説明

第三級アミルエチルエーテルを製造する方法

イソオレフィンおよびプロピオニトリルを含む炭化水素流を、少なくとも1つのエーテル化反応帯を含む蒸留塔反応器系に供給すること、C2−C6モノアルコールまたはその混合物を蒸留塔反応器に供給すること、同時に蒸留塔反応器系において、イソオレフィンの一部とアルコールの一部を反応させて第三級エーテルを形成し、かつ、第三級エーテルを未反応のイソオレフィンから分離すること、第三級エーテルおよびプロピオニトリルを蒸留塔反応器系から残液として抜き出すこと、未反応のイソオレフィンを蒸留塔反応器系から塔頂液として抜き出すこと、ならびに、エーテル化反応帯がプロピオニトリルを実質的に含まないように、蒸留塔反応器系を運転することを含む、第三級エーテルの製造のための方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される実施形態は、一般に第三級アルキルエーテルの製造に関する。より具体的には、本明細書に開示される実施形態は、ニトリル不純物、例えばアセトニトリルおよびプロピオニトリルなどを含む原料からの第三級アミルエチルエーテルの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
エーテル化反応は、オレフィン類、例えばイソブチレンおよびイソアミレンなど、またはその他のオレフィン化合物と、対応するエーテルを形成するアルコールとの反応である。例えば、イソブチレンはエタノールと反応してメチル第三級ブチルエーテル(MTBE)を形成することができる。
【0003】
エーテル化反応は、酸素のガソリンへの導入をもたらして、より排出物の少ない燃焼改質(reformulated)燃料を生成することができる。例えば、ガソリンとブレンドすることのできるエーテルとしては、数ある中でも、MTBE、エチル第三級ブチルエーテル(ETBE)、第三級アミルメチルエーテル(TAME)、第三級アミルエチルエーテル(TAEE)、および第三級ヘキシルメチルエーテル(THEME)が挙げられる。エーテルは酸素をガソリンへ導入するだけでなく、オクタン価の増加ももたらし、モータ燃料のアンチノッキング性を改良することができ、かつ、排出ガス中の有害成分の濃度を低下させることができる。
【0004】
エーテル化反応は、高純度オレフィン原料も提供することができる。例えば、混合C4原料をエーテル化してMTBEを形成した後、得られるエーテル含有混合物を分離してエーテルを回収することができる。次に、MTBEを分解してアルコールおよびイソブチレンを形成することができ、それを分離すると高純度イソブチレンを得ることができる。得られる高純度イソオレフィンは、例えば、高純度原料を必要とする重合方法に用いることができる。
【0005】
エーテル化方法は、一般に強酸性のイオン交換樹脂、例えば強酸性の有機ポリマなどをエーテル化触媒として使用する。イソブチレンまたはイソアミレン分子が活性触媒部位でアルコールに出会うと、オレフィンとアルコールとの間に反応が起こり、迅速にエーテルを形成する。
【0006】
エーテル化反応のための触媒の活性は、酸負荷または樹脂の能力(capacity)の相関関係による。この相関関係は一次的ではない。触媒上の酸性部位の20%を失うとエーテルに変換するための活性がおよそ50%失われる。そのため、触媒の失活を最小限に抑えることが重要である。触媒活性の失活は、塩基性化合物または金属イオンの吸着、ポリマ生成物による活性部位の封鎖、供給材料中のアセチレン化合物との反応、あるいは240°Fを超える温度での長期の運転に起因する樹脂の官能基の分裂により引き起こされ得る。後者の2つの例は、エーテル化反応器の運転条件に影響される。失活の主な原因は、一般に、原料とともに装置に入る毒物による。触媒に対する毒物としては、塩基性化合物、例えばアンモニア、アミン、苛性ソーダ、およびニトリルなどが例えば挙げられる。特に、ニトリル類、例えばアセトニトリル(ACN)およびプロピオニトリル(PN)などは、触媒を失活させることが見出されている。一部の研究により、ニトリルが触媒毒である塩基性窒素化合物に変換されることが示された(例えば米国特許第5,675,043号などに記載される)。実際の毒性にかかわらず、ニトリルまたはその誘導体は一般に、触媒失活の可能性があるために、エーテル化反応容器に供給されることを望まれない。
