説明

移動間仕切におけるシール装置のロック機構

【課題】 移動間仕切のシール装置におけるロック機構について、簡潔な構造であり乍ら確実なロック,アンロック動作をするロック機構を提供すること。
【解決手段】 移動間仕切パネル端部から出没するシール部材11に連結された折畳みリンク機構8,9を、当該リンク機構8,9に連結された作動ロッド5が進退させられることにより、前記シール部材11を前記パネル端部に関し進退させるようにした移動間仕切MVのシール装置Sにおいて、前記作動ロッド5の一端側、例えば後端側に、ロックバー22をそれに設けた穴を前記ロッド5に通し当該ロッド5の後退方向に傾けた姿勢で設け、姿勢を傾斜させたロックバー22の穴22aと作動ロッド5が齧り合うことによって当該作動ロッド5の後退動作を阻止する一方、前記ロックバー22の姿勢を直立させて作動ロッド5の後退動作を許容するようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動壁とも称されることがある移動間仕切りが備えたシール装置のロック機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より宴会場や多目的ホールなどの広大な空間には、その空間を仕切って使用するために移動間仕切りが設置されていることが多い。そして、この移動間仕切りには、空間を仕切るように移動配置したとき、仕切られた空間同士を気密に遮断するため、間仕切パネル(又は間仕切壁体)の上,下端、又は、いずれか一方の端部に間仕切パネルに出没自在にしたシール装置が設けられている。
【0003】
シール装置が間仕切パネルに対して出没自在であるのは、当該パネルの移動時、或は、格納時には、シール部材をそのパネルの内部に収容して移動などの邪魔にならないようにする一方、移動させて所定位置に配置したときには前記シール部材を突出させて床面や天井面に圧接させ、パネル端部と床面や天井面との間に生じている隙間をシール(封止)してしまうためである。
【0004】
上記のような出没式のシール装置は、特許文献1〜6などにより既によく知られているが、既説すればおよそ次の構成,機能を備えたものである。
即ち、間仕切パネルの正面幅と略同等の長さを有するシール部材を、例えばパネルの下端部のパネル内部に出没可能(又は上下方向に進退可能)に配し、該シール部材を、折畳みリンク機構を利用した支持リンクとバネによって支持することにより、シール部材が上下方向で進退してパネル内に没入したり、パネル外に進出できるようにしたものである。
【0005】
ここで、上記の折畳みリンク機構は介在させた引張りバネによって常時折畳み側に付勢されており、従って、シール部材は前記リンク機構に外力が作用しない限りパネル内部に没入した状態が保持されているが、当該リンク機構に、当該リンクが伸展する側に外力が作用すると、このリンク機構の伸展動作によってシール部材がパネル内部から床(又は天井)に向って進出するように形成されている。なお、リンク機構には、その機構を伸展,折畳みさせるための作動ロッドが連結して設けられている。
【0006】
シール部材の進出位置(床面や天井面への圧接状態)は、シール部材をパネル内に戻そうとする前記引張りバネのバネ力に抗してロックしなければならないが、移動間仕切分野の従来技術においては、簡潔な構造であり乍ら確実なロックオン,ロックオフ動作(ロック,アンロック動作ともいう)をするロック機構は見当たらない。
【特許文献1】特公昭52−43344号公報
【特許文献2】特許第3583891号公報
【特許文献3】特許第3046559号公報
【特許文献4】特許第2782155号公報
【特許文献5】実開昭60−94588号公報
