説明

空気調和機の室内機

【課題】暖房運転時において快適な室温及び室内湿度を維持管理できる空気調和機の室内機を提供する。
【解決手段】下流側に自然蒸発式加湿器が配置された第一の熱交換器1と、自然蒸発式加湿器が配置されていない第二の熱交換器2と、第一の熱交換器1と第二の熱交換器2とを接続配管3aで接続し、この第一の熱交換器1に供給された冷媒をこの接続配管3aを介して第二の熱交換器2に供給し、双方の熱交換器を通過した冷媒を第二の熱交換器2から排出する冷媒回路と、接続配管3aに設けられ、第一の熱交換器1から第二の熱交換器2へ供給される冷媒の流量を調整する流量調整弁4とを有しており、暖房運転時に室温センサと湿度センサにて検出された室内空気の温度及び湿度に基づき、自然蒸発式加湿器への給水制御と、流量調整弁4の絞りを調整することによる第二の熱交換器2の制御を行い、空調運転モードの切換運転を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に暖房運転時において快適な室温及び室内湿度を維持管理できる空気調和機の室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
百貨店、事務所、店舗等のように多数の者が使用する場所では、環境の衛生上の問題等から、室内相対湿度40%以上の状態を維持するよう室内の湿度を管理する必要がある。そこで、低温かつ低湿度である冬季において室内相対湿度40%以上の状態を維持するために、上記のような場所で使用される空気調和機には、冷房機能、暖房機能、除湿機能の他に、加湿機能が備えられている。そして、加湿機能を備えた空気調和機のなかでも、加湿器における消費電力を削減できる空気調和機として、自然蒸発式加湿器を室内機の内部に搭載するタイプのものがある。
【0003】
図12は、自然蒸発式加湿器7を内部に搭載する従来の空気調和機の室内機の暖房・加湿運転時における内部の状態を示している。また図13は、図12の室内機における冷媒回路の状態を示す図である。図12の室内機には、2台の熱交換器1,2が設けられている。そして、この室内機は、送風機10によって室内空気が吸込口から吸い込まれて双方の熱交換器1,2に送風され、これらの熱交換器1,2を通過した空気が吹出口より室内へ吹出されるように構成されている。
【0004】
そして、自然蒸発式加湿器7が、図12のように一方の熱交換器1の下流側に備えられている。この自然蒸発式加湿器7には、加湿器外部からこの加湿器内に備えられた加湿材(図示せず)に水分を供給するための給水配管8が接続されており、さらにこの給水配管8には、加湿器7への給水や断水を行うべく開閉制御される電磁弁9が設けられている。
【0005】
また、この室内機の吸込口(送風機10の上流側)には、室内空気の温度を検出する室温センサ11が設けられ、さらに、この室温センサ11による検出温度が所定の目標温度未満である場合に、暖房運転を行うよう制御する制御手段(図示せず)が備えられている。また、この制御手段は、暖房運転の制御のみならず、上述の電磁弁9の開閉制御を行うものであり、この電磁弁9の開閉制御による加湿器7への給水制御によって、加湿の可否が制御される。
【0006】
また、この空気調和機の室内機における冷媒回路は、図13のように、室内機の2台の熱交換器1,2が配管3aで接続された構成となっており、冷媒配管3を介して一方の熱交換器1に供給された冷媒を、この接続配管3aを通って他方の熱交換器2に供給し、この他方の熱交換器2から冷媒配管3を介して室外機(図示せず)へ排出することが可能な構成となっている。
【0007】
次に、上述のような構成の空気調和機の室内機による暖房運転時の加湿動作について説明する。
【0008】
まず、室温センサ11での検出温度が所定の目標温度未満である場合、制御手段からの指令に基づいて2台の熱交換器1,2が加熱され、暖房運転が開始する。具体的には、制御手段からの指令に基づいて、室内機外部の圧縮機(図示せず)から室内機内部の一方の熱交換器1に、高圧・高温のガス冷媒が供給され、この一方の熱交換器1に供給された高圧・高温ガス冷媒が一方の熱交換器1と他方の熱交換器2とを順次通過することにより、双方の熱交換器1,2が加熱状態となる。そして、吸込口から吸い込まれた乾いた室内空気は、上述のようにして加熱状態となった熱交換器1,2を通過することにより、乾いた温風となる。
