説明

積層ゴムの診断方法

【課題】積層ゴムのゴム層を超音波で診断する診断方法を提供する。
【解決手段】非破壊検査装置10は、積層ゴム22が建物44を支持した状態でゴム層18の外周面から内部の損傷の有無を検査する。非破壊検査装置10は、制御及び解析装置としてのパソコン40を有し、パルス発生装置42は、パソコン40からの指示に従いパルスを発生させ、ケーブル28を介してパルスを超音波探触子24に送る。超音波探触子24は、パルス発生手段42からのパルスに基づき超音波を発生させる。発生させた超音波は、筒部24Lから検査治具46を介し、ゴム層18の外周面から内部へ入射される。入射された超音波は、ゴム層18の内部で反射され、受信側の検査治具46を介して超音波探触子25で受信される。超音波探触子25は超音波をパソコン40に送信する。パソコン40は、超音波が受信までに要した時間で損傷の有無を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層ゴムのゴム層を非破壊検査で診断する積層ゴムの診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免震建築物に用いられ、建築物を支持し免震機能を発揮する積層ゴムは、鋼板とゴム層の積層構造とされ、ゴム層で振動を吸収している。このため、ゴム層については、地震による損傷の程度や経年劣化の程度等を正確に把握しておき、いつでも免震機能を発揮できる状態に維持する必要がある。
【0003】
しかし、ゴム層は、上下面を積層された鋼板で挟まれており、外部に露出しているのはゴム層の外周面のみである。このため、ゴム層内部の損傷の程度を直接に目視で確認することはできず、非破壊検査で診断する診断法の確立が求められている。
【0004】
積層ゴムの非破壊検査法としては、例えば、X線CT装置を利用する方法(特許文献1)や超音波検査装置を利用する方法が考えられる。
【0005】
特許文献1に記載されたX線CT装置を利用する方法は、X線がゴム層を透過する必要があり、ゴム層の径や測定場所が制限される問題がある。更に、検査をする者が、X線を取り扱う資格を有する者に限定されるという問題もある。
一方、超音波検査装置を利用する方法は、上記問題点をクリアできる長所がある。
【0006】
しかし、ゴム層に入射された超音波は、ゴム層内を伝播し、ゴム層と空気層の境界面で反射することが知られているものの、超音波の利用は、金属や鉄筋コンクリートへの利用に比べて大きく遅れている。これは、超音波を利用したゴム層の診断方法が確立されていないからである。
【特許文献1】特開2001−33402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事実に鑑み、積層ゴムのゴム層を超音波で診断する、診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る積層ゴムの診断方法は、ゴム層と鋼板を積層した積層ゴムの前記ゴム層の外周面へ超音波を入射させ、前記ゴム層の内部で反射した超音波を受信し、受信した前記超音波の振幅値を検出し、検出した前記振幅値と、予め設定された振幅値の閾値とを比較し、前記振幅値が前記閾値以上のときには、前記超音波を入射してから前記閾値以上の前記振幅値が検出されるまでの経過時間を計測し、計測された前記経過時間と、前記ゴム層の寸法、構造及び前記超音波の音速から算出された計算上の反射時間とを比較して、損傷の有無を診断することを特徴としている。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、先ず、ゴム層の内部へ超音波を入射させ、反射した超音波を受信して、受信した超音波の振幅値を検出する。
【0010】
次に、検出した振幅値と予め設定してある振幅値の閾値とを比較し、振幅値が閾値以上のときには、超音波が入射されてから、閾値以上の振幅値が検出されるまでの経過時間を計測する。
【0011】
この、計測された経過時間と、ゴム層の寸法、構造及び超音波の音速から算出された計算上の反射時間とを比較して、損傷の有無を診断する。
即ち、ゴム層の内部に損傷がある場合には、損傷がないときに予測される反射時間と、損傷位置で反射した超音波が戻るまでの経過時間とに差が生じることから、経過時間を計測することでゴム層の損傷の有無が診断できる。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の積層ゴムの診断方法において、前記経過時間から算出した前記ゴム層内部の反射位置と、前記ゴム層の構造及び寸法から特定される反射位置が一致しない場合には、検出された前記反射位置を前記ゴム層内部の損傷位置と診断することを特徴としている。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、経過時間から算出したゴム層内部の反射位置と、ゴム層の構造及び寸法から特定される反射位置を比較して、これらが一致しない場合には、反射位置に損傷があると診断する。
