説明

積層セラミック部品製造用溶剤組成物

【課題】エチルセルロース等のバインダー樹脂のバインダー性能を十分に発揮させることができ、積層セラミック部品製造過程でシートアタック現象を生じにくく、且つ、蒸発乾燥が容易であり、被塗布シートとの密着性に優れる積層セラミック部品製造用溶剤組成物を提供する。
【解決手段】沸点が206℃以下である低極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g以上であり、且つエトキシル基含有量45.0〜53.0モル%のエチルセルロースの溶解度が25℃において5g/100g以上である溶剤Aと、沸点が溶剤Aの沸点よりも高く、且つ高極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g未満である溶剤Bとを含む積層セラミック部品製造用溶剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチルセルロース等のバインダー樹脂のバインダー性能を十分に発揮させることができ、積層セラミック部品製造過程でシートアタック現象を生じにくく、且つ、蒸発乾燥が容易であり、被塗布シートとの密着性に優れる積層セラミック部品製造用溶剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
積層セラミック部品にはコンデンサ、インダクタ、バリスタ,サーミスタ,スピーカ,アクチュエータ、アンテナ、固体酸化物燃料電池(SOFC)などがあり、セラミック層や導体層の薄層を重ね合わせることで部品が作成される。コンデンサ、インダクタ、バリスタ,サーミスタ,スピーカ,アクチュエータ、アンテナはセラミック層と導体層を積層するものが主であり、固体酸化物燃料電池(SOFC)は複数のセラミック層を積層するものが主である。
【0003】
積層方法としては焼成した層の上に新たな層を塗布、焼成することを繰り返すことで作成することもできるが、生産性、コストを考慮すると焼成前の状態で多層積層したうえで同時焼成することが一般的である。
【0004】
同時焼成する方法での積層方法は各層の組成物の入った液体を塗布、乾燥を繰り返し行うことで積層シートとし、さらに部品によっては得られたシートを重ね合わせ圧着することで高積層化を行う方法を用いる。
【0005】
積層セラミック部品の製造方法の一例として積層コンデンサの製造方法を示す。
一般的には、次のような工程を経て製造される。
1:セラミックスの粉末をポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂又はアクリル樹脂等のバインダー樹脂と溶剤で分散させてスラリーとし、シート状に形成してグリーンシートを得る。
2:ニッケル、パラジウム等の導電性金属材料、エチルセルロース、及びターピネオール等の有機溶剤を主成分とする導体ペーストを、グリーンシート上にスクリーン印刷法等により塗布し配線・塗膜を形成する。
3:上記導体ペースト中の有機溶剤を乾燥させる。
4:配線・塗膜が形成された積層シートを所定寸法に切断し、複数枚積み重ねて加熱圧着して積層体とする。
5:該積層体に電極等を取り付け、高温で焼成させると積層コンデンサが得られる。
【0006】
上記工程において、導体ペーストをグリーンシート上に塗布すると、導体ペースト中の有機溶剤がグリーンシートに含まれるバインダー樹脂を溶解する現象が起こる場合がある。この現象はシートアタック現象と呼ばれている。シートアタック現象は、積層セラミックコンデンサのセラミック層に穴や皺を発生させ、配線・塗膜形成の不良やショート等による歩留まりの低下を引き起こす原因となる。
【0007】
このような問題は同様の積層方法を用いる積層セラミック部品において生じる。従来は各層の膜厚が厚かったために影響がそれほど大きくなかったが、近年、積層セラミック部品の高性能化、小型化に伴い、装置を構成する導体層、セラミック層の薄層化が求められている。その結果、シートアタック現象が顕著に認められるようになった。
【0008】
そこで、シートアタック現象の改善方法として、塗布ペーストに使用する有機溶剤の改善が種々検討された。例えば、特許文献1、2には、有機溶剤としてターピネオール水素添加物又はターピネオール水素添加物のアセテートを用いることが開示されている。しかしながら、ターピネオール水素添加物には2種類の異性体が存在しており、その上、原料となるターピネオールは本来天然物であり、α−ターピネオール、β−ターピネオール及びγ−ターピネオールの混合物であるため、産地により混合比や純度に変動がある。そのため、安定したシートアタック現象の抑制効果を発揮することが困難な点が問題であった。
【0009】
また、特許文献3には、ヘキサン酸エチル、酢酸2−エチルヘキシル等の溶剤を用いることが開示されている。しかしながら、ヘキサン酸エチル、酢酸2−エチルヘキシル等の溶剤は、乾燥工程における温度上昇により被塗布シートに含まれるバインダー樹脂に対する溶解度が増すため、シートアタック現象を効果的に防止することができないという問題があった。
【0010】
