説明

積層式熱交換器

【課題】ポート接続部付近における熱応力の発生を十分に抑制するための積層式熱交換器を提供する。
【解決手段】積層式熱交換器80において、高温流体導入流路84内に整流体200がコアプレート83a,83bと非接触な状態で設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポート接続部付近における熱応力の発生を十分に抑制するための積層式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の積層式熱交換器150は、図5,図6に示すように、前後のエンドプレート151,152間に複数のコアプレート153a,153bの組(コア)が積層され、その外周フランジ部同士をロウ付けすることで、エンドプレート151,152及びコアプレート153a,153bで囲われた内部に、高温流体(例えば、高温ガス)が流れる高温流体室と、低温流体(例えば、冷却水等の冷却媒体)が流れる低温流体室と、が交互に積層配置されている。また、各高温流体室に高温流体を導入するための高温流体導入流路154と、各高温流体室から高温流体を導出するための高温流体導出流路155と、各低温流体室に低温流体を導入するための低温流体導入流路156と、各低温流体室から低温流体を導出するための低温流体導出流路157と、がそれぞれ前部側エンドプレート151及び各コアプレート153a,153bを積層方向に貫通するように形成されている。そして、これらの各流路154,155及び156,157をそれぞれ前部側エンドプレート151に突設した一対の循環パイプ158a,158b及び159a,159bに連通させている。また、一組のコアプレート153a,153b間には、通常、熱交換効率を向上させるためのフィン160が介層されている。
【0003】
かかる積層式熱交換器150は、エンドプレート151,152及びコアプレート153a,153bの壁面を介して高温流体と低温流体との間で相互に熱交換を行わせることにより、高温流体を冷却するものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−122393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の積層式熱交換器150の場合、高温流体導入流路154内において高温流体が各高温流体室に導入される入口部付近では、一対のコアプレート153a,153bのポート接続部Kが高温流体によって直接加熱されるため、大きく熱膨張する。しかし、ポート接続部Kの下流側領域、すなわち積層式熱交換器150の中心領域Mでは、低温流体室を流れる低温流体によってコアプレート153a,153bが冷却されるため、熱膨張量が少ない(図6参照)。その結果、両者の間に熱膨張差が生じて熱応力が発生し、入口部付近の耐久性が著しく低下する。
【0005】
なお、かかる問題の対策として、ポート接続部K付近における低温流体の流量を増大させて強制冷却し、ポート接続部K付近の温度を低下させる技術がある。しかし、かかる対策を講じたとしても、ポート接続部K付近は、構造上、高温流体により加熱されやすく、冷却不足を十分に解消することが困難である。その結果、ポート接続部K付近には、不可避的に熱応力が生じてしまい、熱応力の発生を十分に抑制できなかった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ポート接続部近付における熱応力の発生を十分に抑制するための積層式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、前後のエンドプレート間に複数のコアプレートの組が積層され、その外周フランジ部同士をロウ付けすることで、エンドプレート及びコアプレートで囲われた内部に高温流体が流れる高温流体室と、低温流体が流れる低温流体室と、が交互に積層配置されており、各高温流体室に前記高温流体を導入するための高温流体導入流路と、各高温流体室から前記高温流体を導出するための高温流体導出流路と、各低温流体室に前記低温流体を導入するための低温流体導入流路と、各低温流体室から前記低温流体を導出するための低温流体導出流路と、がそれぞれ前部側エンドプレート及び各コアプレートを積層方向に貫通するように形成され、これらの各流路をそれぞれ前記前部側エンドプレートに突設した一対の循環パイプに連通させてなる積層式熱交換器であって、前記高温流体導入流路内に整流体が設けられ、前記整流体は、前記積層方向の側壁部断面が略円弧状であり、前記高温流体室に対応する前記側壁部に切欠孔が形成され、前記高温流体が前記切欠孔を介して前記高温流体室に分配されるように構成されており、前記側壁部が