空港誘導灯制御システム
【課題】空港の誘導路を航空機が安全かつ効率的に走行できる。
【解決手段】滑走路1と駐機位置7とを接続する誘導路3を移動する航空機11の移動位置を検出可能とし、誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯17を設けている。
そして、発着する航空機11の誘導路3内の移動経路22を定め、航空機11が誘導路3に進入すると、誘導路3内の移動経路22に相当する領域の各中心線灯17を点灯する。さらに、移動経路22のうちの航空機11が通行済みの部分22aの中心線灯17を消灯又は暗くする。
【解決手段】滑走路1と駐機位置7とを接続する誘導路3を移動する航空機11の移動位置を検出可能とし、誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯17を設けている。
そして、発着する航空機11の誘導路3内の移動経路22を定め、航空機11が誘導路3に進入すると、誘導路3内の移動経路22に相当する領域の各中心線灯17を点灯する。さらに、移動経路22のうちの航空機11が通行済みの部分22aの中心線灯17を消灯又は暗くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港における誘導路のセンターライン(中心線)に一定間隔で設けられた中心線灯を点灯制御する空港誘導灯制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港には航空機を安全に運行させるための設備の一つとして誘導灯がある。この誘導灯としては、滑走路に対して航空機が安全に発着するために滑走路の両側の路肩に沿って配列された滑走路用の誘導灯と、滑走路と駐機位置とを接続する誘導路の両側の路肩に沿って配列された滑走路用の誘導灯とがある。さらに、誘導路のセンターラインに沿って、一定間隔で中心線灯が設けられている。
【0003】
誘導路を通って、滑走路又は駐機位置へ移動する航空機のパイロットはこのセンターラインを示す中心線灯に沿って、航空機を移動させる。なお、誘導路は、滑走路と異なり、直線部以外にも曲線部や角部が存在するので、センターラインを示す中心線灯は必要不可欠である。
【0004】
上述した誘導路のセンターラインを示す中心線灯、誘導路及び滑走路に設けられた誘導灯の数は、空港の規模によって異なるが、数百から数万に達する。これらの中心線灯を含む誘導灯を点灯制御する誘導灯制御システムは、低視程時(夜間、降雨、濃霧等の視界不良時)の空港運用には必要不可欠なシステムの一つであり、誘導灯、中心線灯の点灯、消灯には信頼性及び確実性が要求される。
【0005】
それ故、この誘導灯制御システムの不備が、航空機のニアミス事故もしくは、衝突事故の発生原因にもなりかねないため、空港運用に携わる管制官の業務はそれだけ精神的にも厳しい。
【0006】
通常、中心線灯を含む、誘導路及び滑走路に設けられた各誘導灯の点灯、消灯、点灯の明るさ(輝度)は、空港全体を管轄する管制官が、管制塔の上端の管制室において、操作スイッチにより選択設定する。具体的には、滑走路の運用方向(風向きによる2条件)、背景輝度(3条件)、雲低高(2条件)、視程(6条件)の4項目における各条件を選択設定する。
【0007】
すなわち、背景輝度が「昼間」や「視程の悪い状態」や「雲底高が低い状態」の条件では誘導灯を明るくし、逆に「夜間」や「視程が良い状態」や「雲底高が高い」の条件では誘導灯を暗くする制御を行っている。したがって、管制官が、操作スイッチで誘導灯の点灯、消灯、明るさ(輝度)の設定変更を実施すると、空港に設置さている前記中心線灯を含む全部の誘導灯が一斉に点灯、消灯、明るさ変更される。
【0008】
このように、パイロットは、管制官が選択設定した条件で点灯している各誘導灯を目視で確認しながら航空機を操縦する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
空港に着地しょうとする航空機のパイロットは、管制官からの無線指示に基づいて滑走路に着地する。同時に着地後の乗客を降すための駐機位置(旅客ターミナルのエプロン等)が管制官から無線で知らされる。パイロットは、滑走路に着地した後、誘導路を経由して指定された駐機位置へ向かう。
【0010】
しかしながら、滑走路から誘導路へ進入した航空機のパイロットは、この空港の滑走路、誘導路、駐機位置、旅客ターミナル等のレイアウト(配置)が不慣れの場合、進路を誤って、指定された駐機位置と異なる駐機位置に行ってしまう懸念がある。
【0011】
さらに、誘導路の路肩の誘導灯、及びセンターラインの中心線灯の点灯、消灯、点灯時の明るさは、管制官にて、上空を飛行する航空機からみて最も識別しやすい状態に設定されている。
【0012】
しかしながら、上空を飛行する航空機からみて最良の点灯、消灯、点灯時の明るさの制御状態が、当該誘導路を航空機で走行中のパイロットが見た場合における最良の点灯、消灯、点灯時の明るさの制御状態と一致するとは限らない。特に、日没近傍の時間帯においては、地上と上空とででは明るさ等の気象条件が著しく異なるので、誘導路を航空機で走行中のパイロットは、中心線灯でもってセンターラインの確認がしづらく、航空機の蛇行運転や進路誤りが発生しやすい。
【0013】
この場合、パイロットは管制官に対して無線で、誘導路内における駐機位置までの移動経路や自己の現在位置を問合わせることとなり、パイロットの精神的負担及び管制官の管制作業負担が増大する。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、この空港に対して発着する航空機が発生すると滑走路又は駐機位置への誘導路内の移動経路が自動的に定まり、当該航空機が誘導路を走行するに際して、自動的に移動経路に相当する中心線灯が点灯し、誘導路を走行中の航空機を、より効率よく、より安全に目標位置へ移動でき、かつ当該航空機のパイロット及び管制官の負担を軽減できる空港誘導灯制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解消するために、本発明の空港誘導灯制御システムにおいては、空港における滑走路と駐機位置とを接続する誘導路を移動する航空機の移動位置を検出する位置検出手段と、誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯と、空港に対する航空機の発着要求に応じて、当該航空機の滑走路又は駐機位置への誘導路内における移動経路を定める移動経路設定手段と、位置検出手段が、航空機が誘導路に進入したことを検出すると、誘導路内の移動経路に相当する領域の各中心線灯を点灯する移動経路点灯手段と、移動経路のうちの航空機が通行済みの部分の中心線灯を消灯又は暗くする移動済み経路暗化手段とを備えている。
