説明

突起を有するシール溝

【課題】ブレーキ解除時のピストン戻り位置最適化。
【解決手段】ピストンボア12と、該ピストンボア12の開端の近くで該ピストンボア12内に配置され、前壁30、後壁34、該前壁30と該後壁34の間に架かり該前壁30を該後壁34に接続する底壁36、該底壁36の中央領域にあり、ブレーキ引き戻し及び/又はブレーキ解除時にシール28のツイストを可能にするのに好適な突起42、を有するシール溝26と、を具備しており、該後壁34は、該後壁34が該底壁36から該ボア12面の方へ延びる時、該前壁30から離れるよう逸れるカリパー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、少ないブレーキドラグを保持しながら減少したエアギャップを生ずる改良したシール溝に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示は、車両で使用する改良したディスクブレーキシステム及びカリパーの提供に関して述べる。例えば、カリパーは殆どどんな車両(例えば、乗用車、トラック、バス、列車、飛行機等)で使われてもよい。代わって、カリパーは、旋盤、紙製品又は布用の巻き取り機、遊園地乗り物等の様なブレーキを要する製造又は他の機器用に使われる組立体に一体化されてもよい。しかしながら、本発明は乗客車両(すなわち、乗用車、トラック、スポーツ型多用途車等)での使用に最も好適である。
【0003】
一般に、ブレーキシステムはローター、カリパーボデイ、サポートブラケット、インボードブレーキパッド、そして該ローターの反対側に配置されるアウトボードブレーキパッドを有する。該カリパーボデイは更にブリッジ、1つ以上のフィンガー、そしてピストンボアを有する。該ピストンボアはピストンを収容する。該ボアは、ブレーキ印加及びブレーキ解除時に、ピストンが沿って動くボア軸線を有する。ピストン軸線は、ボア軸線に実質的に平行である。好ましくは、ピストン軸線はボア軸線に平行で、ボア軸線に沿って動くのがよい。ピストンボアは、流体入り口、閉じた壁、前部開口部、そして該前部開口部の近くに配置されたシール溝を有する円柱状側壁を備える。典型的に、流体入り口は、ピストンボアの該閉じた壁内に配置されるので、圧力が印加されると、流体はピストンボア内に流れ込む。圧力印加時、流体は該ピストンを、前部開口部の方へ、そしてブレーキパッドに接触するように押す。しかしながら、圧力印加時、該ピストンは、流体圧力の代わりに機械的力で押されてもよい。例えば、ブレーキ印加時、機械的アクチュエーターがピストンをブレーキパッドに接触するように押してもよい。好ましくは、ピストンは流体により押されるのがよい。より好ましくは、該ピストンはブレーキ流体により押されるのがよい。
【0004】
一般に、ブレーキ印加が完了すると(すなわち、解除されると)、シールは、ピストンをブレーキパッドから軸方向に離れるように動かし、かくしてエアギャップを創るのに役立つ。次ぎのブレーキ印加時、ピストンはブレーキパッドと接触するよう押され、次いでブレーキパッドをローターに接触するよう動かし、かくして該エアギャップを取り除く。エアギャップを取り除くためピストン及びブレーキパッドを動かすことは時間が掛かり、かくしてブレーキ印加の開始とブレーキ力が創られる間に、遅れ時間がある。この遅れ時間は停止距離及び/又は走行時間を長くする。この様なブレーキデバイスの例は、それらの全てが全目的用の引用によりここに明示的に組み入れられる特許文献1,2,3及び4で開示される。必要なことは、燃料効率を減じたり、ブレーキパッド及びローターの摩耗を増やしたりせずに、ブレーキ性能を改良するブレーキシステムである。必要なことは、ブレーキパッド、ローターの寿命、燃料経済性又はそれらの組み合わせに不利に影響することなく、エアギャップを最小化又は実質的に無くするブレーキシステムである。更に必要なことは、ブレーキ印加の開始とブレーキ力が創られる時の間の時間量を減じるブレーキシステムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第3,915,461号明細書
【特許文献2】米国特許第7,191,875号明細書
【特許文献3】英国特許第GB2129878号明細書
【特許文献4】国際公開第WO00/09916号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2009/0272606号明細書、2008年5月2日出願
【特許文献6】米国特許第5,826,681号明細書
【特許文献7】米国特許第6,244,393号明細書
【発明の概要】
【0006】
本開示の1つの可能な実施例は、シール溝のボア軸線に直角な前壁、後壁、前壁から後壁の間に架かり、前壁を後壁に接続する底壁、底壁の中央領域にあり、ブレーキ引き戻し及び/又はブレーキ解除時にシールのツイストを可能にするのに好適な突起、を備えており、後壁は、後壁が底壁から離れボア面の方へ延びる時、前壁から離れるよう逸れるシール溝を具備する。
【0007】
本開示の1つの可能な実施例は、ピストンボアと、該ピストンボアの開端の近くで該ピストンボア内に配置されたシール溝と、を備えるカリパーであって、該シール溝が該シール溝のボア軸線に直角な前壁と、後壁と、前壁と後壁の間に架かり前壁を後壁に接続する底壁と、底壁の中央領域にありブレーキ引き戻し及び/又はブレーキ解除時にシールのツイストを可能にするのに好適な突起と、を有し、該後壁は該後壁が該底壁から離れるよう延びる時前壁から離れて逸れる、該シール溝を備えるカリパーを具備する。
【0008】
本開示のもう1つの独特な側面は、インボードブレーキパッド及びアウトボードブレーキパッドと、インボードブレーキパッド及びアウトボードブレーキパッドの間に位置するローターと、ピストンボアを備えるカリパーであって、該ピストンボアはシール溝を有し、該シール溝が該シール溝のボア軸線に直角な前壁、後壁、該前壁と該後壁の間に架かり前壁を後壁に接続する底壁、底壁の中央領域にありブレーキ引き戻し及び/又はブレーキ解除時シールのツイストを可能にするのに好適な突起を有する該シール溝を有する該ピストンボアを備えるカリパーと、を具備しており、該後壁は該後壁が該底壁から離れて延びる時該前壁から離れるよう逸れ、ピストンは該ピストンボア内に配置され、そしてシールが該シール溝内に配置されており、該シールの内径は該ピストンと接しており、そして該ピストンはブレーキオフ位置にある時インボードブレーキパッドと実質的に接触した侭であるディスクブレーキを予想する。