【特許文献6】実公平7−6468号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、移動間仕切のシール装置におけるロック機構について、簡潔な構造であり乍ら確実なロック,アンロック動作をするロック機構を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明ロック機構の第一の構成は、移動間仕切パネル端部から出没するシール部材に連結された折畳みリンク機構を、当該リンク機構に連結された作動ロッドが進退させられることにより、前記シール部材を前記パネル端部に関し進退させるようにした移動間仕切のシール装置において、前記作動ロッドの一端側、例えば後端側に、ロックバーをそれに設けた穴を前記ロッドに通し当該ロッドの後退方向に傾けた姿勢で設け、姿勢を傾斜させたロックバーの穴と作動ロッドが齧り合うことによって当該作動ロッドの後退動作を阻止する一方、前記ロックバーの姿勢を直立させて作動ロッドの後退動作を許容するようにしたことを特徴とするものである。
このロック機構では、ロックバーの傾斜姿勢を直立させる操作部材を、当該ロックバーにロック解除部材を介して連繋させると共に、該操作部材を移動間仕切パネルの外部から操作できるように設けると、操作がしやすい。
【0009】
また、上記課題を解決することができる本発明ロック機構の第二の構成は、上記と同構成の移動間仕切のシール装置において、前記作動ロッドの一端側、例えば先端側にラック状のストップ歯を設けると共に、該ストップ歯に噛合すると前記作動ロッドの後退動作を阻止し、当該噛合が解かれると当該ロッドの後退動作を許容する係止歯を有するラッチ部材を、その係止歯を前記ストップ歯に対向させて設けたことを特徴とするものであってもよい。
【0010】
第二の本発明ロック機構でも、ラッチ部材の係止歯とラック状ストップ歯の噛合を解くための操作部材を、当該ラッチ部材に連繋させると共に、該操作部材を移動間仕切パネルの外部から操作できるように設けることにより、該操作部材を移動間仕切パネルの外部から操作することができる。
【0011】
第二の本発明ロック機構を適用する上記のシール装置では、折畳みリンク機構を常時折畳み側に付勢するように設けたバネは、そのバネ力が当該リンク機構を介して作動ロッドを常時後退側に向わせるように当該ロッドを付勢するようにした。これにより作動ロッドの後端側が間仕切パネルの側面から外部に露出した状態に保持される。
折畳みリンク機構は、前記バネ力の作用により、常時、折畳み側に姿勢が保持されるので、当該リンク機構に連結して支持されたシール部材は、常時、間仕切パネルの端部からその内部に後退(没入)した状態に保持される。
【0012】
上記の後退状態の作動ロッドを外力(例えば、人力)により押す(間仕切パネルの内部側へ押込む)と、バネ力に抗して折畳みリンク機構が伸展させられ、当該リンク機構に連結されているシール部材が間仕切パネルの端部内から外部へ向け進出して床面(又は天井面)に圧接させられてパネル端面と床(又は天井)の間の隙間をほぼ気密的に塞ぐ。
【0013】
隙間を塞いだ状態は、前記ロッドの押込み(進出)によって、ラッチ部材の係止歯とラック状のストップ歯を有するロック部材が進出するロッドと同動して進出移動するので、前記ロック部材が停止した位置で、係止歯と対向したストップ歯にその係止歯が噛合し、これによって前記バネ力による作動ロッドの後退が阻止されその位置に保持される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、移動間仕切パネル端部から出没するシール部材に連結された折畳みリンク機構を、当該リンク機構に連結された作動ロッドが進退させられることにより、前記シール部材を前記パネル端部に関し進退させるようにした移動間仕切のシール装置において、前記作動ロッドの一端側、一例として後端側に、ロックバーをそれに設けた穴を前記ロッドに通し当該ロッドの後退方向に傾けた姿勢で設け、姿勢を傾斜させたロックバーの穴と作動ロッドが齧り合うことによって当該作動ロッドの後退動作を阻止する一方、前記ロックバーの姿勢を直立させて作動ロッドの後退動作を許容するようにしたので、構造は至って簡潔であり乍らシール部材の進出状態を確実にロック,アンロック状態に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図を参照して本発明ロック機構の実施の形態例について説明する。
