説明

空圧装置

【課題】滞留部よりもロッドの先端側に位置する第2ロッドパッキンからの磨耗粉の発生を抑制するとともに、消費電力を低減すること。
【解決手段】空圧装置11は、エアシリンダ13と、エアシリンダ13外に設けられたエジェクタ38とを備えている。そして、シリンダハウジング16の端壁部15には、ロッド20が貫通している。ロッド20が挿通されている端壁部15の貫通孔21には、第1ロッドパッキン23、滞留部26、及び第2ロッドパッキン29が、第2シリンダ室19側から順に設けられている。滞留部26内のエアは、エジェクタ38によって吸引されるようになっている。そして、エジェクタ38が滞留部26内のエアを吸引しているとき、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31には、ロッド20に対して離間する方向の力が作用して、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31はロッド20から離間する方向に変形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、クリーンルーム用として好適な空圧装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造工場等では、塵や埃等が極端に少ないクリーンルーム内において、シリコンウェハやガラス基板等の各プロセス処理が行なわれている。そして、その各種作業を行うために、クリーンルーム内では、エアシリンダを備えた空圧装置が用いられることがある。そして、この場合に、エアシリンダに対して給排されるエアがクリーンルーム内に放出されるとクリーンルーム内の清浄度が低下してしまうため、クリーンルーム内で用いられるエアシリンダには、エア漏れの少ない構造が採用されている。例えば、このようなエアシリンダとしては、シリンダチューブの開口端部を閉塞するカバー部材にロッドが貫通されており、そのロッドとカバー部材との間にロッドパッキンを設けるとともに、カバー部材に対して、ロッドパッキンから漏れたエアが一時的に滞留する滞留部を設けたものが知られている。そのうえで、滞留部はエアシリンダ外に設けられた吸引手段としての真空ポンプと接続され、真空ポンプが滞留部内のエアを吸引してクリーンルーム外に放出する構成になっていた。
【0003】
また、クリーンルーム内で用いられるエアシリンダの一例として、シリンダチューブの開口を閉塞するカバー部材に、シリンダ室側から順に、第1のOリング、第3環状溝、第2のOリングが設けられたシリンダが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。そして、特許文献1に記載のシリンダでは、第1のOリングでシールしきれなかったオイルを第3環状溝において貯留するとともに、第3環状溝内に貯留されたオイルがシリンダ外に漏洩することを第2のOリングによって抑制する。
【特許文献1】実開昭60−122005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の空圧装置においては、エアシリンダからクリーンルーム内へのエア漏れを抑制するには、装置の稼動中、真空ポンプを継続して動作させて滞留部内を吸引し続ける必要があるため、消費電力が多くなってしまっていた。また、特許文献1に記載のシリンダでは、第2のOリングは第3環状溝よりもピストンロッドの先端側に位置しているため、ピストンロッドが第2のOリングに対して摺動することにより第2のOリングから磨耗粉が生じ、その磨耗粉がクリーンルーム内に放出されてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、滞留部よりもロッドの先端側に位置する第2ロッドパッキンからの磨耗粉の発生を抑制するとともに、消費電力を低減することができる空圧装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、シリンダハウジング内にピストン及びロッドからなる可動部を移動可能に収容するとともに前記ロッドが前記シリンダハウジングの端壁部を貫通したエアシリンダと、前記エアシリンダ外に設けられた吸引手段と、を備えた空圧装置において、前記ロッドが挿通されている前記端壁部の貫通孔には、前記ロッド及び前記端壁部の間をシールする第1ロッドパッキンと、前記第1ロッドパッキンよりも前記ロッドの先端側に位置し、前記第1ロッドパッキンから漏れたエアが流れ込む滞留部と、前記滞留部よりも前記ロッドの先端側に位置し、前記ロッド及び前記端壁部の間をシールする第2ロッドパッキンと、が設けられ、前記シリンダハウジングには、前記エアシリンダ外に開口するとともに前記滞留部と連通するポートが設けられ、前記第2ロッドパッキンは、先端が前記滞留部側を向いた状態で前記ロッドと摺接するリップ部を有し、前記吸引手段は、前記可動部が停止している間は前記滞留部内を吸引せず、前記可動部が移動している間は前記ポートを介して前記滞留部内のエアを吸引するように構成され、前記リップ部は、前記吸引手段による前記滞留部内のエアの吸引に伴って、前記ロッドに対して離間する方向に引き付けられることを要旨とする。
