説明

立体画像表示装置および立体画像処理装置

【課題】生体への影響の少ない3D表示方式において、複数の位置から立体画像を観察することを可能とする。
【解決手段】立体表示装置100を、表示装置の観察者に近い位置に配置される第1の表示手段であるホログラフィックスクリーン101と、ホログラフィックスクリーン101に映像を投射するプロジェクタ102と、観察者からみて奥側に配置される第2の表示手段である表示装置103と、表示する画像を処理する立体画像処理装置104と、によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数視点から立体画像を視認可能な立体画像表示装置および立体画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な方式の立体視可能な表示装置が提案されている。異なる視点から対象物をとらえることにより得られる映像において、各映像間のずれを視差とよぶ。これを利用して奥行き方向の距離を知覚する方式として、2視点の画像を利用して立体視する2眼式や、それ以上の視点数の画像を利用して、複数の位置からより自然な立体視を可能とする多眼式、更に視点数を増やし、瞳に2つ以上の視点画像が入射するようにした超多眼式などが知られている。
【0003】
2眼式の例としては、バリアを利用して映像を左右視点方向に分離するパララクスバリア方式や、時分割で左右の映像を表示し、シャッタを備えた眼鏡を利用して立体視を行う時分割方式などがあり、多眼式の例としてはレンティキュラレンズを利用したレンティキュラ方式などがある。
【0004】
例えば、下記特許文献1に記載の「自動立体ディスプレイ装置」には、ディスプレイの画素の前にレンティキュラレンズを斜めに配置し、各画素においてレンティキュラレンズとの対応位置に応じて異なる視点の画像を表示することにより、複数の視点から立体画像を表示可能なレンティキュラ方式の立体表示装置が開示されている。
【0005】
立体映像を見る場合、様々な要因により生体に影響があることが知られている。各視点画像間において、視差が大きいほど奥行き方向の距離が増大し、表示画面上に対して大きく飛び出す、あるいは奥に引っ込んで見えることとなるが、この時、視差が大きすぎると輻輳と調節の矛盾などに起因し、立体映像の観察者に疲労感を与えたり、気分が悪くなったりなどの生理的な影響を与える。輻輳とは、眼球運動の一種であり、観察する対象に視線を交差しようとする動きであり、調節とはピントを合わせる事で、眼の水晶体の厚みを変え屈折率を変える動きの事である。図17に示すように、視点1205a・1205bで立体視した場合に、輻輳距離Bは立体映像1207に合うのに対し、調節距離Aは表示画面1215に合うため矛盾が生じる。
【0006】
このような原因に基づく疲労感などの生理的影響は、立体映像を見る場合に長時間視聴できないなど大きな問題となる。これらの症状は、2眼式や通常の多眼式の場合に起こりやすく、超多眼式のように瞳孔にわずかにズレた複数の視点画像が提示される場合には、それらを一致させようとピント調節機能が働き、ピントは空間上の立体像付近で合うこととなり、調節と輻輳が一致するため生体への影響は軽微となる。しかしながら、超多眼式では、多数の視点画像を用意する必要があることから、解像度の低下や、視点画像の伝送など様々な問題が存在する。
【0007】
そこで、これらの生理的影響が少なく、かつ解像度の低下のない新たな立体方式が提案されている。
【0008】
下記特許文献2に記載の「三次元表示方法及び装置」では、観察者から見て異なった奥行き位置にある複数の表示面に対して、表示対象物体を観察者の視線方向から射影した二次元像を生成し、前記生成された二次元像の輝度を前記各表示面毎に各々独立に変化させて表示している。多くのエッジを持った2つの画像を透明な前後2面に重ね合わせて表示し、その前後2面の画像の輝度比を変化させることにより、2面の間の任意の奥行き位置に対象を知覚することが可能となり、視聴時の疲労も軽微であるとの記載がある。
【0009】
【特許文献1】特開平9-236777号公報
【特許文献2】特開2000-214413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、生体への生理的影響が少なく、解像度の低下の少ない立体表示方法が提案されているが、観察者から見て2つの2次元画像が重なるように表示されることから、視点位置がずれると前方の画像と後方の画像がずれ、2重に見えてしまうという問題点があった。たとえ、ヘッドトラッキングなどにより観察者の視点位置を追従させたとしても、複数人により同時に立体画像を視聴することが出来ないという問題点があった。
【0011】
また、立体画像の知覚位置は2面の間であるため、より立体的に表示するためには2面間の距離をとる必要があり装置の奥行き方向の長さが大きくなってしまうという問題点もあった。