添付した図において、図1は本発明ロック機構の第2例を備えたシール装置が収装された移動間仕切パネルの下端部近傍の内部を表した正面図、図2は図1のパネルから取出したシール装置の正面図、図3は,図4は、図1におけるシール装置に対して配設された本発明ロック機構の部分を拡大した正面図で、図3はロック時、図4はロック解除(アンロック)時の正面図、図5はロック機構の操作部の別例の要部を示す正面図、図6,図7は本発明ロック機構の第1例において、図6はロック時、図7はロック解除時のロック機構を示す一部を断面にした正面図である。
【0016】
この明細書では、まず本発明ロック機構の第2例について、図1〜図5により説明する。図1において、1は移動間仕切MWを形成する正面視略縦形長方形を呈するパネルで、概略構造は、一例として四周に枠状をなすように配した左右の縦フレーム材1a,1bと上,下の横フレーム材1dの前後面に、外面材1cを張設した構成である。このようなパネル1は、図示しないが、天井に設けられた軌条(レール)に架装された走行輪(図示せず)に、当該パネルの上端部側が吊下支持されて吊り戸タイプで移動させる移動間仕切MWに形成されている。
【0017】
そして上記パネル1の下端部には、図1に例示するように、床Fと当該パネル1の下端の間に形成された隙間Gを塞ぐためのシール装置Sが、当該パネル1の内部に収装され設けられている。次に、このシール装置Sについて説明する。
【0018】
図1,図2において、シール装置Sは、まず断面が逆凹状のベースフレーム2を、パネル1における下端部側の横フレーム材1dの内部に不動に架設し、該ベースフレーム2の左右側端寄りに、当該フレーム2を横断する向きで配設された板状の軸受部材3,4を備えている。
【0019】
図1,図2のベースフレーム2における左右の軸受部材3,4には、それらの軸穴を貫通して作動ロッド5が進退可能に架設されている。そして、作動ロッド5は、図1における左端側5a(ロッド5の後端側5aともいう)が、パネル1の側面から適宜長さ外部に突出するように設けられ、このロッド5の右端側5b(ロッド5の先端側5bともいう)が軸受部材4から少し出しところで切れており、パネル1の内部に収まっている。
【0020】
前記ロッド5の右端側5b(先端側5bともいう)には、下面にラック状のストップ歯6aを形成したラック状のロック部材6が継手6bを介して接続されている。このロック部材6は、その長さ方向に直交する向きに水平な2本のガイドピン6cを備えている。前記2本のガイドピン6cは、ベースフレーム2の右側端部に取付けられたロック機構用のブラケット7に設けた2つの水平な長穴状ガイド7aに支持され、ロック部材6の水平移動を担保している。なお、7b,7cはブラケットの左右側寄りに設けた板状部材で、図の右側の部材7cは、後述する操作部材16を貫通させる軸穴7dを備えている。
【0021】
上記作動ロッド5の左,右側端寄りには、図1,図2において下り勾配の角度を付したリンク8a,9aが、それぞれの上端部を当該ロッド5にピボット連結(枢着点P1ともいう)されていると共に、当該リンク8a,9aの下端部に、シール部材11の上面側に配置されるシール部材ベース10が、ピボット連結(枢着点P2ともいう)されている。前記リンク8a,9aは、傾斜した平行姿勢で設けられている。
【0022】
上記リンク8aと9aのそれぞれの中点には、当該リンク8aと9aとそれぞれに交叉する傾き(姿勢)で長さがリンク8a,9aの略半分程度のリンク8bと9bの下端部がそれぞれピボット連結(枢着点P3ともいう)されていると共に、当該リンク8bと9bの上端部が不動のベースフレーム2に枢着P4(枢着点P4ともいう)されている。そして、前記リンクの枢着点P2とP4の間には、それぞれ引張りバネ8c,9cが張架され、枢着点P2とP4の間に、常時、引張力が作用するように設けられてている。これらの各部材8a〜8c、同9a〜9cにより、シール部材ベース10を、常時上方へ引上げるように作用する折畳みリンク機構8,9を形成している。
【0023】