【0007】
この発明では、可動部の停止中、第1ロッドパッキンはロッドと端壁部との間をシールしてハウジング内からのエア漏れを抑制し、第2ロッドパッキンはロッドと端壁部との間をシールして滞留部内からのエア漏れを抑制する。そのため、可動部の停止中には、吸引手段を動作させなくても、滞留部内のエアがエアシリンダの外部に漏れることを抑制できる。したがって、可動部が停止している間、吸引手段による滞留部内の吸引を行わなくともよい分、空圧装置が消費する電力を低減できる。
【0008】
また、可動部が移動すると、吸引手段は動作し、滞留部内を負圧にしてエアを吸引する。すると、第2ロッドパッキンのリップ部はロッドに対して離間する方向に引き付けられ、第2ロッドパッキンのリップ部のロッドに対する接触圧は小さくなり、それに伴って、第2ロッドパッキンのリップ部とロッドとの間での摩擦も小さくなる。その結果、第2ロッドパッキンから磨耗粉が生じることを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記吸引手段は、前記エアシリンダからの排気により動作するエジェクタであり、前記ポートには前記エジェクタの吸引ポートが接続されていることを要旨とする。
【0010】
この発明では、シリンダハウジング内からエアが排出されたとき、エジェクタは動作して、滞留部に負圧を発生させることで、滞留部のエアをポートを介して吸引し、吸引したエアをクリーンルームの外部に排出する。そして、この場合において、エジェクタが滞留部のエアを吸引するときの駆動源は、シリンダハウジングから排出されたエアであるため、電力を消費することはない。したがって、真空ポンプを用いて滞留部のエアを吸引する構成に比べて、消費電力を低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、滞留部よりもロッドの先端側に位置する第2ロッドパッキンからの磨耗粉の発生を抑制するとともに、消費電力を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、クリーンルーム内に設けられる空圧装置11は、流体供給源としてのコンプレッサ12からのエア(空気)によって駆動されるエアシリンダ13を備えている。エアシリンダ13には、両端部が端壁部14,15によって閉塞されてなるシリンダハウジング16の内部にピストン17が設けられ、シリンダハウジング16内はピストン17によって第1シリンダ室18と第2シリンダ室19とに区画されている。
【0013】
そして、ピストン17には、一体にロッド(ピストンロッド)20が設けられている。ロッド20はシリンダハウジング16の一方の端壁部15を貫通するとともに、先端部20aがシリンダハウジング16の外部に延在している。第1シリンダ室18にエアが供給されるとロッド20がシリンダハウジング16から突出する側に可動部としてのピストン17及びロッド20は移動するとともに、第2シリンダ室19にエアが供給されるとロッド20がシリンダハウジング16に没入する側にピストン17及びロッド20は移動する。なお、以下では、ロッド20がシリンダハウジング16から突出する方向を突出方向、ロッド20がシリンダハウジング16に没入する方向を没入方向と述べる。
【0014】
端壁部15には、直線状に延びるとともにロッド20が挿通されている貫通孔21が設けられている。貫通孔21には、その第2シリンダ室19側寄りに、ロッド20の外周を取り囲むように形成された円環状の第1収容凹部22が設けられている。そして、第1収容凹部22には、貫通孔21にロッド20が挿通された状態において、端壁部15とロッド20との間をシールする円環状の第1ロッドパッキン23が収容されている。
【0015】
