説明

立体照明内視鏡システム

【課題】スコープとプロセッサの着脱容易性を保ったまま装置を大型化せずに、観察部位を照明する明るさまたは照度分布に偏り等を発生させて立体視を容易にする内視鏡システムを提供する。
【解決手段】内視鏡プロセッサに着脱自在に接続される電子スコープを備え、該内視鏡プロセッサの光源装置から発せられた照明光を、電子スコープ内に挿通されたライトガイドを介して体内挿入部先端部から観察対象物に照射する立体照明内視鏡システムであって、前記光ファイバ束は複数の光ファイバ束からなり、各光ファイバ束は、互いに隣接して配置された前記照明光が入射する入射端面と、該入射した照明光を前記体内挿入部先端部から射出する互いに離反して配置された射出端面を備え、該各光ファイバ束の入射端面に入射する照明光の光量が不均等になるように前記入射端面への入射光量を調整する光量調整手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセッサ等に内蔵される光源からの照明光を体内挿入部先端部から照射する立体照明内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡システムの照明装置は、接続された電子スコープ内に収納されたライトガイドを介して体内挿入部先端部から射出させる照明光が、観察部位の被写体に均等に当たるように設計され、調整されていた。つまり、患部に明暗ができないように照明していた。このような均等照明装置では、画像の中央の患部に微妙な変異部があっても影ができないのでその変異部を発見し難く、変異部の程度の診断が容易ではなかった。従来、その対応策として、ライトガイドを光源の光軸に対して平行(光軸と直交する方向)にずらせる方法(特許文献1)や、光ファイバ束で構成されるライトガイドの光ファイバの束ね方を工夫したもの(特許文献2)が提案されている。
【特許文献1】特開2000‐199864号公報
【特許文献2】特開昭64‐70720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の方法によると、ライトガイドを光軸と平行にずらせるなど、光源装置、周辺装置が大きくなり、特許文献2に記載の方法は光ファイバの束ね方が複雑であり、実用的ではなかった。
【0004】
本発明は、スコープとプロセッサの着脱容易性を保ったまま装置を大型化せずに、観察部位を照明する明るさまたは照度分布に偏り等を発生させて患部に陰影を生じさせて立体視を容易にする内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決する本発明は、内視鏡プロセッサに着脱自在に接続される電子スコープを備え、該内視鏡プロセッサの光源装置から発せられた照明光を、電子スコープ内に挿通されたライトガイドを介して体内挿入部先端部から観察対象物に照射する立体照明内視鏡システムであって、前記ライトガイドは複数の光ファイバ束からなり、各光ファイバ束は、前記照明光が入射する互いに隣接して配置された入射端面と、該入射した照明光が射出する、互いに離反して配置された前記体内挿入部先端部の射出端面を備え、該各光ファイバ束の入射端面に入射する照明光の光量が不均等になるように入射光量比を規制し、かつ各入射端面への入射光量を調整する光量比調整手段を備えたこと、に特徴を有する。
【0006】
前記ライトガイドは一対の光ファイバ束からなり、各光ファイバ束の入射端面は、全体として略円形となるように略半円形に形成され、かつ略半円形が照明光の入射方向に対して縦方向に位置するように配置することが好ましい。別の実施形態では、各光ファイバ束の入射端面は、照明光の入射方向に対して縦方向に位置するように密着配置したときに全体として多角形を呈するようにそれぞれが前記多角形を二分割した形状に形成される。そうして前記一対の光ファイバ束の各射出端面は、電子スコープの体内挿入部先端部に配置された撮像手段を挟んで配置することが好ましい。
【0007】
好ましい実施形態において、前記光源は照明光として平行光束を射出し、前記光量比調整手段は、光源装置と前記入射端面の間に配置された一対の絞り板からなり、該絞り板は、前記光源と入射端面との間の光路外の端部が光路と平行な軸により揺動自在に軸支され、該軸を中心とした揺動により該軸側に狭い開口を形成し、自由端側に広い開口を形成して、狭い開口を通過した光束が前記一方の入射端面に入射し、広い開口を通過した光束が他方の入射端面に入射するように形成する。この場合、前記一対の絞り板の軸は、上記照明光の入射方向に対して縦方向の光路外に配置することが好ましい。