【0009】
ここでの開示は、シール溝と、該シール溝内に配置されたシールと、を有するカリパーを備え、ブレーキパッドとローターの間の摩擦力を不利に増加させることなくエアギャップを減じる及び/又は除去するブレーキデバイスを提供することによりこれらの問題の1つ以上を驚異的に解決する。本シール及びシール溝は更に、ピストンがブレーキオフ位置にある時(すなわち、走行中)、該シールにより創られるピストンへの軸方向力を減じながら、ブレーキ流体を保持する。本シール溝構造は、ブレーキ印加時、ブレーキ引き戻し時、及び/又はブレーキ解除時又はそれら間の位置にある時、該シールが該シール溝の底壁に沿い軸方向にシフトしないよう該シールを保持するが、該シールが該シール溝内でツイストすることを可能にする。該シール溝構造は、シールがシール溝内でツイストし、かくしてブレーキ印加が完了後該シールによりピストンに印加される軸方向力の量を減じるよう造形された突起を有するので、ピストン及び/又はブレーキ流体は走行時(すなわち、ブレーキオフ)ブレーキパッド及び/又はローターに何等実質的圧力を印加しない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ここで開示するブレーキデバイスの例を図解する。
【図2】シール溝に設置されたシールを有する図1のシール溝の1つの可能な形状のクローズアップ断面図を図解する。
【図3】ブレーキ印加時の図1のシール溝のもう1つの可能な形状のクローズアップ断面図を図解する。
【図4】高圧力ブレーキ印加時の図1のシール溝のもう1つの可能な形状のクローズアップ断面図を図解する。
【図5】ブレーキ引き戻し及び/又はブレーキ解除時の図1のシール溝の1つの可能な形状のクローズアップ断面図を図解する。
【図6】底壁用のもう1つの可能な形状のクローズアップ断面図を図解する。
【図7】後壁、前壁及び底壁用の可能な形状の追加の断面図を図解する。
【図8】後壁、前壁及び底壁用の可能な形状の追加の断面図を図解する。
【図9】凹領域内にランプを有する1つの可能なシール溝の断面図を図解する。
【実施例】
【0011】
ここに提示される説明と図解は、当業者に本発明、その原理及びその実際応用を知らせるよう意図されている。当業者は本発明を、特定の使用の要求に最も良く適合するその多くの形で適合させ、応用してもよい。従って、表明される本発明の特定の実施例は、本開示を使い尽くしたもの、或いは限定するものとするよう意図されてない。それ故、本開示の範囲は上記説明を参照して決定されるのでなく、代わりに附属する請求項と、併せてこの様な請求項が権利を与えられる全範囲の等価物と、を参照して決定されるべきである。特許出願明細書及び同刊行物を含む全文書及び参考文献の開示は全ての目的で引用により組み入れられる。引用によりこの記述説明にここで組み入れられる下記請求項から収集される他の組み合わせも起こり得る。
【0012】
カリパーはブリッジ、フィンガー及びピストンボアを具備する。ピストンボアは閉端、開端及び該開端の近くのシール溝を備える。該シール溝は、ブレーキパッドの近くの前壁、ピストンボアの該閉端側と前壁の間に位置する後壁、そして該前壁及び該後壁の間に架かり該前壁及び該後壁を接続する底壁を有する。該シール溝は、断面で見た時、1つの連続面又は輪郭を画く線であり、前壁部分、底壁部分及び後壁部分を含むのが好ましい。後壁部分及び底壁部分は後部凹領域内で一体に接続され、前壁部分と底壁部分は前部凹領域で一体に接続されている。前壁、後壁及び底壁は論議を容易にするためここでは個別に論じられるが、しかしながら、これらの要素は、断面から見ると1つの連続な輪郭を画く線、輪郭、又はそれら両方を形成する。前壁は、該シールがブレーキ印加時シール溝内に保持されるよう何等かの角度を形成してもよい。前壁は、該シールが、ブレーキ印加時、ブレーキ引き戻し時、ブレーキ解除時、それらの間の何等かの時間、又はそれらの組み合わせ時、シール溝内でツイストし、そしてブレーキオフ位置にある時、ツイストされて留まるよう、何等かの角度を形成してもよい。前壁は、低圧力ブレーキ印加の後、小さなエアギャップが創られるよう、何等かの角度であってもよい。ここで論じられる高圧力ブレーキ印加は約7MPa、約10MPa以上、或いは約12MPa以上のブレーキ印加である(すなわち、約7MPaと約14MPaの間)。ここで論じられる低圧力ブレーキ印加は約4MPaより少ない又は約2MPa以下の何等かのブレーキ印加である(すなわち、約1MPaと約4MPaの間)。ここで論じられる中間圧力ブレーキ印加は約4MPaと約7MPaの間の力を用いた何等かのブレーキ印加である。前壁はピストン、ボア軸線又は両者と或る角度を形成してもよい。
【0013】
前壁は底壁と或る角度を形成してもよい。該前壁は、ボア軸線と、約84度以上、約85.5度以上、約87度以上、又は89度以上もの角度を形成してもよい。前壁は、ボア軸線に直角の線と或る角度を形成してもよい。前壁は、該ボア軸線に直角の線と、約1度以上、約2度以上、約3度以上又は約4度以上の角度を形成してもよい。前壁は、ボア軸線に直角の線と、約10度以下、約8度以下、或いは約5度以下(すなわち約4.5度)の角度を形成してもよい。前壁は、ピストン、ボア軸線、底壁又はそれらの組み合わせと実質的に直角である。前壁は、底壁の面、ピストン、ボア軸線又はそれらの組み合わせと
直角を形成してもよい。前壁は、ボア軸線と直角な線と約0度と約5度の間の角度を形成してもよい。前壁は、面取りが無くてもよい。
【0014】
前壁は、面取りを有してもよい。前壁は、1つ以上の面取りを有してもよい。前壁は、引用によりここに組み入れられる特許文献5のそれらを含む本開示で明らかにされたどんな面取り形状を含んでもよい。前壁は、後壁と平行であってもよい。好ましくは、前壁と後壁は平行でないのがよい。例えば、1本は前壁と、もう1本は後壁と共線的に延びた2本の線の間に交差点が存在する。
【0015】
