説明

積層圧電素子、超音波モータ及び積層圧電素子の製造方法、並びに超音波モータを備えた電子機器

【課題】 積層圧電素子を用いて、低電圧で駆動でき小型で高出力が得られる安価な超音波モータ及び電子機器の提供。
【解決手段】 複数の圧電素子9a,9b,9cを積層して振動体を構成し、振動体と接する移動体7を駆動する超音波モータにおいて、複数の圧電素子9a,9b,9cの界面に設けられた内部電極10a,10bと10c,10dは同一形状であり、内部電極10a,10b,10c,10dを短絡する外部電極11a,11b,11c,11d,11eを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層圧電素子、超音波モータ及び積層圧電素子の製造方法、並びに超音波モータを備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性体の共振モードを利用した超音波モータは制御性に優れ、近年特に精密位置決め用アクチュエータとしても注目されている。特に、各種ステージ用のアクチュエータとしてはリニヤ型の超音波モータが要求される場合が多く、多くのタイプが提案され研究されている。その中でも、矩形板の縦(伸縮)振動と屈曲振動の合成振動を利用した超音波モータは様々なものが研究されている(例えば、特許文献1参照。)。これらの中でも、例えば特許文献1に示す様に矩形状の圧電素子単板を厚み方向に分極処理すると共に4分割された電極を設け、対角と成る電極を組とし、一組の電極に駆動信号を印加することで圧電素子からなる振動体に縦振動と屈曲振動を励振し、これと接する移動体を駆動する原理のものは様々な用途に実用化も進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2980541号公報(第7−8頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら従来の構造では振動体の駆動に極めて高い電圧を必要とし、大きな昇圧回路を必要とする為、駆動回路の大型化、複雑化を招き駆動回路の価格も高価なものになってしまった。そしてこの場合、小型な機器、特にバッテリーで駆動される用途への適用は難しかった。また、振動体の構造としては圧電素子の厚みが薄いと十分な出力が得られないと共に、機械的強度も低く破損につながる恐れもあった。逆に厚みを厚くすると分極電圧が極めて高く、製造プロセスが複雑になる等の問題があった。そして、本構成では圧電素子の圧電横効果を用いているために大きな出力が得られなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明の第1の態様は、同一面内に複数の内部電極を有する圧電素子を複数積層した積層圧電素子であって、前記積層圧電素子の側面には、内部電極を前記圧電素子の積層方向で短絡する外部電極と、前記同一面内の複数の内部電極同士を短絡する外部電極と、を有することを特徴とする積層圧電素子にある。
【0006】
本発明の第2の態様は、第1の態様の積層圧電素子で振動体を構成し、前記振動体と接する移動体を駆動することを特徴とする超音波モータにある。
【0007】
本発明の第3の態様は、第1の態様の積層圧電素子の製造方法であって、複数の圧電素子を積層した積層圧電素子の製造方法であって、複数の内部電極が設けられた同一の圧電素子シート材を面内方向に位置をずらしながら積層し、個々の積層圧電素子形状に分割した後で、前記分割した面に前記積層圧電素子の内部電極を前記圧電素子の積層方向で短絡する外部電極と、同一面内の複数の内部電極同士を短絡する外部電極と、を設ける工程を有することを特徴とする積層圧電素子の製造方法にある。
【0008】
本発明の第4の態様は、第2の態様の超音波モータを備えた電子機器にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の圧電素子の界面に設けられた内部電極は同一形状であり、内部電極を短絡する外部電極は少なくとも三つ有することにより、同じ形状の内部電極のみを用いているために製造時のばらつきが発生しにくい。そして外部電極の一つを共通電極(GND)とし、例えば他の二つの外部電極の何れかに信号を印加して二つの異なる振動の位相を変えるか、あるいは他の二つの外部電極に別々の信号を印加することで二つの振動を独立に励振する等の様々な駆動方法が可能となる。
【0010】
また、この振動体構造により、複数の内部電極が設けられた同一の圧電素子シート材を面内方向に位置をずらしながら積層し、個々の振動体形状に分割した後で、前記分割した面に外部電極を設けるという製造方法が採れるため製造プロセスが簡単で、しかも短い時間に大量の振動体を作製可能な為、大幅に製造コストを引き下げられる。