【0012】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、生理的影響の少ない立体表示方式において、多視点からの立体画像の知覚を可能とするとともに、装置の薄型化に貢献する立体画像表示装置、および前記立体画像表示装置に表示するための画像を生成する立体画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一観点によれば、奥行き方向の異なる位置に配置された第1の表示手段と第2の表示手段とを備え、各表示面に同一の物体を異なる輝度で表示することにより立体感を持たせる立体表示装置において、前記第2の表示手段は、第1の表示手段の表示面に対して奥側に配置され、視点位置に応じた複数の表示方向に対して異なる画像を表示可能であるとともに、前記表示方向に応じて前記第1の表示手段に表示された画像の射影画像を表示することを特徴とする立体表示装置が提供される。これにより、視点位置に応じて異なる画像を提示することができる。この際、視点位置と画像表示とを対応付けして行うのが好ましい。
【0014】
前記第2の表示手段に表示される射影画像は、前記第1の表示手段と第2の表示手段との距離と、前記第2の表示手段における表示方向に応じて、前記第1の表示手段に表示される画像から生成されることが好ましい。前記第2の表示手段における複数の表示方向において、隣合う表示方向ごとに表示する画像に一様な視差を持たせることが好ましい。
【0015】
前記一様な視差は、前記第2の表示手段により視認される画像が、前記第2の表示手段よりも奥になるような視差であっても良い。また、前記第2の表示手段は、表示方向に応じて異なる画像を表示するレンティキュラーレンズであっても良い。前記第1の表示手段は、例えば、フロントプロジェクション方式による表示手段であることが好ましい。
【0016】
前記第1の表示手段に表示する画像と、前記第2の表示手段に表示するための前記射影画像とを異なる輝度比で生成することが好ましい。前記第2の表示手段に表示する射影画像は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段の距離と、前記第2の表示手段における表示方向に応じて、前記第1の表示手段に表示する画像より算出するのが好ましい。
【0017】
本発明の他の観点によれば、入力された多重化データを逆多重化し、視差マップと符号化された画像データとに分離する逆多重化手段と、前記視差マップを解析し、第1の表示手段に表示する画像の輝度と、第2の表示手段に表示する画像の輝度とを視差の大きさに基づいて決定する視差マップ解析手段と、送られてきた符号化された画像データを復号する復号手段と、復号化された画像データと視差マップ解析手段により得られた画像の輝度情報とに基づいて出力する画像変換手段と、を有することを特徴とする立体画像処理装置が提供される。
【0018】
さらに、前記第1の表示手段の表示面と前記第2の表示手段との距離、想定される観察者と前記第1の表示手段の表示面との距離に関する情報を、指示可能とするパラメータ入力手段を有することが好ましい。前記画像変換手段は、復号された画像データの輝度を視差マップ解析手段からの情報を元に変更し、前記第1の表示手段に送る一方、パラメータ入力手段らの距離等の情報と輝度比情報に従って前記第2の表示手段に表示する為の画像を生成し、各表示手段に送る。
【発明の効果】
【0019】
本発明の立体画像表示装置によれば、奥行き方向の異なる位置に配置された第1の表示手段と第2の表示手段を備え、各表示面に同一の物体を異なる輝度で表示することにより立体感を持たせる立体表示装置において、第2の表示手段は観察者に対して第1の表示手段より奥側に配置され、角度に応じて異なる画像を表示可能であるとともに、角度に応じて第1の表示手段に表示された画像の射影画像を表示することにより、輝度比によって立体感を表示する生体への影響が軽微な立体方式において、複数視点からの立体画像の視聴が可能となる。
【0020】
また、従来の立体表示装置では複数視点に立体画像を表示する際に解像度の低下が問題となるが本発明によれば、第2の表示手段では解像度が低下するが第1の表示手段の解像度は低下しないため、解像度の低下により画像が粗く見えるのを抑制することが可能となる。視点位置がずれると前方の画像と後方の画像がずれ、2重に見えてしまうことがなくなる。
【0021】
また、前記第2の表示手段に表示される射影画像は、前記第1と第2の表示手段の距離と、前記第2の表示手段における表示方向に応じて、前記第1の表示手段に表示される画像から生成することにより、複数の画像をあらかじめ用意する必要がないため画像データの送信に際しデータ量が増加するのを防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明を行う。
(第1の実施の形態)
【0023】
本発明の第1の実施の形態による立体画像技術について、図面を参照しながら説明する。以下では、「3D」を3次元または立体を、「2D」を2次元を意味する用語として用い説明を行なう。
【0024】