【0008】
さらに別の実施形態では、前記光源装置は、平行光束を射出する光源ランプおよび該光源ランプから発せられた平行光束を集束させる集光レンズを備え、前記光量比調整手段は、前記集光レンズに対して前記各光ファイバ束の入射端面を接離移動させる。
【0009】
さらにこの実施形態における前記各光ファイバ束は、前記各光ファイバ束は、前記各光ファイバ束の入射端面近傍に嵌合固定されたライトガイド外装筒と、前記光源側に設けられた、前記ライトガイド外装筒が着脱自在に差し込まれるガイド案内筒と、該ガイド案内筒およびライトガイド外装筒の一方に長手方向に沿って所定間隔で設けられた凹凸と、他方に設けられた前記いずれかの凹部または凸部に弾性的に係合して前記ライトガイド外装筒を位置決め係止する係止部材とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、観察部位を照明する照明の明るさまたは照度分布が観察画面を挟んで異なるので、立体的な被写体に明暗または影が発生し、また凹凸の形状、程度が明瞭になって立体視が容易になる。また本発明は、光ファイバ束の簡単な配列変更によって形成できるので、製造が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の最良の形態について、添付図面を参照してより詳細に説明する。図1は、本発明を適用した電子内視鏡システムのブロック図である。この電子内視鏡システムは、電子スコープ11、電子スコープ11が着脱可能なプロセッサ31およびプロセッサ31に接続されたモニタディスプレイ61を備えている。電子スコープ11で撮像して得られた撮像信号をプロセッサ31において信号処理し、プロセッサ31に接続したモニタディスプレイ61によって画像を表示し、プロセッサに内蔵または接続した記憶媒体に記憶し、またはプロセッサ31に接続したプリンタ(図示せず)によって画像を印刷するように構成されている。
【0012】
電子スコープ11は、患者の体腔内に挿入される体内挿入部12と、詳細は図示しないが湾曲操作ノブ、撮影操作スイッチ等を備えた操作部、およびコネクタ部21を備え、コネクタ部21を介してプロセッサ31に着脱自在に接続される。
【0013】
体内挿入部12の先端部内には、CCDイメージセンサ13および対物レンズ(撮影レンズ)14を備えた撮像手段が配置されている。患部の像が対物レンズ14によってCCDイメージセンサ13上に形成される。体内挿入部12内にはさらに、それぞれが多数の光ファイバからなる一対の光ファイバ束15、16で構成されるライトガイドが挿通されていて、一対の光ファイバ束15、16の射出端面15a、16aが、CCDイメージセンサ13を挟んで左右(または上下)に相当する位置に配置されている。光ファイバ束15、16の射出端面15a、16aの前方には、対物レンズ14を挟んで配光レンズ17、18が配置されている。配光レンズ17、18は、射出端面15a、16aから射出された照明光を所定の配光特性で拡散させる。なお、対物レンズ14、配光レンズ17、18は、体内挿入部12の外筒先端面に形成された撮影開口および一対の照明口を密閉するように装着されている。さらに体内挿入部12の先端面には、通常、鉗子等を出し入れする鉗子口等も形成されている。
【0014】
光ファイバ束15、16の他方の端部はそれぞれ、入射端面15b、16bが半円形を呈し、照明光の入射方向に対して縦方向に位置しかつ全体として円形を呈するるように束ねられて、電子スコープ11のコネクタ部21内に固定されている。そうして、コネクタ部21がプロセッサ31のコネクタに接続されたときに、各入射端面15b、16bが、光源装置51の集光レンズ54の焦点よりやや遠方に位置するように構成されている。光源装置51の光源ランプ53と集光レンズ54との間には、絞り装置55が配置されている。なお、光ファイバ束15、16の各入射端面は半円形とするのが製造効率上好ましいが、照明光の入射方向に対して縦方向に位置するように密着配置したときに全体として多角形を呈するようにそれぞれが前記多角形を二分割した形状となるように形成してもよい。この場合は全体として略正多角形になるようにすることが好ましい。
