説明

立体表示装置

【課題】液晶レンズの偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果を得ることができ、良好な視認性の3次元表示を行うことができるようにする。
【解決手段】レンズアレイ素子1における液晶分子の所定の配向方向と、表示パネル2の表示画像光の偏光方向とが平行となるように構成する。具体的には、表示パネル2の出射側にある第2の偏光板52の第2の偏光方向62と、レンズアレイ素子1における液晶分子の所定の配向方向(レンズ効果のある偏光方向63)とが平行となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶レンズ方式の可変レンズアレイ素子を用いて、2次元表示と3次元表示とを電気的に切り替えることができる立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、観察者の両眼に視差のある視差画像を見せることで立体視を実現する2眼式または多眼式の立体表示装置が知られている。また、より自然な立体視を実現する方法として、空間像方式の立体表示装置がある。空間像方式では、放射方向の異なる複数の光線を空間中に放射することで、複数の視野角に対応した空間像を形成する。
【0003】
これらの立体表示装置を実現する方法としては、例えば、液晶ディスプレイなどの2次元表示装置と、2次元表示装置からの表示画像光を複数の視野角方向に偏向させる3次元表示用の光学デバイスとを組み合わせたものが知られている。3次元表示用の光学デバイスとしては、例えば図19に示したように、複数のシリンドリカルレンズ(円筒レンズ)303を並列配置したシリンドリカルレンズアレイ302が用いられる。このシリンドリカルレンズアレイ302を2次元表示装置からなる表示パネル301の表示面に対して対向配置する。各シリンドリカルレンズ303は、表示パネル301の表示面に対して縦方向に延在し、左右方向に屈折力を有するように配置する。表示パネル301の表示面には、規則的に複数の表示画素が2次元配列されている。一つのシリンドリカルレンズ303の背面に2つ以上の画素を配置し、各画素からの光線をレンズの屈折力により異なる水平方向に出射させることで両眼視差を満たし、立体視が可能となる。
【0004】
図19では2眼式の立体表示の例を示しており、各シリンドリカルレンズ303に対して、表示パネル301の表示面における隣接する2本の画素列301R,301Lが割り当てられている。一方の画素列301Rには右視差画像を表示し、他方の画素列301Lに左視差画像を表示する。表示された各視差画像は各シリンドリカルレンズ303によって左右別々の光路402,403に振り分けられる。これにより、所定の位置、所定の方向から観察者400が立体表示装置を見た場合、左右の視差画像が適切に観察者400の左右の眼401R,401Lに到達し、立体像が知覚される。
【0005】
同様にして、多眼式の場合、3つ以上の視点に相当する位置および方向において撮影した複数の視差画像を、シリンドリカルレンズ303の横方向のレンズピッチ内で等分して割り当てて表示する。これにより、3つ以上の視差画像が、シリンドリカルレンズアレイ302によって連続的な異なる角度範囲に出射され、結像される。この場合、観察者400の視線の位置および方向の変化に応じて、複数の異なる視差画像が知覚される。視点変化に応じた視差画像の変化が多いほど、より現実に近い立体感を得ることができる。
【0006】
ところで、シリンドリカルレンズアレイ302としては、例えば樹脂成型された、形状およびレンズ効果が固定のレンズアレイを用いることができるが、この場合、レンズ効果が固定なので3次元表示専用の表示装置となってしまう。一方、シリンドリカルレンズアレイ302として、液晶レンズによる切り替え式のレンズアレイ素子を用いることができる。液晶レンズによる切り替え式のレンズアレイ素子の場合、レンズ効果の有無を電気的に切り替えることができるため、2次元表示装置と組み合わせて、2次元表示モードと3次元表示モードとの2つの表示モードを切り替えることができる。すなわち、2次元表示モードでは、レンズアレイをレンズ効果の無い状態(屈折力の無い状態)とし、2次元表示装置からの表示画像光をそのままの状態で通過させる。3次元表示モードでは、レンズアレイをレンズ効果を発生させた状態とし、2次元表示装置からの表示画像光を複数の視野角方向に偏向させることで立体視を実現する。
【0007】
図20(A),(B)、図21および図22は、液晶レンズによる切り替え式のレンズアレイ素子の構成例を示している。このレンズアレイ素子は、図20(A),(B)に示したように、例えばガラス材料よりなる透明な第1の基板101および第2の基板102と、それら第1の基板101および第2の基板102の間に挟まれた液晶層103とを備えている。第1の基板101と第2の基板102は、間隔dを空けて対向配置されている。
【0008】
第1の基板101上における第2の基板102に対向する側には、図21および図22に示したように、ITO(Indium Tin Oxide)膜などの透明な導電膜からなる第1の透明電極111がほぼ全面に一様に形成されている。また、第2の基板102上における第1の基板101に対向する側には、図21および図22に示したように、ITO膜などの透明な導電膜からなる第2の透明電極112が部分的に形成されている。第2の透明電極112は、図22に示したように、例えば幅Lの電極幅を有して例えば縦方向に延在している。そして、第2の透明電極112は、レンズ効果を発生させたときのレンズピッチpに相当する周期間隔で複数、並列的に配置されている。隣り合う2つの第2の透明電極112間は間隔Aの開口とされている。なお、図22では、第2の透明電極112の電極配置を説明するため、第1の基板101を上側に、第2の基板102を下側にして、上下を逆にした状態で図示している。
【0009】
なお、図示を省略するが第1の透明電極111と液晶層103との間には配向膜が形成されている。同様に、第2の透明電極112と液晶層103との間には配向膜が形成されている。液晶層103には、屈折率異方性を有する液晶分子104が配向膜で規定される配向方向に従って一様に分布している。
【0010】
