説明

窒化ケイ素のエッチング方法

【課題】 窒化ケイ素のエッチングにおいて、酸化ケイ素をエッチングすることなく、選択的に窒化ケイ素をエッチングすることができ、しかも、長期間、安定的にエッチングする方法を提供する。
【解決手段】 エッチング槽及びエッチング再生槽を有するエッチング装置を用い、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水を含有するエッチング液で窒化ケイ素をエッチングする方法であって、
(a)エッチング槽に、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水を連続的、又は断続的に供給して、エッチング槽内で窒化ケイ素をエッチングする工程、
(b)エッチング槽中のエッチング液を、エッチング槽から連続的又は断続的に抜き出し、エッチング液再生槽に移す工程、
(c)エッチング液再生槽に移されたエッチング液にフッ酸及び/又はフッ酸塩を供給し、ケイ素、水、フッ素の一部乃至全部を除去する工程、並びに
(d)エッチング液再生槽内の、ケイ素、水、フッ素の一部乃至全部を除去した液をリン酸として(a)の工程に戻す工程、
を含むエッチング方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ケイ素のエッチング方法に関するものであり、特にエレクトロニクス分野、更に詳しくは半導体デバイスやフラットパネルディスプレイ等において絶縁膜に使用される窒化ケイ素のエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素は、セラミックス材料や半導体用材料として非常に重要な化合物である。
【0003】
半導体デバイスやフラットパネルディスプレイの製造工程には、酸化ケイ素にダメージを与えることなく、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素を選択的にエッチングすることが必要な工程がある。現在、この工程には高純度リン酸が主に使用されている。
【0004】
しかしながら、高純度リン酸は、わずかながらも酸化ケイ素をエッチングしてしまうため、選択率(窒化ケイ素エッチング速度と酸化ケイ素エッチング速度の比)を高めることが要求されている。
【0005】
このため、ケイ素化合物をリン酸に添加し、酸化ケイ素のエッチングを抑制する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜特許文献3参照)。
【0006】
特許文献1には、リン酸溶液中に少なくとも50ppm以上のシリコンが含有された窒化シリコン膜除去液が提案されている。特許文献2には、本質的に、(a)リン酸と、(b)水性腐食組成物に容易に溶けるケイ素含有組成物(例えば、ヘキサフルオロケイ酸)から成る水性腐食組成物が提案されている。特許文献3では、集積回路の製造方法において、高い初期の選択性を保証するために初期のリン酸、フッ化水素酸、及び硝酸からなるエッチング浴に溶性シリコン(例えば、フルオロケイ酸塩)が加えられている。
【0007】
しかしながら、これらケイ素化合物を添加する方法には、以下に示す問題があった。すなわち、リン酸に窒化ケイ素を溶かし込む方法では、酸化ケイ素のエッチングを十分に抑制することができない上、エッチング中にエッチング液のケイ素濃度が飽和量を超え、酸化ケイ素が析出するため、エッチング液の寿命に問題があった。
【0008】
また、ヘキサフルオロケイ酸を添加する方法では、酸化ケイ素のエッチングを抑制することはできるが、ヘキサフルオロケイ酸が揮発しやすい物質であるため、安定的に窒化ケイ素をエッチングすることができず、エッチング液の寿命が極めて短いという問題があった。また、揮発しやすいことから、ヘキサフルオロケイ酸を高濃度に添加した場合は、エッチング液中のケイ素濃度が飽和量を超えるため、酸化ケイ素が析出してしまい、この場合もエッチング液の寿命は短くなるという問題があった。
【0009】
このように、特許文献1〜特許文献3に記載の方法には致命的な欠点があり、工業的な窒化ケイ素のエッチング方法として使用することが困難であった。
【0010】
一方、一般にエッチング装置では、エッチング液及び基板を清浄に保つため、エッチング液をろ過、循環して、エッチング液への不溶物を除去している(例えば、特許文献8参照)。
【0011】
しかしながら、窒化ケイ素のエッチングにおいて、同様にエッチング液をろ過、循環して酸化ケイ素等の不溶物を除去しとうとすると、析出した酸化ケイ素が、ろ過する前に基板や、エッチング槽に付着し、またろ過時にもフィルターの目詰まりを起こすという問題があった。
【0012】
なお、本出願人は、長期間、安定的に高選択性エッチングを行う方法について既に特許出願しているが(例えば、特許文献4〜特許文献7参照)。これらは、ケイ素化合物(例えば、ヘキサフルオロケイ酸)の他に、ホウ素化合物やポリリン酸等を添加する必要がある。