【0016】
このように構成された空港誘導灯制御システムにおいては、この空港に対する航空機の発着要求が生じると、例えば、管制官がこの航空機が向かう駐機位置を指定すると、滑走路とから航空機の移動経路が自動的に定まる。そして、当該航空機が誘導路に進入すると、誘導路内の移動経路に相当する領域の各中心線灯が自動的に点灯する。さらに、点灯している誘導路内の移動経路のうち、航空機が通行済みの部分の中心線灯が消灯するので、不必要な誘導灯の点灯を抑制でき、電力消費を抑制できる。
【0017】
また、別の発明の空港誘導灯制御システムにおいては、空港における滑走路と駐機位置とを接続する誘導路を移動する各航空機の移動位置を検出する位置検出手段と、誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯と、空港に対する各航空機の発着要求に応じて、各航空機の滑走路又は駐機位置への誘導路内における各航空機毎の移動経路を定める移動経路設定手段と、位置検出手段が、新規の航空機が誘導路に進入したことを検出すると、誘導路内の当該新規の航空機の移動経路が、既に誘導路に進入している先行の航空機の移動経路の少なくともその一部に重複するか否かを判定する重複判定手段と、移動経路が重複しないとき、誘導路内の新規の航空機の移動経路に相当する領域の各中心線灯を点灯する移動経路点灯手段と、移動経路が重複するとき、新規の航空機の移動経路における、先行の航空機の位置から新規の航空機の方向に接近許容限界距離だけ、中心線灯を消灯又は暗くする接近防止手段と、各移動経路のうちの対応する航空機が通行済みの部分の中心線灯を消灯又は暗くする移動済み経路暗化手段とを備えている。
【0018】
このように構成された空港誘導灯制御システムにおいては、誘導路内に複数の航空機が存在した場合は、複数の移動経路が存在して互いに重複する。この場合、後から進入した新規の航空機の移動経路における、先行の航空機の位置から新規の航空機の方向に接近許容限界距離だけ、中心線灯が点灯する。
【0019】
したがって、例えば、誘導路内で、先行の航空機の後を今回新規の航空機が追従する場合は、先行の航空機と新規の航空機との間の中心線灯に消灯部分が存在するので、後ろ側の新規の航空機が先行の航空機に追突することが未然に防止される。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、誘導路内における移動経路に相当する中心線灯が自動的に点灯し、誘導路を走行中の航空機を、効率よく、より安全に運行でき、、かつ当該航空機のパイロット及び管制官の負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係わる空港誘導灯制御システムが設けられた空港の斜視図である。この空港には、いずれか一方が横風用となる互いに直交する2本の滑走路1、2が設けられている。各滑走路1、2に平行に誘導路3、4が設けられ、各誘導路3、4には、駐機位置7に達する誘導路3a、3b、4aが接続されている。誘導路4aは格納庫8にも接続されている。誘導路3と誘導路4aとを接続する誘導路6が形成されている。
【0023】
旅客ターミナル9には、駐機位置7に駐機している航空機11に乗客を乗り降りさせるためのエプロン10が取付けられ、各滑走路1、2、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6、及び各駐機位置7を見下せる位置に管制塔12aが設けられ、この管制塔12aの上端に管制室12が設置されている。
【0024】
一方、滑走路1、2の両側の路肩には、図2の拡大図で示すように、滑走路1、2に沿って、例えば、100m間隔で誘導灯13が設けられている。さらに、滑走路1、2の片方の路肩には同じく100m毎に、この滑走路1、2を走行する航空機11の移動位置を検出する位置検出器14が配設されている。同様に、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の路肩に、例えば、50m間隔で誘導灯15が設けられている。さらに、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の片方の路肩には同じく50m毎に、この誘導路を走行する航空機11の移動位置を検出する位置検出器16が配設されている。さらに、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6のセンターラインには、同じく50m毎に中心線灯17が設けられている。
【0025】
各路肩に設けられた誘導灯13、15は図3(a)に示すように支持具で地表から離れて設置されているが、中心線灯17は図3(b)に示すように誘導路のセンターライン上に埋設されており、上端部が地表に露出している。したがって、航空機11はこの中心線灯17を車輪で踏み付けることが可能である。各滑走路1、2、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の路肩に設けられた図3(c)に示す位置検出器14,16は、この位置検出器14,16の設置位置を通過する航空機11の便名を当該航空機11から出力される電波を受信することによって検出する。
【0026】
図4は、上述した空港に設けられた例えばコンピュータで構成された空港誘導灯制御システムの概略構成を示すブロック図である。この空港誘導灯制御システムはこの空港に発着する航空機11を管制制御する機能を有する。
【0027】
図4において、記憶部18内には、滑走路1、2の位置を含む各種の情報を記憶する滑走路ファイル19、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の位置を含む各種の情報を記憶する誘導路ファイル20、及び移動経路ファイル21が設けられている。
【0028】
移動経路ファイル21内には、図7に示すように、この空港で発着する航空機11が滑走路1、2から各駐機位置7へ移動したり、各駐機位置7から滑走路1、2へ移動する場合に通過する誘導路3、3a、3b、4、4a、6内の図9に示す複数の移動経路22のデータが記憶されている。すなわち、各移動経路22の出発位置と、目標位置と、詳細経路データ(通過誘導路名、含まれる各中心線灯17の番号etc)とが経路番号が付されて格納されている。
【0029】