これにより、ゴム層内での損傷位置を算出できる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の積層ゴムの診断方法において、前記閾値以上の前記振幅値の中から、最も振幅値が大きい最大振幅値を求め、前記最大振幅値で前記ゴム層内部の損傷の程度を推定することを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、検出された閾値以上の振幅値の中から、最も振幅値が大きい最大振幅値を用いて、予め把握してあるゴム層の内部の損傷程度と超音波の最大振幅値の関係を利用して、ゴム層の損傷の程度を推定する。
即ち、最大振幅値を用いることで、ゴム層内部の損傷程度が推定できる。ゴム層の損傷の程度が推定されれば、ゴム層を精度よく診断できる。
【0016】
請求項4の発明は、請求項1又は2に記載の積層ゴムの診断方法において、前記閾値以上の前記振幅値の中から、最も振幅値が大きい最大振幅値を求め、前記最大振幅値の波形から最大振幅値波形の周波数を求め、前記周波数から前記ゴム層内部の損傷の程度を推定することを特徴としている。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、ゴム層の最大振幅値の波形から最大振幅値波形の周波数を求め、予め把握してあるゴム層の損傷程度と周波数の関係から、ゴム層の損傷の程度を推定する。
即ち、ゴム層の最大振幅値の波形から最大振幅値波形の周波数を算出することで、ゴム層の損傷の程度が推定できる。ゴム層の損傷の程度が推定されれば、ゴム層を精度よく診断できる。
【0018】
請求項5に記載の積層ゴムの診断方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ゴムの診断方法で、前記ゴム層を外周面から複数の測定位置で診断し、損傷が有ると診断された測定位置の数と、全ての前記測定位置の数との比が、予め定めた値以上のとき、前記ゴム層の交換が必要と診断することを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ゴムの診断方法を用いて、ゴム層を外周面から複数の測定位置で診断する。そして、損傷が有ると診断された測定位置の数と、診断した全ての測定位置の数の比を求め、この比の値が予め定めた値以上のときには、ゴム層の交換が必要と診断する。
これにより、ゴム層を診断した測定位置の数に対する損傷を有する測定位置の割合が求められ、ゴム層の広い面積が診断できる。
【0020】
請求項6に記載の積層ゴムの診断方法は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ゴムの診断方法で、前記ゴム層を外周面から複数の測定位置で診断し、前記測定位置のそれぞれが診断する範囲である分担範囲に損傷が有るときは、前記損傷のある前記分担範囲を合計した平面積を損傷面積とし、前記損傷面積と前記ゴム層の平面積との面積比を損傷面積比とし、前記損傷面積比が、予め定めた値以上のとき、前記ゴム層の交換が必要と診断することを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、ゴム層を外周面から複数の測定位置で、請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ゴムの診断方法で診断する。このとき、複数の測定位置が診断する分担範囲を予め定めておき、損傷が有ると診断された分担範囲を合計した平面積を損傷面積として算出する。
【0022】
そして、損傷面積とゴム層の平面積の面積比を求め損傷面積比とし、この損傷面積比が予め定めた値以上のとき、ゴム層の交換が必要と診断する。
これにより、精度よくゴム層を診断できる。
【0023】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の積層ゴムの診断方法において、前記ゴム層は、中心部に円孔が形成されたリング状のゴム層であり、前記診断範囲を、前記円孔の内周面から前記ゴム層の外周面に至る径方向の中央点を基準として、内側及び外側へそれぞれ、前記内周面から前記外周面までの径方向の距離の45%の範囲内としたことを特徴としている。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、中心部に円孔が形成されたリング状のゴム層の診断範囲を、円孔の内周面からゴム層の外周面に至る径方向の中央点を基準として、内側及び外側へそれぞれ、内周面から外周面までの径方向の距離の45%の範囲内としている。
これにより、測定誤差が発生し易い、ゴム層の内周面の近傍及び外周面の近傍を診断範囲から除くことができ、精度のよい診断ができる。
【0025】
請求項8に記載の発明は、請求項6に記載の積層ゴムの診断方法において、前記ゴム層は、円板状に形成されたゴム層であり、前記診断範囲を、前記ゴム層の中心点を基準として、径の90%の範囲内としたことを特徴としている。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、円板状に形成されたゴム層の診断範囲を、ゴム層の中心点を基準として、径の90%の範囲内としている。
これにより、測定誤差が発生し易いゴム層の外周面の近傍を、診断範囲から除くことができ、精度のよい診断ができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、上記構成としてあるので、積層ゴムのゴム層を超音波で診断できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(第1の実施の形態)