特許文献4には、有機溶剤として、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂やアクリル樹脂等のバインダー樹脂、及びエチルセルロースに不溶性であり、製造工程で使用可能な温度帯の上限近くに沸点を有するトリアセチンをベースとし、これにエチルセルロースに可溶性であり、低沸点の有機溶剤を特定の割合で加えた溶剤組成物を用いることで耐シートアタック性を改善したことが開示されている。しかしながら該溶剤組成物を含有する塗布ペーストを塗布した後、常圧加熱乾燥する場合、長時間の加熱によりポリビニルアセタール樹脂をバインダー樹脂とする被塗布シートが軟化、変形してしまうという問題が認められた。
【0011】
トリアセチンと共に他の特定の溶剤を特定の割合で混合して使用すると、エチルセルロースに対して可溶性を示し、エチルセルロースのバインダー性能を十分に発揮させることができ、同時に、ポリビニルアセタール樹脂に対しては不溶性を示すことができる。すなわち、エチルセルロースとポリビニルアセタール樹脂の双方に対する優れた溶解性のバランスにより、蒸発乾燥に要する時間を短縮することにより被塗布シートの軟化、変形を防止することができ、且つ、シートアタック現象をも防止することができることが見出されている。しかしながらこのトリアセチンと他の特定の溶剤との混合溶剤は被塗布シートに対する密着性が不足していた。
【0012】
また、一方で特許文献5には、導体ペースト中に低分子量、低極性のポリビニルアセタール樹脂[商品名「エスレックBL−S」、積水化学工業(株)製;重合度360、ブチラール化度74モル%、水酸基量22モル%]を配合することで、高分子量、高極性のポリビニルアセタール樹脂[商品名「エスレックBM−2」、積水化学工業(株)製;重合度850、ブチラール化度68モル%、水酸基量31モル%]を含む被塗布シートとの密着性が向上することが記載され、実施例では、導電ペーストにn−オクチルアルコールが使用されている。しかしながら、n−オクチルアルコールではグリーンシートに使用される高分子量ポリビニルブチラール樹脂への溶解性があり、対シートアタック性が十分ではなかった。低分子量、低極性のポリビニルアセタール樹脂を溶かし、同様の極性を持つ高分子量、高極性のポリビニルアセタール樹脂を溶解しないという溶剤による溶解性の制御が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平07−240340号公報
【特許文献2】特許第2976268号公報
【特許文献3】特開2005−116504号公報
【特許文献4】特開2009−147202号公報
【特許文献5】特開2009−200009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の目的は、エチルセルロース等のバインダー樹脂のバインダー性能を十分に発揮させることができ、被塗布シートとの密着性に優れ、且つ、積層セラミック部品製造過程で従来使用されているターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート等より加熱乾燥時のシートアタック現象を生じにくい積層セラミック部品製造用溶剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定の溶剤を含む溶剤組成物は低極性のポリビニルアセタール樹脂の溶解性に優れ、高極性のポリビニルアセタール樹脂を溶解せず、且つ、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、ジヒドロターピニルアセテート等より塗布工程から乾燥工程後までの耐シートアタック性が高く、乾燥後表面状態が良いことを見いだした。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0016】
すなわち、本発明は、標準沸点が206℃以下であり、ブチラール化度69モル%以上77モル%以下、水酸基量15モル%以上28モル%以下の低極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g以上であり、且つエトキシル基含有量45.0〜53.0モル%のエチルセルロースの溶解度が25℃において5g/100g以上である溶剤Aと、標準沸点が該溶剤Aの標準沸点よりも高く、且つブチラール化度61モル%以上68モル%以下、水酸基量29モル%以上37モル%以下の高極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g未満である溶剤Bとを含むことを特徴とする積層セラミック部品製造用溶剤組成物を提供する。
溶剤A、溶剤Bは、以下の標準沸点を示す溶剤であることが好ましい。
溶剤A:70℃〜206℃の標準沸点をもつ化合物
溶剤B:75℃〜260℃の標準沸点をもつ化合物
【0017】
溶剤A、溶剤Bは以下の溶剤から選ばれた少なくとも一つであることがより好ましい。
溶剤A:1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコール、3−メトキシブタノール、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び3−メトキシブチルアセテートの中から選ばれた少なくとも1種
溶剤B:トリアセチン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及び乳酸エチルアセテートから選ばれた少なくとも1種
【0018】
