説明

穀粒乾燥機

【課題】乾燥作業工程の中で合理的な操作で追加乾燥を行えるようにすることにある。
【解決手段】穀粒乾燥機は、貯留室(2)に張込まれた穀粒を循環しつつ乾燥部(3)に乾燥熱風を供給する乾燥循環運転により目標とする設定水分値まで乾燥処理する運転制御部(19)と、穀粒の張込スイッチ(14)、乾燥スイッチ(16)、排出スイッチ(17)、停止スイッチ(18)の各操作スイッチを備えて構成され、上記運転制御部(19)は、乾燥循環運転を行って目標とする設定水分値まで乾燥処理して自動停止した後、排出スイッチ(17)を操作する前に乾燥スイッチ(16)を操作すると、前記目標とする設定水分値まで乾燥処理する乾燥循環運転時よりも低い設定温度の追加乾燥用の設定温度により乾燥処理するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留室に張込まれた穀粒を循環させつつ乾燥部で順次熱風乾燥する穀粒乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には乾燥部の燃焼量を低減した追加乾燥運転の機能を備え、この追加乾燥運転を指示することにより、通常の循環乾燥運転の終了後における乾燥穀粒の仕上げ水分値を若干低下させる技術が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−223483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では追加乾燥のためのスイッチを設けるか、乾燥スイッチを2回連続操作すると追加乾燥としているが、前者の別途専用スイッチを設けることは操作盤のスイッチが増加して操作盤のスイッチや画面レイアウトがし難くなる。また、後者の乾燥スイッチを連続操作する方法は誤操作につながりやすい。
【0004】
本願発明は、乾燥作業工程の中で合理的な操作で追加乾燥を行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、貯留室に張込まれた穀粒を循環しつつ乾燥部に乾燥熱風を供給する乾燥循環運転により目標とする設定水分値まで乾燥処理する運転制御部と、穀粒の張込スイッチ、乾燥スイッチ、排出スイッチ、停止スイッチの各操作スイッチを備える穀粒乾燥機において、上記運転制御部は、乾燥循環運転を行って目標とする設定水分値まで乾燥処理して自動停止した後、排出スイッチを操作する前に乾燥スイッチを操作すると、前記目標とする設定水分値まで乾燥処理する乾燥循環運転時よりも低い設定温度の追加乾燥用の設定温度により乾燥処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明による穀粒乾燥機は、通常の乾燥循環運転の終了後に排出スイッチを操作する前に再度乾燥スイッチを操作すると追加乾燥開始とすることで、通常の乾燥と追加乾燥の誤動作をし難くすることができる。
また、追加乾燥専用のボタンを設けなくて良いため、コスト減になり、また、操作盤のレイアウトをし易くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
穀粒乾燥機は、その内部構造を表す正面図および側面図をそれぞれ図1、図2に示すように、その機枠1の内部に上から貯留室2、乾燥部3、集穀室4の順に形成し、その外周部に設けた昇降機5の駆動によって穀物を循環させながら、バーナ6の燃焼と吸引ファン7とにより発生する熱風を乾燥部3で浴びせて乾燥する公知の形態である。乾燥部3の穀粒出口には正逆に回転しながら所定量の穀物を流下させる繰出ドラム8を備え、その繰出し穀粒を昇降機5に通じる集穀室4の下部移送装置9に受け、昇降機5の上部側に接続する上部移送装置10で貯留室2の拡散盤11に供給することにより、張込み穀粒が貯留室2の全面に均一に堆積貯留される。貯留室2に設けた張込量測定器2aは、張込み穀粒の堆積上面高さ位置を測定することにより張込量を把握することができる。