このレンズアレイ素子では、図20(A)に示したように、印加電圧が0Vの通常の状態では、液晶分子104が配向膜によって規定される所定の方向に一様に配列される。このため、通過光線の波面201は平面波となり、レンズ効果の無い状態となる。一方、このレンズアレイ素子では、第2の透明電極112が、図21および図22に示したように間隔Aの開口を有して離間配置されているため、図21に示したような状態で所定の駆動電圧を印加すると、液晶層103内での電界分布に偏りが生ずる。すなわち、第2の透明電極112が形成されている領域に対応する部分では駆動電圧に応じて電界強度が強くなり、間隔Aの開口の中心部に行くほど電界強度が弱くなるような電界が発生する。このため、図20(B)に示したように、液晶分子104の配列が電界強度分布に応じて変化する。これにより、通過光線の波面202が変化し、レンズ効果が発生する状態となる。
【0011】
特許文献1には、図21および図22に示した電極構造における第2の透明電極112の部分を2層構造とした液晶レンズが開示されている。この液晶レンズでは、液晶層の片側に形成する透明電極の配置間隔を第1層目と第2層目とで変えることで、液晶層に形成される電界分布の制御をより最適化しやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−9370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図19に示したような立体表示を実現する場合において、シリンドリカルレンズアレイ302が、アクリルなどの樹脂で形成された固定のレンズアレイである場合、偏光などの影響はほとんどない。一方、シリンドリカルレンズアレイ302を、液晶レンズによるレンズアレイ素子で構成した場合、液晶レンズ特有の偏光特性がある。
【0014】
例えば、図20(A),(B)に示したレンズアレイ素子において、第1の基板101上の配向膜と第2の基板102上の配向膜とが、互いに平行でかつ逆方向からラビング処理された、いわゆるアンチパラレルとなる方向で構成されていたとする。この場合、電圧が印加されていない状態では、液晶層103において棒状の液晶分子104は図23(A)に示したようにラビング処理によって規定された所定の配向方向に配向する。図23(A)において、紙面横方向がラビング処理によって規定された所定の配向方向である。一方、電圧を印加した状態では、図23(B)のように、印加電圧によって生じた電界に沿って液晶分子104が立ってくる。
【0015】
このような液晶レンズ素子の場合、液晶分子104の長軸方向に沿った偏光成分についてレンズ効果を誘発する。ここで、電圧を印加した状態であっても、配向膜付近の液晶分子104はほぼ所定の配向方向に配列されているため、配向膜付近では液晶分子104の長軸方向は所定の配向方向に沿った方向となる。このため、レンズ効果は所定の配向方向(図23(B)の例では紙面横方向)に沿った偏光成分に対して発生する。その一方で紙面に垂直な偏光成分(液晶分子104の長軸と直交する偏光成分)に対してはレンズ効果を誘発せず、単なる透過光として作用する。従って、このような液晶レンズ素子に、無偏光な光源から発せられた光が入射すると、出射光の成分は、レンズ効果によって集光される成分とそのまま透過してくる成分との重ね合わせとなる。
【0016】
一方、液晶ディスプレイのような2次元表示装置は、その表示画像光が特定の方向に偏光したものとなっている。例えば液晶ディスプレイの場合、液晶パネル本体を、例えば互いの偏光方向がクロスニコルとなるように2枚の偏光板で挟んだ構造となっており、表示画像光は出射側の偏光板の偏光方向で規定される方向に偏光している。従って、立体表示装置を液晶ディスプレイと液晶レンズアレイ素子とを組み合わせて構成した場合、双方に偏光特性があるので、その偏光特性を考慮しないと、効率的なレンズ効果を得ることができないおそれがある。引いては良好な3次元表示の視認性を得ることができなくなるおそれがあり、例えば十分な視差分離ができずに、立体像がぼやけて見えてしまうような状態となるおそれがある。立体表示装置を構成する上で、従来では、上記のような液晶レンズアレイ素子の偏光特性(液晶レンズとしてのレンズ効果が生じる偏光方向)の影響が考慮されていなかった。
【0017】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、液晶レンズの偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果を得ることができ、良好な視認性の3次元表示を行うことができるようにした立体表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の観点に係る立体表示装置は、2次元的に画像表示を行い、その表示画像光が特定の方向に偏光したものとされている表示パネルと、屈折率異方性のある液晶分子が所定の配向方向に複数配列された液晶層を有し、電気的に液晶分子の配列を変化させることでレンズ効果を発生させることが可能に構成され、表示パネルの表示面側に対向配置されて、表示パネルからの表示画像光の通過状態を選択的に変化させるようになされたレンズアレイ素子とを備え、レンズアレイ素子における液晶分子の所定の配向方向と、表示画像光の偏光方向とが平行となるように構成されているものである。
【0019】
本発明の第1の観点に係る立体表示装置では、レンズアレイ素子における液晶分子の所定の配向方向と表示画像光の偏光方向とが平行となることで、液晶レンズとしての偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果が得られる。
【0020】
本発明の第2の観点に係る立体表示装置は、2次元的に画像表示を行い、その表示画像光が特定の方向に偏光したものとされている表示パネルと、屈折率異方性のある液晶分子が所定の配向方向に複数配列された液晶層を有し、電気的に液晶分子の配列を変化させることでレンズ効果を発生させることが可能に構成され、表示パネルの表示面側に対向配置されて、表示パネルからの表示画像光の通過状態を選択的に変化させるようになされたレンズアレイ素子と、表示パネルとレンズアレイ素子との間に配置され、表示画像光の偏光方向が、レンズアレイ素子における液晶分子の所定の配向方向と平行となるようにするための位相差板とを備えたものである。
【0021】
