空調装置及び空調制御方法
【課題】温度上昇時と温度下降時とで異なる温度変化パターンとなる温度スウィングを与える空調装置において、快適性及び省エネルギー性を両立させる。
【解決手段】可変風量ユニット5は、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段を備え、前記切替手段による切替前後を通じて、空調装置2の運転中に、各吹出口4からの送風が停止されることなく、各吹出口4からの送風量を合計した合計送風量をほぼ一定に保持する。
【解決手段】可変風量ユニット5は、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段を備え、前記切替手段による切替前後を通じて、空調装置2の運転中に、各吹出口4からの送風が停止されることなく、各吹出口4からの送風量を合計した合計送風量をほぼ一定に保持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の温度を上下にスウィングさせることにより、快適性と省エネルギー性を両立させた空調装置及び空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内の温度変化が、急下降・緩上昇などのように温度下降時と温度上昇時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように温度スウィングさせる空調装置及び空調制御方法が知られている。かかる空調装置及び空調制御方法では、前述のような温度スウィングを与えることにより、例えば夏季の冷房運転では、急下降時には冷感がオーバーシュートして実際の温度以上に涼しく感じさせる一方で、緩上昇時には室温とほぼ同じ冷感が得られるため、快適性が向上するということが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1、2では、時刻t=−30分からt=0分まで室温を26℃に保つように冷房運転している空気調和機の上記冷房運転を、時刻t=0分から周期的に15分だけ停止させて空気調和機を間欠動作させる制御方法が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献3では、各室に対応する給気ダンパと還気ダンパとを周期的に所定時間閉じて、室に調和空気を供給する空気調和動作を順次停止させる空調制御手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−257270号公報
【特許文献2】特開平9−292149号公報
【特許文献3】特開平10−141750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2記載の空調制御方法では、空調機を一定の間隔で周期的にONとOFFとを繰り返すようにし、上記特許文献3記載の空調制御手段では、室の給気ダンパ及び還気ダンパを周期的に開閉を繰り返すようにしているため、空調機の停止中又は給気ダンパ及び還気ダンパの閉鎖中には、新鮮な外気の供給が停止するとともに、空気の送風による強制対流がなくなって自然対流のみとなる結果、室内環境の快適性が損なわれるという問題が生じていた。
【0007】
また、空調機を一定の間隔で周期的にONとOFFとを繰り返す運転をした場合、空調機のOFF中に送風機動力の節減効果が期待できるものの、空調機をONに切り替えた際、室内の温度を急激に変化させるため、冷凍機の蒸発温度、冷水温度を急激に下降させるなどに費やす動力が大きくなり、冷凍機などの消費動力が増加する要因となり、省エネルギー性が十分に図られない場合があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すような温度スウィングを与える空調装置及び空調制御方法において、快適性及び省エネルギー性を両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、空調機と吹出口とを連通する給気ダクトに対して、複数のゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクトの通風量を調整可能な可変風量ユニットが、各ゾーンに1又は複数備えられた空調装置であって、
前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段を備え、
前記切替手段による切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風が停止されることなく、各吹出口からの送風量を合計した合計送風量がほぼ一定に保持されることを特徴する空調装置が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すような温度スウィングを与えるために、可変風量ユニットの通風量を制御することにより行っている。すなわち、本空調装置は、各ゾーンに1又は複数の可変風量ユニットが備えられ、一つのゾーンに対応する可変風量ユニットの通風量を適宜調整することによって、そのゾーンが前述の温度スウィングを示すようにしたものである。
【0011】
さらに、本空調装置には、複数のゾーン毎に備えられた1又は複数の可変風量ユニットに対して、各ゾーン毎に温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段が設けられる。そして、前記切替手段による切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風が停止されることなく、各吹出口からの送風量を合計した合計送風量がほぼ一定に保持されるように制御される。
【0012】
このように、各吹出口からの送風が停止することがないため、従来の新鮮な外気の供給停止や空気のよどみによる快適性の低下という問題が解消できる。さらに、空調機のON・OFFを繰り返すことがないため、ONに切り替えた際の消費動力の増加がなくなり、省エネルギーが実現できる。このため、快適性及び省エネルギー性を両立させた空調装置が提供できるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、開度を予め設定した開度又は全開にして急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される請求項1記載の空調装置が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時において、特に急速な温度変化が求められる場合に有効なものである。具体的には、前記一方の温度変化時には、前記可変風量ユニットの開度を予め設定した開度又は全開にして急速な温度変化パターンが生じるようにし、また前記他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンが生じるようにしている。なお、オーバーシュートによる快適性の向上という観点から、冷房運転では温度下降時に急速な温度変化パターンとすることが好ましい。