【0009】
また、上述の暖房運転開始と共に、制御手段からの指令に基づいて電磁弁9を開とすると、自然蒸発式加湿器7の内部の加湿材に給水配管8を介して水が滴下給水され、この加湿材は、水分が浸透した湿った状態となる。そして、この状態の加湿材の上を、一方の熱交換器1から吹き出す乾いた温風が通過すると、この温風によって加湿材の浸透水分が自然蒸発し、この自然蒸発した水分が乾いた温風に吸収される。こうして、一方の熱交換器1側の吹出口からは、湿った温風が吹出されることとなる。また、他方の熱交換器2側の吹出口からは、加熱状態の他方の熱交換器2において発生した乾いた温風が吹出されることとなる。以上のようにして、自然蒸発式加湿器7を内蔵する従来の空気調和機の室内機では、暖房と加湿とが同時に行われる。
【0010】
ここで、上述の暖房運転時において、一方の熱交換器1に供給された高圧・高温ガス冷媒は、図13のように、双方の熱交換器1,2における熱交換によって徐々に高圧・常温液冷媒に変化し、他方の熱交換器2からは、高圧・常温液冷媒が室外機へ排出されることとなる。
【0011】
次に、この従来の空気調和機の室内機において、暖房運転により室温センサ11での検出温度が所定の目標温度に達すると、これ以降の室温上昇を抑えるため、制御手段からの指令に基づいて暖房運転が停止し、替わりに送風運転が開始する。具体的には、まず制御手段からの指令に基づいて図15のように冷媒の循環を停止させる。すると、冷媒が気液平衡状態となり、双方の熱交換器1,2が常温状態となる。また、これと同時に、制御手段からの指令に基づいて給水配管8の電磁弁9を閉とし、加湿材への給水を停止させる。そして、図14のように、吸込口より吸い込まれた室内空気が常温状態の各熱交換器1,2を通過して吹出口から吹出される。こうして、この従来の空気調和機の室内機では、室内の空気温度が所定の目標温度に到達した場合に送風運転が行われる。
【0012】
以上のように、自然蒸発式加湿器7を内蔵する従来の空気調和機の室内機では、暖房運転を実行することによってのみ加湿が行われ、暖房と共に加湿を行うことによって、室内の空気温度を目標温度に到達させると共に、室内の相対湿度を目標湿度(例えば、室内相対湿度40%)に到達させることとなる。
【0013】
尚、上述のような自然蒸発式加湿器を内部に搭載するタイプの空気調和機の室内機は、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【0014】
【特許文献1】特開平10−82538号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年、OA(Office Automation)機器等の普及により暖房負荷が減少傾向にあることから、室内空気の温度が目標温度に到達しても、室内相対湿度が目標湿度(例えば40%以上)に達しないという事態が起こることがあった。このような場合において、上記の構成を有する従来の室内機によれば、室内空気の温度が目標温度に到達してしまうと、これ以上の室温の上昇を抑えるために暖房運転が停止して送風運転が行われるため、これ以降は加湿運転が継続せず、例えば図16のように、室内相対湿度が目標湿度に達しないまま推移するといった事態が生じてしまう。このように、従来の自然蒸発式加湿器を内部に搭載するタイプの室内機では、暖房運転時において十分な室内相対湿度に到達できないといった問題が生じることがあった。
【0016】
本発明の目的は、暖房運転時における快適な室温及び室内相対湿度の維持管理を可能とする空気調和機の室内機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明は、室内から吸い込まれた室内空気が送風手段によって複数の熱交換器を通過した後に室内へ吹出されるように構成され、少なくとも一つの熱交換器の下流側に、加湿時に外部から水分を供給可能な自然蒸発式加湿器を配置した空気調和機の室内機であって、下流側に自然蒸発式加湿器が配置された第一の熱交換器と、下流側に自然蒸発式加湿器が配置されていない第二の熱交換器と、第一の熱交換器と第二の熱交換器とを接続配管で接続し、この第一の熱交換器に供給された冷媒をこの接続配管を介して第二の熱交換器に供給し、双方の熱交換器を通過した冷媒を第二の熱交換器から排出する冷媒回路と、接続配管に設けられ、第一の熱交換器から第二の熱交換器へ供給される冷媒の流量を調整する流量調整手段と、室内空気の温度を検出する室温検出手段と、室内空気の湿度を検出する湿度検出手段と、暖房運転時に、検出された室内空気の温度及び湿度に基づいて、自然蒸発式加湿器への給水制御と、流量調整手段の絞りを調整することによる第二の熱交換器の制御を行い、空調運転モードの切換運転を制御する制御手段と、を有する構成としている。