【0011】
また、外部電極どうしの間には電極を有さない圧電素子を設けることにより、製造時の外部電極どうしの短絡の防止や、この外部電極で短絡された内部電極が設けられた部分の分極時の影響が少なくなる。
【0012】
さらに、外部電極のうち少なくとも一つは同一面内に存在する複数の内部電極を短絡するようにすることにより、内部電極の形状は同じであっても実際には異なる内部電極を有した場合と同等になり様々な振動の励振が可能となる。
【0013】
また、前記複数の外部電極を短絡する複数の導通手段を有し、少なくとも一つの導通手段は、分極時に接地した外部電極と分極時に電位を加えた外部電極を短絡させれば一度の分極で済むと共に、分極方向が異なる部分での圧電特性の違いや分極方向が異なる境界部での応力集中による強度低下等を防ぐことが出来る。
【0014】
また、振動体は矩形形状であり、駆動信号を印加する外部電極を選択することにより前記振動体に励振する縦振動と屈曲振動の位相を逆転させ移動体の移動方向を切り替えるようにすれば駆動回路が簡単になる。
【0015】
また、振動体は矩形形状であり、複数の外部電極は第一の駆動信号もしくは第二の駆動信号が印加され、第一の駆動信号により振動体には縦振動が励振され、第二の駆動信号により振動体には屈曲振動が励振されるようにすれば、縦振動と屈曲振動を独立に励振可能であり、移動体の速度、推進力等を広範囲に渡って可変可能となり、更には高精度な位置決め制御が可能となる。
【0016】
また、これらの振動体を用いた超音波モータを備えた電子機器は、その小型・薄型化、低消費電力化が可能となる。
【0017】
以上のように、本発明によれば、簡単な製造プロセスで作製可能な積層圧電素子を振動体として用いるため低電圧で駆動でき、小型で高出力が得られると共に安価な超音波モータが実現できる。特に積層素子全体を一体的に焼結して作製することにより製品個々の特性ばらつきが小さく、信頼性が高く、内部損失が小さくて効率の高い超音波モータが得られる。そしてこれを用いた電子機器の小型、薄型化並びに低消費電力化が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明にかかわるリニヤ型超音波モータの構成例を示す図である。
【図2】本発明にかかわる積層圧電素子の振動モードを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかわる積層圧電素子の構成を示す図である。
【図4】本発明にかかわる積層圧電素子の製法を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかわる積層圧電素子の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態3にかかわる積層圧電素子の構成を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態4にかかわる積層圧電素子の構成を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態5にかかわる積層圧電素子の構成を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態5にかかわる積層圧電素子の別の構成を示す図である。
【図10】本発明の実施の形態5にかかわる積層圧電素子の別の構成を示す図である。
【図11】本発明にかかわる超音波モータを用いた電子機器を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を図面を基に説明する。
【0020】
図1は本発明の積層圧電素子1を振動体として用いたリニヤ型超音波モータの構成例を示したものである。矩形状の積層圧電素子1には突起2a,2b並びに凹部を有する支持部材3が設けられている。加圧部材4の軸部4aは段部を有し、案内板5の案内穴5aで、軸方向にのみ移動可能に案内されている。突起2a,2bの下には案内部材8a,8bに案内された移動体7が設けられ、支持部材3は加圧部材4の凹部に係合し、加圧部材4を加圧手段6で加圧することにより突起2a,2bと移動体7は接している。
【0021】
ところで、積層圧電素子1は縦振動と屈曲振動を励振する。例えば、図2に積層圧電素子1の長手方向に対する振動振幅の様子を示したものであり、図2(a)は縦振動の様子を図2(b)は屈曲振動の様子を示したものである。縦振動、屈曲振動共に積層圧電素子1の中央部が振動の節となり、この位置に支持部材3が設けられている。また屈曲振動の腹の位置に突起2a,2bが設けられている。この縦振動と屈曲振動を同時に励振することにより突起2a,2bは積層振動子1の長手方向の変位と、これと直交する幅方向の変位からなる楕円運動を行い移動体7を駆動する。ところで、二つの振動モードはその次数に制限を与えられるものではなく、他のモードを用いても構わない。また、移動体7を固定し、振動体自体を駆動させても構わない。