【0015】
絞り装置55は、光源ランプ53から射出された平行光束が入射端面15b、16bに入射する光量を調整する光量調整機能と共に、各入射端面15b、16bに入射する光量を異ならせる光量比調整機能を備えている。この絞り装置55は、絞り制御部56を介してCPU39によって駆動制御される。
【0016】
以上の構成により光源装置51の光源ランプ53から発せられた光は、集光レンズ54によって収束されて、入射端面15b、16bから照明光として入射し、光ファイバ束15、16内を導かれて、射出端面15a、16aから射出し、配光レンズ17、18によって所定の配光特性で拡散されて、観察対象物、例えば患者の体腔内を照明する。
【0017】
CCDイメージセンサ13には駆動信号線19および映像信号線20が接続されていて、これらの信号線19、20は、体内挿入部12内を引き回され、コネクタ部21内の駆動信号ピン19a、映像信号ピン20aに接続されている。これらの信号ピン19a、20aは、プロセッサ31のコネクタ受け32内の対応する駆動、映像信号ピン33a、34aに接続され、さらに駆動、映像信号ピン33a、34aに接続された駆動、映像信号線33、34を介して、駆動信号線33はCCD駆動回路35に、映像信号線34は初段処理回路((CDSAGC)(Correlated Double Sampling and Auto Gain Controller))36に接続される。CCDイメージセンサ13は、CCD駆動回路35から出力され、駆動信号線33、19を介して入力されるCCD駆動信号によって撮像動作する。
【0018】
CCDイメージセンサ13は、光ファイバ束15、16から射出され、配光レンズ17、18によって所定の配光特性の照明光によって照明された体腔内を撮像して、映像信号を映像信号線20を介してコネクタ部20を介して出力する。コネクタ部20から映像信号線34を介して初段処理回路36に入力された映像信号は、相関二重サンプリング、オートゲインコントロールなど所定のアナログ処理が施されてからデジタル信号に変換され、DSP37でγ補正等の所定のデジタル処理が施され、画像処理回路38によってさらに所定のフォーマットへの変換、アナログビデオ信号等に変換処理され、モニタディスプレイ61に動画または静止画として表示される。さらに、画像処理回路38によって所定のフォーマットのデジタル信号に変換された画像信号は、使用者の操作等に応じて記録媒体に記録される。
【0019】
プロセッサ31は、内視鏡システム全体を制御するCPU39を内蔵していて、このCPU39、プロセッサ31の外面に装着された、各種スイッチを備えた操作パネル40のスイッチ操作を受けて動作する。さらにプロセッサ31は、照明(光源ランプ53)をオン/オフさせるランプ点灯スイッチ41を備えている。CPU39は、ランプ点灯スイッチ41がオン操作されたときに、点灯駆動部52を起動させて光源ランプ53を点灯させる。
【0020】
プロセッサ31は、光源装置51、CPU39、制御系回路その他の電子部品など、内視鏡システムの動作に必要な装置、電子部品に電源を供給する電源42を備えている。電源42は、商用電源から得た交流電源を変圧、整流して光源装置51およびCPU36等の電子部品に電源供給する機能を有し、パワースイッチ43がオンされたときに光源装置51等に電源を供給する。
【0021】
次に、本発明を適用した立体照明内視鏡システムの実施形態について、図2乃至図7を参照して説明する。本実施形態は、一対の光ファイバ束15、16により導かれ、一対の配光レンズ17、18から射出される一対の照明光の照度または配光分布等の特性を異ならせることができることに特徴を有する。
【0022】
図2には、光ファイバ束15、16の全体構造の一実施形態を示した。この実施形態では、各光ファイバ束15、16が、入射端面15b、16bがそれぞれ半円形を呈し、全体として円形を呈するように配列された状態で、ライトガイド外装筒24に挿入固定されている。そうして集光レンズ54と入射端面15b、16bとは、光源ランプ53から発せられた光束のスポット径がこの入射端面15b、16b内に収まるように、集光レンズ54の焦点位置から離れた位置に入射端面15b、16bが配置されている。入射端面15b、16bから入射した照明光は、光ファイバ束15、16内を導かれ、射出端面15a、16aから射出し、配光レンズ17、18によって拡散照射される。
