説明

積層ノズルプレート、液滴吐出ヘッド、及び、積層ノズルプレート製造方法

【課題】 ノズル周辺に付着した液体や異物を容易に除去できると共に液滴のノズルへの流れがスムーズな積層ノズルプレート、及びこの積層ノズルプレートを備えた液滴吐出ヘッドを提供すると共に、保護プレートの段差孔、ノズルプレートのノズル、及び、連通孔プレートの連通孔を、高精度に位置合わせすることの可能な積層ノズルプレートの製造方法を提供する。
【解決手段】 ノズルプレート14の一の面にプールプレート16を接合すると共に、ノズルプレート14の他の面に保護プレート12を接合し、その後、プールプレート16に連通孔24を形成すると共に、保護プレート12に段差孔22を形成する。そして、ノズルプレート14にノズル20を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液滴を吐出して画像を記録する液滴吐出ヘッド、この液滴吐出ヘッドの構成部材である積層ノズルプレート、及び、この積層ノズルプレートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のノズルから液滴を吐出し、用紙等の記録媒体に印字を行う液滴吐出装置には、インクジェット記録装置があり、このインクジェット記録装置は、小型で安価、静寂性等の種々の利点があり、広く市販されている。特に、圧電素子を用いて圧力室内の圧力を変化させてインク滴を吐出するピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーの作用でインクを膨張させてインク滴を吐出する熱インクジェット方式の記録装置は、高速印字、高解像度が得られる等、多くの利点を有している。
【0003】
このようなインクジェット方式の記録装置においては、複数のノズルからインク滴を吐出した際に、インク滴がノズルの周辺に付着するのを防ぐため、ノズル表面に撥水膜が塗布されている。しかし、この撥水膜は、用紙がジャム等により浮き上がると、紙擦れにより擦傷ダメージを受けてしまい、インク吐出方向が傾いたり、インク滴径及び速度にばらつきが生じるなど、インクの吐出性能が悪化する。
【0004】
この対策として、例えば、ノズルプレートに形成されたノズルの周囲に円形状の段差を設けたインクジェット記録ヘッドが提案されている。このインクジェット記録ヘッドは、ノズルを形成したノズルプレートに、ノズルに対応した円形状の開孔を有する金属プレートを接着することで、ノズルの周囲に円形状の段差を形成し、ノズル周辺の撥水膜に用紙が接触しないようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、特許文献1に記載のインクジェット記録ヘッドでは、ノズルプレートにノズルを形成した後、ノズルに対応した開口が形成された金属プレートを積層するので、積層する際に高精度の位置調整が必要となる。また、円形状の段差がノズルプレート面に対してほぼ直角であるため、段差の角部にインクや異物が溜まりやすい。
【特許文献1】特許第3108771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ノズル周辺に付着した液体や異物を容易に除去できると共に液滴のノズルへの流れがスムーズな積層ノズルプレート、及びこの積層ノズルプレートを備えた液滴吐出ヘッドを提供すると共に、保護プレートの段差孔、ノズルプレートのノズル、及び、連通孔プレートの連通孔を、高精度に配置することの可能な積層ノズルプレートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の積層ノズルプレートは、液滴を吐出するノズルの形成されたノズルプレートと、前記ノズルプレートに積層され、前記ノズルと連通される連通孔の形成された連通孔プレートと、前記ノズルプレートを挟んで前記連通孔プレートと逆側に積層され、前記ノズルよりも大きい開口で前記ノズルを外部と連通させる段差孔の形成された保護プレートと、を備え、前記保護プレートの厚み方向に形成される前記段差孔の側壁の傾斜、及び、前記連通孔プレートの厚み方向に形成される前記連通孔の側壁の傾斜が、前記ノズルプレートへ近づくにしたがって小さくなる構成とされていることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の積層ノズルプレートは、ノズルプレートにノズルが形成されており、ノズルプレートの片面に連通孔プレートが積層され、他の片面に保護プレートが積層されている。流路プレートにはノズルと連通された連通孔が形成されており、保護プレートにはノズルを外部と連通させるノズルよりも大きい開口の段差孔が形成されている。
【0009】
本発明では、連通孔の側壁の傾斜が、ノズルプレートへ近づくにしたがって小さくなる構成とされているので、液体をスムーズに連通孔からノズルへと流動させることができる。
【0010】
また、本発明では、段差孔の側壁の傾斜が、ノズルプレートへ近づくにしたがって小さくなる構成とされているので、ノズル周辺のインクや異物を段差孔から容易に除去することができる。
【0011】