図1は、本実施の形態による立体表示装置の概略構成例を示す斜視図である。図1に示す立体表示装置100は、観察者に近い位置に配置される第1の表示手段であるホログラフィックスクリーン101、およびこのホログラフィックスクリーン101に映像を投射するプロジェクタ102と、観察者からみて奥側に配置される第2の表示手段である表示装置103と、表示する画像を処理する立体画像処理装置104と、を有している。
【0025】
ホログラフィックスクリーン101は、特殊なホログラフィック素子を使用したスクリーンであり、前方からの光のうち特定の方向からの光のみを反射し、表示させるとともに、他の方向の光は透過するもので、後方の背景はスクリーンを透過して見ることが可能である。既に実用化されている公知技術であり、特定の角度からの後方からの光のみ表示するとともに、他の方向からの光には影響を与えず透過するリアプロジェクション型の装置も存在する。ここでは、図1に示すようにフロントプロジェクション型の装置を例にして説明する。ホログラフィックスクリーン101には、プロジェクタ102によって画像が投影される。ホログラフィックスクリーン101が、第1の表示手段の表示面となる。
【0026】
第2の表示手段である表示装置103は、図2に示すように液晶表示部201と、その前方に配置されたレンティキュラレンズ202によって構成される。図2は、表示装置103を真上から見た時の概略図であり、液晶表示部201における1から4の数値は画素グループを示している。図面の下方の1から4の数字は、視点位置を表している。液晶表示部201において、数字1が付された画素からの光は、レンティキュラレンズ202により、下方に示されている視点位置1の位置に集まる。同様に、2から4までの画素の光についても、それぞれ視点位置2から4までに集まる。従って、それぞれの視点位置からは対応した画素グループ以外は見えなくなる。
【0027】
図3は、液晶表示部201を正面から見た図であり、1から4までの数値で示すように、画素を縦方向にグループに分けし、番号によってそれぞれ異なる画像を表示する。図2に示したように、レンティキュラレンズを通して画像を見ることにより、視点位置に応じて異なる画像が見えることになる。このように、表示装置103は各視点位置に対応した複数の表示方向に対して、異なる映像を表示することが可能である。
【0028】
また、表示装置103上の画像は図2に示すように、複数視点の画像を表示するため、各視点ごとに見える画像は、本来、表示装置が持つ解像度よりも低下するが、前面のスクリーン101に表示された画像の解像度は低下しないため、複数視点から立体画像を視認できる上に、解像度の低下が少なく高精細な立体画像を表示できる。
【0029】
ここで、本実施の形態による3D表示方式について図4を参照しながら説明する。
【0030】
図4において、ホログラフィックスクリーン101上にプロジェクタ102(図1)によって表示される像を301で示し、表示装置103上に表示される像を302で示し、観察者の視点位置を303とし、視点位置303から見た観察者が視認する視認画像を304とする。表示画像302は、視点位置303から見たときの表示画像301の射影像となっており、視点位置303からは301、302の画像は完全に重なって見えるものとする。表示画像301と302との各々の輝度を、視点位置303から見て2つの画像が重なった時の相対的な輝度を一定に保ちつつ、表示画像301、302の輝度の割合を変化させることにより、実際に観察者が視点位置303から視認する視認画像304の位置が変化する。尚、各表示手段101、103に表示している画像はともに2D化像である。
【0031】
例えば、表示画像301と302を重ねたときの2つを加算した輝度が100とすると、表示画像301の輝度を100、302の輝度を0とした時には視認画像304はホログラフィックスクリーン101上に視認され、逆に表示画像301の輝度を0、302の輝度を100とすると、視認画像304は表示装置103上に視認される。表示画像301の輝度を50、表示画像302の輝度を同様に50とすると、視認画像304はホログラフィックスクリーン101と表示装置103の中間地点に視認される。そして、スクリーン101上の表示画像301を60、表示装置103上の表示画像302を40とすると、中間地点より輝度がより高い表示画面側、すなわち中間地点よりスクリーン101に近い位置に視認されることになる。
【0032】
このように、視認される画像の奥行き方向の位置を変化させることができることから、観察者から見て手前にある物体の場合にはスクリーン101上の輝度が高く、奥側にある物体の場合には表示装置103上の輝度の方が高くなるように設定し、2つの物体を表す画像を同時に表示することにより、異なる奥行き位置に2つの物体を認識できる。
【0033】