【0018】
また、このような構成の空気調和機の室内機において、検出された室内空気の温度及び湿度がともに所定の目標温度及び目標湿度に満たない場合には、制御手段が、自然蒸発式加湿器への給水を開始すると共に、流量調整手段の絞りを全開にして双方の熱交換器を加熱状態とする暖房・加湿運転モードを実行する制御を行うようにすると良く、また、検出された室内空気の温度が所定の目標温度に満たない温度であり且つ検出された室内空気の湿度が所定の目標湿度に到達している場合に、自然蒸発式加湿器への給水を停止すると共に、流量調整手段の絞りを全開にして双方の熱交換器を加熱状態とする暖房運転モードを実行する制御を行うようにすると良い。
【0019】
また、本発明は、上記構成の空気調和機の室内機において、さらに、第二の熱交換器における冷媒の蒸発圧力を検出する蒸発圧力検出手段と、第二の熱交換器の温度を検出する熱交換器温度検出手段と、を有し、制御手段が、検出された室内空気の温度及び湿度、第二の熱交換器における冷媒の蒸発圧力、及び第二の熱交換器の温度に基づいて、自然蒸発式加湿器への給水の制御と、流量調整手段の絞りを調整することによる第二の熱交換器の制御を行い、空調運転モードの切換運転を制御する構成としている。
【0020】
また、このような構成の空気調和機の室内機において、検出された室内空気の温度が所定の目標温度に到達しており且つ検出された室内空気の湿度が所定の目標湿度に満たない場合には、制御手段が、自然蒸発式加湿器への給水を開始すると共に、検出された室内空気の温度及び湿度に基づいて室内空気の露点温度を演算し、熱交換器温度検出手段から検出される第二の熱交換器の温度と、蒸発圧力検出手段より検出される蒸発圧力とを監視しながら流量調整手段の絞りを調整し、第一の熱交換器を加熱状態とし、第二の熱交換器を、演算により得られた露点温度以上の温度の冷却状態とする加湿運転モードを実行する制御を行うようにすると良い。
【0021】
また、検出された室内空気の温度が所定の目標温度に到達しており且つ検出された室内空気の湿度が所定の目標湿度を超えている場合には、制御手段が、自然蒸発式加湿器への給水を停止すると共に、検出された室内空気温度及び湿度に基づいて室内空気の露点温度を演算し、熱交換器温度検出手段から検出される第二の熱交換器の温度と、蒸発圧力検出手段より検出される蒸発圧力とを監視しながら流量調整手段の絞りを調整し、第一の熱交換器を加熱状態とし、第二の熱交換器を、演算により得られた露点温度未満の温度の冷却状態とする暖房時除湿運転モードを実行する制御を行うようにすると良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、例えばOA機器等を多数配置した室内等のような暖房負荷の少ない環境下においても、暖房運転時における湿度制御を適切に行うことができ、これにより、暖房運転時において、室内空気の温度と室内相対湿度とを快適な状態に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図11を参照して説明する。図1は、本発明の空気調和機における室内機の内部構成を示す図である。また図2は、図1の空気調和機の室内機における冷媒回路の構成を示す図である。
【0024】
[構成]
本実施形態に係る空気調和機の室内機には、2台の熱交換器が設けられている。そして、この室内機は、送風機10によって室内空気が吸込口から吸い込まれて双方の熱交換器に送風され、これらの熱交換器を通過した空気が吹出口より室内へ吹出されるように構成されている。
【0025】
