説明

窒化物系半導体発光素子の製造方法、窒化物系半導体発光素子及びランプ

【課題】高い光取り出し効率を有し、発光特性に優れるとともに、生産性に優れた窒化物系半導体発光素子の製造方法を提供する。
【解決手段】第1の基板101上に、少なくともn型半導体層、発光層、及びp型半導体層を順次積層して半導体層104を形成した後、該半導体層をブラスト加工することにより、前記半導体層を、前記ブラスト加工によって形成された傾斜面104dからなる側面を有する積層半導体とする工程と、前記積層半導体上に第2の基板を設けた後、前記第1の基板と前記積層半導体との界面にレーザー光を照射して前記第1の基板を前記積層半導体から剥離する工程とを少なくとも備え、前記第1の基板として、前記半導体層よりも高いビッカース硬度を有する基板を用いることを特徴とする窒化物系半導体発光素子の製造方法を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物系半導体発光素子の製造方法、窒化物系半導体発光素子及びランプに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、短波長発光素子用の半導体材料として、窒化物系半導体であるGaN系化合物半導体材料が注目を集めている。GaN系化合物半導体は、サファイア単結晶をはじめ、種々の酸化物やIII−V族化合物を基板として、この基板上に有機金属気相成長法(MOCVD法)や分子線エピタキシー法(MBE法)等によって形成される。
【0003】
GaN系化合物半導体材料の特性として、横方向への電流拡散が小さいことが挙げられる。このため、電極の直下の半導体にしか電流が注入されず、発光層で発光した光は電極に遮られて外部に取り出されない。そこで、このような半導体発光素子では、通常、透光性正極が用いられ、透光性正極を通して光が取り出されるようになっている。
【0004】
従来から用いられている透光性正極は、NiやCoの酸化物と、コンタクト金属としてAu等を組み合わせた層構造とされていた。また、近年では、ITO等より導電性の高い酸化物を使用することにより、コンタクト金属の膜厚を極力薄くして透光性を高めた層構造とされた透光性正極が用いられるようになり、発光層からの光が効率良く外部に取り出される構成とされている。
【0005】
ところで、発光素子の外部量子効率は、光取出し効率と内部量子効率を掛け合わせたものとして表される。内部量子効率とは、発光素子に注入した電流のエネルギーの内、光に変換されるエネルギーの割合である。また、光取り出し効率とは、半導体結晶内部で発生した光の内、外部へ取り出すことのできる光の割合である。
【0006】
発光素子の内部量子効率は、結晶状態の改善や構造の適正化等の検討によって、現在では70〜80%程度まで向上していると言われており、注入電流量に対して十分な効果が得られていると言える。
しかしながら、GaN系化合物半導体のみならず発光ダイオード(LED)においては、一般的に光取り出し効率が押並べて低いため、注入電流のエネルギーに対し、内部発光を充分に外部に取り出しているとは言い難い。
【0007】
発光ダイオードの発光取り出し効率が低いのは、GaN系化合物半導体における発光層の屈折率が約2.5と、空気の屈折率が1であるのに対して非常に高く、臨界角が約25°と小さいため、結晶内で反射及び吸収を繰り返すことにより、光を外部に取り出すことができない事が原因となっている。
【0008】
GaN系化合物半導体からなる発光素子の光取り出し効率を向上させるため、側面がブラスト加工によって傾斜面に形成された半導体発光素子が提案されている(例えば、特許文献1)。
しかしながら、特許文献1に記載の半導体発光素子は、ブラスト加工の角度制御を行ないながらテーパ形状を形成する方法で製造されるため、テーパ形状を安定して形成するための角度制御が難しく、生産性が低いという問題がある。
【0009】
また、半導体発光素子に用いられるサファイア基板の一部に、ブラスト加工によって凹凸が形成された半導体発光素子が提案されている(例えば、特許文献2)。
特許文献2に記載の半導体発光素子は、上記構成により、光取り出し効率の向上に一定の効果が見られる。
【0010】
しかしながら、GaN系化合物からなる半導体発光素子の光取り出し効率が低いのは、GaN系化合物の屈折率が大きいために内部から光を取り出しにくいことが主な原因であるため、特許文献2に記載の半導体発光素子のように、サファイア基板の一部に凹凸が形成された構成では、光取り出し効率を充分に向上させることができなかった。
【特許文献1】特開平10−341035号公報
【特許文献2】特開2004−56088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高い光取り出し効率を有し、発光特性に優れるとともに、生産性に優れた窒化物系半導体発光素子の製造方法、窒化物系半導体発光素子及びランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1] 窒化物系半導体からなる半導体層を基板上に積層する窒化物系半導体発光素子の製造方法であって、第1の基板上に、少なくともn型半導体層、発光層、及びp型半導体層を順次積層して半導体層を形成した後、該半導体層をブラスト加工することにより、前記半導体層を、前記ブラスト加工によって形成された傾斜面からなる側面を有する積層半導体とする工程と、前記積層半導体上に第2の基板を設けた後、前記第1の基板と前記積層半導体との界面にレーザー光を照射して前記第1の基板を前記積層半導体から剥離する工程とを少なくとも備え、前記第1の基板として、前記半導体層よりも高いビッカース硬度を有する基板を用いることを特徴とする窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[2] 窒化物系半導体からなる半導体層を基板上に積層する窒化物系半導体発光素子の製造方法であって、第1の基板上に、少なくともn型半導体層、発光層、及びp型半導体層を順次積層して半導体層を形成した後、該半導体層をブラスト加工することにより、前記半導体層を、前記ブラスト加工によって形成された傾斜面からなる側面を有する積層半導体とし、前記p型半導体層上あるいは該p型半導体層上に形成した電極層上に、導電体からなる第1の接合層を積層することにより、第1の積層体を形成する工程と、導電性を有する第2の基板上に少なくとも導電体からなる第2の接合層を積層することにより、第2の積層体を形成する工程と、前記第1の積層体と第2の積層体とを、前記第1の接合層と第2の接合層とを接合させることにより一体化させる工程と、前記第1の基板と前記積層半導体との界面にレーザー光を照射して前記第1の基板を前記積層半導体から剥離する工程とを少なくとも備え、前記第1の基板として、前記半導体層よりも高いビッカース硬度を有する基板を用いることを特徴とする窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[3] 前記積層半導体から剥離した第1の基板を、前記半導体層を形成する際の基板として再利用することを特徴とする前項1又は前項2に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[4] 前記半導体層のビッカース硬度を、前記第1の基板のビッカース硬度の90%以下としたことを特徴とする前項1〜3の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[5] 前記ブラスト加工を、前記第1の基板よりもビッカース硬度が低いブラスト粒子を用いて行なうことを特徴とする前項1〜4の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[6] 前記ブラスト加工を、平均粒径が5〜50μmの範囲のブラスト粒子を用いて行なうことを特徴とする前項1〜5の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[7] 前記ブラスト粒子は、アルミナ又はシリコンを主成分としてなるものであることを特徴とする前項5又は前項6に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[8] 前記ブラスト加工は、前記半導体層側にレジストでパターニングを施して行うことを特徴とする前項1〜7の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[9] 前記第1の基板がサファイアであることを特徴とする前項1〜8の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[10] 前記半導体層をなす窒化物系半導体がGaN系半導体であることを特徴とする前項1〜9の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
[11] 前項1〜10の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法によって製造された窒化物系半導体発光素子。
[12] 前項11に記載の窒化物系半導体発光素子を備えたことを特徴とするランプ。
【発明の効果】
【0013】
本発明の窒化物系半導体発光素子の製造方法によれば、上記構成により、発光層を含む積層半導体の側面を傾斜面とすることができ、光取り出し効率が向上した窒化物系半導体発光素子を製造できるとともに、生産性が向上する。
また本発明によれば、積層半導体を形成する際の基板として、半導体層よりも高いビッカース硬度を有する第1の基板を用いるので、サンドブラスト加工を行った際に第1の基板が損傷を受ける虞が無く、これにより第1の基板を再利用することができる。
以上により、発光特性に優れた窒化物系半導体発光素子を安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、以下の説明において参照する図は本実施形態の窒化物系半導体発光素子の製造方法を説明するためのものであり、図示される各部の大きさや厚さや寸法等は、実際の窒化物系半導体発光素子の寸法関係とは異なる場合がある。
また、本発明は以下の各実施形態に限定されるものではなく、例えばこれら実施形態の構成要素同士を適宜組み合わせても良い。
【0015】
「第1の実施形態」
