで、「それぞれの切替方向にてこれまでに実施したInter−RATハンドオーバにおける最新値履歴を最新値エントリ群として管理して各値を集計し、その集計値を元に決定した値である設定値」に関して説明する。各Inter−RATハンドオーバ実施時に最新値エントリは更新されるが、更新前の値は、それぞれ履歴として保存しておき、最新値エントリ群とする。本発明の移動通信装置は、ウィンドウ制御タイマ管理部116にて設定値をどのように決定するかの方法を規定しており、例えば、最新値エントリ群の中の最大値とする、平均値とする、期待値とする、最新値とする、などとする。設定値は、規定された方法に従って、最新値エントリ群の値を集計する。
【0057】
また、設定値を規定する他の方法としては、ハンドオーバコマンド受信時における最新値と、その時の位置情報とを併せてリスト化し、現在の位置に最も近い位置を示すエントリの値に設定する。あるいは、現在の位置の半径1km以内でのInter−RATハンドオーバ実施時の最新値エントリ群の最大値とする。などの方法が挙げられる。本例のLTE通信インタフェースからUMTS通信インタフェースへの切替では、例えば設定値の決定方法は、最新値エントリ群から得られる期待値の2倍および最大値のうち、大きい方をウィンドウ制御タイマ117の満了値とするよう規定したとする。最新値エントリ群データを集計した期待値が500ms、最大値が800msである場合には、500msの2倍と、800msの大きい方の1secを設定値としている。
【0058】
次いで、上記のように構成された無線通信装置の動作について説明する。
【0059】
図8は、移動通信装置において、Inter−RATハンドオーバを実施する際のフローを示す図である。
【0060】
ステップS201では、移動通信装置が、移動通信網から所定の周期で定期的に特定の通信インタフェースの接続品質を測定し、測定後に所定のタイミングで移動通信網にその測定結果を送信するように構成されている。そして、移動通信装置は、所定の周期で、各々の通信インタフェースにおける受信電界強度などの測定を実施し、その測定結果をメジャーメントレポートメッセージとして移動通信網に送信するとともに、測定結果をメジャーメント処理部106内の測定結果テーブルに保持する。また、移動通信装置は、メジャーメント開始時刻をウィンドウ制御タイマ管理部116内の記憶領域に記憶する。
【0061】
ステップS202では、移動通信装置は、メジャーメント処理部106内の測定結果テーブルに測定結果を保持し、その測定結果に基づいて、図9に示すInter−RATハンドオーバ予測判定を行う。図9については、後述する。
【0062】
ステップS203では、Inter−RATハンドオーバ実施条件を満たすか否かを判定する。
【0063】
ステップS204では、ステップS202で得られた測定結果に基づいて、Inter−RATハンドオーバ実施条件を満たすと判定された場合(S203:YES)、ハンドオーバ実行予測部107は、ウィンドウ制御タイマ管理部116にTCPウィンドウを制御する期間を規定するウィンドウ制御タイマ117を活性化するように指示する。そして、ウィンドウ制御タイマ管理部116は、ウィンドウ制御タイマ管理部116に記憶されている現在使用中の通信インタフェースに対応する設定値にタイマ満了値を設定する。その後、ウィンドウ制御タイマ117は、計時を開始する。
【0064】
なお、ステップS203において、Inter−RATハンドオーバ実施条件を満たさないと判定された場合(S203:NO)、次のメジャーメントタイミングにてステップS201の処理を実行する。
【0065】
ステップS204では、ウィンドウ制御タイマ117が活性化され、計時が開始される。
【0066】
ステップS205では、ウィンドウ制御タイマ管理部116が、輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115で管理されている現在使用中のそれぞれのウィンドウサイズを輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115のそれぞれのウィンドウサイズテーブルに記憶する。さらに、ウィンドウ制御タイマ管理部116は、輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115にそれぞれのウィンドウサイズを同テーブルに格納されているハンドオーバ実施予測期間の設定値に設定するよう、TCPプロトコル処理部112に指示する。
【0067】
これにより、TCP−DATA送信時の輻輳ウィンドウおよびTCP−ACK送信時の広告ウィンドウは、ハンドオーバ実施予測期間の設定値を使用して送信されることになる。