【0007】
精油所用途において、イソオレフィンを含有する炭化水素原料の最大の供給源は、流動接触分解装置(FCCU)からの流れである。一部のC4およびC5も流体または遅延コークス(cokers)から得られる。これらの装置で形成されるニトリルは、炭化水素供給流とともにエーテル化方法に入る。供給原料中のニトリルの量は、接触分解運転の過酷度、原油源、およびFCCUで用いる触媒とともに変化する。
【0008】
プロピオニトリルは、C5流において特別な課題であることが見出された。プラグ流で触媒床を通じて触媒を失活させる可能性のあるその他の供給材料中の毒とは違って、ニトリルの失活機構は即時的ではない。むしろ、それは床全体に拡散した失活化をもたらす。触媒を用いて適切なランレングス(run length)を得るためには、ニトリルを含む毒と触媒との接触を最小限に抑えることが重要である。
【0009】
エーテル化方法には、数ある中でも、固定床反応系、触媒蒸留系、および固定床反応器と触媒蒸留の組合せが含まれる。そのような方法は、数ある中でも、米国特許第5,238,541号、同第5,489,719号、同第5,491,267号、同第6,037,502号、同第5,446,231号、同第5,536,886号、同第6,583,325号、同第5,166,454号、および同第5,188,725号に記載されている。
【0010】
エーテル化方法を記載する上記の特許の多くは、エーテル化触媒とニトリルとの間の接触を最小限に抑える必要性を認識している。いくつかの方法により、エーテル化装置の供給材料からニトリルを除去することが提案されている。例えば、米国特許第5,569,790号、同第5,672,772号、同第5,847,230号、同第6,037,502号、同第6,118,037号、同第6,278,029号は、炭化水素流を水および/またはアルコールで洗浄することにより、ニトリルをC4およびC5炭化水素流から除去して、ニトリルを水相に抽出するエーテル化方法を開示する。しかし、米国特許第5,446,231号および同第6,019,887号に記されるように、水洗浄は、ニトリル、特にプロピオニトリルを抽出する時に効果がない可能性がある。
【0011】
エーテル化触媒をニトリルによる失活から保護するその他の方法としては、各々エーテル化より前の、溶媒抽出、ジエンの選択的水素化、加水分解、窒素および硫黄含有化合物の水素化、反応性保護床(reactive guard beds)、窒素除去装置、ならびに吸着が挙げられる。その他の方法としては、FCCおよびエーテル化方法で使用するための触媒を組み込むこと、または、例えばエステル化など、再生されてもよい触媒床を提供し、それを受けてその後の反応段階が続くその他の方法を使用することが挙げられる。これらの方法の例は、例えば、米国特許第5,015,782号、同第5,166,454号、同第5,188,725号、同第5,352,848号、同第5,414,183号、同第5,491,267号、同第6,019,887号、同第6,118,037号、および同第7,025,872号に見出すことができる。しかし、保護床に関して、米国特許第5,292,993号および同第6,197,163号に記されるように、触媒毒の除去は効果がない可能性があるか、または一部の触媒毒は従来の保護床を通過することができる可能性がある。
【0012】
エーテル化触媒をニトリルによる失活から保護するその他の方法としては、エーテル化反応器より前の、反応体、炭化水素およびアルコールの共沸蒸留が挙げられる。例えば、メタノールの共沸蒸留は、米国特許第5,238,541号、同第5,292,993号、同第5,453,550号、同第5,446,231号、および同第6,197,163号に記載されている。例えば、第5,238,541号において、イソオレフィンを含有する炭化水素流はアルコールと接触し、混合物は蒸留される。混合物で生じた共沸混合物の結果として、炭化水素は、一部のアルコールとともに除去された塔頂液である可能性があり、一方、ニトリル、アルコール、および重い炭化水素は残液中に除去することができ、その結果、塔頂液として収集される炭化水素原料は、ニトリルを実質的に含まない。次に、アルコールは同方法における反応体であるので、アルコール/炭化水素混合物を、エーテル化装置への直接供給原料として用いてもよい。