そして、自然蒸発式加湿器7が、一方の熱交換器(第一の熱交換器)1の下流側に備えられている。この自然蒸発式加湿器7には、加湿器外部からこの加湿器内に備えられた加湿材(図示せず)に水分を供給するための給水配管8が接続されており、さらにこの給水配管8には、加湿器への給水や断水を行うべく開閉制御される電磁弁9が設けられている。
【0026】
また、この室内機の吸込口(送風機10の上流側)には、室内空気の温度を検出する室温センサ11と、室内空気の湿度(相対湿度)を検出する湿度センサ12とが設けられている。尚、室内空気の温度及び湿度の検出処理は、連続的に行われても良く、あるいは、一定時間を空けて間欠的に行われても良い。
【0027】
また、この空気調和機における冷媒回路は、図2のように、室内機の2台の熱交換器が配管3aで接続された構成となっており、冷媒配管3を介して第一の熱交換器1に供給された冷媒を、この接続配管3aを通って他方の熱交換器(第二の熱交換器)2に供給し、この第二の熱交換器2から冷媒配管3を介して室外機(図示せず)へ排出することが可能な構成となっている。また、この接続配管3aには、第一の熱交換器1から第二の熱交換器2へ供給される冷媒の流量を調整するための流量制御弁(例えば、膨張弁)4が備えられている。
【0028】
さらに、第二の熱交換器2に、この第二の熱交換器2の温度を検出する熱交換器温度センサ6が設けられている。また、第二の熱交換器2の下流側の配管に、この第二の熱交換器2を通過する冷媒の蒸発圧力を検出するための圧力センサ5が設けられている。
【0029】
また、この空気調和機の室内機には、暖房運転時に上記の各センサにより検出される室内空気の温度及び湿度に基づいて、空調運転モードの切換運転を制御する制御装置(図示せず)が備えられている。この制御装置には、暖房運転により到達すべき目標温度及び目標湿度が予め設定、登録され、制御装置は、この目標温度及び目標湿度と、検出された室内空気の温度及び湿度とを比較して、その比較結果に応じて空調運転モードの切換運転を制御する。ここで、本実施形態における空調運転モードは、暖房・加湿運転、暖房運転、加湿運転、及び暖房時除湿運転の4種類の運転モードであり、これらの運転モードの切換は、給水配管8の電磁弁9の開閉動作(即ち、自然蒸発式加湿器7への給水、断水動作)と、接続配管3aの流量制御弁4の絞り調整とが制御装置により制御されることによってなされる。
【0030】
次に、制御装置により切換運転される上述の4種類の運転モードについて、図3から図10を参照して説明する。
【0031】
[暖房・加湿運転モード]
まず、室温センサ11による室内空気の検出温度と、湿度センサ12による室内空気の検出湿度が、制御装置に設定されている目標温度及び目標湿度に到達していない場合、制御装置により、暖房運転と加湿運転とを同時に行う暖房・加湿運転モードを実行する制御が行われる。この場合、制御装置により、電磁弁9は「開」となるように制御される。従って、自然蒸発式加湿器7の内部の加湿材に給水配管8を介して水が滴下給水され、この加湿材は、水分が浸透した湿った状態となる。
【0032】
さらに、この暖房・加湿運転モード時には、制御装置により、流量制御弁4が「全開」となるように制御される。そして、このように制御された状態で、室内機外部の圧縮機(図示せず)により圧縮された高圧・高温ガス冷媒が室内機に供給されると、この高圧・高温ガス冷媒が第一の熱交換器1に供給され、さらに接続配管3aを介して第一の熱交換器1から第二の熱交換器2に供給される。こうして各熱交換器を順次通過することにより、双方の熱交換器が加熱状態となる。尚、この場合、第一の熱交換器1に供給された高圧・高温ガス冷媒は、図3のように、双方の熱交換器における熱交換によって徐々に高圧・常温液冷媒に変化し、第二の熱交換器2からは、高圧・常温液冷媒が室外機へ排出される。
【0033】
以上のような状態で運転が行われると、図4のように、まず、吸込口から吸い込まれた乾いた室内空気が、加熱状態の第一の熱交換器1を通過することによって乾いた温風となり、さらにこの乾いた温風が湿った状態の加湿材の上を通過し、この温風によって加湿材の浸透水分が自然蒸発し、この自然蒸発した水分が乾いた温風に吸収されるため、第一の熱交換器1側の吹出口からは、湿った温風が吹出される。また、第二の熱交換器2側の吹出口からは、吸込口から吸い込まれた乾いた室内空気が、加熱状態の第二の熱交換器2を通過することによって乾いた温風となり、この乾いた温風が吹出される。