【0008】
バーナ6および昇降機5をはじめとする穀粒循環機構等は、運転制御に必要な制御プログラムや各種データ等を記憶するメモリを備えるコンピュータによって行なわれる。即ち、操作盤12には、その制御盤見取図を図3に示すように、液晶形態の表示部13、13aを設け、この表示部13、13aの下縁に沿って押しボタン形態の張込・通風・乾燥・排出の各運転用スイッチ14〜17、及び停止スイッチ18、シャッタスイッチ5sを配置して構成する。
【0009】
内蔵の制御部19は操作盤12のスイッチ情報や乾燥機機枠1各部に配設したセンサ類からの検出情報等を受けて所定の演算処理により、バーナ燃焼量の制御、穀粒循環系の起動・停止制御、表示部13、13aの表示内容制御等を行う。上記操作盤12のスイッチ類は、張込・乾燥・排出・通風の各設定のほか、穀物種類、乾燥目標の設定水分(仕上げ水分)、張込量、タイマ増・減等を設定できる。
【0010】
(制御処理)
上記構成の穀粒乾燥機の運転制御は、貯留室2に張込まれた穀粒を循環しつつ乾燥部3に乾燥熱風を供給する乾燥循環運転により乾燥目標水分まで順次乾燥処理する運転制御部19を備えて構成される。この運転制御部19は、1粒水分計20等の穀粒水分値計測手段によって目標とする設定水分値まで乾燥処理し、必要により、追加乾燥するべき調整水分値の設定により追加の乾燥循環運転を行う「追加乾燥」を行う。
【0011】
上記運転制御部19について詳細に説明すると、制御構成ブロック図を図4に示すように、上記操作盤12を有する制御ボックスに内蔵する運転制御部19には上記スイッチ類からの設定情報のほか、水分計20の検出情報、昇降機5の投げ出し部における穀粒検出情報、熱風温度検出情報等が入力される。一方出力情報としては、バーナ6の燃焼系信号、例えば燃料供給信号,その流量制御信号、あるいは上下移送螺旋10,9、昇降機5、ロータリバルブ(繰出ドラム)8等の穀粒循環系モータ制御信号、吸引ファン7のモータ制御信号、操作盤12への表示出力等がある。
【0012】
上記構成の穀粒乾燥機における運転制御部19の制御処理については、籾等の穀粒の張込みの後、貯留室2に張込まれた穀粒を循環しつつ乾燥部3に乾燥熱風を供給する乾燥循環運転をすることにより目標とする設定水分値で乾燥処理を終了し、また、乾燥部3の乾燥熱風の温度制御により設定の乾燥速度に沿う乾燥循環運転を可能に構成した上で、上記目標の記設定水分値までの乾燥循環運転による乾燥処理の後に、追加乾燥するべき調整水分値が設定された場合は、循環穀粒の一巡時間の整数倍に定めた追加乾燥時間について、この追加乾燥時間と上記調整水分値とによって定まる乾燥速度に沿って乾燥処理可能に構成する。
【0013】
上記構成とすることにより、穀粒乾燥機は、張込穀粒について目標とする設定水分値まで乾燥処理し、その後に追加乾燥のために調整水分値が設定されると、循環穀粒の一巡時間の整数倍に定めた追加乾燥時間について、追加乾燥時間と調整水分値とによって定まる乾燥速度に沿う乾燥循環運転により乾燥処理を行う。
【0014】
具体的には、自動停止後に追加乾燥分の調整水分値を設定する。「追加乾燥」と通常乾燥との振り分けは、通常乾燥により目標とする設定水分値で自動停止の後に、「張込」または「排出」のスイッチを押していな場合を「追加乾燥」と判定する(図6参照)。
次いで、自動検出または設定の張込量によって穀粒の一巡に要する循環時間を算出し、この循環時間の整数倍の追加乾燥時間について、この追加乾燥時間と設定された調整水分値とによって定まる乾燥速度である乾減率と対応する熱風温度に燃焼制御を行う。
【0015】