而して、上記パネル1の右側端面から突出している作動ロッド5を、図1,図2の右方へ押込むと、当該ロッド5はリンク8aと9aの枢着点P1を伴って右方へ移動する。リンク8a,9aの枢着点P1が右方へ移動すると、そのリンク8aと9aは、移動しないリンク8bと9bによって枢着点P3で拘束されているから、枢着点P3を中心に立上るように姿勢変形する。リンク8aと9aが、立上る(垂直になる側に起立する)と枢着点P2とP4の隙間がバネ8cと9cのバネ力に抗して拡大(伸展)する。この拡大変形がシール部材ベース10を下方へ移動させることになる。
【0024】
このようにしてシール部材ベース10が下方へ変位(移動)しても、リンク機構8,9における枢着点P2とP4の間には、常時バネ8cと9cの引張力が作用しているので、ロッド5の押込み力を解除すると、つまり、手を放すと、リンク機構8,9は元の折畳まれた姿勢に戻ってしまう。
【0025】
そこで本発明では、作動ロッド5を図の右方押込んでリンク機構8,9を変形(枢着点P2とP4の隙間を拡げる)させ、シール部材ベース10を下方へ移動させて床Fに密着した状態を保持(又は維持)するために、前記ロッド5に連結したロック機構Lを設けたのである。次にこのロック機構Lについて図3,図4を参照して説明する。
【0026】
本発明ロック機構Lは、先に述べたラック状のストップ歯6aを有するロック部材6を利用したものであり、作動ロッド5の押込み移動によって同時に図の右方へ進出したロック部材6を、ロック位置に保持する(ロック状態にする)と共に、外部からの操作でそのロック状態を解除できるようにしたものである。
【0027】
ロック部材6をそのピン6cによって長穴7aに進退自在に支持したブラケット7には、ラック状のストップ歯6aに噛合したりその噛合が解かれる係止歯12aを有するラッチ部材12が、当該部材12と共軸一体の揺動レバー13に取付けられて軸13aにより回転可能に設けられている。ここで、ラッチ部材12の係止歯12aはその部材の回転周上に3枚設けられているが、ストップ歯12aを何枚設けるかは任意である。
【0028】
ラッチ部材12において係止歯12aのほぼ反対側の回転周上には、ラッチ部材12の回転角を規制するストッパとして作用する2つのストッパ突起12b,12cが適宜角度離間して設けられている。
【0029】
また、ラッチ部材12には、当該ラッチ部材12を常時反時計回り方向へ引張るバネ14が連繋して設けられており、ラッチ部材12が時計回り方向に角回転すると、バネ力で復元位置に戻されるようになっている。12dは当接ラッチ部材12の回転周上に設けたバネ受け、14aはブラケット7の壁に設けたバネ受けで、バネ14は両バネ受12dと14aの間に張架されてラッチ部材12に常時反時計回り方向の力を付勢している。上記バネ14の引張力は、ラッチ部材12と共軸一体の揺動レバー13にも及ぶ。
【0030】
一方、2つのストッパ突起12bと12cの間に位置するブラケット7の壁には、回転して来るストッパ突起12b又は12cに当接してラッチ部材12の回転をそこまでに規制するストッパピン15が立設されている。
【0031】
上記揺動レバー13には、ブラケット7に設けた右側の板状部材7cの穴に挿通して設けた操作部材としての操作ロッド16の先端側が、ピボット軸17を介して連結されている。このピボット軸17は、作動レバー13の下方に設けた縦向きの長穴によるガイド穴13bと、このガイド穴13bとクロスする向きでブラケット7の壁に設けた横向きの長穴による第2ガイド穴7dに、両穴内をスライド自在に軸支されている。
操作ロッド16の後端16a(図の右方)は、ロック機構Lのブラケット7の外部に突出しており、間仕切パネル1の右側面(縦フレーム材1bの側)から少し露出している(図1参照)。
【0032】
次に、以上のように構成された本発明ロック機構Lの作動例について説明する。
移動間仕切MV(そのパネル1)を図の右方へ走行させて、当該パネル1が行止まりの壁又は直前パネルの後端面に当接すると、作動ロッド5の後端側5a(左端側5a)が、前記壁又は先行パネルの後端面に押されるので、当該作動ロッド5が図の右方へ移動する。
【0033】
作動ロッド5の右動は、同時に折畳みリンク機構8,9のリンク8aと9aを起立する側に変形させ、このリンク8aと9aの起立動作によって、当該リンク機構8,9に連結されたベース10に取付けられてるシール部材11を床F側に押出して床Fに圧接する。これによってパネル1の下面の間に存在した隙間Gをシール部材11により埋める。