図1、2に示すように、第1の実施の形態に係る積層ゴム22の診断方法は、非破壊検査装置10でゴム層18を検査し、検査結果に基づき損傷の有無を診断する方法である。
【0029】
検査対象である積層ゴム22は、ゴム層18と鋼板20の積層構造とされ、免震建築物44を支持している。ゴム層18の径は鋼板20の径より小さく、ゴム層18の外周面は鋼板の外周面より奥に位置している。積層ゴム22の中央には、軸部を貫通する貫通孔19(図3参照)が形成されており、後述する超音波は、貫通孔19の空気層との境界面で反射する。
【0030】
非破壊検査装置10は、積層ゴム22が建物44を支持した状態で、ゴム層18の外周面から内部の損傷の有無を検査する。ゴム層18は、1つの積層ゴム22に複数枚が積層されており、1枚ずつ、かつ全周囲に渡り検査を行う。
【0031】
非破壊検査装置10は、制御及び解析装置としてのパソコン40を有している。パソコン40は、パルス発生装置42にパルス発生指示を出力する制御ソフトや、受信された超音波の振幅値及び周波数を算出する解析ソフト等を内蔵し、検査順序に従い検査の全体を制御する。
【0032】
パルス発生装置42は、パソコン40からの指示に従い、超音波発生用のパルスを発生させ、ケーブル28を介してパルスを超音波探触子24に送る。
超音波探触子24は、パルス発生手段42からのパルスに基づき超音波を発生させる。発生させた超音波は、筒部24Lから検査治具46を介して、ゴム層18の外周面から内部へ入射される。
【0033】
入射された超音波は、ゴム層18の内部で反射され、受信側の検査治具46を介して超音波探触子25で受信される。超音波探触子25は、受信した超音波をパソコン40に送信する。パソコン40は、受信された超音波を分析し、後述する方法で損傷の有無を診断する。
【0034】
ここで、ゴム層18への超音波の入射、受信において重要な役割を果たす検査治具46について説明する。
検査治具46は、樹脂又はゴム材料で成形された箱形状の保持体12を備え、保持体12は、積層ゴム22に取付けたとき外側を向く背面12Aの中央部に、円形状の凹部16を有している。
【0035】
凹部16には、超音波探触子24の円柱状の発信部24Lが挿入され、発信部24Lの端面24Sと凹部16の底部16Sが面で接触する。
【0036】
凹部16の底部16Sには、超音波伝播部14が一体成形されている。超音波伝播部14は断面が矩形状の柱体であり、ゴム層18に沿って延出し、保持体12の外側へ張り出している。ゴム層18と対面する超音波伝播部14の側面14Bは、ゴム層18の外周面に沿って円弧状に凹んでいる。
【0037】
また、超音波伝播部14の厚さは、鋼板20の間に入り込ませ、鋼板20とは接触せずにゴム層18の外周面と対向させるため、ゴム層18の厚さより小さい厚さとされている。保持体12の角部には磁石26が接合され、保持体12を鋼板20の外周面へ着脱可能としている。
【0038】
これにより、超音波探触子24で発生させた超音波を、超音波伝播部14を経由して、ゴム層18の外周面に伝播させることができる。
【0039】
なお、ゴム層18の貫通孔19で反射された超音波(反射波)も、同じ検査治具46を利用して、凹部16に超音波を受信する超音波波探触子25を挿入すれば受信できる。
【0040】
即ち、検査治具46を、同じゴム層18の周方向に2つ並べてセットし、超音波発信側の凹部16に超音波波探触子24を挿入し、超音波受信側の凹部16に超音波波探触子25を挿入する。これにより、ゴム層18の外周部から入射した超音波をゴム層18の外周面で受信できる。
【0041】
次に検査手順を説明する。
先ず、2つの検査治具46を、ゴム層18に定められた間隔で取付ける。このとき、ゴム層18の外周面に超音波伝播部14の対向面14Bを密着させ、検査治具46を磁石26で鋼板20の外周面に取付ける。超音波発信側の凹部16に超音波探触子24を、超音波受信側の凹部16に超音波探触子25を挿入する。
【0042】
検査を開始すると、パソコン40から超音波の発生指示が出力される。指示を受けて、パルス発生装置42は、発生させる超音波に対応したパルスを発生させ、ケーブル28を介して超音波探触子24に送る。超音波探触子24は、送られたパルスに基づき超音波を発生させる。
【0043】
発生させた超音波は、超音波探触子24から超音波伝播部14を介して、ゴム層18の外周面に直接伝播される。ゴム層18に入射された超音波は、ゴム層18の内部を直進し、ゴム層18の内部の貫通孔19若しくは損傷部位で反射される。反射された超音波は、ゴム層18の外周面で超音波伝播部14を介して超音波探触子25に受信される。
【0044】
超音波探触子25で受信された超音波はパソコン40に送られ、受信されるまでの経過時間や振幅等が解析ソフトで算出され、ゴム層18の損傷の有無が診断される。
【0045】
ここで、超音波でゴム層18の内部を検査するメカニズムを説明する。
図3に示すように、例えば損傷のない正常な部位X1では、ゴム層18の外周面から超音波探触子24で貫通孔19へ向けて入射された超音波W1は、直進して貫通孔19に到達後、空気層との境界面で反射して超音波W2となり、外周面まで戻り、超音波探触子25で受信される。
