説明

積層チューブ

【課題】 層間接着性、薬液透過防止性、柔軟性、低温耐衝撃性、耐薬品性に優れた積層チューブを提供すること。
【解決手段】 (A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層、及び(B)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(b)層を有する、少なくとも2層からなる積層チューブ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の末端アミノ基濃度有するポリアミドエラストマーからなる層と、前記ポリアミドに対して、反応性を有する官能基が導入された含フッ素系重合体からなる層を少なくとも含む積層チューブ、特に薬液透過防止性、層間接着性、柔軟性、低温耐衝撃性、耐薬品性に優れた積層チューブに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系樹脂は、耐熱性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、低摩擦性及び低誘電特性等に優れているため、幅広い分野で用いられており、特に、耐薬品性に優れているため、薬液搬送用チューブが、重要な用途として挙げられる。
【0003】
しかしながら、フッ素系樹脂は、接着性、塗装性、印刷適性、染色性、柔軟性などの点で必ずしも十分に満足できるものではない。そのため、フッ素系樹脂と他の熱可塑性樹脂とを複合化した成形品、即ち、フッ素系樹脂の欠点が他の熱可塑性樹脂によって補われるとともに、フッ素系樹脂の優れた特性をそのまま維持する、双方の樹脂の利点を有効に発現した成形品が期待されている。例えば、薬液搬送用チューブにおいて、薬液に直接接する内層には、エタノールやメタノール等の腐食性溶剤やその他薬液に対する耐薬品性及びこれらに対する薬液透過防止性に優れる樹脂を使用することが求められており、内層材料としては、フッ素系樹脂が最も好ましい材料候補の一つとして考えられる。
【0004】
しかしながら、フッ素系樹脂は、他の材料との接着性が極めて小さい為、他の熱可塑性樹脂と接着した場合に、剥離してしまうなどの問題があり、加工中や使用中に、層間剥離が生じないよう、強固な層間接着強度が必要である。層間接着強度を高める手段としては、予めフッ素系樹脂チューブを成形しておき、コロナ放電処理或いはナトリウムエッチング処理などの表面処理を行った後、他の熱可塑性樹脂を被覆する方法、予めフッ素系樹脂チューブを成形しておき、その外周面に接着層を施した後、該外層チューブを積層し一体に結着する方法、接着性樹脂を用いる共押出成形法等が挙げられる。表面処理工程や接着層の塗着工程を要することは、製造作業が煩わしく、また、これに伴い設備を必要とし、製造コストの増大をもたらし、接着性樹脂を用いる共押出成形法は、これら処理工程が不要なため、低コストな方法と言える。
【0005】
また、積層チューブとしては、硬質のものでも差支えないが、渦巻状に巻いた状態で運搬したり、所望に曲げて配管作業に便利であり、さらに繰り返される折り曲げに対しての耐久性、柔軟性を有する積層チューブを提供することが求められている。
特に、インクジェット記録装置等の画像形成装置において、貯蔵された容器(インクタンク)から記録ヘッド等の吐出手段にインクを供給するために接続されるインク供給用チューブは、固定設置される容器と、繰り返し移動する印刷ヘッドとを連係するものであるから、繰り返される折り曲げに対して高い耐久性を有していること、すなわち、優れた柔軟性を有していることが要求される。特に、冬場のような低温下においても硬直化せず、優れた柔軟性を保持できるものであることが要求される。
【0006】
積層チューブを柔軟化するために、ポリアミド系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂やそのエラストマー等とフッ素系樹脂を積層したチューブが提案されている。
【0007】
内層にポリフッ化ビニリデンを、外層にポリウレタン樹脂又はポリウレタン系エラストマーを用いて、共押出し成形で接着性を向上させた積層チューブが記載されている。この2層チューブは、PVDF層の硬度が高く、折り曲げた際に白化する。特に低温領域では脆くなるという欠点を有している。
【0008】
内層にフッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体を、外層にポリウレタン系エラストマーを用いた積層チューブが記載されている。しかしながら、これら積層チューブにおいても、層間接着強度が小さく実使用に値しない、あるいは、初期の層間接着強度が十分である場合でも、薬液と接触・浸漬した状況下にて継続使用した場合等、層間接着強度の耐久性(以下、薬液耐性と称する。)が不充分であったり、また、曲げ加工時、層間接着強度不足のため、層間剥離する場合がある。よって、層間接着性に優れ、かつ柔軟性を兼備し、共押出成形法にて、安価かつ安定的に製造可能な積層チューブの開発が望まれるところである。
【0009】
【特許文献1】特開平8−142151号公報
【特許文献2】特開平10−286897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、前述の問題点を解決しようとするものであり、ポリアミドエラストマーからなる層と、含フッ素系重合体からなる層よりなる積層チューブにおいて、層間接着性、薬液透過防止性、柔軟性、低温耐衝撃性、耐薬品性に優れた積層チューブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の末端アミノ基濃度を満たすポリアミドエラストマーと、ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体を積層することにより、この両層が極めて強固に接着した、きわめて優れた層間接着強度を有し、さらに柔軟性をも兼備した積層チューブが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層、及び(B)ポリアミド系樹脂との反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(b)層を有する、少なくとも2層からなることを特徴とする積層チューブに関するものである。
具体的には、特許請求の範囲に記載されており、以下に詳細に説明する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の積層チューブは、層間接着性と薬液透過防止性、さらに柔軟性を兼備している。積層チューブにおける内層材料として、フッ素系重合体を使用することにより、チューブ隔壁からの薬液の透過を抑制することができる。さらに、特定の末端基濃度を有するポリアミドエラストマーと、該材料に対して反応性を有する含フッ素系重合体を積層することにより、初期のみならず、燃料浸漬後において層間接着強度の低下という欠点が見られず、層間接着強度の薬液耐性に優れ、かつ柔軟性、耐折り曲げ性も良好であることから、その利用価値は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明において使用される、(A)ポリアミドエラストマーは、末端アミノ基濃度が20μeq/g以上を満たす限りにおいては、公知のポリアミド系公知のポリアミドエラストマーを用いることができる。
【0015】
本発明において使用される、(A)ポリアミドエラストマーの末端アミド基濃度は20μeq/ポリマー1g以上であり、好ましくは25μeq/ポリマー1g以上、より好ましくは30μeq/ポリマー1g以上である。末端アミノ基濃度が20μeq/ポリマー1g未満の場合、積層される相手材との層間接着性に劣るため、好ましくない。さらに、末端アミノ基濃度が80μeq/ポリマー1g以下であることが、重合、生産性の点から好ましい。
【0016】
なお、ポリアミドエラストマーの末端アミノ基濃度(μeq/ポリマー1g)は、ポリアミドエラストマーをフェノール・メタノール混合溶液に溶解し、0.05Nの塩酸で滴定して測定することができる。
【0017】
ポリアミドエラストマーとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12から選ばれる少なくとも1種の脂肪族ナイロンからなるポリアミドブロックと、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンから選ばれる少なくとも1種のポリエーテルブロックとから構成されるエラストマーなどを用いることができる。
【0018】
ポリアミドエラストマーは、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックからなる熱可塑性エラストマーが好ましく、ASTM D−2240に準拠して測定した硬度(ショアD)は、好ましくは15〜70の範囲、さらに好ましくは18〜70の範囲、より好ましくは20〜70の範囲、特に好ましくは25〜70の範囲が好ましい。さらに、ASTM D−790に準拠して測定した曲げ弾性率が、好ましくは20〜450MPa、さらに好ましくは20〜400MPa、より好ましくは20〜350MPa、特に好ましくは20〜300MPaが好ましい。
【0019】
本発明において使用されるポリアミドエラストマーは、下記に示すポリエーテルアミドエラストマー(X)が、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、特に90重量%以上含むことが好ましい。
【0020】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、ポリアミドブロックとポリエーテルブロックの間を好ましくはアミド結合で結合したポリアミド系熱可塑性エラストマーであればよく、別々に生成し末端に反応基を有するポリアミドブロック及びポリエーテルブロックを、末端の反応基で相互に結合させても得ることができるが、好適には、式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)、ポリアミド形成性モノマー(A2)、及びジカルボン酸化合物(A3)を重合して得ることができる。
本発明において、ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)、ポリアミド形成性モノマー(A2)、及びジカルボン酸化合物(A3)を重合して得られる重合体であることが好ましい。
【0021】
【化1】

(但し、x及びzは1〜20であり、yは4〜50を示す。)
【0022】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、溶融成形性、成形加工性、強靭性、耐屈曲疲労性、反発弾性、低比重性、低温柔軟性、低温耐衝撃性、伸長回復性、消音特性、ゴム的な性質及び透明性などに優れているため、本発明の積層チューブの構成材料として用いることができる。
【0023】
ポリアミドエーテルエラストマー(X)において、式(1)で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)、ポリアミド形成性モノマー(A2)、及びジカルボン酸化合物(A3)に含まれる末端のカルボン酸及び/又はカルボキシル基と、末端のアミノ基とがほぼ等モルになるような割合が好ましい。
特にポリアミドエーテルエラストマー(X)において、ポリアミド形成性モノマー(A2)の一方の末端がアミノ基で、他方の末端がカルボン酸及び/又はカルボキシル基の場合、トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)のアミノ基と、ジカルボン酸化合物(A3)のカルボン酸及び/又はカルボキシル基とがほぼ等モルになるような割合が好ましい。
【0024】
ABA型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)は、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコールなどの両末端に、プロピレンオキシドを付加することによりポリプロピレングリコールとした後、このポリプロピレングリコールの末端にアンモニアなどを反応させることによって製造されるポリエーテルジアミンなどを用いることができる。
【0025】
ABA型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)において、式(1)のx及びzは1〜20、好ましくは1〜18、さらに好ましくは1〜16、より好ましくは1〜14、特に好ましくは1〜12であり、yは4〜50、好ましくは5〜45、さらに好ましくは6〜40、より好ましくは7〜35、特に好ましくは8〜30である。