後壁は、ブレーキオフ時、ブレーキ印加時、ブレーキ解除時、それら間の何等かの時間、又はそれらの組み合わせ時に、シールがシール溝内に保持される様などんな角度を形成してもよい。後壁は、ブレーキ解除時、該シールが該シール溝内でツイストすることを可能にされるようどんな角度を形成してもよい。好ましくは、後壁の角度は、シールがシール溝内でツイストすることを可能にされる何等かの角度であるので、ピストンがブレーキパッド及び/又はローターから離れる引き戻しを実質的に有さないのがよい。より好ましくは、後壁の角度は、シールが前壁から離れ、ボア軸線に直角な線からの該後壁の角度により創られる面積及び/又は容積内へツイストすることを可能にされる何等かの角度であるので、ピストンはブレーキパッドから離れる引き戻しを実質的に有さないのがよい。該後壁の角度は、該シールが、ブレーキパッドの弛緩、カリパーボデイの逸れの解除、又は両者によりピストンがピストンボア内へ押される故に、前壁から離れてツイストすることが可能になる何等かの角度であるので、該ピストンは該ブレーキパッドから離れる引き戻しを受けず、そして該ピストンは、標準シール溝内のシールにより創られ印加方向でピストンに掛かる力に比較した時、実質的に減じられたブレーキパッド上への力をブレーキ印加方向で保持する(例えば、底壁はボア軸線に対し僅かな角度にあり、例えば特許文献6,7又は2参照)。走行中、ブレーキ印加方向でブレーキパッドへのピストンの力は、該シールのツイストの故に、約25N以下、約20N以下、約15N以下、好ましくは約10N以下、より好ましくは約8N以下、なおより好ましくは約5N以下、或いは最も好ましくは約2N以下であるのがよい。走行中、ブレーキ印加方向でブレーキパッドへのピストンの力は、該シールのツイストの故に、約0.5N以上、約1N以上、或いは約1.5N以上であってもよい。走行中、印加方向でブレーキパッドへのピストンの力は、該シールのツイストの故に、約20Nと約1Nの間、好ましくは約10Nと約2Nの間であるのがよい。
【0016】
後壁の角度は、該シールが該後壁の角度により創られる面積及び/又は容積内へツイストすることが出来るようなどんな角度であってもよい。後壁の角度は、該シールがツイストされた条件にある時、該後壁と該シールの間に最小接触面積が創られる何等かの角度であってもよい。後壁の角度は、該シールがツイストされた条件、ツイストされない条件、或いはそれら間の何等かの条件にある時も、該シールの後壁と接触する表面積の量が最小化される何等かの角度であってもよい。後壁の角度は、シールがツイストされた条件、ツイストされない条件、或いはそれらの間の何等かの条件にある時、該シールと該後壁の間の接触が実質的に限定される何等かの角度であってもよい。後壁は、底壁の面と或る角度を形成してもよい。後壁は、ボア軸線と或る角度を形成してもよい。好ましくは、後壁は、ピストン軸線、ボア軸線又は両軸線と鋭角を形成するのがよい。より好ましくは、後壁が底壁からボア軸線の方へ延びる時、後壁が前壁から離れそれるのがよい。後壁は、ボア軸線に直角な線と、約5度以上、約10度以上、好ましくは約15度以上、或いは、より好ましくは約20度以上の角度を形成するのがよい。後壁は、ボア軸線に直角な線と、約60度以下、約50度以下、約40度以下の角度を形成してもよい。後壁は、ボア軸線に直角な線と、約10度と約35度の間の角度を形成してもよい。後壁は、ピストンと或る角度を形成してもよい。後壁は、ボア軸線と或る角度を形成してもよい。好ましくは、後壁は、ピストン軸線、ボア軸線又は両者と鋭角を形成するのがよい。後壁は、ピストン、
ボア軸線又は両者と約90度以下、約85度以下、約80度以下、約75度以下又は約70度以下の角度を形成してもよい。後壁は、ピストン、ボア軸線又は両者と約45度以上、約55度以上、約60度以上、又は約65度以上の角度を形成してもよい。後壁は、面取りを有さなくてもよい。後壁は、面取りを有してもよい。後壁は、1つ以上の面取りを有してもよい。後壁は、ここでの引用により組み入れられる特許文献5のそれらを含むここでの開示で明らかにされたどんな面取り形状を有してもよい。
【0017】
底壁は突起、前部凹領域、及び後部凹領域を有する。該突起は、シールがシール溝内でツイストすることを可能にされるどんな寸法及び形状であってもよい。該突起は、ブレーキ解除、ブレーキ印加又は両者の時、該シールが該突起の周りに回転(すなわちツイスト)出来るよう該突起の最高点が該シールの幅内の中央領域と一致するどんな寸法及び形状であってもよい。該突起は、流体漏れ及びピストンノックバックを防止する該シールの能力に影響することなくシールツイスト力が最小化されるどんな寸法及び形状であってもよい。好ましくは、突起は、底壁の中央領域内に配置されるのがよい。より好ましくは、該突起は、前部領域で始まり、中央領域を通って延び、後部領域で終わる略円弧形突起であるのがよい。該突起は、ベル型曲線形状を形成してもよい。好ましくは、該突起は凸型であるのがよい。該突起は尖端を形成してもよい。該突起はピークを形成してもよい。該突起は頂部を含んでもよい。該突起の頂部は、シールがブレーキ印加時、ブレーキ解除時又はそれら間の何れの時にもシール溝内でツイストすることを可能にされる様などんな形状であってもよい。該突起の頂部は平坦であってもよい。該突起の頂部は平坦部分を有してもよい。好ましくは、該突起の頂部は丸いか又は円弧形であるのがよい。該突起は、こぶの様に形作られてもよい。該突起はラジアル(すなわち、略円形)であってもよい。該突起は、ブレーキ印加時、空気がブレーキ流体により圧縮及び/又は排出される必要がないよう、該突起の周囲領域が捕捉された空気のポケットを有しない形状であってもよい。該突起は、何等かのシャープな移行、角度、エッジ又はそれらの組み合わせを有しなくてもよい。該突起は、交差してピークを形成する実質的な直線により創られる何等かのピークを有しい。該突起は直線を有しない。該突起は何等直線形部分を有しない。側部は、その長さに沿って少なくとも1つの直線形部分を有してもよい。両側部は、各々それらの長さに沿う少なくとも1つの直線形部分を有してもよい。該突起の頂部はボア面、シール溝に最も近いピストンの外面、又は両者から約2.0mm以上、約2.2mm以上、約2.3mm以上、約2.4mm以上又は例え約2.45mm以上もの深さに配置されてもよい。該突起の頂部はボア面、該シール溝に最も近い該ピストンの外面、又は両者から約3.5mm以下、約3.0mm以下、約2.8mm以下、又は約2.6mm以下の深さに配置されてもよい。該突起の頂部は該ボア面、該シール溝に最も近いピストンの外面、又は両者から約2.4mmと約2.6mmの間、好ましくは約2.45mmと約2.55mmの間の深さに配置されてもよい。