図4において、各滑走路1、2、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6に設けられた各位置検出器14、16から、位置検出器の位置、便名が付された航空機11の検出信号が入力されると、図5(b)に示す地上航空機位置表示器23へ送出する。地上航空機位置表示器23には、滑走路ファイル19及び誘導路ファイル20から読み出した空港のレイアウト上の当該航空機11の位置に当該航空機の便名が表示される。
【0030】
また、航空機検出25はレーダアンテナ24から得られたこの空港近郷の上空を飛行中の各飛行機11の位置を、図5(a)に示す航空機位置表示器26に表示出力する。具体的には、地図上の当該航空機11の位置に便名を表示する。
【0031】
管制官は、前述したように、操作部27の操作スイッチにより、滑走路の運用方向(風向きによる2条件)、背景輝度(3条件)、雲低高(2条件)、視程(6条件)の4項目における誘導灯の点灯、消灯、明るさの各条件を選択設定すると、誘導灯点灯、消灯、明るさ設定部28が、誘導灯に対する最適点灯条件を決定して、誘導灯駆動部29へ送出する。誘導灯駆動部29は、各滑走路1、2、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の路肩に設けられた全部の誘導灯13、15を指定された同一条件で点灯する。
【0032】
また、管制官は、操作部27を操作して、航空機位置表示器26に表示された着地予定の航空機11に対して、滑走路1、2を指定した着地許可を無線で与えるとともに、駐機位置7を指示する。同時に、駐機位置入力部30は、操作部27から着地許可された航空機11の便名、滑走路、駐機位置7を取込んで、移動経路設定部31へ送出する。
【0033】
移動経路設定部31は、入力された滑走路(出発位置)、駐機位置(目標位置)で図7に示す移動経路ファイル21に記憶されている複数の移動経路22を検索して、条件を満足する1つの移動経路22を特定して、この移動経路22の経路番号、目的位置、及び便名を、図6に示す、設定移動経路メモリ32の新規領域に書込む。そして、当該航空機11の指定された滑走路1、2への着地待ち状態に移行する。
【0034】
そして、誘導路進入検出部33が、当該飛行機11が指定された滑走路1、2へ着地したことを、地上航空機位置表示器23に当該飛行機11の便名が表示された事にて検出し、さらに、図9(a)に示すように、当該航空機11が滑走路1から指定された誘導路3に進入したことを検出すると、当該航空機11の便名を移動経路読出部34へ送出する。移動経路読出部34は図6に示す設定移動経路メモリ32から、当該便名に設定している経路番号を読出して、移動経路点灯部35及び移動済経路消灯部36へ送出する。
【0035】
移動経路点灯部35は、移動経路ファイル21に記憶されている当該経路番号の移動経路22の点灯すべき中心線灯17の番号等の経路データを読出して、中心線灯駆動部37へ送出する。中心線灯駆動部37は、移動経路22を構成する中心線灯17を点灯する。その結果、図9(a)に示すように、誘導路3、3aの該当航空機11が指定された駐機位置7移動するための移動経路22の各中心線灯17が点灯する。
【0036】
さらに、移動済経路消灯部36は、図9(b)に示すように、移動経路22のうち、航空機11が通行済みの部分22aの各中心線灯17の消灯指示を中心線灯駆動部37へ送出する。中心線灯駆動部37は指定された通行済みの部分22aの各中心線灯17を消灯し、移動経路22のうち、航空機11が未通行の部分22bの各中心線灯17の点灯を維持する。
【0037】
したがって、航空機11が指定された駐機位置7に到達すると、図9(c)に示すように、当該航空機11に設定されている移動経路22はクリアされるので、中心線灯17は消灯される。
【0038】
図8は、上述した空港誘導灯制御システムが行う中心線灯制御動作を示す流れ図である。
【0039】
空港に対する着地予定の航空機11があると(ステップS1)、便名を検出し(S2)、当該航空機11の着地滑走路1、2、駐機位置7が管制官にて指定されると(S3)、当該航空機11に対する移動経路22を選択して(S4)、設定移動経路メモリ32へ書込む(S5)。当該航空機11が滑走路1、2に着地して(S6)、誘導路3、4に進入すると(S7)、移動経路22の全部の中心線灯17を点灯する(S8)。
【0040】
そして、当該航空機11が移動経路22を進むと(S9)、当該航空機11が駐機位置7に達するまでの期間においては(S10)、移動経路22の通行済みの部分22aの中心等17を消灯する。当該航空機11が駐機位置7に達すると(S11)、S1に戻り、次の着地予定の飛行機11を待つ。
【0041】
なお、実施形態においては、航空機11が着地する場合を説明したが、駐機位置7で乗客を搭載して、駐機位置7から滑走路1、2へ移動して、離陸する場合において、駐機位置7から滑走路1、2までの誘導路3に移動経路22を設定して、この移動経路22の中心線灯17を点灯することも可能である。
【0042】
このように構成された第1実施形態の空港誘導灯制御システムにおいては、管制室12において、航空機11のこの空港に対する発着要求が生じると、誘導路3、4内に、移動経路22がソフト的に作成される。そして、当該航空機11が誘導路3、4に進入すると、誘導路3,4内の移動経路22に相当する領域の各中心線灯17が自動的に点灯する。
【0043】
したがって、誘導路3、4を走行中の航空機11を、より効率よく、より安全に、目的地まで運行できるる。また、当該航空機11のパイロット及び管制官の負担を軽減できるさらに、点灯している誘導路内の移動経路22のうち、航空機11が通行済みの部分22aの中心線灯17が消灯するので、不必要な誘導灯の点灯を抑制でき、電力消費を抑制できる。
【0044】
(第2実施形態)
図10は本発明の第2実施形態に係わる空港誘導灯制御システムが行う中心線灯制御動作を示す流れ図である。この第2実施形態の空港誘導灯制御システムの構成図は図4に示す第1実施形態の空港誘導灯制御システムとほぼ同じであるので、説明を省略する。
【0045】
空港に対する着地予定の航空機11があると(ステップQ1)、便名を検出し(Q2)、当該航空機11の着地滑走路1、2、駐機位置7が管制官にて指定されると(Q3)、当該航空機11に対する移動経路22を選択して(Q4)、設定移動経路メモリ32へ書込む(Q5)。
【0046】
また、航空機11が滑走路1、2に着地すると(Q6)、着地した航空機11の便名から対応する移動経路22を読出す(S7)。次に、図11(a)(b)(c)に示すように、当該航空機11より先に着地して、誘導路3、4に設定された移動経路22sを走行中の先行の航空機11sが存在するか否かを調べ、存在する場合、この先行の航空機11sの移動経路22sと、今回着地した航空機11(新規の航空機)の移動経路22が一部でも重複しているか否かを調べる(Q8)。
