立体画像描画装置および描画方法
【課題】遠景ボードあるいは近景ボードをまたいで描画対象物が配置されている場合に、その描画対象物にアンチエイリアシングを施しても、遠景と中景の描画結果の境界または中景と近景の描画結果の境界に切れ目が表示されるのを可及的に防止することを可能にする。
【解決手段】描画対象物が遠景と中景をまたぐ場合は、中景の多視点画像を描画する際に、遠景と中景の境界より少しだけ奥方向に描画範囲を伸ばす。描画対象物が中景と近景をまたぐ場合は、近景の単視点画像を描画する際に、中景と近景の境界より少しだけ奥方向に描画範囲を伸ばすとともに、近景の単視点画像にアンチエイリアシングを施すタイミングを、後段の多視点画像を描画するタイミングまで遅延させる。
【解決手段】描画対象物が遠景と中景をまたぐ場合は、中景の多視点画像を描画する際に、遠景と中景の境界より少しだけ奥方向に描画範囲を伸ばす。描画対象物が中景と近景をまたぐ場合は、近景の単視点画像を描画する際に、中景と近景の境界より少しだけ奥方向に描画範囲を伸ばすとともに、近景の単視点画像にアンチエイリアシングを施すタイミングを、後段の多視点画像を描画するタイミングまで遅延させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像描画装置および描画方法に関するもので、特にCG(コンピュータグラフィックス)の立体画像を描画するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
視差を有する複数枚の画像(多視点画像)の各画素を離散的に配置して1枚の合成画像を形成し、レンチキュラーレンズなどを用いて合成画像の各画素からでる光線の軌道を制御することにより、観察者に立体画像を知覚させる表示装置が知られている。
【0003】
立体画像の表示方式は2眼式、多眼式、インテグラルフォトグラフィーなどに分類される。近年ではインテグラルフォトグラフィーはインテグラルイメージング(II)方式と呼ばれることが多い。II方式の立体画像表示装置は現実に近い光線を再生できる理想的な方式として知られているが、ディスプレイ面(レンズ面)から離れるにつれて光線の密度が粗くなり、立体画像の画質が劣化するという問題がある。
【0004】
そこで、ディスプレイ面から奥方向(ディスプレイ面から見て観察者から遠ざかる方向)に離れた遠景領域の画質劣化を防ぐために、予め作成しておいた遠景の単視点画像を多視点画像の背景として合成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法を使うと遠景の立体感を正確に再現することができなくなるが、遠景の画質劣化を防ぐことができる。一般に、人間の視覚機能は遠景の立体感に対して鈍感であるため、この方法は多くのCG(コンピュータグラフィックス)のコンテンツにおいて効果的に機能する。
【0005】
また、多視点画像を作成する際に、ディスプレイ面からどの程度奥方向に離れた領域を遠景とみなすかを指定するための方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。利用者は背景ボード(本明細書では遠景ボードと表記する)と呼ばれるCGの四角形モデルをディスプレイ面に平行に配置して、遠景領域と、それより手前の領域の境界面を指定する。この遠景ボードを前後に移動させることにより、遠景領域の範囲を調節することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−211291号公報
【特許文献2】特開2007−96951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、CGのコンテンツを描画する際に、描画対象物の輪郭線のジャギー(階段状のギザギザ)を除去して画質を向上させるアンチエイリアシングと呼ばれる処理技術が用いられる。特許文献1に記載の立体画像描画装置においても、アンチエイリアシングを適用することによって、多視点画像の輪郭線の画質を向上することが可能である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の立体画像描画装置では、遠景ボードあるいは近景ボードをまたいで描画対象物が配置されている場合に、その描画対象物にアンチエイリアシングを施すと、遠景と中景の描画結果の境界、および中景と近景の描画結果の境界に切れ目が表示されてしまう問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、遠景ボードあるいは近景ボードをまたいで描画対象物が配置されている場合に、上記描画対象物にアンチエイリアシングを施しても、遠景と中景の描画結果の境界または中景と近景の描画結果の境界に切れ目が表示されるのを可及的に防止することのできる立体画像描画装置および描画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による立体画像描画装置は、多視点カメラに関するデータと、描画対象物の形状に関するデータと、遠景領域および近景領域の範囲に関するデータと、描画処理の手順を記述したプログラムに関するデータと、を少なくとも含んだデータを記憶するとともに画像メモリを有するデータ記憶部と、前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスの立体画像を描画するために必要なデータを読み出して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物の投影画像である遠景画像を作成し、作成された1枚の遠景画像を前記画像メモリに書き込む遠景画像作成部と、前記遠景画像作成部によって作成された前記遠景画像を前記画像メモリから読み出して、前記遠景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画素に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより前記遠景画像を修正し、この修正された前記遠景画像を前記画像メモリに記憶する遠景画像混色部と、前記データ記憶部から近景領域の範囲に関するデータを読み出して、前記近景領域の範囲を奥方向に伸ばすことにより前記近景領域を拡張する近景領域拡張部と、前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスの立体画像を描画するために必要なデータを読み出して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって、前記近景領域拡張部によって拡張された前記近景領域内にある描画対象物の投影画像である近景画像を作成し、作成された1枚の近景画像を前記画像メモリに書き込む近景画像作成部と、前記近景画像作成部によって作成された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、前記近景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画像に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより前記近景画像を修正し、この修正された前記近景画像を前記画像メモリに記憶する近景画像混色部と、前記近景画像混色部によって修正された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、修正された前記近景画像の画素のうち、前記近景画像混色部によって背景色と混合された画素を見つけ、前記画素の色を、混合される前の色に置き換える近景画像混色除去部と、前記遠景画像混色部によって修正された前記遠景画像を前記画像メモリから読み出して、修正された前記遠景画像を、任意の奥行きに配置されたコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、その四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込む遠景ボード描画部と、前記データ記憶部から遠景領域および近景領域の範囲に関するデータを読み出して、前記遠景領域と近景領域との間にある中景領域の範囲に関するデータを計算し、前記中景領域の範囲を奥方向に伸ばして拡張する処理を行う中景領域拡張部と、前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスを描画するために必要なデータを読み出して、前記中景領域内にある描画対象物の投影画像である中景画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された各中景画像を前記画像メモリに書き込む中景画像描画部と、前記中景画像描画部によって描画された各中景画像を前記画像メモリから読み出して、各中景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画素に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより修正された中景画像を作成し、修正された前記中景画像のそれぞれを前記画像メモリに記憶する中景画像混色部と、前記近景画像混色部によって修正された前記近景画像を、前記画像メモリから読み出して、前記近景画像を、任意の奥行きに配置されたコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、その四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込む近景ボード描画部と、前記画像メモリから、前記遠景ボード描画部、前記中景画像描画部、および前記近景ボード描画部によって描画された複数枚の画像を読み出して、画素配列を並べ替えて立体表示可能な形式の画像に変換し、前記画像メモリに書き込む画素配列変換部と、前記画素配列変換部によって作成された立体表示可能な形式の前記画像を前記画像メモリから読み出して、観察者に提示する提示部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の態様による立体画像描画方法は、色成分の輝度を表すカラー値と、不透明度を表すアルファ値を記憶することのできる形式の画像メモリの全画素のアルファ値をゼロに初期設定するステップと、多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物の投影画像である遠景画像を作成し、前記画像メモリに記憶するステップと、前記遠景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、
近景領域を奥方向に拡張するステップと、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって、拡張された近景領域にある前記描画対象物の投影像を計算し、前記画像メモリの近景画像を記憶する領域に対して前記投影像の色成分の輝度値を書き込むとともに、新たに書き込まれた画素のアルファ値を非ゼロに書き換えるステップと、前記近景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、前記アンチエイリアシング処理された前記近景画像から、背景色と混合された画素を見つけ、この画素の色を混合される前の色に置き換えるステップと、前記多視点カメラによって前記ボードの多視点画像を描画し、前記画像メモリに記憶するステップと、中景領域を奥方向に拡張するステップと、前記拡張された中景領域内にある前記描画対象物の多視点画像を描画し、前記画像メモリに記憶するステップと、前記中景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、前記アンチエイリアシング処理された前記中景画像を、同じカメラによって描画された前記遠景ボードの多視点画像が記憶されている前記画像メモリに上書きして記憶するステップと、前記多視点カメラに含まれるすべてのカメラによって近景ボードの多視点画像を描画し、同じカメラによって描画された前記中景画像が記憶されている前記画像メモリに上書きして多視点画像として記憶するステップと、前記多視点画像を立体表示可能な形式の画像に変換するステップと、前記立体表示可能な形式の画像を立体画像として提示するステップと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠景ボードあるいは近景ボードをまたいで描画対象物が配置されている場合に、その描画対象物にアンチエイリアシングを施しても、遠景と中景の描画結果の境界または中景と近景の描画結果の境界に切れ目が表示されるのを可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】参考例による立体画像描画装置を示すブロック図。
【図2】描画対象物の形状を示す図。
【図3】遠景領域の例を示す図。
【図4】遠景画像の一例を示す図。
【図5】アンチエイリアシング後の遠景画像の一例を示す図。
【図6】近景領域の例を示す図。
【図7】近景画像の一例を示す図。
【図8】アンチエイリアシング後の近景画像の一例を示す図。
【図9】遠景ボードの描画結果の一例を示す図。
【図10】中景領域の例を示す図。
【図11】遠景画像に中景画像を上書きした場合の一例を示す図。
【図12】図11に示す画像をアンチエイリアシングした場合の一例を示す図。
【図13】アンチエイリアシング後の近景画像を、アンチエイリアシング後の中景ボードの描画結果に合成した結果を示す図。
【図14】本発明の一実施形態に係る立体画像描画装置を示すブロック図。
【図15】近景領域を拡張する一例を示す図。
【図16】拡張された近景領域の描画結果の一例を示す図。
【図17】アンチエイリアシング後の拡張された近景領域の描画結果の一例を示す図。
【図18】アンチエイリアシング後に混色除去された拡張された近景領域の描画結果の一例を示す図。