前記コアプレートと非接触な状態で設けられていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、前後のエンドプレート間に複数のコアプレートの組が積層され、その外周フランジ部同士をロウ付けすることで、エンドプレート及びコアプレートで囲われた内部に高温流体が流れる高温流体室と、低温流体が流れる低温流体室と、が交互に積層配置されており、各高温流体室に前記高温流体を導入するための高温流体導入流路と、各高温流体室から前記高温流体を導出するための高温流体導出流路と、各低温流体室に前記低温流体を導入するための低温流体導入流路と、各低温流体室から前記低温流体を導出するための低温流体導出流路と、がそれぞれ前部側エンドプレート及び各コアプレートを積層方向に貫通するように形成され、これらの各流路をそれぞれ前記前部側エンドプレートに突設した一対の循環パイプに連通させてなる積層式熱交換器であって、前記高温流体導入流路内に整流体が設けられ、前記整流体は、少なくとも一端が開口形成された筒状体であり、前記高温流体室に対応する側壁部に切欠孔が形成され、前記一端から流入した前記高温流体が前記側壁部で囲繞された内部空間を流れるとともに前記切欠孔から流出して前記高温流体室に分配されるように構成されており、前記側壁部が前記コアプレートと非接触な状態で設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の積層式熱交換器において、前記高温流体室に対応する前記側壁部には、その外周に沿って凸部が形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の積層式熱交換器において、前記切欠孔は、前記側壁部の外周に沿って長穴状若しくはノズル状に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層式熱交換器において、ポート接続部付近における熱応力の発生を十分に抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1〜図4を参照しながら、本発明の各実施形態について説明する。
図1Aは本発明の一実施形態における積層式熱交換器80を示す分解斜視図、図1Bは図1Aの整流体200の拡大図、図2は整流体200の他の一例を示す拡大図、図3は本発明の主要部における高温流体の流れを示す説明図、図4は他の実施形態の主要部を示す拡大断面図である。なお、各図に示す整流体は必ずしも同一のものではないが説明の便宜上同一の符号を付すこととし、本発明の主要部を中心に説明する。
【0013】
図1〜図4に示す積層式熱交換器80は、いずれも図5,6に示した従来の積層式熱交換器150と同様の構成を有し、前後のエンドプレート81,82間に複数のコアプレート83a,83bの組(コア)が積層され、その外周フランジ部同士をロウ付けすることで、エンドプレート81,82及びコアプレート83a,83bで囲われた内部に高温流体室と低温流体室とが交互に積層配置されている。この積層式熱交換器80にあっては、高温流体導入流路84と、高温流体導出流路85と、低温流体導入流路86と、低温流体導出流路87とが、それぞれ前部側エンドプレート81及び各コアプレート83a,83bを積層方向に貫通するように形成されている。そして、これらの各流路84,85及び86,87をそれぞれ前部側エンドプレート81に突設した一対の循環パイプ88a,88b及び89a,89bに連通させており、一組のコアプレート83a,83b間にはフィン90が介層されている。但し、本発明においては、高温流体導入流路84内に整流体200を設けている点で、前述した積層式熱交換器150の構成と異なる。
【0014】
同図に示す整流体200は、いずれも各高温流体室に対応する側壁部に切欠孔200aが形成されており、該切欠孔200aを介して高温流体を各高温流体室に分配するように構成されている。これらの整流体200は、高温流体導入流路84内に設けられ、その側壁部がコアプレート83a,83bと非接触な状態で設けられている。
【0015】
図1A,図1Bに示す整流体200は、積層方向の側壁部断面が略円弧状であり、その側壁部には外周に沿って凸部201及び凹部202が形成されている。凸部201及び凹部202は、積層方向に交互に形成され、凸部201は高温流体室に対応するように形成され、他方、凹部202は低温流体室に対応するように形成されている。なお、前述した切欠孔200aは、凸部201に設けられている。
【0016】