請求項2に記載の積層ノズルプレートは、請求項1に記載の積層ノズルプレートにおいて、1つの前記段差孔が、複数の前記ノズルが形成される領域を包含するように形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、複数のノズルが形成される広い領域に段差孔を形成するので、段差孔の形成において、高精度な位置調整が不要となる。
【0013】
請求項3に記載の液滴吐出ヘッドは、請求項1または請求項2に記載の積層ノズルプレートを備えたものである。
【0014】
この液滴吐出ヘッドによれば、前記積層ノズルプレートを備えているので、液体をスムーズに連通孔からノズルへと流動させることができると共に、ノズル周辺のインクや異物を段差孔から容易に除去することができる。
【0015】
請求項4に記載の積層ノズルプレートの製造方法は、液滴を吐出するノズルの形成されるノズルプレートと、前記ノズルと連通される連通孔の形成される連通孔プレートと、前記ノズルよりも大きい開口で前記ノズルを外部と連通させる段差孔の形成される保護プレートと、が積層された積層ノズルプレートの製造方法であって、前記ノズルプレートの一の面に前記連通孔プレートを接合すると共に前記ノズルプレートの他の面に前記保護プレートを接合する接合工程と、前記連通孔プレートに前記連通孔を形成すると共に前記保護プレートに前記段差孔を形成する孔形成工程と、を有している。
【0016】
図8に示すように、接合前に段差孔D及び連通孔Rを形成して(図8(A)参照)、その後に接合する(図8(B)参照)場合には、段差孔Dと連通孔Rとの位置合わせが難しく、ノズルNの形成を段差孔Dの位置に合わせて形成すると、図8(C)に示すように、連通孔RとノズルNとの相対位置がズレ、ノズルNの形成を連通孔Rの位置に合わせて形成すると、図8(D)に示すように、段差孔DとノズルNとの相対位置がズレてしまう。
【0017】
そこで、上記積層ノズル製造方法では、まず、接合工程で、ノズルプレートの一の面に連通孔プレートを接合すると共に、ノズルプレートの他の面に保護プレートを接合する。この接合工程では、連通孔プレート、ノズルプレート、保護プレートの各々には、連通孔、ノズル、段差孔は未形成の状態である。次に、孔形成工程で、連通孔プレートに連通孔を形成すると共に、保護プレートに段差孔を形成する。このように、接合後に連通孔及び段差孔を形成することにより、接合前に段差孔及び連通孔を形成して、その後に接合する場合と比較して、連通孔、段差孔、及びノズルを、高精度に配置することができる。
【0018】
請求項5に記載の積層ノズルプレート製造方法は、請求項4の積層ノズルプレート製造方法において、前記孔形成工程が、レジスト塗布処理、及びエッチング加工処理を含んでいることを特徴としている。
【0019】
このように、段差孔及び連通孔の形成を、レジスト塗布処理、及びエッチング加工処理で行なうことにより、段差孔と連通孔とを容易に位置合わせすることができる。
【0020】
請求項6に記載の積層ノズルプレート製造方法は、請求項4または請求項5に記載の積層ノズルプレート製造方法において、前記接合工程が、前記ノズルプレートと前記連通孔プレートとの熱融着処理、及び前記ノズルプレートと前記保護プレートとの熱融着処理、を含んでいることを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の接合工程によれば、ノズルプレートと保護プレート、ノズルプレートと連通孔プレート、を熱融着で接合するので、接着剤を用いることなく、効率良く接合することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の積層ノズルプレートによれば、上記のように構成したので、ノズル周辺に付着した液体や異物を容易に除去できると共に、液滴のノズルへの流れをスムーズにすることができる。また、本発明の積層ノズルプレート製造方法によれば、保護プレートの段差孔、ノズルプレートのノズル、及び、連通孔プレートの連通孔を、高精度に位置合わせすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の積層ノズルプレート10を有するインクジェット記録ヘッド40を示す断面図である。
【0025】
図1に示すように、インクジェット記録ヘッド40は、保護プレート12、ノズルプレート14、及びプールプレート16で構成された積層ノズルプレート10を備えている。保護プレート12の表面には、撥水膜18が塗布されている。さらに、積層ノズルプレート10を構成するプールプレート16の上方には、連通孔プレート30,32と、圧力室プレート34と、振動板36とが位置合わせして積層され、接着剤などの接合手段によって接合されている。
【0026】