【0026】
ポリアミド形成性モノマー(A2)としては、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、脂環族及び/又は芳香族を含むものを使用できる。
特に、ポリアミド形成性モノマー(A2)としては、アミノカルボン酸化合物、ラクタム化合物、或いはジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩から選ばれる少なくとも一種の脂肪族、或いは脂環族からなるものが好ましい。
【0027】
ポリアミド形成性モノマー(A2)において、アミノカルボン酸化合物としては、アミノ基と、カルボン酸或いはカルボキシル基を有する化合物を用いることができる。アミノカルボン酸化合物は、ω−アミノカルボン酸化合物が好ましく、さらに、下記式(3)で表される化合物が好ましい。
【化2】

(但し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
【0028】
式(3)で表される化合物において、Rは、炭素原子数2〜20の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数2〜20を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数3〜18の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜15の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数5〜11の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数5〜11を有するアルキレン基を示す。
【0029】
ポリアミド形成性モノマー(A2)において、アミノカルボン酸化合物の具体例としては、6−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、10−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸のような炭素原子数5〜20の脂肪族ω−アミノカルボン酸などを挙げることができる。
【0030】
ラクタム化合物は、下記式(4)で表される化合物などを用いることができる。
【化3】

(但し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
式(4)で表される化合物において、Rは、炭素原子数3〜20の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜20を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数3〜18の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数3〜18を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜15の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜15を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数5〜11の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数5〜11を有するアルキレン基を示す。
【0031】
ポリアミド形成性モノマー(A2)において、ラクタム化合物の具体例としては、2−ピロリドン、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−ウンデカラクタム、ω−ドデカラクタムのような炭素原子数5〜20の脂肪族ラクタム化合物などを挙げることができる。
【0032】
ポリアミド形成性モノマー(A2)におけるジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、ジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン及び芳香族ジアミン、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジアミン化合物などを挙げることができる。
また、ジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸などを挙げることができる。
特にジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及びそれらの塩において、脂肪族ジアミン化合物と脂肪族カルボン酸化合物の組み合わせが好ましい。
【0033】
前記ジアミンとジカルボン酸のモル比(ジアミン/ジカルボン酸)は0.9〜1.1の範囲が好ましく、0.93〜1.07の範囲がさらに好ましく、0.95〜1.05の範囲がより好ましく、0.97〜1.03の範囲が特に好ましい。この範囲から外れると高分子量化しにくくなる場合がある。
【0034】
前記ジアミンの具体例としては、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、3−メチルペンタメチレンジアミンなどの炭素原子数2〜20の脂肪族ジアミンなどのジアミン化合物を挙げることができる。
前記ジカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸のような炭素原子数2〜20の脂肪族ジカルボン酸などのジカルボン酸化合物(A3)を挙げることができる。
【0035】
ジカルボン酸化合物(A3)としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸、或いはこれらの誘導体から選ばれる少なくとも一種のジカルボン酸などを挙げることができる。
ジカルボン酸化合物(A3)としては、式(2)で表されるジカルボン酸化合物を用いることができる。ジカルボン酸化合物(A3)は、脂肪族或いは脂環族のジカルボン酸化合物が好ましい。
【化4】

(但し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
【0036】
ジカルボン酸化合物(A3)としては、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの炭素数2〜25の直鎖脂肪族ジカルボン酸、又は、トリグリセリドの分留により得られる不飽和脂肪酸を二量化した炭素数2〜500の二量化脂肪族ジカルボン酸(ダイマー酸)及びこれらの水素添加物(水添ダイマー酸)などの脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸及び、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸などを挙げることができる。
ダイマー酸及び水添ダイマー酸としては、ユニケマ社製商品名「プリポール1004」、「プリポール1006」、「プリポール1009」、「プリポール1013」などを用いることができる。
【0037】
式(2)で表される化合物において、mは0又は1を示し、mが1の場合、Rは炭素原子数1〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数1〜12を有するアルキレン基が好ましく、さらに好ましくは炭素原子数2〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数2〜12を有するアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数4〜12の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜12を有するアルキレン基であり、特に好ましくは炭素原子数4〜10の炭化水素の分子鎖又は炭素原子数4〜10を有するアルキレン基を示す。
【0038】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)において、式(1)のジアミンの割合は、式(1)からジアミン基を除く単位を好ましくは15〜80重量%、さらに好ましくは15〜75重量%、より好ましくは18〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%が好ましい。
【0039】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造方法として、一例を挙げると、ポリアミド形成性モノマー(A2)、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン(A1)及びジカルボン酸化合物(A3)の3成分を同時に、加圧及び/又は常圧下で溶融重合し、又は必要に応じさらに減圧下で溶融重合する工程からなる方法を用いることができる。製造に当たり原料の仕込み方法に特に制限はないが、ポリアミド形成性モノマー(A2)、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン(A1)及びジカルボン酸化合物(A3)の仕込み割合は、それぞれ全成分に対してポリアミド形成性モノマー(A2)は10〜95重量%が好ましく、15〜90重量%が特に好ましい。原料のうち、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン(A1)及びジカルボン酸化合物(A3)は、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン(A1)のアミノ基とジカルボン酸化合物(A3)のカルボキシル基がほぼ等モルになるように仕込むことが好ましい。
【0040】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)の製造は、重合温度が好ましくは150〜300℃、さらに好ましくは160〜280℃、特に好ましくは180〜250℃で行うことができる。
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、ポリアミド形成性モノマー(A2)としてω−アミノカルボン酸を使用する場合、常圧溶融重合又は常圧溶融重合とそれに続く減圧溶融重合での工程からなる方法で製造することができる。
一方、ポリアミド形成性モノマー(A2)としてラクタム、又はジアミンとジカルボン酸から合成されるもの及び/又はそれらの塩を用いる場合には、適量の水を共存させ、0.1〜5MPaの加圧下での溶融重合とそれに続く常圧溶融重合及び/又は減圧溶融重合からなる方法で製造することができる。
【0041】
ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、回分式でも、連続式でも製造することができ、バッチ式反応釜、一槽式ないし多槽式の連続反応装置、管状連続反応装置などを単独であるいは組み合わせて製造することができる。
【0042】
ポリアミドエラストマー及びポリエーテルアミドエラストマー(X)は、相対粘度(ηr)が1.2〜3.5(0.5重量/容量%メタクレゾール溶液、25℃)が好ましい。
【0043】
本発明において使用されるポリアミドエラストマーは、特定の末端アミノ基濃度を満たす。その製造に際しては、前記ポリアミド原料をアミン類の存在下、溶融重合、溶液重合や固相重合等の公知の方法で重合、又は共重合する事により製造される。あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、アミン類は、基本的には、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、積層チューブにおける層間接着強度の薬液耐性を考慮した場合、重合時の段階で添加することが好ましい。本発明において使用されるポリアミドエラストマーは、ポリエーテルアミドエラストマー(X)が、50重量%以上含有される。該ポリエーテルアミドエラストマー(X)は、ABA型トリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)を構成成分とするため、本発明に規定されている末端アミノ基濃度を満たすことが可能となる。
【0044】
