説明

積層体およびその用途

【課題】ウエットプロセスでのエッチングに好適で、接着性に優れたポリイミド樹脂を接着性絶縁層に用いたワイヤレスサスペンション用積層体の提供。
【解決手段】第1無機物層−絶縁層−第2無機物層、又は、無機物層−絶縁層からなる積層体の絶縁層がコア絶縁層と接着性絶縁層の2層以上の樹脂層であり、この場合、最適なエッチングを行うことができる接着性絶縁層を持ち、ウエットプロセスでのエッチングに好適で、接着性に優れた樹脂積層体を提供するものであり、絶縁層を形成する少なくとも一層が、ポリイミド樹脂であって、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が、3μm/minより大きい、好ましくは5μm/minより大きい、最も好ましくは8μm/minより大きいポリイミド樹脂からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1無機物層(主として金属層)−絶縁層−第2無機物層(主として金属層)、又は無機物層(主として金属層)−絶縁層という層構成からなる積層体における絶縁層を構成する複数の樹脂層のウエットプロセスによるエッチングに適した積層体、絶縁フィルム及び該積層体をウエットプロセスでエッチングを行って得られた電子回路部品、特に、ハードディスクドライブ用サスペンションに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体技術の飛躍的な発展により半導体パッケージの小型化、多ピン化、ファインピッチ化、電子部品の極小化などが急速に進み、いわゆる高密度実装の時代に突入した。それに伴い、プリント配線基板も片側配線から両面配線へ、さらに多層化、薄型化が進められている(岩田,原園,電子材料,35(10),53(1996))。
【0003】
そのような配線・回路を形成する際のパターン形成方法には、金属層−絶縁層−金属層という層構成の基板上の金属層を塩化第二鉄のような酸性溶液でエッチングし、配線を形成した後、層間の導通をとるために、プラズマエッチング、レーザーエッチング等のドライ状態や、ヒドラジン等のウエット状態で絶縁層を所望の形に除去し(特開平6−164084号公報)、めっきや導電ペースト等で配線間をつなぐ方法がある。また、別のパターン形成方法には、感光性ポリイミド(特開平4−168441号公報)などを用いて絶縁層を所望の形に設けた後に、その空隙にめっきで配線を形成する方法(エレクトロニクス実装学会第7回研究討論会予稿集 1999年発行)などがある。
【0004】
近年の電気製品のダウンサイジングの流れにより、金属層−高分子絶縁体層それぞれの薄膜化が進んでおり、それぞれ100μm以下の膜厚で用いられることが多い。このように薄膜で配線を作製した際、金属層−高分子絶縁体層の熱膨張係数の差により、配線に反りを生じてしまう。
【0005】
このような基板の反りσは、絶縁層および導体層の熱的性質がわかれば、次式により算出できる(宮明,三木,日東技報,35(3),1,(1997))。
【数1】

E1:金属の弾性率
E2:絶縁層の弾性率
Δα:金属−絶縁層間の熱膨張係数の差
ΔT:温度差
h:膜厚1:配線長
この式により、配線の反りを低減させる方法として、
1.絶縁層の弾性率を低減する方法
2.絶縁層と金属配線層の熱膨張率差を低減する方法
の2種が考えられる。
【0006】
配線を形成する方法において、第1金属層−絶縁層−第2金属層という構成からなる積層体における金属層をエッチングして配線を形成するために用いられる積層体に、積層体の反りを低減する為、金属層と絶縁層との熱膨張率を同じにする必要性がある。そのために、そのような積層体の絶縁層として低膨張性のポリイミドを用いることが提案されている(USP4,543,295、特開昭55−18426号公報、特開昭52−25267号公報)。
【0007】
しかし、低膨張性のポリイミドは一般に熱可塑性ではないため、金属層との接着性に乏しく、実用に耐えうるような密着力を得るのは困難である。そこで、金属層に対して密着性が良好な熱可塑性のポリイミド系樹脂やエポキシ樹脂を、金属層と低膨張性ポリイミドの絶縁層(コア層)の間に接着剤層として用いることが知られている(特開平7−58428号公報)。
【0008】
この場合、低膨張性のコア絶縁層の厚みを、接着剤層の厚みより厚くすることで積層体全体として反りが現れないようにしている。接着剤層は薄ければ薄いほど反りの防止に効果があるが、薄すぎると接着性が損なわれる。また少なくとも、コア絶縁層の上下の接着剤層を合わせた厚みがコア絶縁層の厚みの半分以下であれば、反りが出ずらいという理由から市販の積層体は、接着剤層の厚みの和がコア絶縁層の厚みの半分以下になっている場合が多い(特開平1−245587号公報)。
【0009】
しかし、これらの材料をウエットプロセスでエッチングした時、この2種類の材料のエッチングレートが異なると、一般にエッジ形状が、直線にならずエッチングレートが遅い方が残るような形状になる。接着剤層のエッチングレートがコア絶縁層よりも遅いと、コア絶縁層を挟んだ上面と下面の接着剤層のエッジが張り出したようになる。また、その逆の場合、接着剤層が先にエッチングされ中心部が張り出したようになる。このような問題点があるために、ウエットエッチングによって絶縁層のパターニングを行うことは非常に難しいので、通常、プラズマやレーザーを用いたドライプロセスによる絶縁層のパターニングが行われている。
【0010】
現在、パーソナルコンピューターの生産量の急激な伸びに伴い、それに組み込まれているハードディスクドライブもまた生産量が増大している。ハードディスクドライブにおける、磁気を読み取るヘッドを支持しているサスペンションといわれる部品は、ステンレスの板ばねに、銅配線を接続するものから、小型化への対応のためステンレスの板ばねに直接銅配線が形成されているワイヤレスサスペンションといわれるものへと主製品が移り変わりつつある。
【0011】
このようなワイヤレスサスペンションは、第1金属層−接着性絶縁層−コア絶縁層−接着性絶縁層−第2金属層からなる積層体を用いて作製されているものが主流である。該積層体は、例えば、第1金属層を銅の合金箔、第2金属層をステンレス箔とし、絶縁層を、コア絶縁層と該コア絶縁層の両面に積層された接着性絶縁層としたものが挙げられる。該積層体を用いたワイヤレスサスペンションは、高速で回転するディスク上をスキャンすることから細かな振動が加わる部材であるため、配線の密着強度は非常に重要である。したがって、該積層体を用いたワイヤレスサスペンションは、厳しいスペックが求められている。
【0012】
該ワイヤレスサスペンションと呼ばれる部品は、主にメッキにより配線を形成するアディティブ法と、銅箔をエッチングすることで配線を形成するサブトラクティブ法の2種類の作製法がある。サブトラクフィブ法の場合、絶縁層であるポリイミドのパターニングを行うのに、先に述べた理由からプラズマエッチング法が用いられている。
【0013】
従来、ワイヤレスサスペンション用のエッチング前の原材料となる積層体に対して、エッチング処理は、専らドライプロセスによるエッチングが行われてきた。ドライプロセスは被処理物に対して一般的に枚様毎の処理(枚様式)がなされるため、生産性が悪く、また装置も高価なため生産コストが非常に高くなってしまう欠点がある。一方、ウエットプロセスは、長尺物に対して連続処理にてエッチングが可能であるため生産性が高く、装置コストも安いというメリットがあるが、厳しいスペックが求められているワイヤレスサスペンション用の積層体に対しては、次のような理由で、従来、ウエットプロセスが実用化できる程度に実現していない。
【0014】
ウエットプロセスによるエッチングは、ドライプロセスによるエッチングに比べて、エッチングの対象となる材料においてエッチングレートが大幅に異なる材料が多い。例えば、ワイヤレスサスペンション用の積層体における絶縁層の一部として用いる接着剤は、高度の絶縁信頼性を確保する必要性から、前記したように主としてポリイミド系樹脂が用いられる。ポリイミド系樹脂に接着性を持たせる為には、前記したように熱可塑性を与えるのが一般的ではあるが、熱可塑性を与えるような柔軟な構造をポリイミド系樹脂の骨格内に導入すると、耐薬品性が強くなる傾向となり、したがって、このような樹脂はウエットプロセスによるエッチング適性が劣る傾向となり、コア絶縁層のエッチングレートに比べて離れたものとなる。本明細書においてエッチングレートとはエッチングにより生じた単位時間当りの膜厚の減少量をいう。
【0015】
ところで、低膨張性ポリイミドをコア絶縁層とし、接着性を有するポリイミドを接着性絶縁層として、これらの各層を組合せ積層して複数層からなる絶縁層(例えば、接着性絶縁層−コア絶縁層−接着性絶縁層、或いは接着性絶縁層−コア絶縁層)を構成した場合、このような絶縁層に対してウエットプロセスによるエッチングを施すと、接着性絶縁層は耐薬品性が高い傾向にあるためエッチング性が劣る傾向になるが、コア絶縁層はエッチングされ易いため、絶縁層全体のエッチングが均一に進行せず、エッチング形状が均一にならないという問題点がある。
【0016】
このように、ワイヤレスサスペンション等の電子回路部品用の積層体における絶縁層のコア絶縁層と接着性絶縁層のエッチングレートを適正なものとし、且つ接着剤層の接着性を良好なものとすることは、相反する性質であり両立させることは困難であるが、共に満足させなければならない。
【0017】
図1は、従来、ドライエッチングが専ら適用されていた第1金属層−接着性絶縁層−コア絶縁層−接着性絶縁層−第2金属層からなるワイヤレスサスペンション用の積層体に対して、第1金属層側からウエットプロセスでエッチングした場合の、積層体の断面のエッチング形状の概念図を示す。図1において、1は低膨張性ポリイミド樹脂のコア絶縁層である。該コア絶縁層1の一方の面に第1金属層2が、接着性絶縁層4を介して形成されており、該コア絶縁層1のもう一方の面には、第2金属層3が接着性絶縁層4を介して形成されている。図1に示されるように、ウェットプロセスでは接着性絶縁層4のエッチングレートがコア絶縁層1に比べて低いため、接着性絶縁層4がエッチングされない部分が屋根の日さし状となって残り、絶縁層全体としては、エッチング形状が不均一なものとなる。
【0018】
従来、前記層構成のワイヤレスサスペンション用の積層体の接着性絶縁層に用いるポリイミド樹脂として、ウエットプロセスでのエッチングに好適で、接着性に優れたものは知られていなかった。
【発明の開示】
【0019】
そこで本発明は、第1無機物層(主として金属層)−絶縁層−第2無機物層(主として金属層)、又は無機物層(主として金属層)−絶縁層からなる層構成の積層体における絶縁層をコア絶縁層と接着性絶縁層の2層以上の樹脂層を持つ積層体において、最適なエッチングを行うことができる接着性絶縁層を有し、ウエットプロセスでのエッチングに好適で、接着性に優れたポリイミド樹脂を持つ積層体を提供すること、該積層体を形成するための絶縁フィルムを提供すること、及びそれを用いた電子回路部品を提供することを目的とする。
【0020】
第1の発明
本発明者らは、第1無機物層(主として金属層)−絶縁層−第2無機物層(主として金属層)、又は無機物層(主として金属層)−絶縁層からなる層構成の積層体における絶縁層を2以上の樹脂層とした場合に、絶縁層の樹脂として良好なエッチング形状が得られる種々のポリイミド樹脂を鋭意検討した。
【0021】
その結果、良好な接着性を示す熱可塑性ポリイミド樹脂においても、特定の構造を樹脂骨格内に有することによってエッチングレートが早くなることを見出した。このような熱可塑性ポリイミド樹脂は、構造的にエッチングレートが早い低膨張性ポリイミドのエッチングレートに近づけることを可能にするものであり、ウエットプロセスによるエッチングにおいても良好なエッチング形状を得ることができる。
【0022】
即ち、本発明の積層体は、第1無機物層−絶縁層−第2無機物層、又は、無機物層−絶縁層からなる層構成の積層体であって、該絶縁層が2層以上の樹脂層から形成され、該絶縁層を形成する少なくとも一層が、一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂であって、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が、3μm/minより大きい、好ましくは5μm/minより大きい、最も好ましくは8μm/minより大きいポリイミド樹脂であることを特徴とする。
【化1】