積層ノズルプレート10を構成するノズルプレート14には、インクを吐出するノズル20が形成されている。ノズルプレート14の下部の保護プレート12には、ノズル20の周囲に段差孔22が形成されている。図2にも示すように、保護プレート12の厚み方向に形成される段差孔22の側壁22aは、ノズルプレート14に近づくにしたがって、傾斜角度αが小さくなる構成とされており、いわゆるお椀状に湾曲している。この段差孔22によって、ノズル20の周辺のノズル面23が保護プレート12のプレート面19(撥水膜18が塗布された保護プレート12の表面)から凹状に後退している。これにより、印字時に浮き上がった記録媒体Pがノズル面23に接触せず、ノズル20の周辺の撥水膜18が傷つかない。この撥水膜18はノズル20の周辺にインクが付着するのを防止するものであり、この撥水膜18により、ノズル20から吐出するインク滴が常にプレート面19に対して垂直に吐出される。
【0027】
また、段差孔22の側壁22aは、いわゆるお椀状に湾曲しているので、記録媒体Pの先端部が段差孔22に入り込みにくく、ジャム等の発生が防止される。さらに、ノズル20の表面をメンテナンス時にワイパーで拭き取っても、段差孔22内のインクや異物を容易に除去することができる。
【0028】
一方、図1に示すように、積層ノズルプレート10を構成するプールプレート16には、ノズル20と連通された連通孔24が形成されている。図3にも示すように、プールプレート16の厚み方向に形成される連通孔24の側壁24aは、ノズルプレート14に近づくにしたがって、傾斜角度βが小さくなる構成とされており、いわゆるお椀状に湾曲している。側壁24aがこのように湾曲されていることにより、インクをスムーズに連通孔24からノズル20へと流動させることができる。
【0029】
また、連通孔プレート30,32には、連通孔41,43がぞれぞれ形成され、圧力室プレート34には、圧力室45が形成されている。ノズル20、連通孔24、及び連通孔41,43は、積層ノズルプレート10、プールプレート16、及び連通孔プレート30,32が積層された状態で連通し、圧力室プレート34に形成された圧力室45に繋がっている。
【0030】
また、プールプレート16には、インクプール25が形成され、図示しないインク供給孔から供給されたインクが貯留されている。また、連通孔プレート30,32には、それぞれインクプール25と連結するように供給孔42,44が形成されている。インクプール25、供給孔42,44及び圧力室45は、プールプレート16と連通孔プレート30,32と圧力室プレート34が積層された状態で連通している。なお、図示しないが、振動板36の上部には、圧力室45の上方に圧力発生手段としての単板型の圧電素子が取り付けられており、図示しないフレキシブル配線基板から駆動電圧が印加されるように構成されている。
【0031】
このようなインクジェット記録ヘッド40では、インクプール25から供給孔42,44、圧力室45、連通孔43,41、連通孔24、ノズル20へと連続するインクの通路が形成されている。インク供給孔(図示省略)から供給されインクプール25に貯留されたインクは、供給孔42,44を経て圧力室45内に充填される。そして、圧電素子(図示省略)に駆動電圧が印加されると、圧電素子とともに振動板36がたわみ変形して圧力室45を膨張又は圧縮させる。これによって、圧力室45に体積変化が生じ、圧力室45内に圧力波が発生する。この圧力波の作用によってインクが運動し、ノズル20から外部へインク滴が吐出される。
【0032】
次に、インクジェット記録ヘッド40を構成する積層ノズルプレート10の製造方法について説明する。
【0033】
図4(A)に示すように、ノズル20を形成する前の板状のノズルプレート14と、段差孔22を形成する前の板状の保護プレート12とを熱融着により接合すると共に、ノズルプレート14と、連通孔24を形成する前の板状のプールプレート16とを熱融着により接合する。ノズルプレート14と保護プレート12、プールプレート16とを熱融着により接着剤を用いずに接合することで、接合時に両者の位置調整をする必要がなく、効率良く接合することができる。ノズルプレート14には、機械的強度、耐薬品性、薄膜化に優れた合成樹脂が用いることが好ましく、ポリイミドなどを用いることができる。ポリイミドを用いることで、従来のSUSよりも加工しやすく、またインクに吐出エネルギーを与えた際にダンパ効果によりクロストークを抑制するという利点がある。保護プレート12、プールプレート16には、SUSなどの金属プレート、樹脂フィルム、液晶フィルム、又は樹脂プレートなどを用いることができる。
【0034】
次いで、図4(B)に示すように、板状の保護プレート12の表面、及び、プールプレート16に、レジスト48を形成する。このレジスト48は、マスクを通してパターニングした後に不用部分を除去することで、段差孔22の位置に対応した孔部49Aが形成され、連通孔24の位置に対応した孔部49Bが形成され、さらに、インクプール25の位置に対応した孔部49Cが形成される。そして、図4(C)に示すように、エッチングにより保護プレート12に段差孔22のパターンを形成すると共に、プールプレート16に、連通孔24、インクプール25を形成し、レジスト48を除去する。
【0035】
段差孔22は、図2に示すような、いわゆるお椀状のテーパー面とされた側壁22aを有する形状となる。この段差孔22の深さは、例えば5μm〜20μmに設定することができる。また、連通孔24についても、図3に示すような、いわゆるお椀状のテーパー面とされた側壁24aを有する形状となる。
