説明

空気ばね装置

【課題】当接部が支持台部から離反するのを抑えること。
【解決手段】上部材2、下部材3、およびこれらの両部材に両開口端部4a、4bが各別に連結されて封止された筒状膜部材4を有するダイヤフラム5を備え、上部材2および下部材3にはそれぞれ、ダイヤフラム5内が排気された排気状態で互いに摺動可能に当接する当接部11、18が各別に備えられ、上部材2および下部材3の少なくとも一方3は、当接部11が樹脂材料で形成されるとともに、該当接部11を軸線O方向に沿ったダイヤフラム5の外側から支持する支持台部12と、該当接部11に設けられ、支持台部12に設けられた被係合部21A、21Bに係合することで、支持台部12に対する該当接部11の軸線O方向および径方向に沿った相対的な各移動を規制する係合部22A、22Bと、を備えている空気ばね装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両等の車体と台車との間に配設される空気ばね装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の空気ばね装置として、例えば下記特許文献1に記載された構成が知られている。該空気ばね装置は、上部材、下部材、およびこれらの両部材に両開口端部が各別に連結されて封止された筒状膜部材を有するダイヤフラムを備えている。また上部材の下面には、摺動面が形成されるとともに、下部材には、ダイヤフラム内が排気された排気状態で上部材の摺動面が当接する滑り板と、該滑り板を下方から支持する支持台部と、が備えられている。滑り板は、摺動面との間の摩擦係数を低減させるために樹脂材料で形成されるとともに、支持台部の上面に接着により固定されている。
該空気ばね装置では、前記排気状態であっても、摺動面と滑り板とが互いに当接した状態で摺動することで、上部材と下部材とを径方向に沿って相対的に移動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−127350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の空気ばね装置では、摺動面と滑り板とが互いに当接した状態で摺動したときに、滑り板が支持台部から離反して剥がれ易いという問題がある。
なお、滑り板の支持台部からの剥がれを抑えるために、滑り板と支持台部とを同一の樹脂材料で一体に形成することも考えられるが、この場合、支持台部を金属材料で形成する場合に比べて、強度が弱くなったり、クリープが生じ易くなったり等、下部材の耐久性に影響が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、当接部が支持台部から離反するのを抑えることができる空気ばね装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る空気ばね装置は、上部材、下部材、およびこれらの両部材に両開口端部が各別に連結されて封止された筒状膜部材を有するダイヤフラムを備え、前記上部材および前記下部材にはそれぞれ、前記ダイヤフラム内が排気された排気状態で互いに摺動可能に当接する当接部が各別に備えられた空気ばね装置であって、前記上部材および前記下部材の少なくとも一方は、前記当接部が樹脂材料で形成されるとともに、該当接部を軸線方向に沿ったダイヤフラムの外側から支持する支持台部と、該当接部に設けられ、前記支持台部に設けられた被係合部に係合することで、前記支持台部に対する該当接部の軸線方向および径方向に沿った相対的な各移動を規制する係合部と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、支持台部により支持された当接部に前記係合部が設けられているので、該係合部が被係合部に係合することにより、支持台部に対する当接部の軸線方向および径方向に沿った相対的な各移動を規制することが可能になり、両当接部が互いに当接した状態で摺動したときに、支持台部により支持された樹脂材料からなる当接部が支持台部から離反するのを抑えることができる。
【0008】
またこのように、当接部に係合部を設けることにより、当接部が支持台部から離反するのを抑えつつ、当接部と支持台部とを別体で形成することができるので、例えば支持台部を金属材料で形成すること等により、下部材の耐久性を確保し易くすることができる。