【0034】
このように、暖房・加湿運転モードでは、第一の熱交換器1側の吹出口から湿った温風を吹出し、第二の熱交換器2側の吹出口から乾いた温風を吹出すことにより、室温と湿度とを上昇させる。
【0035】
[暖房運転モード]
また、室内空気の検出温度は目標温度に到達していないが検出湿度が目標湿度に到達している場合、制御装置により、暖房運転のみを行う暖房運転モードを実行する制御が行われる。この場合、制御装置により、電磁弁9は「閉」となるように制御される。従って、自然蒸発式加湿器7の内部の加湿材には給水配管8を介して水が滴下給水されなくなる。
【0036】
さらに、この暖房運転モード時には、制御装置により、流量制御弁4が「全開」となるように制御される。そして、上述の暖房・加湿運転モード時と同様に、高圧・高温ガス冷媒が第一の熱交換器1に供給され、さらに接続配管3aを介して第一の熱交換器1から第二の熱交換器2に供給される。こうして各熱交換器を順次通過することにより、双方の熱交換器が加熱状態となる。尚、この場合、第一の熱交換器1に供給された高圧・高温ガス冷媒は、図6のように、双方の熱交換器における熱交換によって徐々に高圧・常温液冷媒に変化し、第二の熱交換器2からは、高圧・常温液冷媒が室外機へ排出される。
【0037】
以上のような状態で運転が行われると、図5のように、吸込口から吸い込まれた乾いた室内空気が、加熱状態の双方の熱交換器を通過することによって乾いた温風となり、この乾いた温風が各吹出口より吹出される。このように、暖房運転モードでは、各吹出口から乾いた温風を吹出すことにより、室温の上昇を促しつつ湿度の上昇を抑止する。
【0038】
[加湿運転モード]
また、室内空気の検出温度は目標温度に到達しているが検出湿度が目標湿度に到達していない場合、制御装置により、加湿運転のみを行う加湿運転モードを実行する制御が行われる。この場合、制御装置により、電磁弁9は「開」となるように制御される。従って、自然蒸発式加湿器7の内部の加湿材に給水配管8を介して水が滴下給水され、この加湿材は、水分が浸透した湿った状態となる。
【0039】
さらに、この加湿運転モード時には、図7及び図8のように、第一の熱交換器1が加熱状態となり且つ第二の熱交換器2が弱冷却状態となるように、制御装置により、流量制御弁4の絞り調整制御が行われる。具体的には、この流量制御弁4は、図8の冷媒回路における冷媒が次のような状態になるように絞り調整が行われる。
【0040】
まず、第一の熱交換器1において、高圧・高温ガス冷媒が熱交換により全て高圧・常温液冷媒に変化する。次に、この高圧・常温液冷媒が、流量制御弁4を通過する際に、断熱膨張により低圧・低温液冷媒に変化する。そして、第二の熱交換器2において、第一の熱交換器1から流量制御弁4を経て供給された低圧・低温液冷媒が、熱交換により低圧・低温ガス冷媒に変化して室外機へ排出される。
【0041】
冷媒回路中の冷媒が以上のような状態になるように、加湿運転モード時には流量制御弁4の絞り調整制御が行われ、第一の熱交換器1は加熱状態となり、第二の熱交換器2は冷却状態となる。しかし、第二の熱交換器2が、室内空気の露点温度未満の温度の冷却状態の場合、第二の熱交換器2は除湿運転時と同様の状態となるため、加湿運転モード時には好ましくない。そこで本実施形態では、制御装置が、室内空気の検出温度及び検出湿度から、この室内空気の露点温度を演算し、さらに、熱交換器温度センサ6による第二の熱交換器2の検出温度と、圧力センサ5により検出された蒸発圧力とを監視して、第二の熱交換器2を、演算により得られた露点温度以上の温度の冷却状態(弱冷却状態)となるよう制御する。
【0042】
こうして、第一の熱交換器1を加熱状態とし第二の熱交換器2を弱冷却状態として運転が行われると、図7のように、まず、吸込口から吸い込まれた乾いた室内空気が、加熱状態の第一の熱交換器1を通過することによって乾いた温風となり、さらにこの乾いた温風が湿った状態の加湿材の上を通過し、この温風によって加湿材の浸透水分が自然蒸発し、この自然蒸発した水分が乾いた温風に吸収されるため、第一の熱交換器1側の吹出口からは、湿った温風が吹出される。また、第二の熱交換器2側の吹出口からは、吸込口から吸い込まれた乾いた室内空気が、弱冷却状態の第二の熱交換器2を通過することによって乾いた(元の室内空気と略同一湿度である)冷風となり、この冷風が吹出される。
