説明

積層樹脂一軸延伸フィルム

【課題】
本発明は、ポリエチレン系樹脂層を有するMD方向の引裂強度にすぐれた積層樹脂1軸延伸フィルム、およびそれからなる包装材を提供すること。
【解決手段】
(i)MFRが0.01〜10g/10分、密度が880〜925Kg/m3であるエチレンとα-オレフィンの共重合体10〜85重量部と、(ii)MFRが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレンとα-オレフィンの共重合体10〜85重量部と、(iii)MFRが0.01〜20g/10分であり、密度が940〜970Kg/m3である高密度ポリエチレンと、(iv)密度が910から930Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレンからなる樹脂層(α)およびバリア性樹脂層(β)を積層してなる樹脂1軸延伸フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリア性、延伸性に優れた積層樹脂一軸延伸フィルムに関する。さらに詳しくはエチレン・α-オレフィン共重合体を含む層を有するガスバリア性、延伸性に優れ、TD方向の手切れ性に優れた積層樹脂一軸延伸フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ナイロン6等のポリアミド樹脂やエチレン-ビニルアルコール共重合体は、気体透過防止性に優れるため、ガスバリア性フィルムとして酸素を嫌う内容物の包装材等に用られる。またこれらの樹脂を例えばポリオレフィンと積層した積層ガスバリア性フィルムについても報告がなされている。しかしながら、ガスバリア性樹脂単身あるいは従来のポリオレフィンと積層したフィルムは、延伸を行うとフィルムの破断が発生しやすく延伸フィルムを得るのは困難な実情であり、ガスバリア性能も必ずしも満足の行くものではなかった。
【特許文献1】特開平8-134284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、ポリエチレン系樹脂層とガスバリア層を有し、ガスバリア性を向上させ、TD方向の手切れ性に優れ、延伸性に優れた積層樹脂1軸延伸フィルムを提供することを目的とする。手切れ性とは、TD方向に手で容易に裂けることをいう。
【0004】
さらに本発明は、ポリエチレン系樹脂層を有するMD方向の引裂強度にすぐれた積層樹脂1軸延伸フィルムが持つすぐれた耐衝撃性、ヒートシール性、シュリンクパック性、ガスバリア性、TD方向の手切れ性などの特性を活かした包装材などの用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記問題点を解決し、ガスバリア性、延伸性に優れ、TD方向の手切れ性に優れた積層樹脂一軸延伸フィルムを得るべく鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
【0006】
すなわち本発明の要旨は、
(i)メタロセン触媒を用いて得られる、メルトフローレートが0.01〜10g/10分、密度が880〜925Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;10〜85重量部と、
(ii)メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られる、メルトフローレートが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;10〜85重量部と、
下記(iii)および(iv)の少なくとも1種;5〜45重量部と、
からなる樹脂層(α)と、
(iii)メルトフローレートが0.01〜20g/10分であり、密度が940〜970Kg/m3である高密度ポリエチレン
(iv)密度が910から930Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン
(ただし(i)と(ii)と(iii)および(iv)の合計は100重量部である)
ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体から選ばれる樹脂層(β)
を有する積層樹脂1軸延伸フィルムであって、樹脂層(α)の厚みがフィルム全体に対し99〜1%である樹脂積層1軸延伸フィルム、にある。
【0007】
(iii)高密度ポリエチレンと(iv)高圧法低密度ポリエチレンは少なくとも一方が含まれればよいが、双方含まれることが好ましい。
すなわち本発明の第2の形態は、
(i)メルトフローレートが0.01〜10g/10分、密度が880〜925Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;10〜85重量部と、
