説明

穀粒乾燥機

【課題】循環式穀粒乾燥機の張込運転において、張込穀粒の通風循環及び新規張込作業を円滑に行なう。
【解決手段】熱風循環乾燥工程と通風循環乾燥工程とに切り換え可能に構成する。コントローラにより次のように制御する。張込運転の昇降機を駆動した穀粒張込中に投入張込穀粒有無検出手段が張込投入穀粒無しを検出すると、繰出手段を駆動した通風循環乾燥に移行し、張込穀粒の通風循環中に投入張込穀粒有無検出手段が張込投入穀粒有りを検出すると、通風循環乾燥を停止し、繰出手段の駆動を停止した張込運転に移行する。そして、張込運転において通風循環乾燥を停止するときには、まず繰出手段を停止し、次いで水分計がサンプル穀粒の取り込み中止を検出すると、昇降機を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、循環式穀粒乾燥機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
循環式穀粒乾燥機において、張込穀粒が無くなったことを検出すると、貯溜室の張込穀粒を繰り出しながら通風循環し、穀粒品質の劣化を防止するものは、公知である(特許文献1)。
【特許文献1】特開2008−51398公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、循環式穀粒乾燥機において、貯溜室の張込穀粒を繰り出しながらの通風循環が終了し、次の張込作業を再開する際に昇降機の穀粒詰まりを防止し、張込作業を円滑に再開しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、上部の貯溜室(2)から下部の乾燥室(3)へ穀粒を流下循環させながらバーナ(5)の燃焼熱と外気の混合により生成した乾燥熱風を乾燥室(3)へ送り乾燥する循環式の穀粒乾燥機において、
前記乾燥室(3)の穀粒を下方の集穀室(4)に繰り出す繰出手段(10)と、該集穀室(4)に繰り出された穀粒又は張込穀粒投入口から投入された張込穀粒を貯溜室(2)に揚穀する昇降機(11)と、該昇降機(11)の揚穀穀粒からサンプル粒を取り込み穀粒水分値あるいは取り込み穀粒の有無を検出する水分計(26)と、張込穀粒の有無を検出する投入張込穀粒有無検出手段(SE7)をそれぞれ設け、外気とバーナ(5)の燃焼熱により生成された乾燥熱風を乾燥室(3)に供給する熱風循環乾燥工程と、外気のみを乾燥室(3)に供給する通風循環工程に切り換え可能に構成し、張込モードの穀粒張込中に前記投入張込穀粒有無検出手段(SE7)が張込投入穀粒無しの検出をすると、前記繰出手段(10)を駆動した前記通風循環工程に移行し、張込穀粒の通風循環中に前記投入張込穀粒有無検出手段(SE7)が張込投入穀粒有りを検出すると、前記通風循環工程及び繰出手段(10)を停止た張込モード運転を開始し、前記通風循環工程を停止するときには、繰出手段(10)をまず停止し、次いで、前記水分計(26)がサンプル穀粒を取り込まなくなると、前記昇降機(11)を停止するコントローラ(41)を設けたことを特徴とする穀粒乾燥機とする。
【0005】
前記構成によると、張込モードで繰出手段(10)を停止し昇降機(11)を駆動した貯溜室(2)への穀粒張込中に、投入張込穀粒有無検出手段(SE7)が張込穀粒の無しを検出すると、繰出手段(10)を駆動した通風循環工程に移行し、貯溜室(2)の穀粒を繰り出しながら外気を穀粒に浴びせる通風循環乾燥を開始する。また、穀粒の通風循環中に投入張込穀粒有無検出手段(SE7)が張込投入穀粒有りを検出すると、繰出手段(10)及び通風循環工程を停止し、昇降機(11)を駆動した張込投入穀粒を貯溜室(2)に揚穀する張込作業を実行する。また、張込モードにおいて穀粒を繰り出しながらの通風循環工程を停止するときには、まず繰出手段(10)を停止し、次いで水分計(26)がサンプル穀粒の取り込みをしなくなると、昇降機(11)を停止する。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明は、穀粒の張込作業中にも貯溜室(2)の穀粒の水分むらを低減し穀粒の品質劣化を防止すると共に、穀粒を繰り出しながらの通風循環工程が終了した後に張込作業を再開する際に、昇降機(11)の穀粒詰まりを防止し張込作業を円滑に再開することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