高温流体導入流路84内に配置された整流体200は、側壁部の円弧外面が積層式熱交換器80の略中心側若しくは長手方向を向くように位置決め固定されている。なお、同図に示す整流体200は、一端が開口し他端が閉塞した筒状体を縦方向に半カットしたものであるが、例えば、所定のプレートをプレス加工して断面略円弧状に成形したものであってもよい。また、断面略円弧状には、断面半円状(図1A,図1Bの場合)のみならず、例えば、断面C字状や断面扇形等の他の形状を含むものとする。
【0017】
かかる構成とした場合には、断面円形状の筒状体とした場合(例えば、図2〜図4参照)よりも整流体200の表面積が小さくなり、積層式熱交換器150の軽量化及び低コスト化に資するとともに、整流体200の側壁部に生じる熱応力を緩和することもできる。また、同図に示す整流体200には、他端側(同図の場合には下側)に底部が形成されており、この底部を下にして整流体200を後部側エンドプレート82に載置すれば、不安定な断面円弧状の整流体200であってもこれを高温流体導入流路84内に安定した状態で設置できる。これにより、整流体200の側壁部は、コアプレート83a,83bと非接触な状態で維持される。
【0018】
一方、図2〜図4に示す整流体200は、図1Bに示した整流体200と異なり、少なくとも一端が開口形成された筒状体であり、高温流体室に対応する側壁部に切欠孔200aが形成され、一端から流入した高温流体が側壁部で囲繞された内部空間を流れるとともに、切欠孔200aから流出して各高温流体室に分配されるように構成されている。なお、図2に示す整流体200では、両端(同図の場合には上端及び下端の双方)が共に開口形成され、図3及び図4に示す整流体200では、一端(同図の場合には上端)のみが開口形成され、他端は閉塞している。図2〜図4において、開口形成された上端は、高温流体導入流路84の導入口側に向けて漸次拡径するとともに、その先端外周が循環パイプ88aに接触するように構成されている。そのため、高温流体導入流路84に流入する高温流体は、ほぼ全て整流体200の内部空間に導入される。整流体200は、高温流体導入流路84内に位置決め固定されているため位置ズレが生じにくく、側壁部がコアプレート83a,83bと非接触な状態で維持される。なお、図2においては、他端側(同図の場合には開口形成された下端)も漸次拡径しており、整流体200を後部側エンドプレート82に安定した状態で載置できる。
【0019】
凸部201には、長穴状若しくはノズル状の切欠孔200a,300aが形成されており、切欠孔200aは、外周方向に沿って連続的に切り欠き成形したものであり(図2、図3及び図4(a)参照)、切欠孔300aは、外周方向に沿って間隔を隔てて不連続的に切り欠き成形したものである(図4(b)参照)。
【0020】
切欠孔200aは、図2の場合には凸部201の半周域にのみ形成され、高温流体が特定方向、すなわち積層式熱交換器80の中心方向に集中して流出するように構成されている。他方、図3及び図4の場合には、切欠孔200aは、凸部201のほぼ全周域に亘って形成され、高温流体がほぼ全ての方向に分散して流出するように構成されている。但し、本発明において、切欠孔の形状、大きさ、個数、及び形成領域等は適宜設計することとし、各種の形態を組み合わせてもよい。
【0021】
以上の構成によれば、高温流体導入流路84内において、整流体200の開口端から内部に流入した高温流体は、整流体200の凸部201に形成された切欠孔200a,300aから噴出され、各高温流体室に分配導入される(図3参照)。さらに整流体200には、低温流体室に対応する側壁部に凹部202が形成されており、この凹部202は一対のコアプレート83a,83bのポート接続部Kに対応している。そのため、高温流体が各高温流体室に導入される入口部付近では、高温流体がポート接続部Kに接触することなく各コアに分配されることとなり、ポート接続部Kは高温流体により直接加熱されない。これにより、ポート接続部K付近における熱応力の発生を十分に抑制できる。
【0022】
ところで、図3に示す整流体200は、他端側(同図の場合には下側)を後部側エンドプレート82に載置するとともに、一端側(同図の場合には上側)を循環パイプ88a内に固定するようにして高温流体導入流路84内に取り付けられている。しかし、本発明は、かかる形態に限定されるものではなく、例えば図4に示すように、整流体200の一端側を断面L字状に折り曲げて装着部200bを設けておき、この装着部200bを介して整流体200を循環パイプ88aから吊り下げ、その他端側の底部を後部側エンドプレート82から離間した状態で取り付けることとしてもよい。かかる場合には、整流体200と後部側エンドプレート82との間に生じる熱応力も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1A】積層式熱交換器を示す分解斜視図である。