第1ロッドパッキン23はゴム等の弾性体を材料として成形されたものであるとともに、第2シリンダ室19内のエアが貫通孔21を介してエアシリンダ13外に漏れることを抑制している。第1ロッドパッキン23は、その径方向の断面形状が略V字状に形成されることでその内周側及び外周側が外周側リップ部24及び内周側リップ部25となっている。外周側リップ部24及び内周側リップ部25は、傾斜して、その先端部24a,25aが第2シリンダ室19側を向いている。すなわち、外周側リップ部24及び内周側リップ部25の先端部24a,25aは、第2シリンダ室19からエアが漏れ出す際の流れの方向と反対の方向を向いており、第2シリンダ室19からエアが漏れようとするとき外周側リップ部24及び内周側リップ部25は互いに離間するように変形する。そして、外周側リップ部24はその先端部24aが第1収容凹部22の底部に当接している。内周側リップ部25はその先端部25aがロッド20の外周面20bに摺接している。
【0016】
また、貫通孔21には、その第1ロッドパッキン23よりもロッド20の先端側に、シリンダハウジング16の外周側(径方向側)に凹む円環形状の滞留部26が形成されている。滞留部26は、第1ロッドパッキン23から漏れたエアを一時的に貯留可能に構成されている。そして、滞留部26は、シリンダハウジング16の外周面16aからシリンダハウジング16の径方向に延びて滞留部26に至るポート27によって外部と連通している。また、貫通孔21において、滞留部26よりもロッド20の先端側には、ロッド20の外周を取り囲むように形成された円環状の第2収容凹部28が設けられている。
【0017】
第2収容凹部28には、貫通孔21にロッド20が挿通された状態において、端壁部15とロッド20との間をシールする円環状の第2ロッドパッキン29が収容されている。第2ロッドパッキン29は、ゴム等の弾性体を材料として成形されている。第2ロッドパッキン29は、その径方向の断面形状が略V字状に形成されるとともに、その内周側及び外周側が外周側リップ部30及び内周側リップ部31となっている。外周側リップ部30及び内周側リップ部31は、傾斜して、その先端部が滞留部26側を向いている。すなわち、外周側リップ部30及び内周側リップ部31の先端部30a,31aは、滞留部26からエアが漏れ出す際の流れの方向と反対の方向を向いており、滞留部26からエアが漏れようとするとき外周側リップ部30及び内周側リップ部31は互いに離間するように変形する。そして、外周側リップ部30はその先端部30aが第2収容凹部28の底部に当接している。内周側リップ部31はその先端部31aがロッド20の外周面20bに摺接している。
【0018】
内周側リップ部31は、先端部31a側ほど肉厚が薄くなるように形成されているとともに、内周側リップ部31の先端部31aの肉厚は、外周側リップ部30の先端部30aの肉厚よりも薄く形成されている。そのため、ロッド20の外周面20bに対する第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31の接触圧は、第1ロッドパッキン23の内周側リップ部25の接触圧よりも小さくなっている。そして、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31は、第1ロッドパッキン23の内周側リップ部25に比べて変形し易くなっている。よって、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31は、滞留部26が負圧になると、ロッド20に対して離間する方向に変形する。
【0019】
一方、エアシリンダ13とコンプレッサ12との間には、給排用配管32及び2位置5ポート型の電磁弁33が設けられている。給排用配管32は、出口側端部34aがエアシリンダ13の第1シリンダ室18に接続されている第1配管34と、出口側端部35aがエアシリンダ13の第2シリンダ室19に接続されている第2配管35とから構成されている。そして、第1配管34は入口側端部34bが電磁弁33のAポートに接続され、第2配管35は入口側端部35bが電磁弁33のBポートに接続されている。
【0020】
電磁弁33には、そのPポートにコンプレッサ12が接続されるとともに、R1ポート及びR2ポートは大気開放されている。電磁弁33は、制御装置36から第1信号が入力されると、R1ポートとBポートとを連通するとともにPポートとAポートとを連通し、さらに、R2ポートを非連通にする。そして、この状態において、コンプレッサ12から吐出されたエアは、第1配管34に供給されるようになる。また、電磁弁33は、制御装置36から第2信号が入力されると、R2ポートとAポートとを連通するとともにPポートとBポートとを連通し、さらに、R1ポートを非連通にする。そして、この状態において、コンプレッサ12から吐出されたエアは、第2配管35に供給されるようになる。