【0036】
次いで、図4(D)に示すように、保護プレート12の表面、すなわちインクジェット記録ヘッド40(図1参照)の吐出側表面に撥水膜18を形成する。撥水膜18は、スピンコート法などにより形成することができる。この撥水膜18としては、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂等のフッ素系樹脂を用いることができる。特に、4フッ化エチレン樹脂(PTFE)、4フッ化エチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂(PFA)が好ましい。
【0037】
次いで、図4(E)に示すように、ノズルプレート14にノズル20を形成する。ノズル20は、プールプレート16の後方からエキシマーレーザ等で穿孔することにより形成することができる。このノズル20は、段差孔22の孔径より小さい口径に形成する。例えば、ノズルの口径を約25μm、段差孔22の直径を100μm〜400μmに設定することができる。このようなノズル20、段差孔22、連通孔24は、所定のパターンで複数形成され、これにより積層ノズルプレート10が完成する。
【0038】
その後、プールプレート16側に、連通孔プレート30,32と、圧力室プレート34とを接合し、圧力室プレート34の開口を覆うように振動板36を接合する。
【0039】
上記のような積層ノズルプレート10の製造方法によれば、まず、ノズルプレート14、保護プレート12、及び、プールプレート16を接合するので、接合時に位置調整が必要でない。そして、接合後に、保護プレート12に段差孔22を形成すると共に、プールプレート16に連通孔24を形成し、その後ノズル20を形成するので、ノズル20、段差孔22、及び連通孔24を、高精度に配置することができる。
【0040】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面に基づいて説明する。
【0041】
図5は、本発明の第2実施形態のインクジェット記録ヘッド80の積層ノズルプレート81を示す斜視図である。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0042】
積層ノズルプレート81は、図5に示すように、複数のノズル20が1列に形成されたノズル領域85を取り囲むように、保護プレート82に段差孔84が形成されている。保護プレート82の厚み方向に形成される段差孔84の側壁84aは、図6にも示すように、ノズルプレート14に近づくにしたがって、ノズルプレート14とのなす角度γが大きくなる構成とされている。
【0043】
なお、ノズル20の直径は約25μm程度に設定することができ、ノズル領域85の短手方向の幅は約100μm〜400μm程度に設定することができる。また、ノズル領域85の長手方向の全長は、例えば約50mmに設定することができる。また、段差孔84の深さは、5μm〜20μmに設定することができる。
【0044】
この段差孔84によって、ノズル20の周辺のノズル領域85が、保護プレート82のプレート面86(撥水膜18が塗布された保護プレート82の表面)から凹状に後退している。これにより、印字時に浮き上がった記録媒体Pがノズル領域85に接触せず、ノズル20の周辺の撥水膜18が傷つかない。
【0045】
なお、この積層ノズルプレート81では、ノズル20面をワイピングするワイパー(図示省略)がノズル領域85の長手方向に移動するように構成されている。
【0046】
次に、積層ノズルプレート81の製造方法について説明する。
【0047】
図7は、積層ノズルプレート81の製造工程を、図6のX−X断面方向からみた図である。図7(A)に示すように、ノズル20を形成する前の板状のノズルプレート14と、段差孔84を形成する前の板状の保護プレート82とを熱融着により接合すると共に、ノズルプレート14と、連通孔24を形成する前の板状のプールプレート16とを熱融着により接合する。次いで、図7(B)に示すように、板状の保護プレート82の表面、及び、プールプレート16に、レジスト88を形成する。このレジスト48は、マスクを通してパターニングした後に不用部分を除去することで、段差孔84の位置に対応した孔部89Aが形成され、連通孔24の位置に対応した孔部89Bが形成され、さらに、インクプール25の位置に対応した孔部(図示省略)が形成される。そして、図7(C)に示すように、エッチングにより保護プレート82に段差孔84のパターンを形成すると共に、プールプレート16に、連通孔24、インクプール(図示省略)を形成し、レジスト88を除去する。段差孔84は、平面視した場合、図5に示すような略長方形状となり、その側壁84aは、ノズルプレート14側に近いほど傾斜角度γが緩くなる構成とされる。
【0048】
次いで、図7(D)に示すように、保護プレート82の表面に撥水膜18を形成する。そして、図7(E)に示すように、ノズルプレート14にノズル20を形成し、これにより積層ノズルプレート81が完成する。