【0013】
参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,446,231号(‘231号)において、ニトリルを含有する炭化水素流をメタノール−水混合物に接触させてニトリルを抽出する。結果として得られる水−メタノール−ニトリル混合物を次に蒸留して、水を残液として、ニトリル汚染メタノールを塔頂液として回収する。ニトリル含量の低下した炭化水素を次にエーテル化反応器に供給することができる。
【0014】
‘231号の一実施形態では、メタノール−ニトリル混合物を、触媒帯よりも低いポイントで触媒蒸留反応器に供給する。メタノールは炭化水素と共沸混合物を形成し、蒸留されて触媒帯に入る。ニトリルは、メタノール−炭化水素の共沸混合物に加わらず、エーテル生成物中にとどまり、触媒蒸留反応器からの残液として回収される。正味の効果は、ニトリルをカチオン樹脂触媒と接触していない状態にしておくこと、およびそれらをよりオクタン価の高いエーテルへの流れに従う変換に戻すことであり、したがって触媒寿命を伸ばす。
【0015】
別個の実施形態において、‘231号には、エタノール−水ブレンドをC5画分からのプロピオニトリルの抽出のために効果的に使用可能であることが開示される。‘231号には、プロピオニトリルは、触媒を保護するために、触媒反応器に再循環させるより前にエタノールから除去されねばならないことがさらに教示される。エタノール−水混合物を用いて、‘231号は、ニトリルのアミンへの水素化が適切であることを示す。従って、ニトリル汚染メタノールを蒸留塔反応器に供給することができるとはいえ、‘231号には、ニトリル汚染エタノールは蒸留塔反応器に供給されるべきでないことが示される。
【0016】
一般に、上に考察されるように、これらおよびその他の参照文献は、触媒失活化の可能性の増大に起因して、ニトリルをエーテル化反応容器に供給することは望ましくないことを教示する。ニトリルによる触媒失活化を防ぐために、上記の方法の多くが、かなりの数の反応器および分離器(ピース数(piece count)が多い)、より高い資本コストへの転換、全体的な方法に対する複雑さの増加、ならびに運転コスト(エネルギ、原料、精製)の増加を含む可能性があり、オレフィン供給濃度の低下をもたらす可能性があり、かつ/あるいは、上記のように、汚染物質失活/プロピオニトリル除去に効果がない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,238,541号明細書
【特許文献2】米国特許第5,489,719号明細書
【特許文献3】米国特許第5,491,267号明細書
【特許文献4】米国特許第6,037,502号明細書
【特許文献5】米国特許第5,446,231号明細書
【特許文献6】米国特許第5,536,886号明細書
【特許文献7】米国特許第6,583,325号明細書
【特許文献8】米国特許第5,166,454号明細書
【特許文献9】米国特許第5,188,725号明細書
【特許文献10】米国特許第5,569,790号明細書
【特許文献11】米国特許第5,672,772号明細書
【特許文献12】米国特許第5,847,230号明細書
【特許文献13】米国特許第6,118,037号明細書
【特許文献14】米国特許第6,278,029号明細書
【特許文献15】米国特許第6,019,887号明細書
【特許文献16】米国特許第5,015,782号明細書
【特許文献17】米国特許第5,352,848号明細書
【特許文献18】米国特許第5,414,183号明細書
【特許文献19】米国特許第7,025,872号明細書