【0021】
一方、エアシリンダ13のポート27には排出配管37の入口側端部37aが接続されている。排出配管37は、クリームルーム外に向けて延長されて、その出口部37bがクリーンルーム外に延在している。排出配管37には、その途中部分に、吸引手段としてのエジェクタ38が設けられている。
【0022】
エジェクタ38は、供給ポート38aにエアが供給されると動作して吸引ポート38bから吸引を行う装置である。エジェクタ38には、吸引ポート38b及び排出ポート38cのそれぞれに排出配管37が接続されている。エジェクタ38は、エジェクタ38よりも上流側(エアシリンダ側)の排出配管37及びポート27を介して滞留部26内のエアを吸引し、エジェクタ38よりも下流側の排出配管37へ向けてエアを吐出するように構成されている。また、エジェクタ38の供給ポート38aには、エアシリンダ13から排出されたエアが輸送用配管39を介して供給されるようになっている。
【0023】
輸送用配管39は、第1配管34から分岐する第1輸送配管40と、第2配管35から分岐するとともに第1輸送配管40と合流する第2輸送配管41と、第1輸送配管40及び第2輸送配管41の合流部から延びる合流配管42とによって構成されている。合流配管42はその出口部42aがエジェクタ38の供給ポート38aに接続されている。
【0024】
そして、第1輸送配管40と第1配管34との分岐部には、第1の三方弁としての第1急速排気弁43が設けられている。第1急速排気弁43は、第1急速排気弁43と電磁弁33との間の配管P1内の圧力が第1急速排気弁43と電磁弁33との間の配管P2内の圧力よりも高くなった場合には、第1配管34と第1輸送配管40とを非連通状態にする。さらに、この場合に、第1急速排気弁43は、配管P1と、配管P2とを連通状態にする。また、第1急速排気弁43は、配管P2内の圧力が配管P1内の圧力よりも高くなった場合には、配管P1と第1輸送配管40とを連通状態にして、配管P1と配管P2とを非連通状態にする。すなわち、第1急速排気弁43は、第1シリンダ室18に向けてエアが供給されたときには、エアが第1配管34を介して第1シリンダ室18に至る経路に切り替えるように構成されている。また、第1急速排気弁43は、第1シリンダ室18からエアが排出されたときには、エアが第1配管34(配管P2)及び第1輸送配管40に流れる経路に切り替えるように構成されている。
【0025】
また、第2輸送配管41と第2配管35との分岐部には、第2の三方弁としての第2急速排気弁44が設けられている。第2急速排気弁44は、第2急速排気弁44と電磁弁33との間の配管P3内の圧力が第2急速排気弁44とエアシリンダ13との間の配管P4内の圧力よりも高い場合には、第2配管35と第2輸送配管41とを非連通状態にする。そして、さらに、この場合に、第2急速排気弁44は、配管P3と配管P4とを連通状態にする。また、第2急速排気弁44は、配管P4内の圧力が配管P3内の圧力よりも高い場合には、配管P4と第2輸送配管41とを連通状態にして、配管P3と配管P4とを非連通状態にする。すなわち、第2急速排気弁44は、第2シリンダ室19に向けてエアが供給されたときには、エアが第2配管35を介して第2シリンダ室19に至る経路に切り替えるように構成されている。また、第2急速排気弁44は、第2シリンダ室19からエアが排出されたときには、エアが第2配管35(配管P4)及び第2輸送配管41に流れる経路に切り替えるように構成されている。
【0026】
また、第1輸送配管40と第2輸送配管41との合流部には、第3の三方弁としてのシャトル弁45が設けられている。シャトル弁45は、第2輸送配管41内の圧力よりも第1輸送配管40内の圧力が高い場合には、第1輸送配管40と合流配管42とを連通状態にして、第2輸送配管41と合流配管42とを非連通状態にする。また、シャトル弁45は、第1輸送配管40内の圧力よりも第2輸送配管41内の圧力が高い場合には、第1輸送配管40と合流配管42とを非連通状態にして、第2輸送配管41と合流配管42とを連通状態にする。すなわち、シャトル弁45は、第1輸送配管40にエアが流れ込んだときには、エアが第1輸送配管40から合流配管42を経由してエジェクタ38に至る経路に切り替える。また、シャトル弁45は、第2輸送配管41にエアが流れ込んだときには、エアが第2輸送配管41から合流配管42を経由してエジェクタ38に至る経路に切り替える。切り替え手段は、第1急速排気弁43、第2急速排気弁44、及びシャトル弁45によって構成されている。
