説明

竪型粉砕機の制御方法及び竪型粉砕機

【課題】 運転中に生じる異常振動を効果的に防止できる竪型粉砕機の制御方法と、その制御方法に用いるに好適な制御装置を提供する。
【解決手段】 粉砕ローラ3を回転テーブル2に押し付ける油圧シリンダ8の緊張油圧を検出して、緊張油圧が、予め設定した設定値より規定値以上小さくなった場合に、回転テーブル2の回転数を減速してから緊張油圧を設定値まで上昇させるとともに、該緊張油圧が設定値まで上昇した後、回転テーブル2の回転数を減速前の速度になるまで増速させる。本発明によれば、一旦、設定値から規定値以上外れた緊張油圧を元の設定値まで回復させる際に発生しやすい竪型粉砕機の異常振動を効果的に防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に石炭、オイルコークス、石灰石、スラグ、クリンカ、セメント原料、又化学品等を原料として粉砕する竪型粉砕機の制御方法及び制御装置に係り、特に、竪型粉砕機で原料を微粉砕する際に生じやすい異常振動を防止又は抑制するに好適な竪型粉砕機の制御方法及びその制御方法を実施するに適した竪型粉砕機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、石炭やオイルコークス等を粉砕する粉砕機として竪型粉砕機(竪型ミル、或いは竪型ローラミルと称されることもある)と呼ばれる粉砕機が広く用いられている。
【0003】
近年では、特に、竪型粉砕機によって原料を微粉砕するケースも増えてきており、竪型粉砕機内に分級機構を備えた型式の竪型粉砕機が増加している。分級機構を内部に備えた竪型粉砕機としては,特許文献1に開示されるような従来技術が公知である。
【0004】
【特許文献1】特開平5−104012号公報
【0005】
特許文献1に示される竪型粉砕機は、粉砕機の下部から吹き込んだ気流によって、粉砕した原料を搬送し上昇させるとともに、竪型粉砕機内の上部に配した分級機構によって、気流により搬送された原料の中から微粉のみを選抜して、機外に取出すタイプの竪型粉砕機であって、一般的にエアスエプト式と呼ばれる型式の竪型粉砕機である。
【0006】
以下、特許文献1に開示されたエアスエプト式の竪型粉砕機の構造等について簡略に説明する。特許文献1に開示された竪型粉砕機は、回転テーブルの上方に、分級機構として複数毎の回転羽根を有した回転セパレータを備えており、該回転セパレータの中心軸を上下に貫通するようにして原料投入シュートが配されている。そして、原料投入シュートを介し、原料投入口から回転テーブル上に原料を投入する(供給と称することもある)ことができるよう構成されている。
【0007】
原料投入シュートによって回転テーブルの上方から、回転テーブル中央部に供給された原料は、回転テーブル上で渦巻き状の軌跡を描きながら、回転テーブルの外周部に向かって移動する。回転テーブルの外周縁部にはダムリングが設けられ、回転テーブル上で所要の原料厚みを保持するように構成されているので、回転テーブルの外周部に移動した原料は、ダムリングでせき止められ、回転テーブルと粉砕ローラに噛み込まれ粉砕される。
【0008】
なお、回転テーブルと粉砕ローラに噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブルの外縁部に周設されたダムリングを乗り越え、回転テーブル上面の外周部とケーシングとの隙間である環状通路(環状空間部と称することもある)へと向かう。
【0009】
竪型粉砕機の運転中には、粉砕機下部に設けられたガス導入口より、エキゾーストファン等の送風機により、竪型粉砕機内にガスを導入しており、回転セパレータ部を介して、粉砕機上方に設けた取出口から機外に排出している。その結果、竪型粉砕機のケーシング内で、該回転テーブル下方から回転セパレータ上方に向かうガスの気流が生じている。
従って、該ダムリングを乗り越えて環状通路に達した原料の一部は、前記ガスの気流により吹き上げられて、ケーシング内を上昇する。
【0010】
ケーシング内において上昇する気流は、回転セパレータの影響を受けて、旋回しながら上昇する気流となっている。そのため、気流により吹き上げられた原料の中で、径が大きく重量の大きな原料は、その重量のためにケーシング下方に落下する、或いは、気流による旋回により原料自身に発生する遠心力によって気流から逸脱してケーシング下方に落下する等し、回転セパレータを通過することができない。回転セパレータを通過できず、落下した原料は、再度粉砕ローラに噛み込まれて粉砕される。なお、径の小さな原料は、羽根の間を抜けて回転セパレータを通過し、上部取出口より取り出される。
【0011】