【図19】中景領域の拡張の一例を示す図。
【図20】遠景ボードの描画結果に、拡張された中景領域を上書きした場合の一例を示す図。
【図21】遠景ボードの描画結果に、アンチエイリアシング後の拡張された中景領域を上書きした場合の一例を示す図。
【図22】近景ボードの描画結果を示す図。
【図23】近景ボードのアルファブレンディングの結果を示す図。
【図24】一実施形態に係る立体画像描画装置を用いた描画方法の第1具体例を示すフローチャート。
【図25】一実施形態による立体画像描画装置を用いた描画方法の第1具体例を示すフローチャート。
【図26】一実施形態による立体画像描画装置を用いた描画方法の第2具体例を示すフローチャート。
【図27】一実施形態による立体画像描画装置を用いた描画方法の第2具体例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0015】
まず、本発明の実施形態を説明する前に、参考例について説明する。この参考例による立体画像描画装置の概略構成を図1に示す。この参考例の立体画像描画装置は、CGデータ記憶部1と、遠景画像作成部2と、遠景画像混色部3と、近景画像作成部4と、近景画像混色部5と、遠景ボード描画部6と、中景画像描画部7と、中景画像混色部8と、近景ボード描画部9と、画素配列変換部10と、提示部11と、を備えている。
【0016】
この参考例による立体画像描画装置の各処理ブロックの動作を図2(a)乃至図2(d)を参照して説明する。図2(a)は、直方体の描画対象物100が、遠景ボード21と近景ボード31の両方をまたいで配置されていることを示す図である。すなわち、描画対象物100が、図2(b)に示す、観察者から見て遠景ボード21よりも奥方向に位置する遠景領域20と、図2(c)に示す、遠景ボード21と近景ボード31との間の中景領域40と、図2(d)に示す観察者から見て近景ボード31よりも手前に位置する近景領域30とにそれぞれ分割されて配置されていることを示す。
【0017】
[CGデータ記憶部1]
CGデータ記憶部1には、多視点カメラに関するデータと、遠景領域および近景領域の範囲に関するデータと、描画対象物100に関するデータと、光源に関するデータと、描画処理の手順を記述したプログラムに関するデータと、遠景画像作成部2によって作成される遠景画像に関するデータと、近景画像作成部3によって作成される近景画像に関するデータと、遠景ボード描画部6、および中景画像描画部7、近景ボード描画部9によって描画される多視点画像に関するデータと、画素配列変換部10によって作成される立体表示可能な形式の画像に関するデータと、を記憶している。
【0018】
遠景画像に関するデータと、近景画像に関するデータと、多視点画像に関するデータは、CGにおいて一般的な画像形式であるRGBA形式でCGデータ記憶部1に記憶されるものとする。ここで、R、G、Bは画像を構成する各画素の赤、緑、青の値を表し、Aは各画素のアルファ値(不透明度)を表している。
【0019】
なお、多視点画像を描画するために必要となる複数のカメラに関するデータは、すべてCGデータ記憶部1に記憶しておいてもよいし、代表的なカメラに関するデータだけをCGデータ記憶部1に記憶しておき、必要に応じて残りのカメラに関するデータを計算して求めるように構成しても構わない。また、CGデータ記憶部1に保持されるCGデータは上記の形式に限定されず、所望のCGを描画するために必要となるあらゆるデータを含んでもよい。
【0020】
[遠景画像作成部2]
遠景画像作成部2は、遠景領域内の描画対象物100を描画するために必要な各種データをCGデータ記憶部1から読み出して、1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物200の投影画像を作成し、作成された1枚の投影画像をCGデータ記憶部1に確保されている画像メモリ(図示せず)に書き込む。
【0021】
図3に示すように、本明細書における遠景領域20とは、遠景ボード21とファークリップ面(以下、Farクリップ面とも云う)22に挟まれた領域のことであり、ディスプレイ面18から奥方向に離れたところに位置している。ここで、図3は投影画像を作成する際に、カメラ200および描画対象物を側面から見た図である。遠景ボード21は、例えば、CGの四角形モデルをディスプレイ面に平行に配置したものである。なお、カメラ200から見てディスプレイ面18よりも手前方向に離れて位置する近景ボード31が存在し、この近景ボード31よりも更に手前にニアクリップ面(以下、Nearクリップ面ともいう)32が存在する。
【0022】
遠景画像作成部2では、最初に、CGデータ記憶部1から多視点カメラの中心位置が読み出される。あるいは、CGデータ記憶部1から多視点カメラの位置座標列が読み出されて、それらの中心位置が計算される。次に、得られた中心位置に1台のカメラ200が配置される。あるいは、多視点カメラに含まれるカメラの中から、得られた中心位置に最も近い1台のカメラ200が選択される。次に、その1台のカメラ200によって遠景ボード21とFarクリップ面22に挟まれた領域内にある描画対象物の投影画像が作成される。このようにして作成された投影画像はCGデータ記憶部1に確保されている画像メモリに書き込まれて記憶される。本明細書では、遠景画像作成部2によって作成された投影画像のことを遠景画像という。例えば、図2(b)に示す遠景領域の投影画像を作成すると、図4に示すような遠景画像が得られる。
【0023】
[遠景画像混色部3]
遠景画像混色部3は、遠景画像作成部2によって作成された遠景画像をCGデータ記憶部1から読み出して、その遠景画像に投影されている遠景領域内の描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、その画素の色と、隣接する複数の画素の色を混合する処理を行う。この処理はアンチエイリアシングと呼ばれ、GPU(グラフィックスプロセッシングユニット)などのハードウェアを用いて高速に実行することが可能である。例えば、図4に示す遠景画像にアンチエイリアシングを施すと、図5に示すような画像が得られる。
【0024】
[近景画像作成部4]
近景画像作成部4は、近景領域内の描画対象物を描画するために必要な各種データをCGデータ記憶部1から読み出して、1台のカメラによって近景領域内にある描画対象物の投影画像を作成し、作成された1枚の投影画像をCGデータ記憶部1に確保されている画像メモリに書き込む。
【0025】
図6に示すように、本明細書における近景領域30とは、Nearクリップ面32と近景ボード21に挟まれた領域のことであり、カメラ200から見てディスプレイ面18より手前方向に飛び出したところに位置している。ここで、図6は、投影画像を作成する際に、カメラ200および描画対象物を側面から見た図である。
【0026】
近景画像作成部4では、最初に、CGデータ記憶部1に確保されているRGBA形式の画像メモリの全画素のアルファ値がゼロにクリアされる。次に、遠景画像作成部2において遠景画像を作成したときと同じように、多視点カメラの中心位置に1台のカメラが配置されるか、あるいは、多視点カメラに含まれるカメラの中から中心位置に最も近い1台のカメラが選択される。その1台のカメラによって近景領域30内にある描画対象物の投影画像が作成される。作成された投影画像は、さきほどアルファ値をクリアしておいたCGデータ記憶部1に確保されているRGBA形式の画像メモリに書き込まれる。このとき、新たに書き込まれた各画素のアルファ値は非ゼロ(例えば255)に書き換えられる。本明細書では、ここで作成された投影画像のことを近景画像と表記する。
【0027】
例えば、図2(d)に示す近景領域30の投影画像を作成すると、図7(a)、7(b)に示すような近景画像が得られる。ここで、図7(a)は近景画像をRGB値で表示し、図7(b)は近景画像をアルファ値で表示している。これらの図から分かるように、近景画像においては、近景領域30内の描画対象物の投影像によって新たに書き込まれた画素のアルファ値は255になり、それ以外の画素のアルファ値はゼロにクリアされたまま維持されることになる。
【0028】
[近景画像混色部5]
近景画像混色部5は、近景画像作成部4によって描画された近景画像をCGデータ記憶部1から読み出して、その近景画像に投影されている近景領域内の描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、その画素の色と、隣接する複数の画素の色を混合する処理を行う。
【0029】
例えば、図7(a)、7(b)に示す近景画像にアンチエイリアシングを施すと、図8(a)、8(b)に示すような画像がそれぞれ得られる。ここで、図8(a)はアンチエイリアシング後の近景画像をRGB値で表示し、図8(b)はアンチエイリアシング後の近景画像をアルファ値で表示している。
【0030】
[遠景ボード描画部6]
遠景ボード描画部6では、最初に、CGデータ記憶部1から多視点カメラに関するデータが読み出される。次に、多視点カメラに含まれるカメラのうちの1つが選択されて、そのカメラによって遠景ボードの投影画像が描画される。このとき、遠景画像混色部3によって作成されたアンチエイリアシング後の遠景画像がCGデータ記憶部1から読み出されて、遠景ボード全体を覆うようにテクスチャマッピングによって貼り付けられる。これらの処理を多視点カメラに含まれるすべてのカメラについて繰り返すことによって、遠景ボードの多視点画像を描画することができる。
【0031】
図9(a),9(b)に遠景ボードの多視点画像の一例を示す。図9(a)は、図5に示すアンチエイリアシング後の遠景画像を遠景ボードに貼り付けて描画した結果を示している。遠景ボードの多視点画像は、各カメラによって描画された遠景ボードの投影画像をタイル状に並べた形式で、CGデータ記憶部1に確保された画像メモリに書き込まれて記憶される。図9(b)は9台のカメラによって描画された多視点画像の一例を表している。この図9(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。
【0032】
なお、遠景ボードのようなCGモデルに対して画像を貼り付ける技法はテクスチャマッピングと呼ばれ、GPU(グラフィックスプロセッシングユニット)などのハードウェアを用いて高速に実行することが可能である。
【0033】
[中景画像描画部7]
中景画像描画部7では、最初に、CGデータ記憶部1から多視点カメラに関するデータが読み出される。次に、多視点カメラに含まれるカメラのうちの1つが選択されて、そのカメラによって近景ボードと遠景ボードに挟まれた領域内にある描画対象物の投影画像が描画される。図10に示すように、本明細書では近景ボード31と遠景ボード21とに挟まれた領域のことを中景領域40と表記する。描画結果は、遠景ボード描画部6において、同じカメラによって描画された遠景ボードの投影画像と同じ画像メモリに上書きされて記憶される。これらの処理を多視点カメラ220のすべてのカメラについて繰り返すことによって、遠景ボード描画部6によって描画された背景ボード31の多視点画像の上に、中景領域内にある描画対象物の投影像を合成することができる。
【0034】
図9(a)、9(b)に示した遠景ボードの多視点画像に対して、中景の多視点画像を上書き描画した結果の例を図11(a)、11(b)にそれぞれ示す。この図では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。
【0035】
[中景画像混色部8]
中景画像混色部8は、中景画像描画部7によって描画された多視点画像をCGデータ記憶部1から読み出して、各多視点画像に投影されている中景領域内の描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、その画素の色と、隣接する複数の画素の色を混合する処理を行う。例えば、図11(a)、11(b)に示す画像にアンチエイリアシングを施すと、図12(a)、12(b)に示すような画像がそれぞれ得られる。図12(a)、12(b)から分かるように、遠景画像と中景画像の境界に切れ目(横方向の線)51が表示されてしまっている。
【0036】
ここで、この切れ目が生じる理由を説明する。まず、図9(a)、9(b)に示す遠景ボードの描画結果において、描画対象物の上面の切断線の近傍の画素には、上面110の色と奥面112の色を混合した色が書き込まれている。この画像に対して、図11(a)、11(b)に示す中景領域を上書き描画すると、上記切断線の近傍では、上面110の色と奥面112の色の混合色が書き込まれていた画素と、新たに中景領域の上面114の色が書き込まれた画素が隣接することになる。ここにアンチエイリアシングを施すと、これら隣接する画素の色が混合されてしまい、本来であれば、遠景画像および中景画像の上面の色が書き込まれるべき切断線の近傍の画素に混合色が書き込まれるため、切れ目が生じたように見えてしまう。
【0037】
[近景ボード描画部9]
近景ボード描画部9では、最初に、CGデータ記憶部1から多視点カメラに関するデータが読み出される。次に、多視点カメラに含まれるカメラのうちの1つが選択されて、そのカメラによって近景ボードの投影画像が描画される。このとき、近景画像混色部5によって作成されたアンチエイリアシング後の近景画像がCGデータ記憶部1から読み出されて、近景ボード全体を覆うようにテクスチャマッピングによって貼り付けられる。
【0038】
描画結果は、中景画像描画部7において、同じカメラによって描画された投影画像と同じ画像メモリに上書きされて記憶される。ただし、このときに書き込み元の画素(すなわち近景画像の画素)のうち、アルファ値が非ゼロの画素だけが画像メモリに書き込まれるようにする。こうすることにより、近景画像の画素のうち、近景領域内にある描画対象物の投影像によって新たに書き込まれた画素だけを上書きすることができる。以上の処理を多視点カメラに含まれるすべてのカメラについて繰り返すことによって、近景ボードの多視点画像を描画することができる。なお、このようなアルファ値に基づいた書き込み制御の仕組みはアルファテストと呼ばれ、GPUなどのハードウェアを用いて高速に実行することが可能である。