【0046】
このときの受信した超音波W2は、図4(A)に示すように、閾値Qを超えた大きな振幅の波形(振幅値P1、P2)となっている。損傷のない正常な部位X1では、ゴム層18の内部での超音波W1、W2の減衰は少なく、受信された超音波W2の振幅値P1、P2は大きい。
【0047】
また、超音波W2が受信されるまでの経過時間Tsは、超音波W1を入射した時間T0から超音波W2が受信された時間T1までに要した時間である。この経過時間Tsは、既知であるゴム層18の外周面から貫通孔19までの距離と、ゴム層18の内部での超音波W1、W2の伝播速度から、予め予測できる。
【0048】
一方、超音波W1の通路の途中に損傷(亀裂)27がある部位X2では、超音波探触子24で、ゴム層18の外周面から貫通孔19へ向けて入射された超音波W1は、亀裂27で反射され、一部が超音波W2となり、超音波探触子25で受信される。
【0049】
この結果、図4(B)に示すように、超音波W2は、最初の閾値Qを超えた波形(振幅値P3、P4)と、次に閾値Qを超えた波形(振幅値P5、P6)の2つが見られる。
【0050】
最初の波形(振幅値P3、P4)は、亀裂27で反射された超音波W2と推定される。ここに、亀裂27で反射された超音波W2は、亀裂27の反射面の形状、状態等に左右される。即ち、亀裂27の表面で減衰されず、超音波W1の全てが、超音波探触子25の方向へ向けて反射された場合には、図4(A)に示す正常な場合の振幅値P1、P2より大きい振幅値の振動が受信される。しかし、亀裂27の表面で乱反射したり、超音波探触子25と異なる方向に反射した場合等には、超音波W2の振幅値P3、P4は、図4(A)に示す正常な場合の振幅値P1、P2より小さくなる。
【0051】
振幅値P5、P6は、経過時間Tsで受信されていることから、貫通孔19で反射された超音波W2と推定できる。超音波W1、W2は、所定の幅を持って伝播するため、一部が貫通孔19まで到達し、反射されたものであり、振幅値は小さい。
【0052】
経過時間Tfは、超音波W1を入射後、最初の閾値Q以上の振幅値P3、P4の振動が受信されるまでの時間である。経過時間Tfが正常な場合の経過時間Tsより短いことから、超音波W1の一部が亀裂27で反射し、受信されたと推定される。このことから、貫通孔19に至る途中に損傷27があると診断できる。
【0053】
次に、反射された超音波W2の通路の途中に亀裂29がある部位X3について説明する。超音波探触子24で入射され、貫通孔19で反射した超音波W2は、亀裂29で遮られる。しかし、超音波W2は所定の幅を持って進行するため、超音波W2の一部が超音波探触子25で受信される。
【0054】
この結果、図4(C)に示すように、超音波W2は、閾値Qを僅かに超えた波形(振幅値P7、P8)となっている。
【0055】
波形振幅値P7、P8は、超音波W1を入射後、時間Tsが経過した時点で受信されており、貫通孔19で反射しているといえる。しかし、振幅値は、正常な場合の波形振幅値P1、P2より小さく、正常とはいえない。このことから、間接的ではあるが、貫通孔19と超音波探触子25の間に亀裂29があると推定される。
【0056】
なお、亀裂29の形状や方向によっては、振幅値P7、P8が閾値Q未満に小さくなり、検出できない場合も予測される。この場合も、入射した超音波W1が戻らないことから、貫通孔19と超音波探触子25の間に亀裂29があると推定できる。
【0057】
次に、ゴム層18の検査結果を用いた診断方法について説明する。
図5に示すように、先ず、非破壊検査装置10を用いて、ゴム層18に超音波W1を入射し(ステップ50)、反射した超音波W2を受信し、受信した超音波W2の振幅値Pn(n=1、2、・・・)を求める。また、測定した振幅値Pnの個数Nを求める。例えば図4(A)ではN=2、図4(B)ではN=4、図4(C)ではN=2となる。このとき、超音波W1を入射してからの経過時間Tfをカウントし、カウンターkを1にリセットする(ステップ52)。
経過時間Tfが、予め算出してある貫通孔19で反射したときの経過時間Tsと等しくなるまで、反射した超音波W2の受信動作を繰り返す(ステップ52、ステップ59)。
【0058】
次に、n=kとし(ステップ124)、振幅値Pnと予め設定してある閾値Qを比較する。振幅値Pnが閾値Q以上の場合には、ステップ56に進み、振幅値Pが閾値Q未満の場合にはステップ47に進む(ステップ54)。
ステップ56では、超音波W1が入射されてから、閾値Q以上の振幅値Pnが検出されるまでの経過時間Tfnを求める。
【0059】
次に、経過時間Tfnと、貫通孔19で反射したときの経過時間Tsとを比較する。経過時間Tfnと経過時間Tsが等しい場合にはステップ60へ進み、経過時間Tfnと経過時間Tsが等しくない場合には、ステップ62へ進む(ステップ58)。
【0060】
ステップ60では、経過時間Tfnと経過時間Tsが等しいことから、振幅値Pnは貫通孔19で反射したと推定し、ゴム層18の内部には損傷がなく正常と診断し、ステップ112へ進む。
ステップ112では、再度超音波W1を入射するか否かを判断し、入射する場合には、ステップ50へ戻り、入射しない場合には終了する。これにより、再計測したい場合の対応が容易となり、計測の信頼性を高めることができる。現在の計測位置での計測を終了し、次の計測位置に移動する場合には、一旦計測を終了し、測定位置を変更する。