本実施形態の窒化物系半導体発光素子(以下、発光素子という。)の製造方法は、第1の基板上に、少なくともn型半導体層、発光層、及びp型半導体層を順次積層して半導体層を形成する半導体層形成工程と、半導体層をブラスト加工することにより、半導体層を、ブラスト加工によって形成された傾斜面からなる側面を有する積層半導体とするサンドブラスト加工工程と、積層半導体上に第2の基板を設ける第2基板形成工程と、第1の基板と積層半導体との界面にレーザー光を照射して第1の基板を積層半導体から剥離するレーザーリフトオフ工程とから概略構成されている。
以下、各工程について順次説明する。
【0016】
(半導体層形成工程)
半導体層形成工程では、図1に示すように、第1基板101(第1の基板)上に、n型半導体層102a、発光層102b及びp型半導体層102cを順次積層して半導体層102を形成する。
【0017】
第1基板101としては、サファイア単結晶(Al;A面、C面、M面、R面)、スピネル単結晶(MgAl)、ZnO単結晶、LiAlO単結晶、LiGaO単結晶、MgO単結晶などの酸化物単結晶、Si単結晶、SiC単結晶、GaAs単結晶、AlN単結晶、GaN単結晶およびZrBなどのホウ化物単結晶などの基板材料を用いることができる。本発明においても、これら基板材料を含めて、如何なる基板材料を何ら制限なく用いることができる。これらの中でもサファイア単結晶(ビッカース硬度Hv2300)、SiC単結晶(ビッカース硬度Hv2400)が、半導体層102及び後述するブラスト粒子よりもビッカース硬度が高いので好ましい。
【0018】
半導体層102としては、GaN系単結晶、GaP系単結晶、GaAs系単結晶、ZnO系単結晶など周知の半導体発光材料を用いることができるが、第1基板101を構成するサファイア単結晶またはSiC単結晶に対してにエピタキシャル成長可能なGaN系単結晶、ZnO系単結晶がより好ましい。さらにGaN系単結晶をもちいる方がより好ましい。
【0019】
第1基板101上には、通常、バッファ層としてのGaN層を介して、GaN系半導体からなるn型半導体層102a、発光層102bおよびp型半導体層102cを積層する。使用する基板やエピタキシャル層の成長条件によっては、バッファ層が不要である場合がある。
GaN系半導体としては、例えば一般式AlXGaYInZ1-AA(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1で且つ、X+Y+Z=1。記号Mは窒素(N)とは別の第V族元素を表し、0≦A<1である。)で表わされるGaN系半導体が多数知られており、本発明においても、それら周知のGaN系半導体を含めて一般式AlXGaYInZ1-AA(0≦X≦1、0≦Y≦1、0≦Z≦1で且つ、X+Y+Z=1。記号Mは窒素(N)とは別の第V族元素を表し、0≦A<1である。)で表わされるGaN系半導体を何ら制限なく用いることができる。
GaN系半導体は、Al、GaおよびIn以外に他のIII族元素を含有することができ、必要に応じてGe、Si、Mg、Ca、Zn、Be、P、AsおよびBなどの元素を含有することもできる。さらに、意識的に添加した元素に限らず、成膜条件等に依存して必然的に含まれる不純物、並びに原料、反応管材質に含まれる微量不純物を含む場合もある。
【0020】
GaN系半導体の成長方法は特に限定されず、MOCVD(有機金属化学気相成長法)、HVPE(ハイドライド気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)、などGaN系半導体を成長させることが知られている全ての方法を適用できる。好ましい成長方法としては、膜厚制御性、量産性の観点からMOCVD法である。
MOCVD法では、キャリアガスとして水素(H2)または窒素(N2)、III族原料であるGa源としてトリメチルガリウム(TMG)またはトリエチルガリウム(TEG)、Al源としてトリメチルアルミニウム(TMA)またはトリエチルアルミニウム(TEA)、In源としてトリメチルインジウム(TMI)またはトリエチルインジウム(TEI)、V族原料であるN源としてアンモニア(NH3)、ヒドラジン(N24)などが用いられる。また、ドーパントとしては、n型にはSi原料としてモノシラン(SiH4)またはジシラン(Si26)を、Ge原料としてゲルマンガス(GeH4)や、テトラメチルゲルマニウム((CH34Ge)やテトラエチルゲルマニウム((C254Ge)等の有機ゲルマニウム化合物を利用できる。
MBE法では、元素状のゲルマニウムもドーピング源として利用できる。p型にはMg原料としては例えばビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)またはビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウム(EtCp2Mg)を用いる。
【0021】
n型半導体層102aは、通常、下地層、nコンタクト層およびnクラッド層から構成される。nコンタクト層は下地層および/またはnクラッド層を兼ねることができる。下地層はAlXGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。その膜厚は0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。この膜厚以上にした方が結晶性の良好なAlXGa1―XN層が得られやすい。
下地層にはn型不純物を1×1017〜1×1019/cm3の範囲内であればドープしても良いが、アンドープ(<1×1017/cm3)の方が良好な結晶性の維持という点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeである。
下地層を成長させる際の成長温度は、800〜1200℃が好ましく、さらに好ましくは1000〜1200℃の範囲に調整する。この成長温度範囲内で成長させれば結晶性の良いものが得られる。また、MOCVD成長炉内の圧力は15〜40kPaに調整する。
【0022】
nコンタクト層としては、下地層と同様にAlXGa1―XN層(0≦x≦1、好ましくは0≦x≦0.5、さらに好ましくは0≦x≦0.1)から構成されることが好ましい。また、nコンタクト層にはn型不純物がドープされていることが好ましく、n型不純物を1×1017〜1×1019/cm3、好ましくは1×1018〜1×1019/cm3の濃度で含有すると、負極との良好なオーミック接触の維持、クラック発生の抑制、良好な結晶性の維持の点で好ましい。n型不純物としては、特に限定されないが、例えば、Si、GeおよびSn等が挙げられ、好ましくはSiおよびGeである。成長温度は下地層と同様である。
nコンタクト層を構成するGaN系半導体は、下地層と同一組成であることが好ましく、nコンタクト層と下地層との合計の膜厚を1〜20μm、好ましくは2〜15μm、さらに好ましくは3〜12μmの範囲に設定することが好ましい。nコンタクト層と下地層との合計の膜厚が上記範囲にあると、半導体の結晶性が良好に維持される。
【0023】
nコンタクト層と発光層3との間には、nクラッド層を設けることが好ましい。nコンタクト層の表面に生じた平坦性の悪化を埋めることできるからである。nクラッド層はAlGaN、GaN、GaInNなどで形成することが可能である。また、これらの構造のヘテロ接合や複数回積層した超格子構造としてもよい。nクラッド層をGaInNで形成する場合には、発光層3のGaInNのバンドギャップよりも大きくすることが望ましいことは言うまでもない。
nクラッド層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは0.005〜0.5μmであり、より好ましくは0.005〜0.1μmである。nクラッド層のn型ドープ濃度は1×1017〜1×1020/cm3が好ましく、より好ましくは1×1018〜1×1019/cm3である。ドープ濃度がこの範囲であると、良好な結晶性の維持および素子の動作電圧低減の点で好ましい。
【0024】
次に、n型半導体層102aの上に積層される発光層102bとしては、GaN系半導体、好ましくはGa1-sInsN(0<s<0.4)のGaN系半導体からなる発光層が本発明では通常用いられる。発光層102bの膜厚としては、特に限定されないが、量子効果の得られる程度の膜厚、即ち臨界膜厚が挙げられ、例えば好ましくは1〜10nmであり、より好ましくは2〜6nmである。発光層102bの膜厚が上記範囲であると発光出力の点で好ましい。
また、発光層102bは、上記のような単一量子井戸(SQW)構造の他に、上記Ga1-sInsNを井戸層として、この井戸層よりバンドギャップエネルギーが大きいAlcGa1-cN(0≦c<0.3)障壁層とからなる多重量子井戸(MQW)構造としてもよい。また、井戸層および障壁層には、不純物をドープしてもよい。
【0025】
AlcGa1-cN障璧層の成長温度は700℃以上とすることが好ましく、さらに好ましくは800〜1100℃で成長させると結晶性が良好になるため好ましい。GaInN井戸層は600〜900℃、好ましくは700〜900℃で成長させる。すなわちMQWの結晶性を良好にするためには層間で成長温度を変化させることが好ましい。
【0026】
次に、p型半導体層102cは、通常、pクラッド層およびpコンタクト層から構成される。しかし、pコンタクト層がpクラッド層を兼ねてもよい。
pクラッド層としては、発光層102bのバンドギャップエネルギーより大きくなる組成であり、発光層102bへのキャリアの閉じ込めができるものであれば特に限定されないが、好ましくは、AldGa1-dN(0<d≦0.4、好ましくは0.1≦d≦0.3)のものが挙げられる。pクラッド層が、このようなAlGaNからなると、発光層102bへのキャリアの閉じ込めの点で好ましい。pクラッド層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1〜400nmであり、より好ましくは5〜100nmである。pクラッド層のp型ドープ濃度は、1×1018〜1×1021/cm3が好ましく、より好ましくは1×1019〜1×1020/cm3である。p型ドープ濃度が上記範囲であると、結晶性を低下させることなく良好なp型結晶が得られる。
【0027】
pコンタクト層は、少なくともAleGa1-eN(0≦e<0.5、好ましくは0≦e≦0.2、より好ましくは0≦e≦0.1)を含んでなるGaN系半導体層である。Al組成が上記範囲であると、良好な結晶性の維持およびpオーミック電極との良好なオーミック接触の点で好ましい。p型不純物(ドーパント)を1×1018〜1×1021/cm3の濃度で、好ましくは5×1019〜5×1020/cm3の濃度で含有していると、良好なオーミック接触の維持、クラック発生の防止、良好な結晶性の維持の点で好ましい。p型不純物としては、特に限定されないが、例えば好ましくはMgが挙げられる。膜厚は、特に限定されないが、0.01〜0.5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2μmである。膜厚がこの範囲であると、発光出力の点で好ましい。