【0047】
先行の航空機11sが存在しないか、存在しても、図11(c)に示すように、互いの移動経路22、22sが最初から重複しない場合は(Q8)、今回着地した航空機11(新規の航空機)の移動経路22の全領域の中心線灯17を点灯する(Q9)。
【0048】
また、先行の航空機11sが存在し、この先行の航空機11sの移動経路22sと、今回着地した航空機11(新規の航空機)の移動経路22が一部でも重複している場合は(Q8)、Q10へ進み、図11(a)に示すように、今回の航空機11の移動経路22における、先行の航空機11sの位置から今回の航空機11の方向に接近許容限界距離LDだけ、中心線灯17を消灯する。さらに、今回の航空機11の移動経路22における航空機11の通過済み部分22aの中心線灯17を消灯する(Q11)。
【0049】
さらに、航空機11、11sが移動経路22、22s上を移動したことが検出されると(Q12)、Q8へ進み、移動経路22、22s相互間の重複の有無を調べる。
【0050】
また、航空機11、11sが目標の駐機位置7に到着すると(Q13)、当該航空機11,11sに設定されている移動経路22、22sをクリアする(Q14)。
【0051】
このように構成された第2実施形態の空港誘導灯制御システムにおいては、図11(c)に示すように、複数の航空機11、11sが同時に誘導路3、4を走行している状態においては、各パイロットは、各航空機11,11a毎に設定された各移動経路22、22sが互いに重複しない時は、点灯された各中心線灯17に沿って航空機11,11aを走行させればよい。したがって、先の帯1実施形態の空港誘導灯制御システムとほぼ同様の作用効果を奏することが可能である。
【0052】
また、各移動経路22、22sが互いに重複した場合は、図11(a)に示すように、航空機11の移動経路22における、先行の航空機11sの位置から今回の航空機11の方向に接近許容限界距離LDだけ、中心線灯17を消灯する。
【0053】
図11(b)は、今回の航空機11と先行の航空機11aとが、誘導路3上の異なる方向から同一の駐機位置7を目指す場合を示す。この場合、今回の航空機11の移動経路22の誘導路3の誘導路3aの分岐点の手前部分の中心線灯17を消灯している。
【0054】
したがって、誘導路3、4内で、先行の航空機11sの後を今回の航空機11が追従する場合は、先行の航空機11sと今回の航空機11との間の中心線灯17に消灯部分が存在するので、後ろ側の航空機11が先行の航空機11sに追突することが未然に防止される。したがって、空港内における航空機尾11の移動運転時の安全性を確保できる。
【0055】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。各実施形態においては、航空機11の移動経路22における航空機11の通過済み部分22aの中心線灯17を消灯しているが、例えば、航空機11が未通行の部分22bの各中心線灯17の明るさに対して、暗く制御する制御手法を採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる空港誘導灯管制システムが適用される空港の模式図
【図2】同空港の滑走路及び誘導路の要部拡大図
【図3】同実施形態システムにおける誘導灯、中心線灯及び位置検出器の取付け状態図
【図4】同空港誘導灯管制システムの概略構成を示すブロック図
【図5】同空港誘導灯管制システムの管制室に設置された各表示器の表示内容を示す図
【図6】同空港誘導灯管制システム内に設けられた設定移動経路メモリの記憶内容を示す図
【図7】同空港誘導灯管制システム内に設けられた移動経路ファイルの記憶内容を示す図
【図8】同空港誘導灯管制システムが行う中心線灯制御動作を示す流れ図
【図9】同空港誘導灯管制システムの特徴を説明するための図
【図10】本発明の第2実施形態に係わる空港誘導灯管制システムが行う中心線灯制御動作を示す流れ図
【図11】同空港誘導灯管制システムの特徴を説明するための図
【符号の説明】
【0057】
1,2…滑走路、3,3a,3b,4,4a,6…誘導路、7…駐機位置、9…旅客ターミナル、11,11s…航空機、12…管制室、13,15…誘導灯、14,16…位置検出器、17…中心線灯、19…滑走路ファイル、20…誘導路ファイル、21…移動経路ファイル、22,22s…移動経路、23…地上航空機位置表示器、24…レーダアンテナ、25…航空機検出器、26…航空機位置表示器、27…操作部、28…誘導灯点灯、消灯、明るさ設定部、29…誘導灯駆動部、30…駐機位置入力部、31…移動経路設定部、32…設定移動経路メモリ、33…誘導路進入検出部、34…移動経路読出部、35…移動経路点灯部、36…移動済経路消灯部、37…中心線灯駆動部
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港における誘導路のセンターライン(中心線)に一定間隔で設けられた中心線灯を点灯制御する空港誘導灯制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
空港には航空機を安全に運行させるための設備の一つとして誘導灯がある。この誘導灯としては、滑走路に対して航空機が安全に発着するために滑走路の両側の路肩に沿って配列された滑走路用の誘導灯と、滑走路と駐機位置とを接続する誘導路の両側の路肩に沿って配列された滑走路用の誘導灯とがある。さらに、誘導路のセンターラインに沿って、一定間隔で中心線灯が設けられている。
【0003】
誘導路を通って、滑走路又は駐機位置へ移動する航空機のパイロットはこのセンターラインを示す中心線灯に沿って、航空機を移動させる。なお、誘導路は、滑走路と異なり、直線部以外にも曲線部や角部が存在するので、センターラインを示す中心線灯は必要不可欠である。
【0004】
上述した誘導路のセンターラインを示す中心線灯、誘導路及び滑走路に設けられた誘導灯の数は、空港の規模によって異なるが、数百から数万に達する。これらの中心線灯を含む誘導灯を点灯制御する誘導灯制御システムは、低視程時(夜間、降雨、濃霧等の視界不良時)の空港運用には必要不可欠なシステムの一つであり、誘導灯、中心線灯の点灯、消灯には信頼性及び確実性が要求される。
【0005】
それ故、この誘導灯制御システムの不備が、航空機のニアミス事故もしくは、衝突事故の発生原因にもなりかねないため、空港運用に携わる管制官の業務はそれだけ精神的にも厳しい。