まず、図1及び図2に基づきこの発明を具備する循環式穀粒乾燥機の全体構成について説明する。
【0008】
1は乾燥機の機枠で、この機枠1内には貯溜室2、乾燥室3及び集穀室4を上方から下方に順次配設している。乾燥室3には穀粒流下通路9,9を複数形成し、左右穀粒流下通路9,9の左右一側にはバーナ5のバーナ風胴に通じる熱風室6,6を配設し、穀粒流下通路9,9の左右他側には吸引排気ファン7のファン胴に通じる排風室8,8を配設し、穀粒流下通路9,9の下端部にそれぞれ繰出バルブ10を設けている。
【0009】
また、排風室4における左右穀粒流下通路9,9の中間部に位置する中央排風室8には、遠赤外線放射体4aを配設している。この遠赤外線放射体4aは前後方向に沿う左右側板及び底板からなり遠赤外線放射塗料を塗布したもので、前後方向一端をバーナ5に対向させて、集穀室4の左右流下板上を流下する穀粒に遠赤外線放射熱を浴びせて、穀粒の乾燥を促進させるものである。また、この遠赤外線放射体4aの放射熱は、機体の前側及び後側から導入された外気と混合されながら上方の穀粒流下通路9,9を経て排風室8に流れるように構成している。また、前記繰出バルブ10の往復回転により、穀粒を所定量ずつ繰り出しながら流下させ、穀粒に熱風を浴びせて乾燥させる。
【0010】
なお、遠赤外線放射体4aの上方には屋根型の排塵板4bを設け、上方からの塵埃類の遠赤外線放射体4aへの落下を防止しながら、熱風と外気との混合熱風を左右両側に迂回して上方へ案内するように構成している。
【0011】
前記機枠1の外側には集穀室4の前後一側に集めた穀粒を貯溜室2に揚穀還元する昇降機11を立設している。この昇降機11内の上下の駆動プーリ12a及び従動プーリ12bにバケットベルト13を巻き掛け、集穀室4の底部に設ける下部搬送装置14により乾燥穀粒を前後一側に移送し、昇降機11により揚穀するように構成している。この昇降機11で揚穀された穀粒を上部搬送装置16の始端側に供給し、更に上部搬送装置16により横送して貯溜室2の上部中央部に配設する回転拡散板18に送り、貯溜室2内に拡散落下させるように構成している。
【0012】
前記昇降機11、下部搬送装置14、上部搬送装置16から構成されている穀粒循環系は、昇降機11の機枠上部に配設している昇降機モータ(図示省略)により駆動される。また、昇降機11における上下中途部の壁面には水分計26を設け、バケットベルト13の上昇行程と下降行程の間隔部に設けた取込み口(図示省略)からサンプル粒を取り込み、水分値を測定するように構成している。この水分計26は、例えば一対の電極ロール間でサンプル粒を1粒づつ圧縮粉砕し、その抵抗値を電気的に処理して一粒づつの水分値に換算する公知のものである。
【0013】
次に、乾燥機の通常乾燥制御について説明する。
張込ホッパ(図示省略)から昇降機11を利用して貯溜室2に所定量の穀粒を張り込む。次いで、穀粒種類、乾燥仕上げ水分値、乾燥速度、自動検出あるいは手動設定した穀粒張込量に応じた燃焼量にて燃焼制御して乾燥作業を行なう。貯溜室2内の穀粒は乾燥室3の穀粒流下通路9,9を流下中に熱風を浴びながら乾燥され集穀室4に流下する。乾燥された穀粒は下部搬送装置14で一側に移送され、次いで昇降機11により揚穀され、上部搬送装置16に引き継がれ再び貯溜室2に循環移送され、暫くの間調質作用を受ける。このような行程を繰り返しながら水分計による測定水分値が仕上水分値に到達すると、乾燥作業は終了する。
【0014】
次に、図3により乾燥機の操作盤31について説明する。