(ii)メルトフローレートが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;10〜85重量部と、
(iii)メルトフローレートが0.01〜20g/10分であり、密度が940〜970Kg/m3である高密度ポリエチレン;5〜40重量部と、
(iv)密度が910から930Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン;5〜40重量部、(ただし(i)と(ii)と(iii)および(iv)の合計は100重量部である)
からなる樹脂層(α)と、
ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体から選ばれる樹脂層(β)
を有する積層樹脂1軸延伸フィルムであって、樹脂層(α)の厚みがフィルム全体に対し99〜1%である樹脂積層1軸延伸フィルム、である。
【0008】
フィルム中の層厚み比は、全体の厚みに対して積層樹脂(α)=99〜1%、好ましくは90〜10%、さらに好ましくは80〜20%が望ましく、樹脂(β)=1〜99%、好ましくは1〜70%、さらに好ましくは1〜50%が望ましい。(α)および(β)層の厚み比が前期範囲内にあれば、さらにこれらとは異なる第3の樹脂層を含む構成であっても構わない。
【0009】
樹脂層(β)はポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体から選ばれ、中でもエチレン-ビニルアルコール共重合体が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガスバリア性を維持しながら延伸性に優れた積層樹脂1軸延伸フィルムが提供され、フィルムの破断や白化をおこすことなくガスバリア性にすぐれた包装材が提供される。
また本発明は、ポリエチレン系樹脂層とガスバリア層を有し、ガスバリア性を向上させ、TD方向の手切れ性に優れ、延伸性に優れた積層樹脂1軸延伸フィルムを提供する。また本発明の樹脂積層一軸延伸フィルムは、耐衝撃性、耐寒性、ヒートシール性、シュリンクパック性に優れるので包装材として好適な延伸フィルムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は積層樹脂1軸延伸フィルムであって、積層中に樹脂層(α)を有し、該樹脂層(α)は以下の組成からなる。
(i)メルトフローレートが0.01〜10g/10分、密度が880〜925Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;
(ii)を用いて得られる、メルトフローレートが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;
(iii)メルトフローレートが0.01〜20g/10分であり、密度が940〜970Kg/m3である高密度ポリエチレン;
(iv)密度が910から930Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン。
【0012】
各重合体の割合は、(ただし(i)と(ii)と(iii)および(iv)の合計は100重量部である)
(i)エチレン・α-オレフィン共重合体が10〜85重量部、好ましくは20〜70重量部であり、より好ましくは20〜65重量部であり、
(ii)エチレン・α-オレフィン共重合体が10〜85重量部、好ましくは15〜60重量部であり、より好ましくは20〜60重量部であり、
(iii)高密度ポリエチレンおよび(iv)高圧法低密度ポリエチレンは合計量が5〜45重量部の範囲であり、好ましくは
(iii)高密度ポリエチレン;5〜40重量部、好ましくは15〜40重量部であり、
(iv)高圧法低密度ポリエチレン;5〜40重量部、好ましくは15〜40重量部、
である。
【0013】
本発明のエチレンとα-オレフィンとの共重合体(i)は、メタロセン触媒を用いて重合されることが好ましく、エチレンと炭素原子数4〜12のα-オレフィンを共重合して得られるエチレン・α-オレフィン共重合体である。
また本発明のエチレンとα-オレフィンとの共重合体(ii)は、メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いて重合されることが好ましく、エチレンと炭素原子数4〜12のα-オレフィンを共重合して得られるエチレン・α-オレフィン共重合体である。 共重合体(i)および共重合体(ii)に用いられるα-オレフィンは、同じであっても異なっていても良い。
【0014】