(ここで、R及びRは2価の有機基であり、それぞれ単一の構造であっても、それぞれ2種以上の構造の組み合わせであっても良い。nは2以上の整数。)
【0023】
また、別の本発明の積層体は、第1無機物層−絶縁層−第2無機物層、又は、無機物層−絶縁層からなる層構成の積層体であって、該絶縁層が2層以上の樹脂層から形成され、該絶縁層を形成する少なくとも一層が、一般式(2)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂であって、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が、3μm/minより大きい、好ましくは5μm/minより大きい、最も好ましくは8μm/minより大きいポリイミド樹脂であることを特徴とする。
【化2】

(R及びRは2価の有機基であり、それぞれ単一の構造であっても、それぞれ2種以上の構造の組み合わせであっても良く、Rはジフェニルスルホン−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、2,3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、及び1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から選ばれた1種又は2種以上の酸二無水物、n及びmは2以上の整数)
その際に溶解速度を求める条件については、用いるエッチング液で最も溶解速度が速くなる条件で行うのが好ましい。本発明の実施例にはディップ式(攪拌した溶液に浸漬させるだけ)で70℃という条件が記載されているが、本発明はこれに限定されない。一般に、ディップ式よりはスプレーによるエッチングの方がエッチング速度、エッチング形状が良好になると考えられている。エッチング形状はエッチング方法や条件に依存するところが大きく、実際にエッチングを実施可能な方法や条件において、最高のエッチング速度を示すときにエッチングレートが3μm/min以上であれば、積層体のエッチング形状が良好になる。そのため、実際、70℃で、ディップ式という条件の場合、3μm/minのエッチングレートであれば、エッチング形状が良好になるといえる。しかし、エッチング液の組成によっては、水溶液であってもメタノールなどの低沸点溶媒を多く含むことで70℃でのエッチングが実施不可能な場合があるため、その場合にはそのエッチング液により条件を別途定める必要がある。
【0024】
本発明において、ポリイミド樹脂とは、一般にポリイミド構造をとっていればどのようなものでも良く、積層前にフィルムの状態であっても良いし、溶液や前駆体の溶液状態で塗布し、乾燥やイミド化を行い樹脂層を形成するものでも良い。
【0025】
本発明の積層体においては、前記一般式(1)又は一般式(2)のRに含まれる2価の有機基のうち少なくともモル分率で50%以上が好ましく、さらに好ましくは2価の有機基の全てが一般式(3)で表されるものである。
【化3】

(nは、1〜15までの整数)
【0026】
本発明の積層体の好ましい態様は、前記一般式(1)又は一般式(2)のRに含まれる2価の有機基の全てが前記一般式(3)で表され、且つ、Rに含まれる2価の有機基のうち少なくともモル分率で30%以上、好ましくは80%以上が一般式(4)で表されるものである。
【化4】