【0023】
従来は、患部を均等に照射するように、光源からの光束が入射端面に均等に入射し、配光レンズにより均等に照射して照度差を生じないように設定されていたが、本実施形態では、一対の光ファイバ束15、16による一対の照明光に照度差、光量差を生じさせて被写体の立体視を容易にする光量制御装置を備えた。図2、図3では、上方の光ファイバ束15の入射端面15bへの入射光量よりも下方の光ファイバ束16の入射端面16bへの入射光量の方が多く、射出端面16aからの射出光量が多いため、患部71の影71Sが射出端面15a側に生じた状態を示した(図3)。
【0024】
「絞り調整装置」
図4には、絞り装置55によって照度分布を不均等にする実施形態を示した。光源ランプ53と集光レンズ54との間に配置した絞り装置55の開き具合の調整によって、各入射端面15b、16bに入射する光量を異ならせるともに、光量調整をする。この実施形態では光源ランプ53として公知の反射鏡内蔵型のキセノンランプを使用している。この光源ランプ53は、反射鏡531と、反射鏡531の頂点部から光軸Oに沿って内部に突出した陽極532と、反射鏡531内に配置された、陽極532の端部と端部が対向する陰極533を備えている。この陰極533は、反射鏡531の開口縁部から光軸に向かって延びる3枚の金属板534によって支持されている。そうして、反射鏡531の開口部に密着固定された耐熱性の透明板535によって、反射鏡531内にキセノンガスが封止されている。陽極532と陰極533との間で発生するアーク放電によって発せられた光は、反射鏡531で反射して、透明板535から射出する。なお、この光源ランプ53は、アーク放電によって発せられた光束が反射鏡531で反射し、ほぼ平行光束となって透明板535を透過するように構成されている。
【0025】
光源ランプ53の前方には、略半円形からなる2枚の絞り板551、552を有する絞り装置55が配置されている。これらの絞り板551、552は、閉じた状態で円形となる半円形であって、各絞り板551、552は、弦と円弧とが交わる一方の角部において、光軸方向と平行な軸553によって枢支されている。そうして絞り板551、552は、軸553近傍に設けられたアクチュエータによって開閉駆動され、アクチュエータは、CPU39によって駆動制御される。また、一方の絞り板552の弦部の略中央には三角形状の突部554が形成されている。この突部554は、中心領域からの光束を遮光するために設けられている。
【0026】
絞り装置55は、完全に閉じた絞り板551、552の境界縁部が、入射端面15b、16bの境界線と直角を成すように、つまり鉛直方向に沿うように配置されている。したがってアクチュエータによって開閉駆動される絞り板551、552によって形成される開口55a、55bの面積は、上方の入射端面15b側の開口55aが狭く、下方の入射端面16b側の開口55bが広くなる。この絞り板551、552によって形成される異なる面積の開口55a、55bにより、入射端面15b、16bから入射し、光ファイバ束15、16から射出される照明光の光量比を調整する。なお、絞り板551、552が全開したときは、光量比が等しくなるように設定して、いわゆるフラット照明を可能にすることが好ましい。
【0027】
この光源ランプ53による照度分布(光源の投影像)の様子を図4に示した。図4の(A)は光源ランプ53、絞り装置55、集光レンズ54と投影像の位置を示す斜視図、(B)は集光レンズ54からの異なる距離における照明光の照度分布を説明する図であって、光源ランプ53、絞り装置55、集光レンズ54の正面図および異なる距離における照度分布を示した。ある。図4(A)において、符号Sは、光軸Oと垂直なスクリーンを示し、このスクリーンSに投射した照明光の照度分布を図4(B)に示した。図4(B)において、(a)、(b)は集光レンズ54の焦点Fよりも近く(集光レンズ54寄り)にスクリーンSが位置する場合の照度分布を示し、(c)、(d)、(e)は焦点Fよりも遠くにスクリーンSが位置する場合の照度分布を示している。図において、符号53aは上部の開口55aを通った光束による照度分布を示し、符号53bは下部の開口55bを通った光束による照度分布を示している。