炭素原子数4〜12のα-オレフィンとしては、例えば、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、ヘプテン-1、オクテン-1、ノネン-1、デセン-1、ドデセン-1、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、ノルボルネン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられ、好ましくはヘキセン-1、4-メチル-ペンテン-1、オクテン-1である。また、上記の炭素原子数4〜12のα-オレフィンは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
エチレン・α-オレフィン共重合体(i)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(ii)としては、例えば、エチレン・ブテン-1共重合体、エチレン・4-メチル-ペンテン-1共重合体、エチレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・オクテン-1共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレン・ヘキセン-1共重合体、エチレン・4-メチル-ペンテン-1、エチレン・オクテン-1共重合体であり、より好ましくはエチレン・ヘキセン-1共重合体である。
【0016】
エチレン・α-オレフィン共重合体(i)のメルトフローレート(MFR)は0.01〜10g/10分であり、好ましくは0.2〜5g/10分であり、より好ましくは0.3〜1g/10分である。MFRが0.01g/10分以上であると押出加工性の点で好ましく、未満の場合、溶融粘度が高くなりすぎて押出加工性が悪化することがあり、10g/10分以下であると、機械的強度の点で好ましい。
エチレン・α-オレフィン共重合体(i)の密度は、880〜925Kg/m3であり、好ましくは900〜920Kg/m3であり、より好ましくは903〜920Kg/m3である。密度が880Kg/m3から925Kg/m3の範囲にあると、衝撃強度や引裂バランスが良好な点で好ましい。大幅に低下することがある。
【0017】
エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)のメルトフローレート(MFR)は、押出加工性および機械的強度の観点から、1〜100g/10分であり、好ましくは2〜80g/10分であり、より好ましくは4〜60g/10分であることが望ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)の密度は、延伸性、衝撃強度および透明性の観点から、926〜960Kg/m3であり、好ましくは935〜945Kg/m3であることが望ましい。
【0018】
本発明で用いる高密度ポリエチレン(iii)のメルトフローレート(MFR)は、押出加工性および機械的強度の観点から、0.1〜60、好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.1〜10、さらに好ましくは0.5〜5g/10分であり、なかでも好ましくは0.1〜3g/10分であることが望ましい。
【0019】
本発明で用いる高圧法低密度ポリエチレン(iv)のメルトフローレート(MFR)は、押出加工性、機械的強度およびレトルト処理後の透明性の観点から、0.1〜10g/10、好ましくは0.1〜8g/10分であり、より好ましくは0.2〜8g/10分であることが望ましい。
高圧法低密度ポリエチレン(iv)の密度は、延伸フィルムの剛性を保つ観点から、915〜935Kg/m3、好ましくは915〜930Kg/m3であり、より好ましくは918〜930Kg/m3であることが望ましい。
【0020】
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(i)の製造方法としては、メタロセン触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合方法として、例えば、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、気相重合法等が挙げられ、好ましくは気相重合法、溶液重合法、高圧イオン重合法であり、より好ましくは気相重合法である。
【0021】
メタロセン系触媒として、好ましくは、シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を有する遷移金属化合物を含む触媒系である。シクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基を有する遷移金属化合物とは、いわゆるメタロセン系化合物であり、例えば、一般式MLaXn-a(式中、Mは元素の周期律表の第4族又はランタナイド系列の遷移金属原子である。Lはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基又はヘテロ原子を含有する基であり、少なくとも一つはシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する基である。複数のLは互いに架橋していてもよい。Xはハロゲン原子、水素又は炭素原子数1〜20の炭化水素基である。nは遷移金属原子の原子価を表し、aは0<a≦nなる整数である。)で表され、単独で用いてもよく、少なくとも2種類を併用してもよい。