例えば、張込量が5000kg、循環量が7500kg/h、設定の調整水分値が0.5%の場合は、1循環に40分かかるので、2循環で0.5%(80分で0.5%)乾燥するとして1時間の乾減率を0.4%/h(細かくは0.38%/h)となるはずの熱風温度に設定し、80分の乾燥運転後に停止する。このような乾燥制御により、自動乾燥された状態で少しだけ追加乾燥したい場合において、機体内の穀粒は全体が2循環し、一様に乾燥することができるので、追加乾燥によって水分むらが多くなる事態を防止することができる。
なお、通常の乾燥循環運転の自動停止の後、通風スイッチ15を操作した後に乾燥スイッチ16を操作しても追加乾燥とする。
【0016】
また、当初の目標の水分値に達して自動停止したときに、バーナー部冷却(特に、遠赤外機の場合は放射体の冷却)で機体内の穀粒は通風冷却されている部分と、冷却されずに高い穀温のままの部分があり、この温度差によって穀温補正が困難で差異が大きくなることがあり、このような状況で、1循環しないで追加乾燥を終わった場合は、逆に水分むらが大きくなるという問題があった。
【0017】
この問題を解決するための制御処理として、籾等の穀粒の張込みの後、貯留室2に張込まれた穀粒を循環しつつ乾燥部3に乾燥熱風を供給する乾燥循環運転をすることにより目標とする設定水分値で乾燥処理を終了し、また、乾燥部3の乾燥熱風発生のための燃焼熱量制御により時間当たりの設定の燃焼量に沿って乾燥循環運転可能に構成した上で、上記目標の設定水分値までの乾燥循環運転による乾燥処理の後の追加乾燥するべき調整水分値の設定により、循環穀粒の一巡時間の整数倍に定めた追加乾燥時間について、張込量と上記調整水分値とによって定まる乾燥排出するべき調整除水量に見合う調整燃焼量から上記追加乾燥時間によって定まる時間当たりの燃焼量によって乾燥処理可能に構成する。
【0018】
上記構成による穀粒乾燥機は、張込穀粒について目標とする設定水分値まで乾燥処理し、その後に追加乾燥のために調整水分値が設定されると、循環穀粒の一巡時間の整数倍に定めた追加乾燥時間について、張込量と調整水分値とによって定まる乾燥排出するべき調整除水量に見合う調整燃焼量から追加乾燥時間によって定まる時間当たりの燃焼量によって乾燥処理を行う。
【0019】
具体的には、目標水分値までの乾燥処理による自動停止後に追加乾燥分の調整水分値を設定すると、自動検出または設定の張込量と調整水分値とによって定まる除水率(燃料1kg当たりに除水できる水の量、通常10)をもとに必要な調整燃焼量を算出し、また、張込量と循環能力より求めた1循環時間の整数倍の追加乾燥時間(ふつうは1,2循環程度)について、除水量に見合う調整燃焼量から追加乾燥時間によって定まる時間当たりの燃焼量に固定して乾燥処理する。
【0020】
例えば、張込量が5000kg、循環量が7500kg/h、設定の調整水分値が0.5%、除水率が10の場合は、必要燃料が2.5kg(3.1リットル)、1循環時間が5000/7500h(40分)となるので、40分か80分で3.1リットルを燃焼するように燃焼制御する。時間当たり燃焼量は追加乾燥では少ない方がよいので、3.1リットル/80分として2.33リットル/h(燃料ポンプ制御値7.8msec)で80分の乾燥運転で停止する。この追加乾燥により、25kgを除水し、約0.5%の乾燥となる。
【0021】
上記追加乾燥により、目標水分値で乾燥が自動停止した時は放射体の冷却で一部の穀粒が冷却されており、穀温が一様でないことから水分値の誤差が見込まれる状況で、機体内の穀粒のすべてを整数回の循環によって一様に乾燥することができるので、循環途中で一部分だけ乾燥して水分むらが増えるという事態を回避することができる。
【0022】
(水分計補正)
次に、遠赤付き穀粒乾燥機の水分計穀温補正について説明する。