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、設定温度を急激に変化させる急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される請求項1記載の空調装置が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時に求められる温度変化が、上記請求項2記載の発明ほどではないが、急速な温度変化が求められる場合に有効なものである。具体的には、前記一方の温度変化時には、設定温度を急激に変化させる急速な温度変化パターンが生じるようにし、また前記他方の温度変化時には、上記請求項2記載の発明と同様に、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンが生じるようにしている。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記切替手段は、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、前記一方の温度変化時において少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間を経過したタイミングで、前記可変風量ユニットの通風量の制御を順次切り替える請求項2、3いずれかに記載の空調装置が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明は、上記請求項2、3記載の空調装置について、前記切替手段によって可変風量ユニットの通風量の制御を切り替える「所定のタイミング」を規定したものである。すなわち、前記切替手段は、前記一方の温度変化時において少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間を経過したタイミングで切り替えている。ここで、「少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間」とは、各ゾーンの負荷特性により定められる時間であり、予め各ゾーンの設定温度を満足する時間を設定しておくこともできるが、その都度各ゾーンの温度計測結果に応じて定めることが好ましい。
【0019】
請求項5に係る本発明として、仕切られた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる請求項1〜4いずれかに記載の空調装置が提供される。
【0020】
請求項6に係る本発明として、一つの空間が仮想的に区分けされた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる請求項1〜4いずれかに記載の空調装置が提供される。
【0021】
上記請求項5、6記載の発明は、空調対象となる複数のゾーンの形態について規定したものであり、本空調装置は、仕切られた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の可変風量ユニットが設けられる場合でも、一つの空間が仮想的に区分けされた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる場合でも対応できる。
【0022】
請求項7に係る本発明として、空調機と吹出口とを連通する給気ダクトに対して、複数のゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクトの通風量が調整可能な可変風量ユニットを、各ゾーンに1又は複数備えた空調装置における空調制御方法であって、
対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、前記可変風量ユニットの通風量を制御するとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、前記可変風量ユニットの通風量の制御を順次切り替え、
この切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風を停止することなく、各吹出口からの合計送風量をほぼ一定に保持するように制御することを特徴とする空調制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すような温度スウィングを与える空調装置及び空調制御方法において、快適性及び省エネルギー性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る空調装置1を備えた空調対象空間の平面図である。
【図2】空調装置1を備えた各ゾーンの断面図(その1)である。
【図3】空調装置1を備えた各ゾーンの断面図(その2)である。
【図4】第1の制御方式による各ゾーンの設定状態を示す時系列線図である。
【図5】第1の制御方式による設定状態を示す流れ図である。
【図6】空調装置1を運転したときの室内温度の時系列線図である。
【図7】第2の制御方式による各ゾーンの設定状態を示す時系列線図である。
【図8】第2の制御方式による設定状態を示す流れ図である。
【図9】温度スウィングを与えた場合の温熱感の時系列線図である。
【図10】温度スウィング幅±3.5℃における温度上昇時と温度下降時の積極的快適性の分布線図である。
【図11】温度スウィング幅±1.7℃における温度上昇時と温度下降時の積極的快適性の分布線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明に係る空調装置1を示す平面図である。
【0026】
本発明に係る空調装置1は、空調機21、22と、各ゾーンに調和空気を吹き出すための吹出口4と、前記空調機21、22と吹出口4とを連通する給気ダクト3と、各ゾーンに1又は複数備えられ、前記給気ダクト3に対して各ゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクト3の通風量を調整可能な可変風量ユニット5とから構成されている。
【0027】
前記可変風量ユニット5としては、ダンパー開度の調整によって、通過する温度一定の空気の通風量が調整可能とされたVAVユニットを使用することができる。
【0028】
図2は、仕切られた独立する4つのゾーンR1、R2、R3、R4に前記空調装置1を適用した場合の断面図である。図示例では、各ゾーンR1、R2、R3、R4にそれぞれ複数の吹出口41…、42…、43…、44…及び可変風量ユニット51…、52…、53…、54…が設けられ、1つの可変風量ユニット(例えば51)に対して複数の吹出口(例えば41…)が設けられている。前記可変風量ユニットは、1つのゾーン(例えば51)に設けられた複数の可変風量ユニット(例えば51…)が一体的に制御される。なお、前記吹出口及び可変風量ユニットは、各ゾーンに1つずつ設けられるものでもよく、1つの可変風量ユニットに1つの吹出口が設けられるものでもよい。
【0029】
一方、図3は、1つの空調対象空間Rが仮想的に区分けされた4つのゾーンR1、R2、R3、R4に、前記空調装置1を適用した場合の断面図である。図示例では、可変風量ユニットを備えた吹出口が各ゾーンに複数設けられてるが、前述の通りこれらは各ゾーンに1又は複数で設けることができる。
【0030】