【0034】
シール部材11を下方へ降ろす上記作動ロッド右動は、該ロッド5の先端部5bに連結されたラック状のストップ歯6a付きのロック部材6を同時に右動させる。ロック部材6のストップ歯6aに噛合している係止歯12aを有するラッチ部材12は、その3枚の歯12aが、ロック部材6の移動方向(右動)に対して右方へ少しオフセットして位置付けられてるため、当該ロック部材6の右動は、ラッチ部材12が、一例として歯一枚分のピッチだけ時計回り方向に角回転するとバネ14のバネ力で元に戻るという動作(ラチェット動作)を繰り返しつつ許容される。
【0035】
しかし、ロック部材6が右動エンド(作動ロッド5が押込まれるエンド)に達して停止すると、リンク機構8,9のバネ8c,9cの引張力で、リンク8aと9aが起立側から倒れる側にバネ力を受けるので、作動ロッド5が左動する側に付勢され、その付勢力は当該ロッド5に連結されているロック部材6にも伝達される。
【0036】
リンク機構8,9のバネ8c,9cの引張力がロック部材6に伝達されて当該部材6を左動させようとすると、ロック部材6のストップ歯6aに係止歯12aで噛合しているラッチ部材12は、反時計回り方向に回転しようとするが、その回転はラッチ部材12に設けられているストッパ突起12bとストッパピン15の作用で阻止され、ロック部材6と該部材6と連結されている作動ロッド5が左動することはできなくなる。すなわち、作動ロッド5はロック・オンされて、シール部材11を押出して床Fに圧接させた状態を保持することができる。このロック・オン状態は、ラッチ部材12が揺動レバー13を介してバネ14により反時計回り方向に常時付勢されていることによって、外部の振動などにより解除されることはない。
【0037】
ロック状態にあるロック部材6のロックを解除して当該ロック部材6を左動させる、つまりロックを解いて作動ロッド5を左動させる(このことは、シール部材11を引上げることにもなる)には、操作ロッド16を、その後端部16aをパネル1の外側で左方へ押して揺動レバー13を時計回り方向に揺動(角回転)させる。
【0038】
揺動レバー13が揺動(角回転)すると、当該レバー13と共軸一体のラッチ部材12が時計回り方向に角回転して、そのストップ歯12aとロック部材6の係止歯6aとの噛合が解かれるので、ロック部材6と作動ロッド5は作動フリーの状態になる。
【0039】
作動ロッド5が作動フリーになると、リンク機構8,9のバネ8c,9cのバネ力によって当該リンク機構が折畳まれるので、リンク8a,9aにベース10を介して連結されているシール部材11は、元の位置に復帰することになる。
【0040】
上述した本発明ロック機構Lにおいて、ロック状態の解除は、操作ロッド16の押込み操作によって行ったが、本発明では図5に示す操作部の構成を採ることができる。
先の実施例では、パネル1の右側端1bの面から突出させた操作ロッド16の後端部16aを手でパネル内部側に押し込む操作をするようにしたが、この構成に代え、一例として図5に示す構成を採る。即ち、図5の構成では、操作ロッド16の後端部16aをパネル1の内部に収めた長さにして設けておき、この後端部16aを、操作ペダル18の踏込み動作で操作ロッド16を左動させるようにした。図5において、18aはペダル18の戻りバネ付き取付軸、18bは当該ペダル18のロッド押面、18cはペダルの踏面である。この構成により、踏面18cを足で踏み降ろすと、そのロッド押面18bが操作ロッド16の端部を押してロッドを左動させるので、先の例と同じ作用効果が得られる。
【0041】
以上に説明した本発明ロック機構Lにおいては、揺動レバー13と共軸一体に設けたラッチ部材12を、ラチェット歯車(又は爪車)(ここでは時計回り方向の回転のみ許容され、反時計回り方向には回転不能、歯車の歯が係止歯として機能する)に代えることができる。ラチェット歯車(又は爪車)を揺動レバー13に同軸的、又は、共軸一体に設けると、ストッパピン15やストッパ突起12b,12cが不要になる。なお、バネ14は揺動レバー13の戻しバネとして用いればよい。また、上記例のロック機構Lは、作動ロッド5の先端側5bの近くに設けたが、本発明ロック機構Lは作動ロッド5の後端側5aの近傍に配設することもできる。