集穀室設置型の遠赤外線乾燥機においては、熱風型乾燥機の穀温上昇と異なる部分があるので、異なる乾燥制御を要する。異なる部分としては、集穀室4に放射体が設置され、この放射体が高温になると、乾燥部を通過した穀粒は、集穀室4で加温されたあとで水分計20に入るので、追加乾燥開始時に冷却されている部分の穀温は急速に上昇し、測定時の乾燥部穀温で補正すると大きな誤差を生じる。遠赤機においては、穀温の検出位置が乾燥部3であるが、穀温は乾燥部3を通過後の集穀室4で上昇するので、水分計20に取込み時は穀温が検出値より高くなるケースがあり、それによる補正で過乾燥になるケースがある。
【0023】
このような問題は、穀温の検出位置が好ましくはないことによるものであるが、乾燥部3を通過後に安定して検出できる位置がなく、現状は乾燥部3の排風温度より算出している。このため、穀温が安定している状況では問題ないが、追加乾燥や乾燥後の通風時等、乾燥部通過後に穀温が変化する状況では、水分の穀温補正が不適切で過乾燥になる。この問題を解決するために、追加乾燥開始時に排風温度が気温に近い(一定値以内の差)場合、穀温を燃焼量に応じて高い側に補正する。ただし、放射体が高温となるまでの時間は補正しない。
このような補正処理により、上記問題を解決することができる。
【0024】
(追加乾燥時の水分計補正)
次に、水分計に誤差がある場合または高めの水分値で一旦止めて仕上げ乾燥する追加乾燥時の水分計穀温補正について説明する。
従来は、乾燥後の穀温が高く、乾燥中は乾燥部の穀粒温度を直接または間接に測定もしくは算出により求めて補正しているが、追加乾燥時においては、乾燥終了時のバーナー部冷却(ポストパージ)のため均一な穀温にはなっていない。特に遠赤外機においては、穀温が熱風機に比し高く、また、放射体冷却のため20分程度冷却するので、ざっと半分がある程度冷却され、残りが冷却されない状態で循環が停止する。
【0025】
この場合、追加乾燥開始直後は、冷却されていない部分の穀粒が乾燥部にあり、この穀温で補正しているが、乾燥開始直後は放射体が暖まっておらず、乾燥機放射体が暖まるまで(約20分)の間は(排風温度+外気温度)/2を穀温として補正する。(従来どおり高い穀温として補正すると補正後の水分値が低くなり、追加乾燥開始後すぐに停止して追加乾燥にならない。)
【0026】
追加乾燥をするケースは、機外に取出した穀物サンプルをユーザーが水分を確認して追加乾燥するので、通常0.5%程度以上未乾燥の場合に実施する。この場合、1時間程度の乾燥が必要で、上記20分程度は補正がずれても逆に高めにずれた方が主旨からいって都合が良く、上記のようにすることにより、補正がずれても水分値が高めにずれることとなる。
【0027】
遠赤機では、通常の乾燥中の穀温は排風温度に等しいものとして算出し、穀温1℃で約0.1%の水分補正がされ、10℃ずれると1%の差異が発生するので、仕上げ水分値としては重要な要因である。そして、遠赤機においては、場合により仕上がり間際の穀温は40℃近くになることもあり、この場合2%も低く補正されている。追加乾燥時この乾燥部の穀温で補正すると、乾燥初期には上述のごとく放射体が暖まっておらず、実穀温は直後の通風時と同様に、乾燥部温度を排風温度として(乾燥部温度+外気温度)/2に近く、このケースでは外気温度を20℃とした場合、従来より水分値を1%高く補正して直ぐには停止せず、20分経過後に従来の穀温算出に戻すので、乾燥しすぎることもない。
【0028】
(遠赤外線乾燥機の乾燥制御)
遠赤外線乾燥機の乾燥制御は、従来は、最大燃焼量、最小燃焼量は燃料ポンプの制御パルス幅を規定することで制限し、張込量、乾燥設定等によって決まる熱風温度で燃焼量を制御しているが、風量等が集合ファン等で変化すると供給エネルギ量(乾燥量)が変化し、場合により胴割れすることがある。これは、遠赤放射体の放射量が絶対温度の4乗に比例し、温度と供給エネルギの関係がリニヤでなく、また、風量の変動により供給エネルギ量が変動することによるもので、乾燥速度が速過ぎた場合に発生する。
【0029】