前部領域と後部領域に於ける底壁は、ボア面、シール溝に最も近いピストンの外面、又は両者から約2.5mm以上、約2.6mm以上、約2.7mm以上、約2.8mm以上、約2.9mm以上、約3.0mm以上又は例え約3.2mm以上にも配置されてもよい。前部領域と後部領域に於ける底壁は、ボア面、シール溝に最も近いピストンの外面、又は両者から約4mm以下、約3.8mm以下、約3.6mm以下、又は約3.5mm以下に配置されてもよい。ボア面、シール溝に最も近いピストンの外面、又は両者から、前部領域の底壁までの距離は、ボア面、シール溝に最も近いピストンの外面、又は両者から後部領域の底壁までの距離と同じであってもよい。ボア面、シール溝に最も近いピストンの外面、又は両者から前部領域の底壁までの距離は、ボア面、シール溝に最も近いピストンの外面、又は両者から後部領域の底壁までの距離と異なってもよい。前部領域及び後部領域内の底壁はここに詳述される距離の何れに配置されてもよい。好ましくは、底壁から前部領域のボア面、シール溝に最も近いピストンの外面又は両者までの距離は約2.7mmから約3.0mmであってもよく、底壁から後部領域のボア面、シール溝に最も近いピストンの外面又は両者までの距離は約2.7から約3.5mmであってもよい。該突起は側部を有してもよい。
【0018】
該突起の側部(すなわち、該突起がその中心を通して2分された時、該ピークの両側の領域)は実質的に同一であってもよい。例えば、該突起の側部の角度及び長さは実質的に同じであってもよい。該突起の側部は対称であってもよい。該突起の側部は非対称であってもよい。好ましくは、該突起の側部は異なるのがよい。例えば、1つの側はもう1つの側よりも長く、1つの側はもう1つの側よりも、急峻な角度、よりフラットな角度、又はそれらの組み合わせ、を持ってもよい。該突起の側部は輪郭取りされてもよい(すなわち、略非直線形である)。両側部はそれらの長さに沿う直線形部分を有しなくてもよい。該突起は、底壁の中央領域にのみ配置されてもよい。好ましくは、該突起の少なくとも1部分は前部領域、後部領域又は両者への接点まで延び、該接点で終了するのがよい。
【0019】
底壁は1つの平面内にあってもよい。底壁は多数の平面内にあってもよい。底壁は連続曲線に沿っていてもよい。底壁は、ボア軸線に実質的に平行に延び、突起の最高点にある平面(すなわち、ピーク平面)を有してもよい。底壁は、突起の頂部の点を通りボア軸線に平行に延びるピーク平面を有してもよい。該ピーク平面は、該突起の頂部の点の接面であってもよく、該ピーク平面はボア軸線に平行であってもよい。底壁は、ボア軸線に実質的に平行に延び、前部凹領域の底部にある平面(すなわち、前部平面)を有してもよい。底壁は、前部凹領域の底部の点を通りボア軸線に平行に延びる前部平面を有してもよい。該前部平面は、前部凹領域の底部の点の接面であってもよく、該前部平面はボア軸線に平行であってもよい。底壁は、ボア軸線に実質的に平行に延び、後部凹領域の底部にある平面(すなわち後部平面)を有してもよい。底壁は、後部凹領域の底部の点を通りボア軸線に平行に延びる後部平面を有してもよい。該後部平面は後部凹領域の底部の点の接面であってもよく、該後部平面はボア軸線に平行であってもよい。前部平面と後部平面は重なってもよい(すなわち同じ平面上にある)。前部平面と後部平面はボア軸線から等距離であってもよい。前部平面は後部平面よりボア軸線から遠い距離に配置されてもよい(すなわち、前部平面が後部平面の下にあってもよい)。好ましくは、前部平面は、後部平面よりボア軸線から近い距離にあるのがよい(すなわち、前部平面は後部平面の上にある)。より好ましくは、該ピーク平面はボア軸線に最も近い距離にあるのがよい(すなわち、ピーク平面は前部平面及び後部平面の両者の上にある)。
【0020】
底壁の傾斜及び/又は角度は、ボア軸線と角度を形成する、底壁に沿う点への1本以上の接線を使って測定され、突起の最大傾斜を測定するため使われ、突起の最小傾斜を測定するため使われ、或いはそれらの組み合わせを測定するため使われてもよい。突起の側部への1本以上の接線がボア軸線と角度を形成してもよい。好ましくは、突起の各側の点を通過する1本の接線が、突起の各側の最大及び/又は最小傾斜を測定するため使われるのがよい。例えば、突起が、該ピークを通過する線により2等分され、該線の両側にセグメントを形成してもよい。接線は、該線が該2等分線で交差するよう各セグメント上にあってもよい。該接線が測定される点は、それぞれのセグメントの最大及び/又は最小傾斜が得られるまで、突起の長さに沿って動かされてもよい。該セグメントの最大及び/又は最小角度が得られるよう、該最大及び/又は最小傾斜を表す接線のボア軸線に対する角度が測定される。傾斜が絶対値である時、突起の前側のセグメントへの接線は、突起の後ろ側のセグメントへの接線と、同じ角度をボア軸線に対し有してもよい。突起の前側のセグメントへの接線は、突起の後ろ側のセグメントへの接線と異なる角度をボア軸線に対し有してもよい。突起のセグメントへの接線はボア軸線と、約75度以上、約80度以上、或いは約85度以上の最大角度及び/又は最小角度を形成してもよい。突起のセグメントへの接線はボア軸線と、約150度以下、約135度以下、約115度以下、又は約95度以下の最大及び/又は最小角度を形成してもよい。
【0021】
底壁は、その輪郭の故に、ボア軸線と多数の、異なる角度を形成する多数の接線を該底壁の輪郭に対し有する。かくして、突起の前壁側のセグメントに沿う点への接線は、ボア
軸線と約5度から約75度までに及ぶ種々の角度を有する。突起の後壁側のセグメントに沿う点への接線は、約25度から約85度までの種々の角度範囲を有する。
【0022】