【0043】
このように、加湿運転モードでは、第一の熱交換器1側の吹出口から湿った温風を吹出し、第二の熱交換器2側の吹出口から冷風を吹出すことにより、温風と冷風とによって室温の上昇を抑制しつつ、湿った温風により湿度を上昇させる。
【0044】
[暖房時除湿運転モード]
また、室内空気の検出温度が目標温度に到達しており、且つ検出湿度が目標湿度を超えている場合、制御装置により、暖房時に適した除湿運転を行う暖房時除湿運転モードを実行する制御が行われる。この場合、制御装置により、電磁弁9は「閉」となるように制御される。従って、自然蒸発式加湿器7の内部の加湿材には給水配管8を介して水が滴下給水されなくなる。
【0045】
さらに、この暖房時除湿運転モード時には、図9及び図10のように、第一の熱交換器1が加熱状態となり且つ第二の熱交換器2が強冷却状態となるように、制御装置により、流量制御弁4の絞り調整制御が行われる。具体的には、この流量制御弁4は、図10の冷媒回路における冷媒が次のような状態になるように絞り調整が行われる。
【0046】
まず、第一の熱交換器1において、高圧・高温ガス冷媒が熱交換により全て高圧・常温液冷媒に変化する。次に、この高圧・常温液冷媒が、流量制御弁4を通過する際に、断熱膨張により低圧・低温液冷媒に変化する。そして、第二の熱交換器2において、第一の熱交換器1から流量制御弁4を経て供給された低圧・低温液冷媒が、熱交換により低圧・低温ガス冷媒に変化して室外機へ排出される。
【0047】
冷媒回路中の冷媒が以上のような状態になるように、暖房時除湿運転モード時には流量制御弁4の絞り調整制御が行われ、第一の熱交換器1は加熱状態となり、第二の熱交換器2は冷却状態となる。また、除湿運転を行うため、制御装置は、室内空気の検出温度及び検出湿度から、この室内空気の露点温度を演算し、さらに、熱交換器温度センサ6による第二の熱交換器2の検出温度と、圧力センサ5により検出された蒸発圧力とを監視して、第二の熱交換器2を、演算により得られた露点温度未満の温度の冷却状態(強冷却状態)となるよう制御する。
【0048】
こうして、第一の熱交換器1を加熱状態とし第二の熱交換器2を強冷却状態として運転が行われると、図9のように、まず、吸込口から吸い込まれた湿った室内空気(目標湿度を超えた湿度の室内空気)が、加熱状態の第一の熱交換器1を通過することによって湿った(元の室内空気と略同一湿度である)温風となり、この温風が第一の熱交換器1側の吹出口より吹出される。また、第二の熱交換器2側の吹出口からは、吸込口から吸い込まれた湿った室内空気が、強冷却状態の第二の熱交換器2を通過することによって乾いた冷風となり、この乾いた冷風が吹出される。
【0049】
このように、加湿運転モードでは、元の室内空気と略同一湿度の温風を第一の熱交換器1側の吹出口から吹出し、除湿された乾いた冷風を第二の熱交換器2側の吹出口から吹出すことにより、温風と冷風とによって室温の低下を抑制しつつ、乾いた温風により湿度を低下(除湿)させる。
【0050】
このように、本実施形態の空気調和機の室内機によれば、上記4種類の運転モードの切換を適宜行うことにより、暖房運転時における室内空気の温度及び湿度を目標温度及び目標湿度に維持することができる。以下、本実施形態の空気調和機の室内機を用いて暖房運転時の室内空気の温度及び湿度が維持管理される状況を、図11を参照して説明する。尚、以下の例では、加湿運転を行うモード(暖房・加湿運転モード及び加湿運転モード)と、加湿運転を行わないモード(暖房運転モード及び暖房時除湿運転モード)とで、異なる目標温度及び目標湿度を設定している。
【0051】
まず、図11のように、室内空気の温度と湿度の何れもが目標温度及び目標湿度に到達していない状況において暖房を開始すると、暖房・加湿運転モードを実行する制御が行われ、暖房・加湿運転の実行と共に、室内空気の温度及び湿度が徐々に上昇する。
【0052】
ここで、例えば多数のOA機器等を配置した室内のように暖房負荷の少ない環境下である場合には、室内空気の湿度が目標湿度に到達する前に、室内空気の温度が目標温度に到達してしまうが、このような場合にも本実施形態の空気調和機によれば、室内空気の検出温度は目標温度に到達しているが検出湿度が目標湿度に到達していないと制御手段にて検知され、上述の制御により加湿運転モードに切り換わる。これにより、室内空気の温度が目標温度状態を維持しつつ湿度が徐々に上昇する。
