説明

空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法

【課題】 ベルトカバー層の補強芯体を構成するすだれ織物における緯糸の打ち込み間隔を広げることにより、ベルトカバー層の薄肉化を可能にして、高速耐久性を向上させながら、転動抵抗性を改良するようにした空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 ベルトカバー層7の補強芯体を構成するすだれ織物8を、片撚りコードからなる経糸9と、経糸9の2〜10本を跨いで打ち込んだ緯糸10とにより構成した空気入りラジアルタイヤ1、及び経糸9の打ち込み間隔を広げることにより、厚さの変動を抑制したすだれ織物8をベルトカバー層7の補強芯体として使用した空気入りラジアルタイヤ1の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速耐久性を向上させながら、転動抵抗性を改良するようにした空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、ベルトカバー層の補強芯体を構成するすだれ織物における緯糸の打ち込み間隔を広げることにより、ベルトカバー層の薄肉化を可能にした空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの高速耐久性を向上させたりロードノイズを低減させるための手法として、ベルト層の外周側にナイロンなどからなる繊維コードをタイヤ周方向に巻き付けるようにしたベルトカバー層を配置することによって、ベルト層に対するタガ効果を発揮させることが広く行われてきた。
【0003】
さらに、近年では、ベルトカバー層の補強芯体を構成する繊維コードの撚り加工費や原料使用量を低減して軽量化を図るために、繊維コードの撚り構造を従来の双撚り構造から片撚り構造に変更すると共に、タイヤ成形時における生産性を向上させるために、繊維コードをすだれ織物に製織して、このすだれ織物にゴムを被覆してカレンダー材とし、このカレンダー材を長手方向に裁断して、ベルト層の外周に巻き付けることが行われるようになった(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
ところが、片撚り構造の繊維コードは、コード径を細くすることができる反面、すだれ織物に製織した場合には、緯糸の太さの影響を受けて、ゴムを被覆した後のプライの厚さが増加するという問題があった。
【0005】
すなわち、図6(a)に示すように、相隣接する経糸9、9、・・・に対して緯糸10を打ち込んで製織されたすだれ織物8は、ゴムの被覆工程において、相隣接する経糸9、9、・・・がそれぞれゴムの押圧力を受けて矢印方向(上下方向)に押し込まれながらプライが形成される。この過程において、緯糸10の太さが大きい場合には、相隣接する経糸9、9、・・・が、緯糸10の太さの影響を受けて水平方向に並ばず、図6(b)に示すように、ゴムGを被覆した後のプライの厚さtが厚くなり、これが軽量化を阻害させる要因になっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4053727号公報
【特許文献2】特開2011−1661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述する従来の問題点を解消するもので、ベルトカバー層の補強芯体を構成するすだれ織物における緯糸の打ち込み形態を改良することによってベルトカバー層の薄肉化を可能にし、以て高速耐久性を向上させながら、転動抵抗性を改良するようにした空気入りラジアルタイヤ及びその製造方法を提供するものである。
【0008】
さらに詳細には、すだれ織物における緯糸の打ち込み間隔を広げることにより、ゴムを被覆した後におけるベルトカバー層の薄肉化を可能にした空気入りラジアルタイヤ、及びこのすだれ織物をベルトカバー層に使用して生産効率を向上させるようにした軽量化タイヤの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明の空気入りラジアルタイヤは、左右一対のビード部間に装架したカーカス層と、トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置したベルト層と、該ベルト層の外周側に配置したベルトカバー層とを備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、前記ベルトカバー層の補強芯体を、有機繊維マルチフィラメントヤーンを一方向に撚り合わせた片撚りコードからなる経糸と、該経糸に直交し、かつ該経糸2〜10本を跨いで打ち込んだ緯糸とにより製織されたすだれ織物により構成すると共に、前記経糸がタイヤ周方向に対して0〜5°の角度で延在するようにしたことを特徴とする。
【0010】