【0061】
一方、経過時間Tfnが経過時間Tsより短い場合には、超音波W1が、貫通孔19に至る途中にある亀裂27で反射したと推定し、ゴム層18の内部に損傷があると診断し、ステップ47へ進む(ステップ62)。
ステップ47では、計測した振幅値Pnが最後のものか否かを判断し、最後でない場合には、ステップ49でカウンターkを1つ増やし、ステップ124に戻る。振幅値Pnが最後のものの場合には、ステップ114へ進む。
【0062】
ステップ114では、閾値Q以上の振幅値Pnが1つもない場合に、貫通孔19で反射した超音波W2が、超音波探触子25の方向に進む途中にある亀裂29により方向を変えられて受信できなくなったものと判断する。そして、ゴム層18の内部に損傷があると診断しステップ112へ進む。
【0063】
他の診断方法として、図6に示すように、閾値Q以上の振幅値Pnが受信された経過時間Tfnから、超音波W1の反射位置Sfnを求め、この反射位置Sfnを利用する方法がある。
即ち、図5で説明したと同様に、ステップ50〜ステップ56で閾値Q以上の振幅値Pnが検出されるまでの経過時間Tfnを求める。この経過時間Tfnから、ゴム層18の外周面で入射された超音波W1が、ゴム層18の内部で反射された反射位置Sfnを求める(ステップ64)。
【0064】
次に、反射位置Sfnと既知の貫通孔19の位置Ssを比較し、反射位置Sfnと貫通孔19の位置Ssが等しい場合にはステップ60へ進み、貫通孔19の位置Ssと反射位置Sfnが異なる場合にはステップ62へ進む(ステップ66)。
【0065】
ステップ60では、受信された超音波W2は貫通孔19で反射したと推定し、ゴム層18の内部には損傷がなく正常と診断し、ステップ112に進む。
ステップ62では、本来反射すべき貫通孔位置Ssで反射していないことから、ゴム層18の内部に損傷があると診断し、ステップ47に進む。以後は上述と同じである。
【0066】
(第2の実施の形態)
図7に示すように、第2の実施の形態に係る積層ゴム22の診断方法は、実験で求められた損傷特性Y1を用いて、ゴム層18の損傷の程度を推定する診断方法である。
【0067】
損傷特性Y1は、ゴム層18の内部の損傷の程度(縦軸Z)と、損傷部位で反射した波形の最大振幅値(横軸Pmax)の関係を示したものである。ゴム層18の内部の損傷の程度が大きければ、反射した超音波の最大振幅値Pmaxも大きいという比例関係があることが、実験的に確かめられており、この結果を診断に利用している。
【0068】
即ち、受信した超音波W2の複数の振幅値Pnの中から、最も振幅値が大きい最大振幅値Pmaxを求め、この最大振幅値Pmaxを用いてゴム層18の損傷の程度を推定する。超音波W2の振幅値Pnを検出するまでの手順は、第1の実施の形態と同じであり、その後の手順について説明する。
【0069】
図8に示すように、先ず、ステップ50で超音波W1を入射し、ステップ52、59で経過時間Tsまでの間に受信した振幅値Pn(n=1、2・・・)を検出する。なお、ステップ52でk=1、Pmax=DAMYとしておく。そして、検出した振幅値Pnが閾値Q以上か否かを比較し(ステップ54)、閾値Q以上の振幅値Pnの中から最も大きい振幅値Pnmの値を求め、その値を最大振幅値Pmax(Pmax-=Pnm)とする(ステップ53)。
【0070】
次に、最大振幅値Pmaxの値を用いて評価する。先ず、Pmax=DAMYの場合には、最大振幅値Pmaxが閾値Q未満でありステップ99に進む。一方、Pmax=DAMYでない場合には、閾値Q以上の最大振幅値Pmaxが受信されており、ステップ118に進む(ステップ116)。
【0071】
ステップ99では、上述のように損傷は推定されるが、閾値Q以上の超音波W2が受信されないため、損傷の程度の診断はできない。
ステップ118では、最大振幅値Pmaxが検出された時間Tfnが、時間Tsと等しいか否かを判断する。時間Tfnが、時間Tsと等しい場合にはステップ60へ進み、等しくない場合には、ステップ55へ進む。
ステップ60では、時間Tfnが時間Tsと等しいことから、貫通孔19の位置で反射しており、損傷はなく正常と診断する。
【0072】
ステップ55では、予め設定されている特性Y1(図7参照)を用いて、最大振幅値Pmaxに対応する損傷の程度Z1を求め、ステップ57へ進む。
ステップ57では、この損傷の程度Z1によりゴム層18の交換の要否を診断する。
即ち、損傷の程度Z1が小さい場合はステップ98に進み、損傷の程度Z1が中程度の場合はステップ120に進み、損傷の程度Z1が大きい場合は、ステップ96に進む。
【0073】
ステップ98では、ゴム層18の損傷の程度Z1は小さく、継続して使用可能と診断する。ステップ120では、ゴム層18の損傷の程度Z1は中程度であり、継続使用は可能であるが、経過観察が必要と診断する。一方、ステップ96では、ゴム層18の損傷の程度Z1が大きいため、継続して使用するのは好ましくなく、ゴム層18の交換が必要と診断する。
【0074】
他の診断方法として、図9に示すように、実験で求められた損傷特性Y2を用いて、ゴム層18の損傷の程度を推定する方法がある。