【0028】
第1基板101上に積層された半導体層102のビッカース硬度は、薄膜用のビッカース硬度測定装置で測定することができる。
【0029】
(サンドブラスト加工工程)
次にサンドブラスト工程では、半導体層102をブラスト加工することにより、半導体層102を適宜分断して積層半導体104とする。形成された積層半導体104には、ブラスト加工によって形成された傾斜面からなる側面が設けられる。
【0030】
まず、図2に示すように、半導体層102上にレジストフィルムを貼り付け、レジストフィルムを露光現像することによりブラスト加工をほどこしたい部分のレジストフィルムを除去してマスク層103を形成する。マスク層103の平面視形状は例えば正方形等の矩形状が好ましい。
レジストフィルムはブラストに対して加工耐性のあるものであればどのようなものを用いても構わないが、ブラスト加工用のレジストフィルムを用いることが好ましい。市販されているレジストフィルムとしては、東京応化工業製オーディルBFシリーズ、旭化成エレクトロニクス製サンフォートなどを用いることができる。また、レジストフィルムの露光は、通常のフォトリソグラフィーと同様に、露光機を用いて実施することができる。更に、レジストフィルムの現像は、炭酸ナトリウム水溶液をシャワー状に吹き付けることにより実施することができる。
【0031】
次に、図3に示すように、ブラスト粒子を半導体層102及びマスク層103上に吹きつけてサンドブラスト加工を施す。これにより、半導体層102のうち、マスク層103の覆われた部分は加工されず、マスク層103によって覆われていない部分がブラスト粒子によって研削されて半導体層102が分断され、平面視略矩形状の積層半導体104が形成される。積層半導体104の側面はサンドブラスト加工によって傾斜面104dとなる。
サンドブラスト加工による傾斜面の形状は、全体として傾斜した形状であればどのような形状でもよい。例えば、テーパ形状でもよく、単斜面形状でもよい。傾斜角度は20°〜70°の範囲が光取り出し効率がより向上するので好ましい。
【0032】
ブラスト処理に用いるブラスト粒子はどのような形をしていても構わないが、球状または針状であることが、安定的にテーパ形状が作成できるので好ましく、球状であることがより好ましい。
ブラスト処理に用いるブラスト粒子の粒径は、加工幅や半導体層の厚さにより変化するが、加工幅30〜100μm、半導体層の厚さ3〜15μmの範囲では、ブラスト粒子の平均粒径は5〜50μmであることが好ましい。この範囲であれば、良好なテーパ形状を作成できる。
【0033】
そして、図4に示すようにマスク層103を除去する。個のようにして、傾斜面104dを有する積層半導体104が形成される。積層半導体104同士の間においては、半導体層の残差が残らず、第1の基板101の基板面101aが完全に露出していることが、後述のレーザーリフトオフ工程における積層半導体104の破損を防止できる点で好ましい。
【0034】
尚、サンドブラスト加工はp型半導体層104cまで積層された状態で実施しても良いし、後述する相互拡散防止層の形成後でも構わない。また、この途中の工程で実施しても構わない。
【0035】
図5(A)〜図5(C)は、サンドブラスト加工による積層半導体の側面の傾斜面形状の作成を模式的に示した図である。図中、104はブラスト粒子である。
ブラスト粒子105を用いて半導体層102を加工した場合には、第1基板101よりもビッカース硬度が小さいブラスト粒子105を用いることにより、第1基板101側はほとんど加工されない、かつ、ブラスト粒子105の形状が球形状または針状であるので、図5(A)〜図5(C)に示すようにマスク層103と第1基板101に阻害されて積層半導体104の側面に加工できない領域が発生する。ブラスト粒子105は上述のように球形状または針状であるので、積層半導体104の側面において加工できない領域は第1基板101側にそって大きくなり、テーパ状の加工を施すことが可能になる。
【0036】
一方、ブラスト粒子105の硬度が第1基板101よりも硬い場合や、ブラスト粒子105の硬度が第1基板101よりも小さい場合でも、極端にブラスト粒子105の衝突速度が大きい場合や、長時間加工した場合は、第1基板101側へも加工が進行してしまう。このような場合、図6(A)に示すようにテーパ形状は第1基板101に対して徐々に直角に近づいていき、最終的には図6(B)に示すようにテーパ形状が消滅してしまう。このように第1基板101側まで加工してしまことはテーパ形状を作成することにとって好ましくない。
【0037】
なお、本発明は第1基板101をほとんど加工せずに半導体層102を加工してテーパー形状からなる傾斜面104dを有する積層半導体104を作成するので、ブラスト粒子105のビッカース硬度が第1基板101よりも硬くとも構わない。しかしながら、ブラスト粒子105のビッカース硬度が第1基板101よりも硬い場合、第1基板101側をほとんど加工せずにテーパ状の形状を作成するためには、ブラスト粒子105の突出圧や加工時間をより厳密に制御しなければならない。したがって、ブラスト粒子105のビッカース硬度は第1基板101よりも低いことが好ましい。
【0038】
以上のことから、半導体層102のビッカース硬度は、第1基板101のビッカース硬度の10%〜90%の範囲であることが好ましい。90%を超えると第1基板101と半導体層102のビッカース硬度の差がほとんどなくなるので、半導体層102の加工条件によっては、第1基板101も加工されてしまう可能性が高くなる。下限は特には限定されないが、レジストフィルムの貼付けや現像で半導体層102にダメージが加わらないようにするためには10%以上であることが好ましい。
【0039】
また、第1基板101(サファイア単結晶またはSiC単結晶)上にエピタキシャル成長した半導体層102(GaN系単結晶)をブラスト加工する場合、アルミナ、シリコン系のブラスト粒子は、サファイア単結晶、SiC単結晶よりもビッカース硬度が低く、GaN系単結晶とはビッカース硬度が同等前後であるので、GaN系半導体層へのテーパ加工に好ましい。
【0040】
なおビッカース硬度は測定方法により結果に差が生じることがあるので、ビッカース硬度の比較は同じ装置を用いて実施することが好ましい。半導体層102は薄膜(1〜20μm程度)であるので、薄膜用のビッカース硬度測定装置を用いることが好ましい。
半導体層102のビッカース硬度は、上述のように薄膜用のビッカース硬度測定装置で測定することができるが、同じ装置でブラスト粒子のビッカース硬度を測定することは困難である。ブラスト粒子のビッカース硬度はバルクのビッカース硬度を代用することになるが、この値と薄膜用のビッカース硬度測定装置の値を正確に比較することは困難である。したがって、現実的には一定条件でブラスト加工を行い、半導体層102に対する加工レートが第1基板101に対する加工レートよりも大きければよい。半導体層102に対する加工レートが第1基板101に対する加工レートの3倍以上であれば好ましく。さらに、10倍であればより好ましい。
【0041】
(第2基板形成工程)
次に、第2基板形成工程では、積層半導体上にオーミックコンタクト層等を形成し、更にその上に第2の基板を設ける。
【0042】
ここで、第2の基板を設ける理由について説明する。
積層半導体104を形成する際の基板としてサファイア基板を採用した場合、サファイアは絶縁体であるので、上下電極構造の発光素子を製造するためには、サファイアからなる第1基板101を最終的に剥離しなければならない。
しかし、第1基板101を剥離すると、積層半導体の厚みが1〜20μm程度しかないので、積層半導体104のみでは、その後の処理に耐えうる機械強度を得ることができない。また、本発明におけるブラスト加工を実施すると半導体層102が積層半導体104として分割されてしまい、この状態で第1基板101を剥離してしまうと、積層半導体104がバラバラになってしまう。
この問題を解決するためには、第1基板101とは反対側に別の基板(第2の基板)を作製することが有効である。第2の基板(以下、第2基板という。)の作製方法としては、メッキにより第2基板を作製する方法と、導電性を持つシリコンや金属基板を第2基板として貼り付ける方法があるが、ここでは、メッキにより第2基板を作製する方法について説明する。
【0043】
まず図7に示すように、積層半導体104のp型半導体層104cの上に、オーミックコンタクト層106、反射層107及び相互拡散防止層108を形成する。
【0044】
オーミックコンタクト層106に要求される性能としては、p型半導体層104cとの接触抵抗が小さいことが必須である。オーミックコンタクト層106の材料はp型半導体層104cとの接触抵抗の観点から、Pt、Ru、Os、Rh、Ir、Pd等の白金族またはAgが好ましい。さらに好ましくはPt,Ir,RhおよびRuである。Ptが特に好ましい。Agを用いることは良好な反射を得るためには好ましいが、接触抵抗はPtよりも低い。したがって、接触抵抗がそれほど要求されない用途にはAgを用いることも可能である。
オーミックコンタクト層106の厚さは、低接触抵抗を安定して得るために0.1nm以上とすることが好ましい。さらに好ましくは1nm以上であり、均一な接触抵抗が得られる。
【0045】
オーミックコンタクト層106上には、Ag合金、Al合金などの反射層107を形成する。Pt,Ir,Rh、Ru、OS,PdなどはAg合金と比較すると可視光から紫外領域の反射率が低い。したがって、発光層104bからの光が十分に反射せずに出力の高い素子を得ることが難しい。この場合、オーミックコンタクト層106を光が十分に透過するほどに薄く形成し、Ag合金などの反射層107を形成して反射光を得る方が、良好なオーミック接触が得られ、かつ出力の高い素子を作成することができる。この場合、オーミックコンタクト層106の膜厚は30nm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは10nm以下である。
反射層107の膜厚は良好な反射率を得るために0.1nm以上とすることが好ましい。さらに好ましくは1nm以上であり、均一な密着性が得られる。Ag合金はマイグレーションを起こしやすいので薄い方が好ましい。したがって、膜厚は200nm以下にすることが好ましい。