さらに、上述する構成において、以下(1)〜(3)に記載するように構成することが好ましい。
(1)前記経糸の総繊度を900〜2200dtexにする。
(2)前記緯糸をメタ系アラミド繊維からなる紡績糸で構成する。
(3)相隣接する緯糸間において、前記緯糸の打ち込み位置を、前記経糸1本分ずつ一方向にずらせて製織する。
【0011】
また、本発明の空気入りラジアルタイヤの製造方法は、左右一対のビード部間に装架したカーカス層と、トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置したベルト層と、該ベルト層の外周側に配置したベルトカバー層とを備えた空気入りラジアルタイヤの製造方法において、あらかじめ有機繊維マルチフィラメントヤーンを一方向に撚り合わせた片撚りコードからなる経糸と、該経糸2〜10本を跨いで打ち込んだ緯糸とによりすだれ織物を製織しておき、該すだれ織物を接着熱処理した後、ゴムを被覆してカレンダー材料となし、該カレンダー材料を前記経糸に沿って帯状体に裁断し、該帯状体を前記ベルト層の外周側に前記経糸がタイヤ周方向に対して0〜5°の角度で延在するように螺旋状に巻回して前記ベルトカバー層を形成するようにしたことを特徴とする。
【0012】
さらに、上述する構成において、以下(1)〜(4)に記載するように構成することが好ましい。
(1)前記経糸の総繊度を900〜2200dtexにする。
(2)前記緯糸をメタ系アラミド繊維からなる紡績糸で構成する。
(3)前記帯状体の幅を5〜15mmにする。
(4)相隣接する緯糸間において、前記緯糸の打ち込み位置を、前記経糸1本分ずつ一方向にずらせて製織する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の空気入りラジアルタイヤによれば、ベルトカバー層の補強芯体を構成するすだれ織物を、有機繊維マルチフィラメントヤーンを一方向に撚り合わせた片撚りコードからなる経糸と、これら経糸2〜10本を跨いで打ち込んだ緯糸とにより構成したので、経糸と緯糸との交差位置における相隣接する経糸が、ゴム被覆工程におけるゴムの押圧力によって、互いに水平方向に並ぶので、すだれ織物に被覆するゴムの薄肉化を可能にして、タイヤ重量の軽量化の促進により、転動抵抗性を改良することができる。
【0014】
しかも、緯糸の打ち込み間隔の上限を経糸10本に相当する間隔に抑えたので、ゴムを被覆する工程において、相隣接する経糸同士の乱れ(交錯)を抑制することができると共に、加硫後のタイヤにおける経糸と緯糸との交差位置の減少に伴い、プライの厚み抑制により、ゴム量を減らせるので、ゴムの発熱が低減され、高速耐久性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の空気入りラジアルタイヤの製造方法によれば、あらかじめ有機繊維マルチフィラメントヤーンを一方向に撚り合わせた片撚りコードからなる経糸と、これら経糸2〜10本を跨いで打ち込んだ緯糸とによりすだれ織物を形成しておき、このすだれ織物にゴムを被覆したカレンダー材料を経糸に沿って帯状体に裁断すると共に、この帯状体をベルト層の外周側に巻回してベルトカバー層を形成するようにしたので、この帯状体の巻回により生産性を向上させながら、高速耐久性を向上させた軽量化タイヤを効率よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態による空気入りラジアルタイヤの形態を示す断面図である。
【図2】図1のタイヤにおけるベルトカバー層を構成するすだれ織物の一例を示すもので、(a)は平面図、(b)は経糸と緯糸との交差位置における断面図、(c)はゴムを被覆した後の状態を示す(b)に相当する断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態によるすだれ織物を示す図2(b)に相当する断面図である。
【図4】本発明のさらに他の実施形態によるすだれ織物を示す図2(a)に相当する平面図である。
【図5】本発明の他の実施形態によるベルトカバー層の配置を示すモデル図である。
【図6】従来のベルトカバー層を構成するすだれ織物の説明図で、(a)は経糸と緯糸との交差位置における断面図、(b)はゴムを被覆した後の状態を示す(a)に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1において、本発明の空気入りラジアルタイヤ1は、左右一対のビード部2、2間にカーカス層3を装架すると共に、トレッド部4におけるカーカス層3の外周側に層間でコード方向を交差させた2層のベルト層5、6を配置し、ベルト層5、6の外周側に少なくとも1層(図では1層)のベルトカバー層7を配置している。
【0019】