突起の前壁側、突起の後壁側又は両者のセグメントへの接線は傾斜を有する。ここで論じる全ての傾斜は絶対値であると考える。例えば、負の1及び正の1は1と言う。突起の前壁側の接線は正の傾斜を有する。突起の後壁側の接線は負の傾斜を有する。突起の前壁側の接線は、シールがシール溝内でツイストする様などんな傾斜を有してもよい。突起の後壁側の接線は、シールがシール溝内でツイストする様などんな傾斜を有してもよい。突起の前壁側の接線は、約0.1以上、約0.2以上、約0.25以上の最大及び/又は最小傾斜を有してもよい。突起の前壁側の接線は、約15以下、約12以下、約5以下、好ましくは約1.5以下、より好ましくは約1.0以下、或いはより好ましくは約0.75以下でもよい最大及び/又は最小傾斜を有する。突起の前壁側の接線は約0.2と1.0の間、好ましくは0.25と約0.5の間の最大及び/又は最小傾斜を有してもよい。突起の後壁側の接線は、約0.3以上、約0.5以上、或いは約0.7以上の最大及び/又は最小傾斜を有してもよい。突起の後壁側の接線は、約15以下、約12以下、約10以下、約5以下、好ましくは約2.0以下、より好ましくは約1.5以下、或いはより好ましくは約1.0以下でもよい最大及び/又は最小傾斜を有する。突起の前壁側の接線は、約0.5と約10の間、好ましくは約0.6と約5の間、又はより好ましくは約0.7と約2.0の間の最大及び/又は最小傾斜を有するのがよい。
【0023】
底壁は前部領域を有する。該前部領域は、前部凹領域を形成する凹部を有してもよい。前壁と底壁は前部領域で接続される。前部領域は前壁と底壁を接続するアール(すなわちフィレット)を有してもよい。前部領域は、前壁と前部領域の両者の接点となる点で終了するカーブであってもよい。
【0024】
前部領域は、シールがブレーキ印加時、ブレーキ引き戻し時、ブレーキ解除時又はそれらの組み合わせ時に、下方へ、そしてその凹部内へ延びるよう円弧形の凹部を形成してもよい。前部領域は、シールが、ブレーキ印加時前壁の方へ、そしてブレーキ引き戻し及び/又はブレーキ解除時前壁から離れて、ツイストするようどんな寸法及び形状であってもよい。前部領域は深さを有してもよい。前部領域の該深さは、該前部領域が、ピストン、ボア軸線又はそれら両者から測定された時、突起の全部又は1部分より低い様などんな深さであってもよい。好ましくは、前部領域の該深さは、該前部領域が、ピストン、ボア軸線又はそれら両者から測定された時、突起の最高点より遠い距離にある様な何等かの深さであるのがよい。
【0025】
シール溝は後部領域を有する。該後部領域は、後部凹領域を形成する凹部を有してもよい。後壁と底壁は該後部領域で接続される。底壁は、後部領域で後壁と直角を形成してもよい。底壁は後部領域で円弧形の接続部を有してもよい。底壁は円弧形で90度の角度を形成してもよい(すなわち、底壁は90度の角度でカーブし、前壁とつながる)。
【0026】
後部領域は円弧形の凹部を形成し、シールはブレーキ印加時、ブレーキ引き戻し時、ブレーキ解除時又はそれらの組み合わせ時、下方へ、そして該凹部内へ、延びてもよい。後部領域は、シールが、ブレーキ解除時は前壁から離れ、ブレーキ印加時は後壁から離れ、ツイストすることが可能となる様などんな寸法及び形状であってもよい。後部領域は深さを有してもよい。後部領域の深さは、後部領域が、ピストン、ボア軸線又は両者から測定された時、突起の全部又は1部分より深い様などんな深さであってもよい。好ましくは、後部領域の深さは、後部領域が、ピストン、ボア軸線又は両者から測定された時、突起の最高点より低い様などんな深さであってもよい。後部領域の深さは、シールが後部領域内にツイストし、ピストンが、シールの動きの故に、ブレーキパッド、ローター又は両者から離れ、実質的に引き戻し(すなわち、エアギャップ無し)を受けない様な、どんな深さ
であってもよい。インボードブレーキパッドとアウトボードブレーキパッドはブレーキオフ位置の時にはローターの実質的に近くに留まる。
【0027】
底壁はランプを有してもよい。該ランプは底壁に沿ってどこにあってもよい。好ましくは、該ランプは前部凹領域、後部凹領域又は両者内にあるのがよい。より好ましくは、ランプは後部凹領域内にあり、底壁から後壁へ延び、後壁と底壁の間に直線形の面を形成するのがよい。該ランプは、該ランプがシール溝内に設置されたシールのコーナーと接触する様などんな形状と寸法であってもよい。好ましくは、該ランプはシールの底部コーナーと接触するのがよい。ランプは、該ランプが、前壁、後壁又は両者と接触するシールの表面積を減じる及び/又は最小化する様などんな寸法及び形状であってもよい。ランプは、該ランプが、断面で、該シールと1つの接触点を形成する様などんな寸法及び形状であってもよい。ランプは直線形であってもよい。ランプは略直線形であってもよい。ランプは円弧形であってもよい。ランプは円弧形部分を有してもよい。ランプは直線形部分を有してもよい。ランプは後壁及び/又は前壁と或る角度を形成してもよい。ランプと前壁及び/又は後壁との間の角度は約90度以上、約95度以上、約100度以上、約105度以上、約115度以上又は約125度以上であってもよい。ランプと前壁及び/又は後壁との間の角度は約160度以下、約150度以下、又は約140度以下であってもよい。好ましくは、ランプと前壁及び/又は後壁との間の角度は約95度と約135度の間にあるのがよい。ランプはボア軸線と或る角度にあってもよい(すなわち、該ランプに沿ってボア軸線の方へ共線的に延びる線は或る角度を形成する)。ランプはボア軸線と、約5度以上、約15度以上、約20度以上、約25度以上、或いは好ましくは約30度以上の角度を形成するのがよい。ランプはボア軸線と、約75度以下、約60度以下、約50度以下、約45度以下、或いは好ましくは約40度以下の角度を形成するのがよい。ランプはボア軸線と、約15度と約60度の間、好ましくは約25度と約50度の間の角度を形成するのがよい(例えば約35度)。
【0028】
シール溝とシールは断面から見ると面積を有し、全体として見ると容積を有する。ここで論じる時、論議が容易なためシール溝及び/又はシールの面積が使われるが、当業者は、面積の論議は、シール溝が全体として論じられる時、容積に変換され得ることは理解するであろう。例えば、後部領域の面積が前部領域の面積より大きいならば、後部領域の対応する容積は前部領域の容積より大きい。後部領域と前部領域の面積は実質的に同一であってもよい。後部領域の面積は前部領域の面積より大きくてもよい。好ましくは、後部領域の面積は前部領域の面積より大きいのがよい。
【0029】
環状溝はシールを有する。該シールは高さ、外径、内径、及び幅を有する。シールの高さは、ピストンをボア内に挿入した時、ピストンとシールの間で締まりばめが創られる程充分高いので、前部開口部からの流体漏洩は防止される。シールの高さはシールが環状溝の外へ延びる程充分高いので、ピストンをボア内に挿入した時、シールはピストンと接触し、締まりばめを形成する。シールは内径と外径を有する。シールの高さは直径の関数である(すなわち、外径と内径の間の差の半分)。シールの内径面はシールがピストンと接触するよう充分小さいので、流体が該シールを過ぎて移動出来ない。シールの内径面はピストンと接触する。シールはカリパーボア内に配置されるピストンの直径に対応し、該直径の周りに填る。シールの外径はシール溝の底壁に接触する。