さらに、ポリアミドエラストマーは、特性を損なわない範囲、本発明に規定する末端アミノ基濃度を満たす限りにおいては他のポリアミド系樹脂又はその他の熱可塑性樹脂を含むことが出来る。
【0045】
他のポリアミド系樹脂としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼパミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナメチレンアゼパミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリトリメチルヘキサメチレンテレフタラミド(ポリアミドTMHT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)やこれらポリアミド原料モノマーを数種用いた共重合体等を挙げることができる。
【0046】
また、その他の熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が含有された上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PEAK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン系樹脂等を挙げることができる。これらは、単独で使用しても、併用して使用としても良い。
【0047】
本発明の樹脂組成物は、その特性が阻害されない範囲で、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、離型剤、可塑剤、顔料、染料、香料、難燃剤、補強材、導電性フィラーなどを添加することができる。
【0048】
本発明において使用される、(B)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体は、反応性を有する官能基を分子構造内に有している含フッ素系重合体を指す(以下、「(B)含フッ素系重合体」と称する場合がある。)。
(B)含フッ素系重合体とは、少なくとも1種の含フッ素単量体から誘導される繰り返し単位を有する重合体(単独重合体又は共重合体)である。熱溶融加工可能な含フッ素系重合体であれば特に限定されるものではない。例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、フッ化ビニリデン/ペンタフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/パーフルオロアルキルビニルエーテル/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、フッ化ビニリデン/クロロトリフルオロエチレン共重合体やこれら混合物が使用され得る。
【0049】
上記例示の(B)含フッ素系重合体の中でも、耐熱性、耐薬品性の面で、テトラフルオロエチレン単位を必須成分とする含フッ素系重合体、成形加工の面では、フッ化ビニリデン単位を必須成分とする含フッ素系重合体が好ましく、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)が好ましい。
【0050】
エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(以下、ETFEと称する場合がある。)とは、エチレン(以下、Eと称する場合がある。)に基づく重合単位とテトラフルオロエチレン(以下、TFEと称する場合がある。)に基づく重合単位からなり、その重合比(モル比)が80/20〜20/80であり、好ましくは、70/30〜30/70、特に好ましくは、60/40〜40/60である。
【0051】
(Eに基づく重合単位)/(TFEに基づく重合単位)のモル比が極端に大きい場合、当該ETFEの耐熱性、耐候性、耐薬品性、薬液透過防止性等が低下し、一方、モル比が極端に小さい場合、機械的強度、溶融成形性等が低下する。この範囲にあると、該ETFEが、耐熱性、耐候性、耐薬品性、薬液透過防止性、機械的強度、溶融成形性等に優れたものとなる。
【0052】
(B)含フッ素系重合体には、上記E、TFEに基づく重合単位に加えて、その本質的な特性を損なわない範囲で他の単量体を1種以上含んでもよい。
他の単量体としては、プロピレン、ブテン等のα−オレフィン類、CH=CX(CFY(ここで、X及びYは独立に水素又はフッ素原子、nは2〜8の整数である。)で表される化合物、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン(HFIB)等の不飽和基に水素原子を有するフルオロオレフィン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)(PBVE)やその他パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)の等の不飽和基に水素原子を有しないフルオロオレフィン(ただし、TFEを除く。)、メチルビニルエーテル(MVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル(BVE)、イソブチルビニルエーテル(IBVE)、シクロへキシルビニルエーテル(CHVE)等のビニルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニルのビニルエステル類、アルキル(メタ)アクリレート、(フルオロアルキル)アクリレート、(フルオロアルキル)メタクリレート等が好ましいものとして挙げられる。これら、その他単量体は、その1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
(B)含フッ素系重合体において、前記一般式CH=CX(CFYで表される化合物(以下、「FAE」という。)を使用することが望ましい。FAEに基づく重合単位の含有量は、(B)含フッ素系重合体中において、0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜15モル%がより好ましく、1〜10モル%が最も好ましい。FAEの含有量が少なすぎると耐クラック性が低下し、ストレス下に(B)含フッ素系重合体の割れる等の破壊現象が発生しやすくなり、多すぎると(B)含フッ素系重合体の強度が低下する。
【0054】
FAEは、上記のとおり、一般式CH=CX(CFY(ここで、X、Yはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、nは2〜8の整数である。)で表される化合物である。式中のnが2より少ないと含フッ素系重合体の改質(たとえば、共重合体の成形時や成形品のクラック発生の抑制)が十分になされず、一方、式中のnが8より多くなると重合反応性の点で不利になる。
【0055】
FAEとしては、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFF、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CF(CFH、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFF、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH、CH=CH(CFH等が挙げられる。
【0056】
このなかでも、特に、CH=CH(CFYで表される化合物が好ましく、その場合、式中のnは、n=2〜4であることが、(C)含フッ素系重合体が薬液透過防止性と耐クラック性を両立するのでより好ましい。
【0057】
フッ化ビニリデン共重合体とは、フッ化ビニリデンに基づく重合単位と、これと共重合可能な少なくとも一種の含フッ素単量体からなる共重合体である。ここでフッ化ビニリデンに基づく重合単位と共重合可能なその他の単量体としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロイソブチレン、ヘキサフルオロアセトン、ペンタフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、ビニルフルオライド、フルオロ(アルキルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン等が例示される。フッ化ビニリデン系共重合体において、フッ化ビニリデンに基づく重合単位の量は、全重合単位中の少なくとも30モル%以上である。テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)は、好ましいフッ化ビニリデン共重合体として挙げることができる。
【0058】
本発明において使用される(B)含フッ素系重合体は、重合体を構成する単量体を従来からの重合方法で(共)重合することによって得ることができる。その中でも主としてラジカル重合による方法が用いられる。すなわち重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、たとえば有機、無機ラジカル重合開始剤、熱、光あるいは電離放射線等によって開始される。
【0059】
(B)含フッ素重合体の製造方法は特に制限はなく、一般に用いられているラジカル重合開始剤を用いる重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合等、従来公知の方法を採用できる。
また、重合は、一槽ないし多槽式の攪拌型重合装置、管型重合装置を使用して、回分式又は連続式操作とすることができる。
【0060】
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である分解温度が0℃〜100℃であるものが好ましく、20〜90℃であるものがより好ましい。具体例としては、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−メチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビス(2−シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2′−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2′−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4′−アゾビス(4−シアノペンテン酸)等のアゾ化合物、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド、アセチルパーオキシド、イソブチリルパーオキシド、オクタノイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の非フッ素系ジアシルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシイソブチレート、tert−ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル、tert−ブチルヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド、(Z(CFCOO)(ここで、Zは水素原子、フッ素原子又は塩素原子であり、pは1〜10の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルパーオキシド、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。
【0061】
また、(B)含フッ素系重合体の製造に際しては、分子量調整のために、通常の連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン、1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のクロロハイドロカーボンが挙げられる。
【0062】
重合条件については特に限定されず、重合温度は、0℃〜100℃が好ましく、20〜90℃がより好ましい。重合体中のエチレン−エチレン連鎖生成による耐熱性の低下を避けるためには、一般に低温が好ましい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量及び蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、0.1〜10MPaが好ましく、0.5〜3MPaがより好ましい。重合時間は1〜30時間が好ましい。