【0013】
以上のように従来の方法は、いずれも十分なものとは言えず、工業的な実用化を図るために更なる検討が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6−349808号公報
【特許文献2】特開2000−133631号公報
【特許文献3】特開平8−64574号公報
【特許文献4】特開平2−96334号公報
【特許文献5】特開2006−202260号公報
【特許文献6】特開2006−223989号公報
【特許文献7】特開2007−157974号公報
【特許文献8】特開2007−330109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記した背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的は、酸化ケイ素をエッチングすることなく、窒化ケイ素をエッチングするという高選択性エッチングを安定的に実施する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、窒化ケイ素のエッチング方法について鋭意検討を重ねた結果、リン酸、ヘキサフルオロケイ酸、及び水を含むエッチング液を連続的、又は断続的にエッチング槽から抜き出し、この抜き出したエッチング液にフッ酸水溶液を供給して、水、ケイ素、及びフッ素を一部又は除去した液を、再度、リン酸としてエッチング工程に戻すことで、更なる添加剤を添加する必要なく、上記した課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、以下に示すとおりの窒化ケイ素のエッチング方法に関するものである。
[1]エッチング槽及びエッチング再生槽を有するエッチング装置を用い、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水を含有するエッチング液で窒化ケイ素をエッチングする方法であって、
(a)エッチング槽に、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水を連続的、又は断続的に供給して、エッチング槽内で窒化ケイ素をエッチングする工程、
(b)エッチング槽中のエッチング液を、エッチング槽から連続的又は断続的に抜き出し、エッチング液再生槽に移す工程、
(c)エッチング液再生槽に移されたエッチング液にフッ酸及び/又はフッ酸塩を供給し、ケイ素、水、フッ素の一部乃至全部を除去する工程、並びに
(d)エッチング液再生槽内の、ケイ素、水、フッ素の一部乃至全部を除去した液をリン酸として(a)の工程に戻す工程、
を含むことを特徴とするエッチング方法。
[2]フッ化ケイ素化合物がフルオロケイ酸及び/又はフルオロケイ酸塩である上記[1]に記載のエッチング方法。
[3]エッチング槽にフッ化ケイ素化合物を連続的又は断続的に供給して、エッチング槽中のフッ化ケイ素化合物の濃度を1〜1000ppmの範囲に維持することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のエッチング方法。
[4]エッチング液再生槽にフッ酸及び/又はフッ酸塩を供給して、エッチング液再生槽中のケイ素の濃度を100ppm以下に維持することを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載のエッチング方法。
[5]エッチング槽に水を連続的又は断続的に供給して、エッチング槽中のエッチング液の温度を120〜170℃の範囲に維持することを特徴とする上記[1]乃至[4]のいずれかに記載のエッチング方法。
[6]エッチング液再生槽中の液の温度を120℃以上に維持することを特徴とする上記[1]乃至[5]のいずれかに記載のエッチング方法。
[7]連続的又は断続的にエッチング槽中のエッチング液を抜き出して、エッチング槽中の液面を一定の高さに維持することを特徴とする上記[1]乃至[6]のいずれかに記載のエッチング方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以下に示す効果を奏する。
【0019】
本発明の方法は、酸化ケイ素をエッチングすることなく、高選択的に窒化ケイ素をエッチングすることができる。
【0020】
また、本発明の方法は、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水を連続的、又は断続的に供給することで、エッチング初期から高選択性で窒化ケイ素をエッチングすることができる。
【0021】
さらに、本発明の方法では、ケイ素の蓄積がないため、長期間、安定的に窒化ケイ素をエッチングすることができる。
【0022】
以上のとおり、本発明の方法は工業的に極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
