説明

穿孔方法及びこの穿孔方法に使用する連結部材

【課題】 従来の穿孔装置では、案内ロッドを先行孔内に挿入する作業が困難である。
【解決手段】 削岩機で穿孔対象物に先行孔12を形成し、先行孔内に案内ロッド6を挿入した後に、削岩機のドリル部3と案内ロッドとを連結部材8で互いに連結することによりドリル部を案内ロッドの軸線に沿って前後移動可能に設定してから削岩機を駆動し、ドリル部3を案内ロッド6の軸線に沿って前進させることによってドリル部3の前端の切削部41と連結部材8の前端の切削部53とで穿孔対象部に先行孔12と孔の外周の一部同士が連続する後行孔13を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔対象物に複数の孔を連続させた溝を形成するための先行孔への案内ロッド挿入作業の容易な穿孔方法及びこの穿孔方法に使用する連結部材に関する。
【背景技術】
【0002】
穿孔対象物としての例えば地山の岩盤に複数の孔を一定間隔隔てて連続させて形成する穿孔方法及びこの方法に用いる穿孔装置が知られている。この穿孔装置を図8に基づいて説明する。尚、図8の右側を「前」、左側を「後」と定義して説明する。穿孔装置1Pは、図外の操縦機のアームに連結されるガイドセルと呼ばれる基台17Pと、基台17Pに前後移動可能に設けられた削岩機2Pと、基台17Pの前部に設けられた支持部13Pと、支持部13Pに連結されて前方に突出する案内ロッド11Pと、削岩機2Pのドリル部3Pが案内ロッド11Pの軸線に沿った方向にスライド可能となるようドリル部3Pの穿孔ロッド14Pと案内ロッド11Pとを互いに連結するリニアガイドと呼ばれる連結部材15Pとを備える。削岩機2Pは、ドリル部3Pとドリル部3Pを駆動する図外の駆動装置とを備える。ドリル部3Pは、駆動装置により回転する回転軸14dと回転軸14dの前端に回転軸14dと一緒に回転するように連結された穿孔ロッド14Pとを備える。穿孔ロッド14Pは、前端に穿孔ビットと呼ばれる切削部14bを備える。案内ロッド11Pは、後端部が支持部13Pに連結固定され前端には先鋭なキャップ12Pを備える。連結部材15Pは、穿孔ロッド14Pに連結された連結部15bと案内ロッド11Pの筒内をスライドするスライド部材15aとこれら連結部15bとスライド部材15aとを連結する連結板15cとで構成される。連結部材15Pの連結板15cの前端には、岩盤破砕用の硬質部材であるチップと呼ばれる切削刃部16Pが設けられる。支持部13Pの前面には規制部材18Pが取付けられる。ドリル部3Pは支持部13Pに形成された孔19Pを貫通し、前後に移動可能である。基台17Pの前端に連結される支持部13Pは、基台17Pの延長方向に対して上方に垂直に延長する鋼板のような剛体よりなる。
穿孔装置1Pによる穿孔作業を説明する。まず、削岩機2Pの駆動装置を駆動してドリル部3Pの前端の切削部14bで岩盤を削って図外の先行孔を形成する。次に支持部13Pに案内ロッド11Pを取り付ける。そして、操縦機によってアームを制御して案内ロッド11Pを先行孔内に挿入する。その後、削岩機2Pの駆動装置を駆動してドリル部3Pの切削部14bと連結部材15Pの切削刃部16Pとで岩盤を削ることで、先行孔と一定の間隔を隔てた図外の後行孔が切削部14bにより形成され、先行孔と後行孔とを一定の間隔で連結する図外の連結孔が切削刃部16Pにより形成される。以後、孔を穿孔する際に当該孔を穿孔する前に形成した孔を先行孔として利用していって複数の孔を形成していくことで、孔の延長方向と直交する方向において複数の孔が数珠繋ぎのように連続する連続削孔と呼ばれる孔溝、すなわち、複数の孔の外周の一部同士が連結孔により互いに連結された溝を形成できる。
