説明

窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法及び装置

【課題】ガリウム供給管の閉塞を防止することができる窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法及び装置を提供する。
【解決手段】液体Na4とガリウム貯留槽11から供給される液体Ga5を、窒素ガス8の存在下で加圧、加熱して窒化ガリウム結晶を製造する窒化ガリウム結晶製造装置1において、耐圧容器2に、容器壁を貫通し先端開口部を反応容器3に向けて配置した供給管6を設ける。供給管6の上流側に水平管7を設け、その上流側に、キャリアガスの窒素ガス8を常時供給するキャリアガス供給手段9を接続する。水平管7の途中個所の下端側位置に、ガリウム供給ライン12の下流側端部に設けた立ち上がり管12aの上端部を連通接続する。ガリウム供給ライン12の立ち上がり管12aより水平管7へ供給する液体Ga5を、水平管7内の窒素ガス8の流れにより吹き飛ばし、この吹き飛ばされた液体Ga5を気流搬送して供給管6より反応容器3へ供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムのフラックスを用いてガリウムと窒素を反応させて窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光デバイスや半導体デバイスとして用いられる窒化ガリウム系材料の製造方法の1つとして、ナトリウム(Na)のフラックスと、窒素源として窒素ガス(N)を用いた窒化ガリウム(GaN)の結晶の製造手法が従来提案されている。
【0003】
この種の窒化ガリウムの結晶の製造に用いる窒化ガリウム結晶製造装置は、耐圧容器内に、ガリウム(Ga)の融液(融解した液体)と上記フラックスとなるナトリウム(Na)の融液(以下、ガリウムの融液を液体Ga、ナトリウムの融液を液体Naと云う)を収容(貯留)するための反応容器を設け、且つ上記耐圧容器に、上記反応容器を加熱するためのヒータが装備してある。
【0004】
更に、上記耐圧容器内へ窒素ガスを供給するための窒素ガス供給管を備えた構成としてある。
【0005】
上記窒化ガリウム結晶製造装置を用いて窒化ガリウムの結晶を製造する場合は、上記耐圧容器内へ窒素ガス供給管より窒素ガスを供給した状態で、該耐圧容器の内部を5−10MPaとし、且つ上記液体Gaと液体Naを収容した反応容器をヒータで加熱して、600−1000℃の反応条件に保持することにより、上記ガリウムと窒素ガスを反応させて、上記反応容器の内底部に予め設けてある種結晶を核として、窒化ガリウムの結晶を成長させるようにしてある。
【0006】
上記のようにして窒化ガリウムの結晶を成長させると、該反応容器内の液体Gaは上記窒素ガスとの反応により消費され、該反応容器内の液体Gaが枯渇すると、上記窒化ガリウムの結晶の成長が止まってしまう。
【0007】
なお、大きな窒化ガリウムの結晶を得るためには、窒化ガリウムの結晶成長を長時間に亘って行わせる必要があり、そのための液体Gaの必要量が多くなる。この場合、多量の液体Gaを反応容器に最初から貯留しようとすると、該反応容器のサイズが大きくなるため、装置構成が大型化すると共に、反応容器の加熱に多くのエネルギーが必要になってしまう。
【0008】
そこで、窒化ガリウム結晶製造装置に、上記耐圧容器の外部より該耐圧容器の内側に配置してある上記反応容器内へ液体Gaを供給するためのガリウム供給管を設けてなる構成とすることが提案されている。
【0009】
かかる構成を有する窒化ガリウム結晶製造装置によれば、上記反応容器内へ、ガリウム供給管より液体Gaを、該反応容器内における窒化ガリウムの結晶の成長に伴う液体Gaの消費速度に対応した量となるよう調整して順次滴下供給させることで、容量を抑えた反応容器内であっても、上記窒化ガリウムの結晶成長を、長時間、たとえば、数百時間に亘り継続して行わせることができるようにして、大きな窒化ガリウムの結晶を得ることができるようにしてある。
【0010】
ところで、上記窒化ガリウムの生成反応は、ナトリウムの存在下でガリウムと窒素が接触することで進行する。そのため、上記のようなガリウム供給管を備えた形式の窒化ガリウム結晶製造装置では、上記反応容器内に収容してある液体Naより発生して耐圧容器の内部に存在するナトリウムの蒸気、及び、上記耐圧容器内に供給された窒素ガスが、上記ガリウム供給管の先端開口部より上流側へ流入し、その流入した個所で上記ナトリウム存在下でのガリウムと窒素との接触による窒化ガリウムの結晶の生成反応が進行してしまい、この反応により生成する窒化ガリウムの結晶によって上記ガリウム供給管が閉塞される可能性がある。