【0068】
ステップS206では、ウィンドウ制御タイマ117の計時中に移動通信網が送信した受信フレームをLTE通信インタフェース101またはUMTS通信インタフェース102のいずれかを介して移動通信装置が受信すると、移動通信装置は、送受信フレーム処理部104にて受信フレームの解析を行い、受信信号がハンドオーバコマンドであるか否かを判定する。
【0069】
ステップS207では、ハンドオーバコマンドを受信した場合(S206:YES)、ハンドオーバコマンドをハンドオーバコマンド処理部105に渡し、メジャーメント処理部106に記憶されている測定結果をハンドオーバ条件記憶部108に渡す。ハンドオーバ条件記憶部108は、ハンドオーバ条件記憶部108内のハンドオーバ実施条件テーブルに測定結果を測定時刻情報と共に記憶する。このとき、ハンドオーバ実施条件テーブルには、移動通信装置の位置情報や、移動通信網から取得した基地局負荷情報等を併せて記憶してもよい。
【0070】
ステップS208では、ハンドオーバコマンド処理部105が、ハンドオーバコマンドを受信したこと、どのインタフェースからどのインタフェースへの切替かを示す情報、およびハンドオーバコマンドの受信時刻をウィンドウ制御タイマ管理部116に通知する。そして、ウィンドウ制御タイマ管理部116では、この通知を受けると、ウィンドウ制御タイマ117の計時を停止するとともに、通知された情報に基づいてメジャーメント開始時刻からハンドオーバコマンドの受信時刻までの時間を計算し、ウィンドウ制御タイマテーブルに最新値のエントリを記憶する。また、ウィンドウ制御タイマ管理部116では、前述のようにこれまでの切替インタフェースごとに最新値のエントリをリスト構造にて保持しており、該当するインタフェースの最新値エントリ群に基づいて、ウィンドウ制御タイマ117の満了値を決定して更新する。満了値は、例えば、最新値エントリ群の中の最新値とする、期待値とする、最大値とする、などの方法で決定される。また、他の方法としては、ハンドオーバコマンド受信時における最新値と、その時の位置情報とを併せてリスト化し、現在の位置に最も近い位置を示すエントリの値に設定する、などの方法が挙げられる。
【0071】
ステップS209では、ウィンドウ制御タイマ管理部116が、輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115のそれぞれにウィンドウサイズの再設定を指示し、それぞれのウィンドウサイズを使用するLTE通信インタフェース101またはUMTS通信インタフェース102のいずれかに応じた値に再設定する。ここで、再設定値は、例えば、ウィンドウサイズテーブル中の、切替後の通信インタフェースに対応する初期値に設定する、あるいは、ハンドオーバ実行前に使用していたウィンドウサイズ値×切替後インタフェースの通信能力(Mbps)/切替前インタフェースの通信能力(Mbps)から得られる値に設定する、などの方法が挙げられる。
【0072】
ステップS210では、ウィンドウ制御タイマ管理部116は、ハンドオーバ中の広告ウィンドウサイズ設定値が0であるか否かを判定する。
【0073】
ステップS211では、ハンドオーバ中の広告ウィンドウサイズ設定値が0である場合(S210:YES)、TCPプロトコルの規定によりTCPサーバ側でTCP通信が一時停止されているため、移動通信装置は、広告ウィンドウサイズ値を再設定した値にしてTCP−ACKを送信する。
【0074】
このとき、再設定した値とは、ハンドオーバHOコマンドを受信した場合の処理ではステップS209にて再設定した値を、ウィンドウ制御タイマが満了した場合の処理では後述するステップS214にて再設定した値に相当する。
【0075】
一方、ステップS213では、ステップS206でハンドオーバコマンドが受信されなかったと判定され、かつ、ステップS212でウィンドウ制御タイマ117が満了したと判定された場合、すなわちハンドオーバコマンドを受信しないうちにウィンドウ制御タイマが満了した場合(S212:YES)、ウィンドウ制御タイマ管理部116は、ハンドオーバ条件記憶部108に、メジャーメント処理部106から測定結果を取得するように通知する。そして、ハンドオーバ条件記憶部108は、ハンドオーバ予測をしたが実際にハンドオーバが行われなかった条件として、ハンドオーバ未実施条件テーブルに、測定結果を格納する。このとき、ハンドオーバ未実施条件テーブルには、移動通信装置の位置情報や、移動通信網から取得した基地局負荷情報等を併せて記憶してもよい。なお、ウィンドウ制御タイマ117が満了していないと判定された場合(S212:NO)、ステップS206へ戻る。
【0076】