【0009】
また、上部材および下部材の少なくとも一方の当接部を樹脂材料で形成しているので、該当接部を形成する樹脂材料として、例えば支持台部を形成する材料よりも摩擦係数が低い材料を採用すること等により、両当接部の間の摩擦係数を効果的に低減させることができる。
【0010】
また、前記係合部は、該係合部が設けられた前記当接部と同一の樹脂材料で該当接部に一体に設けられていてもよい。
【0011】
この場合、係合部が、該係合部が設けられた当接部と同一の樹脂材料で該当接部に一体に設けられているので、これらの係合部と当接部との連結体を、例えば射出成形などにより一体成形することが可能になり、容易に形成することができる。
【0012】
またこのように、連結体を射出成形により一体成形することができるので、連結体を成形するときに、例えば、金型内に支持台部を配置した状態で、該金型内に樹脂材料を射出して連結体を成形するインサート成形を採用すること等により、連結体を形成しながら、係合部を被係合部に係合させることが可能になり、当該空気ばね装置の製造作業の簡便化を図ることができる。
【0013】
なお、前述のようにインサート成形により連結体を成形した場合、連結体を支持台部に密着させることが可能になり、当接部が支持台部から離反するのを効果的に抑えることができる。
【0014】
また、前記被係合部は、前記支持台部の外周面に溝状に形成され、前記係合部は、前記当接部の外周縁から軸線方向に沿ったダイヤフラムの外側に向けて延設されて前記支持台部に外嵌する筒状部と、該筒状部の内周面に突設されて前記被係合部内に配置された突起部と、を備えていてもよい。
【0015】
この場合、係合部の筒状部が、支持台部に外嵌しているので、当接部と支持台部との径方向に沿った相対的な移動を、筒状部の内周面と支持台部の外周面とが当接することにより規制することができる。
また係合部の突起部が、被係合部内に配置されているので、当接部と支持台部との軸線方向に沿った相対的な移動を、突起部と被係合部の内面とが当接することにより規制することができる。
【0016】
ここで筒状部が、当接部の外周縁から軸線方向に沿ったダイヤフラムの外側に向けて延設されているので、前述のように、突起部と被係合部の内面との当接により当接部と支持台部との軸線方向に沿った相対的な移動が規制されることで、当接部において外周縁を含む外周側部分が、軸線方向に沿ったダイヤフラムの内側に向けて反り返るのを抑制することができる。
なお、両当接部が互いに当接した状態で摺動を繰り返すことで、樹脂材料で形成された当接部の前記外周側部分が反り返り易くなるため、前述の作用効果は顕著に奏功されることとなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る空気ばね装置によれば、当接部が支持台部から離反するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る空気ばね装置の縦断面図である。
【図2】図1に示す空気ばね装置を構成する板状台部の上面図である。
【図3】図1に示す空気ばね装置において、ダイヤフラム内が排気された排気状態の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る空気ばね装置を説明する。
図1に示すように、空気ばね装置1は、上面板(上部材)2、下面板(下部材)3、およびこれらの面板2、3に両開口端部4a、4bが連結されて封止されるとともに両開口端部4a、4bの間に位置する中間部分4cが径方向の外側に向けて膨出された筒状膜部材4を備えるダイヤフラム5と、該ダイヤフラム5の下面板3に連結された補助弾性体6と、を備えている。該空気ばね装置1は、例えば鉄道車両等の図示されない車体と台車との間に配設される。
【0020】
ここで補助弾性体6は筒状に形成されており、上面板2、下面板3、筒状膜部材4および補助弾性体6の各中心軸線は、共通軸上に位置している。
以下では、この共通軸を軸線Oといい、軸線O方向に沿って上面板2側を上側といい、下面板3側を下側といい、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