【0028】
ここで、光源ランプ53の上部から射出された光束は、光源ランプ53の反射鏡531内の気体対流によって生じるゆらぎ、またはちらつき(以下「ゆらぎ」という)を含む。そこで本実施形態では、このゆらぎによる照度分布への影響を小さくするために、ゆらぎを含む光束が透過する上部の開口55aの方を小さく設定して、ゆらぎの影響が相対的に小さくなるようにしてある。
【0029】
入射端面15b、16bが焦点Fよりも遠方に位置する場合の様子を図5に、同近傍に位置する場合の様子を図6に示した。図5および図6は、光軸Oよりも上方の開口55aが小さく、下方の開口55bが大きく開いているものとする。
【0030】
入射端面15b、16bが焦点Fよりも遠方に位置する場合(図5)は、上方の開口55aを透過した光束L1が下方の入射端面16bに入射して小さなスポット55aiを形成し、下方の開口55bを透過した光束L2が上方の入射端面15bに入射して大きなスポット55biを形成する。つまりこの場合は、上の入射端面15bに入射する光量の方が下の入射端面16bに入射する光量よりも多い。したがって、射出端面15aから射出される光量の方が、射出端面16aから射出される光量よりも多く、三次元的な患部71は射出端面16a側に影71Sを生じる(図7)。
【0031】
入射端面15b、16bが焦点Fよりも近方に位置する場合(図6)は、上方の開口55aを透過した光束L1が上方の入射端面15bに入射して小さなスポット55aiを形成し、下方の開口55bを透過した光束L2が下方の入射端面16bに入射して大きなスポット55biを形成する。つまりこの場合は、下の入射端面16bに入射する光量の方が上の入射端面15bに入射する光量よりも多い。したがって、射出端面16aから射出される光量の方が、射出端面15aから射出される光量よりも多く、三次元的な患部は射出端面15a側に影を生じることになる。
【0032】
さらに絞り装置55の絞り板551、552の開閉度合を変えることで、入射端面15b、16bに入射する光量を調整できる。この実施形態は、絞り板551、552が最も開いた開放状態では、入射端面15b、16bに入射する光量は略同一となり、射出端面15a、16aから射出される光量には略同一であって照度差を生じない。使用者は必要に応じて、絞り装置55の開閉度合いを調整する。なお、絞り装置55の開閉度合の調整は、電子スコープ11の操作部に設けたスイッチ操作で可能にすることが好ましいが、プロセッサ31の操作パネル40に設けたスイッチによって操作する構成でもよい。
【0033】
このように本実施形態によれば、絞り装置55を駆動させることでフラット照明、立体照明を簡単に切り換え、さらに立体照明における照明比の調整も簡単にできる。
【0034】
「ライトガイドの軸方向位置調整」
次に、光ファイバ束15、16の入射端面15b、16bの光軸方向位置を調整して光量比を調整する実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。
【0035】
光ファイバ束15、16は、入射端面15b、16b側の端部がライトガイド外装筒24に挿入固定され、このライトガイド外装筒24を介してコネクタ部21に固定されている。ライトガイド外装筒24の先端部近傍の外周面には、放射方向に突起24aが設けられている。突起24aは、ライトガイド外装筒24を周回するフランジ形状、または径方向に突出するピンとする。
【0036】
一方、プロセッサ31側のコネクタ受け32には、ライトガイド外装筒24が差し込まれるガイド案内筒45が固定され、該ガイド案内筒45内に、軸方向に所定間隔で配置された、軸に向かって突出したばね部材46a、46b、46cが設けられている。これらのばね部材46a乃至46cは、ガイド案内筒45内にライトガイド外装筒22が差し込まれると、突起24aに押圧されて外方に弾性変形してライトガイド外装筒24の移動を許容し、いずれかのばね部材46a乃至46cに嵌合して、ライトガイド外装筒24を係止する。
【0037】