【0039】
図8(a)、8(b)に示すアンチエイリアシング後の近景画像を近景ボードに貼り付けて描画して、図12(a)、12(b)に示すアンチエイリアシング後の中景ボードの描画結果に合成した結果を図13(a)、13(b)にそれぞれ示す。この図では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図13(a)、13(b)から分かるように、中景と近景の境界に切れ目(横方向の線)53が表示されてしまっている。
【0040】
先ほどと同様に、この切れ目が生じる理由を説明する。まず、図8(a)、8(b)に示す近景画像において、描画対象物の上面の切断線の近傍の画素には、上面の色と背景色を混合した色が書き込まれている。この近景画像を、図13(a)、13(b)に示すように近景ボードに貼り付けて上書き描画すると、上記切断線53の近傍では、中景画像の上面の色と奥面の色の混合色が書き込まれていた画素と、新たに近景画像の上面の色と背景色を混合した色が書き込まれた画素が隣接することになる。ここにアンチエイリアシングを施すと、これら隣接する画素の色が混合されてしまい、本来であれば、中景画像および近景画像の上面の色が書き込まれるべき、切断線の近傍の画素に混合色が書き込まれるため、切れ目が生じたように見えてしまう。
【0041】
[画素配列変換部10]
画素配列変換部10は、CGデータ記憶部1から多視点画像を読み出し、画素配列を並べ替えて立体表示可能な形式に変換し、変換結果をCGデータ記憶部1に書き込む。
【0042】
[提示部11]
提示部11は、CGデータ記憶部1に記憶されている立体表示可能な形式の画像を観察者に提示するためのディスプレイやレンチキュラーレンズ、プリンタなどで構成される。
【0043】
この参考例の立体画像描画装置においては、ディスプレイ面から手前方向に飛び出した近景領域の画質劣化を防ぐために、あらかじめ作成しておいた近景の単視点画像を多視点画像の前景として合成している。この参考例の立体画像描画装置を使うと近景の立体感を正確に再現することができなくなるが、近景の画質劣化を防ぐことができる。一般に、人間の視覚機能は遠景の立体感に対しては鈍感であるが、近景の立体感に対しては敏感であるため、CGコンテンツによっては近景領域の表示結果に不自然さを感じる場合がある。しかし、その不自然さは許容できる程度であり、それに比べて画質劣化を防ぐことのできる効果は非常に大きいことが説明されている。
【0044】
ここまで説明してきたように、図1に示す参考例による立体画像描画装置では、遠景ボードおよび近景ボードをまたいで描画対象物100が配置されている場合に、その描画対象物にアンチエイリアシングを施すと、遠景画像と中景画像の描画結果の境界、および中景画像と近景画像の描画結果の境界に切れ目が生じてしまう問題があった。
【0045】
このような問題は、以下に説明する本発明の一実施形態による立体画像描画装置によって解決される。
【0046】
(一実施形態)
本発明の一実施形態による立体画像描画装置を図14に示す。本実施形態による立体画像描画装置は、図1に示す参考例の立体画像描画装置において、近景領域拡張部12と、近景画像混色除去部13と、中景領域拡張部14と、新たに設けた構成となっている。
【0047】
次に、本実施形態において、新たに設けられた各処理ブロックの動作について説明する。
【0048】
[近景領域拡張部12]
近景領域拡張部12は、CGデータ記憶部1から近景領域の範囲に関するデータを読み出して、近景領域の奥面(近景領域と中景領域の境界面)を少しだけ奥方向に移動して近景領域を拡張し、拡張された近景領域の範囲に関するデータを近景画像作成部4に送る。例えば、図2(d)に示す近景領域の場合、図15に矢印で示すように、近景領域30の奥面34が奥方向に移動されて新たな奥面34aとなって、近景領域30が拡張される。なお、奥方向への移動量については、外部から指定された値がCGデータ記憶部1に記憶されており、その値を近景領域拡張部12がCGデータ記憶部1から読み出して使うものとする。
【0049】
[近景画像作成部4]
本実施形態に係る近景画像作成部4の処理内容は、近景領域拡張部12によって拡張された近景領域内について処理を行うことを除いて、図1に示す参考例の立体画像描画装置における近景画像作成部4の処理と同じである。例えば、図15に示すように拡張された近景領域内にある描画対象物の投影画像を作成すると、図16(a)、16(b)に示すような近景画像が得られる。ここで、図16(a)、16(b)は近景画像をRGB値で表示し、図16(b)は近景画像をアルファ値で表示している。図7(a)、7(b)に示す、参考例の立体画像描画装置における近景画像と比べると、図16(a)、16(b)に示す本実施形態における近景画像では少しだけ奥方向まで余分に描画されていることが分かる。
【0050】
[近景画像混色部5]
本実施形態に係る近景画像混色部5の処理内容は、図1に示す参考例の立体画像描画装置における近景画像混色部5の処理と同じである。例えば、図16(a)、16(b)に示す近景画像にアンチエイリアシングを施すと、図17(a)、17(b)に示すような画像がそれぞれ得られる。
【0051】
[近景画像混色除去部13]
近景画像混色除去部13は、最初に、近景画像混色部5によって生成されたアンチエイリアシング後の近景画像をCGデータ記憶部1から読み出す。次に、その近景画像の画素のうち、アルファ値が0より大きく255より小さい(アルファ値が1〜244の範囲にある)画素を見つける。ここで見つかった画素は、近景画像混色部5によって背景色と混合された画素に相当する。これらの画素のアルファ値に基づいて、RGB値を混合される前の値に戻すことにより、近景画像混色部5によって背景色と混合された画素の混色を除去する。なお、近景画像のアルファ値については、近景画像混色部5によって混色された値を維持する。
【0052】
一旦、混色された画素のRGB値を完全に同じ元の値に戻すのが難しい場合は、近傍の画素からアルファ値が255の画素を見つけて、それらの画素のRGB値の平均値を元のRGB値の近似値としても構わない。例えば、図17(a)、17(b)に示すアンチエイリアシング後の近景画像の混色を除去すると、図18(a)、18(b)に示すような画像が得られる。繰り返しになるが、図17(b)に示すアルファ値で表示した画像と、図18(b)に示すアルファ値で表示した画像は同じであり、混色が除去されるのはRGB値の画像だけであることに注意する。
【0053】
[中景領域拡張部14]
中景領域拡張部14は、最初に、CGデータ記憶部1から遠景領域および近景領域の範囲に関するデータを読み出して、これら2つの領域に挟まれた中景領域の範囲に関するデータを計算する。次に、計算された中景領域の奥面(中景領域と遠景領域の境界面)を少しだけ奥方向に移動して中景領域を拡張し、拡張された中景領域の範囲に関するデータを中景画像描画部7に送る。例えば、図2(c)に示す中景領域の場合、図19に矢印で示すように、中景領域40の奥面44が奥方向に移動されて新たな奥面44aとなって、中景領域40が拡張される。なお、奥方向への移動量については、外部から指定された値がCGデータ記憶部1に記憶されており、その値を中景領域拡張部14がCGデータ記憶部1から読み出して使うものとする。
【0054】
[中景画像描画部7]
本実施形態に係る中景画像描画部7の処理内容は、中景領域拡張部14によって拡張された中景領域について描画を行うことを除いて、図1に示す参考例の立体画像描画装置における中景画像描画部7の処理と同じである。例えば、図9(a)、9(b)に示す遠景ボードの描画結果に対して、図19に示すように拡張された中景領域を上書き描画すると、図20(a)、20(b)に示すような多視点画像が描画される。この図20(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図11(a)、11(b)に示す、参考例の立体画像装置における多視点画像と比べると、図20(a)、20(b)に示す、本実施形態における多視点画像は少しだけ奥方向まで余分に描画されていることが分かる。
【0055】
図9(a)、9(b)に示す遠景ボードの描画結果において、描画対象物の上面の切断線の近傍の画素には、上面の色と奥面の色を混合した色が書き込まれている。しかし、この画像に対して、図20(a)、20(b)に示すように奥方向に拡張された中景領域を上書き描画すると、上記切断線の近傍は中景領域の上面の色で上書きされて隠されることになる。
【0056】
[中景画像混色部8]
本実施形態に係る中景画像混色部8の処理内容は、図1に示す参考例による立体画像描画装置における中景画像混色部8の処理と同じである。例えば、図20(a)、20(b)に示す画像にアンチエイリアシングを施すと、図21(a)、21(b)に示すような画像が得られる。この図21(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図12(a)、12(b)に示す、参考例における画像とは異なり、図21(a)、21(b)に示す、本実施形態における画像には、遠景と中景の描画結果の境界に切れ目(横方向の線)が表示されておらず、滑らかにつながっていることが分かる。そして、奥側にずれた中景領域の上面の奥側の切断線の近傍では、近景領域の上面の色が書き込まれていた画素と、新たに中景領域の上面の色が書き込まれた画素が隣接することになる。これらはほぼ同じ色であるので、この部分にアンチエイリアシングが施されて画素の色が混合されても、元の色からほとんど変化しない。したがって、切れ目が生じたように見えることはない。
【0057】
[近景ボード描画部9]
近景ボード描画部9は、CGデータ記憶部1からCGを描画するために必要な各種データを読み出して、近景ボードを多視点カメラで描画する。このとき、CGデータ記憶部1に記憶されている混色除去された近景画像が、近景ボード全体を覆うように貼り付けられる。描画結果は、中景画像描画部7において、同じカメラで中景領域を描画したときの画像メモリに上書きされて記憶されるが、アルファテストの機能を用いて、書き込み元の画素(すなわち近景画像の画素)のうち、アルファ値が非ゼロの画素だけが画像メモリに書き込まれるようにする。このとき、デプステストの機能を無効にすることに注意する。
【0058】
多視点画像の例として、多視点カメラの中心に位置するカメラから、図18(a)、18(b)に示す混色除去された近景画像を、近景ボード31に貼り付けて描画した結果を図22(a)、22(b)に示す。この図22(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図13(a)、13(b)に示す、参考例の立体画像描画装置における画像と比べると、図22(a)、22(b)に示す本実施形態における画像は少しだけ奥方向まで余分に描画されていることが分かる。
【0059】
図21(a)、21(b)において、中景領域の上面の手前側の切断線の近傍の画素には、上面の色と下面の色を混合した色が書き込まれているが、この画像に対して、図22(a)、22(b)に示すように奥方向に拡張された近景領域を上書き描画すると、上記切断線の近傍は近景領域の上面の色で上書きされて隠されることになる。
【0060】
続いて、近景ボード描画部9では、さきほど書き込んだ近景画像の各画素のアルファ値と、書き込み先の画素に書き込まれていたアルファ値を用いて、それぞれの画素のRGB値を混合する処理が行われる。このようなアルファ値に基づいてRGB値を混合する仕組みはアルファブレンディングと呼ばれ、GPUなどのハードウェアを用いて高速に実行することが可能である。アンチエイリアシングでは隣接する複数の画素のRGB値が混合されるのに対して、アルファブレンディングでは、異なるタイミングで同じ画素に書き込まれる複数のRGB値が混合される点が異なる。例えば、図22(a)、22(b)に示す近景ボードの描画結果にアルファブレンディングを施すと、図23(a)、23(b)に示すような画像が得られる。この図23(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図13(a)、13(b)に示す、参考例における画像とは異なり、図23(a)、23(b)に示す、本実施形態における画像には、中景と近景の描画結果の境界に切れ目(横方向の線)が表示されておらず、滑らかにつながっていることが分かる。奥側にずれた近景領域の上面の切断線の近傍では、中景領域の上面の色が書き込まれていた画素に対して、新たに近景領域の上面の色が書き込まれることになる。これらはほぼ同じ色であるので、この部分にアルファブレンディングが施されて画素の色が混合されても、元の色からほとんど変化しない。したがって、切れ目が生じたように見えることはない。
【0061】
一方、近景領域の手前の面の左右および下側の輪郭線の近傍では、背景色が書き込まれていた画素に対して、新たに近景領域の手前の面の色が書き込まれることになる。これら2つの色がアルファブレンディングによって混合されることにより、輪郭線のジャギーが除去されて滑らかに見えるようになる。
【0062】
なお、近景領域の手前の面の上側の輪郭線の近傍については、図18(b)から分かるようにアルファ値が255であるため、書き込み元の近景画像の画素が混合されずにそのまま書き込まれる。したがって、図23(a)、23(b)ではアンチエイリアシングされた輪郭線がそのまま表示されることになる。
【0063】
次に、本実施形態の立体画像描画装置を用いた描画方法の第1具体例を図24、図25を参照して説明する。この第1具体例の描画方法においては、最初に、多視点カメラに含まれる全てのカメラから遠景ボードだけを描画する(ステップS100〜108)。次に、多視点カメラの全てのカメラから中景領域だけを描画する(ステップS109〜S113)。最後に、多視点カメラの全てのカメラから近景ボードだけを描画する(ステップS114〜S116)。