【特許文献1】特開2002−327589号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した穿孔装置1Pの案内ロッド11Pを先行孔内に挿入する作業において、岩盤に形成された先行孔の進行(延長)方向とアームにより前進する案内ロッド11Pの進行方向とが一致していない場合は、操縦機のアームを操縦して案内ロッド11Pの前端を先行孔に挿入した後に案内ロッド11Pを先行孔内に押し込もうとしても案内ロッド11Pの前端が先行孔の内壁に衝突してそれ以上前に進まなくなり、案内ロッド11Pを先行孔内に挿入することができない。よって、案内ロッド11Pの前端を先行孔に挿入した後にアームを操縦して案内ロッド11Pの位置や進行角度を微調整することによって案内ロッド11Pを先行孔内に挿入したり、あるいは、事前に、アームを操縦して案内ロッド11Pの位置や進行角度を微調整することによって案内ロッド11Pの進行方向を先行孔の進行方向に一致させてから案内ロッド11Pを先行孔内に挿入する必要がある。しかしながら、アームの駆動は油圧駆動であり、アームの細かい動きや角度の調整を行うことは難しい。従って、岩盤に形成された先行孔の進行方向とアームにより前進する案内ロッド11Pの進行方向とが一致していない場合は、アームを操縦して案内ロッド11Pの位置や進行角度を微調整することが難しく、上述した穿孔装置1Pでは、案内ロッド11Pを先行孔内に挿入する作業が困難であるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願発明に係る穿孔方法は、削岩機で穿孔対象物に先行孔を形成し、先行孔内に案内ロッドを挿入した後に、削岩機のドリル部と案内ロッドとを連結部材で互いに連結することによりドリル部を案内ロッドの軸線に沿って前後移動可能に設定してから削岩機を駆動し、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿って前進させることによってドリル部の前端の切削部と連結部材の前端の切削部とで穿孔対象部に先行孔と孔の外周の一部同士が連続する後行孔を形成したことを特徴とする。
本願発明に係る穿孔方法に使用する連結部材は、ドリル部に着脱可能な取付体と、案内ロッドに設けられたスライド部に着脱可能なスライド体と、取付体とスライド体とを連結する連結体と、連結体の前端に設けられた切削部とを備えたことを特徴とする。さらに、本願発明に係る穿孔方法に使用する連結部材は、ドリル部と案内ロッドとの間の距離を変更可能な調整部を備えたことを特徴とする。
さらに、本願発明に係る穿孔方法は、削岩機で穿孔対象物に先行孔を形成し、先行孔内に案内ロッドを挿入した後に、削岩機を前後移動可能に搭載する基台と案内ロッドとを互いに連結することによりドリル部を案内ロッドの軸線に沿って前後移動可能に設定してから削岩機を駆動し、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿って前進させることによってドリル部の前端の切削部で穿孔対象部に先行孔と孔の外周の一部同士が連続する後行孔を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の穿孔方法によれば、穿孔対象物に形成した先行孔内に案内ロッドを単独で挿入してから、この案内ロッドとドリル部、あるいは、この案内ロッドと支持部とを連結し、その後、ドリル部で穿孔対象物に先行孔と孔の外周同士が連続する後行孔を形成するので、先行孔への案内ロッドの挿入作業が容易となる。
本願発明に係る穿孔方法に使用する連結部材によれば、ドリル部や、案内ロッドに設けられたスライド部に対する着脱が容易となり、ドリル部と案内ロッドとの連結作業が容易となる。また、ドリル部と案内ロッドとの間の距離を変更可能な調整部を備えた連結部材を用いることで、岩盤の硬さに応じて先行孔と後行孔との間の距離を選定できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1
図1〜図3は本発明の最良の形態1を示し、図1は穿孔方法の手順を示し、図2は穿孔方法に用いる穿孔装置を示し、図3は穿孔装置における案内ロッドと穿孔ロッドとの連結構造を分解して示す。尚、図2における案内ロッドの位置する側を「前」、駆動装置の位置する側を「後」と定義して説明する。
【0007】
図2を参照し、まず本形態の穿孔方法に用いる穿孔装置1を説明する。