この問題を解決するために、熱風温度を決めている張込量、乾燥設定、穀物種類などの各設定状態により、限度とする燃焼量を算出する算出手段と制御手段を設ける。例えば、通常の乾燥速度「ふつう」では、燃焼量は1ton当たり1〜2リットル毎時くらいが上限であり、限度リミットとしては、乾燥速度「ふつう」「籾」の例で1.2リットル毎時(1kg/h)/tonくらいに設定し、これに相当する燃料ポンプの制御値を越えないようにリミット制御する。また、乾燥速度が「はやい」「おそい」に応じてこのリミットを変える。
【0030】
熱風温度センサは、埃が付着して低く検知したり、特性が悪く精度が低くて検出値にずれを生じた場合に、また、機体後方の排風ダクトの曲がりや施設等で集合ファンを追加したことによる風量変化があった場合に、燃焼量が予定より多くなったり少なくなったりして限度を超えることにより、時によって胴割れするという問題を解決することができる。
【0031】
(遠赤機の追加乾燥制御)
従来、遠赤外線乾燥機で仕上がり停止後に少し未乾燥で追加乾燥をする場合において、通常の0.5%程度の乾燥追加で時間にして1時間足らず(1循環あまり)であるが、その間に、遠赤機では放射体が暖まるのに時間を要し、熱風温度制御をしても、燃焼量バランスして熱風温度が安定するまでに燃焼量が安定時に比してかなりオーバーシュートすることにより一旦大きくなり、燃焼量が大きく変動することにより、燃焼量が大きくなった箇所ではその部分のみ乾燥が進み、他の箇所ではそれに比してそれほど進まないことから、逆に水分差を拡大させる傾向があった。
【0032】
上記問題の解決のために、張込量、乾燥設定、穀物種類等熱風温度(燃焼量)を決定する項目要因の設定状況により、通常の設定温度より低い温度(燃焼量換算で6,7割程度)に追加乾燥時のみ設定し、この取扱いは、乾燥自動停止後、張込、排出操作をしないで再度乾燥を行う場合を追加乾燥とするコントローラの認識により適用する。
例えば、乾燥設定が「ふつう」、気温が20℃の条件において、張込量が5の場合の36℃を31℃、張込量が8の場合の42℃を37℃、張込量が10の場合の45℃を40℃として追加乾燥時のみ設定温度を下げて乾燥し、燃焼量を抑え、ゆっくり徐々に乾燥すると同時に乾燥箇所による熱風温度差を少なくしている。
【0033】
上記制御処理により、通常の追加乾燥は、せいぜい1時間程度までなので、通常より設定温度を低くし、乾燥速度が遅くなってもあまり温度差(燃焼量の差異)を生じないようにすることにより、水分差を拡げるような不具合がなくなる。また、燃焼量を抑制するので、穀温も従来より比較すれば上昇が抑制され、仕上がり停止時の穀温も低く、後作業の籾摺り時にも都合がよい。
このように、上記構成の穀粒乾燥機は、温度設定の自動切り替え処理の追加のみで通常の乾燥制御処理構成を生かした運転制御部により、調整水分値の追加指示のみの運転操作により、追加乾燥としての特段の措置を要することなく、乾燥部の燃焼変動による水分むらを回避して均一な追加乾燥が可能となる。
【0034】
(別の追加乾燥制御)
次に、遠赤外線乾燥機の別の追加乾燥制御について説明する。
遠赤外線乾燥機では、放射体が暖まるまでに時間を要し、放射体が冷却された状態から乾燥運転すると、燃焼量がオーバーシュートして一旦予定より燃焼量が多くなる過燃焼状態が一定時間あり、その後徐々に温度が上がり、燃焼量が減ってくる。放射体温度が一旦上昇したそのときに乾燥部にあった穀物は温度が急激に上がり、水分値としては高めに補正され、過乾燥になる虞があった。追加乾燥ではこの状態は、燃焼量が多い部分は乾燥が進み、また、このときに温められた穀物の穀温上昇は大きく、排風温度から算出する穀温と大きく異なる。
【0035】