【0022】
(実施の形態1)
具体的に積層圧電素子9の構成例を図3を基に説明する。図3(a),図3(c)はそれぞれ矩形形状からなり、積層圧電素子9を表裏から見た図であり、図3(d),図3(e)は断面図である。即ち図3(d),図3(e)に示す様に、内部電極10a、10bもしくは内部電極10c、10dを一方の面に有する圧電素子9a、9bを交互に積層した構造となっている。内部電極10a、10b、10c、10dは圧電素子9a、9bの長手方向にほぼ二分した形状となっており、積層圧電素子9の一つの面方向にのみ張り出しており、積層圧電素子9の側面で外部電極11a、11b、11c、11d、11eで短絡されている。外部電極11a、11b、11c、11dは積層圧電素子9の面内の向かい合う辺の中心を結ぶ線で分けられる四つの領域それぞれにおいて内部電極10a、10bを短絡している。外部電極1 1eは内部電極10c、10d全てを短絡している。
【0023】
ここで外部電極11eをGNDとして外部電極11a、11b、11c、11dに高電圧を加えることで積層方向に分極処理がなされる。
【0024】
本積層圧電素子9の駆動方法であるが、例えば次の二通りがある。外部電極11a、11dと外部電極11eの間に、もしくは外部電極11b、11cと外部電極11eの間に駆動信号を印加することで積層圧電素子9の面内の向かい合う辺の中心を結ぶ線で分けられる四つの領域の対角にある二つの領域が伸縮することで積層圧電素子9に縦振動と屈曲振動が励振される。駆動信号を印加する領域を切り替えることで縦振動と屈曲信号の位相が逆転し、移動体7の移動方向も変化する。別の方法としては外部電極11eをGNDとして外部電極11a、11dと外部電極11b、11cの間に位相の異なる駆動信号、例えば90度もしくは−90度異なる信号を印加することで積層圧電素子9に縦振動と屈曲振動が励振される。位相を逆転させることで縦振動と屈曲信号の位相が逆転し、移動体7の移動方向も逆となる。
【0025】
ところで、この積層圧電素子9の製法を図4に示すが、例えば積層圧電素子9が複数取れる大きさの圧電素子のシート12上に複数の積層圧電素子分の電極10を印刷等によって設ける。このシート12を複数枚重ねた後で電極を有さない圧電素子を最後に重ねて積層し、仮燒結してバインダーを飛ばした後、個々の積層圧電素子9にダイシング等によって分割され本焼成される。そして外部電極11a、11b、11c、11d、11eが付けられた後、分極処理がなされ完成となる。このように、同一のシート12のみを積層すれば良いため、各シートの電極付けの工程も含め、全て同一作業の繰り返しとなり、製造時間の大幅な短縮並びに電極付けマスク等の治具も少なくて済む。
【0026】
ここでダイシングによる分割部を点線50で示したが、内部電極10の一方の辺が交互に点線50に位置し、分割後には内部電極10a、10b、10c、10dを構成する様に交互にシート12は位置をずらして重ねられる。実際にはシート12上の電極10は実際の内部電極10a、10b、10c、10dの大きさよりも若干大きなものが設けられており、分割時の寸法の誤差が生じても分割面に張り出す様に設定される。そしてこの様に最上面に電極を有さない圧電素子9cを積層することで、最上面、最下面の圧電素子は駆動力を生じない為、振動のバランスがとれるため、不要振動が発生しにくい。
【0027】
また、ここで積層圧電素子9は金属等の弾性体と接合して振動体を構成しても構わないし、各圧電素子の電極の短絡も積層圧電素子の側面に限るものではなく、スルーホール等を用いても構わない。
【0028】
(実施の形態2)
次に、実施の形態1の変形例を以下に示す。ここでは積層圧電素子13の積層方向に伸縮する為、圧電縦効果が使え大きな出力が得られる。
【0029】
図5(a),図5(c)はそれぞれ矩形形状からなる実施の形態2の積層圧電素子13を表裏から見た図であり、図5(d),図5(e)は断面図である。即ち、図5(d),図5(e)に示す様に内部電極14a、14bもしくは内部電極14c、14dを一方の面に有する圧電素子13a、13bを交互に積層した構造となっている。
内部電極14a、14b、14c、14dは圧電素子13a、13bの長手方向にほぼ二分した形状となっており、積層圧電素子13の一つの面方向にのみ張り出しており、積層圧電素子13の側面で外部電極15a、15b、15c、15d、15eで短絡されている。外部電極15a、15b、15c、15dは積層圧電素子13の面内の向かい合う辺の中心を結ぶ線で分けられる四つの領域それぞれにおいて内部電極14a、14bを短絡している。外部電極15eは内部電極14c、14d全てを短絡している。