穿孔装置1は、操縦機2のアーム2aに取付けられる。操縦機2は、例えばドリルジャンボウと呼ばれる機械である。穿孔装置1は、基台4と削岩機5と案内ロッド6とリニアガイドと呼ばれる連結部材8とを備える。基台4は、上面にガイドレール4aを備え、前端には規制部材18が取付けられる。ガイドレール4aには、削岩機5の駆動装置9が前後方向に移動可能に搭載される。削岩機5は、駆動装置9とドリル部3とを備える。ドリル部3は、回転軸10と穿孔ロッド11とを備える。駆動装置9は、図外のモータによる回転駆動源及び油圧機構による前後駆動源を備える。駆動装置9の回転駆動源には、回転軸10が回転可能に連結される。穿孔ロッド11は、回転軸10の前端に連結されて回転軸10の回転力で回転する。穿孔ロッド11は前端に穿孔ビットと呼ばれる切削部41を備える。切削部41の前面には切削刃42を備える。駆動装置9に連結された図外の前後移動機構を操縦機2で操縦して駆動装置9の筐体を前後に移動させることで削岩機5の前後位置を調整できる。削岩機5による穿孔時には、駆動装置9を駆動させて回転駆動源により回転軸10を回転させるとともに前後駆動源により駆動装置9の筐体を前後に振動させて穿孔ロッド11に回転力と打撃力とを加えることで穿孔ロッド11の切削部41が地山の岩盤などの穿孔対象物を切削するので穿孔対象物に孔を形成できる。連結部材8は、穿孔ロッド11と案内ロッド6とを互いに連結するとともに、穿孔ロッド11と案内ロッド6との間の距離を一定に保ちながら穿孔ロッド11を案内ロッド6の軸線G(図1;2参照)に沿う方向に前後移動可能とするものである。穿孔装置1の基台4と操縦機2のアーム2aとが互いに連結され、操縦機2のアーム2aは図外の油圧機構により駆動する。よって、操縦者が操縦機2を操縦してアーム2aの動きを制御して穿孔装置1の基台4の位置や姿勢を制御することでドリル部3を穿孔対象物の穿孔対象部に位置決めできる。
【0008】
図3の分解斜視図を参照し、穿孔装置1の案内ロッド6とドリル部3との連結部分の構造を詳細に説明する。
案内ロッド6は、円筒状パイプ28の前端に円錐形状の先鋭なキャップ部材29が着脱可能に取り付けられたものである。案内ロッド6の前端にキャップ部材29を備えることで、案内ロッド6の前端の先行孔への挿入を容易にしている。円筒状パイプ28は、円筒パイプの外周において円筒パイプの軸線G(=案内ロッド6の軸線G)に沿う方向に一直線状の開口溝30が形成されたものである。円筒パイプの筒孔がスライド部としてのスライドレール55を形成する。
【0009】
穿孔ロッド11は、連結部材保持体40と切削部41とを備える。連結部材保持体40は、回転軸10の前端に連結される。切削部41は、連結部材保持体40の前端に着脱可能に取り付けられるので、交換が容易である。切削部41の前面には、クロムモリブデン鋼やタングステン鋼などの超硬物質で形成された切削刃42を備える。連結部材保持体40は、前軸45と後軸46とで形成される。前軸45は、切削部41の後部に着脱可能に連結される。後軸46は、前軸45の後部に着脱可能に連結される。後軸46は、後部に設けられた径の大きい大径軸部47と大径軸部47の前部に設けられた径の小さい小径軸部48とを備える。
【0010】
連結部材8は、ドリル部3の穿孔ロッド11に着脱可能な取付体としての筒体50と、案内ロッド6のスライドレール55に着脱可能なスライド体51と、連結体としての連結板27とを備え、筒体50とスライド体51とが連結板27で互いに連結される。連結板27の前端には、クロムモリブデン鋼やタングステン鋼などの超硬物質で形成されたチップと呼ばれる切削部53が設けられる。切削部53の前部は先鋭に形成される。切削部53の前部の刃先角度は110°程度に設定される。切削部53は連結板27の前端に溶接などの接合手段で取り付けられる。切削部53は、案内ロッド6と穿孔ロッド11の切削部41との間の岩盤を削岩できるように、少なくとも、案内ロッド6の下端と穿孔ロッド11の切削部41の上端に相当する位置とに跨るように設けられる。
【0011】
本形態による穿孔作業を図1により説明する。
穿孔対象物としての地山の岩盤15に最初の先行孔12を形成する際には、案内ロッド6と連結部材8は取り外されている。つまり、ドリル部3は、穿孔ロッド11の後軸46の小径軸部48に連結部材8が取付けられておらず小径軸部48の前部と前軸45の後部とが連結されている状態である。そして、操縦機2を操作し、規制部材18の前端を岩盤15に突付けてから、ドリル部3の前端の切削部41を岩盤15まで移動した後に削岩機5を駆動することにより、切削部41で岩盤15を切削して先行孔12を形成する(図1(a)参照)。先行孔12を形成した後に、ドリル部3を先行孔12内より後方に移動させる。