【特許文献20】米国特許第5,292,993号明細書
【特許文献21】米国特許第6,197,163号明細書
【特許文献22】米国特許第5,453,550号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、ピース数が少なく、エーテル化触媒の失活を効果的に回避することができ、かつ/または先行技術のエーテル化方法に経済的な代替案を提供することができる、C4−C6炭化水素流からエーテルを製造する方法に対して必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、第三級エーテルの製造のための方法に関する。この方法には、イソオレフィンおよびプロピオニトリルを含む炭化水素流を、少なくとも1つのエーテル化反応帯(etherification reaction zone)を含む蒸留塔反応器系(distillation column reactor system)に供給すること、C2−C6モノアルコールまたはその混合物を蒸留塔反応器に供給すること、同時に蒸留塔反応器系において、イソオレフィンの一部とアルコールの一部を反応させて第三級エーテルを形成し、かつ、第三級エーテルを未反応のイソオレフィンから分離すること、第三級エーテルおよびプロピオニトリルを蒸留塔反応器系から残液(bottoms)として抜き出すこと、未反応のイソオレフィンを蒸留塔反応器系から塔頂液(overheads)として抜き出すこと、ならびに、エーテル化反応帯がプロピオニトリルを実質的に含まないように、蒸留塔反応器系を運転することが含まれ得る。
【0020】
その他の態様では、本明細書に開示される実施形態は、第三級アミルエチルエーテルの製造のための方法に関する。この方法には、炭化水素を含む流れがエーテル化蒸留反応帯よりも低いポイントで蒸留塔反応器に供給される、C5イソオレフィンおよびプロピオニトリルを含む炭化水素流を少なくとも1つのエーテル化反応帯を含む蒸留塔反応器に供給すること、エタノールを蒸留塔反応器に供給すること、同時に蒸留塔反応器において、C5イソオレフィンの一部とエタノールの一部を反応させて第三級アミルエチルエーテルを形成し、かつ、第三級アミルエチルエーテルを未反応のC5イソオレフィンから分離すること、第三級アミルエチルエーテルおよびプロピオニトリルを蒸留塔反応器から残液として抜き出すこと、未反応のC5イソオレフィンを蒸留塔反応器から塔頂液として抜き出すこと、ならびに、エーテル化蒸留反応帯がプロピオニトリルを実質的に含まないように、蒸留塔反応器を運転することが含まれ得る。
【0021】
その他の態様および利点は、以下の説明および添付される特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本明細書に開示される実施形態に従う触媒蒸留反応器系の簡略化された流れ図である。
【図2】本明細書に開示される実施形態に従う触媒蒸留反応器系の簡略化された流れ図である。
【図3】本明細書に開示される実施形態に従うエーテル化方法の実施形態に存在し得る成分を含有する混合物に対するオールダーショウ型蒸留(Oldershaw Distillation)の結果を表す図である。
【図4】本明細書に開示される実施形態に従うエーテル化方法の実施形態に存在し得る成分を含有する混合物に対するオールダーショウ型蒸留の結果を表す図である。
【図5】本明細書に開示される実施形態に従うエーテル化方法の運転結果を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
一態様では、本明細書に開示される実施形態は、炭化水素、特にC4−C7炭化水素を含有する原料が、触媒蒸留反応器系に供給されるエーテル化方法に関する。原料に含まれるC4−C6イソオレフィンは、カチオン交換樹脂の存在下でアルカノールと反応して第三級アルキルエーテルを形成する。
【0024】
より具体的な態様では、本明細書に開示される実施形態は、炭化水素および、プロピオニトリルを含むニトリルを含有する原料を、C2−C6アルコールとともに触媒蒸留反応器系に供給するエーテル化方法に関する。エーテル化方法は、本質的にすべてのプロピオニトリルがエーテル化触媒と接触しないような方法で運転することができる。