【0063】
また、(B)含フッ素系重合体の分子量は特に限定されないが、室温で固体の重合体であり、それ自体、熱可塑性樹脂、エラストマー等として使用できるものが好ましい。また、分子量は、重合に用いる単量体の濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度によって制御される。
【0064】
(B)含フッ素系重合体を、前記(A)等のポリアミド系樹脂と共押出する場合、ポリアミド系樹脂の著しい劣化を伴わない混練温度及び成形温度範囲で、充分な溶融流動性を確保するためには、(B)含フッ素重合体の融点より50℃高い温度、及び5Kg荷重におけるASTM D1238に準じたメルトフローレートが、0.5〜200g/10分、好ましくは、1〜100g/10分である。
【0065】
また、(B)含フッ素系重合体は、含フッ素単量体及びその他の単量体の種類、組成比等を選ぶ事によって、重合体の融点、ガラス転移点を調節することができる。
(B)含フッ素系重合体の融点は、目的、用途、使用方法により適宜選択されるが、前記(A)等のポリアミド系樹脂と共押出する場合、当該ポリアミド系樹脂の成形温度に近いことが好ましい。そのため、前記含フッ素単量体及びその他の単量体及び後述の官能基含有単量体の割合を適宜調節し、(B)含フッ素系重合体の融点を最適化することが好ましい。
【0066】
本発明の(B)含フッ素系重合体は、ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基を分子構造内に有しており、官能基は、(B)含フッ素系重合体の分子末端又は側鎖又は主鎖のいずれに含有されていても構わない。また、官能基は、(B)含フッ素系重合体中に単独、又は2種類以上のものが併用されていてもよい。その官能基の種類、含有量は、(B)含フッ素系重合体に、積層される相手材の種類、形状、用途、要求される層間接着性、接着方法、官能基導入方法等により適宜決定される。
【0067】
ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、ヒドロキシル基、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、シアノ基、カーボネート基、及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。特に、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、ヒドロキシル基、エポキシ基、カーボネート基、及びカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。最も好ましくは、カルボキシル基、酸無水物基およびカルボン酸ハライド基からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0068】
(B)含フッ素系重合体に、反応性を有する官能基を導入する方法としては、(i)(B)含フッ素系重合体の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤、連鎖移動剤等により、重合時に(B)含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法、(iii)反応性を有する官能基をグラフト化が可能な官能基とを有する化合物(グラフト化合物)を含フッ素系重合体にグラフトさせる方法等が挙げられる。これらの導入方法は単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。積層チューブにおける層間接着強度の燃料浸漬時の耐久性を考慮した場合、上記(i)、(ii)から製造される(B)含フッ素系重合体が好ましい。(iii)については、特開平7−18035号公報、特開平7−25952号公報、特開平7−25954号公報、特開平7−173230号公報、特開平7−173446号公報、特開平7−173447号公報、特表平10−503236号公報による製造法を参照されたい。以下、(i)含フッ素系重合体の重合時、官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤等により含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法について説明する。
【0069】
(i)(B)含フッ素系重合体の製造時、官能基を有する共重合可能な単量体(以下、官能基含有単量体と略記する場合がある。)を共重合する方法において、カルボキシル基、酸無水物基もしくはカルボン酸塩、ヒドロキシル基、スルホ基もしくはスルホン酸塩、エポキシ基、シアノ基から選ばれる少なくとも1種以上の官能基含有単量体を重合単量体して用いる。官能基含有単量体としては、官能基含有非フッ素単量体、官能基含有含フッ素単量体等が挙げられる。
【0070】
官能基含有非フッ素単量体としては、アクリル酸、ハロゲン化アクリル酸(但し、フッ素は除く)、メタクリル酸、ハロゲン化メタクリル酸(但し、フッ素は除く)、マレイン酸、ハロゲン化マレイン酸(但し、フッ素は除く)、フマル酸、ハロゲン化フマル酸(但し、フッ素は除く)、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和カルボン酸やそのエステル等誘導体、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等のカルボキシル基含有単量体及びその誘導体、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルエーテル等のエポキシ基含有単量体、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、ヒドロキシルアルキルビニルエーテル等のヒドロキシル基含有単量体等を挙げることができる。
【0071】
前記官能基含有含フッ素単量体の具体例としては、
CF=CFOCFCFCOOH
CF=CFO(CFCOOH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOOH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCOOH
CF=CFCFCOOH
CF=CFCFCFCOOH
CF=CFOCFCFCOONH
CF=CFO(CFCOONa
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCOONH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCF(CF)OCFCFCOONa
CF=CFCFCOONH
CF=CFCFCFCOOZn
CF=CFOCFCFCHOH
CF=CFO(CFCHOH
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCHOH
CF=CFCFCHOH
CF=CFCFCFCHOH
CF=CFOCFCFSO
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSO
CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCN
CF=CFCFOCFCFCFCOOH
CF=CFCFOCFCF(CF)COOH
CF=CFCFOCFCFCFCOONH
CF=CFCFOCFCF(CF)COONH
CF=CFCFOCFCFCFCOONa
CF=CFCFOCFCF(CF)COOZn
CF=CFCFOCFCFCFCHOH
CF=CFCFOCFCF(CF)CHOH
CF=CFCFOCFCFCFSO
CF=CFCFOCFCFCFCN
CH=CFCFCFCHCOOH
CH=CFCFCFCOOH
CH=CF(CFCOOH
CH=CF(CFCHCOOH
CH=CFCFOCF(CF)COOH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOH
CH=CFCFCFCHCOONH
CH=CFCFCFCOONa
CH=CF(CFCHCOOZn
CH=CFCFOCF(CF)COONH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COONH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOZn
CH=CFCFCFCHCHOH
CH=CFCFCFCHOH
CH=CF(CFCHCHOH
CH=CFCFOCF(CF)CHOH
CH=CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)CHOH
CH=CHCFCFCHCOOH
CH=CH(CFCHCHCOOH
CH=CH(CFCHCHCOOH
CH=CH(CFCHCOOH
CH=CH(CFCHCOONH
CH=CH(CFCHCHCOONa
CH=CH(CFCHCOOZn
CH=CHCFCFCHCHOH
CH=CH(CFCHCHCHOH
CH=CH(CFCHCHOH
等が例示される。
【0072】
(B)含フッ素系重合体中の官能基含有単量体の含有率は、全重合単位中、0.05〜20モル%、好ましくは0.05〜10モル%、特に好ましくは0.1〜5モル%である。官能基含有単量体の含有率が0.05モル%未満であると、層間接着性が充分得られにくく、使用環境条件により、層間接着性の低下、特に、層間接着強度の薬液耐性に劣る。また、20モル%を超えると耐熱性を低下させ、高温での加工時の接着不良や着色や発泡、高温での使用時の分解による、剥離や着色・発泡、溶出等を起こしやすい。また、上記含有量を満たす限りにおいて、官能基含有単量体からなる含フッ素系重合体と、官能基含有しない単量体からなる含フッ素系重合体の混合物であって構わない。
【0073】
(ii)重合開始剤等により含フッ素系重合体の分子末端に官能基を導入する方法において、(B)含フッ素系重合体の分子末端に官能基が有するとは、重合体分子鎖の片末端又は両末端に官能基をもつ重合体であり、末端に導入される官能基としては、カーボネート基、カルボン酸ハライド基が好ましい。
【0074】
(B)含フッ素系重合体の末端基として導入されるカーボネート基とは、一般に−OC(=O)O−の結合を有する基であり、具体的には、−OC(=O)O−R基[Rは水素原子、有機基(例えば、C1〜C20アルキル基、エーテル結合を有するC2〜C20アルキル基等)又はI、II、VII族元素である。]の構造のものである。カーボネート基の例は、−OC(=O)OCH、−OC(=O)OCH−OC(=O)OC17、−OC(=O)OCHCHOCHCH等が好ましく挙げられる。カルボン酸ハライド基とは、具体的には−COY[Yはハロゲン元素]の構造のもので、−COF、−COCl等が例示される。
【0075】
また、重合体の分子末端にカーボネート基を導入するためには、重合開始剤や連鎖移動剤を使用した種々の方法を採用できるが、パーオキサイド、特にパーオキシカーボネートを重合開始剤として用いる方法が、経済性の面、耐熱性、耐薬品性等の品質の面で好ましく採用できる。また、パーオキシカーボネートを用いた場合には、重合温度を低くする事が可能であり、開始反応に副反応を伴わないことから好ましい。
【0076】
重合体の分子末端にカルボン酸ハライド基を導入するためには、種々の方法を採用できるが、例えば、前述のカーボネート基を末端に有する含フッ素系重合体のカーボネート基を加熱させ熱分解(脱炭酸)させることにより得ることができる。
【0077】
パーオキシカーボネートとしては、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−イソプロピルパーオキシカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシメタクリロイロキシエチルカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等が好ましい。
【0078】
パーオキシカーボネートの使用量は、目的とする重合体の種類(組成等)、分子量、重合条件、使用する開始剤の種類によって異なるが、重合によって得られる全重合体100重量部に対して0.05〜20重量部、特に0.1〜10重量部であることが好ましい。重合体の分子末端のカーボネート基含有量は、重合条件を調整することによって制御できる。重合開始剤の使用量が多いと、重合速度の制御が困難であり、少ないと、重合速度が遅くなる。重合開始剤の添加法は特に限定されず、重合開始時に一括添加してもよいし、重合中に連続添加しても良い。添加方法は、重合開始剤の分解反応性と重合温度により適宜選択される。