前記可変風量ユニット5は、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される。すなわち、図2及び図3に示される例では、1つのゾーン(例えばR1)に設けられた複数の可変風量ユニット(例えば51…)の通風量を適宜調整することによって、そのゾーンR1の室温が前述のような温度スウィングを示すように制御されている。
【0031】
さらに、前記可変風量ユニット51…、52…、53…、54…は、各ゾーンR1、R2、R3、R4毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段(図示せず)を備えている。
【0032】
本空調装置1では、前記切替手段による切替前後を通じて、空調装置1の運転中に、各吹出口41…、42…、43…、44…からの送風が停止されることなく、各吹出口41…、42…、43…、44…からの送風量を合計した合計送風量がほぼ一定に保持されるようになっている(図4の「R1〜R4の合計」の段参照)。
【0033】
このように、各吹出口41…〜44…からの送風が停止することがないため、従来のように新鮮な外気の供給停止や空気のよどみによる快適性の低下という問題が解消できる。さらに、従来のように空調機のON・OFFを繰り返すことがないため、ONに切り替えた際の消費動力の増加がなくなり、省エネルギーが実現できる。このため、快適性及び省エネルギー性を両立させた空調装置1が提供できるようになる。
【0034】
前記切替手段としては、空調機21、22又は別途設けられる制御装置(図示せず)などに備えられ、所定の経過時間に基づいて又は室内に適宜設けた温度計測器による計測温度に基づいて前記可変風量ユニットのダンパー開度を制御する制御部と、該制御部からの制御信号を各可変風量ユニットに伝送する伝送部とから構成されるものを使用することができる。
【0035】
前記切替手段による通風量の制御方式の例として、次の2つの方式について詳述する。
【0036】
先ず第1の制御方式について、図4及び図5に基づいて説明する。図4は各ゾーンに設けられる可変風量ユニット5のダンパ開度の時系列線図、図5は運転手順を示すブロック線図である。同図中「風量比」とは、ダンパー全開時の通風量を100としたときの通風量の割合(%)である。
【0037】
第1の制御方式において前記可変風量ユニット5は、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、開度を予め設定した開度又は全開にして急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるようになっている。
【0038】
すなわち、本第1の制御方式は、冷房運転においては温度下降時に、暖房運転においては温度上昇時に、特に急速な温度変化が求められるような場合に有効な制御方式である。
【0039】
具体的に冷房運転時を例に詳述すると、1つのゾーン(例えばR1)において、室内の温度変化が温度下降するように、そのゾーンR1に対応する可変風量ユニット51…は、ゾーンR1の設定温度を26℃、ダンパー開度を全開(風量比100%)とするA設定に設定して、室内の温度変化を急下降させる。これによって、冷感がオーバーシュートして実際の温度以上に冷涼感を生じさせることができる。その後、所定のタイミング(時刻M1)で、室内の温度変化が温度上昇するように、前記可変風量ユニット51…は、ゾーンR1の設定温度を27.5℃、ダンパー開度72.7%とするD設定に設定し、さらに所定のタイミング(時刻M2)で、設定温度を29℃、ダンパー開度66.7%とするC設定に設定し、さらに所定のタイミング(時刻M3)で、前記C設定と同一条件のB設定に設定する。このように、設定温度を段階的に変化させることによって、室内の温度が緩やかに上昇する温度変化パターンが得られるようになる。このD→C→Bの各設定による室内温度の緩上昇時には、室温とほぼ同じ冷感が得られるようになる。その後、所定のタイミング(時刻M4)で、前記A設定に切り替えて温度変化を急下降させる。これによって、図6に示されるように、温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンが繰り返されるようになる。他の各ゾーンR2〜R4においても、同様の温度変化パターンが繰り返されるように、各ゾーンに対応する可変風量ユニット5の通風量が制御されている。そして、図4に示されるように、各ゾーンR1〜R4毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように制御されている。
【0040】
前記切替手段による可変風量ユニット5の切り替えのタイミングは、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、前記一方の温度変化時、図4に示される例では温度下降時において、少なくとも設定温度(前記A設定の26℃)を満足する時間以上の時間を経過したタイミングとされている。この「少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間」とは、各ゾーンの負荷特性により定められる時間であり、予め各ゾーンの設定温度を満足する時間を設定しておくこともできるが、その都度各ゾーンの温度計測結果に応じて定めることが好ましい。なお、この時間終了時には室内温度が設定温度(26℃)以下となることもあり得る。
【0041】
図4に示される例では、時間tが0〜M4までの1つの周期において、この周期が4つのユニットタイムに分割され、tが0〜M1のユニットタイムではゾーンR1が温度下降時とされ、tがM1〜M2ではゾーンR2が温度下降時とされ、tがM2〜M3ではゾーンR3が温度下降時とされ、tがM3〜M4ではゾーンR4が温度下降時とされることにより、各ゾーン毎に温度変化パターンの位相が順次ずれるように制御されている。この温度下降時となるタイムユニットが終了した後の温度上昇時では、各ゾーンとも、設定温度を27.5℃→29℃→29℃(風量比を72.7%→66.7%→66.7%)と段階的に変化させて緩やかな温度変化パターンとなるように制御されている。ここで、「設定温度を段階的に変化」させるとは、温度上昇時の各ユニットタイムにおいて、直前のユニットタイムより設定温度を低下させなければよく、同じ設定温度に維持することも含まれる。なお、前記A設定及びD設定(設定温度が26℃、27.5℃)のとき、可変風量ユニット5のダンパ開度は中央制御とし、B設定及びC設定(それぞれ設定温度が29℃)のとき、可変風量ユニット5のダンパ開度は個別制御とすることが好ましい。
【0042】
図4及び図5において、各ユニットタイムにおけるA設定、B設定、C設定、D設定の設定内容をまとめると、次のとおりである。
A設定(温度下降時):風量比100%(ダンパー全開、設定温度26℃)
B設定(温度上昇時):設定温度29℃、風量比66.7%
C設定(温度上昇時):設定温度29℃、風量比66.7%
D設定(温度上昇時):設定温度27.5℃、風量比72.7%
そして、図5に示されるように、時間tがM4となった時点において、パラメータである時間tを0にリセットし、同様にして次の周期(時間tが0’〜M4’)の制御が開始される。このように、本空調装置1では、前記切替手段による切替前後を通じて、空調装置1の運転中に、各吹出口41…〜44…からの送風が停止されることはない。