環状通路に達した原料の中で特に粒径の大きな原料は、環状通路より回転テーブル下方に落下して下部取出口より竪型粉砕機1の外に取り出された後、バケットエレベータ等の搬送機を介して、型粉砕機の原料投入口から再度投入されて、粉砕される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、前記した従来技術は、回転テーブル上の原料層厚を調整することより振動を回避する技術であるが、回転テーブル上の原料層厚が変化しないにもかかわらず、異常振動が発生する場合がある。
【0013】
特に、油圧ポンプ等の駆動時間を減らして省力化するために、粉砕ローラを回転テーブルに押し付ける油圧シリンダの緊張油圧を、アキュムレータ等の蓄圧機により発生させている場合において、振動が生じやすいという傾向があった。
従来は、油圧シリンダの緊張油圧を圧力センサで常に監視し、ある規定値以上に油圧が低下すると、油圧ポンプを動かして、蓄圧機に圧油を供給して、緊張油圧を元の設定値まで回復させるのであるが、蓄圧機の油圧が設定値から、ある値以上に下がると、異常振動が生じやすいのである。
【0014】
この原因は明確になっていないが、粉砕ローラの緊張油圧が一旦低下した時点が、自励振動の起点となっており、通常以上の振動が発生しており、その状態から急激に緊張油圧を上昇させていくと、その振動が助長されて大きくなると考えられていた。
そのため、従来は、粉砕ローラの緊張油圧が一旦低下すると、その状態から急激に緊張油圧を上昇させていくことはせず、振動が大きくならないように徐々に緊張油圧を増圧することにより対処していた。
【0015】
しかし、緊張油圧が設定値まで回復する間は、比較的大きな自励振動が続いており、できるだけ早急に自励振動を解消する竪型粉砕機の制御方法並びに装置が求められていた。
【0016】
本発明は、以上のような要求に鑑みてなされたものであり、一旦、設定値から規定値以上外れた緊張油圧を元の設定値まで回復させる際に発生しやすい竪型粉砕機の異常振動を効果的に防止するに好適な竪型粉砕機の制御方法及びその制御方法を実施するに適した竪型粉砕機に関する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明による竪型粉砕機の制御方法は、
(1) 複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて回転テーブル上に供給した原料を、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕する竪型粉砕機の制御方法において、粉砕ローラを回転テーブルに押し付ける油圧シリンダの緊張油圧を検出して、該緊張油圧が、予め設定した設定値より規定値以上小さくなった場合に、回転テーブルの回転数を減速してから緊張油圧を設定値まで上昇させ、該緊張油圧が設定値まで上昇した後、回転テーブルの回転数を減速前の速度になるまで増速する。
【0018】
本発明による竪型粉砕機は、
(2) 複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて回転テーブル上に供給した原料を、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕する竪型粉砕機において、粉砕ローラを回転テーブルに押し付ける油圧シリンダ、該油圧シリンダに緊張油圧を発生させる蓄圧機、該蓄圧機に圧油を供給する油圧ポンプ、及び該緊張油圧を測定する圧力センサを備えて、該圧力センサにより油圧シリンダの緊張油圧を検出し、該緊張油圧が予め設定した設定値より規定値以上小さくなった場合に、回転テーブルの回転数を減速してから、該油圧ポンプにより蓄圧機の圧油を増圧して該油圧シリンダの緊張油圧を設定値まで上昇させた後、回転テーブルの回転数を減速前の速度になるまで増速する構成とした。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、竪型粉砕機において、一旦、設定値から規定値以上外れた粉砕ローラの緊張油圧を元の設定値まで回復させる際に発生しやすい竪型粉砕機の異常振動を効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面に基づき本発明の好ましい実施形態の例について詳細に説明する。
図1は本実施形態に係り竪型粉砕機の概略の構造を説明するための説明図である。図2は本実施形態に係り竪型粉砕機を用いた粉砕システムを概念的に説明する図である。図3は回転テーブルの速度と動摩擦係数の関係を表すグラフ、図4は振動数比と振動増幅係数の関係を表すグラフである。
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る竪型粉砕機1の好ましい構成について説明する。
本実施形態に用いた竪型粉砕機1は、図1に示すように竪型粉砕機1の外郭を形成するケーシング1B、回転テーブル2、回転テーブル2の上面(回転テーブル上面2Aと称することもある)外周部を円周方向に等分する位置に配設した複数個のコニカル型の粉砕ローラ3、竪型粉砕機1の下部に設置された減速機2B、減速機2Bを介して回転テーブル2を駆動する可変速式の電動機2M、及び電動機2Mの回転数を制御する制御盤50、を備えている。