【0053】
そして、この加湿運転が継続すると、室内空気の検出温度は目標温度であるが検出湿度が目標湿度を超えてしまうため、上述の制御によって暖房時除湿運転モードに切り換わる。これにより、室内空気の相対湿度が徐々に低下する。また、この暖房時除湿運転により、室内空気の温度も徐々に低下する。
【0054】
こうして、暖房時除湿運転により室内空気の温度及び相対湿度が徐々に低下し、図11のように、室内空気の相対湿度が目標湿度となると、一般的に室内空気の温度は目標温度より低下しているため、上述の制御によって暖房運転モードに切り換わる。これにより、室内空気の温度は目標温度に向かって徐々に上昇する。またこのとき、室内空気の温度の上昇に伴い、室内空気の相対湿度は低下する。
【0055】
そして、室内空気の温度が目標温度に到達する前に、室内空気の相対湿度が目標湿度以下に低下する状況となると、上述の制御によって暖房・加湿運転モードに切り換わり、上述のように暖房・加湿運転が行われる。
【0056】
以上のように、本実施形態の室内機によれば、暖房運転時において、各種センサにより検出される室内空気の温度及び湿度と、設定済みの目標温度及び目標湿度とに基づいて、暖房運転時における室内空気の温度及び湿度とがそれぞれ目標温度及び目標湿度に維持されるように上記4種類の運転モードの切換が適宜行われるため、暖房運転時における室内空気の温度及び湿度を快適な状態に保つことができる。
【0057】
尚、上記の実施形態において、室内空気の検出温度及び検出湿度がともに目標温度及び目標湿度である場合には、制御装置により、従来と同様に、送風運転モードを実行する制御が行われるようにしても良く、あるいは一時的に運転を停止する制御が行われるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の空気調和機における室内機の内部構成を示す図である。
【図2】図1の空気調和機における冷媒回路の構成を示す図である。
【図3】本発明の空気調和機の室内機の暖房・加湿運転時における内部の状態を示す図である。
【図4】図3の室内機における冷媒回路の状態を示す図である。
【図5】本発明の空気調和機の室内機の暖房運転時における内部の状態を示す図である。
【図6】図5の室内機における冷媒回路の状態を示す図である。
【図7】本発明の空気調和機の室内機の加湿運転時における内部の状態を示す図である。
【図8】図7の室内機における冷媒回路の状態を示す図である。
【図9】本発明の空気調和機の室内機の暖房時除湿運転時における内部の状態を示す図である。
【図10】図9の室内機における冷媒回路の状態を示す図である。
【図11】本発明の空気調和機の室内機による暖房運転時の動作フロー及び室内空気の温度及び湿度の変化を示す図である。
【図12】従来の空気調和機の室内機の暖房・加湿運転時における内部の状態を示す図である。
【図13】図12の室内機における冷媒回路の状態を示す図である。
【図14】従来の空気調和機の室内機の送風運転時における内部の状態を示す図である。
【図15】図14の室内機における冷媒回路の状態を示す図である。
【図16】従来の空気調和機の室内機による暖房運転時の動作フロー及び室内空気の温度及び湿度の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 第一の熱交換器、2 第二の熱交換器、3 冷媒配管、3a 接続配管、4 流量制御弁(膨張弁)、5 圧力センサ、6 熱交換器温度センサ、7 自然蒸発式加湿器、8 給水配管、9 電磁弁、10 送風機、11 室温センサ、12 湿度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内から吸い込まれた室内空気が送風手段によって複数の熱交換器を通過した後に室内へ吹出されるように構成され、少なくとも一つの熱交換器の下流側に、加湿時に外部から水分を供給可能な自然蒸発式加湿器を配置した空気調和機の室内機であって、
下流側に自然蒸発式加湿器が配置された第一の熱交換器と、
下流側に自然蒸発式加湿器が配置されていない第二の熱交換器と、