【0011】
そのため、従来は、上記ガリウム供給管より反応容器への液体Gaの滴下供給時以外は、上記ガリウム供給管の先端部に蓋をするようにしたり、ガリウム供給管自体を、その先端部の位置が上記窒化ガリウム結晶の成長温度以下となる領域まで移動させるようにしたり、ガリウム供給管内の液体Gaの界面を、上記窒化ガリウム結晶の成長温度以下となる領域まで移動(上昇)させるようにする対策が考えられている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−62947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところが、特許文献1に示されたものにおいて、ガリウム供給管の先端部に蓋をする手法や、ガリウム供給管自体を移動させる手法を採用する場合は、該各手法を実施するための可動部を備えた装置を耐圧容器に装備しなければならないため、上記耐圧容器の構成が複雑化するという問題がある。
【0014】
又、ガリウムの供給停止時にガリウム供給管内における液体Gaの界面を、窒化ガリウム結晶の成長温度以下となる領域まで移動させる手法は、該ガリウム供給管内における上記液体Gaの界面よりも先端側の空間には、先端開口部よりナトリウムの蒸気と窒素ガスが進入するため、上記ガリウム供給管を通した液体Gaの供給を再開するときに、前述したようなガリウム供給管内での窒化ガリウムの結晶生成が生じる虞を防止することはできない。
【0015】
そこで、本発明は、窒化ガリウム結晶製造装置における耐圧容器の構成を複雑化することなくガリウムを供給する管内での窒化ガリウム結晶の生成を防止することができて、該ガリウムを供給する管の閉塞を防止することができる窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法及び装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内のナトリウムのフラックスとガリウムを加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記耐圧容器に、供給管を耐圧容器壁を貫通させて、該耐圧容器内側に挿入した先端開口部を上記反応容器の内部に向けて配置し、該供給管に、上記耐圧容器の外部側より常時キャリアガスを流通させ、該供給管を流通するキャリアガスの流れによりガリウムの融液を搬送させて、上記反応容器へ供給するようにする窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法とする。
【0017】
又、上記構成において、供給管に流通させるキャリアガスの流速を、少なくとも上記供給管の先端開口部におけるキャリアガスの流速が該キャリアガス中におけるナトリウム蒸気の拡散速度よりも速くなるように設定するようにする。
【0018】
更に、上記各構成において、キャリアガスとして、窒化ガリウムの結晶を製造する際に耐圧容器内に存在させるための窒素ガスを用いるようにする。
【0019】
上述の各構成において、
供給管の上流側に設けた水平管内に、該水平管の周壁の下端側位置に下方より接続したガリウム供給ラインよりオーバーフローさせるようにガリウムの融液を供給して、該ガリウムの融液を、該水平管内を流通するキャリアガスの流れにより吹き飛ばして搬送させるようにする。
【0020】
同様に、上述の各構成において、供給管の内壁に沿って流下するガリウムの融液を、供給管の途中位置に設けた流路面積を絞る絞り部で増速されるキャリアガスの流れにより吹き飛ばして搬送させるようにする。
【0021】
又、請求項6に対応して、耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内のナトリウムのフラックスとガリウムの融液を加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記耐圧容器に、先端開口部が上記反応容器の内部に向けて配置されるようにした供給管を、耐圧容器壁を貫通させて設け、該供給管の耐圧容器外部側の基端側に、キャリアガスを常時供給できるようにしてあるキャリアガス供給手段を接続し、更に、上記キャリアガスの流通経路の途中位置に、ガリウムの融液を供給するためのガリウム供給ラインを接続して、該ガリウム供給ラインより供給されるガリウムの融液を、上記キャリアガスの流れにより搬送して上記供給管より上記反応容器内へ供給できるようにした構成を有する窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給装置とする。