次に、ステップS214では、ウィンドウ制御タイマ管理部116が、輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115に、ウィンドウ制御タイマが満了したことを通知する。そして、輻輳ウィンドウ制御部114および広告ウィンドウ制御部115は、それぞれのウィンドウサイズをハンドオーバ予測により変更する前のウィンドウサイズ値に再設定し、ステップS210に進む。
【0077】
ハンドオーバ予測により変更する前のウィンドウサイズ値に再設定することにより、異種網ハンドオーバ予測後、異種網ハンドオーバ実施要求を受信しない場合のデータ転送量抑制を停止することができるため、通信が低スループットにて継続実行されることを防ぐことができる。
【0078】
図9は、図8に示すInter−RATハンドオーバ予測判定処理(S202)のフローを示す図である。
【0079】
ステップS301では、Inter−RATハンドオーバ予測処理において、ハンドオーバ実行予測部107が、ハンドオーバ条件記憶部108に記憶されているハンドオーバ未実施条件テーブル内を参照し、現在の条件と類似する情報がないかを判定する。ここで、類似条件の判定の一例としては、利用インタフェースのエントリが同一、かつ、位置情報のエントリの差分が半径1km以内の場合、あるいは、利用インタフェースのエントリが同一、かつ、利用可能インタフェースに示されるインタフェースの受信電界強度のエントリの差分が1dBm以内である場合、などの条件にて類似していると判定する例が挙げられる。
【0080】
類似条件がハンドオーバ未実施条件テーブル内に存在する場合(S301:YES)、Inter−RATハンドオーバが発生しないと予測され、ステップS202のハンドオーバ予測判定処理は、終了する。
【0081】
ステップS302では、類似条件がハンドオーバ未実施条件テーブル内に存在しない場合(S301:NO)、ハンドオーバ実行予測部107は、ハンドオーバ条件記憶部108に記憶されているハンドオーバ実施条件テーブル内を参照し、現在の条件と類似する情報が存在するか否かを判定する。ここで、類似条件の判定の一例としては、利用インタフェースのエントリが同一、かつ、位置情報のエントリの差分が半径1km以内の場合、あるいは、利用インタフェースのエントリが同一、かつ、利用可能インタフェースに示されるインタフェースの受信電界強度のエントリの差分が1dBm以内である場合、などの条件にて類似していると判定する例が挙げられる。
【0082】
ステップS308では、類似条件がハンドオーバ実施条件テーブル内に存在する場合(S302:YES)、Inter−RATハンドオーバが発生すると予測し、ハンドオーバ予測判定処理(S202)を終了する。
【0083】
ステップS303では、類似条件がハンドオーバ実施条件テーブル内に存在しない場合(S302:NO)、現在使用中の通信インタフェースがUMTS通信インタフェース102かLTE通信インタフェースかを判定する。
【0084】
ステップS304では、UMTSインタフェース102が使用中であると判定された場合(S303:YES)、ハンドオーバ実行予測部107は、メジャーメント処理部106に記憶されている測定結果を参照し、LTE通信インタフェースによるLTE受信品質が良好か否かを判定する。
【0085】
LTE受信品質が良好でないと判定された場合(S304:NO)、LTE通信インタフェース101へのハンドオーバは行われないため、Inter−RATハンドオーバ予測処理を終了する。ここで、LTE受信品質が良好であるか否かは、例えば、直前の測定結果においてLTE通信インタフェース101における受信電界強度が、ある閾値を超えている場合、あるいは、LTE通信インタフェース101がUMTS通信インタフェース102の受信電界強度より大きい場合、LTE受信品質が良好であると判定することができる。
【0086】
ステップS305では、LTE受信品質が良いと判定された場合(S304:YES)、自移動通信装置が高速移動中であるか否かを判定する。ここで、高速移動中であるか否かは、例えば、GPS等で計測される位置情報と位置情報測定時間幅とから計算する、モビリティエリア更新頻度から予測する方法や、各測定タイミングにおける前回測定値との差分の大きさから判定する方法等がある。
【0087】
高速移動中であると判定された場合(S305:YES)、サービスエリアがスポット的に展開されているLTE通信インタフェース101へのハンドオーバは行われないため、Inter−RATハンドオーバ予測処理を終了する。
【0088】
ステップS307では、高速移動中でないと判定された場合(S305:NO)、ハンドオーバ実行予測部107は、Inter−RATハンドオーバが発生すると予測し、Inter−RATハンドオーバ予測処理を終了する。