【0022】
さらに、上記のメタロセン系触媒には、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物、メチルアルモキサン等のアルモキサン化合物、および/またはトリチルテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート等のイオン性化合物を組み合わせて用いられる。
【0023】
また、上記のメタロセン系触媒は、上記のメタロセン系化合物と、有機アルミニウム化合物、アルモキサン化合物および/またはイオン性化合物とを、SiO2、Al2O3等の微粒子状無機担体、ポリエチレン、ポリスチレン等の微粒子状有機ポリマー担体に担持または含浸させた触媒であってもよい。
上記のメタロセン系触媒を用いる重合によって得られるエチレン・α-オレフィン共重合体としては、例えば、特開平9-183816号公報に記載されているエチレン・α-オレフィン共重合体が挙げられる。
【0024】
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(ii)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン系触媒等が挙げられ、好ましくはメタロセン系触媒である。公知の重合方法としては、前述のエチレン・α-オレフィン共重合体(i)の製造方法で用いられる重合方法と同様の重合方法が挙げられる。
【0025】
本発明で用いられる高密度ポリエチレン(iii)の製造方法としては、公知の重合触媒を用いる公知の重合方法が挙げられる。公知の重合触媒としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒等が挙げられ、公知の重合方法としては、前述のエチレン・α-オレフィン共重合体(i)の製造方法で用いられる重合方法と同様の重合方法が挙げられる。高密度ポリエチレン(iii)の製造方法としては、例えば、チーグラー・ナッタ触媒を用いるスラリー重合方法が挙げられる。
【0026】
本発明で用いられる高圧法低密度ポリエチレン(iv)の製造方法としては、一般に、槽型反応器または管型反応器を用いて、ラジカル発生剤の存在下、重合圧力140〜300MPa、重合温度200〜300℃の条件下でエチレンを重合する方法が挙げられ、メルトフローレートを調節するために、分子量調節剤として水素、メタンやエタン等の炭化水素が用いられる。
【0027】
本発明の前記樹脂組成物の好ましいメルトフローレート(MFR)は0.1〜10g/10分であり、好ましくは0.2〜4g/10分であり、より好ましくは0.3〜3g/10分である。メルトフローレート(MFR)がこの範囲にあれば、インフレーション法によるフィルム成形において、樹脂の押出し性が良好でバブルが安定することから、延伸工程前のフィルム原反を製造する際インフレーション法によるフィルム成形にとって、より好ましい樹脂組成物が得られる。
【0028】
また、本発明の前記樹脂組成物の密度としては、898〜960Kg/m3、好ましくは900〜950Kg/m3、より好ましくは900〜940Kg/m3であることが推奨される。
【0029】
本発明における樹脂組成物の他の製造方法としては、例えば、エチレン・α-オレフィン共重合体(i)、エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)、高密度ポリエチレン(iii)および/または高圧法低密度ポリエチレン(iv)をドライブレンドまたはメルトブレンドする方法が挙げられる。ドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサーなどの各種ブレンダーを用いることができ、またメルトブレンドには、単軸押出機、二軸押出機、バンバリ-ミキサー、熱ロールなどの各種ミキサーを用いることができる。
【0030】
また、本発明の樹脂組成物の製造方法としては、例えば、以下のような望ましい製造方法が挙げられる。
1.1個の重合器を用い、2条件以上の反応条件に分けて、エチレン・α-オレフィン共重合体(i)、(ii)および高密度ポリエチレン(iii)を連続的に重合した後に、高圧法低密度ポリエチレン(iv)を混合する方法。
2.多段重合プロセスによって、複数の重合器で各々の成分を重合し、最終的に本発明のポリエチレン系樹脂組成物を得る方法。
3.各成分のうちのいずれか2成分を多段重合によって製造した後に、残りの2成分を混合する方法。
【0031】