【0046】
反射層107の成膜方法については、特に制限されることはなく公知のスパッタ法や蒸着法を用いることができる。スパッタ法はスパッタ粒子が高エネルギーを持って基板表面に衝突して成膜されるので、密着力の高い膜を得ることができる。したがって、スパッタ法を用いる方がさらに好ましい。
【0047】
次に、図8に示すように、積層半導体104同士の間に犠牲層109を形成する。
犠牲層109を形成することなくメッキ法によって第2基板を形成すると、サンドブラスト加工によって形成された傾斜面104dにもメッキが施されてしまう。傾斜面104dにはn型半導体層104aとp型半導体層104cが露出しているので、メッキがその部分に施されると、n型半導体層104aとp型半導体層104cとが短絡してしまう。これを防ぐためにはメッキ処理の前に、傾斜面104dを覆うように犠牲層109を形成すればよい。犠牲層109は、第1基板101の剥離後に除去すればよい。
【0048】
犠牲層109としては、犠牲層109を除去するときに、GaNからなる積層半導体104、正極、負極等の金属層、メッキ基板である第2基板にダメージを与えない材質を選択することが好ましい。
例えば、犠牲層109の材料としては、レジスト材料、樹脂、セラミックスなどが好ましい。特にレジスト材料は現像すれば、そのまま選択的に溝を埋めることができ、かつ、専用の剥離材を使用すれば容易に除去することができるのでさらに好ましい。セラミックを用いる場合は、SiOがHFにより容易に除去できるので好ましい。さらに、SiOからなる犠牲層を形成する際にはSOG(スピン・オン・グラス)材料を用いることが、溝を十分に充填することができ好ましい。
【0049】
犠牲層109としてレジストを用いる場合、パターニングをする金属層の形成をレジストによる溝埋め前に実施することが好ましい。特にオーミックコンタクト層106や反射層107の形成はレジストによる溝埋め前に実施することがさらに好ましい。これは、パターニングするためにはレジストを用いるために、先にレジストによる溝埋め前に実施されていると、溝埋め部のレジストの剥離が生じてしまうためである。
犠牲層109を塗布する方法としては、スピンコート法、スプレー法、ディップコート法など公知の方法で塗布することが好ましい。さらに、生産性の観点からスピンコート法を用いることが好ましい。
また、犠牲層109を形成する際には、犠牲層109の上面が相互拡散防止層108の上面と同一面になるように形成することが好ましい。
また、犠牲層109の除去方法としては、ウエットエッチング法、ドライエッチング法など公知の方法を何ら制限なく用いることが出来る。
【0050】
尚、犠牲層109の形成に代えて、傾斜面104dに保護膜を形成することも有効である。保護膜としては、酸化シリコン、酸化アルミニウムなどを用いることができる。
【0051】
次に、図9に示すように、相互拡散防止層108及び犠牲層109の上に、メッキ密着層110及び第2基板111を形成する。相互拡散防止層108に直接メッキを施してもよいが、メッキの密着性を向上させるためにはメッキ密着層110を用いることが好ましい。
【0052】
メッキ密着層110の材料は、メッキにより形成する第2基板111の材質によって異なってくるが、メッキ成分に主に含まれる物質を多く含んでいたほうが密着性を向上させる。例えば、メッキ密着層110は、メッキ基板である第2基板111の50質量%以上を占める主成分と同一の組成を、50質量%以上含有する構成とすることが好ましい。
例えば、第2基板111にNiPメッキを用いる場合、メッキ密着層110にはNi系合金を用いることが好ましい。さらに好ましくはNiP合金を用いることである。また、第2基板111にCuメッキを用いる場合、メッキ密着層110にはCu系合金を用いることが好ましい。さらに好ましくはCuを用いることである。
【0053】
メッキ密着層110の厚さは、良好な密着性を得るために0.1nm以上とすることが好ましい。さらに好ましくは1nm以上であり、均一な密着性が得られる。メッキ密着層110の厚さに特に上限はないが、生産性の観点から2μm以下にすることが好ましい。
メッキ密着層110の成膜方法については、特に制限されることはなく公知のスパッタ法や蒸着法を用いることができる。スパッタ法は、スパッタ粒子が高エネルギーを持って基板表面に衝突して成膜されるので、密着性の高い膜を得ることができる。したがって、スパッタ法を用いることがより好ましい。
【0054】
次に、メッキ基板である第2基板111には、無電解メッキ、電解メッキのどちらでも適用することができる。無電解メッキの場合、材料としてはNiP合金メッキを用いることが好ましく、電解メッキの場合、材料としてはCuを用いることが好ましい。
第2基板111の厚さは、基板としての強度を保つために10μm以上とすることが好ましい。また、第2基板111が厚すぎるとメッキの剥離が起こりやすくなり、かつ生産性も低くなるので200μm以下とすることが好ましい。
【0055】
メッキを実施する際は、積層半導体104、メッキ密着層110等の表面を、汎用の中性洗剤等を用いて予め脱脂洗浄しておくことが好ましい。また、硝酸などの酸を用いてメッキ密着層110等の表面に化学エッチングを施すことにより、メッキ密着層110上の自然酸化膜を除去するのが好ましい。
【0056】
NiPメッキ等のメッキ処理方法としては、メッキ浴として、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケルなどのニッケル源と、次亜リン酸塩などのリン源を含むものを用いた無電解メッキ処理法を採用することができる。無電解メッキ法に用いられるメッキ浴として好適な市販品としては、上村工業製のニムデンHDXなどがある。無電解メッキ処理を行う際のメッキ浴のpHは4〜10、温度は30〜95℃とすることが好ましい。
また、CuまたはCu合金のメッキ処理方法としては、メッキ浴として、例えば硫酸銅などのCu源を用いる電解メッキ処理法を採用することができる。電気メッキ処理を行う際のメッキ浴のpHは2以下の強酸条件下で実施することが好ましい。温度は10〜50℃とすることが好ましく、常温(25℃)で実施することがより好ましい。電流密度は0.5〜10A/dmで実施することが好ましく、2〜4A/dmで実施することがより好ましい。
また、表面を平滑化させるためにレベリング剤を添加することがより好ましい。レベリング剤に用いられる市販品としては、例えば上村工業製のETN−1−AやETN−1−Bなどが用いられる。
【0057】
上述のようにして得られた第2基板111の密着性を向上させるため、熱処理を行っても良い。熱処理温度は100〜300℃の範囲とすることが、密着性向上の点から好ましい。熱処理温度を上述の範囲以上とすると、密着性がさらに向上する可能性はあるものの、オーミック性が低下してしまう虞があるので好ましくない。
【0058】
(レーザーリフトオフ工程)
次にレーザーリフトオフ工程では、第1基板101と積層半導体104との界面にレーザー光を照射して第1基板101を積層半導体104から剥離する。
第1基板101の剥離方法としては、研磨法、エッチング法、レーザリフトオフ法など公知の技術を何ら制限なく用いることが出来るが、本発明では第1基板101を再利用する観点から、第1基板101をそのまま剥離することが可能なレーザリフトオフ法を用いることが好ましい。
【0059】
レーザリフトオフ法を用いる場合は、KrFエキシマレーザ(波長248nm)、ArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いることが好ましい。
エキシマレーザを用いてレーザリフトオフ法を用いる場合、エキシマレーザの面状のレーザ光として照射されることが好ましい。面状のレーザ光は、その面内において均一なビームプロファイルを持つことが好ましい。面の形状は円形、四角形などどのような形も取りうるが、一般的に発光素子は正方形または長方形であるので、面の形状は四角形の方が好ましい。面の大きさは一辺の長さが100μm〜5mmであるが、発光素子の大きさや生産性を考えた場合、300μm〜2mmが好ましい。レーザのエネルギー密度は0.3〜5J/cmが好ましく、さらには、0.5〜2J/cmがより好ましい。
【0060】
図10には、積層半導体104とレーザ光Lの照射範囲との位置関係を第1基板側から見た平面図で示す。図10に示すように、面状のレーザ光Lの最外周部(斜線で示した四角形の外周部)が、分割された積層半導体104の分割された部分(半導体層のない部分)に照射されていることが好ましい。これは図11(A)に示すように、レーザ光Lの最外周部が積層半導体104上にあると、その部分でひずみが発生してしまい積層半導体104側にクラックK等の損傷が生じてしまうためである。図11(B)に示すようにレーザ光Lの最外周部の下に何もなければ、ひずみは発生しないので積層半導体104に損傷を与えることなく基板剥離を実施することができる。また、図11(C)に示すように、積層半導体104間の分割部分に少しでも半導体層104eが残っていると、レーザ光Lの最外周部でひずみが発生し積層半導体104にクラックK等の損傷を与えることになる。
【0061】
剥離後の第1基板101(サファイア基板)は、基板自体に損傷がなければ剥離した後、表面を平滑化させるための再研磨だけで再利用が可能である。ドライエッチングなどでは、分割部分から完全に半導体層の残さを除去すること、及び、サファイア基板に損傷を与えないようにすること、の両立が困難である。一方、本発明では、サファイア基板はほとんど加工されず、積層半導体104だけを完全に除去することができるので、この問題を容易に解決することができる。本発明を用いれば基板剥離後の第1基板101の表面を少なくとも1μm程度研磨すれば、第1基板101の再利用が可能になる。
【0062】
そして、第1基板101の剥離によって露出したn型半導体層104aに負極113を形成し、第2基板111には正極112を形成する。そして、第2基板111を素子毎に分割することによって、図12に示すような上下電極構造の発光素子114が得られる。
分割方法としてはレーザスクライブ法、ダイシング法など公知の技術を何ら制限なく用いることが出来る。
また、正極112はAu、Al、NiおよびCu等の材料を用いた各種構造が公知であり、これら公知の材料を何ら制限なく用いることが出来る。また、負極113としては、各種組成および構造の負極が公知であり、これら公知の負極を何ら制限なく用いることが出来る。
【0063】