本発明の第2の観点に係る立体表示装置では、表示画像光の偏光方向が、位相差板によって、レンズアレイ素子における液晶分子の所定の配向方向に平行となるように偏光される。これにより、液晶レンズとしての偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果が得られる。
【0022】
本発明の第3の観点に係る立体表示装置は、2次元的に画像表示を行う表示パネルと、屈折率異方性のある液晶分子が所定の配向方向に複数配列された液晶層を有し、電気的に液晶分子の配列を変化させることでレンズ効果を発生させることが可能に構成され、表示パネルの表示面側に対向配置されて、表示パネルからの表示画像光の通過状態を選択的に変化させるようになされたレンズアレイ素子と、表示パネルとレンズアレイ素子との間、またはレンズアレイ素子の光出射側に配置され、レンズアレイ素子における液晶分子の所定の配向方向に平行な方向の光成分のみを透過する偏光板とを備えたものである。
【0023】
本発明の第3の観点に係る立体表示装置では、偏光板によって、最終的に、レンズアレイ素子における液晶分子の所定の配向方向に平行な方向の光成分のみが出射される。これにより、液晶レンズとしての偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の第1の観点に係る立体表示装置によれば、レンズアレイ素子における液晶分子の所定の配向方向と表示画像光の偏光方向とが平行になるようにしたので、液晶レンズの偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果を得ることができる。これにより、良好な視認性の3次元表示を行うことができる。
【0025】
本発明の第2の観点に係る立体表示装置によれば、位相差板によって、表示画像光の偏光方向が、レンズアレイ素子における液晶分子の所定の配向方向と平行となるようにしたので、液晶レンズの偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果を得ることができる。これにより、良好な視認性の3次元表示を行うことができる。
【0026】
本発明の第3の観点に係る立体表示装置によれば、偏光板によって、レンズアレイ素子における液晶分子の所定の配向方向に平行な方向の光成分のみを透過するようにしたので、液晶レンズの偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果を得ることができる。これにより、良好な視認性の3次元表示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る立体表示装置の全体構成の一例を示す断面図である。
【図2】(A)は液晶表示パネルにおける偏光板の第1の配置例を示し、(B)は液晶表示パネルにおける偏光板の第2の配置例を示す構成図である。
【図3】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るレンズアレイ素子の電極部分の構成例を示す斜視図であり、(B)は本発明の第1の実施の形態に係るレンズアレイ素子によって形成されるレンズ形状を光学的に等価に示した斜視図である。
【図4】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るレンズアレイ素子における配向膜の第1の配置例を示し、(B)は本発明の第2の実施の形態に係るレンズアレイ素子における配向膜の第2の配置例を示す構成図である。
【図5】(A)は本発明の第1の実施の形態に係るレンズアレイ素子における液晶分子の初期の配向状態を示し、(B)は電圧を印加した場合の液晶分子の配向状態を示す構成図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る立体表示装置の第1の構成例を示す斜視図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る立体表示装置の第2の構成例を示す斜視図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る立体表示装置の第3の構成例を示す斜視図である。
【図9】表示品位の評価に用いた測定系の構成を模式的に示す説明図である。
【図10】比較例に係る立体表示装置の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る立体表示装置の第1の構成例での光強度分布を示す特性図である。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る立体表示装置の第2の構成例での光強度分布を示す特性図である。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る立体表示装置の第3の構成例での光強度分布を示す特性図である。
【図14】比較例に係る立体表示装置での光強度分布を示す特性図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係る立体表示装置の構成例を示す斜視図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る立体表示装置の光強度分布を示す特性図である。
【図17】本発明の第3の実施の形態に係る立体表示装置の構成例を示す斜視図である。
【図18】本発明の第3の実施の形態に係る立体表示装置の光強度分布を示す特性図である。
【図19】シリンドリカルレンズを用いた立体表示の概念を示す説明図である。
【図20】液晶レンズによる切り替え式のレンズアレイ素子の構成例を示す断面図であり、(A)はレンズ効果の無い状態、(B)はレンズ効果を発生させた状態を示す。
【図21】図20に示した液晶レンズにおける電極部分の構成例を示す断面図である。
【図22】図20に示した液晶レンズにおける電極部分の構成例を示す斜視図である。
【図23】(A)は液晶レンズにおける液晶分子の初期の配向状態を示し、(B)は電圧を印加した場合の液晶分子の配向状態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
<第1の実施の形態>