【0030】
シールの幅は、シール溝の幅(すなわち、シール溝の前壁及び後壁の間の最小軸方向距離)より小さい。好ましくは、シールは流体漏洩が防止されるよう充分広いのがよい。より好ましくは、ピストン挿入の前には、シール幅は溝幅より小さく、そしてピストン挿入後は、シールの幅は増加するが、なおシール溝の幅より小さいので、シールは、ブレーキシステムの温度が使用のため及び/又はシール溝内でのツイストのため上昇する時、膨らむ余地を有するのがよい。好ましくは、シールの幅はたとえ高温でも、シール溝幅より小
さいか又は該溝幅に略等しいのがよい。設置されるシールの幅は約5mm以下、好ましくは約4mm以下であるのがよい。設置されるシールの幅は約1mm以上、好ましくは約2mm以上、又はより好ましくは約3mm以上であるのがよい(例えば、約3mmと約3.6mmの間)。
【0031】
シールは、ブレーキ流体に対し耐性があり不活性な、どんな材料で作られてもよい。シールは、広い温度範囲に亘り安定な、どんな材料で作られてもよい。シールは、ピストンスリップにより容易には影響されないどんな材料で作られてもよい。シールは、使用により劣化しないどんな材料で作られてもよい。例えば、前壁との繰り返し接触で劣化し(すなわち、かじり減らされ)始めないどんな材料で作られてもよい。シールはポリマー材料で作られてもよい。好ましくは、シールはエラストマー材料で作られるのがよい。より好ましくは、シールはゴムで作られるのがよい、例えば、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)。シールは、シールが繰り返しのブレーキ印加(例えば、約1000回以上のブレーキ印加、約10,000回以上のブレーキ印加、約100,000回以上のブレーキ印加、或いは約1000,000回以上ものブレーキ印加)の後も流体漏洩に耐え続けるよう弾力性材料で作られてもよい。より好ましくは、該弾力性のシールは、該シールが、ブレーキ流体がカリパーボアの前部開口部の外へ漏洩するのに抵抗するよう、シール溝内に配置されるのがよい。
【0032】
シールはブレーキ印加時、前壁との接触状態に入る。シールはブレーキ解除時、後壁の方へ動く。シールは、ブレーキ印加時、前壁へ向かい、前壁と接触するよう突起上で又は突起付近でツイストする。シールの底部部分は常に前壁と接触してもよい(すなわち、ブレーキ印加時、ブレーキ解除時、ブレーキオフ時、それら間の何等かの時、又はそれらの組み合わせ時)。頂部部分はブレーキ解除時前壁から離れるようツイストし、そしてブレーキ印加時前壁に向かい、前壁と接触するようツイストしてもよい。シールのツイストする量は、シールの高さに基づき変わってもよい。例えば、高さ2mmのシールは約1mmのツイストする頂部部分を有するが、高さ3mmのシールは2mmのツイストする頂部部分を有する。底部部分は底壁からのシール高さの約1/8,約1/4,約1/3,約1/2,約2/3,又は例え約3/4であってもよい。頂部部分はピストンからのシール高さの約1/8,約1/4,約1/3,約1/2,約2/3,又はたとえ3/4であってもよい。好ましくは、ブレーキ印加時、シール全体がツイストするのがよい。例えば、ブレーキ印加時、シール全体が前壁の方へツイストし、ブレーキ解除時、シール全体が前壁から離れるようにツイストする。シールはブレーキ解除時、ピストンがパッド及びカリパーの弛緩によりボア内に押し戻されるため、後壁に向かって突起上でツイストする。突起はシール溝内のシールの位置を実質的に保持するので、シールはピストンをブレーキパッド、ローター又は両者から引き戻しはしない。突起はシールが後壁の方へツイストすることを可能にするので、印加方向でシールに掛かる、ブレーキパッド、ローター又は両者に抗する印加方向のピストンの負荷は実質的に減じられる。突起、後壁角度又は両者はシールが引き戻し方向で邪魔されずにツイストすることを可能にするので、ピストンは実質的に位置的に留まり、組立体は実質的にエアギャップを有しない。例えば、エアギャップは、インボードブレーキパッドがピストンに接触し、アウトボードブレーキパッドがフィンガーに接触した時、インボードブレーキパッドの面とアウトボードブレーキパッドの面の間の合計距離からローター厚さを引いた値である。言い換えれば、エアギャップは、インボードブレーキパッドが押されてインボード側でローターの面と接触し、インボードブレーキパッドがピストンに接触し、アウトボードブレーキパッドがフィンガーと接触した時、アウトボード側のローターの面とアウトボードブレーキパッドの面の間の距離であってもよい。車両が運動中存在する何等かのエアギャップは、ディスク厚さ変動、ローターのぐらつき(すなわち、横方向摩滅)又はエルアールオー(LRO)又はそれらの組み合わせのためと考えられる。
【0033】
本開示はここではエアギャップを実質的に減じる及び/又は除去することにより減じられるブレーキ距離を可能にするシール溝を提供する。本開示はエアギャップを実質的に減じ及び/又は除去し、かくしてブレーキ印加と、ブレーキ力の印加と、の間の時間量(すなわち、走行時間)を減じる。例えば、車両が毎時約97km(すなわち毎時約60マイル)で走行し、ブレーキ力が車両を後らせ始めるのが本開示よりも0.1秒長く掛かるなら、車はブレーキ力が車両を後らせ始める前に約2.7m(すなわち、約9フィート)走る。本開示のシール溝は、ブレーキ力が始まる前の時間の量を約0.001秒以上、約0.005秒以上、約0.01秒以上、好ましくは約0.05秒以上、より好ましくは約0.1秒以上、なおより好ましくは約0.15秒、或いは最も好ましくは約0.2秒以上減じるのがよい。本開示のシール溝は、ブレーキ力が始まる前の時間の量を約1秒以下、約0.8秒以下、或いは約0.5秒以下減じる。本開示のシール溝は、ブレーキ力が始まる前の時間の量を約1秒と0.001秒の間、好ましくは約0.3と約0.05秒の間だけ減じる。かくして、当業者は、ブレーキ力が始まる時間の削減と車両の速度に基づき減少停止距離を計算することが出来る。例えば、該速度が毎時約200km(すなわち、毎時約124マイル)であり、減少停止時間が約0.15秒であるなら、停止距離は約8.3m(すなわち、約28フィート)だけ減じられる。