溶剤Aは1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコールであることがさらに好ましい。
また、溶剤Bは以下から選ばれた少なくとも一つであることがさらに好ましい。
溶剤B:トリアセチン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、及び乳酸エチルアセテートの中から選ばれた少なくとも1種
【0019】
本発明の積層セラミック部品製造用溶剤組成物は、さらに以下の溶剤Cを含んでいてもよい。
溶剤C:メタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクチルアルコール、メチルシクロヘキシルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、イソプロピルシクロヘキシルアルコール、ブチルシクロヘキシルアルコール、イソブチルシクロヘキシルアルコール、s−ブチルシクロヘキシルアルコール、t−ブチルシクロヘキシルアルコール、ペンチルシクロヘキシルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、エチルエーテル、シクロヘキサノールアセテート、シクロペンチルアセテート、シクロオクチルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、エチルシクロヘキシルアセテート、プロピルシクロヘキシルアセテート、イソプロピルシクロヘキシルアセテート、ブチルシクロヘキシルアセテート、イソブチルシクロヘキシルアセテート、s−ブチルシクロヘキシルアセテート、t−ブチルシクロヘキシルアセテート、ペンチルシクロヘキシルアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコールアセテート、メチレンクロライド、クロロホルム、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、アセトン、イソホロン、n−ヘキサン、ターピネオール、メンタノール、メンタノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、リモネン、メンタン、及びメントールの中から選ばれた少なくとも1種以上
【0020】
溶剤Cは以下から選ばれた少なくとも一つであることがより好ましい。
溶剤C:メタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、エチルエーテル、シクロヘキサノールアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコールアセテート、メチレンクロライド、クロロホルム、ブチルカルビトール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、イソホロン、n−ヘキサン、ターピネオール、メンタノール、メンタノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、リモネン、メンタン、及びメントールの中から選ばれた少なくとも1種以上
【発明の効果】
【0021】
本発明の積層セラミック部品製造用溶剤組成物を用いてニッケル、銀等の導電性金属材料やエチルセルロースや低分子のポリビニルブチラール等のバインダー樹脂を混合することにより得られる塗布ペーストは、安定したシートアタック現象抑制及び防止効果を発揮することができ、蒸発乾燥が容易であり、その上、被塗布シートへの密着性を良好にすることができる。これにより、微細パターンの剥がれを防ぐことができ、配線・塗膜パターンの微細化、高密度配線化に対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[積層セラミック部品製造用溶剤組成物]
本発明の積層セラミック部品製造用溶剤組成物は、標準沸点が206℃以下であり、ブチラール化度69モル%以上77モル%以下、水酸基量15モル%以上28モル%以下の低極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g以上であり、且つエトキシル基含有量45.0〜53.0モル%のエチルセルロースの溶解度が25℃において5g/100g以上である溶剤Aと、標準沸点が該溶剤Aの標準沸点よりも高く、且つブチラール化度61モル%以上68モル%以下、水酸基量29モル%以上37モル%以下の高極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g未満である溶剤Bとを含むことを特徴とする。なお、本明細書において、標準沸点とは1atmにおける沸点を指す。以下、標準沸点を、単に沸点という場合がある。
【0023】
本発明の積層セラミック部品製造用溶剤組成物では、ポリビニルアセタール樹脂の高い溶解性をもつ溶剤Aとポリビニルアセタール樹脂の低い溶解性をもつ溶剤Bを含有することを特徴とし、該積層セラミック部品製造用溶剤組成物によりニッケル、銀等の導電性金属材料やエチルセルロース等を混合して塗布ペーストを形成できる。尚、ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度および水酸基量は、特開平5−1109記載の方法に従って、1H核磁気共鳴スペクトル測定により測定できる。エトキシル基含有量は、特開平11−335137記載の方法に従って、ヨウ化水素酸によりエーテルを分解し、チオ硫酸ナトリウムで滴定することにより測定できる。