【0027】
そして、第1急速排気弁43とシャトル弁45との間の第1輸送配管40には、第1ニードル弁(スピードコントローラ)46が設けられている。第1ニードル弁46は、第1輸送配管40を流れるエアの流量を調整する機能を有している。さらに、第2急速排気弁44とシャトル弁45との間の第2輸送配管41には、第2ニードル弁(スピードコントローラ)47が設けられている。第2ニードル弁47は、第2輸送配管41を流れるエアの流量を調整する機能を有している。
【0028】
次に、前記のように構成された空圧装置11の作用について説明する。
図1に示す状態において、エアシリンダ13のロッド20は最も没入しており、その状態で、ピストン17及びロッド20は停止している。この状態から、空圧装置11は、制御装置36から第1信号を電磁弁33に入力するとともにコンプレッサ12を稼動する。すると、コンプレッサ12からエアが吐出され、そのエアは第1配管34を介して第1シリンダ室18に供給される。そして、図2に示すように、ピストン17はエア圧を受け、図2の実線で示すように、突出方向へピストン17及びロッド20は移動する。すると、第2シリンダ室19からエアが排出され、第2シリンダ室19内から排出されたエアは、配管P4から第2輸送配管41、及び合流配管42を流れて、エジェクタ38の供給ポート38aに至る。したがって、ピストン17及びロッド20が突出方向に移動するとき、第2シリンダ室19から排出されたエアがエジェクタ38の供給ポート38aに供給されてエジェクタ38は滞留部26内の吸引動作を行い、滞留部26内を負圧にする。滞留部26が負圧であるとき、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31は、ロッド20に対して離間する方向に引き付けられる。すると、図2に示すように、内周側リップ部31は、ロッド20の外周面20bから離間する方向に変形してロッド20に対して非接触状態となる。
【0029】
そして、図3に示すように、ロッド20が最も突出した位置にまでピストン17及びロッド20が達すると、空圧装置11は、一旦、コンプレッサ12を停止させて、ロッド20及びピストン17を停止させる。この状態では、エジェクタ38にエアが供給されなくなることで、エジェクタ38は動作しなくなるため、滞留部26内は大気圧に戻る。すると、図3に示すように、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31は、ロッド20の外周面20bと摺接する状態に戻り滞留部26内のエアが漏れることを抑制する。
【0030】
その後、空圧装置11は、制御装置36から第2信号を電磁弁33に入力するとともにコンプレッサ12を稼動すると、コンプレッサ12からエアが吐出される。すると、エアは第2配管35を介して第2シリンダ室19に供給される。そして、図4に示すように、ピストン17はエア圧を受け、図4の実線で示すように、没入方向にピストン17及びロッド20は移動する。このとき、第1シリンダ室18内のエアは、配管P2から第1輸送配管40、及び合流配管42を流れてエジェクタ38の供給ポート38aに至る。したがって、ピストン17及びロッド20が没入方向に移動するとき、第1シリンダ室18から排気されたエアがエジェクタ38の供給ポート38aに供給されることでエジェクタ38は滞留部26内を吸引する。すると、滞留部26は負圧になり、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31は、ロッド20から離間する方向に引き付けられる。すると、図4に示すように、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31は、ロッド20の外周面20bから離間する方向に変形して、ロッド20と非接触状態となる。したがって、ロッド20が突出方向又は没入方向に移動している間、ロッド20は第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31に対して摺動することはないため、ロッド20と第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31との間に摩擦が生じることはなく、第2ロッドパッキン29から磨耗粉が発生することを抑制できる。
【0031】