【0025】
本出願人は、驚くべきことに、先行技術の教示に反して、エーテル化方法条件は、エタノールまたは高級アルコールを用いるC4−C6イソオレフィンの効果的なエーテル化をもたらす条件を選択することができ、さらにニトリルに起因する触媒失活は限られるかまたはごくわずかであることを見出した。本明細書に記載されるエーテル化方法の実施形態は、いくつかある利益の中でも、触媒寿命の延長、方法の柔軟性、および、資本コストの低下をもたらし得るピース数の減少、複雑な反応系の減少、および運転コストの減少の1つ以上をもたらし得る。
【0026】
本出願の範囲内で、「触媒蒸留反応器系(catalytic distillation reactor system)」という表現は、エーテル化反応および生成物の分離が少なくとも一部分同時に起こる装置を意味する。この装置は、反応および蒸留が沸点条件で同時に起こる従来の触媒蒸留塔反応器、または、液相反応器または沸点反応器として運転することのできる、少なくとも1つの副反応器と組み合わせた蒸留塔を含んでもよい。記載される両方の触媒蒸留反応器系が、分離がその後に続く従来の液相反応よりも好ましいが、触媒蒸留塔反応器は、ピース数の減少、資本コストの低下、触媒1ポンドあたりの触媒生産性の増加、効率的な熱除去(反応熱は混合物の気化熱に吸収され得る)、および移動均衡(shifing equilibrium)の可能性という利点を有し得る。分割壁塔の少なくとも1つの区分が触媒蒸留構造を有する分割壁蒸留塔(divided wall distillation column)を用いてもよく、本明細書において「触媒蒸留反応器系」とみなされる。
【0027】
上記のように、本明細書に開示される実施形態は、エーテル化触媒を用いてオレフィンとアルコールを反応させることによるオレフィン炭化水素のエーテル化に関する。これらの成分の各々は、本明細書に開示されるエーテル化方法の実施形態の説明に続いて、以下に詳細に記載されている。
【0028】
<炭化水素供給材料>
本明細書に記載されるエーテル化方法の実施形態で使用するための炭化水素原料には、C3−C9およびそれよりも高い炭化水素が含まれ得る。例えば、精油所の流れは通常、分別蒸留により分離される。軽質ナフサ留分はそのような精油所の流れの一つであり、それらはしばしば沸点が非常に近い化合物を含むため、分離は正確でない。従って、例として、C5流には、C4およびC8まで、およびそれより高いものが含まれる可能性がある。これらの成分は、飽和してもよく(アルカン類)、不飽和であってもよく(モノオレフィン類)、ポリ不飽和であってもよい(例えば、ジオレフィン類)。その上、成分は個々の化合物の様々な異性体のいずれかまたは全てであってもよい。そのような混合物は、ニトリル汚染物質を含む、150〜200成分を容易に含むことができる。C4−C9炭素原子のその他の炭化水素流は、本明細書に開示される実施形態で使用することができる。
【0029】
一部の実施形態では、炭化水素原料には、C4留分が含まれてもよく、それには、オレフィンおよびニトリル汚染物質を含む、C3〜C5またはそれより高い炭化水素(すなわちC6+)が含まれる可能性がある。その他の実施形態では、炭化水素原料にはC5留分が含まれてもよく、それには、オレフィンおよびニトリル汚染物質を含む、C4〜C8またはそれより高い炭化水素が含まれる可能性がある。その他の実施形態では炭化水素原料にはC6留分が含まれてもよく、それには、オレフィンおよびニトリル汚染物質を含む、C4〜C9またはそれより高い炭化水素が含まれる可能性がある。その他の様々な実施形態では、炭化水素原料には、1つ以上のC4、C5、C6、およびC7+炭化水素の混合物が含まれてもよく、前記混合物にはオレフィン化合物およびニトリル汚染物質が含まれる。上記の流れには、C4−C7流、ガソリン留分、FCCガソリン、コークスガソリン(coker gasoline)、およびその他の同様の特性を有する精油所の流れが含まれ得る。