【0024】
本発明の積層セラミック部品製造用溶剤組成物は、低極性ポリビニルアセタール樹脂に対する高い溶解性とアルキルセルロース樹脂に対する高い溶解性を有するため、導体ペーストの有機溶剤として使用すると、被塗布シート密着性を付与させるバインダー樹脂としての低極性のポリビニルアセタール樹脂を溶解し、かつ、エチルセルロースなどのバインダー樹脂を溶解する。また、高極性ポリビニルアセタール樹脂に対する低い溶解性を有するため、高極性のポリビニルアセタール樹脂からなる被塗布シートに穴や皺が発生すること(シートアタック現象)を抑制、防止することができる。なお、本明細書において、低極性ポリビニルアセタール樹脂とは、ブチラール化度が69モル%以上77モル%以下、水酸基量が15モル%以上28モル%以下のポリビニルアセタール樹脂を指し、高極性ポリビニルアセタール樹脂とは、ブチラール化度が61モル%以上68モル%以下、水酸基量が29モル%以上37モル%以下のポリビニルブチラール樹脂を指す。
【0025】
<溶剤A>
溶剤Aとしては、ターピネオール(標準沸点:209℃〜218℃)、ジヒドロターピネオール(標準沸点:207℃〜210℃)、ジヒドロターピニルアセテート(標準沸点:220℃〜225℃)より沸点が低く、低極性のポリビニルアセタール樹脂に対する溶解性および、エチルセルロースに対する溶解度が高いものを用いる。溶剤Aとして具体的には、1atmのときの標準沸点が206℃以下(沸点が常圧で206℃以下;例えば、70〜206℃)であり、ブチラール化度68モル%以上77モル%以下、水酸基量15モル%以上28モル%以下の低極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g以上(例えば、5〜100g/100g)であり、且つ、エトキシル基含有量45.0〜53.0モル%のエチルセルロースの溶解度が25℃において5g/100g以上(例えば、5〜100g/100g)である溶剤を使用する。
【0026】
溶剤Aの低極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度(25℃)は、上記のブチラール化度68モル%以上77モル%以下、水酸基量15モル%以上28モル%以下の範囲にあるポリビニルブチラール樹脂のうちいずれかが、溶剤A 100gに対して、5g以上溶ければ良い。同様に、エチルセルロースの溶解度(25℃)としては、上記のエトキシル基含有量45.0〜53.0モル%の範囲にあるエチルセルロースのうちいずれかが、溶剤A 100gに対して、5g以上溶ければ良い。上記低極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度(25℃)は、8g/100g以上であることが好ましい。
【0027】
上記低極性ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度は68モル%以上77モル%以下であり、好ましくは70モル%以上75モル%以下である。また、水酸基量は15モル%以上28モル%以下であり、好ましくは16モル%以上27モル%以下である。上記低極性ポリビニルブチラール樹脂としては、市販の「エスレックBL−S」[積水化学(株)製;ブチラール化度74モル%、水酸基量22モル%]などが好ましく使用できる。溶剤Aは、「エスレックBL−S」樹脂を濃度が5重量%になるように添加し、液温65℃で5時間加熱溶解後、3〜10時間程度放冷した25℃の溶剤組成物について、目視観察において不溶物が観察されず、樹脂が完溶していることが好ましい。
【0028】
上記エチルセルロースのエトキシル基含有量としては、45.0〜53.0モル%が好ましく、48.0〜49.5モル%がより好ましい。上記エチルセルロースとしては、市販の「エトセルSTD」(ダウ・ケミカル社製;エトキシル基含有量48.0〜49.5モル%)などが好ましく使用できる。溶剤Aは、「エトセルSTD」樹脂を濃度が5重量%になるように添加し、液温65℃で5時間加熱溶解後、3〜10時間程度放冷した25℃の溶剤組成物について、目視観察において不溶物が観察されず、樹脂が完溶していることが好ましい。
【0029】
さらに、溶剤Aとしては、塗布工程で乾燥せず、乾燥工程で乾燥が容易である適度の乾燥性から、沸点が70℃以上206℃以下のものが好ましい。
【0030】
溶剤Aとしては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類;1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコール、C2-8のアルキルアルコール(直鎖、分岐も含む)、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコール;ジオキサン;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸‐n‐ブチル;プロピレンクロライド、エチレンクロライド;ジプロピレングリコールジメチルエーテル;プロピレングリコールジアセテート;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;3−メトキシブタノール等のジアルコールモノエーテル類;エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールモノエーテルモノエステル類;3−メトキシブチルアセテート等のジアルコールモノエーテルモノエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン;トルエン、キシレン、ピリジン等の芳香族類;及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶剤は単独で、または2種以上を混合して使用することができる。