【図1B】図1Aの整流体を示す拡大図である。
【図2】整流体の他の一例を示す拡大図である。
【図3】積層式熱交換器の主要部における高温流体の流れを示す説明図である。
【図4】積層式熱交換器の主要部を示す拡大断面図であり、(a)は切欠孔が長穴状、(b)は切欠孔が長穴状若しくはノズル状の形態を示す。
【図5】従来の積層式熱交換器を示す分解斜視図である。
【図6】従来の積層式熱交換器の主要部における高温流体の流れを示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
80 積層式熱交換器
200 整流体
200a,300a 切欠孔
201 凸部
202 凹部
K ポート接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後のエンドプレート間に複数のコアプレートの組が積層され、その外周フランジ部同士をロウ付けすることで、エンドプレート及びコアプレートで囲われた内部に高温流体が流れる高温流体室と、低温流体が流れる低温流体室と、が交互に積層配置されており、各高温流体室に前記高温流体を導入するための高温流体導入流路と、各高温流体室から前記高温流体を導出するための高温流体導出流路と、各低温流体室に前記低温流体を導入するための低温流体導入流路と、各低温流体室から前記低温流体を導出するための低温流体導出流路と、がそれぞれ前部側エンドプレート及び各コアプレートを積層方向に貫通するように形成され、これらの各流路をそれぞれ前記前部側エンドプレートに突設した一対の循環パイプに連通させてなる積層式熱交換器であって、
前記高温流体導入流路内に整流体が設けられ、
前記整流体は、前記積層方向の側壁部断面が略円弧状であり、前記高温流体室に対応する前記側壁部に切欠孔が形成され、前記高温流体が前記切欠孔を介して前記高温流体室に分配されるように構成されており、前記側壁部が前記コアプレートと非接触な状態で設けられていることを特徴とする積層式熱交換器。
【請求項2】
前後のエンドプレート間に複数のコアプレートの組が積層され、その外周フランジ部同士をロウ付けすることで、エンドプレート及びコアプレートで囲われた内部に高温流体が流れる高温流体室と、低温流体が流れる低温流体室と、が交互に積層配置されており、各高温流体室に前記高温流体を導入するための高温流体導入流路と、各高温流体室から前記高温流体を導出するための高温流体導出流路と、各低温流体室に前記低温流体を導入するための低温流体導入流路と、各低温流体室から前記低温流体を導出するための低温流体導出流路と、がそれぞれ前部側エンドプレート及び各コアプレートを積層方向に貫通するように形成され、これらの各流路をそれぞれ前記前部側エンドプレートに突設した一対の循環パイプに連通させてなる積層式熱交換器であって、
前記高温流体導入流路内に整流体が設けられ、
前記整流体は、少なくとも一端が開口形成された筒状体であり、前記高温流体室に対応する側壁部に切欠孔が形成され、前記一端から流入した前記高温流体が前記側壁部で囲繞された内部空間を流れるとともに前記切欠孔から流出して前記高温流体室に分配されるように構成されており、前記側壁部が前記コアプレートと非接触な状態で設けられていることを特徴とする積層式熱交換器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の積層式熱交換器において、
前記高温流体室に対応する前記側壁部には、その外周に沿って凸部が形成されていることを特徴とする積層式熱交換器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の積層式熱交換器において、
前記切欠孔は、前記側壁部の外周に沿って長穴状に形成されていることを特徴とする積層式熱交換器。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の積層式熱交換器において、
前記切欠孔は、前記側壁部の外周に沿ってノズル状に形成されていることを特徴とする積層式熱交換器。


【図1A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1B】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−240081(P2007−240081A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64182(P2006−64182)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000220804)東京濾器株式会社 (84)
【Fターム(参考)】