【0030】
上記の炭化水素流に含まれる飽和化合物には、例えば、数ある中でも、ブタンの様々な異性体、ペンタンの様々な異性体、およびヘキサンの様々な異性体が含まれ得る。上記の炭化水素流に含まれるオレフィン化合物には、例えば、数ある中でも、イソブチレン、ペンテンの様々な異性体、およびヘキセンの様々な異性体が含まれ得る。一部の実施形態では、炭化水素流は任意の供給源に由来してもよく、1〜35重量パーセントの濃度のエーテル化可能なイソオレフィン、その他の実施形態では10〜30重量パーセントの濃度のイソオレフィン、および、さらにその他の実施形態では15〜25重量パーセントの濃度のイソオレフィンが含まれ得る。
【0031】
本明細書に開示されるその他の実施形態は、多数の異なる原料からの幅広い種類のエーテルの製造に広く適用できる。本明細書に開示される方法の結果得られる第一エーテルには、第三級アミル、第三級ブチル、および第三級ヘキシルエーテルが含まれ得る。エーテル化方法が、ブチルエーテルの製造のための一方法である場合、典型的な供給流は、イソブタン、イソブチレン、通常のブタン、1−ブテンおよび2−ブテンを含むC4異性体の混合物を含むであろう。本方法がアミルエーテルの製造のための一方法である場合、供給流成分には、3−メチル−1−ブテン、イソペンタン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、通常のペンタン、トランス−2−ペンテン、シス−2−ペンテンおよび2−メチル−2−ブテンが典型的な異性体分布で含まれる。そのような炭化水素供給流を提供するために多様な供給源が利用できるが、これらの方法のための供給流の最も一般的な供給源は、FCC装置からの分解された軽質炭化水素流、またはブタジエン抽出後の蒸気分解からのC4流である。一実施形態では、本発明のエーテル化供給流は、イソアミレンを含み、イソアミレンには、反応性異性体(2−メチル−1−ブテンおよび2−メチル−2−ブテン)ならびに未反応性異性体(3−メチル−1−ブテン)の両方が含まれ得る。
【0032】
一部の実施形態で用いられる炭化水素流には、1ppm以上の濃度のプロピオニトリルが含まれ得る。その他の実施形態では、炭化水素流には、2ppm以上の濃度のプロピオニトリル、その他の実施形態では5ppm以上、さらにその他の実施形態では10ppm以上、その他の実施形態では、20ppm以上、さらにその他の実施形態では50ppm以上が含まれ得る。
【0033】
<アルコール>
本明細書に開示される実施形態において有用なアルコールには、C2−C6第一および第二アルコールが含まれ得る。用語「アルコール」には、飽和および不飽和炭化水素、特に炭化水素原料のC3−C7炭化水素とともに共沸混合物を形成することのできる低級アルキルアルコールが含まれる。本明細書に開示される実施形態において有用なアルコールの例としては、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノールおよびt−ブタノールが挙げられる。一部の実施形態では、メタノールは、1つ以上のC2+アルコールと組み合わせて用いることができる。
【0034】
<触媒>
エーテル化方法で一般に使用されるいずれの触媒も、本明細書に開示される実施形態で使用することができる。従来のカチオン交換樹脂および/またはゼオライトは様々な実施形態で使用することができる。従って、樹脂はスルホン酸基を含んでよく、芳香族ビニル化合物の重合または共重合とそれに続くスルホン化により得ることができる。共重合体のポリマを調製するために適した芳香族ビニル化合物の例としては、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルエチル−ベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼンおよびビニルキシレンが挙げられる。酸カチオン交換樹脂は、1つの芳香族核につき約1.3〜1.9のスルホン酸基を含むことができる。一部の実施形態では、樹脂は芳香族モノビニル化合物と、ポリビニルベンゼン含量が共重合体の約1〜20重量パーセントである芳香族ポリビニル化合物との共重合体に基づいてもよい。イオン交換樹脂の粒子の粒径は、一部の実施形態では約0.15〜1mmであり得る。上記の樹脂に加えて、スルホニルフルオロビニルエチルとフッ化炭化水素の共重合体であるパーフルオロスルホン酸樹脂を使用してもよい。