補助弾性体6は、例えば空気などの気体が内部に充填されたダイヤフラム5よりも軸線O方向および径方向の各ばね定数が高くなっており、本実施形態では、環状の下基板7および上基板8と、これら両基板7、8の間に軸線O方向に交互に配置された環状のゴム板9および金属板10と、を備える積層ゴムにより構成されている。下基板7、上基板8、ゴム板9および金属板10は、軸線Oと同軸に配置されるとともに、下基板7、上基板8および金属板10と、ゴム板9と、は互いに加硫接着されている。
【0022】
また本実施形態では、補助弾性体6を構成する各部材の外径のうち、上基板8の外径が最大になっており、上基板8の外周縁部は径方向の外側に突出している。
また、補助弾性体6を構成する各部材の内径のうち、下基板7の内径が最小になっており、下基板7の内周縁部は径方向の内側に突出している。
【0023】
そして下基板7内には、内部が軸線O方向の両側に向けて開口して補助弾性体6内に連通する連通筒部7aが嵌合されている。該連通筒部7aにおいて下基板7から下方に突出する部分には、例えば、ダイヤフラム5内に空気などの気体を給排する図示しない気体供給手段や補助タンクなどが気密に接続される。
【0024】
ダイヤフラム5の下面板3は、樹脂材料で形成された樹脂板部(当接部)11と、該樹脂板部11を下方(軸線方向に沿ったダイヤフラムの外側)から支持する支持台部12と、を備えている。これらの樹脂板部11および支持台部12は、軸線Oと同軸に配設されている。
支持台部12は、例えば金属材料などで形成されており、本実施形態では、互いに軸線Oと同軸とされた大径部分12aと小径部分12bとが、軸線O方向に沿って下側(外側)からこの順に連設されてなる。支持台部12の大径部分12aの外径は、補助弾性体6の上基板8の外径よりも小さくなっている。
【0025】
また支持台部12は、補助弾性体6の上基板8に固定ボルト13により固定され、これにより、下面板3と補助弾性体6とが気密に連結されて、下面板3と補助弾性体6との間を通した補助弾性体6内と外部との連通が遮断されている。
【0026】
なお支持台部12には、固定ボルト13が挿通されるボルト孔14が複数形成されており、これらのボルト孔14は、軸線O方向に沿って支持台部12を貫通するとともに、図2に示すように、周方向に間隔をあけて複数配設されている。複数のボルト孔14は、軸線O方向に沿って上方から見た上面視において、軸線Oを中心とする同一円上に周方向に同等の間隔をあけて配設されている。
【0027】
また図1に示すように、支持台部12には、補助弾性体6内とダイヤフラム5内とを連通する給排孔15が、軸線O方向に沿って貫設されている。該給排孔15は、軸線Oと同軸に配置されており、補助弾性体6内を通して連通筒部7a内に連通している。
なお図示の例では、給排孔15内には雌ねじ部15aが形成されており、この雌ねじ部15aには、下面板3を上方に吊り上げる図示しない吊上げ装置に備えられた吊りボルトが螺着可能となっている。
【0028】
ここで、補助弾性体6の上基板8において支持台部12よりも径方向の外側に位置する外周縁部は、環状のゴム座16により上方および径方向の外側から被覆されている。ゴム座16の内周縁は、下面板3の支持台部12と補助弾性体6の上基板8との間に挟持されている。
【0029】
樹脂板部11の下面は、支持台部12の上面に面接触している。また樹脂板部11の外径は、支持台部12の大径部分12aの外径と同等であるとともに、樹脂板部11は、支持台部12よりも軸線O方向に薄くなっている。また樹脂板部11において、支持台部12のボルト孔14に対応する位置には、該ボルト孔14と同軸で、かつ前記上面視において同形同大の挿通孔11aが形成されている。さらに樹脂板部11において、支持台部12の給排孔15に対応する位置には、該給排孔15よりも大径で給排孔15とダイヤフラム5内とを連通する連通孔11bが形成されている。
【0030】
なお樹脂板部11を形成する樹脂材料は、支持台部12を形成する材料よりも摩擦係数が低い材料が好ましい。該樹脂材料としては例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などが挙げられ、好ましくは、ポリエチレンやポリアセタール等が挙げられる。