【0064】
すなわち、まず、多視点カメラに含まれる1台のカメラ、例えば、中央位置付近に配置されたカメラについての遠景画像を遠景画像作成部2によって作成する(ステップS100)。この遠景画像の作成は、まず、CGデータ記憶部1から多視点カメラの中心位置または位置座標列が読み出され、この読み出された中心位置または位置座標列に1台のカメラが配置されたときの遠景領域20内にある描画対象物の投影画像(遠景画像)が作成される。このようにして作成された投影画像はCGデータ記憶部1に確保されている画像メモリに書き込まれて記憶される。
【0065】
その後、これらの作成された遠景画像を遠景画像混色3によって、アンチエイリアシングする(ステップS101)。続いて、近景領域拡張部12によって、近景領域を拡張し(ステップS102)、この拡張された近景領域を用いて、多視点カメラに含まれる1台のカメラ、例えば、中央位置付近に配置されたカメラについての近景画像を作成し(ステップS103)、この作成された近景画像を、近景画像混色部5によってアンチエイリアシングする(ステップS104)。続いて、アンチエイリアシングされた近景画像から、近景画像混色除去部13によってRGB値の混色除去する(ステップS105)。
【0066】
次いで、遠景ボード描画部6によって遠景ボードの投影画像を描画する(ステップS106)。すなわち、多視点カメラに含まれる1つのカメラが選択され、そのカメラによって遠景ボードの投影画像が描画される。このとき、遠景画像作成部2によって作成された遠景画像がCGデータ記憶部1から読み出され、遠景ボード全体を覆うようにテクスチャマッピングによって貼り付けられる。これらの処理は、多視点カメラに含まれる全てのカメラについて行われる(ステップS107、S108)。
【0067】
次に、中景領域拡張部14によって、中景領域を拡張する(ステップS109)。続いて、多視点カメラに含まれる1つのカメラが選択され、この選択されたカメラによって上記拡張された中景領域内にある描画対象物の投影画像(中景画像)が中景画像描画部7によって描画される(ステップS110)。この描画された中景画像を中景画像混色部8によって、アンチエイリアシングする(ステップS111)。これらの中景画像の描画処理およびアンチエイリアシング処理は、多視点カメラに含まれる全てのカメラについて行われる(ステップS112、S113)。
【0068】
次に、多視点カメラに含まれる全てのカメラについて、近景ボード描画部9によって近景ボードの投影画像を描画する(ステップS114、S115、S116)。すなわち、多視点カメラに含まれる1つのカメラが選択され、この選択されたカメラによって近景ボードの投影画像が描画される(ステップS114)。このとき、近景画像作成部4によって作成された近景画像がCGデータ記憶部1から読み出されて近景ボード全体を覆うように、テクスチャマッピングによって貼り付けられる。これらの処理は、多視点カメラに含まれる全てのカメラについて行われる(ステップS115、S116)。
【0069】
次に、画素配列変換部10によって、多視点画像を立体表示可能な形式の画像に変換し(ステップS117)、その後、提示部8によって上記立体表示可能な形式の画像を立体画像として提示する(ステップS118)。
【0070】
これら図24、図25に示す処理手順は、図26、図27に示す第2具体例の処理手順のように、多視点カメラのうちのある1つのカメラによって、遠景ボードの投影画像、中景領域内の描画対象物の投影画像、近景ボードの投影画像の順番で連続して描画した後(ステップS106、S109、S110、S111、S114)、カメラを切り替えて、同じ順番で描画するように構成しても構わない(ステップS120、S121)。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の立体画像描画装置によれば、中景の多視点画像を描画する際に、遠景と中景の境界より少しだけ奥まで描画範囲を伸ばすことによって、遠景と中景の描画結果の境界に切れ目が表示されないようにすることができる。また、近景領域の単視点画像を描画する際に、中景と近景の境界より少しだけ奥方向に描画範囲を伸ばすとともに、近景の単視点画像にアンチエイリアシングを施すタイミングを、後段の多視点画像を描画するタイミングまで遅延させることによって、中景と近景の描画結果の境界に切れ目が表示されないようにすることができる。その結果、遠景ボードあるいは近景ボードをまたいで描画対象物が配置されている場合であっても、その描画対象物にアンチエイリアシングを施して、輪郭線の画質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 CGデータ記憶部
2 遠景画像作成部
3 遠景画像混色部
4 近景画像作成部
5 近景画像混色部
6 遠景ボード描画部
7 中景画像描画部
8 中景画像混色部
9 近景ボード描画部
10 画素配列変換部
11 提示部
12 近景領域拡張部
13 近景画像混色除去部
14 中景領域拡張部
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体画像描画装置および描画方法に関するもので、特にCG(コンピュータグラフィックス)の立体画像を描画するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
視差を有する複数枚の画像(多視点画像)の各画素を離散的に配置して1枚の合成画像を形成し、レンチキュラーレンズなどを用いて合成画像の各画素からでる光線の軌道を制御することにより、観察者に立体画像を知覚させる表示装置が知られている。
【0003】
立体画像の表示方式は2眼式、多眼式、インテグラルフォトグラフィーなどに分類される。近年ではインテグラルフォトグラフィーはインテグラルイメージング(II)方式と呼ばれることが多い。II方式の立体画像表示装置は現実に近い光線を再生できる理想的な方式として知られているが、ディスプレイ面(レンズ面)から離れるにつれて光線の密度が粗くなり、立体画像の画質が劣化するという問題がある。
【0004】
そこで、ディスプレイ面から奥方向(ディスプレイ面から見て観察者から遠ざかる方向)に離れた遠景領域の画質劣化を防ぐために、予め作成しておいた遠景の単視点画像を多視点画像の背景として合成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。この方法を使うと遠景の立体感を正確に再現することができなくなるが、遠景の画質劣化を防ぐことができる。一般に、人間の視覚機能は遠景の立体感に対して鈍感であるため、この方法は多くのCG(コンピュータグラフィックス)のコンテンツにおいて効果的に機能する。
【0005】
また、多視点画像を作成する際に、ディスプレイ面からどの程度奥方向に離れた領域を遠景とみなすかを指定するための方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。利用者は背景ボード(本明細書では遠景ボードと表記する)と呼ばれるCGの四角形モデルをディスプレイ面に平行に配置して、遠景領域と、それより手前の領域の境界面を指定する。この遠景ボードを前後に移動させることにより、遠景領域の範囲を調節することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−211291号公報
【特許文献2】特開2007−96951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、CGのコンテンツを描画する際に、描画対象物の輪郭線のジャギー(階段状のギザギザ)を除去して画質を向上させるアンチエイリアシングと呼ばれる処理技術が用いられる。特許文献1に記載の立体画像描画装置においても、アンチエイリアシングを適用することによって、多視点画像の輪郭線の画質を向上することが可能である。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の立体画像描画装置では、遠景ボードあるいは近景ボードをまたいで描画対象物が配置されている場合に、その描画対象物にアンチエイリアシングを施すと、遠景と中景の描画結果の境界、および中景と近景の描画結果の境界に切れ目が表示されてしまう問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであって、遠景ボードあるいは近景ボードをまたいで描画対象物が配置されている場合に、上記描画対象物にアンチエイリアシングを施しても、遠景と中景の描画結果の境界または中景と近景の描画結果の境界に切れ目が表示されるのを可及的に防止することのできる立体画像描画装置および描画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様による立体画像描画装置は、多視点カメラに関するデータと、描画対象物の形状に関するデータと、遠景領域および近景領域の範囲に関するデータと、描画処理の手順を記述したプログラムに関するデータと、を少なくとも含んだデータを記憶するとともに画像メモリを有するデータ記憶部と、前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスの立体画像を描画するために必要なデータを読み出して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物の投影画像である遠景画像を作成し、作成された1枚の遠景画像を前記画像メモリに書き込む遠景画像作成部と、前記遠景画像作成部によって作成された前記遠景画像を前記画像メモリから読み出して、前記遠景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画素に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより前記遠景画像を修正し、この修正された前記遠景画像を前記画像メモリに記憶する遠景画像混色部と、前記データ記憶部から近景領域の範囲に関するデータを読み出して、前記近景領域の範囲を奥方向に伸ばすことにより前記近景領域を拡張する近景領域拡張部と、前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスの立体画像を描画するために必要なデータを読み出して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって、前記近景領域拡張部によって拡張された前記近景領域内にある描画対象物の投影画像である近景画像を作成し、作成された1枚の近景画像を前記画像メモリに書き込む近景画像作成部と、前記近景画像作成部によって作成された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、前記近景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画像に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより前記近景画像を修正し、この修正された前記近景画像を前記画像メモリに記憶する近景画像混色部と、前記近景画像混色部によって修正された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、修正された前記近景画像の画素のうち、前記近景画像混色部によって背景色と混合された画素を見つけ、前記画素の色を、混合される前の色に置き換える近景画像混色除去部と、前記遠景画像混色部によって修正された前記遠景画像を前記画像メモリから読み出して、修正された前記遠景画像を、任意の奥行きに配置されたコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、その四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込む遠景ボード描画部と、前記データ記憶部から遠景領域および近景領域の範囲に関するデータを読み出して、前記遠景領域と近景領域との間にある中景領域の範囲に関するデータを計算し、前記中景領域の範囲を奥方向に伸ばして拡張する処理を行う中景領域拡張部と、前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスを描画するために必要なデータを読み出して、前記中景領域内にある描画対象物の投影画像である中景画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された各中景画像を前記画像メモリに書き込む中景画像描画部と、前記中景画像描画部によって描画された各中景画像を前記画像メモリから読み出して、各中景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画素に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより修正された中景画像を作成し、修正された前記中景画像のそれぞれを前記画像メモリに記憶する中景画像混色部と、前記近景画像混色部によって修正された前記近景画像を、前記画像メモリから読み出して、前記近景画像を、任意の奥行きに配置されたコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、その四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込む近景ボード描画部と、前記画像メモリから、前記遠景ボード描画部、前記中景画像描画部、および前記近景ボード描画部によって描画された複数枚の画像を読み出して、画素配列を並べ替えて立体表示可能な形式の画像に変換し、前記画像メモリに書き込む画素配列変換部と、前記画素配列変換部によって作成された立体表示可能な形式の前記画像を前記画像メモリから読み出して、観察者に提示する提示部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の他の態様による立体画像描画方法は、色成分の輝度を表すカラー値と、不透明度を表すアルファ値を記憶することのできる形式の画像メモリの全画素のアルファ値をゼロに初期設定するステップと、多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物の投影画像である遠景画像を作成し、前記画像メモリに記憶するステップと、前記遠景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、