本発明において、高密度ポリエチレン(iii)としては、DSC(示差走査熱量測定)で観測される融解ピークを複数有する高密度ポリエチレンが好適である。なお、DSCの融解ピークを複数有するとは、DSCのチャートにピークが明らかに2本以上見られる場合の他、ピークが1本とそれにショルダーが付随する場合も含むものである。
【0032】
ガスバリア樹脂層(β)はポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体から選ばれ、中でもエチレン-ビニルアルコール共重合が好ましい。上記樹脂層を用いると、気体の透過性が低くかつ延伸性に優れたフィルムが得られる点で好ましい。
【0033】
ポリアミド樹脂としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12等が例示される。芳香族ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が例示される。
これらガスバリア性樹脂層と樹脂層(α)の厚み比は通常1%〜99%、好ましくは1%〜70%、1%〜60%である。
フィルム中のガスバリア樹脂からなる層(β)は、1層に限定されず2層以上用いてもかまわない。
【0034】
ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコールまたはその共重合体は極性が高いので、ポリエチレン樹脂組成物からなる層(α)とは接着層を介して接合することが好ましい。接着層の材料は特に限定されないが、通常ポリオレフィンにカルボキシル基等の極性基をグラフトしたものが用いられ、例として三井化学(株)製アドマーをあげることが出来る。また、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、アイオノマー等も使用される。
【0035】
層数や順序等の層構成は特に限定されないが、ポリエチレン組成物層(α)を両表面とし、内部にガスバリア樹脂層を有する3種5層フィルム;
組成物層(α)/接着層/ガスバリア樹脂層/接着層/組成物層(α)
を好ましい例としてあげることが出来る。
【0036】
本発明の樹脂積層一軸延伸フィルムを得る方法として、樹脂層(α)および樹脂層(β)を少なくともそれぞれ1層有する積層フィルムを一軸延伸する方法を挙げることができる。積層フィルムの製造方法としては、共押出法、押出コーティング法(押出ラミネート法ともいう。)など公知の方法が挙げられる。例えば、本発明の樹脂層(α)を構成する樹脂組成物と他の層となる樹脂を共押出して得ることができる。 本発明の多層フィルムとしては、ラミネート用多層フィルムがある。本発明の多層フィルムをラミネートする基材としては、例えば、フィルム成形が可能な重合体、紙、板紙、織物、アルミニウム箔等が挙げられ、これら基材は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
また、基材は延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムとしては、例えば、1軸延伸フィルムまたは2軸延伸フィルムが挙げられ、延伸フィルムに用いられる材料としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン等が挙げられる。 また、インフレーションフィルム成形法、Tダイキャストフィルム成形法、カレンダー成形法、プレス成形法などの公知のフィルム形成方法で得られた樹脂層(α)を構成する樹脂組成物からなるフィルムに、押出しラミネート、あるいはドライラミネートなどの方法で他の樹脂を積層して得ることもできる。
【0038】
本発明における積層体の層の好ましい構成例として下記のようなものを挙げることができる。
(1)前記樹脂層(α)と樹脂層(β)からなる2層樹脂積層体。
(2)前記樹脂層(α)を中間層とし、両側を樹脂層(β)で挟んだ3層樹脂積層体。
(3)樹脂層(β)を中間層とし、両側を樹脂層(α)で挟んだ3層樹脂積層体。
(4)樹脂層(β)を中間層とし、その両側に接着性樹脂を設け、さらにその両側を樹脂層(α)で挟んだ5層樹脂積層体。
(5)樹脂層(β)を中間層とし、その両側にさらに前述とは異なるガスバリア樹脂、その両側に接着性樹脂、さらにその両側を樹脂層(α)で挟んだ7層樹脂積層体。
(6)(2)または(3)の3層樹脂積層体の外に、さらに樹脂層(α)またはエチレン系重合体またはプロピレン系重合体の層を形成させた5層樹脂積層体。
(7)(2)または(3)の3層樹脂積層体の外に、さらに樹脂層(α)またはエチレン系重合体またはプロピレン系重合体の層を形成させた7層樹脂積層体。
(8)(5)の7層積層体のさらに外に、さらに樹脂層(α)またはエチレン系重合体またはプロピレン系重合体の層を形成させた9層樹脂積層体。
(9)(6)〜(8)において、エチレン系重合体またはプロピレン系重合体の層の少なくともひとつをその他の樹脂層に置き換えた樹脂積層体。