【0035】
本明細書に開示されるエーテル化方法で有用な触媒は、中孔径またはZSM−5型と呼ばれるゼオライトを含む場合がある。その他の実施形態では、ゼオライトは、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−50、MCM−22、ならびに大孔ゼオライトYおよびゼオライトベータからなる群より選択される、中孔径の形状選択性酸性メタロシリケートゼオライトであってもよい。本明細書において利用されるゼオライトに付随する元のカチオンは、当分野で周知の技術に従って、例えば、イオン交換により、幅広い種類のその他のカチオンに置換されてもよい。典型的な置換カチオンとしては、水素、アンモニウム、アルキルアンモニウム、および金属カチオン、およびそれらの混合物が挙げられる。金属カチオンの場合、例として、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、パラジウム、カルシウム、クロム、タングステン、モリブデン、希土類金属などを含む、周期表の第IB〜VIIIA族の金属を使用してもよい。これらの金属はまた、それらの酸化物の形態でも存在してもよい。
【0036】
その他の実施形態では、イソアルケン(isoalkene)反応体のためのエーテル化触媒には、無機酸、例えば硫酸、三フッ化ホウ素、珪藻土上のリン酸、リン修飾ゼオライト、ヘテロポリ酸、および様々なスルホン化樹脂が含まれる。これらの樹脂タイプの触媒には、フェノールホルムアルデヒド樹脂と硫酸の反応生成物、およびジビニルベンゼンと架橋したものを含むスルホン化ポリスチレン樹脂が含まれ得る。特定のエーテル化触媒は、米国特許第2,922,822号に記載されるスルホン化スチレン−ジビニルベンゼン樹脂などの、架橋度が約5〜60%の多孔性酸形態(macroporous acid−form)のスルホン酸(sulfonic)イオン交換樹脂である。特化樹脂は当分野に記載されており、米国特許第3,489,243号に記載されるスルホニルフルオロビニルエーテルとフッ化炭化水素の共重合体がそれに含まれる。その他の特別に調製された樹脂は、米国特許第4,751,343号に記載されるSiO2修飾したカチオン交換体を含む。適した樹脂の多孔性構造は、米国特許第5,012,031号において、少なくとも約400m2/gの表面積、約0.6〜2.5ml/gの細孔容積、および40〜1000オングストロームの平均孔径を有するとして詳細に記載されている。本方法は、米国特許第4,330,679号に記載される周期表の亜族VI、VIIまたはVIIIの1つ以上の金属、例えばクロム、タングステン、パラジウム、ニッケル、クロム、白金、または鉄を含有する金属含有樹脂を用いて行ってもよいことが検討される。適したエーテル化触媒に関するさらなる情報は、米国特許第2,480,940号、同第2,922,822号、および同第4,270,929号を参照することにより得ることができる。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書において使用するための触媒蒸留構造には、カチオン交換樹脂粒子を布ベルト(cloth belt)の複数のポケットの中に置くことが含まれ、布ベルトは2本の鋼線を一緒にらせん形に編むことによるオープンメッシュニットのステンレス鋼線により蒸留塔反応器で支持される。これは必要な流れを可能にし、触媒の喪失を防ぐ。布は、反応において不活性であるあらゆる材質、例えば綿、麻、ガラス繊維布、またはテフロン(登録商標)などであってもよい。米国特許第4,302,356号、同第4,443,559号、および同第5,730,843号には、蒸留構造として有用である触媒構造が開示されており、それらは参照により本明細書に組み込まれる。
【0038】