【0031】
上面板2は、外径が筒状膜部材4の外径よりも大きい本体板部17と、該本体板部17における径方向の中央部から下方(軸線方向に沿ったダイヤフラムの内側)に向けて張り出された張出し部(当接部)18と、を備えており、これらの本体板部17および張出し部18は、軸線Oと同軸に配設されている。
【0032】
張出し部18は、有底筒状に形成されるとともに軸線O方向に下面板3の樹脂板部11と対向しており、張出し部18の外径は、樹脂板部11の外径と同等になっている。
また、本体板部17において張出し部18よりも径方向の外側に位置する外周側部分は、環状のゴム膜19により下方から被覆されている。張出し部18とゴム膜19との間には、径方向の隙間があいている。
【0033】
さらに上面板2には、本体板部17および張出し部18を軸線O方向に貫通し、ダイヤフラム5内と外部とを連通する貫通筒部20が設けられている。貫通筒部20の下端面は、張出し部18の下面と面一とされるとともに、貫通筒部20の上端部は、本体板部17より上方に突出している。該貫通筒部20の上端部には、例えば、前述した気体供給手段や補助タンクなどが気密に接続される。
【0034】
筒状膜部材4は、可撓性を具備しており、例えば弾性体材料、好ましくはゴム材料などで形成され、筒状膜部材4の両開口端部4a、4bのうち、上側の上開口端部4aは、上面板2の張出し部18に気密に外嵌されるとともに、張出し部18とゴム膜19との間の隙間に配置されている。また両開口端部4a、4bのうち、下側の下開口端部4bは、下面板3の支持台部12に気密に外嵌されるとともに、ゴム座16上に配置されている。
【0035】
また筒状膜部材4の中間部分4cは、補助弾性体6の上基板8よりも径方向の外側に膨出しており、該中間部分4cは、下面板3側に設けられた前記ゴム座16を介して、補助弾性体6の上基板8に上方および径方向の外側から当接するとともに、上面板2側に設けられた前記ゴム膜19を介して、上面板2の本体板部17に下方から当接している。
【0036】
ここで上面板2の張出し部18、および下面板3の樹脂板部11は、ダイヤフラム5内に気体が充填された充填状態で軸線O方向に離間して互いに対向するとともに、図3に示すように、ダイヤフラム5内が排気された排気状態で互いに摺動可能に当接する。
本実施形態では、図1に示すように、前記充填状態で、ダイヤフラム5内には、上面板2の張出し部18と下面板3の樹脂板部11との間に位置する中央空間S1と、筒状膜部材4内に位置して周方向の全周にわたって延在し、中央空間S1に径方向の外側から接続された外周空間S2と、を備えるダイヤフラム空間Sが形成される。
【0037】
この充填状態では、上面板2側の貫通筒部20内、および下面板3側の給排孔15はそれぞれ、上面板2の張出し部18と下面板3の樹脂板部11との間の中央空間S1を通して、筒状膜部材4内の外周空間S2に連通している。該充填状態では、例えば、貫通筒部20内、または給排孔15を通してダイヤフラム5内に気体を給排し、ダイヤフラム5内の圧力を調整する。
【0038】
また、前記充填状態のダイヤフラム5内から、貫通筒部20内、または給排孔15を通して気体が排出されると、中央空間S1および外周空間S2がそれぞれ漸次、縮小し、上面板2の張出し部18と、下面板3の樹脂板部11と、が、軸線O方向に漸次、接近するとともに、筒状膜部材4が漸次、収縮変形する。そして図3に示すように、前記排気状態になると、張出し部18と樹脂板部11とが互いに当接して中央空間S1が消滅する。
ここで前記排気状態では、上面板2の張出し部18と、下面板3の樹脂板部11と、が互いに当接した状態で摺動することで、上面板2と下面板3とが、径方向に沿って相対的に移動可能となっている。
【0039】
そして本実施形態では、樹脂板部11には、支持台部12に設けられた被係合部21A、21Bに係合することで、支持台部12に対する樹脂板部11の軸線O方向および径方向に沿った相対的な各移動を規制する係合部22A、22Bが設けられている。
【0040】