「第2の実施形態」
本実施形態の発光素子の製造方法は、第1の基板上に、少なくともn型半導体層、発光層、及びp型半導体層を順次積層して半導体層を形成する半導体層形成工程と、該半導体層をブラスト加工することにより、前記半導体層を、前記ブラスト加工によって形成された傾斜面からなる側面を有する積層半導体とするサンドブラスト工程と、前記p型半導体層上あるいは該p型半導体層上に形成した電極層上に、導電体からなる第1の接合層を積層することにより、第1の積層体を形成する第1積層体形成工程と、導電性を有する第2の基板上に少なくとも導電体からなる第2の接合層を積層することにより、第2の積層体を形成する第2積層体形成工程と、第1の積層体と第2の積層体とを、第1の接合層と第2の接合層とを接合させることにより一体化させる接合工程と、第1の基板と積層半導体との界面にレーザー光を照射して前記第1の基板を前記積層半導体から剥離するレーザーリフトオフ工程とを少なくとも具備して構成されている。
【0064】
以下、各工程について順次説明するが、上記の各工程のうち、半導体形成工程、サンドブラスト加工工程及びレーザーリフトオフ工程については、第1の実施形態における各工程と同様の工程なので、説明を省略もしくは簡単に説明する。
【0065】
図13には、本実施形態の発光素子の製造方法の概略を示す。図13において、(A)〜(C)は製造手順のステップを示している。
図13において、ステップ(A)では、第1基板201上にn型半導体層、発光層およびp型半導体層が順次積層されてなるGaN系半導体からなる積層半導体204を形成し、さらにオーミックコンタクト層、反射層及び相互拡散防止層からなる機能層205を形成した後、最上層に金属からなる第1接合層206を形成し、第1積層体200とする。
また、第2基板(導電性基板)301上に、中間層302を形成した後、その中間層302上に第2接合層303を形成し、第2積層体300とする。
【0066】
第1接合層206と第2接合層303の接合界面の結晶構造、結晶方位が揃っているほど、接合時の安定性は高まるので接合強度が増加する。理想的には同一物質で同一結晶構造を有し結晶方位が面直方向、面内方向揃っていれば接合界面に結晶ひずみ等は発生しないのでバルク同等の強度が発生するものと考えられる。
したがって、第1接合層206と第2接合層303が実質的に同一物質であり、かつ、接合面直方向の結晶方位が同一であれば接合強度が増加するので好ましい。
さらに、第1接合層206と第2接合層303が同じ結晶構造を有し、かつ、接合面直方向と接合面内方向の結晶方位が共に同一であれば接合強度が増加するのでより好ましい。
さらに、第1接合層206と第2接合層303が同じ物質、同じ結晶構造を有し、かつ、接合面直方向と接合面内方向の結晶方位が共に同一であれば接合強度が増加するのでより好ましい。
実質的に同一物質とは、第1接合層206およびと第2接合層303における同一物質の濃度が50at%以上であり、かつ、同じ結晶構造を有し、その格子定数差が5%以内であると定義される。
さらに、第1接合層206と第2接合層303は結晶構造が同一で、第1接合層の格子定数と第2接合層303の格子定数の差が5%以内であることがより好ましい。
さらに、第1接合層206と第2接合層303が同一物質であれば、より好ましい。
例えば、第1接合層206がAu(111)面であれば、と第2接合層303がAu(111)であることが最も好ましい。
【0067】
次のステップ(B)では、第1積層体200と第2積層体300とを、第1接合層206と第2接合層303同士を接合させることにより一体化させる。
続いてステップ(C)では、第1積層体200から第1基板201を除去した後、電極(図示省略)を設けて、発光素子400とする。
なお、ここでは、第1積層体200に機能層205を設け、第2積層体300に中間層302を設けるようにしたが、機能層205および中間層302は、省くこともでき、必要に応じて適宜設けられる層である。後述するように、機能層205としてはオーミックコンタクト層、反射層、相互拡散防止層からなる積層体を用いることができ、中間層302としては配向調整層、相互拡散防止層、格子整合層からなる積層体を用いることができる。
【0068】
上記手順で製造されたGaN系半導体発光素子1は少なくとも、図13(C)に示すように、GaN系半導体からなる積層半導体204が積層され最上層に金属からなる第1接合層206を有する積層体200Aと、その第1接合層206に接合する第2接合層303とを有している。この第2接合層303は、第2基板301上に形成されているとともにその第2基板301が形成されている側とは反対側の面が第1接合層206と接合している。
【0069】
(半導体層形成工程〜第1積層体形成工程)
次に図14〜図18を参照して、サファイア単結晶からなる第1基板を用いて作成した、基板貼付け法のよる上下電極構造の発光素子およびその製造方法をより詳細に説明する。
図14は、第1積層体200の構成例の断面を模式的に示す図である。図中、サファイアからなる第1基板201上には、n型半導体層204a、発光層204b及びp型半導体層204cからなる積層半導体204と、オーミックコンタクト層205a、反射層205b及び相互拡散防止層205cからなる機能層205と、第1接合層206とが積層されて、第1積層体200を構成している。
【0070】
積層半導体204は、第1の実施形態の場合と同様に、n型半導体層204a、発光層204b及びp型半導体層204cを順次積層することにより形成することができる。
n型半導体層204a、発光層204b及びp型半導体層204cは何れもGaN系単結晶であるので、第1接合層206の結晶方位を制御するためには、オーミックコンタクト層205aおよび反射層205bの結晶方位も制御する必要性がある。
GaNの結晶構造はウルツ鉱構造であり、格子定数はa=3.16Å(0.316nm)、c=5.13Å(0.513nm)である。オーミックコンタクト層205aが接するp型半導体層204cはAlが添加されているので格子定数は変動するが、その添加量は多くとも10%程度であるので、格子定数はほぼa=3.16Å(0.316nm)といえる(AlNの結晶構造もウルツ鉱構造であり、格子定数はa=3.08Å(0.308nm)、c=4.93Å(0.493nm)であるので10%程度の添加量では格子定数はほとんど同じである。)。
【0071】
第1基板201をサファイア単結晶としたとき、その第1基板201上に積層されたGaN系単結晶からなる積層半導体204(n型半導体層204a、発光層204b、p型半導体層204c)は(00・1)配向であるので、その上に積層されるオーミックコンタクト層205a、反射層205b、第1接合層206は六方晶系の(00・1)面を有するか、面心立方晶系の(111)面を有していることが好ましい。
GaN系単結晶の(00・1)配向上に六方晶系の(00・1)面が配向するためには、格子定数の差が20%以内であることが好ましい。この範囲であれば接合面直方向に結晶方向を揃えることができる。GaNの格子定数がa=3.16Å(0.316nm)であるので、オーミックコンタクト層205a、反射層205b、第1接合層206に用いる六方晶系の格子定数は、a=2.53Å(0.253nm)〜3.79Å(0.379nm)が好ましい。なお、配向が(00・1)であるので格子定数cはどのような値をとっても構わない。
【0072】
積層半導体204はGaN系単結晶からなる半導体であるので、接合面内方向を見た場合、図15に示すように六角形が規則的に配列した構造になっている。したがって、接合面内方向に結晶方位を揃えるためには、もともと面内方向に結晶方位が揃っている単結晶を用いるのが好ましい。接合面内方向に結晶方位を揃えるため、接合面直方向同様、格子定数の差が20%以内であることが好ましい。なお、接合面内方向の結晶方位を揃えるとは、接合面内における規則的な結晶構造が維持されているということである。例えば、GaN単結晶は六方晶であるので、(00・1)面が配向した場合、面内方向では6回対象の規則性が維持されている。この場合、接合層においても、この6回対象の規則性が維持されることになる。
【0073】
面心立方晶系の(111)面は図15に示すように、六方晶系の(00・1)面と同じ配列の結晶面を取る。面心立方晶系の格子定数aの1/√2が六方晶系の格子定数aに相当する。六方晶系の場合と同様、格子定数の差が20%以内であることが好ましいので、オーミックコンタクト層205a、反射層205b、第1接合層206に用いる面心立方晶系の格子定数はa=3.58Å(0.358nm)〜5.36Å(0.536nm)が好ましい。この範囲であれば、GaN系単結晶を使用する上では、接合面直方向および接合面内方向の結晶方位を揃えることができる。
【0074】
なお、結晶面表記の中の「・」は、結晶面を表すミラーブラベー指数の省略形を示す。すなわち、結晶面を表わすのにGaNのような六方晶系では、通常(hkil)と4つの指数で表わすが、この中で「i」に関してはi=−(h+k)と定義されており、この「i」の部分を省略した形式では、(hk・l)と表記する。
【0075】
次に、オーミックコンタクト層205aに要求される性能としては、p型半導体層204cとの接触抵抗が小さいことが必須であるが、本発明においては、さらに結晶構造および格子定数が上述の範囲であることが好ましい。
オーミックコンタクト層205aの材料としては、p型半導体層204cとの接触抵抗の観点と結晶構造および格子定数の観点から、Pt(面心立方晶構造 a=3.93Å(0.393nm))、Ru(六方最密充填構造 a=2.70Å(0.270nm))、Re(六方最密充填構造 a=2.76Å(0.276nm))、Os(六方最密充填構造 a=2.74Å(0.274nm、))、Rh(面心立方晶構造 a=3.80Å(0.380nm))、Ir(面心立方晶構造 a=3.84Å(0.384nm))、Pd(面心立方晶構造 a=3.89Å(0.389nm))等の白金族、またはAg(面心立方晶構造 a=4.09Å(0.409nm))を用いることが好ましい。さらに好ましくは、Pt、Ir、Rh及びRuであり、Ptが特に好ましい。
【0076】
オーミックコンタクト層205aにAgを用いることは、良好な反射を得るためには好ましいが、接触抵抗はPtよりも大きい。したがって、接触抵抗がそれほど要求されない用途にはAgを用いることも可能である。
オーミックコンタクト層205aの厚さは、低接触抵抗を安定して得るために0.1nm以上とすることが好ましい。さらに好ましくは1nm以上であり、均一な接触抵抗が得られる。また、オーミックコンタクト層205aはAg合金等と比較すると反射率は低いので膜厚は30nm以下とすることが好ましい。さらに好ましくは10nm以下である。