【0022】
更に、上記構成において、キャリアガス供給手段より供給するキャリアガスを、窒素ガスとした構成とする。
【0023】
更に又、上記各構成において、供給管の耐圧容器外部の上流側に水平管を設け、該水平管の途中個所の下端側位置に、ガリウム供給ラインを下方より接続して、該ガリウム供給ラインより上記水平管内へオーバーフローさせて供給するガリウムの融液を、該水平管内を流通するキャリアガスにより吹き飛ばして搬送させることができるようにした構成とする。
【0024】
同様に、上記各構成において、供給管の耐圧容器内部の途中位置に流路面積を絞る絞り部を設けて、該供給管の内壁に沿って流下するガリウムの融液を、上記絞り部で増速されるキャリアガスの流れにより吹き飛ばして搬送させることができるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内のナトリウムのフラックスとガリウムを加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記耐圧容器に、供給管を耐圧容器壁を貫通させて、該耐圧容器内側に挿入した先端開口部を上記反応容器の内部に向けて配置し、該供給管に、上記耐圧容器の外部側より常時キャリアガスを流通させ、該供給管を流通するキャリアガスの流れによりガリウムの融液を搬送させて、上記反応容器へ供給するようにする窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法、及び、上記窒化ガリウム結晶製造装置における上記耐圧容器に、先端開口部が上記反応容器の内部に向けて配置されるようにした供給管を、耐圧容器壁を貫通させて設け、該供給管の耐圧容器外部側の基端側に、キャリアガスを常時供給できるようにしてあるキャリアガス供給手段を接続し、更に、上記キャリアガスの流通経路の途中位置に、ガリウムの融液を供給するためのガリウム供給ラインを接続して、該ガリウム供給ラインより供給されるガリウムの融液を、上記キャリアガスの流れにより搬送して上記供給管より上記反応容器内へ供給できるようにした構成を有する窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給装置としてあるので、ガリウムの融液を反応容器へ供給するための経路となる供給管の先端開口部より、耐圧容器内に存在するナトリウムの蒸気が進入する虞を防止することができ、よって、該供給管内で窒化ガリウムの結晶が生成する反応が進行する虞を防止することができるため、上記供給管が窒化ガリウムの結晶によって閉塞する虞を解消することができる。
(2)しかも、上記耐圧容器には、可動式の装置構成を特に付加する必要はないため、該耐圧容器の構成が複雑化する虞を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法及び装置の実施の一形態を示すもので、(イ)は全体構成を示す概要図、(ロ)は(イ)のA部を拡大して示す切断側面図である。
【図2】本発明の実施の他の形態を示す概要図である。
【図3】本発明の実施の更に他の形態を示すもので、(イ)は全体構成を示す概要図、(ロ)は(イ)のB部を拡大して示す切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0028】
図1(イ)(ロ)は本発明の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法及び装置の実施の一形態を示すもので、以下のようにしてある。
【0029】
ここで、本発明を適用する窒化ガリウム結晶製造装置1について概説すると、該窒化ガリウム結晶製造装置1は、耐圧容器2と、該耐圧容器2内に設けて液体Na4と液体Ga5を収容(貯留)するための反応容器3と、該耐圧容器2内の反応容器3を加熱するためのヒータ等の加熱手段(図示せず)を備えた構成としてある。
【0030】