【0089】
ステップS306では、LTE通信インタフェース101を使用中の場合(S303:NO)、LTE通信インタフェース101によるLTE受信品質が良好であるか否かを判定する。
【0090】
LTE受信品質が良好であると判定された場合(S306:YES)、UMTS通信へのハンドオーバは行われないため、ハンドオーバ実行予測部107は、Inter−RATハンドオーバ予測処理を終了する。
【0091】
ステップS307では、LTE受信品質が良好でないと判定された場合(S306:NO)、ハンドオーバ実行予測部107は、UMTS通信インタフェース102へのハンドオーバが発生すると判定し、Inter−RATハンドオーバ予測処理を終了する。
【0092】
なお、本実施の形態における、Inter−RATハンドオーバ予測処理においては、LTE通信のサービスエリアがスポット展開であり、UMTS通信のサービスエリアが面展開されていると仮定してInter−RATハンドオーバ予測を行ったが、LTE通信のサービスエリアが面展開されている場合は、高速移動中か否かの判定(S305)をしなくともよい。
【0093】
なお、本実施の形態における、Inter−RATハンドオーバ予測処理においては、受信電界強度によってInter−RATハンドオーバ予測を行ったが、同一基地局に無線接続される移動通信装置の数や、同一基地局内に無線接続される移動通信装置が実施している通信量などの情報を移動通信装置にて測定し、これらの情報に基づいてInter−RATハンドオーバ予測を行ってもよい。また、同一基地局に無線接続される移動通信装置の数や、同一基地局内に無線接続される移動通信装置が実施している通信量などの情報を移動通信網から移動通信装置へ通知し、移動通信装置は、これらの情報に基づいてInter−RATハンドオーバ予測を行ってもよい。この場合、例えば、現在使用中の通信インタフェースにおいて他移動通信装置によるデータ送信の総量が著しく多くなった場合にInter−RATハンドオーバが発生すると判定することができる。
【0094】
また、本実施の形態におけるInter−RATハンドオーバ予測処理においては、受信電界強度によってInter−RATハンドオーバ予測を行ったが、位置情報のみを用いて予測することもできる。すなわち、Inter−RATハンドオーバが発生した地点の近隣(例えば、半径1km以内)において、Inter−RATハンドオーバが発生すると判定することもできる。
【0095】
なお、本実施の形態では、通信インタフェースをLTE通信インタフェースおよびUMTS通信インタフェースを例に説明したが、GSM方式、GPRS方式、IEEE802.11方式(a、b、g、n方式)、IEEE802.15方式などの通信インタフェースを利用可能である。
【0096】
このように、本実施の形態によれば、Inter−RATハンドオーバ発生時において移動通信網におけるInter−RATハンドオーバ準備段階からTCPウィンドウサイズを小さくすることができるため、ハンドオーバ中のデータ通信量を抑制し、移動通信網間におけるデータ転送処理の負荷を抑えることができる。
【0097】
また、高速通信網から低速通信網へ移動する際には、高速通信網で大量に転送されていたデータの移動通信網間転送を抑制し、低速通信網における基地局においてデータ滞留によるデータ損失を避けることができる。これにより、ハンドオーバ前後で無線リンクの性能差が著しい場合にもネットワークの輻輳を回避することができる。
【0098】
なお、通信インタフェース制御部103(送受信フレーム処理部104、ハンドオーバコマンド処理部105、メジャーメント処理部106、ハンドオーバ実行予測部107、ハンドオーバ条件記憶部108)、TCP制御部(TCPプロトコル処理部112、輻輳ウィンドウ制御部114、広告ウィンドウ制御部115、ウィンドウ制御タイマ管理部116、ウィンドウ制御タイマ117)は集積回路であるLSIとして典型的には実現される。これらは個別に1チップ化されてもよいし、一部、または全てを含むように1チップ化されてもよい。
【0099】
ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、またはウルトラLSIと呼称されることもある。
【0100】
また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路又は汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)や、LSI内部の回路セルの接続や設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。
【0101】