【0022】
粉砕ローラ3は、軸7により下部ケーシングに回動自在に軸着した上部アーム6と、該上部アーム6と一体に形成した下部アーム6Aとを介して油圧シリンダ8のピストンロッド9に連結されており、該油圧シリンダ8の作動によって回転テーブル上面2Aの方向に押圧されて、回転テーブル上面2Aに原料を介して従動することによって回転する。
【0023】
前記ケーシング1Bの回転テーブル上面2Aの中央上部には、セパレータ14と、原料投入口35が設けられており、また、セパレータ14の中心軸を上下に貫通するようにして原料投入シュート13が配されて、原料投入シュート13を介して原料投入口35から回転テーブル上面2Aに原料を投入する(供給と称することもある)ことができるよう構成されている。
また、セパレータ14は、セパレータ14の回転軸を中心として上方に拡径する逆円錐台状に一定間隔の隙間をあけて並べられた複数枚の羽根14Aを備えて、図示しない駆動装置により自在に回転できる構成となっている。
【0024】
原料投入シュート13から投入した原料は、回転テーブル上面2Aを渦巻き状の軌跡を描きながら回転テーブル上面2Aの外周部に移動して、回転テーブル上面2Aと粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。そして、回転テーブル上面2Aと粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブル上面2Aの外縁部に周設されたダムリング15を乗り越え、回転テーブル上面2Aの外周部とケーシングとの隙間である環状通路30(環状空間部30と称することもある)へと向かう。ここで、ケーシング1Bの回転テーブル2の下方には、ガスを導入するためのガス導入口33を設けており、さらに回転テーブル上方には該ガスとともに粉砕した原料を取り出すための上部取出口39を設けている。
【0025】
竪型粉砕機1の運転中において、該ガス導入口33よりガス(本実施形態においては空気)を導入することによって、前記ケーシング1B内において該回転テーブル下方からセパレータ14を通過して上部取出口39へと流れるガスの気流が生じている。
【0026】
竪型粉砕機1内に投入した原料と、回転テーブル2と粉砕ローラ3に粉砕されてダムリング15を乗り越えた原料の一部は、前記ガスにより吹き上げられてケーシング内を上昇し、回転セパレータ14に達する。
ここで、径の大きく重量の大きな原料はセパレータ14の羽根14Aを通過することができずセパレータ14の下方に落下して再度粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕されるとともに、径の小さな原料は、隙間をあけて並べられた羽根14Aの間を抜けてセパレータ14を通過し、上部取出口39より取り出される。
【0027】
また、粉砕ローラ3に噛み込まれずそのまま環状通路に達したような一部の極大な粒径の原料は、環状通路30より回転テーブル下方に落下して下部取出口34より竪型粉砕機1の外に取り出される。
【0028】
なお、本実施形態に用いることのできる竪型粉砕機1の型式は、前述したものに限らないことは勿論であって、例えば、粉砕ローラ3の形状がスフェリカル形状のタイヤ型の竪型粉砕機1であっても良い。また、要求される製品の粒度に応じて、セパレータ14は固定タイプのものであっても良い。或いはセパレータを備えていないタイプであっても良い。
【0029】
本実施形態においては、粉砕ローラ3を回転テーブル2に押し付ける油圧シリンダ8、油圧シリンダ8に粉砕ローラ3を回転テーブル2に押し付ける緊張油圧を発生させる蓄圧機としてアキュムレータ61、アキュムレータ61に圧油を供給する油圧ポンプ63、及び、緊張油圧を測定する圧力センサS1を備えている。
【0030】
次ぎに、竪型粉砕機1に備えた制御盤50について簡略に説明する。
図1に示した実施形態において、制御盤50は、圧力センサS1からの信号が入力されて、該圧力値が設定値より規定値以上小さい場合に、電動機2Mに回転数を減速するための信号を発信し、その後、油圧ポンプ36に運転信号を発信する制御装置50Aを備えている。なお、図1に示す実施形態において、電動機2Mは、可変速式であり、減速機2Bを介して回転テーブル2に連結されている。従って、電動機2Mは、制御盤50の制御装置50Aよりから送信される信号によって、その回転速度を自在に変化させて、回転テーブル2の回転速度を自在に変化させることができる。
【0031】
次に本実施形態に係る粉砕システムの好ましい1例ついて図2を参考に説明する。
図2に示した粉砕システムは、竪型粉砕機1、原料ホッパ20、バケットエレベータ25、原料ホッパ21、エキゾーストファン89等を備えている。