上記窒化ガリウム結晶製造装置1に適用する本発明の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給装置(以下、単に本発明のガリウム供給装置と云う)は、上記耐圧容器2に、該耐圧容器2の容器壁の所要個所、たとえば、容器壁の上部を内外方向に貫通させた供給管6を設けて、該供給管6における耐圧容器2の内側の端部となる先端開口部を、上記反応容器3の内側に向けて配置する。
【0031】
上記供給管6における耐圧容器2の外側端部となる基端側には、水平方向に所要寸法延びる水平管7の一端部を接続し、且つ該水平管7の他端部に、キャリアガスとしての窒素ガス8を供給するためのキャリアガス供給手段9を、キャリアガスライン10を介して接続する。これにより、上記キャリアガス供給手段9よりキャリアガスライン10を経て供給される窒素ガス8を、上記水平管7と供給管6に常時流通させることができるようにすると共に、上記供給管6を通過した窒素ガス8を、該供給管6の先端開口部より上記耐圧容器2の内側へ、窒化ガリウム(GaN)の結晶を製造するための窒素源として供給できるようにする。
【0032】
更に、ガリウム(Ga)の融点である約30℃より高い温度に保持可能な恒温槽として液体Ga5を貯留するようにしてあるガリウム貯留槽11に、供給ポンプ13付きのガリウム供給ライン12の上流側端部となる一端部を接続する。
【0033】
上記ガリウム供給ライン12の下流側端部寄りとなる他端部寄りには、下流側に向けて所要寸法上向きに延びる立ち上がり管12aを設け、該立ち上がり管12aの上端部を、上記水平管7の途中個所の周壁の下端側位置に連通接続した構成とする。これにより、上記供給ポンプ13の運転により上記ガリウム貯留槽11よりガリウム供給ライン12を経て導かれる液体Ga5を、該ガリウム供給ライン12の立ち上がり管12aの上端部よりオーバーフローさせるようにして、上記水平管7の内側へ供給できるようにしてある。
【0034】
なお、上記キャリアガス供給手段9より供給して上記水平管7及び供給管6を常時流通させる窒素ガス8の流速は、上記供給管6の先端開口部での流速が、少なくともナトリウムの蒸気がキャリアガスである窒素ガス8中を拡散する速度よりも速くなるようにし、且つ、上記ガリウム供給ライン12の立ち上がり管12aの上端部より上記水平管7内へ供給される液体Ga5を、上記水平管7を流通するキャリアガスとしての窒素ガス8の流れにより、吹き飛ばしてミスト化(液滴化)させて気流搬送することができるような速度に設定してあるものとする。
【0035】
これにより、上記供給ポンプ13の運転によりガリウム貯留槽11より上記ガリウム供給ライン12とその立ち上がり管12aを通して導かれる液体Ga5が、該立ち上がり管12aの上端部よりオーバーフローさせるようにして上記水平管7の内部へ供給されると、該液体Ga5を、上記水平管7を流通する窒素ガス8により吹き飛ばしてミスト化させ、この液体Ga5のミストを、該水平管7及び供給管6内を流通する窒素ガス8の流れにより該供給管6の先端開口部まで気流搬送させると共に、上記供給管6の先端開口部より吐出される上記液体Ga5のミストを、上記反応容器3の内部に貯留されている液体Na4及び液体Ga5の混合液体に対して供給することができるようにしてある。
【0036】
14は上記キャリアガス供給手段9より窒素ガス8を上記ガリウム貯留槽11へ供給して該ガリウム貯留槽11の内部空間を窒素ガス置換させるためのガス置換ライン、15は上記ガリウム貯留槽11とガリウム供給ライン12との接続を遮断するための弁、16は上記ガリウム供給ライン12の立ち上がり管12aと上記水平管7との連通を遮断するための弁、17はメンテナンス時等に上記ガリウム供給ライン12内の液体Ga5を抜き出すことができるようにするための開閉弁18付きの液体ガリウム排出ラインである。
【0037】
なお、図示してないが、上記ガリウム貯留槽11より供給される液体Ga5が、上記反応容器3に到達するまでに経る経路は、すべて、加熱手段、保温手段等を備えて、約30℃で融解するガリウムの融点よりも高い温度を保持できるようにしてあるものとする。
【0038】
以上の構成としてある本発明のガリウム供給装置を装備した窒化ガリウム結晶製造装置1を使用する場合は、キャリアガス供給手段9よりキャリアガスライン10、水平管7、供給管6を経て導いた窒素ガス8を耐圧容器2内へ供給した状態で、該耐圧容器2の内部を5−10MPaとすると共に、上記耐圧容器2内に設けた反応容器3内に収容したフラックスとなる液体Na4と液体Ga5を、ヒータ等の加熱手段により加熱して、600−1000℃の反応条件に保持する。これにより、上記ガリウムと窒素ガスを反応させて、上記反応容器3の内底部に予め設けてある図示しない種結晶を核として、窒化ガリウムの結晶(図示せず)を成長させるようにする。