この実施形態では、中間のばね部材46bに突起24aが係止されたときに、入射端面15b、16bが焦点Fとほぼ一致し、先端のばね部材46aに突起が係止されたときは入射端面15b、16bが焦点Fよりもレンズ側に位置する図7の状態となり、後端のばね部材46cに突起が係止されたときは入射端面15b、16bが焦点Fよりも遠方に位置する図6の状態となる。
【0038】
このようにライトガイド外装筒24を軸方向に移動させることで入射端面15b、16bの光軸方向位置を調整し、差し込み口側から順に上方を明るく、上下均等、または下方を明るく、のいずれかの配光/照射特性に設定することができる。
【0039】
この実施形態では、ライトガイド外装筒24のみを光軸方向に移動可能に形成したが、別の実施形態ではコネクタ部21全体を光軸方向に移動可能に形成する。コネクタ部21またはライトガイド外装筒24のみの軸方向移動は、電動装置により、あるいは手動装置により実現できる。コネクタ部21全体を軸方向に移動させる場合は、図示しないが、信号線19、20を内視鏡プロセッサ31に接続する信号ピンも軸方向摺動可能に形成する。
【0040】
さらに他の実施形態では、内視鏡プロセッサ31のコネクタ受け32を軸方向移動機構によって支持し、手動装置または電動装置によって軸方向に移動させて、入射端面15b、16bの光軸方向位置を選択するように構成する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を適用した立体照明電子内視鏡システムの実施形態の主要構成をブロックで示す図である。
【図2】同実施形態の電子スコープの概要を示す図である。
【図3】同電子スコープに内蔵された光ファイバ束の概要を示す図である。
【図4】同実施形態の立体照明内視鏡システムにおいて光軸方向位置によって変化する照度分布を説明する図であって、(A)はランプおよび絞りと光軸方向位置との関係を説明する図、(B)は光軸と直交する面における、ランプ、絞り羽根、集光レンズの正面図および異なる距離における照度分布を示す図である。
【図5】同実施形態の立体照明内視鏡システムにおけるランプ、集光レンズ、絞りと光ファイバ束の入射端面におけるランプ光束との関係を、集光レンズの焦点位置よりも遠方に入射端面を配置した状態で示した図である。
【図6】同実施形態の立体照明内視鏡システムにおけるランプ、集光レンズ、絞りと光ファイバ束の入射端面におけるランプ光束との関係を、集光レンズの焦点位置よりも近方に入射端面を配置した状態で示した図である。
【図7】同実施形態の立体照明内視鏡システムにより照明した場合の患部とその影の関係を示した図である。
【図8】本発明の立体照明内視鏡システムにおいて、光ファイバ束の入射端面を集光レンズに対して接離移動可能とした実施形態の要部を示す斜視図である。
【図9】同実施形態において、光ファイバ束の入射端面を軸方向の異なる位置で形成する実施形態を示す図であって、(A)は光ファイバ束を挿入する前の状態を、(B)は光ファイバ束を最も深く差し込んだ状態を、(C)は光ファイバ束を半分差し込んだ状態を、(D)は光ファイバ束を最も浅く差し込んだ状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
【0042】
11 電子スコープ
12 体内挿入部
13 CCDイメージセンサ
14 対物レンズ
15、16 光ファイバ束
15a 16a 射出端面
15b 16b 入射端面
17 18 配光レンズ
19 駆動信号線
19a 信号ピン
20 映像信号線
20a 信号ピン
21 コネクタ部
31 プロセッサ
32 コネクタ受け
33 駆動信号線
33a 駆動信号ピン
34 映像信号線
34a 映像信号ピン
35 CCD駆動回路
36 初段処理回路
37 DSP
38 画像処理回路
39 CPU
40 操作パネル
41 ランプ点灯スイッチ
42 電源
45 ガイド案内筒
46a 46b 46c ばね部材
51 光源装置
52 点灯駆動部
53 光源ランプ
531 反射鏡
532 陽極
533 陰極
534 金属板
535 透明板
54 集光レンズ
55 絞り装置
551 552 絞り板
553 軸
554 突部
55a 上部の開口
55ai スポット
55b 下部の開口
55bi スポット
61 モニタディスプレイ
71 患部
71S 影