[立体表示装置の全体構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る立体表示装置の一構成例を示している。この立体表示装置は、2次元的に画像表示を行う表示パネル2と、表示パネル2の表示面2A側に対向するように配置されたレンズアレイ素子1とを備えている。この立体表示装置は、2次元表示モードと3次元表示モードとの2つの表示モードを切り替えることが可能とされている。レンズアレイ素子1は、後述するように液晶レンズ方式による可変レンズアレイであり、電気的にレンズ効果のオン・オフ制御を行うことが可能なものである。レンズアレイ素子1は、表示モードに応じてレンズ効果を制御することで、表示パネル2からの光線の通過状態を選択的に変化させるようになっている。表示パネル2は、2次元表示を行う場合には2次元画像データに基づく映像表示を行い、3次元表示を行う場合には3次元画像データに基づく映像表示を行うようになっている。なお、3次元画像データとは、例えば、3次元表示における複数の視野角方向に対応した複数の視差画像を含むデータである。例えば2眼式の3次元表示を行う場合、右眼表示用と左眼表示用の視差画像のデータである。
【0030】
なお、本実施の形態では、レンズアレイ素子1における各基板面または表示パネル2の各基板面に平行な面内で横方向(水平方向)をX方向、縦方向(垂直方向)をY方向として説明する。基本的には、表示パネル2の表示面2Aの横方向がX方向、縦方向がY方向である。
【0031】
[表示パネル2の構成]
表示パネル2は、例えばR(赤色)用画素、G(緑色)用画素、およびB(青色)用画素からなる画素を複数有し、それら複数の画素がマトリクス状に配置されている。表示パネル2の画素は、レンズアレイ素子1によって形成されるシリンドリカルレンズのピッチpに対してN個(2以上の整数)分、配置されている。3次元表示モードでは、このN個分、3次元表示における光線数(視線数)を提示することになる。表示パネル2は、例えば液晶表示ディスプレイで構成することができる。表示パネル2を例えば透過型の液晶表示ディスプレイで構成した場合、バックライトからの光を画像データに応じて画素ごとに変調させることで2次元的な画像表示を行う。
【0032】
図2(A),(B)は、表示パネル2を透過型の液晶表示ディスプレイで構成した場合の構成例を示している。この構成例では、表示パネル2は、液晶部(パネル本体50)を、第1の偏光板51と第2の偏光板52とで挟んだ構造とされている。第1の偏光板51はバックライト側に配置され、第2の偏光板52は観察者側(光出射側)に配置されている。また、第1の偏光板51と第2の偏光板52は、例えば互いの偏光方向61,62がクロスニコルとなるように配置されている。第1の偏光板51と第2の偏光板52とをクロスニコルの配置とする場合、表示面2Aに平行な面内で互いの偏光方向61,62が斜めとなる配置と、横方向および縦方向となる配置とが考えられる。
【0033】
図2(A)は、互いの偏光方向61,62が斜めとなる配置の代表例を示している。図2(A)の構成例では、第1の偏光板51の第1の偏光方向61が第1の斜め方向(斜め45°方向、Y=X方向)となり、第2の偏光板52の第2の偏光方向62が第2の斜め方向(斜め−45°方向、Y=−X方向)となるように対向配置されている。
【0034】
図2(B)は、互いの偏光方向61,62が横方向および縦方向となる配置の代表例を示している。図2(B)の構成例では、第1の偏光板51の第1の偏光方向61が横方向(X方向)となり、第2の偏光板52の第2の偏光方向62が縦方向(Y方向)となるように対向配置されている。
【0035】
表示パネル2をこのような液晶表示ディスプレイで構成した場合、表示画像光は出射側の第2の偏光板52の第2の偏光方向62で規定される方向に偏光する。図2(A)の構成例では斜め−45°方向、図2(B)の構成例では縦方向に偏光した表示画像光が出射される。
【0036】
[レンズアレイ素子1の全体構成]
レンズアレイ素子1は、図1に示したように間隔dを空けて互いに対向配置された第1の基板10および第2の基板20と、それら第1の基板10および第2の基板20の間に配置された液晶層3とを備えている。第1の基板10および第2の基板20は、例えばガラス材料または樹脂材料よりなる透明基板である。第1の基板10上における第2の基板20に対向する側には、ITO膜などの透明な導電膜からなる第1の電極11がほぼ全面に一様に形成されている。第1の基板10上にはまた、第1の電極11を介して液晶層3に接するように第1の配向膜13が形成されている。第2の基板20上における第1の基板10に対向する側には、ITO膜などの透明な導電膜からなる第2の電極21Yが部分的に形成されている。第2の基板20上にはまた、第2の電極21Yを介して液晶層3に接するように第2の配向膜23が形成されている。
【0037】
液晶層3は、液晶分子5を含み、第1の電極11と第2の電極21Yとに印加される電圧に応じて液晶分子5の配列方向が変化することでレンズ効果が制御されるようになっている。液晶分子5は、屈折率異方性を有し、例えば長手方向と短手方向とで通過光線に対して屈折率の異なる屈折率楕円体の構造を有している。液晶層3は、第1の電極11と第2の電極21Yとに印加される電圧の状態に応じて、レンズ効果の無い状態と、レンズ効果が発生する状態とに電気的に切り替わるようになっている。なお、このレンズアレイ素子1において、そのレンズ効果発生の基本原理は、図20(A),(B)に示した液晶レンズと同様である。
【0038】
[レンズアレイ素子1の電極構造]
図3(A)はレンズアレイ素子1の電極部分の平面構成例を示している。図3(B)は図3(A)に示した電極構造である場合に形成されるレンズ形状を光学的に等価に示している。第2の電極21Yは。幅Lxの電極幅を有して縦方向に延在している。そして、図3(A)に示したように第2の電極21Yは、レンズ効果を発生させたときのレンズピッチpに相当する周期間隔で複数、並列的に配置されている。レンズ効果を発生させる場合には、液晶層3を挟む上下の電極間で、液晶分子5の配列に変化を生じさせることが可能となるような所定の電位差を与えるようにする。第1の電極11は全面に形成され、第2の電極21Yは横方向に間隔を空けて部分的に形成されているので、第2の電極21Yに所定の駆動電圧を印加すると、図20(B)に示した場合と同様の原理で、液晶層3内での電界分布に偏りが生ずる。すなわち、第2の電極21Yが形成されている領域に対応する部分では駆動電圧に応じて電界強度が強くなり、第2の電極21Yから横方向に離れるほど電界強度が弱くなるような電界が発生する。すなわち、横方向(X方向)にレンズ効果が発生するように電界分布が変化する。すなわち、等価的には、図3(A)に示したように、Y方向に延在しX方向に屈折力のあるシリンドリカルレンズ31Yが、X方向に複数、並列配置されたようなレンズ状態となる。