【0027】
本発明の積層体を構成する絶縁層の内、少なくとも1層は膨張率0ppm〜40ppmの低膨張性樹脂が好ましく、エッチング適性の面から特に低膨張性ポリイミド樹脂が好ましい。低膨張性樹脂を用いることにより、無機物層の熱膨張率に絶縁層の低膨張性樹脂の熱膨張率を近づけることができるため、積層体の反りを防止することができる。
【0028】
本発明の積層体の絶縁層を構成する樹脂層は、少なくとも一層がポリイミド樹脂であればよく、その全てがポリイミド樹脂でもよい。
【0029】
本発明の積層体においては、少なくとも一方の無機物層との界面を形成する絶縁層が、前記一般式(1)又は一般式(2)のRに含まれる2価の有機基の全てが前記一般式(3)で表され、且つ、Rに含まれる2価の有機基のうち少なくともモル分率で80%以上が前記一般式(4)で表されるポリイミド樹脂であることが望ましい。
【0030】
本発明の積層体の層構成に含まれる絶縁層は、第1絶縁層−第2絶縁層−第3絶縁層からなる積層構造であり、該第1絶縁層と第3絶縁層の樹脂が、前記一般式(1)又は一般式(2)のRに含まれる2価の有機基の全てが前記一般式(3)で表され、且つ、Rに含まれる2価の有機基のうち少なくともモル分率で80%以上が前記一般式(4)で表される構造のポリイミド樹脂であり、該第2絶縁層が膨張率0ppm〜40ppmの低膨張性のポリイミド樹脂であるものが、好ましい態様である。
【0031】
本発明の積層体における無機物層は、全ての無機物層が合金銅である場合、全ての無機物層が銅である場合、一方の無機物層が銅で、他方が合金銅である場合、一方の無機物層が銅又は銅合金で、他方がステンレスである場合から選ぶことができる。
【0032】
本発明の絶縁フィルムは、2層以上の樹脂層からなる絶縁フィルムであって、該樹脂層の少なくとも1層が、前記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する構造を持ったポリイミド樹脂、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が3μm/minより大きいポリイミド樹脂からなる絶縁フィルムである。
【0033】
本発明の別の絶縁フィルムは、2層以上の樹脂層の絶縁層からなる絶縁フィルムであって、該樹脂層の少なくとも1層が、前記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する構造を持ったポリイミド樹脂、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が3μm/minより大きいポリイミド樹脂からなる絶縁フィルムである。
【0034】
本発明の絶縁フィルムは、無機物層と積層されるための中間材料として有用である。本発明の絶縁フィルムの構成は、前記の本発明の積層体における絶縁層と同じ構成とすることができる。
【0035】
本発明の絶縁フィルムを構成する絶縁層の内、少なくとも1層は膨張率0ppm〜40ppmの低膨張性ポリイミド樹脂が好ましい。低膨張性のポリイミト樹脂を用いることにより、無機物層の熱膨張率にポリイミド樹脂の熱膨張率を近づけることができるため、該絶縁フィルムを無機物層と積層した場合に積層体の反りを防止することができる。
【0036】
本発明の積層体又は絶縁フィルムはエッチングして電子回路部品を製造することができる。好適に製造できる電子回路部品には、ハードディスクドライブ(HDD)用サスペンションが挙げられる。
【0037】
本発明の積層体又は絶縁フィルムのエッチングには、ドライプロセスによるエッチング又はウエットプロセスによるエッチングが適用できる。本発明の積層体又は絶縁フィルムは、絶縁層を形成する少なくとも一層が、前記一般式(1)又は一般式(2)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂であって、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が3μm/minより大きいポリイミド樹脂であるため、ウエットプロセスによるエッチングでも、精度の良いエッチングを行うことができ、エッチングの生産性が高く、装置コストも安いというメリットがある。
【0038】
本発明の積層体又は絶縁フィルムの絶縁層のウエットプロセスによるエッチングには、塩基性溶液を用いることができる。好ましい塩基性溶液は、アルカリ−アミン系、例えば、特開平10−195214号公報に示されるアルカリ−アミン系溶液があげられるが特に限定されない。また、塩基性分としては有機系塩基、無機系塩基のどちらでもよく、それらの混合でもよい。また、塩基性溶液は、好ましくは、pH8〜pH14の範囲に入るものがよく、特に好ましくは、pH12〜pH14の範囲に入るものがよい。
【0039】
また、本発明の積層体に用いられるポリイミド樹脂は、界面を形成する樹脂や無機物との90°剥離強度が好ましくは100g/cm以上、より好ましくは300g/cm以上、さらに好ましくは、700g/cm以上あることが好ましい。
【0040】
本発明の絶縁フィルムは、無機物層と積層体を形成した後に、エッチングを行っても良いし、積層前にエッチングを行っても良い。具体的には次のような使用形態が挙げられる。
・絶縁フィルムの両面に対して、配線を形成した基板となる無機物層を接着した後、絶縁フィルムのエッチングを行う。
・無機物層の基板上に配線を形成した後に、絶縁フィルムを接着し、その後、絶縁フィルム表面上に無機物層を貼り付け、無機物層と絶縁フィルムをエッチングする。
・予めエッチングした絶縁フィルムを無機物層へ貼り付ける。
【0041】
本発明の積層体或いは絶縁フィルムにおける絶縁層の形態には、樹脂の塗布による被膜や樹脂フィルムを用いることができる。
【0042】
第2の発明
第2の本発明は、第1金属層−絶縁層−第2金属層からなる積層構造の積層体、或いは金属層−絶縁層からなる積層体であって、該絶縁層が複数層からなる積層体に対して、接着剤層を有する絶縁層の最適なエッチング条件の積層体を提供すること、特に、そのような積層体の長尺物に対して連続処理にてエッチングが可能で生産性が高く、装置コストも低いウエットプロセスによるエッチングに最適な条件の積層体を提供することを目的とする。
【0043】
本発明者らは、第1無機物層(主として金属層)−絶縁層−第2無機物層(主として金属層)、又は無機物層(主として金属層)−絶縁層からなる層構成の積層体における絶縁層を2以上の樹脂層とした場合に、良好なエッチング形状が得られる樹脂層のエッチングレートの比を鋭意検討した。その結果、各樹脂層のエッチングレートの比が6:1〜1:1の範囲内、好ましくは4:1〜1:1の範囲内であれば、良好なエッチング形状が得られることを見出した。
【0044】
即ち、本発明は、第1無機物層−絶縁層−第2無機物層、又は、無機物層−絶縁層からなる層構成の積層体であって、該絶縁層が2層以上の樹脂層から形成され、該絶縁層の各層のエッチングレートの大きいものと小さいものとの比が、6:1乃至1:1の範囲、好ましくは4:1〜1:1の範囲であることを特徴とする積層体である。本発明において、エッチングレートとはエッチングにより生じた単位時間当りの膜厚の減少量をいう。
【0045】
本発明の積層体において、無機物層又はコア絶縁層に対する接着剤層の接着強度は、全ての被着体に対して300g/cm以上が好ましく、より好ましくは全ての被着体に対して1000g/cm以上である。
【0046】
本発明の積層体に用いる無機物としては金属、単結晶シリコン、金属酸化物等が挙げられるが特に限定されない。その金属としては、銅、鉄等の純金属の外、ステンレス等の合金が挙げられるが特に限定されない。また、金属を表面処理し、金属ではない無機物の層、例えば、セラミック層を持つような金属であっても差し支えない。特に、本発明の積層体をハードディスクドライブ用サスペンションに用いる場合には、バネとしての特性が必要なことからステンレス等の高弾性な金属と、配線となる銅箔又は合金銅箔とを積層したものが好ましい。
【0047】
別の態様は、2層以上の樹脂層から形成された絶縁フィルムであって、各樹脂層のエッチングレートの大きいものと小さいものとの比が、6:1乃至1:1の範囲であることを特徴とする絶縁フィルムである。
【0048】
本発明の積層体の製造する手法は、特に限定されない。具体的には金属にポリイミド溶液を直接塗布し乾燥するか、又はポリイミド前駆体を塗布し乾燥し熱イミド化することにより、金属上に接着性絶縁層を設け、コア絶縁層となるフィルムと熱圧着する手法や、金属上に設けたポリイミド接着性絶縁層上にコア絶縁層になりうるポリイミド系樹脂又はその前駆体の溶液を塗布し、乾燥、または乾燥後に加熱イミド化してコア絶縁層を設けた後、その上に前述の手順で接着性絶縁層を設け、金属と熱圧着し、積層材を得る方法等が挙げられる。また、樹脂フィルムの形態にした本発明の絶縁フィルムを基板及び/又は配線となる無機物層と接着して積層体としてもよい。
【0049】
上記本発明の積層体、又は絶縁フィルムを用いて、エッチングして、好ましくは、ウエットプロセスでエッチングして電子回路部品を作製することができる。絶縁フィルムを用いて電子回路部品を作製するには、前記本発明の絶縁フィルムと無機物を積層して積層体としたものに対してエッチングして、好ましくは、ウエットプロセスでエッチングして作製することができる。
【0050】
本発明で単に「エッチング」とは、ウエットプロセスのみだけではなく、ドライプロセスの場合も含む。
【0051】
また、本発明において、「積層体」または「積層」とは、フィルム状のものを積層させる場合の他に、特定の層を基材上に形成させる場合をも含む。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】図1は、従来、ドライエッチングが専ら適用されていた第1金属層−接着性絶縁層−コア絶縁層−接着性絶縁層−第2金属層からなるワイヤレスサスペンション用の積層体に対して、第1金属層側からウエットプロセスでエッチングした場合の、積層体の断面のエッチング形状の概念図である。
【図2】図2は、実施例A2で得られたポリイミドAを用いた積層体のエッチング形状を写したSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図3】図3は、加工前の積層体ならびにプラズマエッチング又はアルカリ溶液によるウエットエッチング後の積層体の工程断面図である。
【図4】図4は、初期の膜厚から浸漬後の膜厚を引いたものを膜減り量とし、横軸に浸漬時間(秒)、縦軸に膜減り量(μm)をとったグラフである。
【図5】図5は、接着剤層付きフィルムAを用いた3層材のエッチング形状を示すSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図6】図6は、接着剤層付きフィルムBを用いた3層材のエッチング形状を示すSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図7】図7は、図6の写真を概略的にイラストした図である。
【図8】図8は、接着剤層付きフィルムCを用いた3層材のエッチング形状を示すSEM(走査型電子顕微鏡)写真である。
【図9】図9は、ドライエッチングサンプルのXPSチャートである。
【図10】図10は、窒素、フッ素に対応する部分の詳細な測定データを示すXPSチャートである。
【図11】図11は、窒素、フッ素に対応する部分の詳細な測定データを示すXPSチャートである。
【図12】図12は、ウエットエッチングサンプルの測定結果を示すXPSチャートである。
【図13】図13は、ウエットエッチングサンプルの測定結果を示すXPSチャートである。
【図14】図14は、ウエットエッチングサンプルの測定結果を示すXPSチャートである。
【図15】図15は、プラズマエッチングサンプルについてのリファレンスのXPSチャートを示す。
【図16】図16は、ウエットエッチングサンプルについてのリファレンスのXPSチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下に本発明について具体的に説明する。
【0054】
第1の発明
電子部材に用いられる主として金属層からなる無機物層と絶縁層との積層体における絶縁層部分は、積層体の反りを防止し、且つ絶縁層と無機物層との間の接着性を良好なものとするために、前記したように、低膨張性のコア絶縁層の一方の面もしくは両面に熱可塑性の接着性絶縁層が設けられた積層構造とする。一般に接着性の樹脂は熱膨張率が大きく、それ単体で金属と積層すると反りが生じる。そこで、金属と熱膨張率を合わせた低膨張性のコア絶縁層の厚みを、接着性絶縁層の厚みより厚くすることで積層体全体として反りが表に現れないようにする。接着性絶縁層は薄ければ薄いほど反り防止には効果的であるが、薄すぎると接着性が低下する場合がある。また少なくとも、コア絶縁層の上下の接着性絶縁層を合わせた厚みがコア絶縁層の厚みの半分以下であれば、反りが出ずらい。
【0055】
積層体をウエットプロセスでエッチングした時、複数の樹脂層を有する絶縁層の材料のエッチングレートが異なると、一般にエッジの形状が、直線にならずエッチングレートが遅い方が残るような形状となる。例えば、図1に示すような積層体において、接着性絶縁層のエッチングレートが遅いと、上面と下面が張り出したようになる。その逆の場合、接着性絶縁層が先にエッチングされ中心部が張り出したようになる。
【0056】
アルカリ溶液でのポリイミド系樹脂のエッチングを例にとると、イミド結合が溶液中の水酸化物イオンに攻撃され、ポリアミック酸になる。この状態でも、ポリイミドの時よりはアルカリ溶液に溶解しやすくなるが、さらに、アミック酸のアミド基が水酸化物イオンの攻撃を受け、加水分解されポリマーの分子量が下がることで溶解性が向上する。また分子鎖中に加水分解されやすい基を有している場合はそこが加水分解されることもある。
【0057】
このメカニズムにより、エッチングレートは直鎖上のポリマーである場合は、それほど分子量の大小に影響されない。実際、本発明者らの行なった実験でも上記の仮説を補強するデータが出ている。
【0058】
一般に、低膨張性のポリイミドといわれる汎用の物の組成は、主骨格として、ピロメリット酸二無水物を用いた系と、ビフタル酸二無水物を用いた系に分けられる。ピロメリット酸二無水物を絶縁層に用いた場合には構造由来の電子的要因等の影響で耐アルカリ性が発現しずらいこと、即ち、アルカリエッチングがしずらいことが知られており、本発明の積層体の絶縁層におけるコア絶縁層となる低膨張性ポリイミドにはピロメリット酸二無水物を構造内に有するものが好ましい。一方、ビフタル酸二無水物系ポリイミドは、耐アルカリ性が良好であることが知られており、本発明の絶縁層におけるコア絶縁層として用いる為には、ポリイミドのもう一つの原材料であるジアミンを選択することにより、耐アルカリ性を発現しづらくすることが望ましい。
【0059】
接着性の熱可塑性樹脂においては、前述のピロメリット酸二無水物を主骨格に用いることは難しい。それは、ピロメリット酸二無水物を用いると熱可塑性が発現しづらく接着性があまりでないからである。そこで、本発明者らはピロメリット酸二無水物と類似の構造を持ち、且つ、水酸化物イオンに加水分解されるエステル結合を骨格内に有し、熱可塑性を発現しうる柔軟な骨格を持つ酸二無水物として、ビストリメリット酸二無水物に着目した。
【0060】
トリメリット酸自体が、構造的にピロメリット酸に類似しているため、特にトリメリット酸をつなぐ部位に関しては限定しないが、樹脂全体に熱可塑性を与え易いという観点から炭化水素系ジオールを有するようなビストリメリット酸系二無水物が好ましい。
【0061】
その中でも、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物(略語:TMEG)を原料としたポリイミド樹脂は、従来、詳細な検討が為されており、接着性が良好であることが報告されている(特開平10−152647号公報、特開平10−168187号公報)。
【0062】
本発明の積層体又は絶縁フィルムに用いられる接着性絶縁層を形成する樹脂は、主にポリイミドやそれに類する樹脂であるが、骨格内にビストリメリット酸系二無水物由来の骨格を含んでいれば、特に限定されず、耐熱性や絶縁性を有する樹脂であればイミド結合の多少は影響されない。また、上記のエチレングリコールビストリメリット酸二無水物(略語:TMEG)と類似の構造でエチレングリコール部位の酸素原子間の炭素数が、2でないものでも耐加水分解性については同様の性質を認められると考えられるが、コスト、アルカリとの反応性の面でTMEGが最も好ましい。
【0063】
接着性絶縁層に用いるポリイミド系樹脂の原料でTMEG以外の成分としては、物性を損なわない範囲で、他の酸無水物成分を構造中に含んでも良い。他の酸無水物としては、ビストリメリット酸系酸二無水物の他に、ジフェニルスルホン−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられるが特に限定されない。
【0064】
接着性絶縁層に用いるポリイミド系樹脂の原料でジアミンとしては、脂肪族ジアミン、一般式(5)で表される芳香族ジアミン又は一般式(6)で表される芳香族ジアミンが挙げられる。これらジアミンは単独又は2種以上混合して使用できる。
【化5】

[Rは、アルキル基、フッ素置換アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン基を表す。nは0〜4の整数を表す。但し、n個のRは、同一又は異なっていても良い。]
【化6】