【0039】
本発明に係る樹脂積層一軸延伸フィルムの層構成は、これらに限定されるものではなく、目的に応じて適宜樹脂の種類や層の構成を選択することができる。
得られた積層フィルムを一軸延伸することにより、本発明の樹脂積層一軸延伸フィルムを得ることができる。延伸の方法としては、例えば加熱ロールと該ロールと異なる速度で回転しているロールとの間に通してMD(縦)方向に延伸する方法など従来公知の方法を適用することができる。 延伸倍率としては、3〜15倍程度、より好ましくは4〜10倍程度が望ましい。
【0040】
本発明は、樹脂積層の少なくとも一つの層として、上記樹脂層(α)を存在させることによって著しく改善されたMD方向エルメンドルフ引裂強度と延伸性を有する一軸延伸フィルムを提供するものである。
【0041】
本発明の樹脂積層一軸延伸フィルムの各層には、必要に応じて、その他のポリマー、酸化防止剤、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、ブロッキング防止剤等を添加してもよい。その他の樹脂や添加剤は、単独で用いてもよく、少なくとも2種を併用してもよい。
【0042】
前記樹脂層(α)にも本発明の目的を損なわない範囲でその他のポリマーを添加してもよい、その他のポリマーとしてはポリオレフィン系樹脂等が挙げられ、剛性や耐熱性を改良するために添加されるポリプロピレン樹脂、衝撃強度を改良するために添加されるポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの他のポリマーは、共重合体(i)及び共重合体(ii)の合計100重量部に対して通常1ないし30重量部の割合で添加されることがある。
【0043】
酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(商品名:IRGANOX1010、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、n-オクタデシル-3-(4’-ヒドロキシ-3,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート(商品名:IRGANOX1076、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等のフェノール系酸化防止剤、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、2,4,8,10-テトラ-t-ブチル-6-[3-(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン(商品名:スミライザーGP、住友化学工業社製)等のホスファイト系酸化防止剤等が挙げられる。
【0044】
滑剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、帯電防止剤としては、例えば、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられ、加工性改良剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、フッ素系樹脂等が挙げられ、ブロッキング防止剤としては、無機系ブロッキング防止剤、有機系ブロッキング防止剤が挙げられ、無機系ブロッキング防止剤としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、タルク等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリ(メタクリル酸メチル-スチレン)共重合体、架橋シリコーン、架橋ポリスチレンの粉末等が挙げられる。
【0045】
上記の必要に応じて添加されるその他の樹脂や添加剤の混合方法としては、例えば、本発明の樹脂組成物またはその他の樹脂とともに樹脂や添加剤を単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いて溶融混練した後フィルム加工に供する方法、本発明のポリエチレン系樹脂組成物とその他の樹脂や添加剤をヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いてドライブレンドした後フィルム加工に供する方法、または、その他の樹脂や添加剤を少なくとも一種のマスターバッチにしてヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いて本発明のポリエチレン系樹脂組成物とドライブレンドした後フィルム加工に供する方法等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