そして、先行孔12内への案内ロッド6の挿入作業と、連結部材8による連結作業とを行う。案内ロッド6の挿入作業は、人あるいは機械により、案内ロッド6を単独で前端側から先行孔12内に挿入し、案内ロッド6のキャップ部材29の前端が先行孔12の孔尻12eに衝突するまで押し込む。連結部材8による連結作業は、穿孔ロッド11の後軸46から前軸45を取り外し、後軸46の小径軸部48を連結部材8の筒体50の孔52の一端から他端に挿入して、他端に突出した小径軸部48の前部と前軸45の後部とを連結する。これにより、連結部材8の筒体50が小径軸部48に保持され、かつ、前軸45の後端と大径軸部47の前端とで筒体50の前後移動が規制されて、連結部材8が小径軸部48により前軸45の後端と大径軸部47の前端との間に保持される(図1(b)参照)。小径軸部48の前部と前軸45の後部との着脱可能な連結手段としては、小径軸部48の前部に形成された雄ねじ部49と前軸45の後部に形成されたねじ孔49aとのねじ結合や、前軸45の後部に形成された図外の嵌合孔に小径軸部48の前部を嵌め込んで嵌合孔の外周面に形成された図外のねじ孔にねじをねじ込んで小径軸部48の前部を締結することによるねじ結合などである。以上のように、小径軸部48を連結部材8の筒体50の孔52に通して前軸45の後部に連結するだけで穿孔ロッド11に連結部材8を取り付けることができ、穿孔ロッド11に対する連結部材8の着脱作業を容易とできる。そして、先行孔12に挿入された案内ロッド6の後端から案内ロッド6のスライドレール55内にドリル部3の穿孔ロッド11に保持された連結部材8のスライド体51を挿入する。案内ロッド6の円筒状パイプ28の開放後端をスライド体51の挿入口としたので、スライド体51を案内ロッド6の後端からスライドレール55内に容易に装着できる。この場合、案内ロッド6の開口溝30の横幅は、連結部材8の連結板27の板幅より長く形成され、連結板27が通過でき、よって、連結部材8のスライド体51がスライドレール55内を前後にスライド可能である。これにより、ドリル部3は、案内ロッド6に対して一定の距離を保ちながら、案内ロッド6の軸線Gに沿った方向に前後移動可能に設定され、また、連結部材8は、穿孔ロッド11が回転しても回転しない状態に保持される。そして、規制部材18の前端を岩盤15に突付けてから、ドリル部3の前端の切削部41を岩盤15まで移動した後に削岩機5を駆動することにより、ドリル部3を案内ロッド6の軸線Gに沿って前進させることで後行孔13を形成する(図1(c)参照)。すなわち、先行孔12の下方の岩盤を切削して先行孔12の延長する方向と直交する方向において先行孔12と一定の間隔を隔てて連続する後行孔13を穿孔する。この際、先行孔12と後行孔13との間は連結部材8の切削部53で削岩されることによって、先行孔12と後行孔13との間を繋ぐ図外の連結孔が形成される。すなわち、岩盤15に先行孔12と孔の外周の一部同士を連結孔によって連続させた後行孔13を形成できる。以後、孔を穿孔する際に当該孔を穿孔する前に形成した孔を先行孔として利用していって複数の孔を形成していくことで、孔の延長する方向と直交する方向において複数の孔を数珠繋ぎのように連続させた連続削孔と呼ばれる孔溝、すなわち、複数の孔の外周の一部同士が連結孔により互いに連結された溝を形成でき、この溝を岩盤15の破砕に利用することで、例えば、横坑を掘削する。
【0012】
本形態では、人あるいは機械により、案内ロッド6を単独で前端側から先行孔12内に挿入した後に、削岩機5のドリル部3と案内ロッド6とを連結部材8で互いに連結することによりドリル部3を案内ロッド6の軸線Gに沿って前後移動可能に設定し、その後、削岩機5を駆動し、ドリル部3を案内ロッド6の軸線Gに沿って前進させて岩盤15に先行孔12と連続する後行孔13を形成するので、従来困難であった先行孔12内への案内ロッド6の挿入作業を容易とできる。
【0013】
最良の形態2