操作盤31の盤面には、穀粒の張り込みを開始する張込スイッチSW1、バーナ5の燃焼を開始し繰出バルブ10を駆動し乾燥作業を開始する乾燥スイッチSW2、貯溜室2内の穀粒を機外に排出する排出スイッチSW3、機体の各種駆動を停止する停止スイッチSW4、乾燥用穀粒種類を選択設定する穀粒種類設定スイッチSW5、仕上げ水分値を設定する水分値設定スイッチSW6、張込量の手動設定(「0」〜「7」)又自動検出(「自動」)を選択するダイヤル式の張込量設定スイッチSW7、乾燥時間を増加するタイマ増加スイッチSW8、乾燥時間を減少するタイマ減少スイッチSW9、水分補正スイッチSW10、手動で穀粒の水分値を水分計26で測定する手動測定スイッチSW11、熱風温度設定スイッチSW12、熱風温度調節スイッチSW13、乾燥速度設定スイッチSW14、初期乾燥時間設定スイッチSW15、休止時間設定スイッチSW16、予約乾燥入切スイッチSW17、点検入切スイッチSW18、排風ファン入切スイッチSW19、緊急停止スイッチSW20、ブザー停止スイッチSW21の各種操作スイッチ、及び、各種表示項目をデジタル表示する表示部32、乾燥機の各種異常を表示する異常表示モニタ33を設けている。
【0015】
次に、図4に基づき制御ブロック構成について説明する。
バーナ風胴25の上方に設けたコントロールボックス45(図1に示す)にはコントローラ(CPU)41を設けている。コントローラ41の入力側には、張込スイッチSW1、乾燥スイッチSW2、排出スイッチSW3、停止スイッチSW4、穀粒種類設定スイッチSW5、水分値設定スイッチSW6、張込量設定スイッチSW7、タイマ増加スイッチSW8、タイマ減少スイッチSW9、緊急停止スイッチSW20等を接続している。また、入力回路を介して外気温度センサSE1、熱風温度センサSE2、排風温度センサSE3、水分計電極温度センサSE4、水分センサSE5、張込量検出装置SE6、昇降機モータM3の負荷電流値を検出する負荷電流センサSE7等を接続している。
【0016】
また、コントローラ41の出力側には、出力回路を介して吸引排気ファンM1、昇降機モータM2、繰出バルブモータM3、バーナ駆動手段M4、水分計駆動手段M5を接続し、また、出力回路を介して各種表示項目のデジタル表示をする表示部32、乾燥機の各種異常表示用の異常表示モニタ33等を接続している。
【0017】
なお、コントローラ41のバーナ駆動信号は、燃料供給用電磁ポンプ(図示省略)のON/OFF信号及び大小供給信号、バーナ気化筒モータ(図示省略)の回転数指令信号、バーナファンモータ(図示省略)の回転数指令信号、イグナイタ(図示省略)の通電信号等があり、燃料供給量、燃焼空気供給量及び気化筒回転数を同調制御し、液体燃料を気化燃焼させる。
【0018】
また、乾燥作業中には、予め設定記憶されている熱風設定温度と熱風温度センサSE2の検出熱風温度とを比較し、その差が小になるように周期的にオンされる燃料供給用電磁ポンプ(図示省略)のオンタイム信号を長短に変更制御しながら乾燥作業をし、穀粒水分が目標水分値になると乾燥作業を停止する。
【0019】
また、図6に示すように、貯溜室2の側壁には、乾燥室3の穀粒流下通路9,9全体に穀粒が充填されている通常張込状態において、張込量の大小を示す「LV1〜LV7」の張込量表示がなされている。そして、この張込量表示「1〜7」は、張込量設定スイッチSW7の「1〜7」の設定スイッチ部と対応している。また、「LV0」は最小設定張込量を示し、張込量表示「LV1」に対応し、それより少なく穀粒流下通路9,9全体に穀粒が充填されていない少量張込状態に対応するのが、張込量設定スイッチSW7の設定スイッチ部「0」である。
【0020】
また、貯溜室2の中央上部に拡散装置18を配設するにあたり、中央部やや左寄りに配置し、少量張込の場合には、左側の穀粒流下通路9,9全体に穀粒が充填して張り込まれるが、右側の穀粒流下通路9,9には穀粒が下部にのみ充填して張り込まれる。
【0021】
次に、図5に基づき乾燥作業について説明する。