損傷特性Y2は、ゴム層18の内部の損傷の程度(縦軸Z)と、損傷部位で反射した波形の周波数(横軸fs)の関係を示している。
【0075】
ゴム層18の内部の損傷の程度Zが大きくなれば、反射した波形の周波数fsは低くなるという関係があることが実験的に確かめられており、この特性を診断に利用している。即ち、ゴム層18の損傷の程度Zと、損傷部位で反射した波形の周波数fsの関係を予め実験で求め、特性Y2を決定しておく。これにより、受信した波形の周波数fsからゴム層18の損傷の程度Zを推定することができる。
【0076】
具体的な手順は、図10に示すように、先ず、ステップ50で超音波50を入射し、ステップ52、59で経過時間Tsまでの振幅値Pn(n=1、2・・・)を検出する。なお、ステップ52でk=1、Pmax=DAMYとしておく。そして、検出した振幅値Pnが閾値Q以上か否かを比較し(ステップ54)、閾値Q以上の振幅値Pnの中から最も大きい振幅値Pnmの値を求め、その値を最大振幅値Pmax(Pmax-=Pnm)とする。この最大振幅値Pmaxの波形から最大振幅値Pmaxの周波数fsを求める(ステップ100)。
【0077】
次に、最大振幅値Pmax及び周波数fsの値を用いてで評価する。先ず、Pmax=DAMYの場合には、最大振幅値Pmaxが閾値Q未満であるため、ステップ99に進む。一方、Pmax=DAMYでない場合には、閾値Q以上の最大振幅値Pmaxが受信されており、ステップ118に進む(ステップ116)。
ステップ99では、損傷は推定されるが、閾値Q以上の超音波W2が受信されないため、損傷の程度の診断はできない。
【0078】
ステップ118では、最大振幅値Pmaxが検出された時間Tfnが、時間Tsと等しいか否かを判断する。時間Tfnが、時間Tsと等しい場合には、ステップ60へ進み、等しくない場合には、ステップ102へ進む。
【0079】
ステップ60では、最大振幅値Pmaxは貫通孔19の位置で反射しており、損傷はなく正常と診断する。
ステップ102では、予め設定されている特性Y2(図9参照)を用いて、周波数fsに対応する損傷の程度Z2を求め、ステップ104に進む。
ステップ104では、この損傷の程度Z2により交換の要否を診断する。即ち、損傷の程度Z2が小さい場合はステップ106に進み、損傷の程度Z2が中程度の場合はステップ122に進み、損傷の程度Z2が大きい場合は、ステップ108に進む。
【0080】
ステップ106では、ゴム層18の損傷の程度Z2は小さく、継続して使用可能と診断する。ステップ122では、ゴム層18の損傷の程度Z2は中程度であり、継続使用は可能であるが、経過観察が必要と診断する。一方、ステップ108では、ゴム層18の損傷の程度Z2が大きいため、継続して使用するのは好ましくなく、ゴム層18の交換が必要と診断する。
【0081】
(第3の実施の形態)
図11に示すように、第3の実施の形態に係る積層ゴム22の診断方法は、ゴム層18を外周面から複数の位置で診断する診断方法である。
先ず、ゴム層18の外周面における超音波の入射位置、受信位置を決定する。例えば、ゴム層18の外周面を40等分(X1〜X40)し、検査治具46の取付け位置をSとする。
【0082】
このとき、超音波の反射特性に基づき受信位置を決定する必要があり、奇数番号の取付け位置Sのみを使用する。また、連続した奇数番号のうち、小さい方の番号の位置を超音波の入射位置、その番号の次に大きい奇数番号の位置を受信位置とする。
【0083】
例えば、入射位置X1から診断を開始した場合、入射位置X1で入射された超音波W1は、貫通孔19で反射され、受信位置X3で受信される。次に診断位置を移動し、入射位置X3から入射された超音波W1は、貫通孔19で反射され、受信位置X5で受信される。以後、入射位置と受信位置を順次繰上げて、20回の計測で全周を検査するものである。このとき、非破壊検査装置10による検査方法は第1の実施の形態と同じであり、説明は省略する。
【0084】
既述したように、例えば、入射位置X15と貫通孔19の間に損傷(亀裂)70がある場合、入射位置X15から入射された超音波W1は亀裂70で遮られて反射し、受信位置X17で受信される。この受信された超音波W2を用いることで、亀裂70の有無、亀裂70の位置、及び亀裂70の大きさを求めることができる。
【0085】
ゴム層18の全周20箇所(X1〜X39)を診断した結果、入射位置X15でのみ亀裂70があると診断され、他の19箇所の測定位置(X15を除くX1〜X39)には損傷がなく正常と診断されたとき、ゴム層18の損傷割合pは5%(p=1/20)となる。
【0086】
損傷割合pの許容限度は経験により決定される。許容限度を30%とした場合、算出された損傷割合pは5%であり、ゴム層18の継続使用は可能と診断する。
【0087】
図12に、具体的な評価手順を示す。
ゴム層18の外周面の全ての入射位置及び受信位置(X1〜X39)における検査を行い(ステップ80)、測定位置ごとに損傷の有無を診断する(ステップ82)。
【0088】
いずれの測定位置にも損傷がないと診断された場合には、ステップ98へ進み、ゴム層18は健全であり、継続使用が可能と診断する(ステップ98)。
いずれかの測定位置で損傷が見つけられた場合には、ステップ84へ進み、損傷が見つけられた測定位置の合計数nを求める(ステップ84)。
【0089】