そして、本発明の空気入りラジアルタイヤ1では、ベルトカバー層7の補強芯体を構成するすだれ織物8を、図2(a)に例示するように、有機繊維マルチフィラメントヤーンを一方向に撚り合わせた片撚りコードからなる経糸9と、経糸9の2〜10本、好ましくは3〜8本(図では、3本)を跨いで打ち込んだ緯糸10とにより構成している。そして、経糸9はタイヤ周方向に対して0〜5°の角度で配置されている。
【0020】
なお、図2(a)の実施形態では、3本の経糸9を跨いで打ち込んだ相隣接する緯糸10、10の打ち込みを、すだれ織物8の長手方向に対して表側と裏側との交互にした場合を示しているが、相隣接する緯糸10、10の打ち込み方向は、これに限られるものではない。
【0021】
図2(b)は、図2(a)のすだれ織物8における経糸9と緯糸10との交差位置における一部断面図で、このように製織されたすだれ織物8は、ゴムが被覆されてベルトカバー層7を形成する。すだれ織物8にゴムが被覆される段階では、図2(b)の矢印で示すように、緯糸10、10を挟んで配列された経糸9、9、9がそれぞれゴムの押圧力を受けて上下方向に押し込まれて、ゴムGを被覆した後のベルトカバー層7では、図2(c)に示すように、相隣接する経糸9、9、・・・が平面上に並ぶようになり、ベルトカバー層7の厚さtを減少させることができる。
【0022】
このように、片撚りコードからなる経糸9の2〜10本を跨いで緯糸10を打ち込むことにより、ゴムGを被覆した後のベルトカバ−層7を薄肉化することができるので、ベルトカバ−層8の薄肉化によりタイヤ重量の軽量化が可能になって、転動抵抗性を改良することができる。しかも、緯糸10の打ち込み間隔の上限を経糸10本に相当する間隔に抑えたので、ゴムを被覆する工程において、相隣接する経糸9、9同士の乱れ(交錯)を抑制することができると共に、加硫後のタイヤにおける経糸と緯糸との交差位置の減少に伴い、プライの厚み抑制により、ゴム量を減らせるので、ゴムの発熱が低減され、高速耐久性を向上させることができる。
【0023】
ここで、緯糸10の打ち込み間隔を、図6に示す従来のすだれ織物8のように、経糸9の1本に相当する間隔にすると、ゴムを被覆した後のプライの厚さtが増大して、ベルトカバ−層7の薄肉化による軽量化ができなくなり、緯糸10の打ち込み間隔を経糸9の11本以上に相当する間隔にすると、ゴムを被覆する工程において、相隣接する経糸9、9同士の乱れ(交錯)を抑制することが難しくなって、すだれ織物8の表面に凹凸が生じ易くなり、ベルトカバ−層7の薄肉化が果たせなくなる。
【0024】
なお、図2の実施形態では、緯糸10の打ち込み間隔をそれぞれ経糸9の3本(一定)毎の間隔にした場合を例示したが、本発明では、緯糸10の1本当りの打ち込み間隔を経糸9の2〜10本に相当する範囲内において変動させることができる。以下に述べる図3、4の実施形態についても同じ。なお、図3は緯糸10の1本当りの打ち込み間隔を経糸9の5本毎の一定の間隔とした場合を示している。
【0025】
本発明において、すだれ織物8を構成する経糸9の材質は、特に限定されるものではないが、ポリアミド繊維、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリエチレン繊維、レーヨン繊維などが好ましく使用される。
【0026】
本発明の空気入りラジアルタイヤ1では、経糸9の総繊度を900〜2200dtex、好ましくは900〜1400dtexにするとよい。さらに好ましくは、緯糸10の総繊度を経糸9の総繊度の1/12以上、1/4以下、最も好ましくは、1/10以上、1/6以下にするとよい。これにより、すだれ織物8の接着熱処理工程やゴム被覆工程における緯糸10の破断を抑制することができると共に、経糸9のコード乱れ(交錯)に伴うベルトカバ−層7の厚肉化を効率的に抑制して、転動抵抗性を確実に改良することができる。
【0027】
ここで、緯糸10の総繊度が経糸9の総繊度の1/12未満になると、すだれ織物8の接着熱処理工程又はゴム被覆工程の段階において緯糸10が破断する恐れが生じ、1/4超になると、すだれ織物8の表面に凹凸が生じ易くなって、ベルトカバー層7の薄肉化が果たせなくなる。
【0028】
なお、図2及び図3の実施形態では、隣接する経糸9、9間における片撚りコードの撚り方向をそれぞれ同一にした場合を示したが、すだれ織物8の形態安定性を良好に確保する観点から、片撚りコードの撚り方向を隣接する経糸9、9間において互いに異なるようにすることができる。以下に述べる図4の実施形態についても同じ。
【0029】
本発明において、緯糸10の材質としては、綿、アラミド繊維、ポリノジックレーヨン繊維、リヨセル繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などからなる紡績糸などが使用されるが、なかでも高強度かつ低伸張性を有するメタ系アラミド繊維からなる紡績糸が好ましく使用される。これにより、緯糸10の打ち込み本数を減らせるだけでなく、すだれ織物8の形態安定性をさらに向上させることができる。
【0030】