【0049】
本実施形態では、積層ノズルプレート81の段差孔84を保護プレート82の広い範囲に形成し、この段差孔84の内側のノズル領域85に複数のノズル20を形成するので、ノズル20毎に段差孔を作成する場合と比較して、段差孔84の高精度な位置調整が不要となる。
【0050】
なお、本実施形態の積層ノズルプレート81では、複数のノズル20が1列形成されているが、このような構成に限定されるものではなく、ノズル20を複数列(2列以上)形成してもよい。
【0051】
以上の第1、第2実施形態で説明したインクジェット記録ヘッドは、記録媒体P上へ画像(文字を含む)を記録するものであったが、本発明の液滴吐出ヘッドは、これに限定されるものではない。すなわち、記録媒体は紙に限定されるものでなく、また、吐出する液体もインクに限定されるものではない。例えば、高分子フィルムやガラス上にインクを吐出してディスプレイ用カラーフィルターを作成したり、溶接状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成したりする等、工業用的に用いられる液滴吐出装置全般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態のインクジェット記録ヘッドを示す断面図である。
【図2】図1に示すインクジェット記録ヘッドの積層ノズルプレートの段差孔付近を示す拡大斜視図である。
【図3】図1に示すインクジェット記録ヘッドの積層ノズルプレートの連通孔付近を示す拡大斜視図である。
【図4】第1実施形態の積層ノズルプレートの製造方法を説明する図である。
【図5】第2実施形態のインクジェット記録ヘッドのノズル面側の斜視図である。
【図6】第2実施形態のインクジェット記録ヘッドの一部の断面図である。
【図7】第2実施形態に係る積層ノズルプレートの製造方法を説明する図である。
【図8】従来の積層ノズルプレートの製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 積層ノズルプレート
12 保護プレート
14 ノズルプレート
16 プールプレート
18 撥水膜
20 ノズル
22a 側壁
22 段差孔
23 ノズル面
24a 側壁
24 連通孔
40 インクジェット記録ヘッド
80 積層ノズルプレート
82 保護プレート
84a 側壁
84 段差孔
85 ノズル領域
86 プレート面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出するノズルの形成されたノズルプレートと、
前記ノズルプレートに積層され、前記ノズルと連通される連通孔の形成された連通孔プレートと、
前記ノズルプレートを挟んで前記連通孔プレートと逆側に積層され、前記ノズルよりも大きい開口で前記ノズルを外部と連通させる段差孔の形成された保護プレートと、
を備え、
前記保護プレートの厚み方向に形成される前記段差孔の側壁の傾斜、及び、前記連通孔プレートの厚み方向に形成される前記連通孔の側壁の傾斜が、前記ノズルプレートへ近づくにしたがって小さくなる構成とされていることを特徴とする積層ノズルプレート。
【請求項2】
1つの前記段差孔が、複数の前記ノズルが形成される領域を包含するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層ノズルプレート。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の積層ノズルプレートを備えた液滴吐出ヘッド。
【請求項4】
液滴を吐出するノズルの形成されるノズルプレートと、前記ノズルと連通される連通孔の形成される連通孔プレートと、前記ノズルよりも大きい開口で前記ノズルを外部と連通させる段差孔の形成される保護プレートと、が積層された積層ノズルプレートの製造方法であって、
前記ノズルプレートの一の面に前記連通孔プレートを接合すると共に前記ノズルプレートの他の面に前記保護プレートを接合する接合工程と、
前記連通孔プレートに前記連通孔を形成すると共に前記保護プレートに前記段差孔を形成する孔形成工程と、
前記ノズルを形成するノズル形成工程と、
を有する、積層ノズルプレート製造方法。
【請求項5】
前記孔形成工程は、レジスト塗布処理、及びエッチング加工処理を含んでいることを特徴とする請求項4に記載の積層ノズルプレート製造方法。
【請求項6】
前記接合工程は、前記ノズルプレートと前記連通孔プレートとの熱融着処理、及び前記ノズルプレートと前記保護プレートとの熱融着処理、を含んでいることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の積層ノズルプレート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−224624(P2006−224624A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44337(P2005−44337)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】