図5は、その一例を示す図である。図5は、立体表示装置100(図1)を横方向から見た図であり、説明の簡単化のため構成を簡略化して示している。ホログラフィックスクリーン101上に画像401、画像403が表示されており、表示装置103上に表示されている画像402、404はそれぞれ画像401と403の射影像である。画像401と402、画像403と404を重畳して見た時の合計した輝度をそれぞれ100とし、画像401の輝度を30、402の輝度を70、画像403の輝度を70、404の輝度を30とする。この時、画像401と402とを重畳してみたときに視認される画像は符号406で示され、画像403と404によって視認される画像は符号407で示される。図5中の点線405は、スクリーン101と表示装置103の奥行き位置の中間を示しており、視認画像407は視認画像406よりも観察者から見て手前側に見えることとなり、3D画像として認識できる。
【0034】
このような輝度比を利用した3D表示方法では、2眼式などの3D表示方法に比べ、観察者の疲労が少ないことが知られているが、従来の方法では、この3D表示方法では視点位置が正面の1箇所に限定され、その位置とは異なる位置から見た場合にスクリーン101上の画像と表示装置103上の画像は完全に重ならず単純に2重像になって見えてしまい、スクリーン101と表示装置103との間の距離内で見える位置が変わることがなく、3Dとして認識することができない。
【0035】
本実施の形態による表示装置103は、前述の通り、視点位置に応じて異なる画像を提示することができる。図2において、視点位置1と2の距離および視点位置3と4の距離は、左右の眼の間隔であるとする。立体画像処理装置104には、表示する奥行き位置に応じて輝度比が設定された、プロジェクタ102に表示する画像と表示装置103へ表示する表示角度に応じた複数の画像が入力される。この入力画像は、入力順序、あるいは画像のヘッダ情報などからプロジェクタ102と表示装置103とのいずれに表示すべき画像かを判別可能であり、立体画像処理装置104によって判別される。
【0036】
立体画像処理装置104は、図2の視点位置1から見える画素グループ1と、視点位置2から見える画素グループ2と、の部分に、視点位置1と2との中間地点からのホログラフィックスクリーン101の画像の射影画像に対応する画像を選択し表示する。同様に、視点位置3から見える画素グループ3と、視点位置4から見える画素グループ4と、の部分に、視点位置3と4の中間地点からのホログラフィックスクリーン101の画像の射影画像に対応する画像を表示する。視点位置1と2の位置に左右の眼が来るように観察する場合、左眼では画素グループ1が、右眼では画素グループ2のみが見え、画素グループ3,4の画像は見えず、同様に視点位置3と4の位置に左右の眼が来るように観察する場合、画素グループ1,2の画像は見えなくなる。
【0037】
図6は、視点位置1と2に左右の眼が来るように観察する場合を示しており、立体表示装置100(図1)を正面よりやや左側から見た図である。観察方向は符号Aで示す位置を基点とした方向であり、この方向は図2における視点位置1、2に対応する方向である。表示装置103上の表示画像502は、視点位置1,2から見た画像であり、視点位置1から見える画像は画素グループ1、視点位置2から見える画像は画素グループ2の画像であるが、ここでは共に同じ画像を表示している為、表示画像502として視認される。ホログラフィックスクリーン101上の表示画像501と、表示装置103上の表示画像502はちょうど重なって見え、表示画像501と表示画像502の輝度比を変えることで、画像の視認される奥行き位置が変化する。表示画像503は、図2の画素グループ3,4に対応して表示されている表示装置103上の画像であり、表示画像502と同時に表示されているものの、前述の通り、観察方向Aからは見えないため、表示画像501と表示画像502の重なった3D画像だけが視認できる。視点位置3と視点位置4の位置から観察した場合には、表示画像501と表示画像503だけが見え、表示画像502は見えなくなる。このようにして、観察者の疲労が少ない3D表示方式を用いて、複数の視点方向から3D画像を認識することが可能となる。
【0038】
尚、図1等においては、発明の理解を容易にするため、各部品の大小関係を誇張して記載しており、各部品の大きさは実際とは異なる。また、ここでのホログラフィックスクリーンは前方投影型を例にして説明したが、後方投影型を利用してもよい。
【0039】
図7は、本実施の形態の第1変形例による立体画像表示装置の一構成例を示す図である。図7に示すように、ホログラフィックスクリーンの代わりに、ハーフミラー551と通常の液晶表示装置553などのディスプレイを使用する構成としてもよい。平置きした液晶表示装置553などのディスプレイの光をハーフミラー551によって点線555の方向に反射させるとともに、ハーフミラー551を透過して、角度に応じた複数の画像を表示可能な多視点ディスプレイ557の映像を見ることによって、同様の立体表示装置を構成することが可能となる。ここに示した以外にも、前方の表示装置を通して後方の表示装置が視認できる構成であれば、特に構成に関する限定はない。
【0040】
また、ここでは、レンティキュラーレンズを使用した第2の表示手段である表示装置103は4視点としたが、この視点数4に限るわけではなく、より多視点であっても、少なくてもよい。
【0041】