【0043】
なお、図4の「R1〜R4の合計」の段に示されるように、前記切替手段による切替前後を通じて、各吹出口41…〜44…からの送風量を合計した合計送風量はほぼ一定に保持されている。
【0044】
次に、第2の制御方式について、図7及び図8に基づいて説明する。
【0045】
第2の制御方式において前記可変風量ユニット5は、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、設定温度を急激に変化させる急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるようになっている。
【0046】
すなわち、本第2の制御方式は、冷房運転においては温度下降時に、暖房運転においては温度上昇時に、上記第1の制御方式ほど急速な温度変化は求められないものの、ある程度急速な温度変化を必要とする場合に有効である。上述の通り、本第2の制御方式は、上記第1の制御方式と比較して、冷房運転においては温度下降時、暖房運転においては温度上昇時の設定方法が異なっている。
【0047】
具体的に冷房運転時を例に説明すると、温度下降時には、それまでの設定温度から急激に低い設定温度に設定する(急激に可変風量ユニットの通風量を増加する)ことによって急速な温度変化パターンとし、温度上昇時には、上記第1の制御方式と同様に、設定温度を段階的に上昇(可変風量ユニットの通風量を段階的に低下)させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように制御されている。
【0048】
このように、第2の制御方式では、上記第1の制御方式と比較して、前記A設定に代えて、次のA’設定とされる。
A’設定(温度下降時):設定温度26℃、風量比80.0%
このように、各ゾーンでは、設定温度をそれまでの29℃から26℃に急激に下降させることによって(風量比を66.7%から80.0%に急激に増加させることによって)、急速な温度変化パターンが形成されるようになる。
【0049】
ところで、上述のような温度スウィングが快適性に与える影響について、被験者実験の結果である図9〜図11に基づいて考察する。図9は冷房運転時に温度スウィングを与えた場合の温熱感の時系列線図、図10は温度スウィング幅±3.5℃における温度上昇時と温度下降時の快適性の分布線図、図11は温度スウィング幅±1.7℃における温度上昇時と温度下降時の快適性の分布線図である。ここで、図10及び図11における「積極的快適性」とは、被験者が「気持ちよい」「快適」と感じる積極的な快適性の程度を定量化したもので、例えば被験者に室の温熱環境について「快適」「不快」「どちらでもない」から選択させ、「快適」「不快」を選択した被験者に対してその程度を0〜100の範囲で申告させることによって定量化できる。このため積極的快適性は、従来の被験者実験において用いられる「現在の温熱環境を受け入れられますか」という問いに対して答えるパッシブな快適性表示と異なるものである。
【0050】
図9に示されるように、温度スウィングを与えた場合、同じ温度であっても、温度上昇時の温熱感と温度下降時の温熱感とが異なり、温度下降時の方が温度上昇時より涼しく感じることが実証された。
【0051】
また、図10及び図11より、温度スウィングを与えた場合、同じ温度であっても、温度上昇時の積極的快適性と温度下降時の積極的快適性が異なり、温度下降時の積極的快適性の方が温度上昇時の積極的快適性より大きくなっている。その傾向は、温度スウィング幅が大きい(±3.5℃)方が顕著であった。
【符号の説明】
【0052】
1…空調装置、21・22…空調機、3…給気ダクト、4・41〜44…吹出口、5・51〜54…可変風量ユニット、R1〜R4…ゾーン
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内の温度を上下にスウィングさせることにより、快適性と省エネルギー性を両立させた空調装置及び空調制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、室内の温度変化が、急下降・緩上昇などのように温度下降時と温度上昇時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように温度スウィングさせる空調装置及び空調制御方法が知られている。かかる空調装置及び空調制御方法では、前述のような温度スウィングを与えることにより、例えば夏季の冷房運転では、急下降時には冷感がオーバーシュートして実際の温度以上に涼しく感じさせる一方で、緩上昇時には室温とほぼ同じ冷感が得られるため、快適性が向上するということが知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1、2では、時刻t=−30分からt=0分まで室温を26℃に保つように冷房運転している空気調和機の上記冷房運転を、時刻t=0分から周期的に15分だけ停止させて空気調和機を間欠動作させる制御方法が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献3では、各室に対応する給気ダンパと還気ダンパとを周期的に所定時間閉じて、室に調和空気を供給する空気調和動作を順次停止させる空調制御手段が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−257270号公報
【特許文献2】特開平9−292149号公報
【特許文献3】特開平10−141750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2記載の空調制御方法では、空調機を一定の間隔で周期的にONとOFFとを繰り返すようにし、上記特許文献3記載の空調制御手段では、室の給気ダンパ及び還気ダンパを周期的に開閉を繰り返すようにしているため、空調機の停止中又は給気ダンパ及び還気ダンパの閉鎖中には、新鮮な外気の供給が停止するとともに、空気の送風による強制対流がなくなって自然対流のみとなる結果、室内環境の快適性が損なわれるという問題が生じていた。
【0007】
また、空調機を一定の間隔で周期的にONとOFFとを繰り返す運転をした場合、空調機のOFF中に送風機動力の節減効果が期待できるものの、空調機をONに切り替えた際、室内の温度を急激に変化させるため、冷凍機の蒸発温度、冷水温度を急激に下降させるなどに費やす動力が大きくなり、冷凍機などの消費動力が増加する要因となり、省エネルギー性が十分に図られない場合があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すような温度スウィングを与える空調装置及び空調制御方法において、快適性及び省エネルギー性を両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、空調機と吹出口とを連通する給気ダクトに対して、複数のゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクトの通風量を調整可能な可変風量ユニットが、各ゾーンに1又は複数備えられた空調装置であって、