【0079】
(B)含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対する末端官能基数は、150〜3000個、好ましくは200〜2000個、さらに好ましくは、300〜1000個である。官能基数が150個未満であると、層間接着性が充分得られにくく、使用環境条件により、層間接着性の低下、特に、層間接着強度の薬液耐性に劣る。また、3000個を超えると耐熱性を低下させ、高温での加工時の接着不良や着色や発泡、高温での使用時の分解による、剥離や着色・発泡、溶出等を起こしやすい。また、上記官能基数を満たす限りにおいて、官能基含有単量体からなる含フッ素系重合体と、官能基含有しない単量体からなる含フッ素系重合体の混合物であって構わない。
【0080】
以上のように、本発明において使用される(B)含フッ素系重合体は、ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が導入された含フッ素系重合体である。上述の通り、官能基が導入された(B)含フッ素系重合体は、それ自体、(B)含フッ素系重合体特有の耐熱性、耐水性、低摩擦性、耐薬品性、耐候性、防汚性、薬液透過防止性等の優れた特性を維持することが可能であり、生産性、コストの面で有利である。
さらに、官能基が分子鎖中に含有されることにより、積層チューブにおいて、層間接着性が不充分又は不可能であった種々の材料に対し、表面処理等特別な処理や接着性樹脂の被覆等を行なわず、直接に優れた他の基材との層間接着性を付与することができる。
【0081】
本発明において使用される(B)含フッ素系重合体は、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素繊維、金属酸化物、あるいはカーボン等の種々の充填剤を配合できる。また、充填剤以外に、顔料、紫外線吸収剤、その他任意の添加剤を混合できる。添加剤以外にまた他のフッ素系樹脂や熱可塑性樹脂等の樹脂、合成ゴム等を配合することもでき、機械特性の改善、耐候性の改善、意匠性の付与、静電防止、成形性改善等が可能となる。
【0082】
本発明に係わる積層チューブは、(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層、及び(B)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体((B)含フッ素系重合体)からなる(b)層を有する、少なくとも2層以上から構成される。
【0083】
本発明の積層チューブにおいて、さらに好ましい実施様態としては、(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層は、積層チューブの最外層に配置される。(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる層が最外層に配置されることにより、柔軟性、耐振動性に優れる積層チューブが得られる。
【0084】
本発明の積層チューブにおいて、(B)含フッ素系重合体からなる(b)層を含むことは必須であり、積層チューブの(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層に対して内側に配置されることがより好ましい。(B)含フッ素系重合体からなる(b)層が含まれないと積層チューブの薬液透過防止性、耐薬品性が低下する。さらに、(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層と、(B)含フッ素系重合体からなる(b)層が直接接着される配置が、層間接着性、特に、長期に亘って層間接着強度の薬液耐性に優れる点から好ましい。
【0085】
積層チューブの外径は、薬液等の流量を考慮し、肉厚は薬液透過性が増大せず、また、通常のチューブの破壊圧力を維持できる厚さで、かつ、チューブの組み付け作業容易性及び使用時の耐振動性が良好な程度の柔軟性を維持することができる厚さに設計されるが、限定されるものではない。好ましくは、外径は1.5〜150mm、内径1〜100mm、肉厚は0.25〜25mmである。
【0086】
本発明の積層チューブでは、各層の厚さは特に制限されず、各層を構成する重合体の種類、積層チューブにおける全体の層数、用途等に応じて調節し得るが、それぞれの層の厚みは、積層チューブの薬液透過防止性、低温耐衝撃性、柔軟性等の特性を考慮して決定され、一般には、(a)層、(b)層の厚さは、積層チューブ全体の厚みに対してそれぞれ3〜90%が好ましい。薬液透過防止性及び柔軟性、コスト等を考慮して、(b)層の厚みは積層チューブ全体の厚みに対して、より好ましくは1〜50%、さらに好ましくは5〜30%である。
【0087】
また、本発明の積層チューブにおける全体の層数は特に制限されず、(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層、(B)含フッ素系重合体からなる(b)層とを含む、少なくとも2層である限りはいずれでもよい。さらに本発明の積層チューブは、(a)層、(b)層の2層以外に、更なる機能を付与、あるいは経済的に有利な積層チューブを得るために、他の熱可塑性樹脂からなる層を1層又は2層以上を有していてもよい。
【0088】
例えば、前記(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層、(B)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(b)層、さらに(C)ポリウレタンからなる(c)層を有する、少なくとも3層からなる積層チューブが挙げられる。
前記積層チューブにおいては、前記(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層が、(B)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(b)層と、(C)ポリウレタンからなる(c)層の間に配置されることが好ましい。
【0089】
(c)層において、ポリウレタンは、ポリオール及びポリイソシアネートを反応させて得られたポリウレタン、ポリオール、ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られたポリウレタンなどを用いることが出来る。特にポリウレタンとしては、ジオールとジイソシアネート又はジオール、ジイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得た熱可塑性ポリウレタンを用いることが好ましい。
【0090】
ポリオールとしては、縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等及びポリエーテルポリオールなどが用いられる。
縮合系ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸とジオールの1種又は2種以上用いることにより得られるポリエステルジオールが好ましく用いられる。
【0091】
ジカルボン酸としてはグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、またはこれらの低級アルキルエステルを挙げることができ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらのなかでもアジピン酸、アゼライン酸、セパシン酸などの脂肪族ジカルボン酸又はこれらの低級アルキルエステルが好ましい。
【0092】
ジオールとしてはエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオールを挙げることができ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらのなかでも、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどの脂肪族ジオールを用いるのが好ましい。
【0093】
ラクトン系ポリエステルポリオールとしては、β−プロピオラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、メチル−ε−カプロラクトン、ジメチル−ε−カプロラクトン、トリメチル−ε−カプロラクトン等のラクトン化合物を、短鎖のジオール等のヒドロキシ化合物と共に反応させて得られたポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0094】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、低分子ジオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネート、ジアリールカーボネートなどのカーボネート化合物との反応により得られるポリカーボネートジオールが好ましい。ポリカーボネートジオールの製造原料である低分子ジオールとしては、ポリエステルジオールの製造原料として先に例示した低分子ジオールを用いることができる。また、ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどを、アルキレンカーボネートとしてはエチレンカーボネートなどを、ジアリールカーボネートとしてはジフェニルカーボネートなどを挙げることができる。
【0095】
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール、ポリオキシプロピレントリオール等のポリエーテルトリオール等が挙げられる。上記のほか、公知の各種のポリウレタン用ポリオールを使用することもできる。
(c)層において、ポリウレタンは、ポリエステルジオール及び/又はポリエーテルジオールをソフトセグメントとする熱可塑性ポリウレタンを好ましく用いることができる。
【0096】
ポリウレタンに使用するポリイソシアネートの種類は特に制限されないが、ジイソシアネートが好ましく、従来よりポリウレタン、好ましくは熱可塑性ポリウレタンの製造に用いられているジイソシアネートのいずれもが使用できる。
ジイソシアネートとしては、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,2,4−又は2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、m−又はp−フェニレンジイソシアネート、クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどを用いることができ、これらのポリイソシアネートの1種または2種以上を用いることができる。それらのうちでも4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましく用いられる。
【0097】
ポリウレタンの製造に用いられる鎖伸長剤の種類は特に制限されず、通常のポリウレタンの製造に従来から用いられている鎖伸長剤のいずれもが使用できるが、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物を用いるのが好ましい。
鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、ビス−(β−ヒドロキシエチル)テレフタレート、キシリレングリコールなどのジオール類;ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ピペラジンおよびその誘導体、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、アジピン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどのジアミン類;アミノエチルアルコール、アミノプロピルアルコールなどのアミノアルコール類などが挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。これらのなかでも、炭素数2〜10の脂肪族ジオールを用いるのが好ましく、1,4−ブタンジオールを用いるのがより好ましい。
【0098】
(c)層のポリウレタンは、特性を損なわない範囲で、ポリウレタンを除く他の熱可塑性ポリマー、柔軟性を有する熱可塑性ポリマー、エラストマー、ゴムなどとブレンドして用いることが出来る。
【0099】