図4に示すように、スライド体51Aを、連結部としての円柱体79と円柱体79の円面である前端面と後端面とに取り付けられる調整部材80;80とで構成し、案内ロッド6とドリル部3との間の距離を変更でき、先行孔と後行孔との間隔を変更可能とした構成の連結部材81を用いてもよい。この場合、円柱体79の径を案内ロッド6の軸線Gに沿った方向に延長する筒状のスライドレール55を形成する筒孔の径よりも小さく形成し、スライドレール55を形成する筒孔の径と合致した形状の円面を有する円柱体により調整部材80を形成する。そして、円柱体79の前端面と後端面とにそれぞれ調整部材80を連結し、調整部材80;80の円柱体の周面がスライドレール55の筒孔の内面を摺動する構成とする。円柱体79の前端面と後端面とには、円面の中心部分において横に2つ並ぶようにねじ孔82;82が形成される。調整部材80の円柱体の円面には、円の中心より偏心した位置において円柱体の前後の円面を貫通する貫通孔83;83が横に2つ並ぶように形成される。そして、調整部材80の貫通孔83と円柱体79のねじ孔82とが連続するように調整部材80と円柱体79とを互いに位置決めした後に貫通孔83にねじなどの締結具84を通してねじ孔82に締結することで円柱体79の前端面と後端面とにそれぞれ調整部材80を連結する。ねじ孔82と貫通孔83と締結具84とで調整部が構成され、この調整部が、連結部としての円柱体79を調整部材80の面における2以上の異なる位置に連結可能とする。図4(a)の実線の調整部材80のように、調整部材80の貫通孔83を下方にして調整部材80を円柱体79に取り付けた場合は、図4(b)のように、連結板27が案内ロッド6の開口溝30より下方に突出する長さが長くなる。一方、図4(a)の想像線の調整部材80のように、調整部材80の貫通孔83を上方にして調整部材80を円柱体79に取り付けた場合は、図4(c)のように、連結板27が案内ロッド6の開口溝30より下方に突出する長さが、図4(b)に比べて長さh分だけ短くなる。従って、円柱体79の前端面と後端面とに対する調整部材80の取り付けの向きによって、連結部材81で連結される案内ロッド6とドリル部3との間の距離を変更でき、先行孔と後行孔との間の距離を変更できる。例えば、岩盤が硬岩の場合には、先行孔と後行孔との間の距離を短くし、岩盤が軟岩の場合には、先行孔と後行孔との間の距離を長くするといったように、岩盤の硬さに応じて先行孔と後行孔との間の距離を選定できるようになる。よって、掘削対象部である岩盤の硬軟に応じて先行孔と後行孔との間の距離を変更することが可能なことで、岩盤に孔溝を形成して岩盤の破砕に利用する際に、岩盤の破砕作業を効率的に行える。本形態の連結部材81によれば、筒状のスライドレール55内を摺動するスライド体51Aを備え、スライド体51Aの連結部としての円柱体79の面を調整部材80の面における2以上の異なる位置に連結可能とする構成の調整部を備えたので、スライド体51Aがスライドレール55内をスムーズに前後移動する構造を提供でき、また、ねじ孔82と貫通孔83と締結具84とによる調整部により、ドリル部3と案内ロッド6との間の距離を容易に変更できる。円の中心より偏心した位置において円柱体79の前後の円面を貫通する貫通孔83;83が横に2つ並ぶように形成された場合、1組の貫通孔83;83により、円柱体79を調整部材80の円面における2以上の異なる位置に連結可能とできる。調整部が、連結部としての円柱体79を調整部材80の円面における3以上の異なる位置に連結可能とする構成を備えてもよい。例えば、調整部材80の円面に連結用の1組の貫通孔83;83を3組以上設ける。また、円柱体79の円面に1組のねじ孔82;82を2組以上設けることで、円柱体79を調整部材80の円面における2以上の異なる位置に連結可能とできる。また、調整部材80の円面の上下方向に複数の貫通孔83を設けたり、円柱体79の円面の上下方向に複数のねじ孔82を設けるようにしても、円柱体79を調整部材80の円面における2以上の異なる位置に連結可能とできる。
【0014】
スライド体51Aのスライドレール55を例えば断面逆T字状のレールにより形成し、スライド体51Aを当該レールに係合する形状に形成してもよい。そして、当該スライド体51Aの下部に連結板を設け、この連結板と連結板27との連結位置を上下に変更できる構成の調整部を備えた連結部材を設けることで、案内ロッド6とドリル部3との間の距離を変更できるようにしてもよい。この場合の調整部は、例えば、スライド体51Aの下部の連結板の上下方向に形成された複数個の貫通ねじ孔と連結板27に形成された少なくとも1個の貫通孔と貫通孔を通過して貫通ねじ孔に締結されるボルトとこのボルトに締結されるナットとで構成できる。このような構成の連結部材を用いても、掘削対象部の岩盤の硬軟に応じて先行孔と後行孔との間の距離を変更することができる。