前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段を備え、
前記切替手段による切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風が停止されることなく、各吹出口からの送風量を合計した合計送風量がほぼ一定に保持されることを特徴する空調装置が提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すような温度スウィングを与えるために、可変風量ユニットの通風量を制御することにより行っている。すなわち、本空調装置は、各ゾーンに1又は複数の可変風量ユニットが備えられ、一つのゾーンに対応する可変風量ユニットの通風量を適宜調整することによって、そのゾーンが前述の温度スウィングを示すようにしたものである。
【0011】
さらに、本空調装置には、複数のゾーン毎に備えられた1又は複数の可変風量ユニットに対して、各ゾーン毎に温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段が設けられる。そして、前記切替手段による切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風が停止されることなく、各吹出口からの送風量を合計した合計送風量がほぼ一定に保持されるように制御される。
【0012】
このように、各吹出口からの送風が停止することがないため、従来の新鮮な外気の供給停止や空気のよどみによる快適性の低下という問題が解消できる。さらに、空調機のON・OFFを繰り返すことがないため、ONに切り替えた際の消費動力の増加がなくなり、省エネルギーが実現できる。このため、快適性及び省エネルギー性を両立させた空調装置が提供できるようになる。
【0013】
請求項2に係る本発明として、前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、開度を予め設定した開度又は全開にして急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される請求項1記載の空調装置が提供される。
【0014】
上記請求項2記載の発明は、温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時において、特に急速な温度変化が求められる場合に有効なものである。具体的には、前記一方の温度変化時には、前記可変風量ユニットの開度を予め設定した開度又は全開にして急速な温度変化パターンが生じるようにし、また前記他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンが生じるようにしている。なお、オーバーシュートによる快適性の向上という観点から、冷房運転では温度下降時に急速な温度変化パターンとすることが好ましい。
【0015】
請求項3に係る本発明として、前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、設定温度を急激に変化させる急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される請求項1記載の空調装置が提供される。
【0016】
上記請求項3記載の発明は、温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時に求められる温度変化が、上記請求項2記載の発明ほどではないが、急速な温度変化が求められる場合に有効なものである。具体的には、前記一方の温度変化時には、設定温度を急激に変化させる急速な温度変化パターンが生じるようにし、また前記他方の温度変化時には、上記請求項2記載の発明と同様に、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンが生じるようにしている。
【0017】
請求項4に係る本発明として、前記切替手段は、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、前記一方の温度変化時において少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間を経過したタイミングで、前記可変風量ユニットの通風量の制御を順次切り替える請求項2、3いずれかに記載の空調装置が提供される。
【0018】
上記請求項4記載の発明は、上記請求項2、3記載の空調装置について、前記切替手段によって可変風量ユニットの通風量の制御を切り替える「所定のタイミング」を規定したものである。すなわち、前記切替手段は、前記一方の温度変化時において少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間を経過したタイミングで切り替えている。ここで、「少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間」とは、各ゾーンの負荷特性により定められる時間であり、予め各ゾーンの設定温度を満足する時間を設定しておくこともできるが、その都度各ゾーンの温度計測結果に応じて定めることが好ましい。
【0019】
請求項5に係る本発明として、仕切られた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる請求項1〜4いずれかに記載の空調装置が提供される。
【0020】
請求項6に係る本発明として、一つの空間が仮想的に区分けされた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる請求項1〜4いずれかに記載の空調装置が提供される。
【0021】
上記請求項5、6記載の発明は、空調対象となる複数のゾーンの形態について規定したものであり、本空調装置は、仕切られた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の可変風量ユニットが設けられる場合でも、一つの空間が仮想的に区分けされた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる場合でも対応できる。
【0022】
請求項7に係る本発明として、空調機と吹出口とを連通する給気ダクトに対して、複数のゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクトの通風量が調整可能な可変風量ユニットを、各ゾーンに1又は複数備えた空調装置における空調制御方法であって、
対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、前記可変風量ユニットの通風量を制御するとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、前記可変風量ユニットの通風量の制御を順次切り替え、
この切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風を停止することなく、各吹出口からの合計送風量をほぼ一定に保持するように制御することを特徴とする空調制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