【0039】
[レンズアレイ素子1における液晶分子5の配向方向]
レンズアレイ素子1では、第1の基板10上の第1の配向膜13と第2の基板20上の第2の配向膜23とが、基板面内で互いに平行でかつ逆方向からラビング処理された、いわゆるアンチパラレルとなる方向で構成されている。図4(A)は、第1の配向膜13の第1のラビング処理方向13Aと第2の配向膜23の第2のラビング処理方向23Aとが基板面内で斜め−45°方向(Y=−X方向)で、かつ互いに逆方向とされている例である。図4(B)は、第1のラビング処理方向13Aと第2のラビング処理方向23Aとが基板面内で縦方向(Y方向)で、かつ互いに逆方向とされている例である。なお、ラビング処理は、例えばポリイミド等の高分子化合物を配向膜の材料とし、その配向膜を布で一方向に擦るような方法で行われる。
【0040】
レンズアレイ素子1において、液晶層3内には、図5(A)に示したように液晶分子5が所定の配向方向に複数配列されている。この所定の配向方向は、第1の配向膜13と第2の配向膜23とにおけるラビング処理の方向によって規定される。液晶層3内に電圧が印加されていない状態では、棒状の液晶分子5は図5(A)に示したようにラビング処理によって規定された所定の配向方向に配向する。一方、電圧を印加した状態では、図5(B)のように、印加電圧によって生じた電界に沿って液晶分子5が立ってくる。なお、図4(A)の構成の場合、液晶分子5は所定の配向方向として基板面内で斜め−45°方向に配列される。図4(B)の場合、液晶分子5は所定の配向方向として基板面内でY方向に配列される。レンズアレイ素子1において、レンズ効果は所定の配向方向(図5(B)の例では紙面横方向)に沿った偏光成分に対して生ずるようになっている。
【0041】
[表示パネル2の偏光方向とレンズアレイ素子1の偏光方向との関係]
本実施の形態に係る立体表示装置は、図6〜図8に示したように、レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63と、表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向とが平行となるように構成されている。ここで、レンズ効果のある偏光方向63は、上述したように液晶分子5の所定の配向方向(ラビング処理の方向)と同じ方向である。また、表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向は、出射側の第2の偏光板52の第2の偏光方向62で規定される方向である。
【0042】
図6の第1の構成例において、表示パネル2の構成は図2(A)と同様であり、第2の偏光板52の第2の偏光方向62は、斜め−45°方向となっている。レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63もこれに合わせるように、斜め−45°方向となっている。
【0043】
図7の第2の構成例では、表示パネル2が、第1の偏光板51の第1の偏光方向61が縦方向(Y方向)となり、第2の偏光板52の第2の偏光方向62が横方向(X方向)となるように対向配置された構成となっている。レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63は第2の偏光方向62に合わせるように、X方向となっている。
【0044】
図8の第3の構成例において、表示パネル2の構成は図2(B)と同様であり、第2の偏光板52の第2の偏光方向62は、Y方向となっている。レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63もこれに合わせるように、Y方向となっている。
【0045】
なお、図6〜図8に示した構成例は、表示パネル2の偏光方向とレンズアレイ素子1の偏光方向とを一致させた構成の代表的な例である。このように2つの偏光方向を一致させる構成は他にも考えられ、図示した構成例に限定されるものではない。
【0046】
[立体表示装置の動作]
この画像表示装置では、レンズアレイ素子1を、レンズ効果の無い状態と、レンズ効果の発生する状態とに切り替えることにより、2次元表示と3次元表示との電気的な切り替えを行う。すなわち、レンズアレイ素子1をレンズ効果の無い状態として、表示パネル2からの表示画像光を偏向させることなく透過させることで2次元表示を行う。また、レンズアレイ素子1をレンズ効果が発生する状態として、表示パネル2からの表示画像光をX方向に偏向させることで、X方向に両眼を置いたときに立体感が得られるような3次元表示を行う。
【0047】
特に、この立体表示装置では、図6〜図8に示したように表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向がレンズ効果のある偏光方向63と平行となることで、液晶レンズとしての偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果が得られる。これにより、良好な視認性の3次元表示が行われる。
【0048】
[立体表示装置の表示品位の評価]
この立体表示装置の表示品位の評価を、図6〜図8に示した各構成例に対して行った。図9はその表示品位の評価に用いた測定系の概念を示している。図9に示したように、レンズアレイ素子1によって形成されるシリンドリカルレンズ31Yのレンズ幅に対して、表示パネル2の画素が4画素分配置されるような構成にした。表示パネル2の1画素はR(赤),G(緑),B(青)の3つのサブピクセルからなる。このような構成の立体表示装置に対して、10mm離れたところに光強度を観測できるフォトダイオード80を配置し、表示パネル2に対して平行に移動できるような測定系とした。そして、4画素それぞれについて、緑色だけを表示させるような条件において、フォトダイオード80の移動方向に応じた光強度を計測した。
【0049】