【0030】
ここで外部電極15eをGNDとして外部電極15a、15b、15c、15dに高電圧を加えることで積層方向に分極処理がなされる。
【0031】
本積層圧電素子13の駆動方法であるが、例えば次の二通りがある。外部電極15a、15dと外部電極15eの間に、もしくは外部電極15b、15cと外部電極15eの間に駆動信号を印加することで積層圧電素子13の面内の向かい合う辺の中心を結ぶ線で分けられる四つの領域の対角にある二つの領域が伸縮し、積層圧電素子13に縦振動と屈曲振動が励振される。駆動信号を印加する領域を切り替えることで縦振動と屈曲信号の位相が逆転し、移動体7の移動方向も変化する。別の方法としては外部電極15eをGNDとして外部電極15a、15dと外部電極15b、15cの間に位相の異なる駆動信号、例えば90度もしくは−90度異なる信号を印加することで積層圧電素子13に縦振動と屈曲振動が励振される。位相を逆転させることで縦振動と屈曲信号の位相が逆転し、移動体7の移動方向も逆となる。
【0032】
(実施の形態3)
実施の形態3に示す積層圧電素子16の構成を図6に示すが、基本的には実施の形態1に示したものと共通であり、違いは外部電極17a、17b、17c、17dと分極方向、駆動方法のみであるため、相違点のみを述べ共通点の説明を省略する。
【0033】
外部電極17eは積層圧電素子16の一つの面の幅方向中央部で内部電極10a、10bと短絡される。外部電極17eで短絡される圧電素子部分の両側の部分では外部電極17a、17bによって内部電極10aが、外部電極17c、17dによって内部電極10bが短絡される。また積層圧電素子16の反対の面では外部電極17fによって内部電極10c、10dが短絡される。
【0034】
ここで、外部電極17fをGNDとして外部電極17a、17b、17c、17d、17eに電圧を加えることにより分極処理を行う。この場合の駆動方法としては、外部電極17fをGNDとして外部電極17eに第一の駆動信号を印加することにより縦振動を励振する。また外部電極17a、17dもしくは外部電極17b、17cに第二の駆動信号を印加することにより屈曲振動が励振され、移動体7を駆動する。どちらの外部電極に信号を印加するかによって縦振動と屈曲信号の位相が反転し、移動体7の移動方向も変わる。
【0035】
別な駆動方法としては、外部電極17fをGNDとして外部電極17a、17d、17eにプラス方向の、外部電極17b、17cにマイナス方向の電圧を加えることにより分極処理を行う。この場合の駆動方法としては、外部電極17fを共通電極(GND)として外部電極17a、17b、17c、17dと外部電極17eの間に位相の異なる第一及び第二の駆動信号、例えば90度もしくは−90度異なる信号を印加することで積層圧電素子16に縦振動と屈曲振動が励振される。位相を逆転させることで縦振動と屈曲信号の位相が逆転し、移動体7の移動方向も逆となる。この位相は任意であり、0度と180度の切り替えを行っても構わない。
【0036】
また分極方向に付いても任意であり、分極方向に応じて駆動信号の位相を逆転すれば同じ振動が励振される。
【0037】
(実施の形態4)
図7は本発明の積層圧電素子の別の例を示したものである。図7(a),図7(c)はそれぞれ矩形形状からなる実施の形態4の積層圧電素子18を表裏から見た図であり、図7(d),図7(e)は断面図である。即ち図7(d)、図7(e)に示す様に内部電極19a、19b、19cもしくは内部電極19d、19e、19fを一方の面に有する圧電素子18a、18bを交互に積層した構造となっている。内部電極19a、19b、19c、19d、19e、19fは圧電素子18a、18bの長手方向にほぼ三等分した形状となっており、積層圧電素子18の一つの面方向にのみ張り出しており、積層圧電素子18の側面で外部電極20a、20b、20c、20d、20e、21a、21b、21c、21d、21eで短絡されている。外部電極20eは積層圧電素子18の一方の面内で内部電極19bを短絡している。外部電極20a、20bは積層圧電素子18を長手方向に2分する領域で電極19aを短絡する。外部電極20c、20dは積層圧電素子18を長手方向に2分する領域で電極19cを短絡する。
【0038】
また、他方の面で外部電極21eは積層圧電素子18の一方の面内で内部電極19eを短絡している。外部電極21a、21bは積層圧電素子18を長手方向に2分する領域で電極19dを短絡する。外部電極21c、21dは積層圧電素子18を長手方向に2分する領域で電極19fを短絡する。例えば外部電極20aと20bが短絡しない様に、その隙間に位置する場所に電極を有さない圧電素子18cを入れても構わない。