さらには、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて機能ブロックの集積化を行ってもよい。バイオ技術の適応等が可能性としてありえる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る移動通信装置および移動通信方法は、ハードハンドオーバ処理における移動網における異種網ハンドオーバ処理中のデータ転送量を抑制することを可能にする装置および方法として有用である。
【0103】
すなわち、本発明にかかる移動通信装置および移動通信方法は、異なる特性を有する通信網間での異種網ハンドオーバ準備段階からの網処理低減、およびハンドオーバ中のデータロスを低減することが可能であり、LTE通信およびW−CDMAなどのUMTS通信の双方を利用できることが可能な携帯電話等に有用である。また、複数種の通信インタフェースを所有する情報通信端末、センサネットワーク端末、車載通信装置等の用途にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の一実施の形態における移動通信装置の構成を示す図
【図2】本実施の形態におけるメジャーメント処理部内の測定結果テーブルの例を示す図
【図3】本実施の形態におけるハンドオーバ条件記憶部内のハンドオーバ実施条件テーブルの例を示す図
【図4】本実施の形態におけるハンドオーバ条件記憶部内のハンドオーバ未実施条件テーブルの例を示す図
【図5】本実施の形態における輻輳ウィンドウ制御部内のウィンドウサイズテーブルの例を示す図
【図6】本実施の形態における広告ウィンドウ制御部内のウィンドウサイズテーブルの例を示す図
【図7】本実施の形態におけるウィンドウ制御タイマ管理部内のウィンドウ制御タイマテーブルの例を示す図
【図8】本実施の形態におけるウィンドウ制御のフローを示す図
【図9】本実施の形態におけるInter−RATハンドオーバ予測判定処理のフローを示す図
【符号の説明】
【0105】
101 LTE通信インタフェース
102 UMTS通信インタフェース
103 通信インタフェース制御部
104 送受信フレーム処理部
105 ハンドオーバコマンド処理部
106 メジャーメント処理部
107 ハンドオーバ実行予測部
108 ハンドオーバ条件記憶部
109 IP処理部
110 端末制御部
111 TCP制御部
112 TCPプロトコル処理部
113 TCPウィンドウ制御部
114 輻輳ウィンドウ制御部
115 広告ウィンドウ制御部
116 ウィンドウ制御タイマ管理部
117 ウィンドウ制御タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の無線通信インタフェースを搭載し、使用中の無線通信インタフェースから他の無線通信インタフェースへの切替を要求する異種網間ハンドオーバ実施要求を移動通信網から受信し、異種網間ハンドオーバを実施する移動通信装置において、
前記複数種の種無線通信インタフェースの接続品質をそれぞれ測定するメジャーメント処理部と、
前記接続品質に基づいて、前記異種網間ハンドオーバが実施されるか否かを予測するハンドオーバ実行予測部と、
前記ハンドオーバ実行予測部が、前記異種網間ハンドオーバが実施されることを予測する場合、使用中のウィンドウサイズを使用中のウィンドウサイズよりも小さいウィンドウサイズに設定するTCP制御部と、
を有する移動通信装置。
【請求項2】
計時を実施するウィンドウ制御タイマと、
前記ハンドオーバ実行予測部が、前記異種網間ハンドオーバが実施されると予測する場合、前記小さいウィンドウサイズでデータを送受信するハンドオーバ実施予測期間を決定し、前記ハンドオーバ実施予測期間を計時するように前記ウィンドウ制御タイマを管理するウィンドウ制御タイマ管理部と、
をさらに有し、
前記TCP制御部は、前記異種網間ハンドオーバ実施要求の受信に応じて前記ウィンドウ制御タイマが停止する場合またはハンドオーバ実施予測期間が満了した場合に前記ウィンドウサイズを最適化するためのTCPウィンドウ設定を行う、
請求項1記載の移動通信装置。
【請求項3】
前記異種網間ハンドオーバが実施された場合の各種無線通信インタフェースの接続品質と位置情報を記録し、かつ、前記ハンドオーバ実施予測期間内に異種網間ハンドオーバが実施されなかった場合の各種無線通信インタフェースの接続品質と位置情報を記録するハンドオーバ条件記憶部と、をさらに有し、
前記ハンドオーバ実行予測部は、各種無線通信インタフェースの接続品質および位置情報と、前記ハンドオーバ条件記憶部に記録されている各種無線通信インタフェースの接続品質および位置情報とを照会して異種網間ハンドオーバの実施を予測する、
請求項1記載の移動通信装置。