【0039】
上記のように窒化ガリウムの結晶を成長させると、上記反応容器3の液体Ga5が消費されることから、上記反応容器3内の液体Ga5の消費速度に応じた供給速度となるように、上記ガリウム供給ライン12上の供給ポンプ13を連続又は断続運転する。これにより、ガリウム貯留槽11内の液体Ga5が、上記ガリウム供給ライン12とその立ち上がり管12を経て上記水平管7内へ供給され、この水平管7内に供給された液体Ga5は、上記キャリアガス供給手段9よりキャリアガスライン10を通して水平管7へ導かれて該水平管7内を流通する窒素ガス8の流れにより吹き飛ばされてミスト化され、このミスト化された液体Ga5が、上記窒素ガス8により気流搬送されて、水平管7及び供給管6を経て上記耐圧容器2内の反応容器3へ供給されるようになる。
【0040】
よって、上記反応容器3では液体Ga5が、該反応容器3内における窒化ガリウムの結晶の成長に伴う液体Ga5の消費速度に対応した量で順次供給されるようになるため、上記窒化ガリウムの結晶成長を、長時間、たとえば、数百時間に亘り継続して行うことで、大きな窒化ガリウムの結晶を得ることができるようになる。
【0041】
この際、上記反応容器3への液体Ga5の供給は、供給管6に常時流通させるようにしてある窒素ガス8の流れを利用した気流搬送によって行うようにしてあり、且つ上記窒素ガス8の流速が、供給管6の先端開口部で、ナトリウムの蒸気が窒素ガス8中を拡散する速度よりも速くなるように設定してあるため、上記耐圧容器2内に存在するナトリウムの蒸気が、上記供給管6や、その上流側の上記水平管7の内部への進入する虞を防止することができる。このため、上記供給管6や水平管7の内部では、ナトリウムが存在しないために、ガリウムと窒素により窒化ガリウムの結晶を生成させる反応の進行が回避されるようになる。
【0042】
このように、本発明の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法及び装置によれば、液体Ga5を反応容器3へ供給するための管路である供給管6や水平管7に、耐圧容器2内に液体Na4より発生して存在するナトリウムの蒸気が進入する虞を防止できて、該供給管6や水平管7内にて窒化ガリウムの結晶が発生する虞を防止できるため、上記供給管6や水平管7が窒化ガリウムの結晶によって閉塞する虞を解消することができる。
【0043】
又、上記反応容器3への液体Ga5の供給を行わないときに、上記ガリウム供給ライン12上の供給ポンプ13の運転を停止させた場合は、該供給ポンプ13のそれまでの運転によってガリウム供給ライン12の立ち上がり管12aの上端部より上記水平管7内へ既に供給されていた液体Ga5は、窒素ガス8による気流搬送によって上記水平管7及び供給管6を経て上記反応容器3へすべて供給させることができるため、上記水平管7や供給管6の内部に液体Ga5が残存する虞を防止でき、よって、上記液体Ga5を供給するための管路である上記供給管6や水平管7が窒化ガリウムの結晶によって閉塞される虞をより確実に防止することができる。
【0044】
しかも、上記耐圧容器2には、特許文献1に示されていたような可動式の装置構成を特に付加する必要はないため、該耐圧容器2の構成が複雑化する虞を防止できる。
【0045】
更には、液体Ga5のミストを気流搬送させるためのキャリアガスとして窒素ガス8を用いるようにしてあるため、反応容器3における窒化ガリウムの結晶の生成反応を進行させる際に耐圧容器2内に存在させることが必要とされる窒素ガス8を該耐圧容器2内へ供給するための供給管を別途設ける必要をなくすことができるため、上記耐圧容器2の構成をより簡単な構成とすることができる。
【0046】
上記実施の形態における、液体Ga5を気流搬送させるために上記耐圧容器2に取り付けた供給管6の上流側に水平管7を設けて、該水平管7の途中位置に、ガリウム貯留槽11より液体Ga5を導くガリウム供給ライン12に設けた立ち上がり管12aの上端部を接続してなる構成は、上記液体Ga5の供給停止時に、水平管7へ供給される該液体Ga5の液切れを良好に行うという観点から考えると、該構成を採用することが好ましいが、上記のような液体Ga5の供給停止時に、それほど高い液切れ性能が要求されない場合は、図2に示すように、上記ガリウム供給ライン12を、下流側端部の立ち上がり管12aを省略した構成とすると共に、該ガリウム供給ライン12の下流側端部を、上記水平管7に対して上方から連通接続するようにしてもよい。