[Aは、単結合群、−O−、−CH−、−CO−、−C(CH−、−C(CF−、−S−及び−SO−で表される群がら選択されるいずれかの結合基である。R、R、Rは同一又は異なっていても良く、Rと同義である。x、y、z及びmは0〜4の整数を表す。更に、(m+1)個のAは同一又は異なっていても良い。]
【0065】
脂肪族ジアミンとしては、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン等が例示される。
【0066】
前記一般式(5)又は前記一般式(6)で表される芳香族ジアミンとしては、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、3,4’−ビス(p−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、3,3’−ビス(p−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル等の芳香族ジアミンが例示される。
【0067】
接着性絶縁層に用いるポリイミド系樹脂の原料でジアミンとしては、耐熱性等の点からは脂肪族ジアミンより芳香族ジアミンを用いる方が好ましい。
【0068】
本発明の積層体の絶縁層に用いられる熱可塑性樹脂とは、熱分解温度よりも低い温度にガラス転移点温度(Tg)を有する樹脂のことである。一般に、ガラス転移点は示差熱分析により求められるが、適宜、動的粘弾性測定におけるTanδのピークをガラス転移点としても良い。本発明においては、動的粘弾性によりTgを基準にしたが、樹脂がもろく動的粘弾性の測定に耐えられない時などには示差熱分析によってガラス転移点を求めても良い。
【0069】
積層体を形成する際の熱圧着条件から考えると360℃以下のガラス転移点温度を有する方が好ましく、また、はんだ耐熱等の耐熱性の観点から150℃以上のガラス転移点温度を有する方が好ましい。さらに、ガラス転移点温度以上ではできるだけ貯蔵弾性率が低くなるような樹脂の方が圧力を大きくかけなくても接着性が出やすい。
【0070】
本発明においてエッチングレートとは、積層体をエッチング液に接触させた時に単位時間あたりの膜の厚みの減った量をいう。この場合、温度はエッチング液が液体の状態を保っていれば何度でも良く、エッチング液との接触方法もディッピングによる方法、スプレーによる方法等のどのような方法を用いても良い。また、本発明の積層体に使用する樹脂に関してはエッチング性を損なわない範囲で添加剤を加えてもよい。
【0071】
一般に高い温度でエッチングを行えばそれだけエッチングに要する時間も短くて済むため、好ましくは、40℃以上、より好ましくは60℃以上でエッチングを行うと良い。ただし、エッチング液の成分として、そのような温度で揮発してしまうような成分が入っており、その揮発によりエッチング液の寿命や操作性が劣ってくるような場合は、そのような物性が落ちてこない温度で行うのが好ましい。また、多くのエッチング液は水溶性であることが多く、その場合は、エッチング液が沸騰してしまうため110℃以下の温度で行うのが好ましい。
【0072】
下記に示す実施例においては、70℃におけるエッチングレートを示しているが、あくまで指標として70℃を選んだにすぎず、本来、そのエッチング液がもっともエッチング性能を示す温度や条件で行うのが良い。しかし、その場合において3μm/minというエッチングレートを下回るような樹脂は、裾引きや断面形状が直線でない等の不具合を生じるため、好ましくなく実用に供さないものとなる。
【0073】
本発明の積層体又は絶縁フィルムの絶縁層のウエットプロセスによるエッチングには、塩基性溶液を用いることができる。好ましい塩基性溶液は、アルカリ−アミン系、例えば、特開平10−195214号公報に示されるアルカリ−アミン系溶液があげられるが特に限定されない。また、塩基性分としては有機系塩基、無機系塩基のどちらでもよく、それらの混合でもよい。また、塩基性溶液は、好ましくは、pH8〜pH14の範囲に入るものがよく、特に好ましくは、pH12〜pH14の範囲に入るものがよい。
【0074】
また、本発明の積層体に用いられるポリイミド樹脂は、界面を形成する樹脂や無機物との90°剥離強度が好ましくは100g/cm以上、より好ましくは300g/cm以上、さらに好ましくは、700g/cm以上あることが好ましい。
【0075】
接着性絶縁層に用いるポリイミド系樹脂の合成法は特に限定されず、溶液中でポリアミック酸とした後、塗布成型し熱イミド化しても良いし、溶液中で加熱還流することでイミド化しても良い。また、無水酢酸等の脱水触媒を用いて化学的イミド化により合成したものを用いても良い。
【0076】
本発明の積層体に用いる無機物としては金属、単結晶シリコン、金属酸化物等が挙げられるが特に限定されない。その金属としては、銅、鉄等の純金属の外、ステンレス等の合金が挙げられるが特に限定されない。また、金属を表面処理し、金属ではない無機物の層、例えば、セラミック層を持つような金属であっても差し支えない。特に、本発明の積層体をハードディスク用サスペンションに用いる場合には、バネとしての特性が必要なことからステンレス等の高弾性な金属と、配線となる銅箔又は合金銅箔とを積層したものが好ましい。
【0077】
積層体を作製する手法は、特に限定されない。具体的には金属にポリイミド溶液を直接塗布し乾燥するか、又はポリイミド前駆体を塗布し乾燥し熱イミド化することにより、金属上に接着性絶縁層を設け、コア絶縁層となるフィルムと熱圧着する手法や、金属上に設けたポリイミド接着性絶縁層上にコア絶縁層になりうるポリイミド系樹脂又はその前駆体の溶液を塗布し、乾燥、または乾燥後に加熱イミド化してコア絶縁層を設けた後、その上に前述の手順で接着性絶縁層を設け、金属と熱圧着し、積層材を得る方法等が挙げられる。また、樹脂フィルムの形態にした本発明の絶縁フィルムを基板及び/又は配線となる無機物層と接着して積層体としてもよい。
【0078】
本発明の積層体における接着性絶縁層に用いる樹脂の重量平均分子量は、積層体やフィルムの製造プロセスヘの適性の面から、その分子構造にもよるが一般に6000以上500000以下が好ましい。特に好ましくは8000以上100000以下である。分子量が500000以上であると、均一な塗膜が得られにくく、6000以下では成膜性が悪く均一な接着性の塗膜が得られにくい。
【0079】
また、接着剤は溶液の状態で塗布することにより成形されても良いし、別な方法でも良い。さらに、前駆体やその誘導体の状態で成形後に処理を行うことで所望の構造にしても良い。
【0080】
電子回路部品
電子回路部品の形成は、一般的には以下の方法で行うことができるがこれに限定されない。
【0081】
まず、回路を形成したい側の本発明の積層体の金属表面に感光性樹脂層を塗布又はラミネートによって形成する。そこに、所望のパターンの像が描かれたマスクを密着させ感光性樹脂が感度を持つ波長の電磁波を照射する。所定の現像液でポジ型感光性樹脂であれば感光部を、ネガ型感光性樹脂であれば未露光部を溶出させ、所望の回路の像を金属上に形成する。その状態のものを塩化第二鉄水溶液のような金属を溶解させる溶液に浸漬又は、溶液を基板に噴霧することで露出している金属を溶出させた後に、所定の剥離液で感光性樹脂を剥離し回路とする。
【0082】
次いで、基板に形成した回路上に、上記の金属層のパターニングと同様な手法で、ドライ又はウエットプロセスで絶縁層をパターニングする。例えば、ウエットプロセスの場合には、所望のパターンの像が描かれたマスクを密着させ感光性樹脂が感度を持つ波長の電磁波を照射する。所定の現像液でポジ型感光性樹脂であれば感光部を、ネガ型感光性樹脂であれば未露光部を溶出させ、所望のパターンを形成する。その状態のものを絶縁層の樹脂を溶解させる溶液、例えば、アルカリ−アミン系ポリイミドエッチング液等に浸漬又は、溶液を基板に噴霧することで露出している絶縁層樹脂を溶出させた後に、所定の剥離液で感光性樹脂を剥離する。
【0083】
プラズマエッチングプロセスにより作製したステンレスを無機物層とするサスペンションと、ウエットエッチングにより作製した同様なサスペンションについて、両ステンレス表面の分析結果によれば、プラズマエッチングプロセスを用いて作製したサスペンションは、絶縁層に用いた樹脂が除去され、露出した金属表面がプラズマと反応し、表面が無機の窒化物及び/又は無機のフッ化物となっていることが確認されている。プラズマエッチングプロセスの場合に、金属表面に窒化物及び/又は無機のフッ化物が検出される理由は、恐らく、プラズマエッチングガスは200℃以上の高温であり、絶縁層であるポリイミド等の樹脂が除去された後にステンレス表面が露出し、露出したステンレス表面がプラズマと反応するために生成したためと考えられる。
【0084】
一方、ウエットエッチングプロセスにより良好なエッチング形状を実現したサスペンションは、ポリイミドが除去されて露出したステンレス表面から無機の窒化物、無機のフッ化物は検出されず、表面の変化が起こっていないことが確認されている。この特徴は、本発明が初めてウエットエッチングプロセスにより作製可能にしたサスペンション等の電子回路部品に特有な特徴である。ウエットエッチングプロセスの場合に、金属表面の変化が見られない理由は、恐らく、ウエットエッチングに用いる薬液は、主にアルカリ系の溶液が用いられるが、一般に有機物との反応性に比べ金属との反応性が低いからであり、また、処理温度も100℃以下と低く、処理時間も数分と短いことから、ポリイミドが除去された後に露出するステンレスの表面を変化させにくいためと考えられる。
【0085】
第2の発明
電子部材に用いられる金属層と絶縁層からなる積層体における絶縁層は、積層体の反りを防止し、且つ絶縁層と金属層との接着性を良好なものとするために、前記したように、低膨張性のコア絶縁層の両面に熱可塑性の接着剤層が設けられた積層構造とする。絶縁層を構成する少なくとも1層がポリイミド樹脂であることが望ましい。また、場合によって、絶縁層を構成する全ての層がポリイミド樹脂であってもよい。
【0086】
しかしながら、接着剤層に用いる接着性の熱可塑性樹脂は熱膨張率が大きいため、接着剤層が金属層と積層されると反りが生じやすくなるので、金属層と熱膨張率が類似するように選択した低膨張性の樹脂のコア絶縁層の厚みを、接着剤層の厚みより厚くすることで、積層体全体として反りが表面に現れ難くなることが重要である。コア絶縁層に対して接着剤層は薄ければ薄いほど反りに対してはいいが、あまり薄すぎると接着性が損なわれる。コア絶縁層の上下の接着剤層を合わせた厚みがコア絶縁層の厚みの半分以下であれば、反りが発生しずらい。
【0087】
本発明の積層体における絶縁層の層構成は、前記したように、特にウェットプロセスでエッチングした時、絶縁層を構成する各樹脂層のエッチングレートが異なると、一般にエッジの形状が、直線にならずエッチングレートが遅い方が残るような形状となる。図1に示すような積層体において、接着剤層のエッチングレートが遅すぎると上側の接着剤層と下側の接着剤層が張り出したようになり、その逆の場合(接着剤層のエッチングレートが速すぎると)、接着剤層が先にエッチングされ中心部が張り出したようになる。理想的には、コア絶縁層と接着剤層を合わせた絶縁層がすべて同一のエッチングレートを持てばエッチングにより作製した形状がきれいになることが予想されるが、ウエットプロセスでのエッチングにおいては接着剤層とコア絶縁層のエッチングレートは大きく異なっていることが多い。
【0088】
本発明者らはワイヤレスサスペンション用等の高精密度電子回路部品用の第1金属層−絶縁層−第2金属層、又は、金属層−絶縁層からなる層構成の積層体における、絶縁層を構成するコア絶縁層と接着剤層各1層の厚みの最大比が4:1であるところに着目し、コア絶縁層のエッチングレートの1/4のエッチングレートを持つ接着剤層であれば、同じ時間でエッチングされる為、良好な形状を得られると仮説を立て、実験によりこれを証明した。
【0089】
一般に、材料のエッチャントに対するエッチングレートは、各材料固有のものであると考えられ、それを測定している条件によって決まる値である。しかし、温度やエッチング手法などのエッチングの条件等で、エッチングレートが変動することも考えられるが、本発明の積層体或いは絶縁フィルムはエッチング後の形状が問題である。したがって、本発明においてエッチングレートの測定には、実際にエッチングを行う種々の温度であっても、エッチング後の形状が良好となればよい。すなわち、本発明は絶縁層の各層のエッチングレートの相関関係が特定の条件を満足していれば、その条件でエッチングを行った場合、温度に依存せずエッチング後の形状が良好になるというものである。
【0090】
エッチングを行う温度は実質的に何度でも良く、エッチャントがエッチャントとして性能を発揮する温度であればよい。特にエッチャントが水溶液であれば、0℃〜110℃の間が好ましく、温度が低いと一般にエッチングレートが遅くなるため、また、温度が高いと沸騰したりして作業性が良いないので、30℃〜90℃の範囲であるのがより好ましい。さらに好ましくは成分の蒸発等によるエッチャント組成の変化を押さえ、且つ、エッチング時間を短縮させるために、50℃〜90℃でエッチングを行うのが良い。
【0091】
ところでコア絶縁層は、積層体の反りを防止するために、金属と熱膨張率を併せた材料が用いられる。一方、接着剤層は、接着性を付与するために熱可塑性樹脂が用いられるが、このような接着剤層の熱膨張率は金属層よりも大きいため、積層体の反りの原因となるので、コア絶縁層の厚みよりも薄くすることで反りを防止することが望ましい。
【0092】
一般的には、接着剤層が2層ある場合には、接着剤層の2層分の厚みがコア絶縁層の厚みよりも薄ければ反りが出ず、理想的にはコア絶縁層の厚みの半分以下が望ましい。このようなことから、接着剤層1層の厚みはコア絶縁層の1/4以下とすることが望ましい。しかしながら、金属層の表面の凹凸が接着剤層の厚みを越えてしまうと、接着剤層が該凹凸に食い込まず接着力が発現しない場合があるので、接着剤層の厚みの下限は、金属層表面の凹凸の最大高低差とすることが望ましい。
【0093】
樹脂用エッチング溶液としてアルカリ溶液を用いて、ウエットプロセスでポリイミド系樹脂をエッチングした場合を例にとると、イミド結合が溶液中の水酸化物イオンに攻撃され、ポリアミック酸になる。この状態でも、ポリイミドの時よりはアルカリ溶液に溶解しやすくなるが、さらに、アミック酸のアミド基が水酸化物イオンの攻撃を受け、加水分解されポリマーの分子量が下がることで溶解性が向上すると考えられる。また分子鎖中に加水分解されやすい基を有している場合はその基の箇所が加水分解される時もある。
【0094】
このメカニズムにより、エッチングレートは直鎖上のポリマーである場合は、それほど分子量の影響が出てこないと思われ、実際、本発明者らの行なった実験でも上記の仮説を補強するデータが出ている。
【0095】
前記従来技術として紹介した特開平6−164084号公報には、片面に銅箔を積層したポリイミドフィルムを接着性に優れたポリイミドで貼り合わせてなる積層体における、エッチングレートが遅いポリイミド層をエッチング液を作用する側に配置し、ポリイミド層のサイドエッチングの発生を防止している。これに対して本発明の積層体では、エッチング液を作用する側から配置するポリイミド層はエッチングレートの速い、遅いの順序は何れでもよく、複数のポリイミド層のエッチング形状が許容される範囲を規定している。したがって、特開平6−164084号公報の理論に従えば、エッチングレートの遅いポリイミド層/エッチングレートの速いポリイミド層/エッチングレートの遅いポリイミド層からなる積層体のエッチングは、両面からエッチングを行う必要があるが、本発明では片側からエッチングを行う場合に適したエッチングレートの範囲を見出した点に特徴がある。
【0096】
本発明で用いられる接着剤層の樹脂には、主にポリイミドやそれに類する樹脂が好ましいが、それに限定されず、耐熱性や絶縁性を有する樹脂であればイミド結合の有無によらない。また、本明細書に使用される貯蔵弾性率とは、圧着等で絶縁層と被着体を接着させるときに接着剤がとっている状態での貯蔵弾性率であり、3層材になったときの最終的な形態の時に接着工程時と分子構造等は変化した状態での貯蔵弾性率ではない。
【0097】
本発明の接着剤層の樹脂の重量平均分子量は、その分子構造にもよるが一般に6000以上500000以下が好ましい。特に好ましくは8000以上100000以下である。分子量が500000以上であると、均一な塗膜を得難く、6000以下では成膜性が悪く均一な接着剤の塗膜を得られにくい。
【0098】
また、接着剤は溶液の状態で塗布することにより成形されてもよいし、別な方法でもよい。さらに、前駆体やその誘導体の状態で成形後に処理を行うことで所望の構造にしてもよい。
【0099】
電子回路部品
電子回路部品の形成は、一般的には以下の方法で行うことができる。
【0100】
まず、回路を形成したい側の本発明の積層体の金属表面に感光性樹脂層を塗布又はラミネートによって形成する。そこに、所望のパターンの像が描かれたマスクを密着させ感光性樹脂が感度を持つ波長の電磁波を照射する。所定の現像液でポジ型感光性樹脂であれば感光部を、ネガ型感光性樹脂であれば未露光部を溶出させ、所望の回路の像を金属上に形成する。その状態のものを塩化第二鉄水溶液のような金属を溶解させる溶液に浸漬又は、溶液を基板に噴霧することで露出している金属を溶出させた後に、所定の剥離液で感光性樹脂を剥離し回路とする。
【0101】
次いで、該金属表面に形成した回路上に同様にして所望のパターンの像が描かれたマスクを密着させドライ又はウェットプロセスで絶縁層をパターニングする。
【0102】
プラズマエッチングプロセスにより作製したステンレスを無機物層とするサスペンションと、ウエットエッチングにより作製した同様なサスペンションについて、両ステンレス表面の分析結果によれば、プラズマエッチングプロセスを用いて作製したサスペンションは、絶縁層に用いた樹脂が除去され、露出した金属表面がプラズマと反応し、表面が無機の窒化物及び/又は無機のフッ化物となっていることが確認されている。プラズマエッチングプロセスの場合に、金属表面に窒化物及び/又は無機のフッ化物が検出される理由は、恐らく、プラズマエッチングガスは200℃以上の高温であり、絶縁層であるポリイミド等の樹脂が除去された後にステンレス表面が露出し、露出したステンレス表面がプラズマと反応するために生成したためと考えられる。
【0103】
一方、ウエットエッチングプロセスにより良好なエッチング形状を実現したサスペンションは、ポリイミドが除去されて露出したステンレス表面から無機の窒化物、無機のフッ化物は検出されず、表面の変化が起こっていないことが確認されている。この特徴は、本発明が初めてウエットエッチングプロセスにより作製可能にしたサスペンション等の電子回路部品に特有な特徴である。ウエットエッチングプロセスの場合に、金属表面の変化が見られない理由は、恐らく、ウエットエッチングに用いる薬液は、主にアルカリ系の溶液が用いられるが、一般に有機物との反応性に比べ金属との反応性が低いからであり、また、処理温度も100℃以下と低く、処理時間も数分と短いことから、ポリイミドが除去された後に露出するステンレスの表面を変化させにくいためと考えられる。
【0104】
〔実施例A1〕
エッチング性試験
サンプルは、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物と4,4‘−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂(ポリイミドA)を接着性絶縁層のための樹脂として用い、比較例として3,3’4,4‘−ビフタル酸二無水物と4,4‘−ジアミノジフェニルエーテルからなるポリイミド樹脂(ポリイミドB)を接着性絶縁層のための樹脂として用いた。また、コア絶縁層となる低膨張性ポリイミドとしては、厚み12.5μmのポリイミドフィルムAPIKAL NPI(商品名、鐘淵化学株式会社製)を用いた。エッチング液は、東レエンジニアリング株式会社製アルカリ−アミン系ポリイミドエッチング液TPE−3000(商品名)を用いエッチング試験を行なった。
【0105】
それらの接着性樹脂について、それぞれポリイミドの状態でN−メチル−2−ピロリドン(略語:NMP)に溶解させ溶液を作製し、15cm×15cmの大きさ、膜厚100μmのSUS304板(新日本製鉄株式会社製)上にスピンコートで膜厚20μm〜40μmにコーティングし、180℃30分間オーブンにて乾燥した。それを長さ約1.5cm、幅約2cmに切り出し、中心部にカッターナイフで傷をつけた後に、膜厚を触針式膜厚計デックタック(Dektak 16000;商品名、Sloan Technology社製)にて測定し、初期の膜厚とした。その後、70℃に調節されマグネチックスターラーにて渦ができる程度に撹拝されたポリイミドエッチング液TPE−3000(商品名、東レエンジニアリング株式会社製)に浸漬し、浸漬時間ごとに初期膜厚を測定した場所とほぼ同じ場所の膜厚をデックタック(Dektak 16000; 商品名、Sloan Technology社製)にて測定し、初期の膜厚から浸漬後の膜厚を引いたものを、膜厚の目減り量とした。下記の表1に各サンプルの時間当りの膜厚の目減り量、即ち、エッチングレートを示す。
【0106】
【表1】