この問題を解決するために、追加乾燥時は最大燃焼量に制限を設け(概ね半分程度)あまり急激に穀温が上がらないようにする。具体的には、大燃焼時は遠赤放射体の放射率があがるため、穀温が1パスで8℃も上昇する場合もあり、この場合、水分計取込みサンプルと算出穀温の差異が8℃(水分換算で0.8%)発生することになる。この差異を減じるために、追加乾燥時には燃焼量を抑える。結果として、燃焼量の変動も生じるため、追加乾燥後の穀温も安定する。このように、追加乾燥時の燃焼量を制限し、放射体温度を極端に上昇させないことで穀温の急激な上昇を抑え、オーバーシュートおよび急激な穀温上昇による穀温補正の差異を改善することにより穀温補正を安定させることができる。
【0036】
(穀温による乾燥制御)
次に、追加乾燥時における穀温による乾燥制御について説明する。
特に遠赤外線放射体を集穀室内に設置した遠赤外線乾燥機においては、燃焼たち上がり時に一旦燃焼量が安定時よりオーバーシュートし、放射体温度が高温となり、その時集穀室に流下した穀物の穀温が急激に上昇し、それまでに乾燥してきて安定した穀温、水分となっていたものが、一部分の穀温の急激な上昇と、その部分のみが乾燥が進むのが速く、逆に水分むらを増すことがあった。
【0037】
この問題を解決するために、追加乾燥時の燃焼量を検出し、張込量、乾燥速度設定、穀物種類により定まる通常の設定温度(燃焼量)より少ない量(7割程度)に制限する。この燃焼制御は、乾燥自動停止後に、排出スイッチを押すことなく再度乾燥スイッチを押した場合に適用することにより、乾燥開始から燃焼量(熱風温度)が安定するまでの変化を遅くすることができるので、追加乾燥における均一な乾燥が可能となる。
【0038】
(熱風乾燥機の追加乾燥補正)
次に、熱風乾燥機の追加乾燥時の水分計穀温補正について説明する。
乾燥を終了した時点では穀温は高く穀温の補正が重要であるが、水分計に取込む穀粒は少なく、水分計で測定する穀物の穀温を検出するのは不可能であることから、乾燥部を通過し穀層を通過することによって穀粒温度に近づいた排風温度と熱風温度から穀温を推定算出している。一方、追加乾燥時は、乾燥停止後の経過時間により、乾燥網部にあった穀物の穀温は徐々に気温に近づき、貯留部にある穀物は乾燥停止時の穀温である。
【0039】
追加乾燥では、乾燥停止水分に近く、穀温の補正がずれると水分値の精度が悪くなり、うまく追加乾燥ができない(乾燥部の穀温で補正しているため、追加乾燥開始直後で熱風温度が上がっておらず、乾燥部穀温より実際に測定する穀物温度は下がっている場合がある)。概ね穀温が5℃違うと0.5%水分がずれるので、追加乾燥時の水分値としては重要である。
【0040】
そこで、乾燥開始直後の外気温と排風温度(バーナー着火前)を比較し、外気温に近い場合(冷却されている場合)は乾燥部の乾燥網の部分の穀粒が水分計に到達するまでの間の時間について(初回の測定)は、その排風温度(開始直後の)で補正する(2回目以降は乾燥中の補正と同一)。
この場合において、排風温度が外気温度よりも一定以上高い場合は、乾燥網の部分が水分計に到達するまでの時間(初回の測定)は、(外気温度+排風温度)/2を穀温として補正する。以降は乾燥中の補正とする。
【0041】
例えば、追加乾燥開始時の気温20℃、そのときの排風温度(乾燥網部の穀温)を35℃とすれば、開始直後の水分補正は(20+35)/2を穀温として補正することで、35℃として補正するよりも水分値は0.75%(1℃で0.1%とした場合)高く算出する。(一般的には乾燥は夜中に終了し、朝確認すると乾燥部3の穀温のみ低下し、貯留部2の穀温は乾燥終了時の穀温をそのまま保持しており、乾燥網の部分のみ補正を変え、以降の測定では、乾燥中の穀温補正で行えばよい)
【0042】
(ポストパージ)
次に、遠赤外線乾燥機の乾燥終了時のポストパージについて説明する
遠赤外線放射体を内設した遠赤外線乾燥機は、乾燥停止時に放射体温度が高くその冷却が必要である。そのために20分〜1時間程度の固定もしくは選択による冷却時間をとってポストパージしている。しかし、張込量によっては循環途中で通風されない部分があり、通風が進んで穀温が低下したところと低下してないところができて乾燥後の通風での水分確認や追加乾燥時に穀温が一定とならない。例えば、満量では約半分の穀物が冷却されてその部分の穀温は外気温度に近づくが、残りは依然として高いままである。