【0006】
通常、中心線灯を含む、誘導路及び滑走路に設けられた各誘導灯の点灯、消灯、点灯の明るさ(輝度)は、空港全体を管轄する管制官が、管制塔の上端の管制室において、操作スイッチにより選択設定する。具体的には、滑走路の運用方向(風向きによる2条件)、背景輝度(3条件)、雲低高(2条件)、視程(6条件)の4項目における各条件を選択設定する。
【0007】
すなわち、背景輝度が「昼間」や「視程の悪い状態」や「雲底高が低い状態」の条件では誘導灯を明るくし、逆に「夜間」や「視程が良い状態」や「雲底高が高い」の条件では誘導灯を暗くする制御を行っている。したがって、管制官が、操作スイッチで誘導灯の点灯、消灯、明るさ(輝度)の設定変更を実施すると、空港に設置さている前記中心線灯を含む全部の誘導灯が一斉に点灯、消灯、明るさ変更される。
【0008】
このように、パイロットは、管制官が選択設定した条件で点灯している各誘導灯を目視で確認しながら航空機を操縦する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
空港に着地しょうとする航空機のパイロットは、管制官からの無線指示に基づいて滑走路に着地する。同時に着地後の乗客を降すための駐機位置(旅客ターミナルのエプロン等)が管制官から無線で知らされる。パイロットは、滑走路に着地した後、誘導路を経由して指定された駐機位置へ向かう。
【0010】
しかしながら、滑走路から誘導路へ進入した航空機のパイロットは、この空港の滑走路、誘導路、駐機位置、旅客ターミナル等のレイアウト(配置)が不慣れの場合、進路を誤って、指定された駐機位置と異なる駐機位置に行ってしまう懸念がある。
【0011】
さらに、誘導路の路肩の誘導灯、及びセンターラインの中心線灯の点灯、消灯、点灯時の明るさは、管制官にて、上空を飛行する航空機からみて最も識別しやすい状態に設定されている。
【0012】
しかしながら、上空を飛行する航空機からみて最良の点灯、消灯、点灯時の明るさの制御状態が、当該誘導路を航空機で走行中のパイロットが見た場合における最良の点灯、消灯、点灯時の明るさの制御状態と一致するとは限らない。特に、日没近傍の時間帯においては、地上と上空とででは明るさ等の気象条件が著しく異なるので、誘導路を航空機で走行中のパイロットは、中心線灯でもってセンターラインの確認がしづらく、航空機の蛇行運転や進路誤りが発生しやすい。
【0013】
この場合、パイロットは管制官に対して無線で、誘導路内における駐機位置までの移動経路や自己の現在位置を問合わせることとなり、パイロットの精神的負担及び管制官の管制作業負担が増大する。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、この空港に対して発着する航空機が発生すると滑走路又は駐機位置への誘導路内の移動経路が自動的に定まり、当該航空機が誘導路を走行するに際して、自動的に移動経路に相当する中心線灯が点灯し、誘導路を走行中の航空機を、より効率よく、より安全に目標位置へ移動でき、かつ当該航空機のパイロット及び管制官の負担を軽減できる空港誘導灯制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解消するために、本発明の空港誘導灯制御システムにおいては、空港における滑走路と駐機位置とを接続する誘導路を移動する航空機の移動位置を検出する位置検出手段と、誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯と、空港に対する航空機の発着要求に応じて、当該航空機の滑走路又は駐機位置への誘導路内における移動経路を定める移動経路設定手段と、位置検出手段が、航空機が誘導路に進入したことを検出すると、誘導路内の移動経路に相当する領域の各中心線灯を点灯する移動経路点灯手段と、移動経路のうちの航空機が通行済みの部分の中心線灯を消灯又は暗くする移動済み経路暗化手段とを備えている。
【0016】
このように構成された空港誘導灯制御システムにおいては、この空港に対する航空機の発着要求が生じると、例えば、管制官がこの航空機が向かう駐機位置を指定すると、滑走路とから航空機の移動経路が自動的に定まる。そして、当該航空機が誘導路に進入すると、誘導路内の移動経路に相当する領域の各中心線灯が自動的に点灯する。さらに、点灯している誘導路内の移動経路のうち、航空機が通行済みの部分の中心線灯が消灯するので、不必要な誘導灯の点灯を抑制でき、電力消費を抑制できる。
【0017】
また、別の発明の空港誘導灯制御システムにおいては、空港における滑走路と駐機位置とを接続する誘導路を移動する各航空機の移動位置を検出する位置検出手段と、誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯と、空港に対する各航空機の発着要求に応じて、各航空機の滑走路又は駐機位置への誘導路内における各航空機毎の移動経路を定める移動経路設定手段と、位置検出手段が、新規の航空機が誘導路に進入したことを検出すると、誘導路内の当該新規の航空機の移動経路が、既に誘導路に進入している先行の航空機の移動経路の少なくともその一部に重複するか否かを判定する重複判定手段と、移動経路が重複しないとき、誘導路内の新規の航空機の移動経路に相当する領域の各中心線灯を点灯する移動経路点灯手段と、移動経路が重複するとき、新規の航空機の移動経路における、先行の航空機の位置から新規の航空機の方向に接近許容限界距離だけ、中心線灯を消灯又は暗くする接近防止手段と、各移動経路のうちの対応する航空機が通行済みの部分の中心線灯を消灯又は暗くする移動済み経路暗化手段とを備えている。
【0018】
このように構成された空港誘導灯制御システムにおいては、誘導路内に複数の航空機が存在した場合は、複数の移動経路が存在して互いに重複する。この場合、後から進入した新規の航空機の移動経路における、先行の航空機の位置から新規の航空機の方向に接近許容限界距離だけ、中心線灯が点灯する。
【0019】
したがって、例えば、誘導路内で、先行の航空機の後を今回新規の航空機が追従する場合は、先行の航空機と新規の航空機との間の中心線灯に消灯部分が存在するので、後ろ側の新規の航空機が先行の航空機に追突することが未然に防止される。
【発明の効果】
【0020】