貯溜室2への穀粒張込作業が終了すると(ステップS1)、張込量設定スイッチSW7により張込穀粒量が手動で若しくは自動検出により設定される。そして、張込量設定スイッチSW7を「1」〜「7」に設定したときには、手動でその数値が張込量として設定したことになり通常乾燥制御がなされる。すなわち、乾燥スイッチSW2がONされると(ステップS9)、昇降機11、上部移送装置16及び拡散装置18の駆動が開始しされると共に、繰出バルブ10が駆動され、穀粒流下通路9,9で流下する穀粒に熱風を浴びせかけ集穀室4に繰り出される(ステップS4)。すると、集穀室4の底板に繰り出された穀粒はバーナ5の燃焼により温められた遠赤外線放射体4aの放射熱を浴びながら流下し、下部移送装置14に供給される。
【0022】
次いで、穀粒は下部移送装置14により昇降機11に移送され、再度貯溜室2及び乾燥室3に循環供給される。そしてこの循環中に昇降機11で揚穀中の穀粒から所定時間毎に所定粒数のサンプル粒が水分計26に取り込まれ、水分値が測定される。
【0023】
そして、設定乾減率や張込量に基づいてバーナ5の燃焼量が制御されながら乾燥作業が行われ(ステップS10)、水分計26の測定水分値が設定水分値に到達すると、乾燥作業が停止される(ステップS11)いわゆる通常乾燥制御が行なわれる。
【0024】
また、張込量設定スイッチSW7により張込穀粒量を0と設定し(ステップS2)、乾燥SWをONすると(ステップS3)、バーナ5が燃焼を開始すると共に、穀粒の循環も開始される(ステップS4)。そして、水分計26にサンプル粒が取り込まれたか否が判定され(ステップS5)、Noであると、乾燥機に「穀粒なし」と判定し、バーナ5と穀粒循環が停止し、乾燥作業が停止される(ステップS6)。
【0025】
また、Yesの場合には、乾燥機に「穀粒あり」と判定し、少量乾燥制御がなされる。すなわち、乾燥SWをONすると、バーナ5に所定量以下の燃料が供給される少量燃焼量で一定にした状態で燃焼され乾燥作業がなされる(ステップS7)。次いで、所定時間(例えば1時間)毎に「乾燥休止」と「熱風乾燥」とが交互に繰り返されながら乾燥され(ステップS8)、水分計26の測定水分値が設定水分値になると、乾燥作業が停止される(ステップS11)。
【0026】
また、張込量設定スイッチSW7を「自動」に設定すると、張込作業終了後に自動で張込量検出装置SE6が張込穀粒量の検出を開始し、張込穀粒量がLV1以上を検出すると、前述の通常乾燥制御に基づく乾燥制御を行なう(ステップS9〜11)。そして、張込穀粒量がLV1以下又は検出許容範囲を超えて検出できなかった場合には、前述の少量乾燥制御を行なう(S2〜)。
【0027】
前記構成によると、バーナ5の燃焼量を一定とすることにより、燃焼を安定させることができる。また、最低張込量以下の少量張込量で乾燥作業をする場合には、穀粒流下通路9,9に穀粒が十分に堆積されず、熱風室6から穀粒流下通路9,9へ流れた熱風の一部が穀粒に作用しないで排風室8に排出され、排風室8の近傍に配設されている熱風温度センサSE2に作用することなり、熱風温度センサSE2の検出温度と乾燥穀粒温度との相関関係が崩れ検出精度が低下し、適正な熱風温度制御ができなくなってしまう。しかし、バーナ5の燃焼量を小さくし一定することで、このような不具合を抑制することができる。
【0028】
なお、この最低穀粒張込量以下での少量張込量における乾燥工程のバーナの燃焼量を所定量以下の少量燃焼量(例えば燃焼量が1〜10の範囲で燃焼制御するとしたら2以下)か、あるいは、最小燃焼量のいずれかに一定にして燃焼することが望ましい。即ち、穀粒張込量が少ないために、バーナ5の燃焼量を抑制することにより、急激な乾燥による穀粒の胴割れ等の不具合を減少させることができる。
【0029】
そして、例えば1時間の設定時間の乾燥工程を実行すると、バーナ5及び繰出バルブ10を停止し、乾燥休止工程に移行する。この休止工程の間は穀粒内部の水分が穀粒の表面側に順次移行して乾燥が促進される。また、乾燥休止工程中には穀粒の循環をしないので、少量穀粒の多数回にわたる循環を防止し、穀粒の脱ぷや損傷を抑制することができる。
【0030】
また、乾燥休止工程中は吸引排気ファン7を停止することにより、遠赤外線放射体4aの温度低下を抑制し、乾燥休止工程中の穀粒の温度低下を抑制し、穀粒内部の水分移行を促進させることができる。