比較のために、図10に示した比較例の構成での計測も行った。図10に示した比較例は、レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63と、表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向とが一致していない構成の代表例である。図10に示した比較例では、表示パネル2の構成は図2(A)と同様であり、第2の偏光板52の第2の偏光方向62は、斜め−45°方向となっている。レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63は、第2の偏光方向62と一致せずY方向となっている。
【0050】
図11〜図13は、図6〜図8に示した各構成例についての光強度分布の測定結果を示している。図14は、図10に示した比較例についての光強度分布の測定結果を示している。図11〜図14において、横軸はフォトダイオード80による光強度の検出位置(mm)であり、縦軸は光強度(arbitrary unit(任意単位))となっている。図11〜図14において、光強度がピークとなる位置が4つあるが、これは図9に示した4つの画素からの光がシリンドリカルレンズ31Yによってそれぞれ、異なる位置に結像することによるものであり、立体表示を行う場合の視線位置に対応する
【0051】
図14から分かるように、比較例の構成では、4つの位置で視線数に対応する強度ピークが観測されるものの、強度ピーク成分以外に全体的にオフセット成分が重なった形で観測されていることがわかる。このような光強度分布では、立体表示の知覚としては、像がぼけた状態として視認されてしまう。この全体的なオフセット成分は、レンズアレイ素子1におけるレンズ効果がない偏光成分の影響と考えられる。
【0052】
一方、図11〜図13から分かるように、図6〜図8に示した各構成例については、ほぼ同様の測定結果が得られている。いずれの構成例でも、4つの位置で視線数に対応する強度ピークが観測されるだけでなく、強度ピークの山が非常にシャープ(コントラストが良好)で、かつ隣あうピーク成分との重なりが非常に少ない。このような光強度分布は、表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向とレンズ効果のある偏光方向63とが平行となっていることで、レンズ効果がない偏光成分の影響がほとんどないためと考えられる。このような光強度分布では、立体表示の知覚としては、十分な視差分離が可能であり、非常に良好な状態として立体像を視認できる。
【0053】
以上説明したように、本実施の形態に係る立体表示装置によれば、レンズアレイ素子1における液晶分子5の所定の配向方向と表示画像光の偏光方向とが平行になるようにしたので、液晶レンズの偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果を得ることができる。これにより、良好な視認性の3次元表示を行うことができる。
【0054】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る立体表示装置について説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る立体表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0055】
上記第1の実施の形態では、表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向とレンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63とを平行となるようにした。これに対し、本実施の形態は、表示画像光の偏光方向とレンズ効果のある偏光方向63とが一致していない場合の改善に関する。本実施の形態に係る立体表示装置において、表示パネル2の偏光方向とレンズアレイ素子1の偏光方向との関係が異なるのみで、表示パネル2およびレンズアレイ素子1の単体の基本構成は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0056】
本実施の形態に係る立体表示装置は、図15に示したように、レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63と、表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向(第2の偏光板52の第2の偏光方向62)とが異なるように構成されている。かつ、表示パネル2とレンズアレイ素子1との間に波長位相差板71が配置されている。図15の構成例では、表示パネル2の構成は図2(A)と同様であり、第2の偏光板52の第2の偏光方向62は、斜め−45°方向となっている。レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63は、第2の偏光方向62と一致せずY方向となっている。
【0057】
なお、図15に示した構成例は、表示パネル2の偏光方向とレンズアレイ素子1の偏光方向とが一致していない構成の代表的な例である。このように2つの偏光方向が一致していない構成は他にも考えられ、図示した構成例に限定されるものではない。
【0058】
波長位相差板71は、表示パネル2からの表示画像光の偏光方向が、レンズアレイ素子1における液晶分子5の所定の配向方向(レンズ効果のある偏光方向63)と平行となるようにするためのものである。波長位相差板71は、表示画像光に対して、第2の偏光板52の第2の偏光方向62とレンズ効果のある偏光方向63との違いに相当する位相差を生じさせるようになっている。図15の構成例では、λ/8の位相差を生じさせれば良い。
【0059】
図15に示した立体表示装置の表示品位の評価を、上記第1の実施の形態と同様の測定系(図9)で行った。図16は、その光強度分布の測定結果を示している。図16から分かるように、図15に示した構成例では、比較例の構成(図10)での測定結果(図14)と比較して、全体的にオフセット成分が少なくなり、4つのピーク成分は良好に分離されている。また、強度ピークの山がシャープ(コントラストが良好)で、かつ隣あうピーク成分との重なりが少ない。このような光強度分布は、表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向が、波長位相差板71の作用により、結果的にレンズ効果のある偏光方向63と平行となることで、レンズ効果がない偏光成分の影響がほとんどなくなったためと考えられる。このような光強度分布では、立体表示の知覚としては、十分な視差分離が可能であり、良好な状態として立体像を視認できる。