図8は、本実施の形態の第2変形例による立体画像表示装置の一構成例を示す図である。
【0042】
図8に示すように、パララクスバリア方式を用いたディスプレイであってもよい。図8(a)は、立体視に関する原理を示す図であり、図8(b)は、パララクスバリア方式で表示される画面の例を示す図である。図8(a)に示すように、図8(b)に示すような左眼画像と右眼画像とが水平方向1画素おきに交互にならんだ形に配置された画像を、画像表示パネル601に表示し、同一視点の画素の間隔よりも狭い間隔のスリットを持つパララクスバリア602を画像表示パネル601の前面(視点側)に置くことにより、図8(a)における画像表示パネル601に表示された画像は、バリア602に遮られ、左眼603からは左眼画像部分だけを、右眼604からは右眼画像の部分だけを観察することになり、立体視が可能となる。
【0043】
他にも、レンティキュラーレンズを斜めに配置して多視点と高解像度を実現したディスプレイなど、多視点ディスプレイであればどれを使用してもよい。
【0044】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態による立体画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。
【0045】
図9は、本実施の形態による立体表示装置と立体画像処理装置の一構成例を概略的に示す図である。図9に示す立体表示装置700は、観察者に近い位置に配置される第1の表示手段であるホログラフィックスクリーン101と、プロジェクタ102と、観察者からみて奥側に配置される第2の表示手段であるレンティキュラ方式の表示装置103を含んで構成されている。立体表示装置700に表示する画像を生成する立体画像処理装置701が立体表示装置700の外部に接続されている。尚、上述の実施の形態と同一の機能を有する部材に関しては、同一の符号を付している。
【0046】
立体画像処理装置701は、立体表示装置700に表示するための画像を生成し、立体表示装置700に送る。立体表示装置700は、立体画像処理装置701からの映像を、プロジェクタ102及び表示装置103に送り、3D画像を表示する。
【0047】
図10は、本実施の形態による立体画像処理装置701の一構成例を示す機能ブロック図である。図10に示すように、立体画像処理装置701は、逆多重化手段801、視差マップ解析手段802、復号手段803、画像変換手段804、パラメータ入力手段805、を有する。ここでは、符号化された表示画像データに、奥行き情報として視差マップが多重化されたデータが入力されるものとする。立体画像処理装置701に入力された多重化データは、逆多重化手段801によって視差マップと符号化された画像データとに分離される。視差マップ解析手段802は視差マップを解析し、プロジェクタ102によってスクリーン101に表示する画像の輝度と、表示装置103に表示する画像の輝度とを視差の大きさに基づいて決定し、その情報を画像変換手段804に送る。復号手段803は、送られてきた符号化された画像データを復号し、画像変換手段804に送る。パラメータ入力手段805はスクリーン101と表示装置103との距離や、想定される観察者とスクリーンとの距離等の情報が、観察者あるいは使用するユーザーによって指示できるように設けられている。画像変換手段804は、復号された画像データの輝度を視差マップ解析手段802からの情報を元に変更し、プロジェクタ102に送る一方、パラメータ入力手段805からの距離等の情報と輝度比情報に従って表示装置103に表示する為の画像を生成し、各表示手段に送る。
【0048】
ここで、表示装置103は、レンティキュラレンズを用いた表示装置であり、単体で立体画像を表示することも可能である。図11に示すように、ある物体を左眼905、右眼907の位置から撮影した画像を用意し、左眼で表示装置に表示された左眼画像902、右眼で右眼画像903を見ると、ここでは左眼用の画像902が左側に、右側用の画像903が右側にあるよう撮影されており、視差が存在することから、立体画像901を表示装置111の奥側に視認できる。
【0049】
そこで、これを利用し、表示装置103において、第1の実施の形態では、隣り合う表示角度毎に、すなわち、画素グループ1と画素グループ2とにまったく同一の画像を表示したが、この画像を左右にずらして画面全体に一様に視差を持つようにしてそれぞれ画素グループ1、画素グループ2に表示するようにする。これにより、表示装置103に表示される画像自体が表示装置103よりも奥側にあるかのように視認される。
【0050】
図12(a)は、画素グループ1、2に同一の画像を表示する場合、図12(b)は視差を生じさせて表示する場合の画像である。それぞれにおいて、上側の931、951が画素グループ1、下側の933、953が画素グループ2に表示する図である。実施形態1で使用した画像図12(a)では、表示画像937、941における向かって左側の対応点を比べると点線935で示されるように同じ位置にあり、視差は存在しない。図12(a)と異なり、図12(b)では、表示画像全体に一様な視差が存在する。表示画像957と961を比較すると、表示画像957の左端が点線963の位置にあるのに対し、961における左端は点線965の位置にあり視差が存在している。点線963と965間の距離967は視差の大きさを示している。