図示の例では、係合部22A、22Bおよび被係合部21A、21Bとして、樹脂板部11の外周縁から下方(軸線方向に沿ったダイヤフラムの外側)に向けて延設されて支持台部12に外嵌する筒状部23を有する第1係合部22A、および該第1係合部22Aが係合する第1被係合部21Aと、樹脂板部11の外周縁よりも内側に位置する部分から下方に向けて延設された柱状部24を有する第2係合部22B、および該第2係合部22Bが係合する第2被係合部21Bと、の2種類が備えられている。
【0041】
第1被係合部21Aは、支持台部12の外周面に溝状に形成され、本実施形態では、支持台部12の小径部分12bに、周方向の全周にわたって延在している。軸線Oに沿った縦断面視における第1被係合部21Aの形状は、軸線O方向および径方向に延在する各辺部を有する矩形状とされている。
【0042】
第1係合部22Aの筒状部23は、支持台部12の小径部分12bに外嵌しており、該筒状部23の外周面と、支持台部12の大径部分12aの外周面と、は、面一になっている。また筒状部23は、支持台部12の小径部分12bと筒状膜部材4の下開口端部4bとの間に挟持されている。
筒状部23の内周面には、第1被係合部21A内に配置された突起部25が、径方向の内側に向けて突設されている。突起部25は、周方向の全周にわたって延在する環状に形成され、突起部25と第1被係合部21Aとは同形同大となっている。
【0043】
以上のような第1係合部22Aおよび第1被係合部21Aによれば、第1係合部22Aの筒状部23が、支持台部12に外嵌しているので、樹脂板部11と支持台部12との径方向に沿った相対的な移動を、筒状部23の内周面と支持台部12の外周面とが当接することにより規制することができる。
また第1係合部22Aの突起部25が、第1被係合部21A内に配置されているので、樹脂板部11と支持台部12との軸線O方向に沿った相対的な移動を、突起部25と第1被係合部21Aの内面とが当接することにより規制することができる。
【0044】
第2被係合部21Bは、支持台部12を軸線O方向に貫通する貫通孔26と、該貫通孔26の内周面に形成された係合凹部27と、を備えている。
図2に示すように、貫通孔26は、支持台部12においてボルト孔14よりも径方向の内側に、周方向に間隔をあけて複数配設されている。複数の貫通孔26は、前記上面視において、軸線Oを中心とする同一円上に周方向に同等の間隔をあけて配設されている。
また係合凹部27は、貫通孔26の内周面に全周にわたって溝状に形成されており、図1に示すように、支持台部12の下面に開口している。前記縦断面視における係合凹部27の形状は、軸線O方向および径方向に延在する各辺部を有する矩形状とされている。
【0045】
第2係合部22Bの柱状部24は、周方向に間隔をあけて複数配置されており、各貫通孔26内に挿通されている。貫通孔26と、該貫通孔26に挿通される柱状部24と、は同形同大となっている。
各柱状部24には、第2被係合部21Bの係合凹部27内に配置された係合凸部28が各別に設けられている。係合凸部28は、柱状部24の外周面に全周にわたって延在する環状に形成され、係合凸部28と係合凹部27とは同形同大となっている。
【0046】
以上のような第2係合部22Bおよび第2被係合部21Bによれば、第2係合部22Bの柱状部24が、第2被係合部21Bの貫通孔26内に挿通されているので、樹脂板部11と支持台部12との径方向に沿った相対的な移動を、柱状部24と貫通孔26の内周面とが当接することにより規制することができる。
【0047】
また第2係合部22Bおよび第2被係合部21Bが、それぞれ複数設けられているので、複数の柱状部24と貫通孔26の内周面とが各別に当接することにより、樹脂板部11と支持台部12との周方向に沿った相対的な移動を規制することができる。
さらに第2係合部22Bの係合凸部28が、第2被係合部21Bの係合凹部27内に配置されているので、樹脂板部11と支持台部12との軸線O方向に沿った相対的な移動を、係合凸部28と係合凹部27の内面とが当接することにより規制することができる。
【0048】
ここで、第1係合部22Aおよび第2係合部22Bはいずれも、樹脂板部11と同一の樹脂材料で該樹脂板部11に一体に設けられている。これらの両係合部22A、22Bと樹脂板部11との連結体29は、射出成形で一体成形されており、本実施形態では、図示しない金型内に支持台部12を配置した状態で、該金型内に樹脂材料を射出して連結体29を成形するインサート成形により一体成形されている。