【0060】
このように、本実施の形態に係る立体表示装置によれば、波長位相差板71の作用によって、液晶レンズの偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果を得ることができる。これにより、良好な視認性の3次元表示を行うことができる。
【0061】
<第3の実施の形態>
次に、本発明の第3の実施の形態に係る立体表示装置について説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る立体表示装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0062】
上記第1の実施の形態では、表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向とレンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63とを平行となるようにした。これに対し、本実施の形態は、表示画像光の偏光方向とレンズ効果のある偏光方向63とが一致していない場合の改善に関する。本実施の形態に係る立体表示装置において、表示パネル2の偏光方向とレンズアレイ素子1の偏光方向との関係が異なるのみで、表示パネル2およびレンズアレイ素子1の単体の基本構成は、上記第1の実施の形態と同様である。
【0063】
本実施の形態に係る立体表示装置は、図17に示したように、レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63と、表示パネル2から出射される表示画像光の偏光方向(第2の偏光板52の第2の偏光方向62)とが異なるように構成されている。かつ、レンズアレイ素子1の光出射側に偏光板72が配置されている。図17の構成例では、表示パネル2の構成は図2(A)と同様であり、第2の偏光板52の第2の偏光方向62は、斜め−45°方向となっている。レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63は、第2の偏光方向62と一致せずY方向となっている。
【0064】
なお、図17に示した構成例は、表示パネル2の偏光方向とレンズアレイ素子1の偏光方向とが一致していない構成の代表的な例である。このように2つの偏光方向が一致していない構成は他にも考えられ、図示した構成例に限定されるものではない。また、偏光板72を、レンズアレイ素子1の光出射側ではなく、表示パネル2とレンズアレイ素子1との間に配置するようにしても良い。
【0065】
偏光板72は、レンズアレイ素子1における液晶分子5の所定の配向方向(レンズ効果のある偏光方向63)に平行な方向の光成分のみを透過するものである。偏光板72の偏向方向64は、レンズアレイ素子1におけるレンズ効果のある偏光方向63に平行となっている。図17の構成例では、偏光方向63はY方向となっている。
【0066】
図17に示した立体表示装置の表示品位の評価を、上記第1の実施の形態と同様の測定系(図9)で行った。図18は、その光強度分布の測定結果を示している。図18から分かるように、図17に示した構成例では、比較例の構成(図10)での測定結果(図14)と比較して、全体的にオフセット成分が少なくなり、4つのピーク成分は良好に分離されている。また、強度ピークの山がシャープ(コントラストが良好)で、かつ隣あうピーク成分との重なりが少ない。このような光強度分布は、最終的にレンズアレイ素子1から出射される光の成分が、偏光板72の作用により、結果的にレンズ効果のある偏光方向63のみの成分となることで、レンズ効果がない偏光成分の影響がほとんどなくなったためと考えられる。ただし、最終的に得られる光成分の強度ピークが、比較例の測定結果(図14)と比較して、約半分になってしまっている。このため、全体として暗い表示になってしまうが、立体表示の知覚としては、十分な視差分離が可能であり、良好な状態として立体像を視認できる。
【0067】
このように、本実施の形態に係る立体表示装置によれば、偏光板72の作用によって、液晶レンズの偏光特性を考慮した効率的なレンズ効果を得ることができる。これにより良好な視認性の3次元表示を行うことができる。
【0068】
なお、この第3の実施の形態に係る立体表示装置は、表示パネル2として、液晶表示ディスプレイ以外のディスプレイを用いた場合にも有効である。例えば、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイやフィールドエミッションディスプレイ(FED)に代表されるような、偏光特性のない自発光型のディスプレイを用いた場合にも有効である。
【0069】
<その他の実施の形態>
本発明は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば上記各実施の形態では、レンズアレイ素子1が、シリンドリカルレンズ状のレンズ効果を発生させる場合について説明したが、その他の形状のレンズ効果を発生させるものであっても良い。本発明は、偏光特性のあるレンズ効果が発生するようなレンズアレイ素子を用いる場合に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…レンズアレイ素子、2…表示パネル、2A…表示面、3…液晶層、5…液晶分子、10…第1の基板、11…第1の電極、13…第1の配向膜、13A…第1のラビング処理方向、20…第2の基板、21Y…第2の電極(Y方向電極)、23…第2の配向膜、23A…第2のラビング処理方向、31Y…シリンドリカルレンズ、50…パネル本体、51…第1の偏光板、52…第2の偏光板、61…第1の偏光方向、62…第2の偏光方向、63…レンズ効果のある偏光方向、71…波長位相差板、72…偏光板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元的に画像表示を行い、その表示画像光が特定の方向に偏光したものとされている表示パネルと、