【0051】
図12(b)の画像を表示し、視点位置1、2から画像を観察した場合の例を図13に示す。表示装置103には視点位置に応じた複数の表示角度への画像が提示されているが、ここでは視点位置1、2への画像だけを図示する。表示装置103上の画素グループ1に表示される画像1002と画素グループ2に表示される画像1003は、それぞれ右眼では画像1002が、左眼では画像1003だけが見えるため、図11を参照しながら説明したように表示面よりも奥に視認されることとなるため、画像は符号1004の位置に視認されることとなる。
【0052】
ここで、図13に示す画像1002、1003は、観察位置から見たときに画像1004とホログラフィックスクリーン101上の画像1001の射影となり、重なるような大きさに調整されているものとする。そして、画像1001と画像1002、1003の輝度比を変更する。画像1001の輝度を高くし、画像1002、1003の輝度を下げることで画像1004の輝度を下げ、画像1001の方が輝度が高い状態にすると画像1006に示すようにホログラフィックスクリーン101に近い位置に画像が視認できる。また、画像1001の輝度を低くし、画像1002、1003の輝度を上げて画像1004の輝度を上げ、画像1004の方が輝度が高い状態にすると表示装置103よりも奥側に画像1005が視認できることとなる。
【0053】
このように、表示装置103側の画像に視差をつけ立体視の原理を利用することにより、スクリーン101と表示装置103の間の奥行き位置でしか3D画像を視認できなかったものが、表示装置103よりも奥にあるかのように認識させることが可能となる。これにより、スクリーン101と表示装置103との距離を狭めても、より広い位置で立体画像を認識できる為、立体表示装置100を薄型化することが可能になる。また、スクリーン101と表示装置の103の距離を狭めない場合でも、従来よりも、より広い奥行き範囲で立体画像を表示することが可能となる。
【0054】
従って、画像変換手段804(図10)は、ユーザーから表示装置103とホログラフィックスクリーン101の距離、観察者とスクリーン101との距離、プロジェクタ102とスクリーン101との距離、プロジェクタ102とスクリーン101の間の距離に応じた画像の拡大率の変化、及び図13における画像1004を表示する奥行き位置に関する情報をパラメータ入力手段805(図10)から得て、視差マップ解析手段802(図10)からの輝度比情報と合わせて想定される観察者の位置に応じた複数の表示角度ごとに表示装置103に表示する画像を生成する。
【0055】
図14に示すように、画像変換手段804(図10)は、画像データと、プロジェクタ102とスクリーンの距離B、およびプロジェクタ102がどのくらいの距離にどの大きさで表示するかという情報から、スクリーン101に表示したときの画像1001の大きさを算出する。そして、観察者とスクリーン101の距離A、スクリーン101と表示装置103の距離C、表示装置103によって映し出される画像の表示装置103に対しての奥行き位置Dに関する情報から、画像1001の大きさをどのように変えればいいかを算出し、画像1004の大きさを決定する。さらに、画像1004の大きさと、画像1004から観察者までの距離、表示装置103と観察者の距離から表示装置103上に表示する画像を生成する。
【0056】
この時の算出の一例を説明する。表示画像1001の大きさは、プロジェクタ側の拡大率とスクリーンまでの距離からあらかじめ分かっているものとすると、視点位置1005から画像1001までの距離Aと、実際に視点位置から遠い位置に視認される画像1004への距離A+C+Dの距離から、画像1004の大きさは画像1001を(A+C+D)/Aの倍率で拡大したものとなる。これは、それぞれの画像は形が同じで大きさだけが異なる相似の関係にあることから明らかである。
【0057】
また、図15の点線1006で示す三角形を考えると、同様に相似の関係を利用して、画像1002,1003は、画像1004を(A+C)/(A+C+D)の倍率で縮小したものとなる。図16に示すように、表示装置103(図1)上に表示される画像1102と画像1103は、表示装置103によって視認できる画像1101が同じであっても、表示装置103の位置に応じて表示が変わる。それぞれの画像の算出においては、前記のようなある特定の画素についてその位置と先述の距離情報とで三平方の定理等を用いて算出する等、様々な方法がある。また、実際に目視により画像が重なるよう調整する手段を備え、それによって調整してもよい。この時、画像1004は立体視の原理を利用した画像であるが、心理的な要因などにより、画像1004の大きさや立体感が異なって感じられる事もあるが実際に調整する事も可能となる。また、あらかじめ距離情報に応じてどのような大きさ、あるいは表示装置103上での視差をつければよいかという情報を持ったテーブルを用意しておき、このテーブルを参照して算出を行ってもよい。