原料ホッパ20に蓄えられた原料は、バケットエレベータ25並びに原料ホッパ21等を介して竪型粉砕機1に投入されて粉砕される。竪型粉砕機1内で粉砕された原料は、エキゾーストファン89によるガスの気流により、竪型粉砕機1内を上方に移動して製品取出口39から機外に取り出される。また、竪型粉砕機1の中に投入された原料の中で、製品取出口39から機外に取り出されなかった一部の原料については、下部取出口34から機外に取り出されて、バケットエレベータ25並びに原料ホッパ21等を介して竪型粉砕機1に再度投入されて粉砕される。
【0032】
以下、本発明による竪型粉砕機1の制御方法について、従来技術と異なる部分を中心として、第1の実施形態を説明する。
原料投入シュート13によって、回転テーブル中央部に供給された原料は、回転テーブル2の外周部に向かって移動し、回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれ粉砕される。回転テーブル2と粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕された原料の一部は、回転テーブルの外縁部に周設されたダムリング15を乗り越え、回転テーブル2A上面の外周部とケーシング1Bとの隙間である環状通路30へと向かう。
【0033】
竪型粉砕機1の運転中には、粉砕機下部に設けられたガス導入口33より、エキゾーストファン89によって、機内にガスを導入しており、回転セパレータ部を介して、粉砕機上方に設けた取出口から機外に排出している。その結果、竪型粉砕機1のケーシング1B内で、回転テーブル2下方から回転セパレータ14上方に向かうガスの気流が生じている。従って、ダムリング15を乗り越えて環状通路30に達した原料の一部は、前記ガスの気流により吹き上げられて、ケーシング1B内を上昇する。
【0034】
ケーシング1B内において上昇する気流は、回転セパレータ14の影響を受けて、旋回しながら上昇する気流となっている。そのため、気流により吹き上げられた原料の中で、径が大きく重量の大きな原料は、その重量のためにケーシング1B下方に落下する、或いは、気流による旋回により原料自身に発生する遠心力によって気流から逸脱してケーシング1B下方に落下する等し、回転セパレータ14を通過することができない。
【0035】
回転セパレータ14を通過できず、落下した原料は、竪型粉砕機内で循環して、再度、粉砕ローラ3に噛み込まれて粉砕される。或いは、環状通路より回転テーブル下方に落下して下部取出口より竪型粉砕機1の外に取り出された後、バケットエレベータ等の搬送機を介して、型粉砕機の原料投入口から再度投入されて、粉砕される。なお、径の小さな原料は、羽根の間を抜けて回転セパレータを通過し、上部取出口より取り出される。
【0036】
以下、竪型粉砕機1の制御方法について説明する。
まず、本発明による竪型粉砕機の第1実施形態においては、制御運転前に油圧シリンダ8にかける緊張油圧について、その設定値と、規定値を制御盤50に入力して設定する。
なお、この場合の規定値とは、緊張油圧の下限値を調整するものであり、緊張油圧の測定値が、設定値より規定値以上下がった際において、緊張油圧を回復させるための準備動作に入るためのトリガーになる値である。
緊張油圧を回復させるための工程は、後述するが、振動防止の点からみると規定値は小さい方が良く、少しでも低下すれば、油圧ポンプ63を駆動して圧油を供給し、油圧シリンダ8の緊張油圧の低下を防止した方が良い。
しかし、省エネルギーの観点からみると、規定値は大きめの方が良く、ある程度の大きさまで緊張油圧が下がるのを待って油圧ポンプ63を駆動した方が、油圧ポンプの駆動回数、時間を減らすことができる。規定値は、前述のファクターを勘案して、適宜、規定値を決定すれば良い。
【0037】
次ぎに、竪型粉砕機1の制御運転中においては、圧力センサS1により油圧シリンダ8の緊張油圧を常に検出する。
圧力センサS1で検出された緊張油圧の圧力値は、制御盤50に送信されて、制御装置50Aの中で、予め設定した設定値と比較される。
比較の結果、測定値が、設定値より規定値以上小さくなっていた場合に、制御装置50Aは、電動機2Mに回転数減少の信号を発信し、電動機2Mは、その信号を受けて回転数を低下させるので、回転テーブル2の回転速度は減速する。
制御装置50Aは、次ぎに、油圧ポンプ36に駆動信号を送信し、信号を受けた油圧ポンプ36は、圧油をアキュムレータ61に供給する。
圧油の供給を受けたアキュムレータ61は増圧して、油圧シリンダ8の緊張油圧を上昇させる。そして、緊張油圧が設定値まで上昇したことを圧力センサS1が検出した時点で、制御装置50は、油圧ポンプ36の駆動を停止させ、次ぎに、電動機2Mに回転数増加の信号を発信し、回転テーブル2の回転数を減速前の速度になるまで増速する。
【0038】