【0034】
図1はブレーキ組立体2を図解する。ブレーキ組立体はローター4とカリパー6を具備する。該カリパー6は更にブリッジ8、フィンガー10、そしてピストン14を収容するピストンボア12を備える。該ブレーキ組立体2は、該ローター4の両側に配置されたアウトボードブレーキパッド24とインボードブレーキパッド22を有する。該ピストンボア12は更に閉端16Aと開端16Bを有する。該閉端16Aはブレーキ流体18を含むので、ブレーキ印加時、該ブレーキ流体はピストン14をボア軸線20に沿って動かし、インボードブレーキパッド22と接触させるので、該インボードブレーキパッド22は該ローター4の方へ動かされ、そしてフィンガー10は該アウトボードブレーキパッド24を該ローター4の反対側の方へ動かす。ピストンボア12はシール溝26を有し、該シール溝は該シール溝26内に設置されたシール28を有する。
【0035】
図2は該ピストンボア12内のシール溝26のクローズアップ断面図を図解しており、該シール溝26は該シール溝26内に設置されたシール28を有する。該シールは中立位置で図解されている(すなわち、ブレーキパッドがブレーキ印加又はブレーキ引き戻しのために動きつつない時)。該シール溝26は、面取り32を有する前壁30、後壁34、そして底壁36を有する。図解される後壁は形状が略直線形である。後壁34は、ボア軸線20を表しボア軸線と平行な線と直角な線46と或る角度(β)を形成する。角度(β)はボア軸線と直角な線46からの後壁34の角度により創られる開空間48を表す。該底壁36は突起42、前部凹領域38、そして後部凹領域40を有する。図解される様に、前部凹領域38は深さ及び面積の両方で後部凹領域より小さい。図解される様に、ピストン14はシール28を突起42に対し押すので、シール28の中間部分は図解される様に膨らむ44。
【0036】
図3は矢印により示される低圧力又は中間圧力ブレーキ印加時のシール溝のクローズアップ断面図を図解する。ピストンボア12はシール溝26を備え、該シール溝26はシール28を有する。該シール溝は面取り32を有する前壁30と面取りのない後壁34を有する。該シール28は、ピストン14がインボードブレーキパッド(示されてない)の方へスライドする時、ピストン14により面取り32内へツイストされる。該シール溝は更に前壁30と後壁34を接続する底壁36を有する。底壁36は突起42、前部凹領域38、そして後部凹領域40を有する。図解される様に、前部凹領域38は深さ及び面積の両面で後部凹領域40より小さい。
【0037】
図4は高圧力ブレーキ印加時のシール28のツイストを図解するクローズアップ断面図
である。図4の矢印はブレーキ印加時のピストン運動及びシールツイスト動作の方向を示す。シール28は突起42上でツイストし、そして前壁30と、前壁の面取り32と、に完全に接触するので、該シール28は実質的に面取り32全体と接触する。ブレーキ印加時、シール28はツイストするので、該シールの1部分は下方へ、そして前部凹領域38内に移る。
【0038】
図5はブレーキ引き戻し及び/又はブレーキ解除時のシール28のツイストを図解するクローズアップ断面図である。図5の矢印はブレーキ引き戻し及び/又はブレーキ解除時のピストン運動及びシールツイストの方向を示す。図2に図解されるボア軸線20に直角な線46に対する後壁34の角度により創られる開空間面積48は、シールが前壁30から離れてツイストすることを可能にする。
【0039】
図6は前部凹領域38と後部凹領域40が深さ及び面積の両面で実質的に同じ寸法であることを図解するクローズアップ断面図である。
【0040】
図7及び8はここで開示されるシール溝26の幾つかの可能な追加の形状を図解するクローズアップ断面図を図解する。図7はピストン14をピストンボア12内のボア軸線20と共に図解する。線46はボア軸線20を表し、該軸線に平行な線と直角であり、前壁30と角度(α)を形成する。後壁34は凸型弧を形成する。図7の前壁は3つの面取り32を有する。図8は凹型形状を有する後壁34を図解する。図8は更に非対称突起42を有する非対称底壁36を図解する。該非対称突起42は突起42から鋭く形成される後部凹領域40と、突起42からの僅かな傾斜を有する前部凹領域38を備える。前壁30は該ボア軸線(示されてない)に実質的に直角である。後壁34は円弧形であり、シール28から離れるように延びる凹型部分を有する。該後壁34はピストンボアエッジ12まで延びる面取り32を有する。
【0041】
図9はシール溝26用のもう1つの可能な形状の断面図を図解する。該シール溝はシール溝26内にシール28を有する。該シール28はピストン14と底壁36の間で圧縮されるので、該シールの側部は押し出され、円弧形の膨らみ44を形成する。後壁34及び前壁30それぞれの壁からピストンボア12へ延びる面取り32を有する。底壁36は、前部凹領域38と後部凹領域40の間に配置された突起42を有する。後部凹領域はランプ50を有する。該ランプ50は底壁36を後壁34へ接続する直線部分である。シール28のコーナーはランプ50と接触する。該ランプ50は該シール28との単一接触点を創るので、ブレーキ解除時及び/又はブレーキ引き戻し時シール28は前壁から離れ容易にツイストする。
【0042】
ここで詳述される何等かの数値は、何等かの低い値と何等かの高い値の間で少なくとも2単位の分離があると仮定して、1単位のインクレメントで、低い値からの上の値まで全ての値を有する。1例として、部品の量、又は例えば温度、圧力、時間等の様なプロセス変数値が、例えば1から90、好ましくは20から80、より好ましくは30から70と表明されるならば、15から85、22から68、43から51、30から32他の様な値が、本明細書で明示的に数え上げられるよう意図されている。1より少ない値については、1単位は0.0001、0.001、0.01又は0.1が適当であるとして考えられる。これらは特に意図されているものの例に過ぎず、数え上げられた最低値と最高値の間の数値の全ての可能な組み合わせは、同様な仕方で本出願書で明示的に述べられるよう考えられるべきである。
【0043】
他の仕方で述べられてなければ、全ての範囲は端点と、該端点間の全ての数と両者を含む。範囲の連携した“約”又は“近似的に”の使用は該範囲の両端にも適用される。かくして、“約20から30”は、少なくとも指定された端点を含んで、“約20から約30