【0031】
また、穀粒が設定水分値に到達して乾燥作業が終了しバーナ5を停止した場合には、前記乾燥休止工程中とは異なり、バーナ5の停止後に吸引排気ファン7を設定時間(例えば20分)駆動し、遠赤外線放射体4aの冷却を促進するようにしている。
【0032】
次に、図7に基づき張込運転制御の実施例について説明する。
本制御が開始すると、オペレータが張込スイッチSW1をONし張込作業を開始する(ステップS21)。次いで、水分計26が昇降機11の穀粒の有無を検出し(ステップS22)、次いで、水分計26が穀粒無し検出をしたか否かを判定する(ステップS23)。水分計26が穀粒無し検出をすると(ステップS24)、繰出バルブ10の繰り出しを開始し(ステップS25)、外気を流下穀粒に浴びせる通風循環運転を開始する(ステップS26)。次いで、昇降機モータM2の負荷が設定値以上に上昇したか否かを判定し(ステップS27)、Yesであると、新たな張込穀粒ありと判定し(ステップS28)、繰出バルブ10を停止し、張込穀粒の張込作業に移行し(ステップS29)、前記ステップS2に戻る。
【0033】
また、昇降機モータM2の負荷が設定値以上に上昇したか否かを判定し(ステップS27)、Noであると、通風循環運転の停止条件(例えば、水分値、穀温が基準値以下になる)が満たされたか否かを判定し(ステップS30)、Noであると前記ステップS27に戻る。Yesであると、繰出バルブ10の駆動を停止し(ステップS31)、次いで、設定時間後に水分計26が穀粒無しを検出したか否かを判定し(ステップS32)、Yesであると、昇降機11を停止し(ステップS33)、Noであると、前記ステップS2に戻る。
【0034】
前記構成によると、張込モードにおいて穀粒を繰り出しながらの通風循環運転を停止する場合には、繰出バルブ10を停止した後にも昇降機11の駆動を設定時間継続し、設定時間の終了後に水分計26が穀粒無しを検出した後に昇降機11を停止するので、昇降機11を穀粒の残留のない状態で停止することができ、張込作業を再開する際に昇降機11の詰まりを防止し張込作業を円滑に再開することができる。
【0035】
また、昇降機モータM2の負荷が設定値以上に上昇したか否かを判定するにあたり、繰出バルブ10の駆動周期である「正転時間+停止時間+逆転時間+停止時間の合計時間」、あるいは、その半分の時間で負荷電流値を検出し、設定値以上か否かを判定すると、検出負荷電流値の検出が安定し、過負荷判定の精度を高めることができる。
【0036】
また、昇降機モータM2の負荷電流値が設定値以上に上昇したことを検出し、穀粒を繰り出しながらの通風循環に移行した後に、速やかに負荷電流値の検出を開始し、この検出値に基づき負荷の増加率を算出する。そして、基準増加率を超えた場合に、繰出バルブ10の駆動を停止し、張込投入穀粒の張込運転に戻るように構成してもよい。このように構成すると、検出負荷電流値の変動を把握しながら過負荷判定をするので、過負荷判定の精度を高めることができる。
【0037】
次に、図8に基づき乾燥機の排出制御について説明する。
穀粒乾燥機により高水分の小麦を乾燥する場合には、乾燥機内の一部が流下不良となり、循環している部分は乾燥が仕上がり設定水分値になり排出をすると、最後になって流下不良の乾燥遅れの部分が排出され、水分むらの不具合が判ることがある。この排出制御はこのような不具合に対応しようとするものである。
【0038】
本排出制御が開始されると、オペレータが排出スイッチSW3をONすると排出作業が開始し(ステップS41)、穀粒の排出作業をしながら乾燥穀粒全体の水分むら検出が開始し、各穀粒ブロックの平均水分値を算出する(ステップS42)。次いで、各張込穀粒ブロックの水分むらの差異が所定値以上か否かを判定し(ステップS43)、Noであると、排出を開始し、排出が終了すると(ステップS44)、乾燥機を自動停止する。
【0039】
また、各穀粒ブロックの平均水分値の差異が所定値以上か否かを判定し(ステップS43)、Yesであると、表示部32に「水分むら大きい」旨の不具合表示をし(ステップS46)、穀粒の排出をせずに乾燥機を停止する。この不具合表示を基にしてオペレータは穀粒の追い乾燥を実行し、水分むらの解消を図る(ステップS47)。