本発明の積層チューブにおける上記以外の他の層を構成する熱可塑性樹脂としては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリエチレンアジパミド(ポリアミド26)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリヘキサメチレンアゼパミド(ポリアミド69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンウンデカミド(ポリアミド611)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミド6T)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド6I)、ポリノナメチレンアゼパミド(ポリアミド99)、ポリノナメチレンセバカミド(ポリアミド910)、ポリノナメチレンドデカミド(ポリアミド912)、ポリノナメチレンテレフタラミド(ポリアミド9T)、ポリノナメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド9T(H))、ポリノナメチレンナフタラミド(ポリアミド9N)、ポリデカメチレンセバカミド(ポリアミド1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ポリアミド1012)、ポリデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド10T)、ポリデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド10T(H))、ポリデカメチレンナフタラミド(ポリアミド10N)、ポリウンデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド11T)、ポリウンデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド11T(H))、ポリウンデカメチレンナフタラミド(ポリアミド11N)、ポリドデカメチレンドデカミド(ポリアミド1212)、ポリドデカメチレンテレフタラミド(ポリアミド12T)、ポリドデカメチレンヘキサヒドロテレフタラミド(ポリアミド12T(H))、ポリドデカメチレンナフタラミド(ポリアミド12N)、ポリメタキシリレンアジパミド(ポリアミドMXD6)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドジメチルPACM12)やこれらポリアミド原料モノマ−を数種用いた共重合体等を挙げることができる。
【0100】
また、本発明において規定された以外の含フッ素系重合体(ここで、本発明において規定された以外とは、官能基を有しない含フッ素系重合体を指す。)としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン/フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等が挙げられる。
【0101】
さらに、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン/プロピレン共重合体(EPR)、エチレン/ブテン共重合体(EBR)、エチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン/酢酸ビニル共重合体鹸化物(EVOH)、エチレン/アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン/メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン/アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体(EMMA)、エチレン/アクリル酸エチル共重合体(EEA)等のポリオレフィン系樹脂及び、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等のカルボキシル基及びその金属塩(Na、Zn、K、Ca、Mg)、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水フマル酸、エンドビシクロ−[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等の酸無水物基、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジル等のエポキシ基等の官能基が含有された、上記ポリオレフィン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド(PPO)等のポリエーテル系樹脂、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)等のポリサルホン系樹脂、ポリフェニレンサルファィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PEAK)等のポリケトン系樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブダジエン/スチレン共重合体(ABS)、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリニトリル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)等のポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリ塩化ビニル系樹脂、酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂、ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂、熱可塑性ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド等のポリイミド系樹脂等を挙げることができる。
【0102】
また、熱可塑性樹脂以外の任意の基材、例えば、紙、金属系材料、無延伸、一軸又は二軸延伸プラスチックフィルム又はシート、織布、不織布、金属綿、木材等を積層することも可能である。金属系材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、金、銀、チタン、モリブデン、マグネシウム、マンガン、鉛、錫、クロム、ベリリウム、タングステン、コバルト等の金属や金属化合物及びこれら2種類以上からなるステンレス鋼等の合金鋼、アルミニウム合金、黄銅、青銅等の銅合金、ニッケル合金等の合金類等が挙げられる。
【0103】
本発明の積層チューブの層数は2層以上であるが、薬液輸送用チューブ製造装置の機構から判断して8層以下、好ましくは2層〜7層、より好ましくは2層〜5層である。
【0104】
積層チューブの製造法としては、層の数もしくは材料の数に対応する押出機を用いて、溶融押出し、ダイ内あるいは外において同時に積層する方法(共押出法)、あるいは、一旦、単層チューブあるいは、上記の方法により製造された積層チューブを予め製造しておき、外側に順次、必要に応じては接着剤を使用し、樹脂を一体化せしめ積層する方法(コーティング法)を挙げることができる。
本発明の積層チューブの成形方法としては、共押出成形によることが最も好ましい。
【0105】
また、得られる積層チューブが複雑な形状である場合や、成形後に加熱曲げ加工を施して成形品とする場合には、成形品の残留歪みを除去するために、上記の積層チューブを形成した後、前記チューブを構成する樹脂の融点のうち最も低い融点未満の温度で、0.01〜10時間熱処理して目的の成形品を得る事も可能である。
【0106】
積層チューブにおいては、波形領域を有するものであってもよい。波形領域とは、波形形状、蛇腹形状、アコーディオン形状、又はコルゲート形状等に形成した領域である。波形領域は、積層チューブ全長にわたり有するものだけではなく、途中の適宜の領域に部分的に有するものであってもよい。波形領域は、まず直管状のチューブを成形した後に、引き続いてモールド成形し、所定の波形形状等とすることにより容易に形成することができる。かかる波形領域を有することにより、衝撃吸収性を有し、取り付け性が容易となる。さらに、例えば、コネクター等の必要な部品を付加したり、曲げ加工によりL字、U字の形状等にする事が可能である。
【0107】
このように成形した積層チューブの外周の全部又は一部には、石ハネ、他部品との摩耗、耐炎性を考慮して、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBR)、NBRとポリ塩化ビニルの混合物、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム(ACM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン/プロピレンゴム(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンゴム(EPDM)、NBRとEPDMの混合物ゴム、塩化ビニル系、オレフィン系、エステル系、アミド系等の熱可塑性エラストマー等から構成するソリッド又はスポンジ状の保護部材(プロテクター)を配設することができる。保護部材は既知の手法によりスポンジ状の多孔体としてもよい。多孔体とすることにより、軽量で断熱性に優れた保護部を形成できる。また、材料コストも低減できる。あるいは、ガラス繊維等を添加してその強度を改善してもよい。保護部材の形状は特に限定されないが、通常は、筒状部材又は積層チューブを受け入れる凹部を有するブロック状部材である。筒状部材の場合は、予め作製した筒状部材に積層チューブを後で挿入したり、あるいは積層チューブの上に筒状部材を被覆押出しして両者を密着して作ることができる。両者を接着させるには、保護部材内面あるいは前記凹面に必要に応じ接着剤を塗布し、これに積層チューブを挿入又は嵌着し、両者を密着することにより、積層チューブと保護部材の一体化された構造体を形成する。また、金属等で補強する事も可能である。
【0108】
本発明の積層チューブは、内層材として使用する含フッ素系重合体の耐熱性、耐薬品性、耐候性、非粘着性、低摩擦性及び低誘電特性特性、外層として使用するポリアミドエラストマーの靱性、耐水性、耐老化性、柔軟性、耐屈曲疲労性、低温衝撃性等の諸特性を兼備しており、さらに両者材料は層間接着性、層間接着強度の薬液耐性に優れると共に、製造容易で且つ安価に製造可能である。また、使用する材料を選択することにより、搬送される薬液の視認性が高いチューブとすることも可能である。
【実施例】
【0109】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例における分析及び物性の測定は次のように行った。
【0110】
ポリアミドエラストマーの特性は、以下の方法で測定した。
[相対粘度]
試薬特級品のm−クレゾールを溶媒として、ポリマー濃度0.5%、オストワルド粘度計を用いて25℃で測定した。
【0111】
[末端アミノ基濃度]
活栓付三角フラスコに所定量のポリアミド試料を入れ、あらかじめ調整しておいた溶媒フェノール/メタノール(体積比9/1)の40mLを加えた後、マグネットスターラーで攪拌溶解し、指示薬にチモールブルーを用いてN/20の塩酸で滴定を行い、末端アミノ基濃度を求める。
【0112】
また、含フッ素系重合体の特性は、以下の方法で測定した。
[含フッ素系重合体の組成]
溶融NMR分析、フッ素含有量分析により測定した。
【0113】
[含フッ素系重合体中のカルボキシル基含有量]
含フッ素系重合体中の無水イタコン酸(IAN)に基づく重合単位の含有量は、赤外吸収スペクトル分析により、当該重合単位におけるC=O伸縮振動の吸収ピークはいずれも1870cm−1に現れるので、その吸収ピークの吸光度を測定し、M=aLの関係式を用いて、IANに基づく重合単位の含有量M(モル%)を決定した。ここでLは、1870cm−1における吸光度で、aは係数である。aとしては、IANをモデル化合物として決定したa=0.87を用いた。
【0114】
[含フッ素系重合体中の末端カーボネート基数]
含フッ素系重合体中の末端カーボネート基数は、赤外吸収スペクトル分析により、カーボネート基(−OC(=O)O−)のカルボニル基が帰属するピークが1809cm−1の吸収波長に現われ、吸収ピークの吸光度を測定し、次式によって含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対するカーボネート基の個数を算出した。