【0107】
これにより、ポリイミドAが良好なエッチングレートを有することが分かった。
【0108】
〔実施例A2〕
パターン形状評価
厚み12.5μmのAPIKALN PIフィルム(商品名、鐘淵化学株式会社製)を15cm×15cmの正方形に裁断し、厚み100μmのSUS304板(新日本製鉄株式会社製)に、弱粘着テープでしっかりしわの寄らないように張りつけた。それを、乾燥後の膜厚が2.5μm±0.3μmになるように前記実施例A1で用いたポリイミドA、ポリイミドBを前記実施例A1と同じ乾燥条件で成膜した。その後、支持体であるSUS板より剥がし、裏返して、また、しわの寄らないようにフィルムを張り付け、同様にしてポリイミドA、ポリイミドBを成膜した。これをはがし、接着性絶縁層付きフィルムA、Bとした。
【0109】
これらの、接着性絶縁層付きフィルムを、厚み20μmのSUS304 HTA箔(商品名、新日本製鉄社製)と厚み18μmの銅合金箔C7025(商品名、オーリン社製)にて銅箔の疎面をフィルム側に向けて挟み、lMPa圧力で300℃で10分間、真空圧着し、SUS:絶縁層:銅という3層材を作製した。
【0110】
この3層材を、SUS側をマスクして、塩化第二鉄溶液に浸漬し、銅箔をエッチングした。その様にして露出させた接着性絶縁層面に厚み5μmのアルカリ現像型ドライフィルムレジストを熱ラミネーターで、速さ6.5m/min、ロールの表面の温度105℃、2〜4Kg/cmの線圧でラミネート後、15分間室温で放置したその後、所定のマスクを用いて密着露光機で100mJ/cm露光した。室温で15分間放置後、NaC01重量%水溶液で、30℃、スープレー圧2Kgで40秒間ドライフィルムレジストを現像した。
【0111】
その後、乾燥し、70℃でマグネチックスターラーで渦ができるほど攪拌したエッチング液TPE−3000(商品名、東レエンジニアリング社製)に浸漬し、マスクの形状にきれいにポリイミド膜が除去された時点で、取り出し、50℃の3重量%NaOH水溶液で、スプレー圧1Kgでドライフィルムレジストを剥離した。その様にして、所望の形状にした絶縁層をSEM(走査型電子顕微鏡)写真にて観察し、エッチング形状を確認した。
【0112】
ポリイミドBを用いた積層体は、接着性絶縁層が残存しコア絶縁層の上に接着性絶縁層が張り出したような形状となった。ポリイミドAを用いた積層体に関しては、2分ほどで絶縁層が除去できテーパー角は45℃ではあるが、エッジが直線状になり、良好な形状を示した。図2に、本実施例A2で得られたポリイミドAを用いた積層体のエッチング形状を写したSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示す。
【0113】
〔実施例A3〕
粘弾性評価
前記実施例A1で用いたポリイミドAを、10cm×10cm、膜厚12μmの銅箔上にコーティングし、180℃30分間オーブンにて乾燥し、約25μm膜厚の塗膜とした後、液温50℃、45ボーメ塩化第二鉄中において銅箔のエッチングを行ない、ポリイミドフィルム(ポリイミドA)を得た。得られたポリイミドAのフィルムと膜厚25μmのAPIKAL NPIフィルム(商品名、鐘淵化学株式会社製)を長さ約1.5cm、幅5mmに切り出し、粘弾性測定装置RSA−II(商品名、Rheometric Scientific社製)で、サンプル長:8mm、サンプル幅:5mm、昇温速度:5℃/min、Frequency:3.0Hzで、室温から400度まで測定を行なった。
【0114】
その結果、ポリイミドAは170℃付近にtanδのピークを持ち、その付近に軟化点を持つことがわかった。一方、APIKAL NPIフィルム(商品名、鐘淵化学株式会社製)は400℃までtanδのピークを持たず熱可塑性がないことが分かった。
【0115】
〔実施例A4〕
接着性評価
被着体として、厚み18μmの銅合金箔C7025(商品名、オーリン社製銅合金箔)、厚み20μmのSUS304HTA箔(商品名、新日本製鉄社製SUS箔)、及び厚み75μmのAPIKAL NPIフィルム(商品名、鐘淵化学株式会社製のポリイミドフィルム)の3種を用い、該被着体に対する、接着性絶縁層、及び樹脂フィルムの接着性を以下のようにして評価した。
【0116】
i)接着性ポリイミド樹脂の評価サンプルの調製
接着性絶縁層と基材の間で剥離が起きないように、基材の表面に意図的に凹凸を設け、必ず、被着体と接着性絶縁層との界面剥離、または、接着性絶縁層の凝集破壊が起こるようにした。厚さ100μmのSUS304板(新日本製鉄社製)の表面を、砥材として#1000のアルミナを用いて、マコー株式会社製ウエットブラスト装置により、0.7kg/cmの圧力で10mm/secのスキャン速度で表面を疎化した後、超音波洗浄を30分間純水で行ない、表面に付着した砥材を落とした。片面のみ粗化するとSUS基板が反る為、両面粗化を行なった。
【0117】
上記のようにして両面粗面化された基材としてのSUS基板の表面に前記実施例A1で使用したポリイミドAの2〜3μmの塗膜をスピンコートで作製し、前記実施例A1と同じ条件で乾燥し、基材上に本実施例A4の接着性絶縁層を設けた。得られた樹脂層/基材からなる積層体を、前記各被着体、即ち、厚み20μmの新日本製鉄社製SUS304 HTA箔(商品名)、厚み18μmのオーリン社製銅合金箔C7025(商品名)、厚み75μmの鐘淵化学株式会社製APIKAL NPIフィルム(商品名)に対して、各々積層し、300℃で、面圧1MPaで10分間真空圧着を行って、評価サンプルを作製した。
【0118】
ii)樹脂フィルムの評価サンプルの調製
樹脂フィルムとしてAPIKAL NPI(商品名、鐘淵化学社製ポリイミドフィルム、厚み25μm)を用いた。
【0119】
上記の3種の被着体を上記 i)と同様にして両面粗面化した。
【0120】
前記各樹脂フィルムを前記各被着体に300℃、lMPaで熱圧着して積層し、以下の組合せの積層構造の評価サンプルを作製した。
APIKAL NPI(厚み25μm)−SUS304(厚み20μm)
APIKAL NPI(厚み25μm)−C7025(厚み18μm)
APIKAL NPI(厚み25μm)−APIKAL NPI(厚み75μm)
【0121】
iii)剥離試験
上記i)及びii)の各サンプルを押し切りカッターで1cm幅に切り、インストロン社製材料試験機type5565(商品名)で500mm/minの引っ張り速度で90℃剥離試験を行なった。その結果を下記の表A2に示す。
【0122】
【表2】