ここで、図3に回転テーブルの回転速度と動摩擦係数(粉砕ローラと原料との間の動摩擦係数)の関係を示すが、回転速度が低下すると、粉砕ローラ3と原料の間の摩擦係数が上昇し、粉砕部ですべりなどが生じにくくなる。
【0039】
また、粉砕力(加振力)を増加すれば竪型粉砕機振動の原因となるが、竪型粉砕機に発生する振動は摩擦係数の他に下記のように考えることもできる。
【0040】

【0041】
なお、加振力をバネ定数で割ったものを変位量(A)とする。
【0042】
つまり、振動増幅係数は図4に示したように加振振動数(ω)と粉砕層の振動数(ω0)の比率により変化することが分かる。
通常は、図4においてω/ω0が1.0以下(=共振点以下)で運転されているので、粉砕層の振動数(ω0)を変えずに(製品の粒度に比例し同粒度は変更できないため)加振振動数(ω)を低下させることにより振動増幅係数を低下させることができる。
【0043】
加振振動数(ω)は粉砕ローラの回転数に比例するため同調するテーブル回転数を変更することにより加振振動数を低減できる。この結果、分母、分子ω/ω0の内分子を低下させれば振動増幅係数は減少するので、竪型粉砕機振動が抑制できる。
【0044】
以上、説明したように、振動を抑制または抑止する方法として、摩擦係数の確保法と加振振動数の制御法がある。この2方法に共通するものは、回転テーブル2の回転数であり、原料性状に合わせて都度適正な回転数に設定することにより竪型粉砕機の能力を最大限に引き出すことができる。
【0045】
従って、竪型粉砕機の緊張油圧が設定値から外れ規定値以上小さくなる場合において、テーブル回転数を低下させた後に、緊張油圧を増加させて、例え、加振力を増加しても竪型粉砕機振動を発生させる前に振動要因を排除することができる。
言い換えると、回転テーブル2の回転速度を低下させた状態であれば、緊張油圧を急激に上昇させても異常振動が生じくい。そのため、緊張油圧が下がった状態から速やかに、緊張油圧を回復させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る竪型粉砕機の実施形態を示す要部縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る竪型粉砕機を用いた粉砕システムを概念的に説明する図である。
【図3】回転テーブルの速度と動摩擦係数の関係を表すグラフである。
【図4】振動数比と振動増幅係数の関係を表すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1 竪型粉砕機
2 回転テーブル
3 粉砕ローラ
13 原料投入シュート
14 回転セパレータ
15 ダムリング
1B ケーシング
20 原料ホッパ(新規原料供給用)
21 原料ホッパ
25 バケットエレベータ
30 環状通路
33 ガス導入口
89 エキゾーストファン(送風機)
34 下部取出口
35 原料投入口
39 製品取出口(上部取出口)
50 制御盤
50A 制御装置
S1 圧力センサ
61 アキュムレータ(蓄圧機)
63 油圧ポンプ
65 油タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて回転テーブル上に供給した原料を、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕する竪型粉砕機の制御方法において、
粉砕ローラを回転テーブルに押し付ける油圧シリンダの緊張油圧を検出して、該緊張油圧が、予め設定した設定値より規定値以上小さくなった場合に、回転テーブルの回転数を減速してから緊張油圧を設定値まで上昇させ、該緊張油圧が設定値まで上昇した後、回転テーブルの回転数を減速前の速度になるまで増速する竪型粉砕機の制御方法。
【請求項2】
複数個の回転自在な粉砕ローラを備えて回転テーブル上に供給した原料を、回転テーブルと粉砕ローラとの間で粉砕する竪型粉砕機において、
粉砕ローラを回転テーブルに押し付ける油圧シリンダ、該油圧シリンダに緊張油圧を発生させる蓄圧機、該蓄圧機に圧油を供給する油圧ポンプ、及び該緊張油圧を測定する圧力センサを備えて、
該圧力センサにより油圧シリンダの緊張油圧を検出し、該緊張油圧が予め設定した設定値より規定値以上小さくなった場合に、回転テーブルの回転数を減速してから、該油圧ポンプにより蓄圧機の圧油を増圧して該油圧シリンダの緊張油圧を設定値まで上昇させた後、回転テーブルの回転数を減速前の速度になるまで増速する竪型粉砕機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−178837(P2008−178837A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15821(P2007−15821)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】