【0040】
前記構成によると、乾燥機内の流下循環状態の良好な部分は設定水分値になり排出されるが、一部の流下不良状態の部分の排出を開始されると、検出水分値から高水分値の水分むらが判り、排出を停止し水分むらによる不具合が表示される。従って、オペレータは乾燥機に残っている高水分値の部分だけを追い乾燥すればよく、追加乾燥時間を少なくしながら水分むらを解消することができる。
【0041】
次に、図9に基づき乾燥運転制御について説明する。
穀粒乾燥機の使い方として、夕方までにコンバインで収穫した穀粒を穀粒乾燥機に張り込み夜間に乾燥作業を行い、朝になると通風循環運転をしながら穀温の冷却を図ると共に、水分むらの確認をし、水分むらが解消していると、籾摺選別機で籾摺作業を開始するという一連の作業パターンがある。本乾燥制御は、このような作業パターンを自動化し、円滑に穀粒の乾燥作業を終了させようとするものである。
【0042】
仕上がり確認スイッチ(図示省略)を設け、このスイッチが押されると、乾燥仕上げ運転を開始する。図9に示すように、仕上がり確認スイッチを押すと(ステップS51)、吸引排気ファンモータM1及び繰出バルブモータM3がONし、張込穀粒量が一循環するまで通風循環運転を実行する(ステップS52)。その間に穀温の冷却をしながら、機内穀粒全体について所定時間毎に水分むら、平均水分値、水分むらの偏差値及び穀温を測定する(ステップS53)。次いで、水分むら、平均水分値、及び穀温が規定値を超えているか否かを判定し(ステップS54)、Noの場合には、表示部32に水分むら等の測定結果をグラフ表示し、乾燥結果の判定を「乾燥良好」と表示し、運転を停止する(ステップS55)。
【0043】
また、水分むら、平均水分値及び穀温が規定値を超えているか否かを判定し(ステップS54)、Yesの場合には、乾燥不具合の状況により、通風循環乾燥等の追い乾燥や水分むらの解消運転を実行し(ステップS56)、表示部32に水分むらの収束予定時間を表示し運転を停止する(ステップS57)。
【0044】
前記構成によると、乾燥仕上がり状態の確認を自動化することができ、次工程の籾摺作業を迅速に行なうことができる。
次に、乾燥運転制御の他の実施例について説明する。
【0045】
本制御は、乾燥運転における張込運転、通風循環乾燥運転、熱風循環乾燥運転及び排出運転の全工程において、自動運転を行なおうとするものである。
張込工程では、張込スイッチSW1がONすると張込作業を開始し、穀粒の張込をしていないときには、通風循環モードに自動的に移行し、張込穀粒を繰り出しながら通風循環乾燥をし蒸れを防止する。また、負荷電流センサSE7により張込穀粒の再度の投入を検出すると、繰出バルブ10を停止した通常の張込モードに移行し穀粒の張込をする。
【0046】
また、乾燥スイッチSW2がONすると、乾燥工程に移行し、熱風温度、穀物温度等の設定条件を標準的な条件に基づき設定し、標準乾燥運転を実行し、仕上げ水分値になると、乾燥作業を終了し、排出工程に移行する。排出工程では、仕上げ水分値に不具合があれば、その時点で排出を停止し、未乾燥の場合には残りの穀粒を自動的に前記乾燥行程の標準乾燥運転により再乾燥する。次いで、保存しているデータ(例えば、仕上げ水分値)があれば、仕上げ水分値の表示を保存している水分値データに基づき補正し、運転を停止する。
【0047】
前記構成によると、乾燥作業の全工程における自動運転が可能となり、オペレータは乾燥作業を楽に行なうことができる。
次に、遠赤外線放射体4aを備えた穀粒乾燥機の乾燥制御について説明する。
【0048】
図1及び図2に示すように中央排風室8に遠赤外線放射体4aを配設している穀粒乾燥機にあっては、バーナを着火した後に遠赤外線放射体4aが熱くなるまでに30分程度かかる。水分値の高い通常穀粒の乾燥開始時にはさほど問題にならないが、初期水分値分が低い場合や、追い乾燥をする場合には、バーナの着火後に熱風温度が急上昇すると、この部分で乾燥された穀粒は過乾燥になり、全体の水分むらが拡大するという不具合が発生することがある。