近景領域を奥方向に拡張するステップと、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって、拡張された近景領域にある前記描画対象物の投影像を計算し、前記画像メモリの近景画像を記憶する領域に対して前記投影像の色成分の輝度値を書き込むとともに、新たに書き込まれた画素のアルファ値を非ゼロに書き換えるステップと、前記近景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、前記アンチエイリアシング処理された前記近景画像から、背景色と混合された画素を見つけ、この画素の色を混合される前の色に置き換えるステップと、前記多視点カメラによって前記ボードの多視点画像を描画し、前記画像メモリに記憶するステップと、中景領域を奥方向に拡張するステップと、前記拡張された中景領域内にある前記描画対象物の多視点画像を描画し、前記画像メモリに記憶するステップと、前記中景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、前記アンチエイリアシング処理された前記中景画像を、同じカメラによって描画された前記遠景ボードの多視点画像が記憶されている前記画像メモリに上書きして記憶するステップと、前記多視点カメラに含まれるすべてのカメラによって近景ボードの多視点画像を描画し、同じカメラによって描画された前記中景画像が記憶されている前記画像メモリに上書きして多視点画像として記憶するステップと、前記多視点画像を立体表示可能な形式の画像に変換するステップと、前記立体表示可能な形式の画像を立体画像として提示するステップと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠景ボードあるいは近景ボードをまたいで描画対象物が配置されている場合に、その描画対象物にアンチエイリアシングを施しても、遠景と中景の描画結果の境界または中景と近景の描画結果の境界に切れ目が表示されるのを可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】参考例による立体画像描画装置を示すブロック図。
【図2】描画対象物の形状を示す図。
【図3】遠景領域の例を示す図。
【図4】遠景画像の一例を示す図。
【図5】アンチエイリアシング後の遠景画像の一例を示す図。
【図6】近景領域の例を示す図。
【図7】近景画像の一例を示す図。
【図8】アンチエイリアシング後の近景画像の一例を示す図。
【図9】遠景ボードの描画結果の一例を示す図。
【図10】中景領域の例を示す図。
【図11】遠景画像に中景画像を上書きした場合の一例を示す図。
【図12】図11に示す画像をアンチエイリアシングした場合の一例を示す図。
【図13】アンチエイリアシング後の近景画像を、アンチエイリアシング後の中景ボードの描画結果に合成した結果を示す図。
【図14】本発明の一実施形態に係る立体画像描画装置を示すブロック図。
【図15】近景領域を拡張する一例を示す図。
【図16】拡張された近景領域の描画結果の一例を示す図。
【図17】アンチエイリアシング後の拡張された近景領域の描画結果の一例を示す図。
【図18】アンチエイリアシング後に混色除去された拡張された近景領域の描画結果の一例を示す図。
【図19】中景領域の拡張の一例を示す図。
【図20】遠景ボードの描画結果に、拡張された中景領域を上書きした場合の一例を示す図。
【図21】遠景ボードの描画結果に、アンチエイリアシング後の拡張された中景領域を上書きした場合の一例を示す図。
【図22】近景ボードの描画結果を示す図。
【図23】近景ボードのアルファブレンディングの結果を示す図。
【図24】一実施形態に係る立体画像描画装置を用いた描画方法の第1具体例を示すフローチャート。
【図25】一実施形態による立体画像描画装置を用いた描画方法の第1具体例を示すフローチャート。
【図26】一実施形態による立体画像描画装置を用いた描画方法の第2具体例を示すフローチャート。
【図27】一実施形態による立体画像描画装置を用いた描画方法の第2具体例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0015】
まず、本発明の実施形態を説明する前に、参考例について説明する。この参考例による立体画像描画装置の概略構成を図1に示す。この参考例の立体画像描画装置は、CGデータ記憶部1と、遠景画像作成部2と、遠景画像混色部3と、近景画像作成部4と、近景画像混色部5と、遠景ボード描画部6と、中景画像描画部7と、中景画像混色部8と、近景ボード描画部9と、画素配列変換部10と、提示部11と、を備えている。
【0016】
この参考例による立体画像描画装置の各処理ブロックの動作を図2(a)乃至図2(d)を参照して説明する。図2(a)は、直方体の描画対象物100が、遠景ボード21と近景ボード31の両方をまたいで配置されていることを示す図である。すなわち、描画対象物100が、図2(b)に示す、観察者から見て遠景ボード21よりも奥方向に位置する遠景領域20と、図2(c)に示す、遠景ボード21と近景ボード31との間の中景領域40と、図2(d)に示す観察者から見て近景ボード31よりも手前に位置する近景領域30とにそれぞれ分割されて配置されていることを示す。
【0017】
[CGデータ記憶部1]
CGデータ記憶部1には、多視点カメラに関するデータと、遠景領域および近景領域の範囲に関するデータと、描画対象物100に関するデータと、光源に関するデータと、描画処理の手順を記述したプログラムに関するデータと、遠景画像作成部2によって作成される遠景画像に関するデータと、近景画像作成部3によって作成される近景画像に関するデータと、遠景ボード描画部6、および中景画像描画部7、近景ボード描画部9によって描画される多視点画像に関するデータと、画素配列変換部10によって作成される立体表示可能な形式の画像に関するデータと、を記憶している。
【0018】
遠景画像に関するデータと、近景画像に関するデータと、多視点画像に関するデータは、CGにおいて一般的な画像形式であるRGBA形式でCGデータ記憶部1に記憶されるものとする。ここで、R、G、Bは画像を構成する各画素の赤、緑、青の値を表し、Aは各画素のアルファ値(不透明度)を表している。
【0019】
なお、多視点画像を描画するために必要となる複数のカメラに関するデータは、すべてCGデータ記憶部1に記憶しておいてもよいし、代表的なカメラに関するデータだけをCGデータ記憶部1に記憶しておき、必要に応じて残りのカメラに関するデータを計算して求めるように構成しても構わない。また、CGデータ記憶部1に保持されるCGデータは上記の形式に限定されず、所望のCGを描画するために必要となるあらゆるデータを含んでもよい。
【0020】
[遠景画像作成部2]
遠景画像作成部2は、遠景領域内の描画対象物100を描画するために必要な各種データをCGデータ記憶部1から読み出して、1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物200の投影画像を作成し、作成された1枚の投影画像をCGデータ記憶部1に確保されている画像メモリ(図示せず)に書き込む。
【0021】
図3に示すように、本明細書における遠景領域20とは、遠景ボード21とファークリップ面(以下、Farクリップ面とも云う)22に挟まれた領域のことであり、ディスプレイ面18から奥方向に離れたところに位置している。ここで、図3は投影画像を作成する際に、カメラ200および描画対象物を側面から見た図である。遠景ボード21は、例えば、CGの四角形モデルをディスプレイ面に平行に配置したものである。なお、カメラ200から見てディスプレイ面18よりも手前方向に離れて位置する近景ボード31が存在し、この近景ボード31よりも更に手前にニアクリップ面(以下、Nearクリップ面ともいう)32が存在する。
【0022】
遠景画像作成部2では、最初に、CGデータ記憶部1から多視点カメラの中心位置が読み出される。あるいは、CGデータ記憶部1から多視点カメラの位置座標列が読み出されて、それらの中心位置が計算される。次に、得られた中心位置に1台のカメラ200が配置される。あるいは、多視点カメラに含まれるカメラの中から、得られた中心位置に最も近い1台のカメラ200が選択される。次に、その1台のカメラ200によって遠景ボード21とFarクリップ面22に挟まれた領域内にある描画対象物の投影画像が作成される。このようにして作成された投影画像はCGデータ記憶部1に確保されている画像メモリに書き込まれて記憶される。本明細書では、遠景画像作成部2によって作成された投影画像のことを遠景画像という。例えば、図2(b)に示す遠景領域の投影画像を作成すると、図4に示すような遠景画像が得られる。
【0023】
[遠景画像混色部3]
遠景画像混色部3は、遠景画像作成部2によって作成された遠景画像をCGデータ記憶部1から読み出して、その遠景画像に投影されている遠景領域内の描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、その画素の色と、隣接する複数の画素の色を混合する処理を行う。この処理はアンチエイリアシングと呼ばれ、GPU(グラフィックスプロセッシングユニット)などのハードウェアを用いて高速に実行することが可能である。例えば、図4に示す遠景画像にアンチエイリアシングを施すと、図5に示すような画像が得られる。
【0024】
[近景画像作成部4]
近景画像作成部4は、近景領域内の描画対象物を描画するために必要な各種データをCGデータ記憶部1から読み出して、1台のカメラによって近景領域内にある描画対象物の投影画像を作成し、作成された1枚の投影画像をCGデータ記憶部1に確保されている画像メモリに書き込む。
【0025】
図6に示すように、本明細書における近景領域30とは、Nearクリップ面32と近景ボード21に挟まれた領域のことであり、カメラ200から見てディスプレイ面18より手前方向に飛び出したところに位置している。ここで、図6は、投影画像を作成する際に、カメラ200および描画対象物を側面から見た図である。
【0026】
近景画像作成部4では、最初に、CGデータ記憶部1に確保されているRGBA形式の画像メモリの全画素のアルファ値がゼロにクリアされる。次に、遠景画像作成部2において遠景画像を作成したときと同じように、多視点カメラの中心位置に1台のカメラが配置されるか、あるいは、多視点カメラに含まれるカメラの中から中心位置に最も近い1台のカメラが選択される。その1台のカメラによって近景領域30内にある描画対象物の投影画像が作成される。作成された投影画像は、さきほどアルファ値をクリアしておいたCGデータ記憶部1に確保されているRGBA形式の画像メモリに書き込まれる。このとき、新たに書き込まれた各画素のアルファ値は非ゼロ(例えば255)に書き換えられる。本明細書では、ここで作成された投影画像のことを近景画像と表記する。
【0027】
例えば、図2(d)に示す近景領域30の投影画像を作成すると、図7(a)、7(b)に示すような近景画像が得られる。ここで、図7(a)は近景画像をRGB値で表示し、図7(b)は近景画像をアルファ値で表示している。これらの図から分かるように、近景画像においては、近景領域30内の描画対象物の投影像によって新たに書き込まれた画素のアルファ値は255になり、それ以外の画素のアルファ値はゼロにクリアされたまま維持されることになる。
【0028】
[近景画像混色部5]
近景画像混色部5は、近景画像作成部4によって描画された近景画像をCGデータ記憶部1から読み出して、その近景画像に投影されている近景領域内の描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、その画素の色と、隣接する複数の画素の色を混合する処理を行う。
【0029】
例えば、図7(a)、7(b)に示す近景画像にアンチエイリアシングを施すと、図8(a)、8(b)に示すような画像がそれぞれ得られる。ここで、図8(a)はアンチエイリアシング後の近景画像をRGB値で表示し、図8(b)はアンチエイリアシング後の近景画像をアルファ値で表示している。
【0030】
[遠景ボード描画部6]
遠景ボード描画部6では、最初に、CGデータ記憶部1から多視点カメラに関するデータが読み出される。次に、多視点カメラに含まれるカメラのうちの1つが選択されて、そのカメラによって遠景ボードの投影画像が描画される。このとき、遠景画像混色部3によって作成されたアンチエイリアシング後の遠景画像がCGデータ記憶部1から読み出されて、遠景ボード全体を覆うようにテクスチャマッピングによって貼り付けられる。これらの処理を多視点カメラに含まれるすべてのカメラについて繰り返すことによって、遠景ボードの多視点画像を描画することができる。
【0031】
図9(a),9(b)に遠景ボードの多視点画像の一例を示す。図9(a)は、図5に示すアンチエイリアシング後の遠景画像を遠景ボードに貼り付けて描画した結果を示している。遠景ボードの多視点画像は、各カメラによって描画された遠景ボードの投影画像をタイル状に並べた形式で、CGデータ記憶部1に確保された画像メモリに書き込まれて記憶される。図9(b)は9台のカメラによって描画された多視点画像の一例を表している。この図9(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。