【0015】
最良の形態3
図5〜図7は本発明の最良の形態3を示し、図5は穿孔方法の手順を示し、図6は穿孔方法に用いる穿孔装置を示し、図7は穿孔装置における案内ロッドと支持部との連結構造を分解して示す。尚、図6における案内ロッドの位置する側を「前」、駆動装置の位置する側を「後」と定義して説明する。また、最良の形態1の図1〜図3と同一部分は同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0016】
図6に示すように、本形態では、基台4の前部に案内ロッド6Aを固定するための支持部14を備えた穿孔装置1Aを用いる。支持部14は、基台4の前部に連結され基台4の延長する方向に対して上方に垂直に延長する鋼板などの剛体よりなる。支持部14の下方の前面には前方に突出する規制部材18が設けられる。本形態では、連結部材8や81は用いない。穿孔ロッド11としては、例えば、図3のような構造の穿孔ロッド11を用いてもよいが、少なくとも、前端に切削部41を着脱可能に備え、後端が回転軸10の前端に連結される構造のものを用いればよい。このような穿孔ロッド11を用いれば、最良の形態1と同様に、切削部41の交換が容易である。
【0017】
図7の分解斜視図を参照し、穿孔装置1Aの案内ロッド6Aと支持部14との連結部分の構造を詳細に説明する。支持部14の中央上部には、上部開放で支持部14の板の前後に貫通する貫通孔25が形成される。削岩機5のドリル部3は貫通孔25の下方を経由して前後に移動可能であり、貫通孔25の上方に案内ロッド6Aが連結される。案内ロッド6Aは、棒状体28Aの前端に円錐形状の先鋭なキャップ部材29が着脱可能に取り付けられたものである。棒状体28Aの後端には棒状体28Aの径より小径の棒状取付部20が形成される。棒状体28Aは例えば金属製のものを用いればよい。案内ロッド6Aの後部には取付板31が取り付けられる。取付板31の中央には、取付板31の板の前後に貫通する嵌合孔32が形成される。案内ロッド6Aの後部の棒状取付部20が、取付板31の嵌合孔32に嵌め込まれて、棒状取付部20の周囲と取付板31の後面とが溶接のような連結手段で連結されることで、案内ロッド6Aと取付板31とが互いに連結される。案内ロッド6Aが取り付けられた取付板31と支持部14とが連結固定される。つまり、案内ロッド6Aの後部を貫通孔25内に位置させ、支持部14の後面に取付板31の前面を当てて支持部14と取付板31とを、貫通孔34aを経由するボルト34、及びナット35のような固定具36(図6参照)で連結することで、案内ロッド6Aと支持部14とを互いに着脱可能に取り付けることができる。
【0018】
本形態による穿孔作業を図5により説明する。
穿孔対象物としての地山の岩盤15に最初の先行孔12を形成する際には、支持部14から案内ロッド6Aを取り外しておいて、穿孔装置1のドリル部3の穿孔ロッド11を支持部14の貫通孔25を経由させて前方に進め、駆動装置9でドリル部3を駆動して切削部41で岩盤15を切削して先行孔12を形成する(図5(a)参照)。先行孔12を形成した後に、先行孔12内への案内ロッド6Aの挿入作業、及び、案内ロッド6Aと支持部14との連結作業とを行う。案内ロッド6Aの挿入作業は、人あるいは機械により、後部に取付板31を備えた案内ロッド6Aを単独で前端側から先行孔12内に挿入し、案内ロッド6Aのキャップ部材29の前端が先行孔12の孔尻12eに衝突するまで押し込む(図5(b)参照)。案内ロッド6Aと支持部14との連結作業は、操縦機2を操作して支持部14を案内ロッド6Aの後部に近付けて、案内ロッド6Aの後部を支持部14の貫通孔25内に挿入し、上述したように支持部14の後面と取付板31の前面とを対面させた状態で支持部14と取付板31とを固定具36で連結することで、案内ロッド6と支持部14とを連結する(図5(c)参照)。この場合、案内ロッド6Aは、案内ロッド6Aの外周面と回転するドリル部3の切削部41の外周面とが接触するか、接触しないまでも互いに近い位置で対向するように設定される。よって、最良の形態1と同様に、規制部材18の前端を岩盤15に突付けてから、ドリル部3の前端の切削部41を貫通孔25経由で岩盤15まで移動した後に削岩機5を駆動することにより、ドリル部3を案内ロッド6の軸線に沿って前進させることで先行孔12と外周の一部同士が直接的に連続するような図外の後行孔を形成できる。