第一の熱交換器と第二の熱交換器とを接続配管で接続し、この第一の熱交換器に供給された冷媒をこの接続配管を介して第二の熱交換器に供給し、双方の熱交換器を通過した冷媒を第二の熱交換器から排出する冷媒回路と、
接続配管に設けられ、第一の熱交換器から第二の熱交換器へ供給される冷媒の流量を調整する流量調整手段と、
室内空気の温度を検出する室温検出手段と、
室内空気の湿度を検出する湿度検出手段と、
暖房運転時に、検出された室内空気の温度及び湿度に基づいて、自然蒸発式加湿器への給水制御と、流量調整手段の絞りを調整することによる第二の熱交換器の制御を行い、空調運転モードの切換運転を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項2】
請求項1に記載の空気調和機の室内機において、
制御手段は、検出された室内空気の温度及び湿度がともに所定の目標温度及び目標湿度に満たない場合に、自然蒸発式加湿器への給水を開始すると共に、流量調整手段の絞りを全開にして双方の熱交換器を加熱状態とする暖房・加湿運転モードを実行する制御を行うことを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の空気調和機の室内機において、
制御手段は、検出された室内空気の温度が所定の目標温度に満たない温度であり且つ検出された室内空気の湿度が所定の目標湿度に到達している場合に、自然蒸発式加湿器への給水を停止すると共に、流量調整手段の絞りを全開にして双方の熱交換器を加熱状態とする暖房運転モードを実行する制御を行うことを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の空気調和機の室内機において、
さらに、
第二の熱交換器における冷媒の蒸発圧力を検出する蒸発圧力検出手段と、
第二の熱交換器の温度を検出する熱交換器温度検出手段と、
を有し、
制御手段は、検出された室内空気の温度及び湿度、第二の熱交換器における冷媒の蒸発圧力、及び第二の熱交換器の温度に基づいて、自然蒸発式加湿器への給水の制御と、流量調整手段の絞りを調整することによる第二の熱交換器の制御を行い、空調運転モードの切換運転を制御することを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項5】
請求項4に記載の空気調和機の室内機において、
制御手段は、検出された室内空気の温度が所定の目標温度に到達しており且つ検出された室内空気の湿度が所定の目標湿度に満たない場合に、自然蒸発式加湿器への給水を開始すると共に、検出された室内空気の温度及び湿度に基づいて室内空気の露点温度を演算し、熱交換器温度検出手段から検出される第二の熱交換器の温度と、蒸発圧力検出手段より検出される蒸発圧力とを監視しながら流量調整手段の絞りを調整し、第一の熱交換器を加熱状態とし、第二の熱交換器を、演算により得られた露点温度以上の温度の冷却状態とする加湿運転モードを実行する制御を行うことを特徴とする空気調和機の室内機。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の空気調和機の室内機において、
制御手段は、検出された室内空気の温度が所定の目標温度に到達しており且つ検出された室内空気の湿度が所定の目標湿度を超えている場合に、自然蒸発式加湿器への給水を停止すると共に、検出された室内空気温度及び湿度に基づいて室内空気の露点温度を演算し、熱交換器温度検出手段から検出される第二の熱交換器の温度と、蒸発圧力検出手段より検出される蒸発圧力とを監視しながら流量調整手段の絞りを調整し、第一の熱交換器を加熱状態とし、第二の熱交換器を、演算により得られた露点温度未満の温度の冷却状態とする暖房時除湿運転モードを実行する制御を行うことを特徴とする空気調和機の室内機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−17369(P2006−17369A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194832(P2004−194832)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】