本発明においては、これらの中から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0031】
溶剤Aとしては、なかでも、1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコール、3−メトキシブタノール、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテートを用いることが好ましく、1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコールを用いることが特に好ましい。
【0032】
積層セラミック部品製造用溶剤組成物中の溶剤Aの含有量は、例えば、2〜98重量%、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは5〜50重量%とすることができる。溶剤Aの含有量がこのような範囲にあると、より安定したシートアタック現象抑制及び防止効果を発揮することができ、蒸発乾燥がより容易であり、その上、被塗布シートへの密着性をより良好にすることができる。なお、溶剤Aの含有量は、2種類以上を併用する場合には、それらの合計量である。
【0033】
<溶剤B>
溶剤Bとしては、溶剤Aより沸点が高く、高極性のポリビニルアセタール樹脂に対して溶解性が低いものを使用する。溶剤Bとして具体的には、標準沸点が上記溶剤Aの標準沸点よりも高く、且つブチラール化度61モル%以上68モル%以下、水酸基量29モル%以上37モル%以下の高極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g未満(例えば、0g/100g以上5g/100g未満)である有機溶剤を使用する。溶剤Bの高極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度(25℃)としては、上記のブチラール化度61モル%以上68モル%以下、水酸基量29モル%以上37モル%以下の高極性の範囲にあるポリビニルブチラール樹脂のうちいずれかが、溶剤B 100gに対して、5g以上溶けなければ良い。
【0034】
上記高極性ポリビニルブチラール樹脂のブチラール化度は61モル%以上68モル%以下であり、好ましくは63モル%以上65モル%以下である。また、水酸基量は29モル%以上37モル%以下であり、好ましくは30モル%以上36モル%以下である。上記高極性ポリビニルブチラール樹脂としては、市販の「エスレックBH−3」[積水化学(株)製;ブチラール化度65モル%、水酸基量34モル%]などが好ましく使用できる。具体的には、溶剤Bとしては、例えば「エスレックBH−3」樹脂5gを溶剤100gに添加し、液温65℃で5時間加熱溶解もしくは溶解した後、3〜10時間程度放冷した25℃の溶剤組成物について、目視観察において不溶物が確認され、樹脂の溶け残りが存在していればよい。
【0035】
上記高極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度(25℃)は、3g/100g以下(例えば、0〜3g/100g)であることが好ましい。
【0036】
さらに、溶剤Bとしては、通常のセラミック部品製造の乾燥条件より使用することができる溶剤沸点の上限が260℃程度であることから、沸点が260℃以下(例えば、75〜260℃)のものが好ましい。
【0037】
本発明においては、グリーンシートの侵食性が低い溶剤Bが乾燥工程で溶剤Aより後に、好ましくは一番最後に蒸発する必要があることから、溶剤Bは、組み合わせて使用する溶剤Aより沸点が高いものから選ばれる必要がある。溶剤Bの沸点は、組み合わせて使用する溶剤Aの沸点に対し、1℃以上高いことが好ましく、5℃以上高いことがさらに好ましい。
【0038】
溶剤Bとしては、例えば、トリアセチン等のトリエステル類;四塩化炭素;エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール等のグリコール類;1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジアルコール類;プロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、;1,3−ブチレングリコールジアセテート;1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート等のジアルコールジエステル類;ブチルカルビトールアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノペンチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテルアセテート等のグリコールモノエーテルモノエステル類;シクロヘキサン;乳酸エチルアセテート等の乳酸エステル類;及びジヒドロターピニルアセテート等が挙げられる。これらの溶剤は単独で、または2種以上を混合して使用することができる。本発明においては、これらの中から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0039】