【0123】
その結果、APIKAL NPIフィルム(商品名、鐘淵化学社製)は各被着体と圧着しても接着しなかった。これは、前述のように熱可塑性がない為であると思われる。それに対し、ポリイミドAは表A2に示す接着強度となり良好な結果を得た。この結果、熱可塑性がない樹脂は熱圧着しても接着力が発現しづらく、本発明に用いているエチレングリコールビストリメリット酸二無水物を用いたポリイミド樹脂は、エッチング性と接着性の両性質を兼ね備えた非常にまれな組成であることがわかる。
【0124】
上述したように、第1金属層−絶縁層−第2金属層からなる積層構造の積層体、或いは金属層−絶縁層からなる積層体であって、該絶縁層が複数層からなり、該絶縁層を形成する少なくとも一層が、前記一般式(1)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂であって、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が3μm/minより大きいポリイミド樹脂からなる積層体とすることによって、本発明の積層体は、エッチング後のエッチング形状が良好であり、長尺物の積層体である場合には連続処理にてエッチングが可能で、しかもウエットエッチングにおいても精度の良いエッチングが行えるので、エッチングの生産性が高く、装置コストも安いというメリットがあり、エッチング後のエッチング形状を良好なものとすることができる。
【0125】
ワイヤレスサスペンション等の精密電子回路部品用の積層体の絶縁層における接着性絶縁層のエッチングレートを適正なものとし、且つ接着性絶縁層の接着性を良好なものとすることは、相反する性質を両立させることであり、従来、両立させることは困難であったが、本発明のポリイミド積層体、絶縁フィルムは、前記した特別な配合のポリイミド樹脂を接着性絶縁層として採用することによりこれらの性質を両立させることを可能にしたので、前記層構成の積層体に対してウエットエッチングが連続処理でき、精密電子回路部品用の積層体に対しても連続処理が可能となった。そのため、ウエットエッチングを適用した場合には、従来のプラズマエッチングの処理時間に比べて、処理時間を1オーダー以上短縮してエッチング処理が行える。
【0126】
精密電子回路部品、例えば、ワイヤレスサスペンションをウェットエッチングにより製造した場合には、後述の実施例の結果からわかるように金属表面に変質を起こしていないものを得ることができる。
【0127】
〔実施例B〕
エッチング性試験
以下の熱可塑性樹脂ワニスと低膨張性ポリイミドフィルムを用いて下記の方法により絶縁層を作製した。エッチング液には以下のものを用いた。
熱可塑性樹脂ワニス…三井化学株式会社製ポリアミック酸ワニス:PAA−A(商品名)、東洋紡株式会社製ポリアミドイミドワニス:N8020(商品名)、AT8020(商品名)、BA5050(商品名)、新日本理化株式会社製ポリイミドワニス:SN−20(商品名)、PN−20(商品名)、EN−20(商品名)
低膨張性ポリイミドフィルム…鐘淵化学株式会社製ポリイミドフィルムAPIKAL NPI(商品名)、東レ−デュポン株式会社製ポリイミドフィルムKAPTON EN(商品名)
エッチング液…東レエンジニアリング株式会社製アルカリ−アミン系ポリイミドエッチング液TPE−3000(商品名)
【0128】
前記各熱可塑性樹脂ワニスを15cm×15cmの大きさの膜厚100μmのSUS304板上にスピンコートで膜厚20μm〜40μmにコーティングした。PAA−A(商品名:三井化学株式会社製ポリアミック酸ワニス)以外のN8020(商品名:東洋紡株式会社製ポリアミドイミドワニス)、AT8020(商品名:東洋紡株式会社製ポリアミドイミドワニス)、BA5050(商品名:東洋紡株式会社製ポリアミドイミドワニス)、SN−20(商品名:新日本理化株式会社製ポリイミドワニス)、EN−20(商品名:新日本理化株式会社製ポリイミドワニス)の塗布部を180℃で30分間オーブンにて乾燥した。
【0129】
一方、PAA−A(商品名:三井化学株式会社製ポリアミック酸ワニス)の塗布物を、120℃15分の乾燥工程で溶媒を除去後、所定の操作をして熱イミド化してポリイミドとした。
【0130】
このようにして得られた各塗布乾燥物を長さ約1.5cm、幅約2cmに切り出し、中心部にカッターナイフで傷をつけた後に、膜厚を触針式膜厚計Dektak16000(商品名、Sloan Technology社製)にて測定し初期の膜厚とした。
【0131】
その後、70℃に調節されマグネチックスターラーにて渦ができる程度に攪拌されたアルカリ−アミン系ポリイミドエッチング液TPE−3000(商品名:東レエンジニアリング株式会社製)に浸積し、浸漬時間ごとに初期膜厚を測定した場所とほぼ同じ場所の膜厚を触針式膜厚計Dektak16000(商品名、Sloan Technology社製)にて測定し、初期の膜厚から浸積後の膜厚を引いたものを、膜減り量とした。その結果を、図4に横軸に浸漬時間(秒)、縦軸に膜減り量(μm)をとったグラフにて示す。
【0132】
下記の表B1に、前記各熱可塑性樹脂ワニス、前記各低膨張性ポリイミドフイルムのアルカリーアミン系ポリイミドエッチング液TPE−3000(商品名:東レエンジニアリング株式会社製)に対する70℃におけるエッチングレート(μm/min)を示す。
【表3】