図4は、本発明の他の実施形態によるすだれ織物8を示す平面図で、本実施形態では、すだれ織物8の長手方向に相隣接する緯糸10、10間において、緯糸10の打ち込み位置を、経糸9の1本分ずつ一方向(図では左方向)にずらせて製織している。これにより、すだれ織物8の接着熱処理工程やゴム被覆工程において、経糸9、9間の乱れが一層抑制されて、ベルトカバー層7の薄肉化を容易にし、転動抵抗性をさらに向上させることができる。
【0031】
なお、図4では、図2のすだれ織物8における緯糸10の打ち込み位置を、経糸9の1本分ずつ一方向にずらせた場合を示したが、緯糸10の打ち込み間における経糸9の本数は、これに限られるものではない。
【0032】
また、図1の実施形態では、1層のベルトカバー層7がベルト層5、6の外周側の全域を覆うように配置されている場合を例示したが、ベルトカバー層7の層数及びその配置はこれに限られるものではなく、図5に例示するように、新たなベルトカバー層7z、7zをベルトカバー層7の両端部を覆うように配置する場合がある。
【0033】
本発明の空気入りラジアルタイヤの製造方法は、ベルトカバ−層7の補強芯体を構成するすだれ織物8における緯糸10の打ち込み間隔を広げることにより、ゴム被覆後のベルトカバ−層7の薄肉化を可能にした図2〜4の実施形態において例示するすだれ織物を使用して、軽量化されたタイヤを生産性を向上させて製造することを骨子とするもので、その要旨は、あらかじめ有機繊維マルチフィラメントヤーンを一方向に撚り合わせた片撚りコードからなる経糸9と、これら経糸9の2〜10本を跨いで打ち込んだ緯糸10とによりすだれ織物8を形成しておき、このすだれ織物8にゴムを被覆してカレンダー材料を製造し、このカレンダー材料を経糸9に沿って帯状体に裁断してベルト層5、6の外周側に螺旋状に巻回することによりベルトカバー層7を形成することを特徴にしている。
【0034】
このように、緯糸10の打ち込み間隔を広げることにより薄肉化されたカレンダー材料を、帯状体に裁断し、この帯状体をベルト層5、6の外周側に巻回してベルトカバー層7を形成するようにしたので、帯状体の巻回に伴い、タイヤ成形時における生産性を向上させることができ、カレンダー材料の薄肉化により軽量化された空気入りラジアルタイヤ1を効率よく得ることができる。
【0035】
上述する製造方法において、帯状体の幅を5〜15mmにするとよい。帯状体の幅が5mm未満では、生産効率が悪化することになり、15mm超では、経糸9にタイヤ周方向に対して角度がついてしまうので、所望の剛性が得られなくなる。
【0036】
このようにして得られた空気入りラジアルタイヤ1は、高速耐久性を向上させながら、転動抵抗を低減させることができるので、低燃費指向の車両に装着する空気入りラジアルタイヤとして幅広く適用することができる。
【実施例】
【0037】
タイヤサイズを205/55R16、タイヤ構造を図1、ベルトカバー層の補強芯体を構成するすだれ織物の経糸を総繊度が1400dtexのナイロン66マルチフィラメントヤーンにすると共に、緯糸の打ち込み間における経糸の本数、緯糸の材料、経糸の総繊度に対する緯糸の総繊度の割合、緯糸の打ち込み密度、及び隣接する緯糸間における経糸1本に相当する打ち込み位置のずれ、をそれぞれ表1のように異ならせてすだれ織物を製織した。
【0038】
そして、これらすだれ織物に経糸及び緯糸がそれぞれ露出しない程度にゴムを被覆してカレンダー材料を製造し、このカレンダー材料を10mmの幅に裁断して帯状体を形成し、この帯状体をベルト層の外周側に螺旋状に巻回してベルトカバー層を形成した従来タイヤ(従来例)、本発明タイヤ(実施例1〜7)及び比較タイヤ(比較例)をそれぞれ作製した。
【0039】
なお、表1において、上述する緯糸の打ち込み間における経糸の本数を「経糸の本数」、隣接する緯糸間における経糸1本に相当する打ち込み位置のずれを「打ち込み位置のずれ」と表示した。
【0040】
これら9種類のタイヤについて、ベルトカバー層の厚さを測定すると共に、以下の試験方法により転動抵抗性及び高速耐久性の評価を行い、その結果を従来タイヤを100とする指数により表1に記載した。ベルトカバー層の厚さ及び転動抵抗性については、数値が小さいほど優れていることを示し、高速耐久性については、数値が大きいほど優れていることを示す。
〔転動抵抗性の評価〕
各タイヤをリム(サイズ:16×6.5JJ)に組み込み、空気圧230kPaを充填して、室内ドラム試験機(ドラム径:1707mm)を用いて、荷重4kNを負荷させて、走行速度を80km/hとして走行させたときの転動抵抗値を測定した。
〔高速耐久性の評価〕
各タイヤをリム(サイズ:16×6.5JJ)に組み込み、空気圧230kPaを充填して、室内ドラム試験機(ドラム径:1707mm)を用いて、JATMA規定の最大荷重の88%に相当する荷重を負荷させて、速度を200km/hにて1時間走行させ、次いで30分毎に速度を10km/hずつ加速させながら、タイヤが破壊するまでの総走行距離を測定し、その結果を以て評価した。