以上詳説のとおり本発明によれば、温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すような温度スウィングを与える空調装置及び空調制御方法において、快適性及び省エネルギー性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る空調装置1を備えた空調対象空間の平面図である。
【図2】空調装置1を備えた各ゾーンの断面図(その1)である。
【図3】空調装置1を備えた各ゾーンの断面図(その2)である。
【図4】第1の制御方式による各ゾーンの設定状態を示す時系列線図である。
【図5】第1の制御方式による設定状態を示す流れ図である。
【図6】空調装置1を運転したときの室内温度の時系列線図である。
【図7】第2の制御方式による各ゾーンの設定状態を示す時系列線図である。
【図8】第2の制御方式による設定状態を示す流れ図である。
【図9】温度スウィングを与えた場合の温熱感の時系列線図である。
【図10】温度スウィング幅±3.5℃における温度上昇時と温度下降時の積極的快適性の分布線図である。
【図11】温度スウィング幅±1.7℃における温度上昇時と温度下降時の積極的快適性の分布線図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明に係る空調装置1を示す平面図である。
【0026】
本発明に係る空調装置1は、空調機21、22と、各ゾーンに調和空気を吹き出すための吹出口4と、前記空調機21、22と吹出口4とを連通する給気ダクト3と、各ゾーンに1又は複数備えられ、前記給気ダクト3に対して各ゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクト3の通風量を調整可能な可変風量ユニット5とから構成されている。
【0027】
前記可変風量ユニット5としては、ダンパー開度の調整によって、通過する温度一定の空気の通風量が調整可能とされたVAVユニットを使用することができる。
【0028】
図2は、仕切られた独立する4つのゾーンR1、R2、R3、R4に前記空調装置1を適用した場合の断面図である。図示例では、各ゾーンR1、R2、R3、R4にそれぞれ複数の吹出口41…、42…、43…、44…及び可変風量ユニット51…、52…、53…、54…が設けられ、1つの可変風量ユニット(例えば51)に対して複数の吹出口(例えば41…)が設けられている。前記可変風量ユニットは、1つのゾーン(例えば51)に設けられた複数の可変風量ユニット(例えば51…)が一体的に制御される。なお、前記吹出口及び可変風量ユニットは、各ゾーンに1つずつ設けられるものでもよく、1つの可変風量ユニットに1つの吹出口が設けられるものでもよい。
【0029】
一方、図3は、1つの空調対象空間Rが仮想的に区分けされた4つのゾーンR1、R2、R3、R4に、前記空調装置1を適用した場合の断面図である。図示例では、可変風量ユニットを備えた吹出口が各ゾーンに複数設けられてるが、前述の通りこれらは各ゾーンに1又は複数で設けることができる。
【0030】
前記可変風量ユニット5は、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される。すなわち、図2及び図3に示される例では、1つのゾーン(例えばR1)に設けられた複数の可変風量ユニット(例えば51…)の通風量を適宜調整することによって、そのゾーンR1の室温が前述のような温度スウィングを示すように制御されている。
【0031】
さらに、前記可変風量ユニット51…、52…、53…、54…は、各ゾーンR1、R2、R3、R4毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段(図示せず)を備えている。
【0032】
本空調装置1では、前記切替手段による切替前後を通じて、空調装置1の運転中に、各吹出口41…、42…、43…、44…からの送風が停止されることなく、各吹出口41…、42…、43…、44…からの送風量を合計した合計送風量がほぼ一定に保持されるようになっている(図4の「R1〜R4の合計」の段参照)。
【0033】
このように、各吹出口41…〜44…からの送風が停止することがないため、従来のように新鮮な外気の供給停止や空気のよどみによる快適性の低下という問題が解消できる。さらに、従来のように空調機のON・OFFを繰り返すことがないため、ONに切り替えた際の消費動力の増加がなくなり、省エネルギーが実現できる。このため、快適性及び省エネルギー性を両立させた空調装置1が提供できるようになる。
【0034】
前記切替手段としては、空調機21、22又は別途設けられる制御装置(図示せず)などに備えられ、所定の経過時間に基づいて又は室内に適宜設けた温度計測器による計測温度に基づいて前記可変風量ユニットのダンパー開度を制御する制御部と、該制御部からの制御信号を各可変風量ユニットに伝送する伝送部とから構成されるものを使用することができる。
【0035】
前記切替手段による通風量の制御方式の例として、次の2つの方式について詳述する。
【0036】
先ず第1の制御方式について、図4及び図5に基づいて説明する。図4は各ゾーンに設けられる可変風量ユニット5のダンパ開度の時系列線図、図5は運転手順を示すブロック線図である。同図中「風量比」とは、ダンパー全開時の通風量を100としたときの通風量の割合(%)である。
【0037】
第1の制御方式において前記可変風量ユニット5は、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、開度を予め設定した開度又は全開にして急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるようになっている。
【0038】
すなわち、本第1の制御方式は、冷房運転においては温度下降時に、暖房運転においては温度上昇時に、特に急速な温度変化が求められるような場合に有効な制御方式である。
【0039】
具体的に冷房運転時を例に詳述すると、1つのゾーン(例えばR1)において、室内の温度変化が温度下降するように、そのゾーンR1に対応する可変風量ユニット51…は、ゾーンR1の設定温度を26℃、ダンパー開度を全開(風量比100%)とするA設定に設定して、室内の温度変化を急下降させる。これによって、冷感がオーバーシュートして実際の温度以上に冷涼感を生じさせることができる。その後、所定のタイミング(時刻M1)で、室内の温度変化が温度上昇するように、前記可変風量ユニット51…は、ゾーンR1の設定温度を27.5℃、ダンパー開度72.7%とするD設定に設定し、さらに所定のタイミング(時刻M2)で、設定温度を29℃、ダンパー開度66.7%とするC設定に設定し、さらに所定のタイミング(時刻M3)で、前記C設定と同一条件のB設定に設定する。このように、設定温度を段階的に変化させることによって、室内の温度が緩やかに上昇する温度変化パターンが得られるようになる。このD→C→Bの各設定による室内温度の緩上昇時には、室温とほぼ同じ冷感が得られるようになる。その後、所定のタイミング(時刻M4)で、前記A設定に切り替えて温度変化を急下降させる。これによって、図6に示されるように、温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンが繰り返されるようになる。他の各ゾーンR2〜R4においても、同様の温度変化パターンが繰り返されるように、各ゾーンに対応する可変風量ユニット5の通風量が制御されている。そして、図4に示されるように、各ゾーンR1〜R4毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように制御されている。