【0032】
なお、遠景ボードのようなCGモデルに対して画像を貼り付ける技法はテクスチャマッピングと呼ばれ、GPU(グラフィックスプロセッシングユニット)などのハードウェアを用いて高速に実行することが可能である。
【0033】
[中景画像描画部7]
中景画像描画部7では、最初に、CGデータ記憶部1から多視点カメラに関するデータが読み出される。次に、多視点カメラに含まれるカメラのうちの1つが選択されて、そのカメラによって近景ボードと遠景ボードに挟まれた領域内にある描画対象物の投影画像が描画される。図10に示すように、本明細書では近景ボード31と遠景ボード21とに挟まれた領域のことを中景領域40と表記する。描画結果は、遠景ボード描画部6において、同じカメラによって描画された遠景ボードの投影画像と同じ画像メモリに上書きされて記憶される。これらの処理を多視点カメラ220のすべてのカメラについて繰り返すことによって、遠景ボード描画部6によって描画された背景ボード31の多視点画像の上に、中景領域内にある描画対象物の投影像を合成することができる。
【0034】
図9(a)、9(b)に示した遠景ボードの多視点画像に対して、中景の多視点画像を上書き描画した結果の例を図11(a)、11(b)にそれぞれ示す。この図では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。
【0035】
[中景画像混色部8]
中景画像混色部8は、中景画像描画部7によって描画された多視点画像をCGデータ記憶部1から読み出して、各多視点画像に投影されている中景領域内の描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、その画素の色と、隣接する複数の画素の色を混合する処理を行う。例えば、図11(a)、11(b)に示す画像にアンチエイリアシングを施すと、図12(a)、12(b)に示すような画像がそれぞれ得られる。図12(a)、12(b)から分かるように、遠景画像と中景画像の境界に切れ目(横方向の線)51が表示されてしまっている。
【0036】
ここで、この切れ目が生じる理由を説明する。まず、図9(a)、9(b)に示す遠景ボードの描画結果において、描画対象物の上面の切断線の近傍の画素には、上面110の色と奥面112の色を混合した色が書き込まれている。この画像に対して、図11(a)、11(b)に示す中景領域を上書き描画すると、上記切断線の近傍では、上面110の色と奥面112の色の混合色が書き込まれていた画素と、新たに中景領域の上面114の色が書き込まれた画素が隣接することになる。ここにアンチエイリアシングを施すと、これら隣接する画素の色が混合されてしまい、本来であれば、遠景画像および中景画像の上面の色が書き込まれるべき切断線の近傍の画素に混合色が書き込まれるため、切れ目が生じたように見えてしまう。
【0037】
[近景ボード描画部9]
近景ボード描画部9では、最初に、CGデータ記憶部1から多視点カメラに関するデータが読み出される。次に、多視点カメラに含まれるカメラのうちの1つが選択されて、そのカメラによって近景ボードの投影画像が描画される。このとき、近景画像混色部5によって作成されたアンチエイリアシング後の近景画像がCGデータ記憶部1から読み出されて、近景ボード全体を覆うようにテクスチャマッピングによって貼り付けられる。
【0038】
描画結果は、中景画像描画部7において、同じカメラによって描画された投影画像と同じ画像メモリに上書きされて記憶される。ただし、このときに書き込み元の画素(すなわち近景画像の画素)のうち、アルファ値が非ゼロの画素だけが画像メモリに書き込まれるようにする。こうすることにより、近景画像の画素のうち、近景領域内にある描画対象物の投影像によって新たに書き込まれた画素だけを上書きすることができる。以上の処理を多視点カメラに含まれるすべてのカメラについて繰り返すことによって、近景ボードの多視点画像を描画することができる。なお、このようなアルファ値に基づいた書き込み制御の仕組みはアルファテストと呼ばれ、GPUなどのハードウェアを用いて高速に実行することが可能である。
【0039】
図8(a)、8(b)に示すアンチエイリアシング後の近景画像を近景ボードに貼り付けて描画して、図12(a)、12(b)に示すアンチエイリアシング後の中景ボードの描画結果に合成した結果を図13(a)、13(b)にそれぞれ示す。この図では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図13(a)、13(b)から分かるように、中景と近景の境界に切れ目(横方向の線)53が表示されてしまっている。
【0040】
先ほどと同様に、この切れ目が生じる理由を説明する。まず、図8(a)、8(b)に示す近景画像において、描画対象物の上面の切断線の近傍の画素には、上面の色と背景色を混合した色が書き込まれている。この近景画像を、図13(a)、13(b)に示すように近景ボードに貼り付けて上書き描画すると、上記切断線53の近傍では、中景画像の上面の色と奥面の色の混合色が書き込まれていた画素と、新たに近景画像の上面の色と背景色を混合した色が書き込まれた画素が隣接することになる。ここにアンチエイリアシングを施すと、これら隣接する画素の色が混合されてしまい、本来であれば、中景画像および近景画像の上面の色が書き込まれるべき、切断線の近傍の画素に混合色が書き込まれるため、切れ目が生じたように見えてしまう。
【0041】
[画素配列変換部10]
画素配列変換部10は、CGデータ記憶部1から多視点画像を読み出し、画素配列を並べ替えて立体表示可能な形式に変換し、変換結果をCGデータ記憶部1に書き込む。
【0042】
[提示部11]
提示部11は、CGデータ記憶部1に記憶されている立体表示可能な形式の画像を観察者に提示するためのディスプレイやレンチキュラーレンズ、プリンタなどで構成される。
【0043】
この参考例の立体画像描画装置においては、ディスプレイ面から手前方向に飛び出した近景領域の画質劣化を防ぐために、あらかじめ作成しておいた近景の単視点画像を多視点画像の前景として合成している。この参考例の立体画像描画装置を使うと近景の立体感を正確に再現することができなくなるが、近景の画質劣化を防ぐことができる。一般に、人間の視覚機能は遠景の立体感に対しては鈍感であるが、近景の立体感に対しては敏感であるため、CGコンテンツによっては近景領域の表示結果に不自然さを感じる場合がある。しかし、その不自然さは許容できる程度であり、それに比べて画質劣化を防ぐことのできる効果は非常に大きいことが説明されている。
【0044】
ここまで説明してきたように、図1に示す参考例による立体画像描画装置では、遠景ボードおよび近景ボードをまたいで描画対象物100が配置されている場合に、その描画対象物にアンチエイリアシングを施すと、遠景画像と中景画像の描画結果の境界、および中景画像と近景画像の描画結果の境界に切れ目が生じてしまう問題があった。
【0045】
このような問題は、以下に説明する本発明の一実施形態による立体画像描画装置によって解決される。
【0046】
(一実施形態)
本発明の一実施形態による立体画像描画装置を図14に示す。本実施形態による立体画像描画装置は、図1に示す参考例の立体画像描画装置において、近景領域拡張部12と、近景画像混色除去部13と、中景領域拡張部14と、新たに設けた構成となっている。
【0047】
次に、本実施形態において、新たに設けられた各処理ブロックの動作について説明する。
【0048】
[近景領域拡張部12]
近景領域拡張部12は、CGデータ記憶部1から近景領域の範囲に関するデータを読み出して、近景領域の奥面(近景領域と中景領域の境界面)を少しだけ奥方向に移動して近景領域を拡張し、拡張された近景領域の範囲に関するデータを近景画像作成部4に送る。例えば、図2(d)に示す近景領域の場合、図15に矢印で示すように、近景領域30の奥面34が奥方向に移動されて新たな奥面34aとなって、近景領域30が拡張される。なお、奥方向への移動量については、外部から指定された値がCGデータ記憶部1に記憶されており、その値を近景領域拡張部12がCGデータ記憶部1から読み出して使うものとする。
【0049】
[近景画像作成部4]
本実施形態に係る近景画像作成部4の処理内容は、近景領域拡張部12によって拡張された近景領域内について処理を行うことを除いて、図1に示す参考例の立体画像描画装置における近景画像作成部4の処理と同じである。例えば、図15に示すように拡張された近景領域内にある描画対象物の投影画像を作成すると、図16(a)、16(b)に示すような近景画像が得られる。ここで、図16(a)、16(b)は近景画像をRGB値で表示し、図16(b)は近景画像をアルファ値で表示している。図7(a)、7(b)に示す、参考例の立体画像描画装置における近景画像と比べると、図16(a)、16(b)に示す本実施形態における近景画像では少しだけ奥方向まで余分に描画されていることが分かる。
【0050】
[近景画像混色部5]
本実施形態に係る近景画像混色部5の処理内容は、図1に示す参考例の立体画像描画装置における近景画像混色部5の処理と同じである。例えば、図16(a)、16(b)に示す近景画像にアンチエイリアシングを施すと、図17(a)、17(b)に示すような画像がそれぞれ得られる。
【0051】
[近景画像混色除去部13]
近景画像混色除去部13は、最初に、近景画像混色部5によって生成されたアンチエイリアシング後の近景画像をCGデータ記憶部1から読み出す。次に、その近景画像の画素のうち、アルファ値が0より大きく255より小さい(アルファ値が1〜244の範囲にある)画素を見つける。ここで見つかった画素は、近景画像混色部5によって背景色と混合された画素に相当する。これらの画素のアルファ値に基づいて、RGB値を混合される前の値に戻すことにより、近景画像混色部5によって背景色と混合された画素の混色を除去する。なお、近景画像のアルファ値については、近景画像混色部5によって混色された値を維持する。
【0052】
一旦、混色された画素のRGB値を完全に同じ元の値に戻すのが難しい場合は、近傍の画素からアルファ値が255の画素を見つけて、それらの画素のRGB値の平均値を元のRGB値の近似値としても構わない。例えば、図17(a)、17(b)に示すアンチエイリアシング後の近景画像の混色を除去すると、図18(a)、18(b)に示すような画像が得られる。繰り返しになるが、図17(b)に示すアルファ値で表示した画像と、図18(b)に示すアルファ値で表示した画像は同じであり、混色が除去されるのはRGB値の画像だけであることに注意する。
【0053】
[中景領域拡張部14]
中景領域拡張部14は、最初に、CGデータ記憶部1から遠景領域および近景領域の範囲に関するデータを読み出して、これら2つの領域に挟まれた中景領域の範囲に関するデータを計算する。次に、計算された中景領域の奥面(中景領域と遠景領域の境界面)を少しだけ奥方向に移動して中景領域を拡張し、拡張された中景領域の範囲に関するデータを中景画像描画部7に送る。例えば、図2(c)に示す中景領域の場合、図19に矢印で示すように、中景領域40の奥面44が奥方向に移動されて新たな奥面44aとなって、中景領域40が拡張される。なお、奥方向への移動量については、外部から指定された値がCGデータ記憶部1に記憶されており、その値を中景領域拡張部14がCGデータ記憶部1から読み出して使うものとする。
【0054】
[中景画像描画部7]
本実施形態に係る中景画像描画部7の処理内容は、中景領域拡張部14によって拡張された中景領域について描画を行うことを除いて、図1に示す参考例の立体画像描画装置における中景画像描画部7の処理と同じである。例えば、図9(a)、9(b)に示す遠景ボードの描画結果に対して、図19に示すように拡張された中景領域を上書き描画すると、図20(a)、20(b)に示すような多視点画像が描画される。この図20(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図11(a)、11(b)に示す、参考例の立体画像装置における多視点画像と比べると、図20(a)、20(b)に示す、本実施形態における多視点画像は少しだけ奥方向まで余分に描画されていることが分かる。
【0055】
図9(a)、9(b)に示す遠景ボードの描画結果において、描画対象物の上面の切断線の近傍の画素には、上面の色と奥面の色を混合した色が書き込まれている。しかし、この画像に対して、図20(a)、20(b)に示すように奥方向に拡張された中景領域を上書き描画すると、上記切断線の近傍は中景領域の上面の色で上書きされて隠されることになる。
【0056】
[中景画像混色部8]
本実施形態に係る中景画像混色部8の処理内容は、図1に示す参考例による立体画像描画装置における中景画像混色部8の処理と同じである。例えば、図20(a)、20(b)に示す画像にアンチエイリアシングを施すと、図21(a)、21(b)に示すような画像が得られる。この図21(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図12(a)、12(b)に示す、参考例における画像とは異なり、図21(a)、21(b)に示す、本実施形態における画像には、遠景と中景の描画結果の境界に切れ目(横方向の線)が表示されておらず、滑らかにつながっていることが分かる。そして、奥側にずれた中景領域の上面の奥側の切断線の近傍では、近景領域の上面の色が書き込まれていた画素と、新たに中景領域の上面の色が書き込まれた画素が隣接することになる。これらはほぼ同じ色であるので、この部分にアンチエイリアシングが施されて画素の色が混合されても、元の色からほとんど変化しない。したがって、切れ目が生じたように見えることはない。
【0057】
[近景ボード描画部9]