そして、このようにインサート成形により連結体29を成形することにより、連結体29において支持台部12に当接する部分は、ほぼ全面にわたって支持台部12に密着している。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る空気ばね装置1によれば、樹脂板部11に前記係合部22A、22Bが設けられているので、該係合部22A、22Bが被係合部21A、21Bにそれぞれ係合することにより、支持台部12に対する樹脂板部11の軸線O方向および径方向に沿った相対的な各移動を規制することが可能になり、樹脂板部11と上面板2の張出し部18が互いに当接した状態で摺動したときに、樹脂板部11が支持台部12から離反するのを抑えることができる。
【0050】
またこのように、樹脂板部11に係合部22A、22Bを設けることにより、樹脂板部11が支持台部12から離反するのを抑えつつ、樹脂板部11と支持台部12とを別体で形成することができるので、例えば本実施形態のように、支持台部12を金属材料で形成すること等により、下面板3の耐久性を確保し易くすることができる。
【0051】
また、樹脂板部11を形成する樹脂材料として、例えば支持台部12を形成する材料よりも摩擦係数が低い材料を採用すること等により、樹脂板部11と上面板2の張出し部18との間の摩擦係数を効果的に低減させることができる。
【0052】
また、係合部22A、22Bが、樹脂板部11と同一の樹脂材料で該樹脂板部11に一体に設けられているので、これらの係合部22A、22Bと樹脂板部11との前記連結体29を、本実施形態のように射出成形などにより一体成形することが可能になり、容易に形成することができる。
【0053】
またこのように、連結体29を射出成形により一体成形することができるので、連結体29を成形するときに、本実施形態のようにインサート成形を採用すること等により、連結体29を形成しながら、係合部22A、22Bを被係合部21A、21Bに係合させることが可能になり、当該空気ばね装置1の製造作業の簡便化を図ることができる。
また、本実施形態のようにインサート成形により連結体29を成形した場合、連結体29を支持台部12に密着させることが可能になり、樹脂板部11が支持台部12から離反するのを効果的に抑えることができる。
【0054】
また第1係合部22Aの筒状部23が、樹脂板部11の外周縁から下方に向けて延設されているので、前述のように、第1係合部22Aの突起部25と、第1被係合部21Aの内面と、の当接により、樹脂板部11と支持台部12との軸線O方向に沿った相対的な移動が規制されることで、樹脂板部11において外周縁を含む外周側部分が、上方に向けて反り返るのを抑制することができる。
なお、樹脂板部11と上面板2の張出し部18が互いに当接した状態で摺動を繰り返すことで、樹脂板部11の前記外周側部分が反り返り易くなるため、前述の作用効果は顕著に奏功されることとなる。
【0055】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0056】
例えば、前記実施形態では、係合部22A、22Bおよび被係合部21A、21Bとして、第1係合部22Aおよび第1被係合部21Aと、第2係合部22Bおよび第2被係合部21Bと、の2種類が備えられているものとしたが、これに限られるものではなく、いずれか1種類が備えられていればよい。
【0057】
また、係合部22A、22Bおよび被係合部21A、21Bは、前記実施形態に示した構成に限られるものではなく、樹脂板部に設けられ、支持台部に設けられた被係合部に係合することで、支持台部に対する樹脂板部の軸線方向および径方向に沿った相対的な各移動を規制する係合部であれば、適宜変更することができる。
【0058】
また前記実施形態では、インサート成形により連結体29を成形するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、連結体29と支持台部12とを別個に形成した後、これらを互いに組み付けてもよい。