次に、合計数nと、検査位置の全数Nの比である損傷割合p(p=n/N)を求める(ステップ86)。損傷割合pが基準値a%より小さければステップ98へ進み、損傷割合pが基準値a%より大きければステップ96へ進む(ステップ88)。
【0090】
ステップ98では損傷割合pが小さいため継続使用が可能と診断し、ステップ96では損傷割合pが大きいため交換が必要と診断する。
他の診断方法として、図13に示すように、例えば20等分した超音波の入射位置、受信位置(X1〜X39)のそれぞれが診断する分担範囲(図13の網掛け部)を予め定めておき、損傷があると診断された分担範囲の合計面積SPと、ゴム層18の全ての診断範囲を合計した面積STとの面積比q(q=SP/ST)を求め、この面積比qが予め定めた値を超えるか否かで診断する方法がある。
【0091】
例えば、入射位置X1、受信位置X3での分担範囲をs13(網掛け部)、入射位置X3、受信位置X5での分担範囲をs35(網掛け部)とし、この要領で診断範囲を割り振る。ゴム層18の全ての診断範囲の面積STと、損傷があると診断された診断範囲の合計面積SPを、それぞれ入射位置と受信位置に割り振られた診断範囲で表すことができ、容易に面積比qを求めることができる。
【0092】
図14に本評価法の評価手順を示す。
入射位置X1〜X39における全周囲を検査した後(ステップ80)、測定位置ごとに損傷部位の有無を判断し、いずれの測定位置にも損傷がないと判断された場合には、ステップ98へ進み、いずれかの測定位置で損傷部位が見つけられた場合にはステップ93に進む(ステップ82)。
【0093】
ステップ98では、いずれの測定位置にも損傷がないことから、ゴム層18は健全であり、継続使用が可能と診断する。
ステップ93では、損傷部位が見つけられた測定位置の数を合計した損傷面積SPを求める。
次に、損傷面積SPがゴム層18の全面積STに占める損傷割合qを求め、ステップ97に進む(ステップ95)。ステップ97では、損傷割合qが基準値a%より小さければステップ98へ進み、損傷割合qが基準値a%より大きければステップ96へ進む。
【0094】
ステップ98では損傷面積の割合は小さく継続使用が可能と診断する。ステップ96では損傷面積の割合は小さくないので、ゴム層18の交換が必要と診断する。
【0095】
他の診断方法として、図15に示すように、本実施の形態において、ゴム層18の内部をゴム層18の外周面の近傍の外周部32と、貫通孔19の近傍の内周部34と、外周部32と内周部34に囲まれた診断部30(網掛け部)の3つに区分し、診断範囲を限定する方法がある。
【0096】
即ち、外周部32及び内周部34は、測定誤差が生じやすいため、評価対象から除外している。診断部30は、診断対象とする範囲であり、貫通孔19の壁面からゴム層18の外周面に至る径方向の中央点を基準として、内側及び外側へそれぞれ、内周面から外周面までの径方向の距離の45%の範囲内の部分である。
【0097】
第1〜3の実施の形態に基づく検査結果において、診断部30の範囲内のみを診断対象とすることで評価の信頼性を高めることができる。
なお、検査技術の程度や、検査機器の精度等により、診断部30の範囲は任意に設定することができる。
【0098】
(第4の実施の形態)
図16に示すように、第4の実施の形態に係る積層ゴム22の診断方法は、円板状に成形されたゴム層92の診断方法である。
【0099】
ゴム層92は、中央部に貫通孔が設けられていない点を除いて、上述したゴム層18と同じであるので、異なる点について説明する。
【0100】
ゴム層92の内部における超音波の挙動は、例えば、入射位置X1から入射された超音波W1は、対向するゴム層92の外周面(X22の位置)まで直進し、外周面で反射される。反射した超音波W2は直進し、受信位置X3で受信される。
【0101】
このとき、例えば、ゴム層92の内部に損傷(亀裂)94がある場合、超音波W1は亀裂94で反射される。このため、受信位置X35、及びX37で受信した超音波W2を既述の方法で分析すれば損傷94の有無、損傷94の位置及び損傷94の程度が検出できる。
【0102】
以上のように、ゴム層92は反射位置が異なるのみであり、第1〜第3の実施の形態と同様に、受信された超音波W2を分析することでゴム層92の診断ができる。
なお、ゴム層92においては、対向する外周面までの直径上を検査範囲としているため、亀裂94を2重に計測することになるので、損傷面積SPの計算において注意が必要である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査装置の基本構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの非破壊検査装置の基本構成を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の基本原理を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の基本原理を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の診断手順を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の診断手順を