次に本発明を実施例および比較例に基づきより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。実施例および比較例に用いた樹脂組成物の基本物性およびフィルム物性は次の方法に従って測定した。
【0047】
〔樹脂組成物の基本物性〕
(1)密度(単位:Kg/m3) 密度は、190℃における2.16kg荷重でのメルトフローレート(MFR)測定時に得られたストランドを120℃で2時間処理し、1時間かけて室温まで徐冷した後、密度勾配管を用いて測定した。
(2)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分) ASTM D1238-65Tに従い、190℃、2.16kg荷重の条件下にて測定した。
【0048】
〔フィルム物性〕
(3)グロス(単位:%) ASTM D1922に規定された方法に従って測定した。
(4)ヘイズ(透明性、単位:%) ASTM D1003に従って測定した。
(5)エルメンドルフ引裂強度 エルメンドルフ引引裂強度は、ASTM D1922に準じ、(株)東洋精機製作所のエルメンドルフ引裂試験機を用いて測定した。 切れ目をフィルムの引き取り方向に入れる場合をMD(方向)、引取方向と直角に入れる場合をTD(横方向)とする。
(6)手裂き感は、官能評価により判定した。
(7)引張初期弾性率 フィルムからJIS K6718に準ずる大きさのダンベルを打ち抜き試験片とし、フィルムの引取方向と平行に打ち抜く場合をMD方向、フィルムの引取方向と直角に打ち抜く場合をTD方向とする。 インストロン型万能材料試験機のエアチャックに試験片をセットし、チャック間距離86mm、引張速度200mm/分で引張試験を行い、初期応力の変位に対する傾きを引張初期弾性率とする。
【0049】
[ガス透過性試験]
窒素ガス透過性は、差圧法ガス透過試験装置 MT-C3型(東洋精機製、差圧法)を用い、100mm角試料を70mmφのセルにセット(パッキン密封)し、JIS K7126Aに準じて測定した。
炭酸ガス透過性は、炭酸カ゛ス透過試験装置 PERMATRAN C-IV型(モコン社製、同圧法)を用い、100mm角試料を80mmφのセルにセット(パッキン密封)して測定した。
酸素ガス透過性は、酸素透過試験装置 OX-TRAN 2/20(モコン社製、同圧法)を用い100mm角試料を80mmφのセルにセット(パッキン密封)し、JIS K7126Bに準じて測定した。
【0050】
実施例および比較例に用いたエチレン・α-オレフィン共重合体(i)、エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)、高密度ポリエチレン(iii)、高圧法低密度ポリエチレン(iv)を以下に示した。
【0051】
(i)エチレン・α-オレフィン共重合体 エチレン-ヘキセン-1共重合体:MFR=0.5g/10分、密度=902Kg/m3
(ii)エチレン・α-オレフィン共重合体 エチレン-ヘキセン-1共重合体:MFR=5g/10分、密度=940Kg/m3上記のエチレン・α-オレフィン共重合体(i)およびエチレン・α-オレフィン共重合体(ii)は公知のメタロセン触媒を用いて、気相重合法によって製造されたものであった。
(iii)高密度ポリエチレン HDPE(iii):MFR=0.11g/10分、密度=958Kg/m3 チーグラー・ナッタ触媒を用いてスラリー重合法によって製造されたものであった。
(iv)高圧法低密度ポリエチレン LDPE(iv):MFR=0.6g/10分、密度=923Kg/m3 上記の高圧法低密度ポリエチレンは、管型反応器を用いて、ラジカル重合法によって製造されたものであった。
【0052】
上記(i)〜(iv)からなる樹脂組成物と、下記のバリア樹脂ないし接着樹脂を積層してフィルムとした;
(v)バリア樹脂 F101(エチレン・ビニルアルコール共重合体(株)クラレ社製、商品名:エバール)
(vi)接着性樹脂 SF731(三井化学(株)、商品名:アドマー)
【0053】
〔樹脂組成物の製造〕
エチレン・α-オレフィン共重合体(i)、エチレン・α-オレフィン共重合体(ii)、高密度ポリエチレン(iii)および高圧法低密度ポリエチレン(iv)を表1に示した組成でドライブレンドを行い、続いて池貝鉄工社製46mmφ 2軸押出機を用いて、加工温度190℃、押出量50Kg/hrで樹脂組成物ペレットを製造した。 この樹脂組成物を用いて、樹脂層(α)が形成された。
【0054】
〔樹脂積層一軸延伸フィルムの製造〕
1)延伸用フィルム原反の製造は7種7層インフレーション成形機(アルピネ社製:1層目65mmφ押出機、2層目50mmφ、3層目50mmφ、4層目65mmφ、5層目50mmφ、6層目50mmφ、7層目65mmφ、ダイリップ:500mmφ、ダイリップクリアランス:2.5mm、エアーリング:ダブルチャンバー、引取機:自動偏肉制御、オシレーション付き)を用いて、各層に表1に記載の樹脂材料を用いて、総押出量約270kg/hrで厚み200μmの5種7層インフレーションフィルム原反を製造した。なお、各層の厚み比は、押出量によって調整した。樹脂層(α)は、1、2、6,7層目とし樹脂設定温度は190℃とした。接着性樹脂層は、3、5層目とし樹脂設定温度は200℃とした。バリア樹脂層は、4層目として樹脂設定温度は220℃とした。ダイス畝低温度は230℃とした。