本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)空圧装置11は、エアシリンダ13と、エアシリンダ13外に設けられたエジェクタ38とを備えている。そして、シリンダハウジング16の端壁部15には、ロッド20が貫通している。ロッド20が挿通されている端壁部15の貫通孔21には、第1ロッドパッキン23、滞留部26、及び第2ロッドパッキン29が、第2シリンダ室19側から順に設けられている。そのため、ロッド20の停止中においては、エジェクタ38を動作させて滞留部26内のエアを吸引しなくとも、第2ロッドパッキン29によって滞留部26内のエアがエアシリンダ13の外部に漏れることを抑制できる。
【0032】
また、空圧装置11の稼動中、滞留部26内のエアを継続して吸引しなくともよい分、空圧装置11が消費する電力を低減できる。
エジェクタ38が滞留部26内のエアを吸引しているとき、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31には、ロッド20に対して離間する方向の力が作用する。したがって、ピストン17及びロッド20が移動しているとき、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31のロッド20に対する接触圧は小さくなり、それに伴って、第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31とロッド20との間での摩擦も小さくなる。その結果、第2ロッドパッキン29から磨耗粉が生じることを抑制できる。
【0033】
(2)エジェクタ38の供給ポート38aには、輸送用配管39によって、エアシリンダ13の第1シリンダ室18及び第2シリンダ室19から排出されたエアが供給されるように構成されている。そして、第1急速排気弁43及び第2急速排気弁44によって、第1シリンダ室18及び第2シリンダ室19から排出されたエアをエジェクタ38の供給ポート38aに供給するか否かが切り替えられる。そのため、エアシリンダ13からエアが排出されるとエジェクタ38は作動する。したがって、滞留部26内のエアを吸引するときに電力を消費することはないため、真空ポンプを用いて滞留部26内のエアを吸引する場合に比べて消費電力を低減することができる。
【0034】
(3)シリンダハウジング16の内部は、ピストン17によって第1シリンダ室18及び第2シリンダ室19に区画されている。そして、給排用配管32は、第1シリンダ室18にエアを給排するための第1配管34と、第2シリンダ室19にエアを給排するための第2配管35とから構成されている。第1配管34の途中部分からは第1輸送配管40が分岐するとともに、第2配管35の途中部分からは第2輸送配管41が分岐し、第1輸送配管40と第2輸送配管41とは合流する。そして、第1輸送配管40と第2輸送配管41との合流部からは、合流配管42が延びてエジェクタ38の供給ポート38aに接続されている。したがって、第1シリンダ室18及び第2シリンダ室19のどちらからエアが排出されても、その排出されたエアをエジェクタ38の駆動源として用いることができるようになる。
【0035】
実施の形態は、前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 吸引手段の構成を変更してもよい。例えば、図5に示すように、排出配管37に、エジェクタ38の代わりに真空ポンプ50を設けるとともに輸送用配管39を省略し、真空ポンプ50よりもエアシリンダ13側の排出配管37にタンク51、及び開閉弁52を順に設ける。真空ポンプ50は、タンク51内を真空引きして負圧にするように構成されている。そして、ロッド20及びピストン17が移動するときには、制御装置36が開閉弁52を開いて、タンク51が排出配管37及びポート27を介して滞留部26内のエアを吸引するように構成されている。また、タンク51には、タンク51内の圧力を検出する図示しない圧力センサが設けられている。そして、圧力センサの検出結果に基づいてタンク51内の圧力が所定の負圧に達したと制御装置36が判断すると、制御装置36は、真空ポンプ50に対する電力の供給を停止して、真空ポンプ50による真空引きを休止させる。また、制御装置36は、タンク51内の圧力が所定の負圧よりも大きくなったと判断すると、真空ポンプ50に対して電力を供給して、真空ポンプ50による真空引きを再開させる。したがって、真空ポンプ50が稼動するのは、タンク51内の圧力が所定の負圧よりも大きくなってから、再び、タンク51内の圧力が所定の負圧に戻るまでの所定期間であり、空圧装置11の稼動中、真空ポンプ50は間欠運転される。したがって、真空ポンプ50を継続して運転する場合に比べて、真空ポンプ50が消費する電力を低減することができる。