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の基本原理を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の診断手順を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の基本原理を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の診断手順を示す図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の基本原理を示す図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の診断手順を示す図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の基本原理を示す図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の診断手順を示す図である。
【図15】本発明の第3の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の基本原理を示す図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係る積層ゴムの診断方法の基本原理を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
18 ゴム層
20 鋼板
22 積層ゴム
24 超音波探触子(発信用)
25 超音波探触子(受信用)
27 損傷部位(亀裂)
30 診断部
32 外周部
34 内周部
W1 超音波(入射波)
W2 超音波(反射波)
P 振幅値
Pmax 最大振幅値
Q 閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム層と鋼板を積層した積層ゴムの前記ゴム層の外周面へ超音波を入射させ、前記ゴム層の内部で反射した超音波を受信し、
受信した前記超音波の振幅値を検出し、
検出した前記振幅値と、予め設定された振幅値の閾値とを比較し、
前記振幅値が前記閾値以上のときには、前記超音波を入射してから前記閾値以上の前記振幅値が検出されるまでの経過時間を計測し、
計測された前記経過時間と、前記ゴム層の寸法、構造及び前記超音波の音速から算出された計算上の反射時間とを比較して、損傷の有無を診断する積層ゴムの診断方法。
【請求項2】
前記経過時間から算出した前記ゴム層内部の反射位置と、前記ゴム層の構造及び寸法から特定される反射位置が一致しない場合には、検出された前記反射位置を前記ゴム層内部の損傷位置と診断する請求項1に記載の積層ゴムの診断方法。
【請求項3】
前記閾値以上の前記振幅値の中から、最も振幅値が大きい最大振幅値を求め、前記最大振幅値で前記ゴム層内部の損傷の程度を推定する請求項1又は2に記載の積層ゴムの診断方法。
【請求項4】
前記閾値以上の前記振幅値の中から、最も振幅値が大きい最大振幅値を求め、前記最大振幅値の波形から最大振幅値波形の周波数を求め、前記周波数から前記ゴム層内部の損傷の程度を推定する請求項1又は2に記載の積層ゴムの診断方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ゴムの診断方法で、前記ゴム層を外周面から複数の測定位置で診断し、
前記診断で損傷が有るとされた前記測定位置の数と、全ての前記測定位置の数との比が、予め定めた値以上のとき、前記ゴム層の交換が必要と診断する積層ゴムの診断方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の積層ゴムの診断方法で、前記ゴム層を外周面から複数の測定位置で診断し、
前記測定位置のそれぞれが診断する範囲である分担範囲に損傷が有るときは、前記損傷のある前記分担範囲を合計した平面積を損傷面積とし、前記損傷面積と前記ゴム層の平面積との面積比を損傷面積比とし、前記損傷面積比が、予め定めた値以上のとき、前記ゴム層の交換が必要と診断する積層ゴムの診断方法。
【請求項7】
前記ゴム層は、中心部に円孔が形成されたリング状のゴム層であり、
前記診断範囲を、前記円孔の内周面から前記ゴム層の外周面に至る径方向の中央点を基準として、内側及び外側へそれぞれ、前記内周面から前記外周面までの径方向の距離の45%の範囲内とした請求項6に記載の積層ゴムの診断方法。
【請求項8】
前記ゴム層は、円板状に形成されたゴム層であり、
前記診断範囲を、前記ゴム層の中心点を基準として、径の90%の範囲内とした請求項6に記載の積層ゴムの診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−48762(P2010−48762A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215414(P2008−215414)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000100942)アイレック技建株式会社 (45)
【出願人】(306013119)昭和電線デバイステクノロジー株式会社 (118)
【Fターム(参考)】