本発明においては、誘導路内における移動経路に相当する中心線灯が自動的に点灯し、誘導路を走行中の航空機を、効率よく、より安全に運行でき、、かつ当該航空機のパイロット及び管制官の負担を軽減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の各実施形態を図面を用いて説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係わる空港誘導灯制御システムが設けられた空港の斜視図である。この空港には、いずれか一方が横風用となる互いに直交する2本の滑走路1、2が設けられている。各滑走路1、2に平行に誘導路3、4が設けられ、各誘導路3、4には、駐機位置7に達する誘導路3a、3b、4aが接続されている。誘導路4aは格納庫8にも接続されている。誘導路3と誘導路4aとを接続する誘導路6が形成されている。
【0023】
旅客ターミナル9には、駐機位置7に駐機している航空機11に乗客を乗り降りさせるためのエプロン10が取付けられ、各滑走路1、2、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6、及び各駐機位置7を見下せる位置に管制塔12aが設けられ、この管制塔12aの上端に管制室12が設置されている。
【0024】
一方、滑走路1、2の両側の路肩には、図2の拡大図で示すように、滑走路1、2に沿って、例えば、100m間隔で誘導灯13が設けられている。さらに、滑走路1、2の片方の路肩には同じく100m毎に、この滑走路1、2を走行する航空機11の移動位置を検出する位置検出器14が配設されている。同様に、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の路肩に、例えば、50m間隔で誘導灯15が設けられている。さらに、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の片方の路肩には同じく50m毎に、この誘導路を走行する航空機11の移動位置を検出する位置検出器16が配設されている。さらに、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6のセンターラインには、同じく50m毎に中心線灯17が設けられている。
【0025】
各路肩に設けられた誘導灯13、15は図3(a)に示すように支持具で地表から離れて設置されているが、中心線灯17は図3(b)に示すように誘導路のセンターライン上に埋設されており、上端部が地表に露出している。したがって、航空機11はこの中心線灯17を車輪で踏み付けることが可能である。各滑走路1、2、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の路肩に設けられた図3(c)に示す位置検出器14,16は、この位置検出器14,16の設置位置を通過する航空機11の便名を当該航空機11から出力される電波を受信することによって検出する。
【0026】
図4は、上述した空港に設けられた例えばコンピュータで構成された空港誘導灯制御システムの概略構成を示すブロック図である。この空港誘導灯制御システムはこの空港に発着する航空機11を管制制御する機能を有する。
【0027】
図4において、記憶部18内には、滑走路1、2の位置を含む各種の情報を記憶する滑走路ファイル19、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の位置を含む各種の情報を記憶する誘導路ファイル20、及び移動経路ファイル21が設けられている。
【0028】
移動経路ファイル21内には、図7に示すように、この空港で発着する航空機11が滑走路1、2から各駐機位置7へ移動したり、各駐機位置7から滑走路1、2へ移動する場合に通過する誘導路3、3a、3b、4、4a、6内の図9に示す複数の移動経路22のデータが記憶されている。すなわち、各移動経路22の出発位置と、目標位置と、詳細経路データ(通過誘導路名、含まれる各中心線灯17の番号etc)とが経路番号が付されて格納されている。
【0029】
図4において、各滑走路1、2、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6に設けられた各位置検出器14、16から、位置検出器の位置、便名が付された航空機11の検出信号が入力されると、図5(b)に示す地上航空機位置表示器23へ送出する。地上航空機位置表示器23には、滑走路ファイル19及び誘導路ファイル20から読み出した空港のレイアウト上の当該航空機11の位置に当該航空機の便名が表示される。
【0030】
また、航空機検出25はレーダアンテナ24から得られたこの空港近郷の上空を飛行中の各飛行機11の位置を、図5(a)に示す航空機位置表示器26に表示出力する。具体的には、地図上の当該航空機11の位置に便名を表示する。
【0031】
管制官は、前述したように、操作部27の操作スイッチにより、滑走路の運用方向(風向きによる2条件)、背景輝度(3条件)、雲低高(2条件)、視程(6条件)の4項目における誘導灯の点灯、消灯、明るさの各条件を選択設定すると、誘導灯点灯、消灯、明るさ設定部28が、誘導灯に対する最適点灯条件を決定して、誘導灯駆動部29へ送出する。誘導灯駆動部29は、各滑走路1、2、各誘導路3、3a、3b、4、4a、6の路肩に設けられた全部の誘導灯13、15を指定された同一条件で点灯する。
【0032】
また、管制官は、操作部27を操作して、航空機位置表示器26に表示された着地予定の航空機11に対して、滑走路1、2を指定した着地許可を無線で与えるとともに、駐機位置7を指示する。同時に、駐機位置入力部30は、操作部27から着地許可された航空機11の便名、滑走路、駐機位置7を取込んで、移動経路設定部31へ送出する。
【0033】
移動経路設定部31は、入力された滑走路(出発位置)、駐機位置(目標位置)で図7に示す移動経路ファイル21に記憶されている複数の移動経路22を検索して、条件を満足する1つの移動経路22を特定して、この移動経路22の経路番号、目的位置、及び便名を、図6に示す、設定移動経路メモリ32の新規領域に書込む。そして、当該航空機11の指定された滑走路1、2への着地待ち状態に移行する。
【0034】
そして、誘導路進入検出部33が、当該飛行機11が指定された滑走路1、2へ着地したことを、地上航空機位置表示器23に当該飛行機11の便名が表示された事にて検出し、さらに、図9(a)に示すように、当該航空機11が滑走路1から指定された誘導路3に進入したことを検出すると、当該航空機11の便名を移動経路読出部34へ送出する。移動経路読出部34は図6に示す設定移動経路メモリ32から、当該便名に設定している経路番号を読出して、移動経路点灯部35及び移動済経路消灯部36へ送出する。
【0035】