近景ボード描画部9は、CGデータ記憶部1からCGを描画するために必要な各種データを読み出して、近景ボードを多視点カメラで描画する。このとき、CGデータ記憶部1に記憶されている混色除去された近景画像が、近景ボード全体を覆うように貼り付けられる。描画結果は、中景画像描画部7において、同じカメラで中景領域を描画したときの画像メモリに上書きされて記憶されるが、アルファテストの機能を用いて、書き込み元の画素(すなわち近景画像の画素)のうち、アルファ値が非ゼロの画素だけが画像メモリに書き込まれるようにする。このとき、デプステストの機能を無効にすることに注意する。
【0058】
多視点画像の例として、多視点カメラの中心に位置するカメラから、図18(a)、18(b)に示す混色除去された近景画像を、近景ボード31に貼り付けて描画した結果を図22(a)、22(b)に示す。この図22(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図13(a)、13(b)に示す、参考例の立体画像描画装置における画像と比べると、図22(a)、22(b)に示す本実施形態における画像は少しだけ奥方向まで余分に描画されていることが分かる。
【0059】
図21(a)、21(b)において、中景領域の上面の手前側の切断線の近傍の画素には、上面の色と下面の色を混合した色が書き込まれているが、この画像に対して、図22(a)、22(b)に示すように奥方向に拡張された近景領域を上書き描画すると、上記切断線の近傍は近景領域の上面の色で上書きされて隠されることになる。
【0060】
続いて、近景ボード描画部9では、さきほど書き込んだ近景画像の各画素のアルファ値と、書き込み先の画素に書き込まれていたアルファ値を用いて、それぞれの画素のRGB値を混合する処理が行われる。このようなアルファ値に基づいてRGB値を混合する仕組みはアルファブレンディングと呼ばれ、GPUなどのハードウェアを用いて高速に実行することが可能である。アンチエイリアシングでは隣接する複数の画素のRGB値が混合されるのに対して、アルファブレンディングでは、異なるタイミングで同じ画素に書き込まれる複数のRGB値が混合される点が異なる。例えば、図22(a)、22(b)に示す近景ボードの描画結果にアルファブレンディングを施すと、図23(a)、23(b)に示すような画像が得られる。この図23(b)では、各カメラの描画結果をすべて同じものとして図示しているが、実際には、各カメラの描画結果は異なる視点位置から投影したものであることに注意する。図13(a)、13(b)に示す、参考例における画像とは異なり、図23(a)、23(b)に示す、本実施形態における画像には、中景と近景の描画結果の境界に切れ目(横方向の線)が表示されておらず、滑らかにつながっていることが分かる。奥側にずれた近景領域の上面の切断線の近傍では、中景領域の上面の色が書き込まれていた画素に対して、新たに近景領域の上面の色が書き込まれることになる。これらはほぼ同じ色であるので、この部分にアルファブレンディングが施されて画素の色が混合されても、元の色からほとんど変化しない。したがって、切れ目が生じたように見えることはない。
【0061】
一方、近景領域の手前の面の左右および下側の輪郭線の近傍では、背景色が書き込まれていた画素に対して、新たに近景領域の手前の面の色が書き込まれることになる。これら2つの色がアルファブレンディングによって混合されることにより、輪郭線のジャギーが除去されて滑らかに見えるようになる。
【0062】
なお、近景領域の手前の面の上側の輪郭線の近傍については、図18(b)から分かるようにアルファ値が255であるため、書き込み元の近景画像の画素が混合されずにそのまま書き込まれる。したがって、図23(a)、23(b)ではアンチエイリアシングされた輪郭線がそのまま表示されることになる。
【0063】
次に、本実施形態の立体画像描画装置を用いた描画方法の第1具体例を図24、図25を参照して説明する。この第1具体例の描画方法においては、最初に、多視点カメラに含まれる全てのカメラから遠景ボードだけを描画する(ステップS100〜108)。次に、多視点カメラの全てのカメラから中景領域だけを描画する(ステップS109〜S113)。最後に、多視点カメラの全てのカメラから近景ボードだけを描画する(ステップS114〜S116)。
【0064】
すなわち、まず、多視点カメラに含まれる1台のカメラ、例えば、中央位置付近に配置されたカメラについての遠景画像を遠景画像作成部2によって作成する(ステップS100)。この遠景画像の作成は、まず、CGデータ記憶部1から多視点カメラの中心位置または位置座標列が読み出され、この読み出された中心位置または位置座標列に1台のカメラが配置されたときの遠景領域20内にある描画対象物の投影画像(遠景画像)が作成される。このようにして作成された投影画像はCGデータ記憶部1に確保されている画像メモリに書き込まれて記憶される。
【0065】
その後、これらの作成された遠景画像を遠景画像混色3によって、アンチエイリアシングする(ステップS101)。続いて、近景領域拡張部12によって、近景領域を拡張し(ステップS102)、この拡張された近景領域を用いて、多視点カメラに含まれる1台のカメラ、例えば、中央位置付近に配置されたカメラについての近景画像を作成し(ステップS103)、この作成された近景画像を、近景画像混色部5によってアンチエイリアシングする(ステップS104)。続いて、アンチエイリアシングされた近景画像から、近景画像混色除去部13によってRGB値の混色除去する(ステップS105)。
【0066】
次いで、遠景ボード描画部6によって遠景ボードの投影画像を描画する(ステップS106)。すなわち、多視点カメラに含まれる1つのカメラが選択され、そのカメラによって遠景ボードの投影画像が描画される。このとき、遠景画像作成部2によって作成された遠景画像がCGデータ記憶部1から読み出され、遠景ボード全体を覆うようにテクスチャマッピングによって貼り付けられる。これらの処理は、多視点カメラに含まれる全てのカメラについて行われる(ステップS107、S108)。
【0067】
次に、中景領域拡張部14によって、中景領域を拡張する(ステップS109)。続いて、多視点カメラに含まれる1つのカメラが選択され、この選択されたカメラによって上記拡張された中景領域内にある描画対象物の投影画像(中景画像)が中景画像描画部7によって描画される(ステップS110)。この描画された中景画像を中景画像混色部8によって、アンチエイリアシングする(ステップS111)。これらの中景画像の描画処理およびアンチエイリアシング処理は、多視点カメラに含まれる全てのカメラについて行われる(ステップS112、S113)。
【0068】
次に、多視点カメラに含まれる全てのカメラについて、近景ボード描画部9によって近景ボードの投影画像を描画する(ステップS114、S115、S116)。すなわち、多視点カメラに含まれる1つのカメラが選択され、この選択されたカメラによって近景ボードの投影画像が描画される(ステップS114)。このとき、近景画像作成部4によって作成された近景画像がCGデータ記憶部1から読み出されて近景ボード全体を覆うように、テクスチャマッピングによって貼り付けられる。これらの処理は、多視点カメラに含まれる全てのカメラについて行われる(ステップS115、S116)。
【0069】
次に、画素配列変換部10によって、多視点画像を立体表示可能な形式の画像に変換し(ステップS117)、その後、提示部8によって上記立体表示可能な形式の画像を立体画像として提示する(ステップS118)。
【0070】
これら図24、図25に示す処理手順は、図26、図27に示す第2具体例の処理手順のように、多視点カメラのうちのある1つのカメラによって、遠景ボードの投影画像、中景領域内の描画対象物の投影画像、近景ボードの投影画像の順番で連続して描画した後(ステップS106、S109、S110、S111、S114)、カメラを切り替えて、同じ順番で描画するように構成しても構わない(ステップS120、S121)。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の立体画像描画装置によれば、中景の多視点画像を描画する際に、遠景と中景の境界より少しだけ奥まで描画範囲を伸ばすことによって、遠景と中景の描画結果の境界に切れ目が表示されないようにすることができる。また、近景領域の単視点画像を描画する際に、中景と近景の境界より少しだけ奥方向に描画範囲を伸ばすとともに、近景の単視点画像にアンチエイリアシングを施すタイミングを、後段の多視点画像を描画するタイミングまで遅延させることによって、中景と近景の描画結果の境界に切れ目が表示されないようにすることができる。その結果、遠景ボードあるいは近景ボードをまたいで描画対象物が配置されている場合であっても、その描画対象物にアンチエイリアシングを施して、輪郭線の画質を向上させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 CGデータ記憶部
2 遠景画像作成部
3 遠景画像混色部
4 近景画像作成部
5 近景画像混色部
6 遠景ボード描画部
7 中景画像描画部
8 中景画像混色部
9 近景ボード描画部
10 画素配列変換部
11 提示部
12 近景領域拡張部
13 近景画像混色除去部
14 中景領域拡張部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多視点カメラに関するデータと、描画対象物の形状に関するデータと、遠景領域および近景領域の範囲に関するデータと、描画処理の手順を記述したプログラムに関するデータと、を少なくとも含んだデータを記憶するとともに画像メモリを有するデータ記憶部と、
前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスの立体画像を描画するために必要なデータを読み出して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物の投影画像である遠景画像を作成し、作成された1枚の遠景画像を前記画像メモリに書き込む遠景画像作成部と、
前記遠景画像作成部によって作成された前記遠景画像を前記画像メモリから読み出して、前記遠景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画素に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより前記遠景画像を修正し、この修正された前記遠景画像を前記画像メモリに記憶する遠景画像混色部と、
前記データ記憶部から近景領域の範囲に関するデータを読み出して、前記近景領域の範囲を奥方向に伸ばすことにより前記近景領域を拡張する近景領域拡張部と、
前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスの立体画像を描画するために必要なデータを読み出して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって、前記近景領域拡張部によって拡張された前記近景領域内にある描画対象物の投影画像である近景画像を作成し、作成された1枚の近景画像を前記画像メモリに書き込む近景画像作成部と、
前記近景画像作成部によって作成された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、前記近景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画像に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより前記近景画像を修正し、この修正された前記近景画像を前記画像メモリに記憶する近景画像混色部と、
前記近景画像混色部によって修正された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、修正された前記近景画像の画素のうち、前記近景画像混色部によって背景色と混合された画素を見つけ、前記画素の色を、混合される前の色に置き換える近景画像混色除去部と、
前記遠景画像混色部によって修正された前記遠景画像を前記画像メモリから読み出して、修正された前記遠景画像を、任意の奥行きに配置されたコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、その四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込む遠景ボード描画部と、
前記データ記憶部から遠景領域および近景領域の範囲に関するデータを読み出して、前記遠景領域と近景領域との間にある中景領域の範囲に関するデータを計算し、前記中景領域の範囲を奥方向に伸ばして拡張する処理を行う中景領域拡張部と、
前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスを描画するために必要なデータを読み出して、前記中景領域内にある描画対象物の投影画像である中景画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された各中景画像を前記画像メモリに書き込む中景画像描画部と、
前記中景画像描画部によって描画された各中景画像を前記画像メモリから読み出して、各中景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画素に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより修正された中景画像を作成し、修正された前記中景画像のそれぞれを前記画像メモリに記憶する中景画像混色部と、
前記近景画像混色部によって修正された前記近景画像を、前記画像メモリから読み出して、前記近景画像を、任意の奥行きに配置されたコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、その四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込む近景ボード描画部と、