溶剤Bとしては、なかでも、トリアセチン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、乳酸エチルアセテート、及びこれらの混合物が好ましく使用できる。
【0040】
溶剤Bとしては、トリアセチン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、乳酸エチルアセテート及びこれらの混合物がより好ましい。
【0041】
積層セラミック部品製造用溶剤組成物中の溶剤Bの含有量は、例えば、2〜98重量%、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは10〜90重量%とすることができる。溶剤Bの含有量がこのような範囲にあると、ニッケル、銀等の導電性金属材料の分散性が向上する傾向がある。なお、溶剤Bの含有量は、2種類以上を併用する場合には、それらの合計量である。
【0042】
本発明の積層セラミック部品製造用溶剤組成物は、標準沸点120〜195℃の溶剤Aと、標準沸点196〜260℃の溶剤Bとを含むことが好ましく、標準沸点180〜195℃の溶剤Aと、標準沸点196〜260℃の溶剤Bとを含むことがさらに好ましい。好ましい溶剤Aと溶剤Bの組み合わせとしては、溶剤Aとして1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコール(標準沸点188℃)に対し、溶剤Bとしてジプロピレングリコールプロピルメチルエーテル(標準沸点203℃)、トリアセチン(標準沸点260℃)、1,3−ブチレングリコール(標準沸点208℃)、ジプロピレングリコールブチルメチルエーテル(標準沸点216℃)、1,3−ブチレングリコールジアセテート(標準沸点232℃)、1,6−ヘキサンジオールジアセテート(標準沸点260℃)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(標準沸点213℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(標準沸点217℃)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(標準沸点247℃)、1,4−ブタンジオールジアセテート(標準沸点220℃)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0043】
<溶剤C>
また、本発明では、低極性のポリビニルアセタール樹脂の高い溶解性をもつ溶剤Aと高極性のポリビニルアセタール樹脂の低い溶解性をもつ溶剤Bに、粘度を上げるもしくは下げる他の有機溶剤(以下、「溶剤C」と称する場合がある)を混合することにより、塗布ペーストの有機溶剤としてより良好に使用できる。
【0044】
溶剤Cとしては、例えば、メタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクチルアルコール、メチルシクロヘキシルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、イソプロピルシクロヘキシルアルコール、ブチルシクロヘキシルアルコール、イソブチルシクロヘキシルアルコール、s−ブチルシクロヘキシルアルコール、t−ブチルシクロヘキシルアルコール、ペンチルシクロヘキシルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール;テトラヒドロフラン;酢酸メチル、エチルエーテル、シクロヘキサノールアセテート、シクロペンチルアセテート、シクロオクチルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、エチルシクロヘキシルアセテート、プロピルシクロヘキシルアセテート、イソプロピルシクロヘキシルアセテート、ブチルシクロヘキシルアセテート、イソブチルシクロヘキシルアセテート、s−ブチルシクロヘキシルアセテート、t−ブチルシクロヘキシルアセテート、ペンチルシクロヘキシルアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコールアセテート、1,5−ペンタンジオールジアセテート;メチレンクロライド、クロロホルム;ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル;エチレングリコールジアセテート;アセトン、イソホロン;n−ヘキサン;ターピネオール、メンタノール、メンタノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、リモネン、メンタン、及びメントール等が挙げられる。これらの溶剤は単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0045】