本発明のエッチング方法において、エッチング対象は、窒化ケイ素である。窒化ケイ素は、半導体、フラットパネルディスプレイにおいて、一般に窒化膜と呼ばれ、多用されている。窒化膜以外に酸窒化膜と呼ばれる酸素の入った窒化酸化ケイ素も使用されているが、これについても本発明のエッチング方法で問題なくエッチングできる。したがって、本発明において、エッチング対象である「窒化ケイ素」とは、窒化ケイ素及び/又は窒化酸化ケイ素を意味する。
【0025】
半導体、フラットパネルディスプレイにおいて使用される窒化ケイ素には、成膜方法により、その性状が異なるものがある。例えば、CVD法、PVD法によって成膜される窒化ケイ素は、エッチング速度は異なるものの、本発明のエッチング方法によって問題なくエッチングすることができる。もちろん広く使用されているLP−SiNと呼ばれる減圧CVD装置で成膜した窒化ケイ素もエッチングすることができる。
【0026】
本発明のエッチング方法においては、図1に示すようにエッチング槽とエッチング液再生槽の2槽を有するエッチング装置が使用される。
【0027】
エッチング槽では、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水を含有するエッチング液を用いて窒化ケイ素がエッチングされる。
【0028】
一方、エッチング液再生槽では、エッチング槽から抜き出されたエッチング液ににフッ酸及び/又はフッ酸塩を供給し、ケイ素、水、フッ素の一部乃至全部が除去される。
【0029】
本発明の方法は、
(a)エッチング槽に、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水を連続的、又は断続的に供給して、エッチング槽内で窒化ケイ素をエッチングする工程、
(b)エッチング槽中のエッチング液を、エッチング槽から連続的又は断続的に抜き出し、エッチング液再生槽に移す工程、
(c)エッチング液再生槽に移されたエッチング液にフッ酸及び/又はフッ酸塩を供給し、ケイ素、水、フッ素の一部乃至全部を除去する工程、並びに
(d)エッチング液再生槽内の、ケイ素、水、フッ素の一部乃至全部を除去した液をリン酸として(a)の工程に戻す工程、
を含む。
【0030】
本発明において、エッチング液に使用されるリン酸としては特に制限はない。例えば、一般に流通している高純度リン酸を使用することができる。高純度リン酸は、半導体、フラットパネルディスプレイの性能に影響する金属イオン等を低減しており、本発明に好適に使用することができる。
【0031】
エッチング槽内のエッチング液におけるリン酸の濃度は、処理温度に応じた水添加をすることができるため限定することができないが、通常流通している濃度85%の高純度リン酸を用いて、水濃度等を変動させた場合の一般的なリン酸濃度範囲として60〜90重量%の範囲が好ましい。
【0032】
本発明において、エッチングに使用されるフッ化ケイ素化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム等が挙げられる。これらは、工業的に流通しているものを使用しても良いし、ケイ酸にフッ化水素酸を反応させて調製したものを使用しても良い。
【0033】
エッチング槽内のエッチング液におけるフッ化ケイ素化合物の濃度は、通常1〜1000ppm、好ましくは10〜500ppmの範囲である。1ppm未満であると、フッ化ケイ素化合物を加える効果が小さく、酸化ケイ素のエッチングを抑制することができないおそれがある。また1000ppmを超えて加えると、窒化ケイ素のエッチング速度が制御できないほど速くなるのに加えて酸化ケイ素が析出するおそれがある。
【0034】
本発明においては、エッチング槽中のフッ化ケイ素の濃度を1〜1000ppmの範囲にコントロールしながらフッ化ケイ素化合物を供給することが好ましい。例えば、
(1)一定速度で連続的にフッ化ケイ素化合物、及びリン酸をエッチング槽に供給し、一定速度で連続的にエッチング液を抜き出す方法、
(2)一定間隔で一定量のフッ化ケイ素化合物、及びリン酸をエッチング槽に供給し、一定間隔で一定量のエッチング液を抜き出す方法、
(3)沸点又はエッチング液の比重が一定となるよう水をエッチング槽に供給し、この水と一緒にフッ化ケイ素化合物をエッチング槽に供給する方法、
等の方法で、エッチング槽中のフッ化ケイ素濃度をほぼ一定に保つことができる。これらいずれの方法で実施しても、一向に差し支えない。
【0035】
本発明においては、水をエッチング槽に供給する。水の量は、従来公知の方法でコントロールすることができ、その方法は特に限定されない。例えば、エッチング液の沸点でコントロールする方法、エッチング液の比重でコントロールする方法等が知られており、これらの方法を用いたエッチング装置が市販されている。これらいずれの方法でも、エッチング槽内の水の量を一定に保つことができる。
【0036】