【0058】
同様に、画素グループ1、2だけでなく3、4についても算出することにより、複数の表示角度へ輝度比の変化による立体表示方法によって3D画像を表示することが可能となるとともに、表示装置103上の画像に視差を持たせることで、立体表示装置の薄型化や、より広い奥行き範囲での3D画像の表示などが可能となる。
【0059】
以上に説明した本発明の実施の形態による立体画像表示装置によれば、奥行き方向の異なる位置に配置された第1の表示手段と第2の表示手段を備え、各表示面に同一の物体を異なる輝度で表示することにより立体感を持たせる立体表示装置において、第2の表示手段は観察者に対して第1の表示手段より奥側に配置され、角度に応じて異なる画像を表示可能であるとともに、角度に応じて第1の表示手段に表示された画像の射影画像を表示することにより、輝度比によって立体感を表示する生体への影響が軽微な立体方式において、複数視点からの立体画像の視聴が可能となる。また、従来の立体表示装置では複数視点に立体画像を表示する際に解像度の低下が問題となっていたが、本実施の形態によれば、第2の表示手段では解像度が低下するが第1の表示手段の解像度は低下しないため、解像度の低下により画像が粗く見えるのを抑制することが可能となるという利点がある。
【0060】
また、上記第2の表示手段に表示される射影画像は、上記第1と第2の表示手段の距離と、上記第2の表示手段における表示方向に応じて、上記第1の表示手段に表示される画像から生成することにより、複数の画像をあらかじめ用意する必要がないため画像データの送信に際しデータ量が増加するのを防ぐことが可能となる。
【0061】
また、上記第2の表示手段における複数の表示角度において、隣合う表示角度ごとに表示する画像に一様な視差を持たせることにより、第2の表示手段に表示している画像を実際の表示位置にとらわれず、第2の表示装置よりも奥の位置や手前の位置にあるように表示することが可能となる。
【0062】
また、第2の表示手段における一様な視差は、奥の方向、すなわち観察者から見て遠い方向になるよう一様な視差とすることにより、第2の表示手段に表示している画像を実際の表示位置よりも奥の位置にあるように表示できる為、第1と第2の表示手段の距離を狭めても立体感を損なうことがないため、立体表示装置を薄型化することが可能となる。
【0063】
また、上記第2の表示手段は、レンティキュラーレンズによって角度に応じて異なる画像を表示することにより、第2の表示手段において液晶ディスプレイなどを利用し、複数の方向で異なる画像を提示することが可能となる。
【0064】
また、上記第1の表示手段は、フロントプロジェクションとすることにより、より簡易に第1の表示手段を透過して第2の表示手段を観察可能とすることができる。
【0065】
また、上記第1の表示手段に表示する画像と、上記第2の表示手段に表示するための上記射影画像を異なる輝度比で生成することにより、立体表示装置内だけでなく外部機器により立体表示装置に表示する為の立体画像を生成することが可能となる。
【0066】
また、上記第2の表示手段に表示する射影画像は、上記第1と第2の表示手段の距離と、上記第2の表示手段における表示角度に応じて、上記第1の表示手段に表示する画像より算出することにより、同様に立体表示装置内だけでなく外部機器により立体表示装置に表示するための立体画像を生成することが可能となる。
【0067】
尚、本実施の形態では、奥行き情報として視差マップを利用する例について説明したが、実際の奥行き距離を記したデプスマップを用いた形式の画像であってもよい。また、複数視点の画像だけで構成され、立体画像処理装置側で特徴点抽出などのアルゴリズムを使用して画像間の視差を算出し、それを元に変換するようにしてもよく、様々な方法がある。ここでは立体画像処理装置は、立体表示装置外部に設けられる単体の構成を例に説明したが、例えばパーソナルコンピュータに組み込むハードウェアや、コンピュータ上で動くソフトウェアとして実現することとしてもよい。
【0068】
また、ここでは、第2の表示手段である表示装置103において、表示装置103よりも奥に画像が視認できるよう隣り合う表示角度ごとに一様な視差を設定した例について説明したが、画像が手前側に来るよう視差を設定してもよい。この場合、輝度比によって表現する奥行き距離が狭くなるため、より細かい単位で奥行き距離の位置を表現出来るようになるという利点がある。
【0069】
なお、本発明は、上述した各実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、立体画像処理装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態による立体画像表示装置の概略構成例を示す図である。
【図2】第2の表示手段の構成と原理とを説明するための図である。