【0077】
次に、反射層205bにはAg、Al(面心立方晶構造 a=4.05Å(0.405nm))等を用いることができる。また、Agには耐食性、耐温度性を向上させるためにMo、Cu、Ndなどを添加することが効果的である。添加量は何れの元素も5at%以下であるので格子定数は大きく変わらない。Alには平坦性を向上させるためにNdなどを添加することが効果的である。添加量は何れの元素も5at%以下であるので格子定数は大きく変わらない。
【0078】
次に、第1接合層206には格子構造および格子定数が、六方晶系でa=2.53Å(0.253nm)〜3.79Å(0.379nm)あるいは、面心立方晶系でa=3.58Å(0.358nm)〜5.36Å(0.536nm)であればどのような単体金属あるいは合金を使用しても構わないが、接合時に真空中で不活性ガスイオンビームまたは不活性ガス中性原子ビームを照射して容易に表面が活性化する金属であることが好ましい。なお、活性化するとは表面の不純物が取れダングリングボンドが剥き出しになっている状態を示す。金属は大気中では表面が酸化されていることが多いために、酸素との親和力が小さい方が容易に酸化皮膜を除去できる。したがって、貴金属を用いることが好ましい。
第1接合層206に用いられる金属としては、Au、Ag、Ir、Pt、Pd、Rh、Ru、Re、Cuなどの単体金属、あるいはこれらの金属をすくなくとも2種類以上含む合金であることが好ましい。
【0079】
反射層205bと第1接合層206との間には、反射層205bと第1接合層206との間の密着性向上や相互拡散防止のために相互拡散防止層205cを設けることが好ましいが、相互拡散防止層205cが特に無くてもよい。これらの層を設けるときにおいても、その層を構成する単体金属あるいは合金の格子構造および格子定数が、六方晶系でa=2.53Å(0.253nm)〜3.79Å(0.379nm)あるいは、面心立方晶系でa=3.58Å(0.358nm)〜5.36Å(0.536nm)である必要性がある。例えば、反射層205bにAg、第1接合層206にAuを用いた場合、AgとAuは全率固溶するので相互拡散が生じてしまう。これを防ぐために、相互拡散防止層205cとしてPt、Ru、Re、Os、Rh、Ir、Pd、Ti(六方最密充填構造 a=2.95Å(0.295nm))、Hf(六方最密充填構造 a=3.20Å(0.320nm))、Zr(六方最密充填構造 a=3.23Å(0.323nm))などを用いることができる。
【0080】
積層半導体204に対するサンドブラスト加工は、p型半導体層304cまで積層した状態で実施しても良いし、第1接合層206を形成した後でも構わない。また、この途中の工程で実施しても構わない。具体的な加工方法は、第1の実施形態の場合と同様にすればよい。
サンドブラスト加工による傾斜面204dの形状は、傾斜していれば、どのような形状でも構わない。例えば、テーパー面状でもよく、単斜面状でもよい。傾斜角度は20°〜70°の範囲が光取り出し効率がより向上するので好ましい。
【0081】
(第2積層体形成工程)
図16には、第2積層体300の構成例の断面を模式的に示す。図中、導電性を有する第2基板301上には、アモルファス層または格子整合層302と、第2接合層303とが順に積層されて、第2積層体300を構成している。なお、格子整合層または配向調整層302は、第2基板301と第2接合層303との格子整合性が確保されていれば特に設ける必要はない。
第2基板301には導電性を有すればどのような物質を用いることができるが、金属または導電性を有するシリコンを用いることが好ましい。金属であればどのような物質を用いることができるが、熱伝導率の高いCuまたはCu合金を用いることが好ましい。シリコンは熱伝導率ではCuなどの金属に劣るが、シリコン(111)を使用すると結晶配向性を制御しやすいこと、GaN系半導体発光素子を素子に分割する際の加工性の良さなどの利点を有している。
【0082】
第2基板301に金属単結晶基板を用いることも可能であるが、コストが高くなってしまう。したがって、多結晶で結晶方位の揃っていない金属基板を使用することが好ましい。しかしながら、多結晶で結晶方位の揃っていない金属基板に直接、第2接合層303を形成すると金属の結晶面の影響をうけてしまい、六方晶系の(00・1)面または、面心立方晶系の(111)面を優先的に成長させることができない。
多結晶で結晶方位の揃っていない金属基板の影響を抑えるためには、第2接合層303を形成する前に、アモルファス層302を形成することが好ましい。アモルファス層302には、アモルファス化する金属であればどのような物質を使用することも可能であるが、第2接合層302の六方晶系の(00・1)面または、面心立方晶系の(111)面を優先的に成長させる特性を有していることが好ましい。
具体的には、Co、NiおよびFeから選ばれる何れか1種類以上と、W、Mo、TaおよびNbから選ばれる何れか1種類以上とを含むこと金属であるか、RuおよびReから選ばれる何れか1種類以上と、W、Mo、TaおよびNbから選ばれる何れか1種類以上とを含むこと金属であることが好ましい。
さらに具体的は、CoW系合金、CoMo系合金、CoTa系合金、CoNb系合金、NiW系合金、NiMo系合金、NiTa系合金、NiNb系合金、FeW系合金、FeMo系合金、FeTa系合金、FeNb系合金、RuW系合金、RuMo系合金、RuTa系合金、RuNb系合金、ReW系合金、ReMo系合金、ReTa系合金、ReNb系合金であることが好ましい。
【0083】
第2接合層303には第1接合層206と同様の理由で、Au、Ag、Ir、Pt、Pd、Rh、Ru,Re、Cuなどの単体金属あるいは、これら金属をすくなくとも2種類以上含む合金であることが好ましい。
【0084】
アモルファス層302と第2接合層303との間には、第2接合層303の結晶性を高めるために、結晶性向上層を設けても良い。しかしながらこれらの層を設けるときにおいても、その層を構成する単体金属あるいは合金の格子構造および格子定数が、六方晶系でa=2.53Å(0.253nm)〜3.79Å(0.379nm)あるいは、面心立方晶系でa=3.58Å(0.358nm)〜5.36Å(0.536nm)である必要性がある。結晶性向上層にはPt、Ru、Re、Os、Rh、Ir、Pd、Ti、Hf、Zrなどもちいることができるが、特にPtを用いることが良好な(111)が得られるので好ましい。
【0085】
アモルファス層302を用いた場合、面直方向の結晶性を制御することは可能であるが、面内方向の結晶性を制御することはできない。面直方向に加えて、面内方向の結晶性を制御することにより、さらに接合強度を向上させることができる。
面直方向と面内方向の制御は第2基板として単結晶基板を用いることにより可能であるが、第1接合層206との接合を考えるとシリコン単結晶の(111)面を用いることが好ましい。
導電性を有するシリコン単結晶の(111)面を用いる場合、シリコン単結晶の(111)面の原子配列は、GaN(00・1)面の原子配列と同じであるので、Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Rh,Cu,Ir等の面心立方構造(111)面、Ru,Re等の六法最密充填の(00・1)を配向させやすい。しかしながら、面心立方構造のAuの格子定数aが4.08Å(0.408nm)に対して、Siの格子定数aは5.43Å(0.543nm)と25%もずれているために、面心立方構造の(111)面を配向させることは容易ではない。Ru,Re等の六法最密充填に関しても格子定数が大きくことなるために(00・1)を配向させることは容易ではない。
Au,Ag,Cu,Pt,Pd,Rh,Cu,Ir等の面心立方構造(111)面、Ru,Re等の六法最密充填の(00・1)をSi(111)上に成長させるためには、2つの手法がある。
【0086】
一つの手法は、(111)面を有するシリコン単結晶基板をRCA洗浄等で十分に基板表面を洗浄したのちに、希フッ酸などで表面を水素終端させ、その後、超高真空を有する成膜装置を用いて成膜することである。希フッ酸の濃度は0.1〜2質量%程度が好ましく、1〜20分程度の処理をすることにより、(111)面を有するシリコン単結晶基板表面を水素終端化させることができる。なお、RCA洗浄は表面酸化膜を均一にする働きがあり、水素終端化後のSi単結晶表面をより平坦化できるので好ましい。成膜中に酸素、窒素などの不純物ガスあるときれいな洗浄面が保たれないので、真空装置の到達真空度は高いほう好ましい。到達真空度は1.0×10−4〜1.0×10−8Paが好ましく。さらには、5.0×10−5〜1.0×10−6Paが好ましい。高真空であればあるほど、エピタキシャル成長はしやすくなるが、真空装置で1.0×10−8Paを達成するためには、大きな排気量をもつ排気系を備えたり、長時間真空装置をベーキングしなければならないなど効率性に欠ける。(111)面を有するシリコン単結晶基板表面が水素終端されていれば、1.0×10−4Paよりも高真空、より好ましくは5.0×10−5Paより高真空であれば、良好なエピタキシャル成長を実現することができる。
【0087】
AgはSiとはシリサイドを形成しないので、最も容易に、(111)面を有するシリコン単結晶基板表面上に良好なエピタキシャル成長を実現することができる。
(111)面を有するシリコン単結晶基板表面上にAgを成膜する場合、そのままでも第2接合層303として使用できるが、第2接合層303としてはより酸化されにくいAuを用いることがより好ましい。この場合、AgとAuは全率固溶するので相互拡散が生じてしまう。これを防ぐために、相互拡散防止層としてPt、Ru、Re、Os、Rh、Ir、Pd、Ti(六方最密充填構造 a=2.95Å(0.295nm))、Hf(六方最密充填構造 a=3.20Å(0.320nm))、Zr(六方最密充填構造 a=3.23Å(0.323nm))などを用いることができる。
【0088】
もう一つの手法としては、格子整合層を用いることである。
格子整合層は、六方最密充填構造を有し、Si(111)面の対応する一辺の長さa/√2の3.84Å(0.384nm)とのずれが20%以内であることが、Si(111)面上に六方最密充填構造の(00・1)が配向するので好ましい。またSiは単結晶を使用するので、格子定数の差が20%以内であれば、接合面内方向に結晶方位を揃えることができる。