【0036】
○ 第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31の形状を変更してもよい。第2ロッドパッキン29の内周側リップ部31は、滞留部26内が吸引されて負圧になったときにロッド20に対して離間する方向に引き付けられる形状であればよく、第2ロッドパッキン29の径方向断面においてその厚みが一定な形状に変更してもよい。すなわち、滞留部26内が吸引されて負圧になったときにロッド20に対して離間する方向に引き付けられる内周側リップ部31を有するのならば、第1ロッドパッキン23と同じ構成のものを第2ロッドパッキン29として用いてもよい。また、第2ロッドパッキン29は、例えば、径方向断面が略Y字形状のものでもよい。
【0037】
○ 第1ロッドパッキン23の形状は、径方向断面が略V字形状のものに限らない。例えば、第1ロッドパッキン23の形状は、径方向断面が、略Y字形状のものでもよい。また、第1ロッドパッキン23として、径方向断面が略円形状である、いわゆるOリングを用いてもよい。
【0038】
○ シリンダハウジング16の構成を変更してもよい。シリンダハウジング16は、一つの部材から構成されていなくともよく、例えば、シリンダチューブと、シリンダチューブの開口端部を閉塞するカバー部材とによってシリンダハウジング16を構成してもよい。そして、この場合、シリンダハウジング16の端壁部15は、カバー部材によって構成され、ロッド20はカバー部材を貫通するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】空圧装置を示す構成図。
【図2】突出方向にピストン及びロッドが移動している状態における空圧装置を示す構成図。
【図3】ピストン及びロッドが停止している状態における空圧装置を示す構成図。
【図4】没入方向にピストン及びロッドが移動している状態における空圧装置を示す構成図。
【図5】別の実施形態における空圧装置を示す構成図。
【符号の説明】
【0040】
11…空圧装置、13…エアシリンダ、15…端壁部、16…シリンダハウジング、18…第1シリンダ室、19…第2シリンダ室、20…ロッド、21…貫通孔、23…第1ロッドパッキン、26…滞留部、27…ポート、29…第2ロッドパッキン、32…給排用配管、37…排出配管、38…吸引手段としてのエジェクタ、50…吸引手段としての真空ポンプ、51…吸引手段としてのタンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダハウジング内にピストン及びロッドからなる可動部を移動可能に収容するとともに前記ロッドが前記シリンダハウジングの端壁部を貫通したエアシリンダと、前記エアシリンダ外に設けられた吸引手段と、を備えた空圧装置において、
前記ロッドが挿通されている前記端壁部の貫通孔には、前記ロッド及び前記端壁部の間をシールする第1ロッドパッキンと、前記第1ロッドパッキンよりも前記ロッドの先端側に位置し、前記第1ロッドパッキンから漏れたエアが流れ込む滞留部と、前記滞留部よりも前記ロッドの先端側に位置し、前記ロッド及び前記端壁部の間をシールする第2ロッドパッキンと、が設けられ、
前記シリンダハウジングには、前記エアシリンダ外に開口するとともに前記滞留部と連通するポートが設けられ、
前記第2ロッドパッキンは、先端が前記滞留部側を向いた状態で前記ロッドと摺接するリップ部を有し、
前記吸引手段は、前記可動部が停止している間は前記滞留部内を吸引せず、前記可動部が移動している間は前記ポートを介して前記滞留部内のエアを吸引するように構成され、
前記リップ部は、前記吸引手段による前記滞留部内のエアの吸引に伴って、前記ロッドに対して離間する方向に引き付けられることを特徴とする空圧装置。
【請求項2】
前記吸引手段は、前記エアシリンダからの排気により動作するエジェクタであり、
前記ポートには前記エジェクタの吸引ポートが接続されている請求項1に記載の空圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−144828(P2010−144828A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−322599(P2008−322599)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】