【0049】
本乾燥制御はこのような不具合に対応しようとするものであって、乾燥開始時の外気温度と熱風設定温度から燃焼開始時の加温度を算出し、加温度に基づき標準的な燃焼量にするための燃料ポンプの吐出量を算出、し燃焼を開始する。そして、燃料ポンプの吐出量が算出加温度に到達した時点で、燃料ポンプの吐出量を所定時間(例えば5〜10分程度)固定し、遠赤外線放射体4aの温度を安定させてから熱風温度制御に移行するものである。
【0050】
例えば、外気温度が20度C、熱風設定温度が50度Cの場合なら、加温度は30度Cである。30度Cの加温をするのに燃料を3.9リットル/時間必要とし、このときの燃料ポンプのオンタイム制御値が13mSecとすれば、乾燥開始から燃料ポンプのオンタイム制御値が13mSecに到達した時点で、例えば10分程度燃料吐出量を固定し、その後に検出熱風温度が設定熱風温度になるように熱風温度制御をすることにより、熱風温度の急上昇を抑制することができる。 前記構成によると、遠赤外線放射体4aの温度を安定させてから、燃料ポンプの吐出量を制御し熱風温度制御に入るので、熱風温度の急上昇を防止し、安定した熱風温度制御をすることができる。従って、穀粒の部分的な過乾燥を防止し、水分むらの拡大等の不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】穀粒乾燥機の切断側面図。
【図2】穀粒乾燥機の切断正面図。
【図3】操作盤の正面図。
【図4】制御ブロック図。
【図5】フローチャート。
【図6】少量張込状態を示す穀粒乾燥機の切断正面図。
【図7】フローチャート。
【図8】フローチャート。
【図9】フローチャート。
【符号の説明】
【0052】
1 穀粒乾燥機
2 貯溜室
3 乾燥室
4 集穀室
5 バーナ
6 熱風室
7 吸引排気ファン
8 排風室
9 穀粒流下通路
10 繰出手段
11 昇降機
26 水分計
41 コントローラ
SE7 投入張込穀粒有無検出手段(負荷電流センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部の貯溜室(2)から下部の乾燥室(3)へ穀粒を流下循環させながらバーナ(5)の燃焼熱と外気の混合により生成した乾燥熱風を乾燥室(3)へ送り乾燥する穀粒乾燥機において、
前記乾燥室(3)の穀粒を下方の集穀室(4)に繰り出す繰出手段(10)と、該集穀室(4)に繰り出された穀粒又は張込穀粒投入口から投入された張込穀粒を貯溜室(2)に揚穀する昇降機(11)と、該昇降機(11)の揚穀穀粒からサンプル粒を取り込み穀粒水分値あるいは取り込み穀粒の有無を検出する水分計(26)と、張込穀粒の有無を検出する投入張込穀粒有無検出手段(SE7)をそれぞれ設け、外気とバーナ(5)の燃焼熱により生成された乾燥熱風を乾燥室(3)に供給する熱風循環乾燥工程と、外気のみを乾燥室(3)に供給する通風循環工程に切り換え可能に構成し、張込モードの穀粒張込中に前記投入張込穀粒有無検出手段(SE7)が張込投入穀粒無しの検出をすると、前記繰出手段(10)を駆動した前記通風循環工程に移行し、張込穀粒の通風循環中に前記投入張込穀粒有無検出手段(SE7)が張込投入穀粒有りを検出すると、前記通風循環工程及び繰出手段(10)を停止た張込モード運転を開始し、前記通風循環工程を停止するときには、繰出手段(10)をまず停止し、次いで、前記水分計(26)がサンプル穀粒を取り込まなくなると、前記昇降機(11)を停止するコントローラ(41)を設けたことを特徴とする穀粒乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−127551(P2010−127551A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303660(P2008−303660)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】