格子整合層としては、Hf(六方最密充填構造、a=3.20Å(0.320nm))、Mg(六方最密充填構造、a=3.21Å(0.321nm))、Zr(六方最密充填構造、a=3.23Å(0.323nm))を用いることがSi(111)面の対応する一辺の長さa/√2の3.84Å(0.384nm)とのずれが20%以内であるので好ましい。
【0089】
格子整合層を成膜する前に、Si基板上から表面酸化膜を除去することが好ましい。表面酸化膜が存在するとSi(111)面を反映した結晶成長が著しく阻害されるのを除去することができる。表面酸化膜を除去する方法としては真空装置内でバイアスエッチング等の方法を用いることが好ましい。
また、格子整合層として、Hf,Mg,Zrを用いた場合、格子整合層Hf,Mg,Zrの(00・1)配向上に六方晶系の(00・1)面が配向するためには、格子定数の差が20%以内であることが好ましい。この範囲であれば接合面直方向に結晶方向を揃えることができる。したがって、接合層2に用いる六方晶系の格子定数はa=2.58Å(0.258nm)〜3.84Å(0.384nm)が好ましい。なお、配向が(00・1)であるので格子定数cはどのような値をとっても構わない。
【0090】
面心立方晶系の(111)面は図15に示すように、六方晶系の(00・1)面と同じ配列の結晶面を取る。面心立方晶系の格子定数aの1/√2が六方晶系の格子定数aに相当する。六方晶系の場合と同様、格子定数の差が20%以内であることが好ましいので、第2接合層303に用いる面心立方晶系の格子定数はa=3.65Å(0.365nm)〜5.42Å(0.542nm)が好ましい。この範囲であれば、格子整合層上に、接合面直および接合面内の結晶方位を揃えることができる。
【0091】
格子整合層を用いた場合でも第2接合層303には、Au、Ag、Ir、Pt、Pd、Rh、Ru,Re、Cuなどの単体金属あるいは、これら金属をすくなくとも2種類以上含む合金であることが好ましいが、格子整合層との配向性を考えると、Au、Ag、Ir、Pt、Pd、Rh、Ru,Re、などの単体金属あるいは、これら金属をすくなくとも2種類以上含む合金であることがさらに好ましい。
【0092】
(接合工程)
図17は、第1積層体200と第2積層体300を接合する工程を説明する模式図である。2つの基板ホルダー401、401の各々に接合させようとする接合サンプル(第1積層体200、第2積層体300)を添着し、各接合サンプルの表面(第1接合層206の接合面、第2接合層303の接合面)に向けて、不活性ガスビーム源403から不活性ガスイオンビームまたは不活性ガス中性原子ビームを照射し、その後接合サンプルの各々の接合面を重ね合わせる。
接合方法は真空中で各接合層206、303の表面が活性化された状態(ダングリングボンドが剥き出しになった状態)で接合する方法であれば、どのような方法を用いることも可能であるが、上記のように、不活性ガスイオンビームまたは不活性ガス中性原子ビームを照射した後、接合面を重ね合わせることが好ましい。
【0093】
不活性ガスイオンビームまたは不活性ガス中性原子ビームを照射した後、接合面を重ね合わせるまでには一定時間(例えば1秒〜60秒)を要するので、ガスの再付着による各接合層206、303の表面の汚染が心配される。このために、真空装置内の到達真空度は、10−4Pa以下として不純物ガス量を低減させることが好ましい。さらに好ましくは10−5Pa以下である。
接合時には加圧することが接合強度を向上させるので好ましい。加圧の圧力は0.1〜100MPaであることが好ましい。0.1MPa未満では圧力が弱すぎて十分な接合強度を得られない。100MPaを超えると、基板を損傷する恐れがある。さらに好ましくは1〜10MPaである。
不活性ガスには、不活性であればどのようなガスを使用することも可能であるが、He、Ne、Ar、Kr、Xeを用いることが好ましい。特にArは低コストで入手できるので、さらに好ましい。
接合時、あるいは接合後に加温することは接合強度を上げるために好ましい。但し、第1基板201がサファイアで、第2基板301がシリコン単結晶または金属の場合、サファイアとシリコンまたは金属は熱膨張係数差が大きいので200℃以下であることが好ましい。
【0094】
(レーザーリフトオフ工程)
レーザーリフトオフ工程では、第1基板201と積層半導体204との界面にレーザー光を照射して第1基板201を積層半導体204から剥離する。
第1基板201の剥離方法としては、研磨法、エッチング法、レーザリフトオフ法など公知の技術を何ら制限なく用いることが出来るが、本発明では第1基板201を再利用する観点から、第1基板201をそのまま剥離することが可能なレーザリフトオフ法を用いることが好ましい。
レーザーリフトオフ法の具体的な手順は、第1の実施形態の場合と同様に行えばよい。
【0095】
そして、第1基板201の剥離によって露出したn型半導体層204aに負極208を形成し、第2基板301には正極207を形成する。そして、第2基板301を素子毎に分割することによって、図18に示すような上下電極構造の発光素子400が得られる。
分割方法としてはレーザスクライブ法、ダイシング法など公知の技術を何ら制限なく用いることが出来る。
また、正極207はAu、Al、NiおよびCu等の材料を用いた各種構造が公知であり、これら公知の材料を何ら制限なく用いることが出来る。また、負極208としては、各種組成および構造の負極が公知であり、これら公知の負極を何ら制限なく用いることが出来る。
【0096】
次に、上記の発光素子400を用いてランプを構成した場合について説明する。
図19は本発明に係るランプ(砲弾型)の一例を模式的に示した断面図である。図19に示すランプは、図18に示す上下電極型の発光素子1605を実装したものであり、この発光素子1605を用いたこと以外は従来公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば2本のフレーム1602A、1602Bのうち、フレーム1602Bに発光素子1605の正極を銀ペーストなどの導電性接着材で接着し、発光素子1605の負極を金からなるワイヤー1603でフレーム1602Aに接合した後、透明な樹脂からなるモールド1604で発光素子1605の周辺をモールドすることにより作成することができる。
【0097】
以上説明したように、本発明の実施形態である発光素子114、400の製造方法によれば、発光層104b、204bを含む積層半導体104、204の側面を傾斜面104d、204dとすることができ、光取り出し効率が向上した発光素子114、400を製造できるとともに、生産性を向上することができる。
また、積層半導体104、204を形成する際の基板として、半導体層よりも高いビッカース硬度を有する第1基板101、201を用いるので、サンドブラスト加工を行った際に第1基板101、201が損傷を受ける虞が無く、これにより第1基板101、201を再利用することができる。
以上により、発光特性に優れた発光素子114、400を安価に製造することができる。
【実施例】
【0098】
(実施例1)
以下に説明するように、図18に示す上下電極構造の発光素子を製造し、発光出力を測定した。
まず、サファイア単結晶からなる第1基板上に、AlNからなるバッファ層を形成し、このバッファ層上に窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体からなる半導体層を形成した。この半導体層は、厚さ4μmのアンドープGaNからなる下地層と、厚さ2μmのGeドープn型GaNコンタクト層および厚さ0.02μmのn型In0.1Ga0.9Nクラッド層がこの順序で積層されたn型半導体層と、厚さ16nmのSiドープGaN障壁層および厚さ2.5nmのIn0.06Ga0.94N井戸層を5回積層し、最後に障壁層を設けた多重量子井戸構造の発光層と、厚さ0.01μmのMgドープp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層と厚さ0.18μmのMgドープp型Al0.02Ga0.98Nコンタクト層がこの順序で積層されたp型半導体層とを順次積層することにより形成した。
この構造において、n型GaNコンタクト層のキャリア濃度は1×1019cm-3であり、GaN障壁層のSiドープ量は1×1017cm-3であり、p型AlGaNコンタクト層のキャリア濃度は5×1018cm-3であり、p型AlGaNクラッド層のMgドープ量は5×1019cm-3であった。
また、半導体層の各層の積層は、MOCVD法により、当該技術分野においてよく知られた通常の条件で行なった。
【0099】
次に、p型半導体層上に、厚さ1.5nmのPt層を、オーミックコンタクト層としてスパッタ法により成膜した。
次に、反射層として厚み20nmのAg層と、相互拡散防止層として20nmのPt層と、第1接合層として20nmのAu層とを、この順番でスパッタ法により成膜することにより、第1積層体を形成した。
【0100】
次にサンドブラスト法を用いて、半導体層を、傾斜面を有する積層半導体に加工した。
まず最初に、レジストフィルム(東京応化製BF45Z)を半導体層の表面に密着させた。次に、露光機を用いてレジストフィルムを所定のパターンで露光した。次に、350μm角の格子状パターンを残してレジストフィルムを除去した。格子状パターンの間隔は50μmとした。そして、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像を実施した。
次に、サンドブラスト装置を用いて平均粒径20μmのホワイトアランダム(ビッカース硬度2000)を用いてブラスト加工を実施した。その後、超音波洗浄にてレジストフィルムおよびブラスト粒子残渣を除去した。
以上のようにして、傾斜面を有する積層半導体を形成した。
【0101】
ブラスト加工を施した積層半導体の断面SEM写真を図20に示し、平面SEM写真を図21に示す。図20に示すように、第1基板301上の半導体層302に、傾斜角度45度の傾斜面が形成できていることがわかる。
【0102】
次に、表面に(111)面を有するSi単結晶からなる第2基板を用意し、この第2基板に、50nmのAg層と、20nmのPt層と、第2の接合層として20nmのAu層とを、この順でスパッタにより成膜した。このようにして第2積層体を形成した。なお、Si基板(第2基板)にAgを成膜する前に、RCA洗浄を実施し、希フッ酸(0.5質量%)を用いて10分間処理した。また、スパッタ装置の到達真空度は1.0×10−5Paとした。
【0103】