【0040】
前記切替手段による可変風量ユニット5の切り替えのタイミングは、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、前記一方の温度変化時、図4に示される例では温度下降時において、少なくとも設定温度(前記A設定の26℃)を満足する時間以上の時間を経過したタイミングとされている。この「少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間」とは、各ゾーンの負荷特性により定められる時間であり、予め各ゾーンの設定温度を満足する時間を設定しておくこともできるが、その都度各ゾーンの温度計測結果に応じて定めることが好ましい。なお、この時間終了時には室内温度が設定温度(26℃)以下となることもあり得る。
【0041】
図4に示される例では、時間tが0〜M4までの1つの周期において、この周期が4つのユニットタイムに分割され、tが0〜M1のユニットタイムではゾーンR1が温度下降時とされ、tがM1〜M2ではゾーンR2が温度下降時とされ、tがM2〜M3ではゾーンR3が温度下降時とされ、tがM3〜M4ではゾーンR4が温度下降時とされることにより、各ゾーン毎に温度変化パターンの位相が順次ずれるように制御されている。この温度下降時となるタイムユニットが終了した後の温度上昇時では、各ゾーンとも、設定温度を27.5℃→29℃→29℃(風量比を72.7%→66.7%→66.7%)と段階的に変化させて緩やかな温度変化パターンとなるように制御されている。ここで、「設定温度を段階的に変化」させるとは、温度上昇時の各ユニットタイムにおいて、直前のユニットタイムより設定温度を低下させなければよく、同じ設定温度に維持することも含まれる。なお、前記A設定及びD設定(設定温度が26℃、27.5℃)のとき、可変風量ユニット5のダンパ開度は中央制御とし、B設定及びC設定(それぞれ設定温度が29℃)のとき、可変風量ユニット5のダンパ開度は個別制御とすることが好ましい。
【0042】
図4及び図5において、各ユニットタイムにおけるA設定、B設定、C設定、D設定の設定内容をまとめると、次のとおりである。
A設定(温度下降時):風量比100%(ダンパー全開、設定温度26℃)
B設定(温度上昇時):設定温度29℃、風量比66.7%
C設定(温度上昇時):設定温度29℃、風量比66.7%
D設定(温度上昇時):設定温度27.5℃、風量比72.7%
そして、図5に示されるように、時間tがM4となった時点において、パラメータである時間tを0にリセットし、同様にして次の周期(時間tが0’〜M4’)の制御が開始される。このように、本空調装置1では、前記切替手段による切替前後を通じて、空調装置1の運転中に、各吹出口41…〜44…からの送風が停止されることはない。
【0043】
なお、図4の「R1〜R4の合計」の段に示されるように、前記切替手段による切替前後を通じて、各吹出口41…〜44…からの送風量を合計した合計送風量はほぼ一定に保持されている。
【0044】
次に、第2の制御方式について、図7及び図8に基づいて説明する。
【0045】
第2の制御方式において前記可変風量ユニット5は、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、設定温度を急激に変化させる急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるようになっている。
【0046】
すなわち、本第2の制御方式は、冷房運転においては温度下降時に、暖房運転においては温度上昇時に、上記第1の制御方式ほど急速な温度変化は求められないものの、ある程度急速な温度変化を必要とする場合に有効である。上述の通り、本第2の制御方式は、上記第1の制御方式と比較して、冷房運転においては温度下降時、暖房運転においては温度上昇時の設定方法が異なっている。
【0047】
具体的に冷房運転時を例に説明すると、温度下降時には、それまでの設定温度から急激に低い設定温度に設定する(急激に可変風量ユニットの通風量を増加する)ことによって急速な温度変化パターンとし、温度上昇時には、上記第1の制御方式と同様に、設定温度を段階的に上昇(可変風量ユニットの通風量を段階的に低下)させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように制御されている。
【0048】
このように、第2の制御方式では、上記第1の制御方式と比較して、前記A設定に代えて、次のA’設定とされる。
A’設定(温度下降時):設定温度26℃、風量比80.0%
このように、各ゾーンでは、設定温度をそれまでの29℃から26℃に急激に下降させることによって(風量比を66.7%から80.0%に急激に増加させることによって)、急速な温度変化パターンが形成されるようになる。
【0049】
ところで、上述のような温度スウィングが快適性に与える影響について、被験者実験の結果である図9〜図11に基づいて考察する。図9は冷房運転時に温度スウィングを与えた場合の温熱感の時系列線図、図10は温度スウィング幅±3.5℃における温度上昇時と温度下降時の快適性の分布線図、図11は温度スウィング幅±1.7℃における温度上昇時と温度下降時の快適性の分布線図である。ここで、図10及び図11における「積極的快適性」とは、被験者が「気持ちよい」「快適」と感じる積極的な快適性の程度を定量化したもので、例えば被験者に室の温熱環境について「快適」「不快」「どちらでもない」から選択させ、「快適」「不快」を選択した被験者に対してその程度を0〜100の範囲で申告させることによって定量化できる。このため積極的快適性は、従来の被験者実験において用いられる「現在の温熱環境を受け入れられますか」という問いに対して答えるパッシブな快適性表示と異なるものである。
【0050】
図9に示されるように、温度スウィングを与えた場合、同じ温度であっても、温度上昇時の温熱感と温度下降時の温熱感とが異なり、温度下降時の方が温度上昇時より涼しく感じることが実証された。
【0051】
また、図10及び図11より、温度スウィングを与えた場合、同じ温度であっても、温度上昇時の積極的快適性と温度下降時の積極的快適性が異なり、温度下降時の積極的快適性の方が温度上昇時の積極的快適性より大きくなっている。その傾向は、温度スウィング幅が大きい(±3.5℃)方が顕著であった。
【符号の説明】
【0052】
1…空調装置、21・22…空調機、3…給気ダクト、4・41〜44…吹出口、5・51〜54…可変風量ユニット、R1〜R4…ゾーン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機と吹出口とを連通する給気ダクトに対して、複数のゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクトの通風量を調整可能な可変風量ユニットが、各ゾーンに1又は複数備えられた空調装置であって、