”をカバーするよう意図されている。
【0044】
特許出願書及び刊行物を含む全文書及び参考文献の本開示は、全ての目的用に引用により組み入れられる。組み合わせを説明するための用語“本質的に成る(consisting essentially of)”は、要素、材料、部品又は識別される過程、そして該組み合わせの基本的及び新規の特性に実質的に影響しないこの様な他の要素、材料、部品又は過程を含む。ここで要素、材料、部品又は過程の組み合わせを説明するための用語“具備する”又は“含む”の使用は、本質的に該要素、材料、部品又は過程から成る実施例も考慮する。ここでの用語“してもよい”の使用により、“してもよい”が含まれる何等かの説明された属性が、オプションとして存在するよう意図されている。
【0045】
1つの集積された要素、材料、部品又は過程により、複数の要素、材料、部品又は過程が提供されてもよい。代わりに、1つの集積された要素、材料、部品又は過程が、別々の複数の要素、材料、部品又は過程に分割されてもよい。要素、材料、部品又は過程を説明するための“1つの”又は“単一の”の開示は追加の要素、材料、部品又は過程を排除するよう意図されてない。
【0046】
上記説明が図解的であり、制限的でないよう意図されていることは理解される。提供された例の他に多くの実施例のみならず多くの応用が、上記説明を読んだ時、当業者に明らかになるであろう。それ故、本発明の範囲は上記説明を参照して決定されるのでなく、代わりに、附属する請求項と、そしてこの様な請求項が権利を与えられる全範囲の等価物も一緒に、参照して決定されるべきである。特許出願書及び刊行物を含む全文書及び参考文献の開示は全ての目的用に引用により組み入れられる。ここで開示される主題のどんな側面の下記請求項内の欠落も、この様な主題の否認声明書ではなく、発明者はこの様な主題を開示発明主題の部分であると考えてないと見なされるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ピストンボアと、
b)該ピストンボアの開端の近くで該ピストンボア内に配置されており、
i)前壁、
ii)後壁、
iii)該前壁と該後壁の間に架かり、かつ該前壁を該後壁に接続する底壁、
iv)該底壁の中央領域内にあり、ブレーキ解除時シールのツイストを可能にするのに好適な突起、を有しているシール溝と、を具備しており、
該後壁が該底壁から離れ、該ボア面の方へ延びる時、該後壁が該前壁から離れるよう逸れるカリパー。
【請求項2】
該突起は形状が略円弧形で、凸型である請求項1記載のカリパー。
【請求項3】
該突起の前壁側の該底壁内に前部凹領域を更に具備する請求項1記載のカリパー。
【請求項4】
該突起の後壁側の該底壁内に後部凹領域を更に具備する請求項1記載のカリパー。
【請求項5】
該前部凹領域が円弧形であり、該底壁及び該前壁を接続する請求項3記載のカリパー。
【請求項6】
該後部凹領域が円弧形であり、該底壁及び該後壁を接続する請求項4記載のカリパー。
【請求項7】
該シール溝が、略円弧形で凹型の前部凹領域と、略円弧形で凹型の後部凹領域とを有しており、
該底壁と該前壁は前部凹領域でつながり、該底壁と該後壁は該後部凹領域でつながる請求項1記載のカリパー。
【請求項8】
該シール溝の断面を測定する時、該後部凹領域が該前部凹領域より大きい面積を有する請求項7記載のカリパー。
【請求項9】
該シール溝の断面を測定する時、該シール溝の頂部から該前部凹領域の底部までの距離が該シール溝の頂部から該後部凹領域の底部までの距離より短い請求項7記載のカリパー。
【請求項10】
該前部凹領域が深さを有し、該後部凹領域が深さを有しており、該シール溝の断面を測定する時、該前部凹領域と該後部凹領域の深さは、実質的に同じである請求項7記載のカリパー。
【請求項11】
該後壁が、該後壁からボア軸線に直角な線までの測定値で約10度と約30度の間の角度を形成する請求項1記載のカリパー。
【請求項12】
該後壁が何等面取りを有しない請求項1記載のカリパー。
【請求項13】
該前壁が少なくとも1つの面取りを有する請求項1記載のカリパー。
【請求項14】
該シール溝内に設置されたシールを更に具備する請求項1記載のカリパー。
【請求項15】
該シールが該突起の頂部上に座し、ブレーキ印加時、ブレーキオフ時、又はそれら間の何等かの位置にある時ツイストすることが出来るよう、該シールが、断面で見た時、該突起の中央部分上で幅方向に配置される請求項14記載のカリパー。
【請求項16】
該シールがブレーキ印加時、該前壁に、そしてオプションで面取りに接触する請求項14記載のカリパー。
【請求項17】
該シールがツイスト作用により、ブレーキ印加方向の力をピストンに印加するよう、ブレーキオフ位置にある時、該シールの少なくとも1部分が、該前壁から離れるよう角度付けされる請求項1記載のカリパー。
【請求項18】
a)インボードブレーキパッド及びアウトボードブレーキパッドと、
b)該インボードブレーキパッドと該アウトボードブレーキパッドの間に配置されたローターと、
c)請求項1記載のカリパーと、
d)該ピストンボア内に配置されたピストンと、そして
e)該シール溝内に配置されたシールと、を具備しており、
該シールの内径が該ピストンと接触しており、そしてブレーキオフ位置にある時、該ピストンがインボードブレーキパッドと実質的に接触した侭留まるディスクブレーキ。
【請求項19】
ブレーキオフ位置にある時、該インボードブレーキパッド及びアウトボードブレーキパッドが実質的にエアギャップを有しない請求項18記載のディスクブレーキ。
【請求項20】
該シールが該シール溝内の該突起の周りでツイストされるよう、ブレーキ引き戻し時、該ピストンに隣接する該シールの頂部半分が、引き戻し方向に動く請求項18記載のディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−79723(P2013−79723A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−221386(P2012−221386)
【出願日】平成24年10月3日(2012.10.3)
【出願人】(512256856)アケボノブレーキコーポレーシヨン (1)
【Fターム(参考)】