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡プロセッサに着脱自在に接続される電子スコープを備え、該内視鏡プロセッサの光源装置から発せられた照明光を、電子スコープ内に挿通されたライトガイドを介して体内挿入部先端部から観察対象物に照射する立体照明内視鏡システムであって、
前記ライトガイドは複数の光ファイバ束からなり、各光ファイバ束は、前記照明光が入射する互いに隣接して配置された入射端面と、該入射した照明光が射出する、互いに離反して配置された前記体内挿入部先端部の射出端面を備え、
該各光ファイバ束の入射端面に入射する照明光の光量が不均等になるように入射光量比を規制し、かつ各入射端面への入射光量を調整する光量比調整手段を備えたことを特徴とする立体照明内視鏡システム。
【請求項2】
請求項1記載の立体照明内視鏡システムにおいて、前記ライトガイドは一対の光ファイバ束からなり、各光ファイバ束の入射端面は、全体として略円形となるように略半円形に形成され、かつ略半円形が照明光の入射方向に対して縦方向に位置するように配置されている立体照明内視鏡システム。
【請求項3】
請求項1記載の立体照明内視鏡システムにおいて、前記ライトガイドは一対の光ファイバ束からなり、各光ファイバ束の入射端面は、照明光の入射方向に対して縦方向に位置するように密着配置したときに全体として多角形を呈するようにそれぞれが前記多角形を二分割した形状に形成されている立体照明内視鏡システム。
【請求項4】
請求項2または3記載の立体照明内視鏡システムにおいて、前記一対の光ファイバ束の各射出端面は、電子スコープの体内挿入部先端部に配置された撮像手段を挟んで配置されている立体照明内視鏡システム。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項記載の立体照明内視鏡システムにおいて、前記光源は照明光として平行光束を射出し、前記光量比調整手段は、光源装置と前記入射端面の間に配置された一対の絞り板からなり、該絞り板は、前記光源と入射端面との間の光路外の端部が光路と平行な軸により揺動自在に軸支され、該軸を中心とした揺動により該軸側に狭い開口を形成し、自由端側に広い開口を形成して、狭い開口を通過した光束が前記一方の入射端面に入射し、広い開口を通過した光束が他方の入射端面に入射する立体照明内視鏡システム。
【請求項6】
請求項5記載の立体照明内視鏡システムにおいて、前記一対の絞り板の軸は、上記照明光の入射方向に対して縦方向の光路外に配置されている立体照明内視鏡システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項記載の立体照明内視鏡システムにおいて、前記光源装置は、平行光束を射出する光源ランプおよび該光源ランプから発せられた平行光束を集束させる集光レンズを備え、前記入射端面は、該集光レンズの焦点位置から光軸方向に離反した位置に配置されている立体照明内視鏡システム。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか一項記載の立体照明内視鏡システムにおいて、前記光源装置は、平行光束を射出する光源ランプおよび該光源ランプから発せられた平行光束を集束させる集光レンズを備え、前記光量比調整手段は、前記集光レンズに対して前記各光ファイバ束の入射端面を接離移動させる立体照明内視鏡システム。
【請求項9】
請求項8記載の立体照明内視鏡システムにおいて、前記各光ファイバ束は、前記各光ファイバ束の入射端面近傍に嵌合固定されたライトガイド外装筒と、前記光源側に設けられた、前記ライトガイド外装筒が着脱自在に差し込まれるガイド案内筒と、該ガイド案内筒およびライトガイド外装筒の一方に長手方向に沿って所定間隔で設けられた凹凸と、他方に設けられた前記いずれかの凹部または凸部に弾性的に係合して前記ライトガイド外装筒を位置決め係止する係止部材とを備えた立体照明内視鏡システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−21002(P2007−21002A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209954(P2005−209954)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】