[含フッ素系重合体中の主鎖炭素数10個に対するカーボネート基の個数]=500AW/εdf
A:カーボネート基(−OC(=O)O−)のピークの吸光度
ε:カーボネート基(−OC(=O)O−)のモル吸光度係数[cm−1・mol−1]。モデル化合物よりε=170とした。
W:モノマー組成から計算される組成平均分子量
d:フィルムの密度[g/cm
f:フィルムの厚さ[mm]
【0115】
また、チューブの各物性は、以下の方法で測定した。
[曲げこわさ]
SAE J844 9.8に記載の方法で評価した。製造したチューブ寸法において、曲げこわさが7N以下の場合、柔軟性に優れていると判断した。
【0116】
[層間接着性]
200mmにカットしたチューブをさらに縦方向に半分にカットし、テストピースを作成する。テンシロン万能試験機を用い、50mm/分の引張速度にて180°剥離試験を実施した。S−Sカーブの極大点から剥離強度を読み取り、層間接着性を評価した。
【0117】
[層間接着強度の薬液耐性]
積層チューブを20cm長に切断したものを試料として使用する。この試料に、水系染料インクの溶媒として用いられる、グリセリン/尿素/ジエチレングリコール/純水=20/15/15/50体積比に混合した薬液を封入して両端を密封する。これを60℃の恒温槽内にセットし、1000時間保持した。その後、封入物を完全に除去した後、チューブを乾燥し、上記記載の方法にて、接着強度を測定し、層間接着強度の薬液耐性を評価した。
【0118】
[薬液透過防止性]
200mmにカットしたチューブの片端を密栓し、内部に上記記載の混合薬液を入れ、残りの端部も密栓した。その後、全体の重量を測定し、次いで試験チューブを60℃のオーブンに入れ、一日毎に重量変化を測定した。一日当たりの重量変化を、チューブ1mあたりの内層表面積で除して燃料透過係数(g/m・day)を算出する。
【0119】
[実施例及び比較例で用いた材料]
(A)ポリアミドエラストマーの製造
(A−1)ポリアミドエーテルエラストマー(X)の製造
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に宇部興産(株)製12−アミノドデカン酸7.000kg、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−542)11.380kg及びアジピン酸1.620kg及びを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/分で供給しながら徐々に加熱を行った。3時間かけて室温から230℃まで昇温し、230℃で6時間重合を行った。加熱を始めてから容器内の圧力は0.05MPaに調整した。次に、攪拌を停止し、ポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーはポリエーテルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、相対粘度1.95、末端アミノ基濃度27μeq/gであった。(以下、このポリアミドエラストマーを(A−1)という)。
【0120】
(A−2)ポリアミドエーテルエラストマー(X)の製造
(A−1)ポリアミドエーテルエラストマー(X)の製造において、12−アミノドデカン酸11.000kg、ABA型のトリブロックポリエーテルジアミン(HUNTSMAN社製、商品名:XTJ−559)7.787kg及びアジピン酸1.122kgに変えた以外は、同様にして、白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーを得た。相対粘度2.04、末端アミノ基濃度45μeq/gであった。(以下、このポリアミドエラストマーを(A−2)という)。
【0121】
(A−3)ポリアミドエーテルエステルエラストマーの製造
攪拌機、温度計、トルクメーター、圧力計、窒素ガス導入口、圧力調整装置及びポリマー取り出し口を備えた70リットルの圧力容器に12−アミノドデカン酸(宇部興産(株)製)9.800kg及びアジピン酸0.766kgを仕込んだ。容器を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱した。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から240℃まで昇温し、230℃で4時間重合を行い、ナイロン12のオリゴマーを合成した。
このオリゴマーにポリテトラメチレングリコール(BASF社製、PolyTHF1800)9.434kg、テトラブチルジルコネート0.020kg及び酸化防止剤(吉富製薬製、商品名:トミノックス917)0.050kgを仕込んだ。容器内を十分窒素置換した後、窒素ガスを流速300リットル/時で供給しながら徐々に加熱を行った。攪拌は速度20rpmで行った。3時間かけて室温から210℃まで昇温し、210℃で3時間加熱し、次に徐々に減圧を行い、1時間かけて50Paとし、2時間重合を行った後、さらに30分かけて昇温、減圧を行い、230℃、約30Paで3時間重合を行い終了した。次に、攪拌を停止し、重合層内に窒素ガスを供給し圧力を常圧に戻した。次にポリマー取り出し口から溶融状態の無色透明のポリマーを紐状に抜き出し、水冷した後、ペレタイズして、約13kgのペレットを得た。
得られたポリマーは、ポリエーテルエステルアミドであり、ペレットは白色強靭でゴム弾性に富む柔軟なポリマーであり、相対粘度1.89、末端アミノ基濃度は限りなく0μeq/gに近く測定不能であった。(以下このポリアミドエラストマーを(A−3)という)。
【0122】
(B)含フッ素系重合体
(B−1)含フッ素系重合体の製造
内容積が94Lの撹拌翼付き重合槽を脱気し、1−ヒドロトリデカフルオロヘキサン71.3Kg、連鎖移動剤である1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン(旭硝子製AK225cb、以下、AK225cbと呼ぶ)20.4Kg、CH=CH(CFF562g、IAN4.45gを仕込み、当該重合槽内を66℃に昇温し、TFE/E(モル比:89/11)のガスで1.5MPa/Gまで昇圧した。重合開始剤としてtert−ブチルパーオキシピバレートの0.7%−ヒドロトリデカフルオロヘキサン溶液の1Lを仕込み重合を開始させた。
重合中圧力を一定になるようにTFE/E(モル比:59.5/40.5)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して3.3モル%に相当する量のCH=CH(CFF及び0.8モル%に相当する量のIANを4.45をAK225cbの1%溶液で連続的に仕込んだ。重合開始9.9時間後、モノマー混合ガス7.28Kgを仕込んだ時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
得られたスラリ状のIAN重合単位含有含フッ素系重合体を、水77Kgを仕込んだ200Lの造粒槽に投入し、撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を150℃で15時間乾燥することにより、6.9Kgの含フッ素系重合体の造粒物が得られた。
【0123】
溶融NMR分析及びフッ素含有量分析及び赤外吸収スペクトル分析の結果から、当該含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/IANに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位のモル比で57.2/38.5/0.48/3.5であった。また、融点は230℃であった。
【0124】
この造粒物を押出機を用いて、280℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを得た(以下、この含フッ素系重合体を(B−1)という。)。
【0125】
(B−2)含フッ素系重合体の製造
内容積が94Lの撹拌翼付き重合槽を脱気し、イオン交換水19.7Kg、パーフルオロペンチルジフルオロメタン77.1Kg、CH=CH(CFF 427g、テトラフルオロエチレン(TFE)3.36Kg、エチレン(E)127gを圧入し、当該重合槽内を66℃に昇温した。このときの圧力は、0.65MPaであった。重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシカーボネート 72gを仕込み、重合を開始させた。
重合中圧力を一定になるようにTFE/E(モル比:60/40)のモノマー混合ガスを連続的に仕込んだ。また、重合中に仕込むTFEとEの合計モル数に対して6.0モル%に相当する量のCH=CH(CFFを連続的に仕込んだ。重合開始から5.6時間後、モノマー混合ガス11.5Kgを仕込まれた時点で、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
得られた含フッ素系重合体を、水100Kgを仕込んだ300Lの造粒槽に投入し、撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を135℃で3時間乾燥することにより、12.1Kgの含フッ素系重合体の造粒物が得られた。
溶融NMR分析及びフッ素含有量分析の結果から、当該含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位のモル比で57.2/37.0/6.0であった。また、融点は204℃であった。重合開始剤に由来するカーボネート末端基数は重合体中の主鎖炭素数10個あたり672個であった。
【0126】
この造粒物を押出機を用いて、280℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを作成した(以下、この含フッ素系重合体を(B−2)という。)。
【0127】
(B−3)含フッ素系重合体の製造
内容積が94Lの撹拌翼付き重合槽を脱気し、イオン交換水20Kg、パーフルオロシクロブタン16Kg、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)4Kg、テトラフルオロエチレン(TFE)0.95Kg、フッ化ビニリデン(VDF)0.3Kgを圧入し、当該重合槽内を35℃に昇温した。重合開始剤としてジイソプロピルパーオキシカーボネート 250gを仕込み、重合を開始させた。
重合中圧力を一定になるようにTFE/VDF/HFP(モル比:50/40/10)のモノマー混合ガスを連続的に供給し、系内圧力を一定に保った。重合開始から30時間後、重合槽内温を室温まで降温するとともに常圧までパージした。
得られた含フッ素系重合体を、水100Kgを仕込んだ300Lの造粒槽に投入し、撹拌しながら105℃まで昇温し溶媒を留出除去しながら造粒した。得られた造粒物を135℃で3時間乾燥することにより、10.0Kgの含フッ素系重合体の造粒物が得られた。
【0128】
溶融NMR分析及びフッ素含有量分析の結果から、当該含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/VDFに基づく重合単位/HPFに基づく重合単位のモル比で51.3/38.9/9.8であった。また、融点は170℃であった。重合開始剤に由来するカーボネート末端基数は重合体中の主鎖炭素数10個あたり311個であった。
【0129】
この造粒物を押出機を用いて、280℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを作成した(以下、この含フッ素系重合体を(B−3)という。)。
【0130】
(B−4)含フッ素系重合体の製造
(B−1)含フッ素系重合体の製造において、IANを仕込まないこと以外は、同様の方法で重合し、7.0Kgの含フッ素系重合体の造粒物を得た。
溶融NMR分析及びフッ素含有量分析の結果から、当該含フッ素系重合体の組成は、TFEに基づく重合単位/Eに基づく重合単位/CH=CH(CFFに基づく重合単位のモル比で57.6/38.7/3.7であった。また、融点は232℃であった。
【0131】
この造粒物を押出機を用いて、280℃、滞留時間2分で溶融し、含フッ素系重合体のペレットを作成した(以下、この含フッ素系重合体を(B−4)という。)。
(C)ポリウレタンエラストマー
(C−1)ポリウレタンエラストマー(エーテル系) BASF・ジャパン(株)製 エラストラン 1190A10