溶剤Cとしては、メタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、エチルエーテル、シクロヘキサノールアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコールアセテート、メチレンクロライド、クロロホルム、ブチルカルビトール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、イソホロン、n−ヘキサン、ターピネオール、メンタノール、メンタノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、リモネン、メンタン、及びメントール、及びこれらの混合物が好ましく使用できる。
【0046】
溶剤Cとしては、メタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール;テトラヒドロフラン;酢酸メチル、エチルエーテル、シクロヘキサノールアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコールアセテート;メチレンクロライド、クロロホルム;ブチルカルビトール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル;アセトン、イソホロン;n−ヘキサン;ターピネオール、メンタノール、メンタノールアセテート;及びこれらの混合物がより好ましく使用できる。
【実施例】
【0047】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0048】
実施例1〜7、比較例1〜6
下記表1に記載の比率で、1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコール[商品名「THBA」ダイセル化学工業(株)製]とトリアセチン[商品名「DRA−150」ダイセル化学工業(株)製]とジプロピレングリコールプロピルメチルエーテル[ダイセル化学工業(株)製]とを混合して、実施例1〜7の積層セラミック部品製造用溶剤組成物を調製した。また、下記表2に記載の比率で溶剤を混合して、比較例1〜6の溶剤組成物を調製した。
該溶剤組成物を3つに分け、第1の溶剤組成物にポリビニルブチラール樹脂[商品名「エスレックBL−S」、積水化学(株)製;ブチラール化度74モル%、水酸基量22モル%]を、第2の溶剤組成物にポリビニルブチラール樹脂[商品名「エスレックBH−3」、積水化学(株)製;ブチラール化度65モル%、水酸基量34モル%]を、第3の溶剤組成物にエチルセルロース(商品名「エトセルSTD」、ダウ・ケミカル社製;エトキシル基含有量48.0〜49.5モル%)をそれぞれ樹脂濃度が5重量%になるように添加し、液温65℃で5時間加熱溶解後、放冷した。
【0049】
樹脂溶解性の評価
実施例及び比較例において得られた溶剤組成物に対し、液温65℃で5時間加熱溶解操作を行った後、室温(25℃)で10時間程度放冷した時点において、目視観察により各樹脂が各溶剤組成物に対して溶解性を示すか否かを下記の基準で評価するとともに、各溶剤組成物の溶剤性能を下記の基準で総合的に評価した。
<樹脂溶解性の評価基準>
◎:樹脂がすべて溶解した。
○:樹脂がほぼ溶解した。
△:樹脂が一部溶解した。
×:樹脂が不溶であった。
【0050】
乾燥後の表面状態の評価
実施例及び比較例において得られた溶剤組成物を室温下、0.5μmの厚みのグリーンシートに塗布後、100℃で乾燥し、表面を顕微鏡観察して、破れ、皺の有無を確認した。各溶剤組成物の乾燥後の表面状態を下記の基準で総合的に評価した。
<グリーンシートの溶剤乾燥後の表面状態の評価基準>
○:グリーンシートに破れ、皺なし。
△:グリーンシートに破れ、皺一部有。
×:グリーンシートに破れ、皺有。
【0051】
<溶剤組成物の溶剤性能の評価基準>
○: 「エスレックBH−3」に室温(25℃)で不溶解性(△または×)を示し、且つ、「エトセルSTD」、「エスレックBL−S」をともに完溶する(◎)溶剤組成物(シートアタック現象が起こりにくく、且つエチルセルロース、ポリビニルブチラールのバインダー性能を発揮させることができる)で、且つ塗布乾燥後、グリーンシートに破れ、皺を起こさない溶剤組成物。
×: 上記以外の溶剤組成物:
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表中の略号は以下の通りである。
・THBA:1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコール[ダイセル化学工業(株)製、標準沸点188℃]
・n−OctOH:n−オクチルアルコール[東京化成工業(株)、試薬、標準沸点195℃]
・DRA−150:トリアセチン[ダイセル化学工業(株)製、標準沸点260℃、25℃における「エスレックBH−3」の溶解度 1g/100g以下]
・DPMNP:ジプロピレングリコールプロピルメチルエーテル[ダイセル化学工業(株)製、標準沸点203℃、25℃における「エスレックBH−3」の溶解度 5g/100g未満]