次に、第1積層体と第2積層体とを真空装置内で、第1接合層と第2接合層との各接合面を重ね合わせて接合させた。このときの、真空装置内の到達真空度は1.0×10-5Paとし、各接合面にArガス中性原子ビームを1分間照射した後、5MPaの圧力で加圧して接合させた。なお、接合時および接合前後には加温処理は施さなかった。
次に、第1積層体と第2積層体との接合体に対してレーザリフトオフ法を適用して、第1基板を除去した。レーザリフトオフ法にはArFエキシマレーザを用い、1ショットあたりのレーザ照射面積を700μm×700μmとして、1000mJ/cm2のエネルギー密度で実施した。
【0104】
次に、ドライエッチング法により、AlNからなるバッファ層、およびアンドープGaNからなる下地層を除去して、n型半導体層を露出させた。
次いで、n型半導体層の表面上の中央部に、Cr(40nm)、Ti(100nm)、Au(1000nm)からなる負極を蒸着法により成膜した。負極のパターンは、公知のフォトリソグラフィー技術及びリフトオフ技術を用いた。
また、第2基板の表面上には、Au(1000nm)からなる正極を蒸着法により成膜した。
そして、ダイシングにより分割し、図18に示すような350μm角の発光素子とした。
【0105】
得られた発光素子について、TO−18缶パッケージに実装して、テスターによって印加電流20mAにおける発光出力を測定した。その結果、Vfは3.1Vであり、Poは18mWであった。
【0106】
(比較例1)
半導体層に対する加工として、サンドブラスト法に代えて、公知のフォトリソグラフィー法を用いたこと以外は実施例1と同様にして発光素子を作製し、実施例1と同様に評価した。
得られた発光素子について、TO−18缶パッケージに実装して、テスターによって印加電流20mAにおける発光出力を測定した。その結果、Vfは3.1Vであり、Poは14mWであり、Poが実施例1よりも低くなった。
【0107】
(実施例2)
10枚の第1基板を用いて実施例1の半導体発光素子を作製し、第1基板(サファイア)へのダメージ、半導体発光素子へのクラックを顕微鏡観察により調査した。
(比較例2)
10枚の第1基板を用いて比較例1の半導体発光素子を作製し、第1基板(サファイア)へのダメージ、半導体発光素子へのクラックを顕微鏡観察により調査した。
【0108】
実施例2においては、10枚の基板全てにおいて、サファイアへのダメージがなく、発光素子に対するクラックの発生もなかった。一方、比較例2においては、10枚の基板のうち、4枚の基板についてサファイアへのダメージが観察された。また、5枚の基板について発光素子へのクラックが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法を説明する断面工程図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法を説明する断面工程図である。
【図3】図3は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法を説明する断面工程図である。
【図4】図4は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法を説明する断面工程図である。
【図5】図5は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法におけるサンドブラスト工程を説明する断面模式図である。
【図6】図6は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法におけるサンドブラスト工程を説明する断面模式図である。
【図7】図7は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法を説明する断面工程図である。
【図8】図8は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法を説明する断面工程図である。
【図9】図9は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法を説明する断面工程図である。
【図10】図10は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法におけるレーザーリフトオフ工程を説明する平面模式図である。
【図11】図11は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法におけるレーザーリフトオフ工程を説明する断面模式図である。
【図12】図12は、本発明の第1の実施形態である発光素子の製造方法によって製造された発光素子を示す断面模式図である。
【図13】図13は、本発明の第2の実施形態である発光素子の製造方法を説明する工程図である。
【図14】図14は、本発明の第2の実施形態である発光素子の製造方法を説明する図であって、第1の積層体を示す断面模式図である。
【図15】図15は、本発明の第2の実施形態である発光素子の製造方法を説明する図であって、結晶構造を説明する模式図である。
【図16】図16は、本発明の第2の実施形態である発光素子の製造方法を説明する図であって、第2の積層体を示す断面模式図である。
【図17】図17は、本発明の第2の実施形態である発光素子の製造方法のおける接合工程を説明する模式図である。
【図18】図18は、本発明の第2の実施形態である発光素子の製造方法によって製造された発光素子を示す断面模式図である。
【図19】図19は、発光素子を備えたランプを示す断面模式図である。
【図20】図20は、実施例1におけるサンドブラスト工程後の積層半導体を示す断面SEM写真である。
【図21】図21は、実施例1におけるサンドブラスト工程後の積層半導体を示す平面SEM写真である。
【符号の説明】
【0110】
101,201…第1基板(第1の基板)、102,202…半導体層、102a、104a…n型半導体層、102b,104b…発光層、102c,104c…p型半導体層、104,204…積層半導体、104d、204d…傾斜面(側面)、111,301…第2基板(第2の基板)、114,400…発光素子(窒化物系半導体発光素子)、200…第1積層体(第1の積層体)、206…第1接合層(第1の接合層)、300…第2積層体(第2の積層体)、303…第2接合層(第2の接合層)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化物系半導体からなる半導体層を基板上に積層する窒化物系半導体発光素子の製造方法であって、
第1の基板上に、少なくともn型半導体層、発光層、及びp型半導体層を順次積層して半導体層を形成した後、該半導体層をブラスト加工することにより、前記半導体層を、前記ブラスト加工によって形成された傾斜面からなる側面を有する積層半導体とする工程と、
前記積層半導体上に第2の基板を設けた後、前記第1の基板と前記積層半導体との界面にレーザー光を照射して前記第1の基板を前記積層半導体から剥離する工程とを少なくとも備え、
前記第1の基板として、前記半導体層よりも高いビッカース硬度を有する基板を用いることを特徴とする窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項2】
窒化物系半導体からなる半導体層を基板上に積層する窒化物系半導体発光素子の製造方法であって、
第1の基板上に、少なくともn型半導体層、発光層、及びp型半導体層を順次積層して半導体層を形成した後、該半導体層をブラスト加工することにより、前記半導体層を、前記ブラスト加工によって形成された傾斜面からなる側面を有する積層半導体とし、前記p型半導体層上あるいは該p型半導体層上に形成した電極層上に、導電体からなる第1の接合層を積層することにより、第1の積層体を形成する工程と、
導電性を有する第2の基板上に少なくとも導電体からなる第2の接合層を積層することにより、第2の積層体を形成する工程と、
前記第1の積層体と第2の積層体とを、前記第1の接合層と第2の接合層とを接合させることにより一体化させる工程と、
前記第1の基板と前記積層半導体との界面にレーザー光を照射して前記第1の基板を前記積層半導体から剥離する工程とを少なくとも備え、
前記第1の基板として、前記半導体層よりも高いビッカース硬度を有する基板を用いることを特徴とする窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項3】
前記積層半導体から剥離した第1の基板を、前記半導体層を形成する際の基板として再利用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項4】
前記半導体層のビッカース硬度を、前記第1の基板のビッカース硬度の90%以下としたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項5】
前記ブラスト加工を、前記第1の基板よりもビッカース硬度が低いブラスト粒子を用いて行なうことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項6】
前記ブラスト加工を、平均粒径が5〜50μmの範囲のブラスト粒子を用いて行なうことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項7】
前記ブラスト粒子は、アルミナ又はシリコンを主成分としてなるものであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項8】
前記ブラスト加工は、前記半導体層側にレジストでパターニングを施して行うことを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項9】
前記第1の基板がサファイアであることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項10】
前記半導体層をなす窒化物系半導体がGaN系半導体であることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の窒化物系半導体発光素子の製造方法によって製造された窒化物系半導体発光素子。
【請求項12】
請求項11に記載の窒化物系半導体発光素子を備えたことを特徴とするランプ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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