2)フィルムの延伸:上記で得られたフィルム原反を、表面温度(延伸温度)が110℃に加熱されたロールと、所定の延伸倍率となるように異なる速度で回転させている他のロールとの間に通して延伸フィルムを得た。
【0055】
(実施例1)
表1に記載した樹脂組成物を用いて、上記の方法で樹脂積層一軸延伸フィルムを製造した。
本願のポリエチレン組成物を用いた実施例フィルムは白化等をおこすことなく良好に延伸することが可能であり、延伸フィルムのガスバリア性も優れていた。また、TD方向(延伸方向と垂直方向)にノッチを入れて、TD方向に人の手にて引裂いた時、抵抗感が少なく直線的に引裂けた。
【0056】
(比較例1)
表1に示すエチレン・α-オレフィン共重合体(i)および(ii)のみからなるポリエチレン組成物を用い、実施例1と同様にして延伸用フィルム原反を作製した。本比較例は、延伸時にフィルムがまだらに白化し、延伸倍率が3倍を超えたところでフィルムが破断した。延伸倍率が3倍未満では、得られるフィルムに部分的に白化がした部分が目立ち、外観が優れなかった。また外観も厚さも不均一であり、物性評価はできなかった。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、ポリエチレン系樹脂層を有するMD方向の引裂強度にすぐれた積層樹脂1軸延伸フィルムが持つすぐれた耐衝撃性、ヒートシール性、シュリンクパック性、ガスバリア性、TD方向の手切れ性などの特性を活かした包装材などの用途を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)メタロセン触媒を用いて得られる、メルトフローレートが0.01〜10g/10分、密度が880〜925Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;10〜85重量部と、
(ii)メタロセン触媒またはチーグラー・ナッタ触媒を用いて得られる、メルトフローレートが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;10〜85重量部と、
下記(iii)および(iv)の少なくとも1種;5〜45重量部とからなる樹脂層(α)と、
(iii)メルトフローレートが0.01〜20g/10分であり、密度が940〜970Kg/m3である高密度ポリエチレン
(iv)密度が910から930Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン
(ただし(i)と(ii)と(iii)および(iv)の合計は100重量部である)
ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体から選ばれる樹脂層(β)
を有する積層樹脂1軸延伸フィルムであって、樹脂層(α)の厚みがフィルム全体に対し99〜1%である樹脂積層1軸延伸フィルム。
【請求項2】
(i)メルトフローレートが0.01〜10g/10分、密度が880〜925Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;10〜85重量部と、
(ii)メルトフローレートが1〜100g/10分であり、密度が926〜960Kg/m3であるエチレンと炭素数4〜12のα-オレフィンとの共重合体;10〜85重量部と、
(iii)メルトフローレートが0.01〜20g/10分であり、密度が940〜970Kg/m3である高密度ポリエチレン;5〜40重量部と、
(iv)密度が910から930Kg/m3の高圧法低密度ポリエチレン;5〜40重量部、(ただし(i)と(ii)と(iii)および(iv)の合計は100重量部である)
からなる樹脂層(α)と、
ポリアミド樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体から選ばれる樹脂層(β)
を有する積層樹脂1軸延伸フィルムであって、樹脂層(α)の厚みがフィルム全体に対し99〜1%である樹脂積層1軸延伸フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂積層1軸延伸フィルムからなる包装材料。

【公開番号】特開2006−150624(P2006−150624A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−340743(P2004−340743)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】