【0043】
この状態で通風または追加乾燥して水分を測定すると、穀温は乾燥部3にある部分の穀温で、測定する穀物はエレベータ部5にある穀物となったり、異なった穀温で補正するケースが発生し、補正精度が悪い。このように、穀温を検出または算出してる場所と実際の水分を測定する場所での穀温差異から、水分値の温度補正精度が悪化するという問題がある。その影響は、穀温1℃で0.1%程度の補正となるため、場合によってはこのために1%近い誤差となり、仕上がり時の水分誤差としては許容できないレベルである。
【0044】
この問題を解決するために、冷却時間を張込量に応じて変え、1循環相当の時間(張込量/循環能力)の通風冷却を行う。このように、張込量に応じて全量1循環するまで同じように冷却することから、ポストパージ終了後はほぼ均一な穀温になる。なお、ポストパージ中に排風温度を測定し、その温度と外気温度を比較し、その差が一定値に到達したら停止してもよい。
【0045】
(袋取り制御)
次に、袋取り制御について説明する。
袋取りでの排出作業時に自動排出シャッタ付きのものでは、排出作業と排出シャッタ5aの開閉が連動しており、袋が一杯になる都度、停止スイッチ18を押していた。このため、排出時に駆動するファン7、エレベータ5、バルブ8等がその都度起動停止を繰り返し、シーケンス駆動で余分な時間をとるばかりか、起動時の騒音、突入電流による機器の消耗が増えるなどの問題がある。
【0046】
具体的には、袋取り作業では、通常30kg袋に乾燥穀物を入れるので、大型の機械では100回とか150回のシャッタ開閉が必要になり、この回数本機の起動停止を繰り返すとモータは起動時の突入電流で過熱するばかりでなく、リレーの接触面の荒れにつながり、機器耐久性に著しく問題となる
【0047】
この問題を解決するために、作業選択スイッチ(張込、通風、乾燥、排出)14〜17を設け、タッチパネル液晶のモニター13を設け、このモニター13に各種スイッチを表示し、その中に排出シャッタ5aのみ任意に(上記作業によらず)開閉できるスイッチ5sを設ける。このように構成することにより、排出作業スイッチ14〜17を押すと各伝動系モータが起動し、排出シャッタ5aが開き、液晶モニター部13にシャッタ開閉スイッチ5sを表示し、このスイッチ5sを押すことで排出シャッタ5aを任意に開閉することができる。
このように、シャッタモータの起動停止のみで負荷も小さく、電流容量も小さいため、排出時袋取りする場合、たびたび起動停止することなく、袋に取出すことができるとともに、起動停止による騒音も減らすことができる。
【0048】
(排出制御)
従来、排出スイッチ17を押すと、排出終了判定まで連続して排出しており、一方、排出部の斜視図を図5に示すように、乾燥機の排風による吸引風で排出パイプ5bから機内へ空気を吸入するため、この排出パイプ5bから吸い込む空気の影響で、排出量が少なくなると、特に軽い被害粒や籾殻類はなかなか排出完了せず、停止に時間がかかるし、早く止めると上記被害粒などが中途半端に残ることとなる。
【0049】
このように、排出時は乾燥機の吸入風でパイプ出口から空気を吸い込んでおり、この風のため、排出量が少なくなると穀物が機内または昇降機側へ吸い込まれ、いつまでも機内をまわることになり、排出終了近くでは排出する穀物の一部が排出パイプから落下せずに再度機内側または昇降機側に吸い込まれて排出終了に時間を要するという問題があった。
【0050】