【0019】
本形態では、人あるいは機械により、案内ロッド6Aを単独で前端側から先行孔12内に挿入するので、最良の形態1と同様に、従来困難であった先行孔12内への案内ロッド6Aの挿入作業を容易とできる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
尚、上述した最良の形態3において、案内ロッド6とドリル部3の穿孔ロッド11とを最良の形態1の連結部材8により連結すれば、ドリル部3の直進性を向上できる。上述した最良の形態3において、案内ロッド6とドリル部3の穿孔ロッド11とを最良の形態2の連結部材8により連結すれば、ドリル部3の直進性を向上できるとともに掘削対象部としての岩盤の硬さに応じて先行孔と後行孔との間の距離を選定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】穿孔方法の手順を示す図(最良の形態1)。
【図2】穿孔方法に使用する穿孔装置を示す斜視図(最良の形態1)。
【図3】案内ロッドとドリル部との連結構造を示す分解斜視図(最良の形態1)。
【図4】穿孔方法に使用する穿孔装置の連結部材を示す斜視図(最良の形態2)。
【図5】穿孔方法の手順を示す図(最良の形態3)。
【図6】穿孔方法に使用する穿孔装置を示す斜視図(最良の形態3)。
【図7】支持部と案内ロッドとの連結構造を示す分解斜視図(最良の形態3)。
【図8】従来の穿孔装置を示す斜視図。
【符号の説明】
【0022】
1;1A 穿孔装置、3 ドリル部、4 基台、5 削岩機、
6;6A 案内ロッド、8 連結部材、14 支持部、
20 内側丸棒体(内側体)、21 外側筒体、
27 連結部材の連結板(連結体)、41 ドリル部の切削部、
50 筒体(取付体)、51 スライド体、53 連結部材の切削部、
55 スライドレール(スライド部)、80 調整部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
削岩機で穿孔対象物に先行孔を形成し、先行孔内に案内ロッドを挿入した後に、削岩機のドリル部と案内ロッドとを連結部材で互いに連結することによりドリル部を案内ロッドの軸線に沿って前後移動可能に設定してから削岩機を駆動し、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿って前進させることによってドリル部の前端の切削部と連結部材の前端の切削部とで穿孔対象部に先行孔と孔の外周の一部同士が連続する後行孔を形成したことを特徴とする穿孔方法。
【請求項2】
請求項1に記載の穿孔方法に使用する連結部材であって、ドリル部に着脱可能な取付体と、案内ロッドに設けられたスライド部に着脱可能なスライド体と、取付体とスライド体とを連結する連結体と、連結体の前端に設けられた切削部とを備えたことを特徴とする連結部材。
【請求項3】
請求項1に記載の穿孔方法に使用する連結部材であって、ドリル部と案内ロッドとの間の距離を変更可能な調整部を備えたことを特徴とする連結部材。
【請求項4】
削岩機で穿孔対象物に先行孔を形成し、先行孔内に案内ロッドを挿入した後に、削岩機を前後移動可能に搭載する基台と案内ロッドとを互いに連結することによりドリル部を案内ロッドの軸線に沿って前後移動可能に設定してから削岩機を駆動し、ドリル部を案内ロッドの軸線に沿って前進させることによってドリル部の前端の切削部で穿孔対象部に先行孔と孔の外周の一部同士が連続する後行孔を形成したことを特徴とする穿孔方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−328777(P2006−328777A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−153289(P2005−153289)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(505195292)古河ロックドリル株式会社 (4)
【Fターム(参考)】