【請求項4】
前記ウィンドウ制御タイマ管理部が決定するハンドオーバ実施予測期間は、各種無線通信インタフェースの接続品質を測定してから異種網間ハンドオーバ実施要求を受信するまでの過去に集計した時間データに基づいて決定する、
請求項1記載の移動通信装置。
【請求項5】
前記異種網間ハンドオーバ実施予測期間中に前記移動通信網から前記異種網間ハンドオーバ実施要求を受信することなく、前記異種網間ハンドオーバ実施予測期が満了した場合に、前記TCP制御部は、前記小さいウィンドウサイズを前記異種網間ハンドオーバ実施予測期間前のウィンドウサイズに設定する、
請求項1記載の移動通信装置。
【請求項6】
前記TCP制御部は、前記異種網間ハンドオーバ実施予測期間後に前記移動通信網からの前記異種網間ハンドオーバ実施要求を受信した場合に、前記異種網間ハンドオーバ実施予測期間前のウィンドウサイズと、前記異種網間ハンドオーバ実施後に使用する無線通信インタフェースの能力とに基づいてウィンドウサイズを設定する、
請求項1記載の移動通信装置。
【請求項7】
複数種の無線通信インタフェースを搭載し、使用中の無線通信インタフェースから他の無線通信インタフェースへの切替を要求する異種網間ハンドオーバ実施要求を移動通信網から受信し、異種網間ハンドオーバを実施する移動通信装置の移動通信方法において、
複数種の無線通信インタフェースの接続品質をそれぞれ測定するメジャーメントステップと、
前記接続品質に基づいて、前記異種網間ハンドオーバが実施されるか否かを予測するハンドオーバ実行予測ステップと、
前記ハンドオーバ実行予測ステップが、前記異種網間ハンドオーバが実施されると予測する場合、使用中のウィンドウサイズを使用中のウィンドウサイズよりも小さいウィンドウサイズに設定するTCP制御ステップと、
を有する移動通信方法。
【請求項8】
ウィンドウ制御タイマにより計時を実施するステップと、
前記ハンドオーバ実行予測ステップが、前記異種網間ハンドオーバが実施されると予測する場合、前記小さいウィンドウサイズでデータを送受信するハンドオーバ実施予測期間を決定し、前記ハンドオーバ実施予測期間を計時するように前記ウィンドウ制御タイマを管理するウィンドウ制御タイマ管理ステップと、
をさらに有し、
前記TCP制御ステップは、前記異種網間ハンドオーバ実施要求の受信に応じて前記ウィンドウ制御タイマが停止する場合またはハンドオーバ実施予測期間が満了した場合に前記ウィンドウサイズを最適化するためのTCPウィンドウ設定を行う、
請求項7記載の移動通信方法。
【請求項9】
前記異種網間ハンドオーバが実施された場合の各種無線通信インタフェースの接続品質と位置情報を記録し、かつ、前記ハンドオーバ実施予測期間内に異種網間ハンドオーバが実施されなかった場合の各種無線通信インタフェースの接続品質と位置情報をハンドオーバ条件記憶部に記録するステップと、をさらに有し、
前記ハンドオーバ実行予測ステップは、各種無線通信インタフェースの接続品質および位置情報と、前記ハンドオーバ条件記憶部に記録されている各種無線通信インタフェースの接続品質および位置情報とを照会して異種網間ハンドオーバの実施を予測する、
請求項7記載の移動通信方法。
【請求項10】
前記ウィンドウ制御タイマ管理ステップが決定する前記ハンドオーバ実施予測期間は、各種無線通信インタフェースの接続品質を測定してから異種網間ハンドオーバ実施要求を受信するまでの過去に集計した時間データに基づいて決定する、
請求項7記載の移動通信方法。
【請求項11】
前記異種網間ハンドオーバ実施予測期間中に前記移動通信網から前記異種網間ハンドオーバ実施要求を受信することなく、前記異種網間ハンドオーバ実施予測期が満了した場合に、前記TCP制御ステップは、前記小さいウィンドウサイズを前記異種網間ハンドオーバ実施予測期間前のウィンドウサイズに設定する、
請求項7記載の移動通信方法。
【請求項12】
前記TCP制御ステップは、前記異種網間ハンドオーバ実施予測期間後に移動通信網からの異種網間ハンドオーバ実施要求を受信した場合に、異種網間ハンドオーバ実施予測期間前のウィンドウサイズと、異種網間ハンドオーバ実施後に使用する無線通信インタフェースの能力とに基づいてウィンドウサイズを設定する、
請求項7記載の移動通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−188666(P2009−188666A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−25623(P2008−25623)
【出願日】平成20年2月5日(2008.2.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】