【0133】
接着性評価
被着体として、厚み18μmの銅合金箔C7025(商品名、オーリン社製銅合金箔)、厚み20μmのSUS304HTA箔(商品名、新日本製鉄製SUS箔)、及び厚み75μmのアピカルNPIフィルム(商品名、鐘淵化学社製ポリイミドフィルム)の3種を用い、該被着体に対する、熱可塑性樹脂、及び樹脂フィルムの接着性を以下のようにして評価した。
【0134】
i)熱可塑性樹脂の評価サンプルの調製
前記表B1おいてエッチングレートが極端に小さかった樹脂層であるAT8020については接着性評価を行わなかった。それ以外の表B1に示す各熱可塑性樹脂について、以下のようにして接着性評価を行った。
【0135】
厚さ100μmのSUS304HTA板(基材)(商品名、新日本製鉄製SUS箔)の表面を、マコー株式会社製ウエットブラスト装置にて、砥材として#1000のアルミナを用いて、0.7kg/cmの圧力、10mm/secのスキャン速度で表面を粗化した後、超音波洗浄を30分間、純水で行うことにより、表面に付着した砥材を落とした。片面のみ粗化すると基材としてのSUS板が反るため、両面粗化を行った。このように、基材としての金属板の表面に意図的に凹凸を設けた理由は、樹脂層と基材としての金属板の間で剥離が起きないように、引張強度を与えたときに、必ず、被着体と樹脂層との界面剥離、または、樹脂層の凝集破壊が起こるようにするためである。
【0136】
上記のようにして両面粗化された基材としての金属板の表面に、前記表B1の樹脂を膜厚2〜3μmとなるようにスピンコートで成膜し、前記エッチング性試験と同じ条件で乾燥し、必要に応じてさらにイミド化することにより基材上に樹脂層を設けた。得られた樹脂層/基材からなる各積層体を、前記各被着体、即ち、厚み20μmの新日本製鉄製SUS304 HTA箔(商品名)、厚み18μmのオーリン社製銅合金箔C7025(商品名)、厚み75μmの鐘淵化学製アピカルNPIフィルムに対して、各々積層し、各熱可塑性樹脂の貯蔵弾性率が最も小さくなる温度で面圧1MPaで10分間真空圧着を行って、評価サンプルを作製した。ここで、粘弾性測定から得られたTanδのピークをTgとした。
【0137】
ii)樹脂フィルムの評価サンプルの調製
樹脂フィルムとしてアピカルNPI(商品名、鐘淵化学社製ポリイミドフィルム、厚み25μm)、及びカプトンEN(商品名、東レーデュポン株式会社製、厚み25μm)を用いた。
【0138】
上記の3種の被着体を上記i)と同様にして両面粗面化した。
【0139】
前記各樹脂フィルムを前記各被着体に300℃、lMPaで熱圧着して積層し、以下の組合せの積層構造の評価サンプルを作製した。
アピカルNPI(厚み25μm)−SUS304(厚み20μm)
アピカルNPI(厚み25μm)−C7025(厚み18μm)
アピカルNPI(厚み25μm)−アピカルNPI(厚み75μm)
カプトンEN(厚み25μm)−SUS304(厚み20μm)
カプトンEN(厚み25μm)−C7025(厚み18μm)
カプトンEN(厚み25μm)−アピカルNPI(厚み75μm)
【0140】
iii)評価結果
前記i)及びii)で得られた各評価サンプルを押切カッターで1cm幅に切り、インスロン社製材料試験機type5565(商品名)で500mm/minの引張速度で90°剥離試験を行った。各評価サンプルの被着体への接着強度(g/cm)を接着性評価結果として下記の表B2示す。
【0141】
なお、前記ii)の樹脂フィルムに関しては、90°剥離試験の結果は、圧着後も密着しておらず接着性を評価できなかったため、下記の表B2には示していない。
【0142】
【表4】

【0143】
パターン形状評価
コア絶縁層を調製するために、厚み12.5μmのAPIKAL NPIフィルム(商品名:鐘淵化学株式会社製ポリイミドフィルム)を15cm×15cmの正方形に裁断し、その周囲を弱粘着テープでしっかりしわの寄らないように、厚み100μmのSUS304板上に張りつけて、ポリイミドフィルム上が平滑になるようにした。それを、乾燥後の膜厚が2.5μm±0.3μmになるように、接着剤層としてEN−20(商品名:新日本理化株式会社製ポリイミドワニス)を前記エッチング試験と同じ乾燥条件でスピンコートで成膜した。その後、支持体であるSUS板よりはがし、裏返してまた、しわの寄らないようにSUS板に該ポリイミドフィルムを張り付け、同様にしてEN−20を成膜した。これを剥がし、接着剤層付きフィルムAとした。
【0144】
同様の手順で、厚み12.5μmのAPIKAL NPIフィルムの両面にPAA−Aを成膜したものを接着剤層付きフィルムB、厚み12.5μmのKAPTON ENフィムの両面にEN−20を設けたものを接着剤層付きフィルムCとした。下記の表B3に、コア絶縁層対接着剤層のエッチングレートの比を示す。
【0145】
【表5】

【0146】
これらの、接着剤層付きフィルムを厚み20μmの新日本製鉄製SUS304HTA箔と、厚み18μmのオーリン社製銅合金箔C7025に挟み、(銅箔の粗面をフィルム側に向ける)、lMPa圧力で300℃で10分間、真空圧着しSUS:絶縁層:銅という3層材を作製した。
【0147】
この3層材を、SUS側をマスクして、塩化第二鉄溶液に浸漬し、銅箔をエッチングした。その様にして露出させた接着剤層面に厚み5μmのアルカリ現像型ドライフィルムレジストを熱ラミネーターで6.5m/minの速さでロールの表面の温度105℃で、2〜4Kg/cmの線圧でラミネート後、15分間室温で放置した。その後、所定のマスクを用いて密着露光機で1000mJ/cm露光した。室温で15分間放置後、1重量%NaCO室温水溶液で、30℃、スプレー圧2Kgにて40秒間ドライフィルムレジストを現像した。その後、乾燥し70℃でマグネチックスターラーで渦ができるほど攪拌した東レエンジニアリング社製エッチング液TPE−3000に浸漬し、マスクの形状にきれいにポリイミド膜が除去された時点で、取り出し、50℃の3重量%NaOH水溶液で、スプレー圧1Kgでドライフィルムレジストを剥離した。
【0148】
得られた絶縁層のエッチング形状を斜視的に写したSEM(走査型電子顕微鏡)写真を図5、図6、図8に示す。図5は、接着剤層付きフイルムAを用いた3層材、図6は接着剤層付きフイルムBを用いた3層材、図8は接着剤層付きフイルムCを用いた3層材を示す。
【0149】
図5の接着剤層付きフイルムAと図8の接着剤層付きフイルムCを用いた場合には、45°程度のテーパー角がついているが、その断面がきれいに直線状になっている。しかし、図6の接着剤層付きのフイルムBを用いた場合に関しては、エッチングされなかった接着剤層が屋根のようにコア絶縁層の上に張り出している。図6の写真を概略的にイラストしたものが図7である。
【0150】
図7において、4−1は上側の接着剤層であり、4−2は下側の接着剤層である。両接着剤層4−1、4−2はウエットプロセスにおいてはエッチング処理が緩慢であるために、屋根の日さし状に残っている。コア絶縁層はえぐれるようにエッチングされているため、この角度からは見えない。また、2−1は第1金属層の未エッチング表面、2−2は第1金属層がエッチングされた立畔”あり、第1金属層が接着剤層4−1上にエッチングされている状ホす。第2金属層.3はSUS箔としてそのまま残っている。なお、層体Bの断面は、ほぼ図1と同等になる。
【0151】
この事より、エッチングレートの異なる複数の樹脂層が積層されてなる積層体に対してエッチングを行なう場合、各層のエッチングレートの比がエッチング後の形状に非常に大きく影響していることがわかる。
【0152】
以上述べたように、第1金属層−絶縁層−第2金属層からなる積層構造の積層体、或いは金属層−絶縁層からなる積層体であって、該絶縁層が複数層からなり、各層のエッチングレートの大きいものと小さいものとの比が、6:1乃至1:1、好ましくは4:1乃至1:1の範囲の積層体とすることによって、本発明の積層体は、エッチング後のエッチング形状が良好であり、長尺物の積層体である場合には連続処理にてエッチングが可能で、しかもウエットエッチングにおいても精度の良いエッチングが行えるので、エッチングの生産性が高く、装置コストも安いというメリットがある。
【0153】
ワイヤレスサスペンション等の精密電子回路部品用の積層体におけるコア絶縁層と接着剤層からなる絶縁層のエッチングレートを適正なものにして良好なエッチング形状を実現し、且つ接着剤層の接着性を良好なものとすることは、相反する性質を両立させることであり、従来、両立させることは困難であったが、本発明はこれらの性質を両立させることを可能にしたので、連続処理できるウエットエッチングが精密電子回路部品用の積層体に対しても可能となった。そのため、ウエットエッチングを適用した場合には、従来のプラズマエッチングの処理時間に比べて、処理時間を1オーダー以上短縮してエッチング処理が行える。
【0154】
精密電子回路部品、例えば、ワイヤレスサスペンションをウエットエッチングにより製造した場合には、以下の実施例の結果からわかるように、金属表面に変質を起こしていないものを得ることができる。
【0155】
〔実施例C〕
金属表面の変質評価
エッチングによる金属表面の変質評価は、NFプラズマによって絶縁層としてのポリイミドのエッチングを行ったサスペンションと、アルカリ溶液によって絶縁層としてのポリイミドのエッチングを行ったサスペンションと、リファレンスとして加工前の積層体のステンレス表面を用いた。
【0156】
図3の(a)は、加工前の積層体を示し、図3の(b)はプラズマエッチング又はアルカリ溶液によるウエットエッチング後の積層体を示す。図3において、11はステンレス、12は絶縁層、13は銅を表し、矢印Aで示す部位は加工前の積層体のステンレス11の表面を表し、矢印Bで示す部位はエッチング後の積層体のステンレス11の表面を表す。
【0157】
i)測定条件
ステンレス表面11の測定手法にはXPS(X線光電子分光法)を用いた。XPS分析装置としてESCALAB220i−XL(商品名、英国 VGScientific社製)を用い、X線として単色化Al Kα線、出力200w(10kV・20mA)、スポット径:1mmφ、レンズモードには、Small AreaXL 150、アパーチャー類の開度としてF.O.V(視野制限アパーチャ)=3.25、A.A.(対物アパーチャ)=4.25、測定領域として150μmφ、光電子脱出角度(取出角度)として90度にて測定した。帯電中和は不要のため測定しなかった。
【0158】
ii)Ag板での検出器系の確認
上記i)に示す条件で、レンズモードをLarge AreaXL、F.O.Vと、A.A.をopen(測定領域:700μmφ)にし、Ag標準サンプル(純度99.98%の厚さ300μmのAg板:品番AG−403428、株式会社ニラコ製)について、測定前に炭素が消滅するまでArイオンによるスパッタエッチングを実施し、該表面を測定したときの感度を測定した結果、Ag3d5/2ピークのカウント値は2.97(Mcps)、ピーク位置は367.95eVであった(P.E.=100eVで0〜1350eVの範囲のWide Scan)。
【0159】
iii)スペクトル採取条件
プラズマエッチングされた積層体とアルカリ溶液によるウエットエッチングされた積層体の図3の(b)の矢印Bで示す部位についてWide scan(広域)スペクトルと、Narrow scan(狭域)スペクトルについて測定した。
【0160】
広域スペクトルは、0〜1100eVの範囲を1.0eV刻みで計1101点測定し、P.E.(パスエネルギー)は50eV、スキャン回数は任意とした。狭域スペクトルは、基本的には広域で検出された元素のメインピークの位置を中心に±10eVの範囲を、0.100eV刻みで計201点測定し、P.E.は20eV、スキャン回数は任意とした。
【0161】
データの解析の際は、ClsのC−C結合のピークを284.6eVとして各スペクトルの帯電を補正した。測定、データ処理、解析にはEclipse Data System Release 2.1 Rev06(英国 VGScientific 社製ソフト)を使用した。装置のWork Functionの設定値は4.3700とした。
【0162】
iv)元素分析値
以上の条件で測定を行った結果の元素分析値を下記の表Cに示す。
【表6】