水の量は、エッチング温度を制御するのに重要である。水の量を多くするとエッチング槽の温度が下がり、水の量を少なくすると、エッチング槽の温度が上がる。エッチング槽温度が低下すると、窒化ケイ素のエッチングが遅くなり、エッチング槽の温度が高くなると、酸化ケイ素のエッチングが起こる。このため、エッチング槽の温度は、120〜170℃の範囲であることが好ましい。水の供給量は、装置の放熱、加熱能力の影響が大きいため、特に規定することは困難であるが、エッチング槽の温度がこの範囲になるよう、水の供給量を調整することが望ましい。
【0037】
本発明の方法においては、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水をエッチング槽に連続的又は断続的に供給するが、エッチング液を連続的又は断続的に抜き出し、エッチング液再生槽に移液しなければならない。エッチング液の抜き出しに関しては、エッチング液に供給した量から、揮発分、ウエハ等の基板付着分を差し引いた量を計算して抜き出しても良いが、エッチング槽の液面高で制御する方法がある。すなわち、エッチング槽の液面が高くなった部分だけ抜き出す方法である。この方法は簡便であり、工業的に極めて有利な方法である。
【0038】
本発明の方法において、エッチング槽とエッチング液再生槽の間に、さらにエッチング液を溜める槽を設けてもよい。
【0039】
本発明の方法において、エッチング槽から抜き出し、エッチング液再生槽に移液したエッチング液は、その中に含まれる水、ケイ素、フッ素を一部あるいは全部除去し、リン酸として再使用する。ケイ素の除去は、フッ酸を添加することで実施する。フッ酸の代わりにフッ酸塩(例えば、フッ化アンモニウム等)を使用しても良い。フッ酸は水溶液として使用すると取り扱いやすい。ケイ素にフッ酸を添加することで、ケイ素はフルオロケイ酸になり、揮発する。ケイ素の除去に必要なフッ酸の量は、ケイ素原子1に対し、F原子が4以上であるが、4未満でも差し支えない。本発明のエッチング方法においては、ケイ素を完全に除去する必要はなく、ケイ素の量を100ppm以下に低減すれば良いからである。ケイ素の量が100ppmを超えると、酸化ケイ素がエッチング槽、基板上等に析出する可能性が高くなり、好ましくない。フッ素、水の除去は加熱によって行う。温度は120℃以上あれば良い。温度が高いほど、水とフッ素の除去効率は上がり、処理時間は短かくなる。フッ酸添加、加熱により、ケイ素、水、フッ素を除去した液は、リン酸として、エッチング液に再使用できる。
【0040】
本発明の方法において、エッチング槽とエッチング液再生槽は、同一装置内に設置することが好ましい。本発明において、「同一装置」とは、配管で結合された状態を意味する。エッチング槽とエッチング液再生槽を配管で結合することで、エッチング液の熱量を損失することなく、エッチング液再生に使用することができ、工業的に極めて有利となる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定して解釈されるものではない。
【0042】
実施例1 窒化ケイ素のエッチング.
高純度リン酸0.1Lを石英でできたエッチング槽に入れ、加熱した。内温が155℃になるように、水を加えて調整しながら、さらに、高純度リン酸にヘキサフルオロケイ酸を500ppm添加したエッチング液を0.1L/時の速度でエッチング槽に供給した。エッチング液は連続的に抜き出し、容積が0.1Lになるよう調整した。
【0043】
3時間後、窒化ケイ素を300nmの厚みにCVD成膜した15mm角のシリコンウエハと酸化ケイ素を100nmの厚みにCVD成膜した15mm角のシリコンウエハをエッチング槽に入れた。10分後、両方のウエハをエッチング槽から取り出し、水洗した後、窒素気流下で乾燥し、光干渉式膜厚計で窒化ケイ素と酸化ケイ素の膜厚を測定した。処理前後の膜厚の差から算出したエッチング速度は、窒化ケイ素 9.19nm/分、酸化ケイ素 0.00nm/分だった。したがって、選択率(窒化ケイ素エッチング速度/酸化ケイ素エッチング速度)は無限大となった。
【0044】
次いで15分ごとにエッチング操作を繰り返した。40回繰り返した結果、エッチング速度は、窒化ケイ素 9.55nm/分、酸化ケイ素 0.00nm/分だった。選択率は無限大だった。また40回繰り返し後も、酸化ケイ素はウエハ上、エッチング槽中に析出してなかった。
【0045】
比較例1.
ヘキサフルオロケイ酸を加えない以外は、実施例1と同じ装置、方法でエッチングした。
最初のエッチング速度は、窒化ケイ素 3.49nm/分、酸化ケイ素 0.79nm/分だった。したがって、選択率は4.4となった。
【0046】
次いで15分ごとにエッチング操作を繰り返した。40回繰り返した結果、エッチング速度は、窒化ケイ素 3.62nm/分、酸化ケイ素 0.08nm/分だった。選択率は45.2だった。
【0047】
比較例2.