移動経路点灯部35は、移動経路ファイル21に記憶されている当該経路番号の移動経路22の点灯すべき中心線灯17の番号等の経路データを読出して、中心線灯駆動部37へ送出する。中心線灯駆動部37は、移動経路22を構成する中心線灯17を点灯する。その結果、図9(a)に示すように、誘導路3、3aの該当航空機11が指定された駐機位置7移動するための移動経路22の各中心線灯17が点灯する。
【0036】
さらに、移動済経路消灯部36は、図9(b)に示すように、移動経路22のうち、航空機11が通行済みの部分22aの各中心線灯17の消灯指示を中心線灯駆動部37へ送出する。中心線灯駆動部37は指定された通行済みの部分22aの各中心線灯17を消灯し、移動経路22のうち、航空機11が未通行の部分22bの各中心線灯17の点灯を維持する。
【0037】
したがって、航空機11が指定された駐機位置7に到達すると、図9(c)に示すように、当該航空機11に設定されている移動経路22はクリアされるので、中心線灯17は消灯される。
【0038】
図8は、上述した空港誘導灯制御システムが行う中心線灯制御動作を示す流れ図である。
【0039】
空港に対する着地予定の航空機11があると(ステップS1)、便名を検出し(S2)、当該航空機11の着地滑走路1、2、駐機位置7が管制官にて指定されると(S3)、当該航空機11に対する移動経路22を選択して(S4)、設定移動経路メモリ32へ書込む(S5)。当該航空機11が滑走路1、2に着地して(S6)、誘導路3、4に進入すると(S7)、移動経路22の全部の中心線灯17を点灯する(S8)。
【0040】
そして、当該航空機11が移動経路22を進むと(S9)、当該航空機11が駐機位置7に達するまでの期間においては(S10)、移動経路22の通行済みの部分22aの中心等17を消灯する。当該航空機11が駐機位置7に達すると(S11)、S1に戻り、次の着地予定の飛行機11を待つ。
【0041】
なお、実施形態においては、航空機11が着地する場合を説明したが、駐機位置7で乗客を搭載して、駐機位置7から滑走路1、2へ移動して、離陸する場合において、駐機位置7から滑走路1、2までの誘導路3に移動経路22を設定して、この移動経路22の中心線灯17を点灯することも可能である。
【0042】
このように構成された第1実施形態の空港誘導灯制御システムにおいては、管制室12において、航空機11のこの空港に対する発着要求が生じると、誘導路3、4内に、移動経路22がソフト的に作成される。そして、当該航空機11が誘導路3、4に進入すると、誘導路3,4内の移動経路22に相当する領域の各中心線灯17が自動的に点灯する。
【0043】
したがって、誘導路3、4を走行中の航空機11を、より効率よく、より安全に、目的地まで運行できるる。また、当該航空機11のパイロット及び管制官の負担を軽減できるさらに、点灯している誘導路内の移動経路22のうち、航空機11が通行済みの部分22aの中心線灯17が消灯するので、不必要な誘導灯の点灯を抑制でき、電力消費を抑制できる。
【0044】
(第2実施形態)
図10は本発明の第2実施形態に係わる空港誘導灯制御システムが行う中心線灯制御動作を示す流れ図である。この第2実施形態の空港誘導灯制御システムの構成図は図4に示す第1実施形態の空港誘導灯制御システムとほぼ同じであるので、説明を省略する。
【0045】
空港に対する着地予定の航空機11があると(ステップQ1)、便名を検出し(Q2)、当該航空機11の着地滑走路1、2、駐機位置7が管制官にて指定されると(Q3)、当該航空機11に対する移動経路22を選択して(Q4)、設定移動経路メモリ32へ書込む(Q5)。
【0046】
また、航空機11が滑走路1、2に着地すると(Q6)、着地した航空機11の便名から対応する移動経路22を読出す(S7)。次に、図11(a)(b)(c)に示すように、当該航空機11より先に着地して、誘導路3、4に設定された移動経路22sを走行中の先行の航空機11sが存在するか否かを調べ、存在する場合、この先行の航空機11sの移動経路22sと、今回着地した航空機11(新規の航空機)の移動経路22が一部でも重複しているか否かを調べる(Q8)。
【0047】
先行の航空機11sが存在しないか、存在しても、図11(c)に示すように、互いの移動経路22、22sが最初から重複しない場合は(Q8)、今回着地した航空機11(新規の航空機)の移動経路22の全領域の中心線灯17を点灯する(Q9)。
【0048】
また、先行の航空機11sが存在し、この先行の航空機11sの移動経路22sと、今回着地した航空機11(新規の航空機)の移動経路22が一部でも重複している場合は(Q8)、Q10へ進み、図11(a)に示すように、今回の航空機11の移動経路22における、先行の航空機11sの位置から今回の航空機11の方向に接近許容限界距離LDだけ、中心線灯17を消灯する。さらに、今回の航空機11の移動経路22における航空機11の通過済み部分22aの中心線灯17を消灯する(Q11)。
【0049】
さらに、航空機11、11sが移動経路22、22s上を移動したことが検出されると(Q12)、Q8へ進み、移動経路22、22s相互間の重複の有無を調べる。
【0050】
また、航空機11、11sが目標の駐機位置7に到着すると(Q13)、当該航空機11,11sに設定されている移動経路22、22sをクリアする(Q14)。
【0051】
このように構成された第2実施形態の空港誘導灯制御システムにおいては、図11(c)に示すように、複数の航空機11、11sが同時に誘導路3、4を走行している状態においては、各パイロットは、各航空機11,11a毎に設定された各移動経路22、22sが互いに重複しない時は、点灯された各中心線灯17に沿って航空機11,11aを走行させればよい。したがって、先の帯1実施形態の空港誘導灯制御システムとほぼ同様の作用効果を奏することが可能である。
【0052】
また、各移動経路22、22sが互いに重複した場合は、図11(a)に示すように、航空機11の移動経路22における、先行の航空機11sの位置から今回の航空機11の方向に接近許容限界距離LDだけ、中心線灯17を消灯する。
【0053】
図11(b)は、今回の航空機11と先行の航空機11aとが、誘導路3上の異なる方向から同一の駐機位置7を目指す場合を示す。この場合、今回の航空機11の移動経路22の誘導路3の誘導路3aの分岐点の手前部分の中心線灯17を消灯している。
【0054】
したがって、誘導路3、4内で、先行の航空機11sの後を今回の航空機11が追従する場合は、先行の航空機11sと今回の航空機11との間の中心線灯17に消灯部分が存在するので、後ろ側の航空機11が先行の航空機11sに追突することが未然に防止される。したがって、空港内における航空機尾11の移動運転時の安全性を確保できる。