【0047】
図2におけるその他の構成は図1(イ)に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0048】
かかる構成としても、図1(イ)(ロ)に示した実施の形態と同様に、液体Ga5を反応容器3へ供給するための管路である上記供給管6や水平管7に、耐圧容器2内に存在するナトリウムの蒸気が進入する虞を防止できるため、上記供給管6や水平管7が窒化ガリウムの結晶によって閉塞する虞を解消することができるという効果や、耐圧容器2の構成が複雑化することはないという効果を得ることができる。
【0049】
又、上記図1(イ)(ロ)の実施の形態では、ガリウム供給ライン12とその立ち上がり管12aを通して導かれる液体Ga5が水平管7内へ供給された時点で、該液体Ga5が上記水平管7内を流通するキャリアガスとしての窒素ガス8により吹き飛ばされてミスト化されるようにした構成を示したが、上記液体Ga5を吹き飛ばしてミスト化することができれば、図1(イ)(ロ)に示したような、供給管6の上流側に設けた水平管7に上記ガリウム供給ライン12の下流側端部となる立ち上がり管12aの上端部を接続する構成に代えて、たとえば、図3(イ)(ロ)に示すように、供給管6の上流側に設けた斜管19に、上記ガリウム供給ライン12の下流側端部を接続して、該ガリウム供給ライン12より供給される液体Ga5が、上記斜管19及び上記供給管6の内面を伝って(沿って)流下するようにすると共に、上記供給管6の下端部寄り個所に、流路面積を絞ることで該供給管6を流通する窒素ガス8の流速を加速させることができるようにした絞り部20を設けて、該絞り部20で加速される窒素ガス8の流れにより、上記したように斜管19と供給管6の内面を伝って該絞り部20まで流下した液体Ga5を吹き飛ばしてミスト化させるようにした構成としてもよい。
【0050】
上記図3(イ)(ロ)の構成とすることによっても、図1(イ)(ロ)に示した実施の形態と同様に、耐圧容器2内に存在するナトリウムの蒸気が上記供給管6の先端開口部より進入する虞を防止できるため、上記液体Ga5を反応容器3へ供給するための供給管6が窒化ガリウムの結晶によって閉塞する虞を解消することができるという効果や、耐圧容器2の構成が複雑化することはないという効果を得ることができる。
【0051】
更に、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、液体Ga5を気流搬送するためのキャリアガスとして、窒素ガス8を用いる場合について示したが、窒化ガリウム結晶の生成条件の下で、上記液体Ga5、フラックスとして用いる液体Na4、窒素ガス8との反応性、及び、窒化ガリウムとの反応性がない気体であれば、水素又は第18族元素(不活性ガス)等、窒素ガス8以外のキャリアガスを用いるようにしてもよい。このように、キャリアガスとして窒素ガス8以外のガスを用いる場合は、耐圧容器2に、窒化ガリウムの生成反応を進行させる際の窒素源として用いる窒素ガスを供給するための窒素ガス供給ラインを、別途接続した構成とすればよい。
【0052】
図1(イ)(ロ)、図2、図3(イ)(ロ)に示した窒化ガリウム結晶製造装置の耐圧容器2や、反応容器3等の各構成機器のサイズの比や、形状は、図示するための便宜上のものであって、実際の装置における各構成機器のサイズや形状を限定するものではない。
【0053】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1 窒化ガリウム結晶製造装置
2 耐圧容器
3 反応容器
4 液体Na(ナトリウムのフラックス)
5 液体Ga(ガリウムの融液)
6 供給管
7 水平管
8 窒素ガス(キャリアガス)
9 キャリアガス供給手段
12 ガリウム供給ライン