高純度リン酸にヘキサフルオロケイ酸を500ppm添加した液を連続的に供給しない以外は実施例1と同じ装置、方法でエッチングした。
【0048】
最初のエッチング速度は、窒化ケイ素 7.11nm/分、酸化ケイ素 0.03nm/分だった。したがって、選択率は237となった。
【0049】
次いで15分ごとにエッチング操作を繰り返した。40回繰り返した結果、エッチング速度は、窒化ケイ素 4.19nm/分、酸化ケイ素 0.03nm/分だった。選択率は140だった。
【0050】
実施例2〜実施例5.
表1記載の濃度のヘキサフルオロケイ酸(HFS)を使用し、表1記載の温度でエッチングした以外は実施例1と同じ装置、方法でエッチングした。最初のエッチング速度、40回目のエッチング速度を表1に記した。
【0051】
【表1】

実施例6.
表1記載のヘキサフルオロケイ酸の代わりにヘキサフルオロケイ酸アンモニウムを使用し、窒化ケイ素をCVD成膜した窒化酸化ケイ素を使用した以外は実施例1と同じ装置、方法でエッチングした。最初のエッチング速度は、窒化酸化ケイ素 6.82nm/分、酸化ケイ素 0.00nm/分だった。したがって、選択率は無限大となった。
【0052】
次いで15分ごとにエッチング操作を繰り返した。40回繰り返した結果、エッチング速度は、窒化酸化ケイ素 6.88nm/分、酸化ケイ素 0.00nm/分だった。選択率は無限大だった。
【0053】
実施例7 エッチング液の再生.
ケイ素を89ppm含む実施例1で抜き出したエッチング液0.1Lをテフロン(登録商標)槽に入れ、140℃に加熱した。テフロン(登録商標)槽の底から10%フッ酸水溶液を0.02L供給し、140℃で1時間、液を撹拌した。液を冷却した後、元素分析したところ、ケイ素は5ppm以下、フッ素は4ppmになっていた。
【0054】
この液をリン酸として使用し、実施例1と同じ装置、方法でエッチングした。
【0055】
最初のエッチング速度は、窒化ケイ素 9.21nm/分、酸化ケイ素 0.00nm/分だった。したがって、選択率は無限大となった。
【0056】
次いで15分ごとにエッチング操作を繰り返した。40回繰り返した結果、エッチング速度は、窒化ケイ素 9.33nm/分、酸化ケイ素 0.00nm/分だった。選択率は無限大だった。
【0057】
実施例8.
実施例1で抜き出したエッチング液0.1Lをテフロン(登録商標)槽に入れ、120℃に加熱した。テフロン(登録商標)槽の底から20%フッ化アンモニウム水溶液を0.02L供給し、120℃で4時間、液を撹拌した。液を冷却した後、元素分析したところ、ケイ素は13ppm、フッ素は8ppmになっていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング槽及びエッチング再生槽を有するエッチング装置を用い、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水を含有するエッチング液で窒化ケイ素をエッチングする方法であって、
(a)エッチング槽に、リン酸、フッ化ケイ素化合物及び水を連続的、又は断続的に供給して、エッチング槽内で窒化ケイ素をエッチングする工程、
(b)エッチング槽中のエッチング液を、エッチング槽から連続的又は断続的に抜き出し、エッチング液再生槽に移す工程、
(c)エッチング液再生槽に移されたエッチング液にフッ酸及び/又はフッ酸塩を供給し、ケイ素、水、フッ素の一部乃至全部を除去する工程、並びに
(d)エッチング液再生槽内の、ケイ素、水、フッ素の一部乃至全部を除去した液をリン酸として(a)の工程に戻す工程、
を含むことを特徴とするエッチング方法。
【請求項2】
フッ化ケイ素化合物がフルオロケイ酸及び/又はフルオロケイ酸塩である請求項1に記載のエッチング方法。
【請求項3】
エッチング槽にフッ化ケイ素化合物を連続的又は断続的に供給して、エッチング槽中のフッ化ケイ素化合物の濃度を1〜1000ppmの範囲に維持することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエッチング方法。
【請求項4】
エッチング液再生槽にフッ酸及び/又はフッ酸塩を供給して、エッチング液再生槽中のケイ素の濃度を100ppm以下に維持することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項5】
エッチング槽に水を連続的又は断続的に供給して、エッチング槽中のエッチング液の温度を120〜170℃の範囲に維持することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項6】
エッチング液再生槽中の液の温度を120℃以上に維持することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のエッチング方法。
【請求項7】
連続的又は断続的にエッチング槽中のエッチング液を抜き出して、エッチング槽中の液面を一定の高さに維持することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のエッチング方法。

【公開番号】特開2012−18981(P2012−18981A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154153(P2010−154153)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】