(C−2)ポリウレタンエラストマー(エステル系) BASF・ジャパン(株)製 エラストラン 690A15
【0132】
実施例1
上記に示す(A)ポリアミドエラストマー(A−1)、(B)含フッ素系重合体(B−1)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)2層チューブ成形機にて、(A)を押出温度220℃、(B)を押出温度290℃にて別々に溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミドエラストマーからなる(a)層(外層)、(B)含フッ素系重合体からなる(b)層(内層)としたときの、層構成が(a)/(b)=0.80/0.20mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。図1にこの積層チューブの横断面を示す。図1において、1は外層の(a)層、3は内層の(b)層である。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0133】
実施例2
実施例1において、(B)含フッ素系重合体(B−1)を(B−2)に変え、(B)を押出温度260℃にて溶融させた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0134】
実施例3
実施例1において、(B)含フッ素系重合体(B−1)を(B−3)に変え、(B)を押出温度230℃にて溶融させた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0135】
実施例4
実施例1において、(A)ポリアミドエラストマー(A−1)を(A−2)に変え、(A)を押出温度230℃にて溶融させた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0136】
実施例5
上記に示す(A)ポリアミドエラストマー(A−1)、(B)含フッ素系重合体(B−1)、(B−4)とを使用して、Plabor(プラスチック工学研究所(株)製)3層チューブ成形機にて、(A)を押出温度200℃、(B)を押出温度270℃にて溶融させ、吐出された溶融樹脂をアダプターによって合流させ、積層管状体に成形した。引き続き、寸法制御するサイジングダイにより冷却し、引き取りを行い、(A)ポリアミドエラストマーからなる(a)層(外層)、(B)含フッ素系重合体(B−1)からなる(b)層(中間層)、(B)含フッ素系重合体(B−4)からなる(b’)層(内層)としたときの、層構成が(a)/(b)/(b’)=0.80/0.05/0.15mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。図2にこの積層チューブの横断面を示す。図2において、1は外層の(a)層、2は中間層の(b)層、3は内層の(b’)層である。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
実施例6
実施例5において、(B)含フッ素系重合体(B−4)を、(C)ポリウレタンエラストマー(C−1)に変え、(C)を押出温度200℃にて溶融させた以外は、実施例5と同様にして、(C)ポリウレタンエラストマーからなる(c)層(外層)、(A)ポリアミドエラストマーからなる(a)層(中間層)、(B)含フッ素系重合体(B−1)からなる(b)層(内層)としたときの、層構成が(c)/(a)/(b)=0.45/0.35/0.20mmで内径6mm、外径8mmの積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
実施例7
実施例6において、(C)ポリウレタンエラストマー(C−1)を(C−2)に変えた以外は、実施例6と同様にして、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0137】
比較例1
実施例1において、(B)含フッ素系重合体(B−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のチューブを得た。当該チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0138】
比較例2
実施例1において、(A)ポリアミドエラストマー(A−1)を使用しない以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成のチューブを得た。当該チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0139】
比較例3
実施例1において、(B)含フッ素系重合体(B−1)を(B−4)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0140】
比較例4
実施例1において、(A)ポリアミドエラストマー(A−1)を(A−3)に変えた以外は、実施例1と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
比較例5
実施例6において、(A)ポリアミドエラストマー(A−1)を(A−3)に変えた以外は、実施例6と同様の方法にて、表1に示す層構成の積層チューブを得た。当該積層チューブの物性測定結果を表1に示す。
【0141】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の積層チューブは、自動車部品、内燃機関用途、電動工具ハウジング類等の機械部品を始め、工業材料、産業資材、電気・電子部品、医療、食品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品、家庭用品等各種用途が挙げられる。
【0143】
また、本発明の積層チューブは、薬液透過防止性に優れるため、薬液搬送配管に好適である。薬液としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール、フェノール系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ガソリン、灯油、ディーゼルガソリン、含酸素ガソリン、含アミンガソリン、サワーガソリン、ひまし油ベースブレーキ液、グリコールエーテル系ブレーキ液、ホウ酸エステル系ブレーキ液、極寒地用ブレーキ液、シリコーン油系ブレーキ液、鉱油系ブレーキ液、パワーステアリングオイル、含硫化水素オイル、ウインドウォッシャ液、エンジン冷却液、尿素溶液、グリセリン溶液、医薬剤、インク、塗料、飲料等が挙げられる。本発明の積層チューブは、上記薬液を搬送するチューブとして好適であり、具体的には、冷却水、冷媒等用クーラーチューブ、エアコン冷媒用チューブ、床暖房チューブ、消火器及び消火設備用チューブ、医療用冷却機材用チューブ、インク、塗料散布チューブ、フィードチューブ、リターンチューブ、エバポチューブ、フューエルフィラーチューブ、ORVRチューブ、リザーブチューブ、ベントチューブ等の燃料チューブ、オイルチューブ、ブレーキチューブ、ウインドウォッシャー液用チューブ、ラジエーターチューブ、石油掘削チューブ、その他薬液チューブが挙げられる。
【0144】
また、フロン−11、フロン−12、フロン−21、フロン−22、フロン−113、フロン−114、フロン−115、フロン−134A、フロン−32、フロン−123、フロン−124、フロン−125、フロン−143A、フロン−141b、フロン−142b、フロン−225、フロン−C318、フロン−502、塩化メチル、塩化エチル、空気、水素、窒素、酸素、二酸化炭素、メタン、プロパン、イソブタン、n−ブタン、アルゴン、ヘリウム、キセノン各種ガス搬送用にチューブとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の実施例の積層チューブを示す横断面である。
【図2】本発明の別の実施例の積層チューブを示す横断面である。
【符号の説明】
【0146】
1…外層
2…中間層
3…内層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層、及び(B)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(b)層を有する、少なくとも2層からなることを特徴とする積層チューブ。
【請求項2】
前記(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーが、下記式(1):
【化1】

(但し、x及びzは1〜20であり、yは4〜50を示す。)
で表されるトリブロックポリエーテルジアミン化合物(A1)、ポリアミド形成性モノマー(A2)、及びジカルボン酸化合物(A3)を重合して得られる重合体であるポリアミドエーテルエラストマー(X)を50重量%以上有するポリアミドエラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の積層チューブ。
【請求項3】
前記ポリアミドエーテルエラストマー(X)中のジカルボン酸化合物(A3)が、下記式(2):
【化2】

(但し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表し、mは0又は1を表す。)
で表されることを特徴とする請求項2に記載の積層チューブ。
【請求項4】
前記ポリアミドエーテルエラストマー(X)中のポリアミド形成性モノマー(A2)が、下記式(3)及び/又は下記式(4):
【化3】

(但し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
【化4】

(但し、Rは炭化水素鎖を含む連結基を表す。)
で表されることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項5】
前記ジカルボン酸化合物(A3)が、脂肪族ジカルボン酸化合物及び/又は脂環族ジカルボン酸化合物であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項6】
前記(B)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体が、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体よりなる群より選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の積層チューブ。
【請求項7】
前記(B)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(b)層が、(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層に対して内側に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項8】
前記(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層が、最外層に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項9】
さらに、(C)ポリウレタンからなる(c)層を有する、少なくとも3層からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項10】
前記(A)末端アミノ基濃度が20μeq/g以上であるポリアミドエラストマーからなる(a)層が、(B)ポリアミド系樹脂に対して反応性を有する官能基が分子鎖中に導入された含フッ素系重合体からなる(b)層と、(C)ポリウレタンからなる(c)層の間に配置されることを特徴とする請求項9に記載の積層チューブ。
【請求項11】
前記各層が共押出成形により製造されてなることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の積層チューブ。
【請求項12】
薬液搬送用チューブとして使用されることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の積層チューブ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−216387(P2007−216387A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−78310(P2004−78310)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】