上記問題を解決するために、排出時の流量の増減を検出できる検出機能(例えば、昇降機に設けた水分計20に一定時間で取り込まれる穀物粒数)と、その流量が規定量以下になると、一旦、排出シャッタ5aを閉じる判定装置および開閉機能と、この開閉機能により排出シャッタ5aを閉じた後、既定時間後シャッタ5aを開け、排出終了を判断して完了する機構とを設ける。
【0051】
上記構成により、排出終了が近づき、水分計20の取込み粒数から排出量が極端に減ったと判断すると、一旦シャッタ5aを閉じてパイプ5b内の空気を遮断し、少量の残量はシャッタ5aの上部にある排出漏斗部5cに溜めることで機内への戻りを防止し、排出完了までの時間を短くすることができる。このように、排出終了近くでは一部穀物がバラバラ排出パイプから出ているが、パイプ5bを通過する吸引風でとくに軽いしいな類がいつまでも排出完了せず、終了に時間を要するので、このときに排出シャッタ5aを一旦閉じると吸入風がなくなり、排出ジョウゴ5c上に溜まり(これで機内に戻らない)、一定時間後または終了判定によりシャッタ5aを開け、一気に残粒排出することにより、排出終了時間を短くすることができる。
【0052】
(乾燥速度による水分補正)
次に、乾燥速度による水分補正について説明する。
通常より乾燥速度がはやいと一粒穀物内部の水分勾配が急になり、抵抗を測定する抵抗式水分計では中心部の高水分の部分の抵抗が小さく、表面の部分が大きいこととなるので、検出としては高水分として検出し、過乾燥側にシフトすることとなっている。このように、穀粒1粒内の水分勾配は、乾燥速度が速くなるに従い大きくなる。
【0053】
一方、抵抗式水分計では、水分の高いところがあると、この部分の抵抗が小さく、全体の抵抗はこの部分で代表されることになるので、水分勾配の大小を生み出す乾燥速度を決定する乾燥設定により補正する。具体的には、乾燥速度の設定が「してふつう」を基準として、これよりはやい側、例えば「はやい」では−0.4%おそい側、「おそい」では+0.4%の補正をしておくことにより、水分移行が終わった後の水分に近づけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】穀粒乾燥機の内部構造を表す正面図
【図2】図1の穀粒乾燥機の内部構造を表す側面図
【図3】コントロールボックスの制御盤見取図
【図4】制御構成ブロック図
【図5】排出部の斜視図
【図6】通常乾燥と追加乾燥のフローチャート
【符号の説明】
【0055】
1 乾燥機機枠
2a 張込量測定器
2 貯留室
3 乾燥部
4 集穀室
5 昇降機(穀粒循環機構)
6 バーナ
7 吸引ファン
8 繰出ドラム
12 操作盤
13 表示部
14 張込スイッチ
16 乾燥スイッチ
17 排出スイッチ
18 停止スイッチ
19 運転制御部
20 水分計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留室(2)に張込まれた穀粒を循環しつつ乾燥部(3)に乾燥熱風を供給する乾燥循環運転により目標とする設定水分値まで乾燥処理する運転制御部(19)と、穀粒の張込スイッチ(14)、乾燥スイッチ(16)、排出スイッチ(17)、停止スイッチ(18)の各操作スイッチを備える穀粒乾燥機において、
上記運転制御部(19)は、乾燥循環運転を行って目標とする設定水分値まで乾燥処理して自動停止した後、排出スイッチ(17)を操作する前に乾燥スイッチ(16)を操作すると、前記目標とする設定水分値まで乾燥処理する乾燥循環運転時よりも低い設定温度の追加乾燥用の設定温度により乾燥処理することを特徴とする穀粒乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−198048(P2009−198048A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38530(P2008−38530)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】