【0039】
ここで、外部電極21a、21b,21c,21d,21eをGNDとして外部電極20a、20b、20c、20d、20eに高電圧を加えることで、積層方向に分極処理がなされる。
【0040】
本積層圧電素子13の駆動方法であるが、例えば外部電極21c、21b、21e、20b、20cを図示しない導通手段により短絡し、GNDとして外部電極20eと図示しない導通手段により短絡された外部電極20a、20d、21a、21dとの間に位相の異なる駆動信号、即ち第一の駆動信号と第二の駆動信号、例えば90度もしくは−90度異なる信号を印加することで積層圧電素子18に縦振動と屈曲振動が励振される。位相を逆転させることで縦振動と屈曲信号の位相が逆転し、移動体7の移動方向も逆となる。
【0041】
本発明によれば、圧電縦効果を用いるので大きな出力が得られると共に、分極方向が同じ方向で良い為、工程が簡単になると共に高い電圧まで破壊せずに使用できる。また分極方向の違いにより生じる特性ばらつきも生じない。
【0042】
(実施の形態5)
図8は本発明の積層圧電素子の別の例を示したものである。図8(a)、図8(c)はそれぞれ矩形形状からなる実施の形態4の例に対応する積層圧電素子22を表裏から見た図であり、図8(d),図8(e)は断面図である。即ち、図8(d),図8(e)に示す様に、内部電極23a、23b、23cもしくは内部電極23d、23e、23fを一方の面に有する圧電素子22a、22bを交互に積層した構造となっている。内部電極23b、23eは圧電素子22a、22bの長手方向の中央部に設けられ、その両側には内部電極23a、23c、23d、23fが設けられ、積層圧電素子22の一つの面方向にのみ張り出しており、積層圧電素子22の側面で外部電極24a、24b、2 4c、24d、24e、24fで短絡されている。外部電極24eは積層圧電素子22の一方の面内で内部電極23bを短絡している。外部電極24a、24bは積層圧電素子18を幅方向に2分する領域で電極23aを短絡する。外部電極24c、24dは積層圧電素子18を幅方向に2分する領域で電極23cを短絡する。また他方の面で外部電極24fは内部電極23d、23e、23fを短絡している。
【0043】
ここで、外部電極24fをGNDとして外部電極24a、24b、24eにプラス方向の高電圧を、外部電極24b、24cにマイナス方向の高電圧を加えることで加えることで積層方向に分極処理がなされる。
【0044】
本積層圧電素子22の駆動方法であるが、例えば外部電極24fをGNDとして外部電極24eと外部電極24a、24b、24c、24dとの間に位相の異なる駆動信号、即ち第一の駆動信号と第二の駆動信号、例えば90度もしくは-90度異なる信号を印加することで積層圧電素子18に縦振動と屈曲振動が励振される。位相を逆転させることで縦振動と屈曲信号の位相が逆転し、移動体7の移動方向も変化する。
【0045】
また本実施の形態の変形例を図9、図10を用いて説明する。図9、図10は図8(a)に対応させて示したものであり、即ち図9、図10は積層圧電素子22の一方の面の外部電極の違いだけを示したものである。図9において、外部電極25eは積層圧電素子22の幅方向中央部に設けられ、内部電極23a、23b、23cを短絡させる。外部電極25a、25bは外部電極25eの両側で内部電極23aを短絡する。外部電極26c、26dは外部電極25eの両側で内部電極23cを短絡する。ここで、外部電極25a、25b、25c,25d,25eは図8における外部電極24a、24b、24c、24d、24eに相当させて分極、駆動させれば良い。
【0046】
図10において外部電極26eは積層圧電素子22の幅方向および長手方向中央部に設けられ、内部電極23a、23b、23cを短絡させる。外部電極26a、26bは外部電極26eの両側で内部電極23aを短絡する。外部電極26c、26dは外部電極26eの両側で内部電極23cを短絡する。ここで、外部電極26a、26b、26c,26d,26eを図8における外部電極24a、24b、24c、24d、24eに相当させて分極、駆動させれば良い。
【0047】
本実施の形態は同様の実施の形態をとる実施の形態3の場合と比べ、振動を効率的に励振出来るという大きな特徴を有する。縦振動の励振に効果的な節部、即ち積層圧電素子22の長手方向中央部に電極を有している。そして図9の場合には、屈曲振動を励振する圧電素子の電極23bは駆動に用いていないため、実質上の隙間となり、内部電極23a、23b、23c及び23d,23e,23fの間の隙間を小さくしても分極時や駆動信号印加の際の影響は受けない。従って電極23a、23b、23c、23d、23e、23f全てを用いて行う縦振動の励振の効率が良い。また、この電極23b,23eの部分は屈曲振動の励振にはあまり寄与しないからこの部分を使わないことにより無駄な電力を消費せずに済む。