20 絞り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内のナトリウムのフラックスとガリウムを加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記耐圧容器に、供給管を耐圧容器壁を貫通させて、該耐圧容器内側に挿入した先端開口部を上記反応容器の内部に向けて配置し、該供給管に、上記耐圧容器の外部側より常時キャリアガスを流通させ、該供給管を流通するキャリアガスの流れによりガリウムの融液を搬送させて、上記反応容器へ供給するようにすることを特徴とする窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法。
【請求項2】
供給管に流通させるキャリアガスの流速を、少なくとも上記供給管の先端開口部におけるキャリアガスの流速が該キャリアガス中におけるナトリウム蒸気の拡散速度よりも速くなるように設定する請求項1記載の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法。
【請求項3】
キャリアガスとして、窒化ガリウムの結晶を製造する際に耐圧容器内に存在させるための窒素ガスを用いるようにする請求項1又は2記載の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法。
【請求項4】
供給管の上流側に設けた水平管内に、該水平管の周壁の下端側位置に下方より接続したガリウム供給ラインよりオーバーフローさせるようにガリウムの融液を供給して、該ガリウムの融液を、該水平管内を流通するキャリアガスの流れにより吹き飛ばして搬送させるようにする請求項1、2又は3記載の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法。
【請求項5】
供給管の内壁に沿って流下するガリウムの融液を、供給管の途中位置に設けた流路面積を絞る絞り部で増速されるキャリアガスの流れにより吹き飛ばして搬送させるようにする請求項1、2又は3記載の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給方法。
【請求項6】
耐圧容器内に設けた反応容器にナトリウムのフラックスとガリウムの融液を収容し、上記耐圧容器内に窒素ガスを存在させた状態で、該耐圧容器内にて上記反応容器内のナトリウムのフラックスとガリウムの融液を加圧及び加熱して窒化ガリウムの結晶を製造するようにしてある窒化ガリウム結晶製造装置における上記耐圧容器に、先端開口部が上記反応容器の内部に向けて配置されるようにした供給管を、耐圧容器壁を貫通させて設け、該供給管の耐圧容器外部側の基端側に、キャリアガスを常時供給できるようにしてあるキャリアガス供給手段を接続し、更に、上記キャリアガスの流通経路の途中位置に、ガリウムの融液を供給するためのガリウム供給ラインを接続して、該ガリウム供給ラインより供給されるガリウムの融液を、上記キャリアガスの流れにより搬送して上記供給管より上記反応容器内へ供給できるようにした構成を有することを特徴とする窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給装置。
【請求項7】
キャリアガス供給手段より供給するキャリアガスを、窒素ガスとした請求項6記載の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給装置。
【請求項8】
供給管の耐圧容器外部の上流側に水平管を設け、該水平管の途中個所の下端側位置に、ガリウム供給ラインを下方より接続して、該ガリウム供給ラインより上記水平管内へオーバーフローさせて供給するガリウムの融液を、該水平管内を流通するキャリアガスにより吹き飛ばして搬送させることができるようにした請求項6又は7記載の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給装置。
【請求項9】
供給管の耐圧容器内部の途中位置に流路面積を絞る絞り部を設けて、該供給管の内壁に沿って流下するガリウムの融液を、上記絞り部で増速されるキャリアガスの流れにより吹き飛ばして搬送させることができるようにした請求項6又は7記載の窒化ガリウム結晶製造装置のガリウム供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−236075(P2011−236075A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108210(P2010−108210)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】