前記画像メモリから、前記遠景ボード描画部、前記中景画像描画部、および前記近景ボード描画部によって描画された複数枚の画像を読み出して、画素配列を並べ替えて立体表示可能な形式の画像に変換し、前記画像メモリに書き込む画素配列変換部と、
前記画素配列変換部によって作成された立体表示可能な形式の前記画像を前記画像メモリから読み出して、観察者に提示する提示部と、
を備えていることを特徴とする立体画像描画装置。
【請求項2】
前記データ記憶部の前記画像メモリは、色成分の輝度を表すカラー値と、不透明度を表すアルファ値を記憶することのできる形式の画像メモリであり、
前記近景画像作成部は、前記近景画像が記憶される前記画像メモリの全画素のアルファ値をゼロに初期設定し、この初期設定された画像メモリに対して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって作成された前記近景領域内にある描画対象物の投影画像の色成分の輝度値を書き込むとともに、新たに書き込まれた画素のアルファ値を非ゼロに書き換える処理を行い、
前記近景ボード描画部は、前記近景画像作成部によって作成された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、その近景画像のアルファ値が非ゼロの画素だけを、前記近景ボードを表すコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、前記四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込むことを特徴とする請求項1記載の立体画像描画装置。
【請求項3】
前記中景画像描画部は、前記中景画像を、前記遠景ボード描画部において、同じカメラによって描画された前記遠景ボードの投影画像が記憶された画像メモリに上書きして記憶することを特徴とする請求項1または2記載の立体画像描画装置。
【請求項4】
前記近景ボード描画部は、前記近景画像の前記近景ボードの投影画像を、前記中景画像描画部において、同じカメラによって描画された前記中景画像が記憶された画像メモリに上書きして記憶することを特徴とする請求項3記載の立体画像描画装置。
【請求項5】
色成分の輝度を表すカラー値と、不透明度を表すアルファ値を記憶することのできる形式の画像メモリの全画素のアルファ値をゼロに初期設定するステップと、
多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物の投影画像である遠景画像を作成し、前記画像メモリに記憶するステップと、
前記遠景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、
近景領域を奥方向に拡張するステップと、
前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって、拡張された近景領域にある前記描画対象物の投影像を計算し、前記画像メモリの近景画像を記憶する領域に対して前記投影像の色成分の輝度値を書き込むとともに、新たに書き込まれた画素のアルファ値を非ゼロに書き換えるステップと、
前記近景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、
前記アンチエイリアシング処理された前記近景画像から、背景色と混合された画素を見つけ、この画素の色を混合される前の色に置き換えるステップと、
前記多視点カメラによって前記ボードの多視点画像を描画し、前記画像メモリに記憶するステップと、
中景領域を奥方向に拡張するステップと、
前記拡張された中景領域内にある前記描画対象物の多視点画像を描画し、前記画像メモリに記憶するステップと、
前記中景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、
前記アンチエイリアシング処理された前記中景画像を、同じカメラによって描画された前記遠景ボードの多視点画像が記憶されている前記画像メモリに上書きして記憶するステップと、
前記多視点カメラに含まれるすべてのカメラによって近景ボードの多視点画像を描画し、同じカメラによって描画された前記中景画像が記憶されている前記画像メモリに上書きして多視点画像として記憶するステップと、
前記多視点画像を立体表示可能な形式の画像に変換するステップと、
前記立体表示可能な形式の画像を立体画像として提示するステップと、
を備えていることを特徴とする立体画像描画方法。
【請求項1】
多視点カメラに関するデータと、描画対象物の形状に関するデータと、遠景領域および近景領域の範囲に関するデータと、描画処理の手順を記述したプログラムに関するデータと、を少なくとも含んだデータを記憶するとともに画像メモリを有するデータ記憶部と、
前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスの立体画像を描画するために必要なデータを読み出して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物の投影画像である遠景画像を作成し、作成された1枚の遠景画像を前記画像メモリに書き込む遠景画像作成部と、
前記遠景画像作成部によって作成された前記遠景画像を前記画像メモリから読み出して、前記遠景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画素に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより前記遠景画像を修正し、この修正された前記遠景画像を前記画像メモリに記憶する遠景画像混色部と、
前記データ記憶部から近景領域の範囲に関するデータを読み出して、前記近景領域の範囲を奥方向に伸ばすことにより前記近景領域を拡張する近景領域拡張部と、
前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスの立体画像を描画するために必要なデータを読み出して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって、前記近景領域拡張部によって拡張された前記近景領域内にある描画対象物の投影画像である近景画像を作成し、作成された1枚の近景画像を前記画像メモリに書き込む近景画像作成部と、
前記近景画像作成部によって作成された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、前記近景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画像に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより前記近景画像を修正し、この修正された前記近景画像を前記画像メモリに記憶する近景画像混色部と、
前記近景画像混色部によって修正された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、修正された前記近景画像の画素のうち、前記近景画像混色部によって背景色と混合された画素を見つけ、前記画素の色を、混合される前の色に置き換える近景画像混色除去部と、
前記遠景画像混色部によって修正された前記遠景画像を前記画像メモリから読み出して、修正された前記遠景画像を、任意の奥行きに配置されたコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、その四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込む遠景ボード描画部と、
前記データ記憶部から遠景領域および近景領域の範囲に関するデータを読み出して、前記遠景領域と近景領域との間にある中景領域の範囲に関するデータを計算し、前記中景領域の範囲を奥方向に伸ばして拡張する処理を行う中景領域拡張部と、
前記データ記憶部からコンピュータグラフィックスを描画するために必要なデータを読み出して、前記中景領域内にある描画対象物の投影画像である中景画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された各中景画像を前記画像メモリに書き込む中景画像描画部と、
前記中景画像描画部によって描画された各中景画像を前記画像メモリから読み出して、各中景画像に投影されている描画対象物の輪郭線近傍の各画素に対して、前記画素の色と、前記画素に隣接する複数の画素の色を混合する処理を行うことにより修正された中景画像を作成し、修正された前記中景画像のそれぞれを前記画像メモリに記憶する中景画像混色部と、
前記近景画像混色部によって修正された前記近景画像を、前記画像メモリから読み出して、前記近景画像を、任意の奥行きに配置されたコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、その四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込む近景ボード描画部と、
前記画像メモリから、前記遠景ボード描画部、前記中景画像描画部、および前記近景ボード描画部によって描画された複数枚の画像を読み出して、画素配列を並べ替えて立体表示可能な形式の画像に変換し、前記画像メモリに書き込む画素配列変換部と、
前記画素配列変換部によって作成された立体表示可能な形式の前記画像を前記画像メモリから読み出して、観察者に提示する提示部と、
を備えていることを特徴とする立体画像描画装置。
【請求項2】
前記データ記憶部の前記画像メモリは、色成分の輝度を表すカラー値と、不透明度を表すアルファ値を記憶することのできる形式の画像メモリであり、
前記近景画像作成部は、前記近景画像が記憶される前記画像メモリの全画素のアルファ値をゼロに初期設定し、この初期設定された画像メモリに対して、前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって作成された前記近景領域内にある描画対象物の投影画像の色成分の輝度値を書き込むとともに、新たに書き込まれた画素のアルファ値を非ゼロに書き換える処理を行い、
前記近景ボード描画部は、前記近景画像作成部によって作成された前記近景画像を前記画像メモリから読み出して、その近景画像のアルファ値が非ゼロの画素だけを、前記近景ボードを表すコンピュータグラフィックスの四角形モデル全体を覆うように貼り付けた上で、前記四角形モデルの投影画像を、前記多視点カメラに含まれる各カメラによって描画し、描画された複数枚の投影画像を前記画像メモリに書き込むことを特徴とする請求項1記載の立体画像描画装置。
【請求項3】
前記中景画像描画部は、前記中景画像を、前記遠景ボード描画部において、同じカメラによって描画された前記遠景ボードの投影画像が記憶された画像メモリに上書きして記憶することを特徴とする請求項1または2記載の立体画像描画装置。
【請求項4】
前記近景ボード描画部は、前記近景画像の前記近景ボードの投影画像を、前記中景画像描画部において、同じカメラによって描画された前記中景画像が記憶された画像メモリに上書きして記憶することを特徴とする請求項3記載の立体画像描画装置。
【請求項5】
色成分の輝度を表すカラー値と、不透明度を表すアルファ値を記憶することのできる形式の画像メモリの全画素のアルファ値をゼロに初期設定するステップと、
多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって遠景領域内にある描画対象物の投影画像である遠景画像を作成し、前記画像メモリに記憶するステップと、
前記遠景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、
近景領域を奥方向に拡張するステップと、
前記多視点カメラの中央位置付近に配置した1台のカメラによって、拡張された近景領域にある前記描画対象物の投影像を計算し、前記画像メモリの近景画像を記憶する領域に対して前記投影像の色成分の輝度値を書き込むとともに、新たに書き込まれた画素のアルファ値を非ゼロに書き換えるステップと、
前記近景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、
前記アンチエイリアシング処理された前記近景画像から、背景色と混合された画素を見つけ、この画素の色を混合される前の色に置き換えるステップと、
前記多視点カメラによって前記ボードの多視点画像を描画し、前記画像メモリに記憶するステップと、
中景領域を奥方向に拡張するステップと、
前記拡張された中景領域内にある前記描画対象物の多視点画像を描画し、前記画像メモリに記憶するステップと、
前記中景画像をアンチエイリアシング処理するステップと、
前記アンチエイリアシング処理された前記中景画像を、同じカメラによって描画された前記遠景ボードの多視点画像が記憶されている前記画像メモリに上書きして記憶するステップと、
前記多視点カメラに含まれるすべてのカメラによって近景ボードの多視点画像を描画し、同じカメラによって描画された前記中景画像が記憶されている前記画像メモリに上書きして多視点画像として記憶するステップと、
前記多視点画像を立体表示可能な形式の画像に変換するステップと、
前記立体表示可能な形式の画像を立体画像として提示するステップと、
を備えていることを特徴とする立体画像描画方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【公開番号】特開2010−224886(P2010−224886A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71682(P2009−71682)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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