【0042】
図1〜図5により説明した本発明の第2例のロック機構Lでは、作動ロッド5がシール動作のため図1〜図5の右方へ移動(進出)させられる構造で、当該ロッド5の進出側の端部(図の右端側)に、ロック部材6を始めとするロック機構Lの構成部材を配置したが、本発明では、作動ロッド5を左方へ移動させてシール部材11を降下させる構造の作動ロッド5、リンク機構8,9を備えたシール装置Sにロック機構を連繋させて設けることができる。この点について、図6,図7により説明する。なお、図6,図7において、図1〜図5と同一部材,同一部位には同一符号を用いている。
【0043】
図6,図7は、シール部材11を降下させるため作動ロッド5をパネル1の右側端面の外部で、図の左方へ押込むタイプのシール装置Sのロック機構L2を示しており、作動ロッド5の右端部近傍(図6,図7の右端側5bの近傍)に、上述の例(図3〜図5参照)とは異なる構成の本発明の第1例のロック機構L2を配設した例を示している。なお、図6,図7のロック機構L2が適用されるシール装置Sでは、作動ロッド5の右端側5bがパネル1の右側端面から外部に露出しているので、シール部材11のシール時の降下は、当該パネル1が移動終端(図1の左方向)に到達し停止しているとき、移動して来た次のパネル1の先端面で作動ロッド5の右端部5bを図の左方へ向け押込むことによりなされる。
【0044】
本発明ロック機構L,L2は、いずれもシール部材11を床面(天井面)に圧接させるため、作動ロッド5をパネル内に押込むように右方又は左方へ移動させ、このロッド5の移動(進出)によって床面Fに圧接されるシール部材11をロック機構の作用でその位置に保持し、シール部材11を元に戻すにはロック機構のロック状態を解除する操作をする点で、共通している。なお、シール時に作動ロッド5が図の左方へ移動するタイプでは、作動ロッド5とシール部材ベース10の間に介在させるリンク機構9,10は、図1,図2とは対称な向きの配置になる。
【0045】
図6,図7に例示した本発明による第1例のロック機構L2も、一例として図1のパネル1の内部において右側端寄りに位置する作動ロッド5の先端側5bに関連して設けられている。但し、図6,図7において、シール時の作動ロッド5の進出方向は左方である。
【0046】
図6,図7において、21は作動ロッド5の軸受部材4の手前側(図6,図7の右側)に外挿されて、先端(図の左方)が軸受部材4に受止められているコイルバネ、22は該バネ21の右端に当接又は結合させて、前記作動ロッド5のこの部位(ロック部位)の外径より大径に形成した上部の穴22aにおいて当該作動ロッド5に遊嵌したロックバーで、この穴付きロックバー22は、次に説明するロック機構L2のケース23に設けたロック解除部材24に連繋して設けられている。ここでの解除部材24は、前記ロックバー22の下端側が遊挿できる幅の断面略U字状を呈し、両端近くにU字状の溝を横断する2本のピン24a,24bが架設されている。
【0047】
ケース23は、平面視横長の略口字状の筒状(天,地が開放)に形成されており、前記ロックバー22近傍のベースフレーム2の立壁に取付けられ、当該ロックバー22がこのケース23の内部に収装されるように位置付けられている。
【0048】
ケース23に収装されるロックバー22は、当該ケース23の内部に設けた2本のガイドピン25aと25bに挟持された態様で支持される解除部材24が備えたピン24aと24bの間、及び、ピン25aと24bの間であって、ここでは、前面側の中間部がピン25aに当接すると共に、ピン24bの近くに、当該バー22の下部を位置付けて解除部材24に連繋して配置されている。
【0049】
ガイドピン25aと25bに挟まれた態様でケース23の内部に配置されたロック解除部材24は、その上端部(ピン24aの側)が、中間部をケース23の側端部近くに軸26aで支持したロック解除用のべダル部材26の上端部に、前記ピン24aで枢着して連結されることにより連繋されている。