【0163】
これらの結果より、ドライエッチングサンプル及びウエットエッチングサンプル共に、窒素とフッ素原子が、リファレンスのゼロに対して、増えていることが分かる。
【0164】

v)XPSチャート
ドライエッチングサンプル及びウエットエッチングサンプルについてXPSチャートにより、その窒素とフッ素の成分を示すピークを解析した。図9は、ドライエッチングサンプルのXPSチャート、図10及び図11はそれぞれ窒素、フッ素に対応する部分の詳細な測定データを示すXPSチャートである。同様にウエットエッチングサンプルの測定結果はXPSチャートとして図12、図13、図14に示してある。また、それぞれのリファレンスのXPSチャートは、プラズマエッチングサンプルでは図15に、ウエットエッチングサンプルについては図16に示した。
【0165】
これらのチャートによれば、窒素については、ドライエッチングの方は、有機系窒素由来のピーク(400eV付近)と無機系窒素由来のピーク(397eV)の2種類が検出されているのに対し、ウエットエッチングサンプルの方は、有機系窒素由来のピークのみしか検出されていないことが分かる。フッ素についても両者において上記無機系窒素と有機系窒素の場合と同様に違いが検出された。即ち、ウエットエッチングサンプルの方は、有機系フッ素由来のピーク690eVは検出されているものの、無機系フッ素由来のピークは検出されていない。
【0166】
両者で検出される有機系窒化物、有機系フッ化物は、エッチング後に微量に残存しているポリイミドやプロセス中に付着した有機物であると推測される。
【0167】
これらのことから、プラズマエッチングプロセスで絶縁層をパターニングしたものは、プラズマに触れたステンレス表面が特異的に変質していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無機物層−絶縁層−第2無機物層、又は、無機物層−絶縁層からなる層構成の積層体であって、
該絶縁層が2層以上の樹脂層から形成され、
該絶縁層を形成する少なくとも一層が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有するポリイミド樹脂であって、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が3μm/minより大きいポリイミド樹脂からなる、積層体。
【化1】

(ここで、R及びRは2価の有機基であり、それぞれ単一の構造であっても、それぞれ2種以上の構造の組み合わせであっても良く、Rはジフェニルスルホン−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、及び1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から選ばれた1種又は2種以上の酸二無水物、n及びmは2以上の整数。)
【請求項2】
請求項1記載の積層体において、前記一般式(2)のRに含まれる2価の有機基のうち少なくともモル分率で50%以上が一般式(3)で表される、積層体。
【化2】

(nは、1〜15までの整数)
【請求項3】
請求項1記載の積層体において、前記一般式(2)のRに含まれる2価の有機基の全てが一般式(3)で表される、積層体。
【化3】

(ここで、nは、1〜15までの整数)
【請求項4】
請求項1記載の積層体において、前記一般式(2)のRに含まれる2価の有機基の全てが一般式(3)で表され、且つ、Rに含まれる2価の有機基のうち少なくともモル分率で30%以上が一般式(4)で表される、積層体。
【化4】

(ここで、nは、1〜15までの整数)
【化5】

【請求項5】
請求項1記載の積層体において、前記一般式(2)のRに含まれる2価の有機基の全てが一般式(3)で表され、且つ、Rに含まれる2価の有機基のうち少なくともモル分率で80%以上が一般式(4)で表される、積層体。
【化6】

(ここで、nは、1〜15までの整数)
【化7】

【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載の積層体において、前記絶縁層を構成する樹脂層のうち少なくとも1層が膨張率0ppm〜40ppmの低膨張性樹脂である、積層体。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項記載の積層体において、前記絶縁層を構成する樹脂層の全てがポリイミド樹脂からなる、積層体。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1項記載の積層体であって、少なくとも一方の無機物層との界面を形成する絶縁層はポリイミド樹脂であって、
該ポリイミド樹脂は、前記一般式(2)のRに含まれる2価の有機基の全てが一般式(3)で表され、且つ、Rに含まれる2価の有機基のうち少なくともモル分率で80%以上が一般式(4)で表されるポリイミド樹脂である、積層体。
【化8】

(ここで、nは、1〜15までの整数)
【化9】

【請求項9】
請求項1〜7の何れか1項記載の積層体であって、
前記絶縁層が、第1絶縁層−第2絶縁層−第3絶縁層からなる積層構造であり、該第1絶縁層と第3絶縁層の樹脂が、前記一般式(2)のRに含まれる2価の有機基の全てが一般式(3)で表され、且つ、Rに含まれる2価の有機基のうち少なくともモル分率で80%以上が一般式(4)で表されるポリイミド樹脂であり、
該第2絶縁層が膨張率0ppm〜40ppmの低膨張性樹脂である、積層体。
【化10】

(ここで、nは、1〜15までの整数)
【化11】

【請求項10】
請求項1〜9の何れか1項記載の積層体において、前記無機物層は、全ての無機物層が合金銅である場合、全ての無機物層が銅である場合、一方の無機物層が銅で、他方が合金銅である場合、一方の無機物層が銅又は銅合金で、他方がステンレスである場合、から選ばれる、積層体。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体をエッチングして作製した電子回路部品。
【請求項12】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体をエッチングして作製したハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項13】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体の絶縁層をウエットプロセスで所望の形状に除去し、作製した電子回路部品。
【請求項14】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体の絶縁層をウエットプロセスで所望の形状に除去し、作製したハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項15】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体の絶縁層を塩基性溶液で所望の形状に除去し、作製した電子回路部品。
【請求項16】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体の絶縁層を塩基性溶液で所望の形状に除去し、作製したハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項17】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体の絶縁層をアルカリ−アミン系溶液で所望の形状に除去し、作製した電子回路部品。
【請求項18】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体の絶縁層をアルカリ−アミン系溶液で所望の形状に除去し、作製したハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項19】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体の絶縁層をウエットプロセスで所望の形状に除去して作製した電子回路部品であって、該除去により露出した無機物層表面に無機窒化物層及び/又は無機フッ化物層を有しない電子回路部品。
【請求項20】
請求項1〜10の何れか1項記載の積層体の絶縁層をウエットプロセスで所望の形状に除去して作製したハードディスクドライブ用サスペンションであって、該除去により露出した無機物層表面に無機窒化物層及び/又は無機フッ化物層を有しないハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項21】
2層以上の樹脂層の絶縁層からなる絶縁フィルムであって、該樹脂層の少なくとも1層が、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を有する構造を持ったポリイミド樹脂、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が3μm/minより大きいポリイミド樹脂からなる、絶縁フィルム。
【化12】

(ここで、R及びRは2価の有機基であり、それぞれ単一の構造であっても、それぞれ2種以上の構造の組み合わせであっても良い。nは2以上の整数。)
【請求項22】
2層以上の樹脂層の絶縁層からなる絶縁フィルムであって、該樹脂層の少なくとも1層が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位を有する構造を持ったポリイミド樹脂、且つ、150℃〜360℃のガラス転移点を有し、塩基性溶液に対する溶解速度が3μm/minより大きいポリイミド樹脂からなる、絶縁フィルム。
【化13】

(ここで、R及びRは2価の有機基であり、それぞれ単一の構造であっても、それぞれ2種以上の構造の組み合わせであっても良く、Rはジフェニルスルホン−2,3,3’,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルスルホン−2,2’,3,3’−テトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、及び1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物から選ばれた1種又は2種以上の酸二無水物、n及びmは2以上の整数。)
【請求項23】
請求項21〜22の何れか1項記載の絶縁フィルムを用いて無機物層と積層した積層体。
【請求項24】
請求項21〜22の何れか1項記載の絶縁フィルムをエッチングして作製した電子回路部品。
【請求項25】
請求項21〜22の何れか1項記載の絶縁フィルムをエッチングして作製したハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項26】
請求項21〜22の何れか1項記載の絶縁フィルムをウエットプロセスで所望の形状に除去し、作製した電子回路部品。
【請求項27】
請求項21〜22の何れか1項記載の絶縁フィルムをウエットプロセスで所望の形状に除去し、作製したハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項28】
請求項21〜22の何れか1項記載の絶縁フィルムを塩基性溶液で所望の形状に除去し、作製した電子回路部品。
【請求項29】
請求項21〜22の何れか1項記載の絶縁フィルムを塩基性溶液で所望の形状に除去し、作製したハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項30】
請求項21〜22の何れか1項記載の絶縁フィルムをアルカリ−アミン系溶液で所望の形状に除去し、作製した電子回路部品。
【請求項31】
請求項21〜22の何れか1項記載の絶縁フィルムをアルカリ−アミン系溶液で所望の形状に除去し、作製したハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項32】
第1無機物層−絶縁層−第2無機物層、又は、無機物層−絶縁層からなる層構成の積層体であって、
該絶縁層が2層以上の樹脂層から形成され、
該絶縁層の各層のエッチングレートの大きいものと小さいものとの比が、6:1乃至1:1の範囲である、積層体。
【請求項33】
請求項32記載の積層体をエッチングして作製した電子回路部品。
【請求項34】
請求項32記載の積層体をウエットプロセスでエッチングして作製した電子回路部品。
【請求項35】
請求項32記載の積層体をウエットプロセスでエッチングして作製した電子回路部品であって、該除去により露出した無機物層表面に無機窒化物層及び/又は無機フッ化物層を有しない、電子回路部品。
【請求項36】
請求項32記載の積層体をウエットプロセスでエッチングして作製したハードディスクドライブ用サスペンションであって、該エッチングにより露出した無機物層表面に無機窒化物層及び/又は無機フッ化物層を有しない、ハードディスクドライブ用サスペンション。
【請求項37】
2層以上の樹脂層から形成された絶縁フィルムであって、各樹脂層のエッチングレートの大きいものと小さいものとの比が、6:1乃至1:1の範囲である、絶縁フィルム。
【請求項38】
請求項37記載の絶縁フィルムと無機物を積層してなる積層体。
【請求項39】
請求項37記載の絶縁フィルムと無機物を積層してなる積層体を用いてエッチングして作製された電子回路部品。
【請求項40】
請求項37記載の絶縁フィルムと無機物を積層してなる積層体を用いてウエットプロセスでエッチングして作製された電子回路部品。
【請求項41】
請求項37記載の絶縁フィルムと無機物を積層してなる積層体をウエットプロセスでエッチングして作製された電子回路部品であって、該エッチングにより露出した無機物層表面に無機窒化物層及び/又は無機フッ化物層を有しない、電子回路部品。
【請求項42】
請求項37記載の絶縁フィルムと無機物を積層してなる積層体をウエットプロセスでエッチングして作製されたハードディスクドライブ用サスペンションであって、該エッチングにより露出した無機物層表面に無機窒化物層及び/又は無機フッ化物層を有しない、ハードディスクドライブ用サスペンション。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−210813(P2012−210813A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−103999(P2012−103999)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2002−503884(P2002−503884)の分割
【原出願日】平成13年6月21日(2001.6.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】