(実施の形態6)
本発明の超音波モータを用いて電子機器を構成した例を図11を基に説明する。
【0048】
図11は本発明の駆動回路により駆動される超音波モータ100を電子機器の駆動源に適用したブロック図を示したものであり、積層圧電素子1、9、13、16、18,22と積層圧電素子1、9、16、19に接合された摩擦部材2により摩擦駆動される移動体7と移動体7と一体に動作する伝達機構32と、伝達機構32の動作に基づいて動作する出力機構33からなる。ここでは移動体を回転体とし、移動体を回転動作させる例について説明する。
【0049】
ここで、伝達機構32は例えば歯車列、摩擦車等の伝達車を用いる。出力機構33としては、プリンタにおいては紙送り機構、カメラにおいてはシャッタ駆動機構、レンズ駆動機構、フィルム巻き上げ機構等を、また電子機器や計測器においては指針等を、ロボットにおいてはアーム機構、工作機械においては歯具送り機構や加工部材送り機構等を用いる。
【0050】
尚、本実施の形態における電子機器としては電子時計、計測器、カメラ、プリンタ、印刷機、ロボット、工作機、ゲーム機、光情報機器、医療機器、移動装置等を実現できる。さらに移動体7に出力軸を設け、出力軸からのトルクを伝達するための動力伝達機構を有する構成とすれば、超音波モータ駆動装置を実現できる。
【符号の説明】
【0051】
1、9、13、16、18、22 積層圧電素子
2 摩擦部材
3 支持部材
4 加圧部材
6 加圧手段
7 移動体
10、14、19、23 内部電極
11、15、17、20、21、24、25、26 外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一面内に複数の内部電極を有する圧電素子を複数積層した積層圧電素子であって、
前記積層圧電素子の側面には、内部電極を前記圧電素子の積層方向で短絡する外部電極と、前記同一面内の複数の内部電極同士を短絡する外部電極と、
を有することを特徴とする積層圧電素子。
【請求項2】
前記積層圧電素子は電極を有さない圧電素子が積層されていることを特徴とする請求項1記載の積層圧電素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層圧電素子で振動体を構成し、前記振動体と接する移動体を駆動することを特徴とする超音波モータ。
【請求項4】
前記複数の外部電極を短絡する複数の導通手段を有し、少なくとも一つの前記導通手段は、分極時に接地した外部電極と分極時に電位を加えた外部電極を短絡することを特徴とする請求項3記載の超音波モータ。
【請求項5】
前記振動体は矩形形状であり、駆動信号を印加する外部電極を選択することにより、前記振動体に励振する縦振動と屈曲振動の位相を逆転させ前記移動体の移動方向を切り替えることを特徴とする請求項3記載の超音波モータ。
【請求項6】
前記振動体は矩形形状であり、前記複数の外部電極は第一の駆動信号もしくは第二の駆動信号が印加され、前記第一の駆動信号により前記振動体には縦振動が励振され、前記第二の駆動信号により前記振動体には屈曲振動が励振され、前記移動体を駆動することを特徴とする請求項3記載の超音波モータ。
【請求項7】
複数の圧電素子を積層した積層圧電素子の製造方法であって、複数の内部電極が設けられた同一の圧電素子シート材を面内方向に位置をずらしながら積層し、個々の積層圧電素子形状に分割した後で、前記分割した面に前記積層圧電素子の内部電極を前記圧電素子の積層方向で短絡する外部電極と、同一面内の複数の内部電極同士を短絡する外部電極と、を設ける工程を有することを特徴とする積層圧電素子の製造方法。
【請求項8】
請求項3から6のいずれか一項に記載の超音波モータを備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−136146(P2009−136146A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57744(P2009−57744)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【分割の表示】特願2003−140798(P2003−140798)の分割
【原出願日】平成15年5月19日(2003.5.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】