【0050】
ロックバー22は、その穴22aの背面側がバネ21により作動ロッド5の右端側5bに向け押し出される力を常時受けている一方、当該バー22の穴22aより下方(ロックバー22の中間部)が、ガイドピン25aによってこのバー22の前面が支持されていることにより、図6に示した傾斜姿勢で保持されることになる。
【0051】
ロックバー22の上記傾斜姿勢により、作動ロッド5は図6の左方へは移動自由(押込み自在)であるが、図6の右方へは、傾いたロックバー22の穴22aが作動ロッド5を齧った状態にあるので、移動不能、つまりロック状態である。
【0052】
このロック状態を解くには、ケース23の右側面から突出しているペダル部材26を下方へ踏み込んで当該ペダル部材26の上半側を軸26aを中心に反時計回り方向に角回転させる(図7参照)。
【0053】
ペダル部材26の上半側が反時計回りの方向に角回転させられると、ピン24aで連結された解除部材24の上端側が、前記角回転に従ってケース23の右上方へ引上げられる。
【0054】
解除部材24が上記のように引上げられると、当該部材24のピン24bによってロックバー22の下部背面側が図7の右方へ向け押される。ロックバー22の背面に前記押出し力が作用すると、このバー22の前面側の中間部が、ガイドピン25aに当接しているので、当該バー22の上半側は、バネ21のバネ力に抗して前記ピン25aを中心に反時計回り方向に角回転させられる。
【0055】
ロックバー22の上半側がピン25aを中心に反時計回り方向に角回転すると、傾斜していた当該バー22の姿勢(図6参照)は、図7の起立(乃至直立)姿勢に変わるので、作動ロッド5は、ロックバー22の穴22aを自由に移動できる状態になる。即ち、ロック解除状態になる。
【0056】
ペダル部材26を踏んでいる力を解除すると、バネ21のバネ力によってロックバー22、解除部材24、ペダル部材26は元の位置(図6参照)に戻る。
【0057】
上述のように、図6,図7に示した本発明の第1例のロック機構L2は、ロックバー22の作用によって作動ロッド5を押込む(図6,図7の左方へ移動させてシール部材11を進出させる)作動はフリーであるが、押込まれた当該ロッド5が、シール装置Sが備えているバネ8c,9cのバネ力によって元に戻ろうとすると、ロックバー22の傾いた姿勢によってこのロッド5の戻り動作にロックバー22の穴22aによりロックが掛かるため、作動ロッド5は左方へ押込まれた位置でロックされてそこに保持される。
【0058】
このロック状態の解除は、上述したようにペダル部材26を踏んでロックバー22の姿勢を傾斜姿勢(図6)から垂直姿勢(図7)に変えればよい。上記の本発明ロック機構L2は、作動ロッド5の先端側5bの近傍に設けたが、本発明では当該ロック機構L2を作動ロッド5の後端側5aの近傍に設けることもできる。
【0059】
上記の本発明ロック機構L2は、シール装置Sのシール部材11の降下が移動して来る次のパネル1の先端面によって作動ロッド5の右端部が左方へ押込まれることによりなされる。つまり、シール部材11は、移動完了して停止状態にあるパネル1において降下させられるので、シール部材11が降下しつつパネル1が移動終端に至るタイプに比べると、シール部材11が全く床面Fをこすりつつ移動することがない。これによってシール部材11の早期の損耗を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は以上の通りであって、移動間仕切パネル端部から出没するシール部材に連結された折畳みリンク機構を、当該リンク機構に連結された作動ロッドが進退させられることにより、前記シール部材を前記パネル端部に関し進退させるようにした移動間仕切のシール装置において、前記作動ロッドの一端側、一例として後端側に、ロックバーをそれに設けた穴を前記ロッドに通し当該ロッドの後退方向に傾けた姿勢で設け、姿勢を傾斜させたロックバーの穴と作動ロッドが齧り合うことによって当該作動ロッドの後退動作を阻止する一方、前記ロックバーの姿勢を直立させて作動ロッドの後退動作を許容するようにしてシール装置のロック機構を構成したので、至って簡潔な構造ゆえに容易に作製することができ、従って、低コストで移動間仕切におけるシール装置のロック機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明ロック機構の第2例を備えたシール装置が収装された移動間仕切パネルの下端部近傍の内部を表した正面図。