・DHTA:ジヒドロターピニルアセテート[日本香料薬品(株)製、試薬、標準沸点225℃、25℃における「エスレックBH−3」の溶解度 5g/100g未満]
・α−TPO:α−ターピネオール[東京化成工業(株)製、試薬、標準沸点218℃]

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準沸点が206℃以下であり、ブチラール化度69モル%以上77モル%以下、水酸基量15モル%以上28モル%以下の低極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g以上であり、且つエトキシル基含有量45.0〜53.0モル%のエチルセルロースの溶解度が25℃において5g/100g以上である溶剤Aと、標準沸点が該溶剤Aの標準沸点よりも高く、且つブチラール化度61モル%以上68モル%以下、水酸基量29モル%以上37モル%以下の高極性ポリビニルブチラール樹脂の溶解度が25℃において5g/100g未満である溶剤Bとを含むことを特徴とする積層セラミック部品製造用溶剤組成物。
【請求項2】
溶剤A、溶剤Bが、以下の標準沸点を示す溶剤である、請求項1記載の積層セラミック部品製造用溶剤組成物。
溶剤A:70℃〜206℃の標準沸点をもつ化合物
溶剤B:75℃〜260℃の標準沸点をもつ化合物
【請求項3】
溶剤A、溶剤Bが以下の溶剤から選ばれた少なくとも一つである、請求項1又は2に記載の積層セラミック部品製造用溶剤組成物。
溶剤A:1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコール、3−メトキシブタノール、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、及び3−メトキシブチルアセテートの中から選ばれた少なくとも1種
溶剤B:トリアセチン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、及び乳酸エチルアセテートから選ばれた少なくとも1種
【請求項4】
溶剤Aが1,2,5,6−テトラヒドロベンジルアルコールである、請求項3記載の積層セラミック部品製造用溶剤組成物。
【請求項5】
溶剤Bが以下から選ばれた少なくとも一つである、請求項3記載の積層セラミック部品製造用溶剤組成物。
溶剤B:トリアセチン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、及び乳酸エチルアセテートの中から選ばれた少なくとも1種
【請求項6】
さらに以下の溶剤Cを含んでいる、請求項1〜5の何れか1項に記載の積層セラミック部品製造用溶剤組成物。
溶剤C:メタノール、シクロヘキサノール、シクロペンタノール、シクロオクチルアルコール、メチルシクロヘキシルアルコール、エチルシクロヘキシルアルコール、プロピルシクロヘキシルアルコール、イソプロピルシクロヘキシルアルコール、ブチルシクロヘキシルアルコール、イソブチルシクロヘキシルアルコール、s−ブチルシクロヘキシルアルコール、t−ブチルシクロヘキシルアルコール、ペンチルシクロヘキシルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、エチルエーテル、シクロヘキサノールアセテート、シクロペンチルアセテート、シクロオクチルアセテート、メチルシクロヘキシルアセテート、エチルシクロヘキシルアセテート、プロピルシクロヘキシルアセテート、イソプロピルシクロヘキシルアセテート、ブチルシクロヘキシルアセテート、イソブチルシクロヘキシルアセテート、s−ブチルシクロヘキシルアセテート、t−ブチルシクロヘキシルアセテート、ペンチルシクロヘキシルアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコールアセテート、メチレンクロライド、クロロホルム、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、アセトン、イソホロン、n−ヘキサン、ターピネオール、メンタノール、メンタノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、リモネン、メンタン、及びメントールの中から選ばれた少なくとも1種以上
【請求項7】
溶剤Cが以下から選ばれた少なくとも一つである、請求項1〜6の何れか1項に記載の積層セラミック部品製造用溶剤組成物。
溶剤C:メタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、エチルエーテル、シクロヘキサノールアセテート、テトラヒドロフルフリルアルコールアセテート、メチレンクロライド、クロロホルム、ブチルカルビトール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、イソホロン、n−ヘキサン、ターピネオール、メンタノール、メンタノールアセテート、ジヒドロターピニルプロピオネート、リモネン、メンタン、及びメントールの中から選ばれた少なくとも1種以上

【公開番号】特開2012−204817(P2012−204817A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71145(P2011−71145)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】