【0041】
【表1】

【0042】
表1より、本発明タイヤは、従来タイヤに比して、転動抵抗性を改善させながら、高速耐久性を向上させていることが判る。なお、比較タイヤは、緯糸の打ち込み間隔を大きくし過ぎたため、経糸の形態が安定せずに、経糸同士が交錯してしまい、ベルトカバー層の薄肉化が果たせなくなり、従来タイヤに比して、転動抵抗性及び高速耐久性が悪化したことを確認した。
【0043】
なお、本発明タイヤのうち、実施例3は、実施例1に比して経糸の総繊度を小さくしたため、経糸の凹凸が抑制されて、ベルトカバー層の薄肉化が促進され、転動抵抗性が向上した。
【0044】
また、実施例4は、経糸の総繊度をさらに小さくしたことによるすだれ織物の強度の低下を緯糸の打ち込み密度の増加によって補うようにしたが、緯糸の打ち込み密度の増加に伴い、経糸に凹凸が生じてしまい、実施例3に比してベルトカバー層の厚さが増加して、転動抵抗性の向上効果がやや低減した。
【0045】
さらに、実施例5、6は、緯糸に高強度のメタアラミド繊維を使用したので、緯糸の打ち込み密度を低減させることが可能になり、実施例3に比してベルトカバー層の厚さが低減して、転動抵抗性がさらに向上した。
【符号の説明】
【0046】
1 空気入りラジアルタイヤ
2 ビード部
3 カーカス層
4 トレッド部
5、6 ベルト層
7 ベルトカバー層
8 すだれ織物
9 経糸
10 緯糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のビード部間に装架したカーカス層と、トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置したベルト層と、該ベルト層の外周側に配置したベルトカバー層とを備えた空気入りラジアルタイヤにおいて、
前記ベルトカバー層の補強芯体を、有機繊維マルチフィラメントヤーンを一方向に撚り合わせた片撚りコードからなる経糸と、該経糸に直交し、かつ該経糸2〜10本を跨いで打ち込んだ緯糸とにより製織されたすだれ織物により構成すると共に、前記経糸がタイヤ周方向に対して0〜5°の角度で延在するようにした空気入りラジアルタイヤ。
【請求項2】
前記経糸の総繊度を900〜2200dtexとした請求項1に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項3】
前記緯糸をメタ系アラミド繊維からなる紡績糸とした請求項1又は2に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項4】
相隣接する緯糸間において、前記緯糸の打ち込み位置を、前記経糸1本分ずつ一方向にずらせて製織した請求項1、2又は3に記載の空気入りラジアルタイヤ。
【請求項5】
左右一対のビード部間に装架したカーカス層と、トレッド部における前記カーカス層の外周側に配置したベルト層と、該ベルト層の外周側に配置したベルトカバー層とを備えた空気入りラジアルタイヤの製造方法において、
あらかじめ有機繊維マルチフィラメントヤーンを一方向に撚り合わせた片撚りコードからなる経糸と、該経糸2〜10本を跨いで打ち込んだ緯糸とによりすだれ織物を製織しておき、該すだれ織物を接着熱処理した後、ゴムを被覆してカレンダー材料となし、該カレンダー材料を前記経糸に沿って帯状体に裁断し、該帯状体を前記ベルト層の外周側に前記経糸がタイヤ周方向に対して0〜5°の角度で延在するように螺旋状に巻回して前記ベルトカバー層を形成するようにした空気入りラジアルタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記経糸の総繊度を900〜2200dtexにした請求項5に記載の空気入りラジアルタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記緯糸をメタ系アラミド繊維からなる紡績糸にした請求項5又は6に記載の空気入りラジアルタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記帯状体の幅を5〜15mmにした請求項5、6、又は7に記載の空気入りラジアルタイヤの製造方法。
【請求項9】
相隣接する緯糸間において、前記緯糸の打ち込み位置を、前記経糸1本分ずつ一方向にずらせて製織した請求項5〜8のいずれか1項に記載の空気入りラジアルタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43612(P2013−43612A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184429(P2011−184429)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】