屈折率異方性のある液晶分子が所定の配向方向に複数配列された液晶層を有し、電気的に前記液晶分子の配列を変化させることでレンズ効果を発生させることが可能に構成され、前記表示パネルの表示面側に対向配置されて、前記表示パネルからの表示画像光の通過状態を選択的に変化させるようになされたレンズアレイ素子と
を備え、
前記レンズアレイ素子における前記液晶分子の前記所定の配向方向と、前記表示画像光の偏光方向とが平行となるように構成されている
立体表示装置。
【請求項2】
前記レンズアレイ素子は、
前記液晶層を挟み込むようにして互いに対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における前記液晶層に接する側の表面に形成された第1の配向膜と、
前記第2の基板における前記液晶層に接する側の表面に形成された第2の配向膜と
をさらに有し、
前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とが、互いに平行でかつ逆方向からラビング処理されたものであり、それらのラビング処理の方向によって前記液晶分子の前記所定の配向方向が規定されており、それらのラビング処理の方向が前記表示画像光の偏光方向に平行となるように構成されている
請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項3】
前記表示パネルは、光出射側に偏光板を有する液晶表示パネルであり、
前記レンズアレイ素子における前記液晶分子の前記所定の配向方向と、前記液晶表示パネルの前記光出射側の偏光板の偏光方向とが平行となるように構成されている
請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項4】
2次元的に画像表示を行い、その表示画像光が特定の方向に偏光したものとされている表示パネルと、
屈折率異方性のある液晶分子が所定の配向方向に複数配列された液晶層を有し、電気的に前記液晶分子の配列を変化させることでレンズ効果を発生させることが可能に構成され、前記表示パネルの表示面側に対向配置されて、前記表示パネルからの表示画像光の通過状態を選択的に変化させるようになされたレンズアレイ素子と、
前記表示パネルと前記レンズアレイ素子との間に配置され、前記表示画像光の偏光方向が、前記レンズアレイ素子における前記液晶分子の前記所定の配向方向と平行となるようにするための位相差板と
を備えた立体表示装置。
【請求項5】
前記レンズアレイ素子は、
前記液晶層を挟み込むようにして互いに対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における前記液晶層に接する側の表面に形成された第1の配向膜と、
前記第2の基板における前記液晶層に接する側の表面に形成された第2の配向膜と
をさらに有し、
前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とが、互いに平行でかつ逆方向からラビング処理されたものであり、それらのラビング処理の方向によって前記液晶分子の前記所定の配向方向が規定されており、
前記位相差板は、前記表示画像光に対して、その偏光方向が前記第1および第2の配向膜のラビング処理の方向と平行となるような位相差を生じさせる
ようになされている請求項4に記載の立体表示装置。
【請求項6】
前記表示パネルは、光出射側に偏光板を有する液晶表示パネルであり、
前記レンズアレイ素子における前記液晶分子の前記所定の配向方向と、前記液晶表示パネルの前記光出射側の偏光板の偏光方向とが異なるように構成されており、
前記位相差板は、前記表示画像光に対して、前記光出射側の偏光板の偏光方向と前記液晶分子の前記所定の配向方向との違いに相当する位相差を生じさせる
ようになされている請求項4に記載の立体表示装置。
【請求項7】
2次元的に画像表示を行う表示パネルと、
屈折率異方性のある液晶分子が所定の配向方向に複数配列された液晶層を有し、電気的に前記液晶分子の配列を変化させることでレンズ効果を発生させることが可能に構成され、前記表示パネルの表示面側に対向配置されて、前記表示パネルからの表示画像光の通過状態を選択的に変化させるようになされたレンズアレイ素子と、
前記表示パネルと前記レンズアレイ素子との間、または前記レンズアレイ素子の光出射側に配置され、前記レンズアレイ素子における前記液晶分子の前記所定の配向方向に平行な方向の光成分のみを透過する偏光板と
を備えた立体表示装置。
【請求項8】
前記レンズアレイ素子は、
前記液晶層を挟み込むようにして互いに対向配置された第1および第2の基板と、
前記第1の基板における前記液晶層に接する側の表面に形成された第1の配向膜と、
前記第2の基板における前記液晶層に接する側の表面に形成された第2の配向膜と
をさらに有し、
前記第1の配向膜と前記第2の配向膜とが、互いに平行でかつ逆方向からラビング処理されたものであり、それらのラビング処理の方向によって前記液晶分子の前記所定の配向方向が規定されており、
前記偏光板は、前記第1および第2の配向膜のラビング処理の方向に平行な方向の光成分のみを透過する
ようになされている請求項7に記載の立体表示装置。
【請求項9】
前記レンズアレイ素子は、レンズ効果の無い状態とレンズ効果を発生させた状態とに電気的に切り替え可能に構成され、前記レンズ効果を発生させた状態では、等価的に複数のシリンドリカルレンズを並列配置したようなレンズ効果を発生させるようになされ、
前記レンズアレイ素子を前記レンズ効果の無い状態として、前記表示パネルからの表示画像光を偏向させることなく透過させることで2次元表示を行い、
前記レンズアレイ素子を前記レンズ効果を発生させた状態として、前記表示パネルからの表示画像光を前記シリンドリカルレンズによって所定方向に偏向させることで、所定方向に両眼を置いたときに立体感が得られるような3次元表示を行う
ようになされている請求項1、4、または7に記載の立体表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−211036(P2010−211036A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58132(P2009−58132)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】