【0055】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。各実施形態においては、航空機11の移動経路22における航空機11の通過済み部分22aの中心線灯17を消灯しているが、例えば、航空機11が未通行の部分22bの各中心線灯17の明るさに対して、暗く制御する制御手法を採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係わる空港誘導灯管制システムが適用される空港の模式図
【図2】同空港の滑走路及び誘導路の要部拡大図
【図3】同実施形態システムにおける誘導灯、中心線灯及び位置検出器の取付け状態図
【図4】同空港誘導灯管制システムの概略構成を示すブロック図
【図5】同空港誘導灯管制システムの管制室に設置された各表示器の表示内容を示す図
【図6】同空港誘導灯管制システム内に設けられた設定移動経路メモリの記憶内容を示す図
【図7】同空港誘導灯管制システム内に設けられた移動経路ファイルの記憶内容を示す図
【図8】同空港誘導灯管制システムが行う中心線灯制御動作を示す流れ図
【図9】同空港誘導灯管制システムの特徴を説明するための図
【図10】本発明の第2実施形態に係わる空港誘導灯管制システムが行う中心線灯制御動作を示す流れ図
【図11】同空港誘導灯管制システムの特徴を説明するための図
【符号の説明】
【0057】
1,2…滑走路、3,3a,3b,4,4a,6…誘導路、7…駐機位置、9…旅客ターミナル、11,11s…航空機、12…管制室、13,15…誘導灯、14,16…位置検出器、17…中心線灯、19…滑走路ファイル、20…誘導路ファイル、21…移動経路ファイル、22,22s…移動経路、23…地上航空機位置表示器、24…レーダアンテナ、25…航空機検出器、26…航空機位置表示器、27…操作部、28…誘導灯点灯、消灯、明るさ設定部、29…誘導灯駆動部、30…駐機位置入力部、31…移動経路設定部、32…設定移動経路メモリ、33…誘導路進入検出部、34…移動経路読出部、35…移動経路点灯部、36…移動済経路消灯部、37…中心線灯駆動部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空港における滑走路と駐機位置とを接続する誘導路を移動する航空機の移動位置を検出する位置検出手段と、
前記誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯と、
前記空港に対する航空機の発着要求に応じて、当該航空機の滑走路又は駐機位置への前記誘導路内における移動経路を定める移動経路設定手段と、
前記位置検出手段が、前記航空機が誘導路に進入したことを検出すると、前記誘導路内の移動経路に相当する領域の各中心線灯を点灯する移動経路点灯手段と、
前記移動経路のうちの前記航空機が通行済みの部分の中心線灯を消灯又は暗くする移動済み経路暗化手段と
を備えた空港誘導灯制御システム。
【請求項2】
空港における滑走路と駐機位置とを接続する誘導路を移動する各航空機の移動位置を検出する位置検出手段と、
前記誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯と、
前記空港に対する各航空機の発着要求に応じて、各航空機の滑走路又は駐機位置への前記誘導路内における各航空機毎の移動経路を定める移動経路設定手段と、
前記位置検出手段が、新規の航空機が誘導路に進入したことを検出すると、前記誘導路内の当該新規の航空機の移動経路が、既に誘導路に進入している先行の航空機の移動経路の少なくともその一部に重複するか否かを判定する重複判定手段と、
移動経路が重複しないとき、前記誘導路内の前記新規の航空機の移動経路に相当する領域の各中心線灯を点灯する移動経路点灯手段と、
移動経路が重複するとき、前記新規の航空機の移動経路における、前記先行の航空機の位置から新規の航空機の方向に接近許容限界距離だけ、中心線灯を消灯又は暗くする接近防止手段と、
前記各移動経路のうちの対応する航空機が通行済みの部分の中心線灯を消灯又は暗くする移動済み経路暗化手段と
を備えた空港誘導灯制御システム。
【請求項1】
空港における滑走路と駐機位置とを接続する誘導路を移動する航空機の移動位置を検出する位置検出手段と、
前記誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯と、
前記空港に対する航空機の発着要求に応じて、当該航空機の滑走路又は駐機位置への前記誘導路内における移動経路を定める移動経路設定手段と、
前記位置検出手段が、前記航空機が誘導路に進入したことを検出すると、前記誘導路内の移動経路に相当する領域の各中心線灯を点灯する移動経路点灯手段と、
前記移動経路のうちの前記航空機が通行済みの部分の中心線灯を消灯又は暗くする移動済み経路暗化手段と
を備えた空港誘導灯制御システム。
【請求項2】
空港における滑走路と駐機位置とを接続する誘導路を移動する各航空機の移動位置を検出する位置検出手段と、
前記誘導路における中心線に沿って一定間隔で設けられた複数の中心線灯と、
前記空港に対する各航空機の発着要求に応じて、各航空機の滑走路又は駐機位置への前記誘導路内における各航空機毎の移動経路を定める移動経路設定手段と、
前記位置検出手段が、新規の航空機が誘導路に進入したことを検出すると、前記誘導路内の当該新規の航空機の移動経路が、既に誘導路に進入している先行の航空機の移動経路の少なくともその一部に重複するか否かを判定する重複判定手段と、
移動経路が重複しないとき、前記誘導路内の前記新規の航空機の移動経路に相当する領域の各中心線灯を点灯する移動経路点灯手段と、
移動経路が重複するとき、前記新規の航空機の移動経路における、前記先行の航空機の位置から新規の航空機の方向に接近許容限界距離だけ、中心線灯を消灯又は暗くする接近防止手段と、
前記各移動経路のうちの対応する航空機が通行済みの部分の中心線灯を消灯又は暗くする移動済み経路暗化手段と
を備えた空港誘導灯制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−59162(P2008−59162A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−233956(P2006−233956)
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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