【図3】第2の表示手段における画像の表示方法を示す図である。
【図4】輝度比を用いた立体表示方式を説明する図である。
【図5】輝度比を用いた立体表示方式により視認される画像の奥行き位置を説明する図である。
【図6】角度に応じて視認される画像について示す図である。
【図7】ハーフミラーを用いた構成例を示す図である。
【図8】パララックスバリア方式の構成を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態による立体画像表示装置と立体画像処理装置とを示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態における立体画像処理装置を示すブロック図である。
【図11】視差と視認される3D画像との関係について説明する図である。
【図12】第2の表示手段に表示する画像について説明する為の図である。
【図13】第2の実施の形態における表示画像と視認される画像の関係を示す図である。
【図14】観察者と各表示手段、視認される画像の間の距離について説明する図である。
【図15】表示画像の大きさの関係を示す図である。
【図16】表示画像の位置と視差の関係を示す図である。
【図17】立体視における輻輳と調節との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
100…立体表示装置、101…ホログラフィックスクリーン、102…プロジェクタ、103…第2の表示手段(表示装置)、104…立体画像処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
奥行き方向の異なる位置に配置された第1の表示手段と第2の表示手段とを備え、各表示面に同一の物体を異なる輝度で表示することにより立体感を持たせる立体表示装置において、
前記第2の表示手段は、第1の表示手段の表示面に対して奥側に配置され、視点位置に応じた複数の表示方向に対して異なる画像を表示可能であるとともに、前記表示方向に応じて前記第1の表示手段に表示された画像の射影画像を表示することを特徴とする立体画像表示装置。
【請求項2】
前記第2の表示手段に表示される射影画像は、前記第1の表示手段と第2の表示手段との距離と、前記第2の表示手段における表示方向に応じて、前記第1の表示手段に表示される画像から生成されることを特徴とする請求項1に記載の立体画像表示装置。
【請求項3】
前記第2の表示手段における複数の表示方向において、隣合う表示角度ごとに表示する画像に一様な視差を持たせることを特徴とする請求項1又は2に記載の立体画像表示装置。
【請求項4】
前記一様な視差は、前記第2の表示手段により視認される画像が、前記第2の表示手段よりも奥になるような視差であることを特徴とする請求項3に記載の立体画像表示装置。
【請求項5】
前記第2の表示手段は、表示方向に応じて異なる画像を表示するレンティキュラーレンズであることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項6】
前記第1の表示手段は、フロントプロジェクション方式による表示手段であることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項7】
前記第1の表示手段に表示する画像と、前記第2の表示手段に表示するための前記射影画像とを異なる輝度比で生成することを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の立体画像表示装置。
【請求項8】
前記第2の表示手段に表示する射影画像は、前記第1の表示手段と前記第2の表示手段の距離と、前記第2の表示手段における表示方向に応じて、前記第1の表示手段に表示する画像より算出することを特徴とする請求項7に記載の立体画像表示装置。
【請求項9】
入力された多重化データを逆多重化し、視差マップと符号化された画像データとに分離する逆多重化手段と、
前記視差マップを解析し、第1の表示手段に表示する画像の輝度と、第2の表示手段に表示する画像の輝度とを視差の大きさに基づいて決定する視差マップ解析手段と、
送られてきた符号化された画像データを復号する復号手段と、
復号化された画像データと視差マップ解析手段により得られた画像の輝度情報とに基づいて出力する画像変換手段と
を有することを特徴とする立体画像処理装置。
【請求項10】
さらに、前記第1の表示手段の表示面と前記第2の表示手段との距離、想定される観察者と前記第1の表示手段の表示面との距離に関する情報を、指示可能とするパラメータ入力手段を有することを特徴とする請求項9に記載の立体画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−131219(P2008−131219A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−312441(P2006−312441)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】