前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段を備え、
前記切替手段による切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風が停止されることなく、各吹出口からの送風量を合計した合計送風量がほぼ一定に保持されることを特徴する空調装置。
【請求項2】
前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、開度を予め設定した開度又は全開にして急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される請求項1記載の空調装置。
【請求項3】
前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、設定温度を急激に変化させる急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される請求項1記載の空調装置。
【請求項4】
前記切替手段は、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、前記一方の温度変化時において少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間を経過したタイミングで、前記可変風量ユニットの通風量の制御を順次切り替える請求項2、3いずれかに記載の空調装置。
【請求項5】
仕切られた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる請求項1〜4いずれかに記載の空調装置。
【請求項6】
一つの空間が仮想的に区分けされた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる請求項1〜4いずれかに記載の空調装置。
【請求項7】
空調機と吹出口とを連通する給気ダクトに対して、複数のゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクトの通風量が調整可能な可変風量ユニットを、各ゾーンに1又は複数備えた空調装置における空調制御方法であって、
対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、前記可変風量ユニットの通風量を制御するとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、前記可変風量ユニットの通風量の制御を順次切り替え、
この切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風を停止することなく、各吹出口からの合計送風量をほぼ一定に保持するように制御することを特徴とする空調制御方法。
【請求項1】
空調機と吹出口とを連通する給気ダクトに対して、複数のゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクトの通風量を調整可能な可変風量ユニットが、各ゾーンに1又は複数備えられた空調装置であって、
前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御されるとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、通風量の制御を順次切り替える切替手段を備え、
前記切替手段による切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風が停止されることなく、各吹出口からの送風量を合計した合計送風量がほぼ一定に保持されることを特徴する空調装置。
【請求項2】
前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、開度を予め設定した開度又は全開にして急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される請求項1記載の空調装置。
【請求項3】
前記可変風量ユニットは、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時又は温度下降時のいずれか一方の温度変化時には、設定温度を急激に変化させる急速な温度変化パターンとし、他方の温度変化時には、設定温度を段階的に変化させる緩やかな温度変化パターンとすることによって、対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、通風量が制御される請求項1記載の空調装置。
【請求項4】
前記切替手段は、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、前記一方の温度変化時において少なくとも設定温度を満足する時間以上の時間を経過したタイミングで、前記可変風量ユニットの通風量の制御を順次切り替える請求項2、3いずれかに記載の空調装置。
【請求項5】
仕切られた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる請求項1〜4いずれかに記載の空調装置。
【請求項6】
一つの空間が仮想的に区分けされた複数のゾーンにそれぞれ1又は複数の前記可変風量ユニットが設けられる請求項1〜4いずれかに記載の空調装置。
【請求項7】
空調機と吹出口とを連通する給気ダクトに対して、複数のゾーン毎に設定された設定温度に応じて該給気ダクトの通風量が調整可能な可変風量ユニットを、各ゾーンに1又は複数備えた空調装置における空調制御方法であって、
対応するゾーンの温度変化が温度上昇時と温度下降時とでこれらの変化点を中心に非対称となる温度変化パターンを繰り返すように、前記可変風量ユニットの通風量を制御するとともに、各ゾーン毎に前記温度変化パターンの位相が順次ずれるように、所定のタイミングで、前記可変風量ユニットの通風量の制御を順次切り替え、
この切替前後を通じて、前記空調装置の運転中に、各吹出口からの送風を停止することなく、各吹出口からの合計送風量をほぼ一定に保持するように制御することを特徴とする空調制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−190434(P2010−190434A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32159(P2009−32159)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(390018474)新日本空調株式会社 (88)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(390018474)新日本空調株式会社 (88)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【Fターム(参考)】
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