【図2】図1のパネルから取出したシール装置の正面図。
【図3】本発明ロック機構の第2例におけるロック前の状態の拡大正面図。
【図4】本発明ロック機構の第2例におけるロック解除時の状態の拡大正面図。
【図5】第2例のロック機構の操作部の別例の要部を示す正面図。
【図6】本発明ロック機構の第1例のロック時の構造を示す一部を断面にした正面図。
【図7】本発明ロック機構の第1例のロック解除時の構造を示す一部を断面にした正面図。
【符号の説明】
【0062】
MV 移動間仕切
G 隙間
S シール装置
L 第2のロック機構
1 パネル
2 シール装置Sのベースフレーム
3、4 軸受部材
5 作動ロッド
6 ロック部材
7 ロック機構Lのブラケット
8,9 折畳みリンク機構
10 シール部材ベース
11 シール部材
12 ラッチ部材
13 揺動レバー
14 バネ
15 ストッパピン
16 操作ロッド
17 ピボット軸
18 操作ペダル
L2 第1のロック機構
21 コイルバネ
22 ロックバー
23 ケース
24 ロック解除部材
25a,25b ガイドピン
26 ペダル部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動間仕切パネル端部から出没するシール部材に連結された折畳みリンク機構を、当該リンク機構に連結された作動ロッドが進退させられることにより、前記シール部材を前記パネル端部に関し進退させるようにした移動間仕切のシール装置において、前記作動ロッドの一端側に、ロックバーをそれに設けた穴を前記ロッドに通し当該ロッドの後退方向に傾けた姿勢で設け、姿勢を傾斜させたロックバーの穴と作動ロッドが齧り合うことによって当該作動ロッドの後退動作を阻止する一方、前記ロックバーの姿勢を直立させて作動ロッドの後退動作を許容するようにしたことを特徴とする移動間仕切におけるシール装置のロック機構。
【請求項2】
ロックバーの傾斜姿勢の直立は、直立させる操作部材を、当該ロックバーにロック解除部材を介して連繋させ、かつ、該操作部材を移動間仕切パネルの外部から操作できるように設けた請求項1のシール装置のロック機構。
【請求項3】
移動間仕切パネル端部から出没するシール部材に連結された折畳みリンク機構を、当該リンク機構に連結された作動ロッドが進退させられることにより、前記シール部材を前記パネル端部に関し進退させるようにした移動間仕切のシール装置において、前記作動ロッドの一端側にラック状のストップ歯を設けると共に、該ストップ歯に噛合すると前記作動ロッドの後退動作を阻止し、当該噛合が解かれると当該ロッドの後退動作を許容する係止歯を有するラッチ部材を、その係止歯を前記ストップ歯に対向させて設けたことを特徴とする移動間仕切におけるシール装置のロック機構。
【請求項4】
ラッチ部材の係止歯とラック状ストップ歯の噛合を解くための操作部材を、当該ラッチ部材に連繋させ、かつ、該操作部材を移動間仕切パネルの外部から操作できるように設けた請求項3のシール装置のロック機構。
【請求項5】
折畳みリンク機構は、当該機構を常時折畳み側に付勢するように設けたバネのバネ力がそのリンク機構を介して作動ロッドを常時後退側に向わせるように作用するようにした請求項1〜4のいずれかのシール装置のロック機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−202248(P2008−202248A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−36991(P2007−36991)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】