また前記実施形態では、係合部22A、22Bが、樹脂板部11と同一の樹脂材料で該樹脂板部11に一体に設けられているものとしたが、これに限られない。例えば、連結体29を2色成形により成形することにより、樹脂板部11と係合部22A、22Bとが、互いに異なる樹脂材料で形成されてもよい。
【0059】
また前記実施形態では、樹脂板部11は、下面板3側に設けられているものとしたが、上面板2側に設けられていてもよく、両側に設けられていてもよい。例えば、上面板2側に設けられている場合には、上面板の張出し部(支持台部)により、樹脂板部を上方(軸線方向に沿ったダイヤフラムの外側)から支持するとともに、該張出し部に、係合部が係合する被係合部が設けられた構成としてもよい。
さらに上部材として採用した上面板2、および下部材として採用した下面板3は、前記実施形態に示したものに限られるものではない。
つまり、上部材および下部材それぞれに、ダイヤフラム内が排気された排気状態で互いに摺動可能に当接する当接部が各別に備えられ、上部材および下部材の少なくとも一方は、当接部が樹脂材料で形成されるとともに、該当接部を軸線方向に沿ったダイヤフラムの外側から支持する支持台部と、該当接部に設けられ、支持台部に設けられた被係合部に係合することで、支持台部に対する該当接部の軸線方向および径方向に沿った相対的な各移動を規制する係合部と、を備える構成であればよい。
【0060】
また前記実施形態では、補助弾性体6は、積層ゴムにより構成されているものとしたが、気体が内部に充填されたダイヤフラム5よりも軸線O方向および径方向の各ばね定数が高い他の構成に適宜変更することができる。例えば、下基板と、上基板と、およびこれらの両基板の間に配設されて両基板に加硫接着された筒状の弾性部材と、を備える構成を採用してもよい。
さらに、補助弾性体6はなくてもよい。この場合、下面板3に、補助弾性体6の上基板8に相当する構成が備えられていてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 空気ばね装置
2 上面板
3 下面板
4 筒状膜部材
4a、4b 開口端部
5 ダイヤフラム
11 樹脂板部(当接部)
12 支持台部
18 張出し部(当接部)
21A、21B 被係合部
22A、22B 係合部
23 筒状部
25 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部材、下部材、およびこれらの両部材に両開口端部が各別に連結されて封止された筒状膜部材を有するダイヤフラムを備え、
前記上部材および前記下部材にはそれぞれ、前記ダイヤフラム内が排気された排気状態で互いに摺動可能に当接する当接部が各別に備えられた空気ばね装置であって、
前記上部材および前記下部材の少なくとも一方は、
前記当接部が樹脂材料で形成されるとともに、
該当接部を軸線方向に沿ったダイヤフラムの外側から支持する支持台部と、
該当接部に設けられ、前記支持台部に設けられた被係合部に係合することで、前記支持台部に対する該当接部の軸線方向および径方向に沿った相対的な各移動を規制する係合部と、を備えていることを特徴とする空気ばね装置。
【請求項2】
請求項1記載の空気ばね装置であって、
前記係合部は、該係合部が設けられた前記当接部と同一の樹脂材料で該当接部に一体に設けられていることを特徴とする空気ばね装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の空気ばね装置であって、
前記被係合部は、前記支持台部の外周面に溝状に形成され、
前記係合部は、前記当接部の外周縁から軸線方向に沿ったダイヤフラムの外側に向けて延設されて前記支持台部に外嵌する筒状部と、該筒状部の内周面に突設されて前記被係合部内に配置された突起部と、を備えていることを特徴とする空気ばね装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−177407(P2012−177407A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40031(P2011−40031)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】