<エーテル化反応>
上記のように、イソオレフィンとアルコールを反応させてエーテルを形成することができる。本明細書に開示される実施形態において形成されるエーテルの例としては、エチル第三級ブチルアルコール(ETBE)、イソブチレンとエタノールの反応生成物、第三級アミルエチルエーテル(TAEE)、イソアミレンとエタノールの反応生成物、第三級ヘキシルエチルエーテル(THEE)、様々なC6イソオレフィンとエタノールの反応生成物、ならびにイソオレフィンとC3−C6アルコールの反応から生じるプロピル、ブチル、アミル、およびヘキシル対応物を挙げることができる。一部の実施形態、例えばメタノールを含むアルコールの混合物を使用する場合などでは、生じるエーテルとしては、イソオレフィンとメタノールの反応により形成されるメチルエーテルを挙げることができる。
【0039】
<蒸留塔反応器系>
本明細書に開示される実施形態において有用な蒸留塔反応器系は、図1および図2に説明される。当業者であれば、バルブ、ポンプ、ユーティリティ、およびその他の運転に必要な項目は、示される流れ図を簡略化する目的のために省略されていることを理解するであろう。
【0040】
図1を参照すると、本明細書に開示される一部の実施形態に従う蒸留塔反応器系5が説明される。ニトリルを含有する炭化水素流10は、蒸留塔反応器12に供給され得る。炭化水素流10の供給位置は、触媒含有領域14より低いどの段であってもよい。炭化水素流10中に含まれるイソオレフィンは、触媒含有領域14中のアルコールと反応してエーテルを生成することができる。蒸留塔反応器12には、各々蒸留塔反応器12での液体および蒸気の通過量を制御するリボイラ16および塔頂系17が含まれ得る。
【0041】
蒸留塔反応器系5は、炭化水素流10中に含まれるニトリルが、炭化水素流10中に含まれる重い炭化水素およびオレフィンとアルコールの反応により形成されるエーテルとともに、塔底流18で蒸留塔反応器12を出るように運転することができる。アルカンおよび未反応のオレフィンを含む軽い炭化水素は、塔頂系17で濃縮し、塔頂流20に回収するか、または還流として蒸留塔反応器12の上部に再循環させることができる。
【0042】
アルコールは、蒸留塔反応器12に炭化水素流10とともに供給するか、または別々に(図示せず)、炭化水素供給流10の供給ポイントよりも上または下の段を含む、蒸留塔反応器12の異なる位置に供給してもよい。アルコールと様々な炭化水素の間に形成され得る共沸混合物およびエーテル、ならびに選択される運転条件によって、アルコールは、塔底流18と塔頂流20の両方に存在する可能性がある。
【0043】
図2を参照すると、その他の実施形態に従う蒸留塔反応器系25が説明され、図中、同様の成分は同様の数字で示される。ニトリルを含有する炭化水素流10は、蒸留塔32に供給され得る。リボイラ16は、蒸留塔32の底部と流体連通していてもよく、塔頂系17は蒸留塔32の上部と流体連通していてもよく、そこで各々は蒸留塔32内の液体および蒸気の通過量を制御することができる。蒸留塔32には、バルブトレイ、シーブトレイ、バブルキャップトレイ、充填物、構造充填物、ランダム充填物、または当業者に公知の蒸留を行うためのその他の構造が含まれてもよい。
【0044】
液体ドロー(liquid draw)34を、炭化水素流10の供給位置よりも上の段で塔から抜き出すことができる。次に、オレフィンおよびアルコールを含有する液体ドロー34を、エーテル化触媒を含有するエーテル化反応器36に供給して、エーテルを生成することができる。不活性化合物であり、未反応のアルコールである、エーテルおよびオレフィンは混合生成物流38中に回収することができ、それは次に液体ドロー34の位置よりも低いポイントで蒸留塔32に戻され得る。
【0045】
蒸留塔反応器系25は、炭化水素流10中に含まれるニトリルが、炭化水素流10中に含まれる重い炭化水素およびオレフィンとアルコールの反応により形成されるエーテルとともに、塔底流18で蒸留塔32を出るように運転することができる。アルカンおよび未反応のオレフィンを含む軽い炭化水素は、塔頂系17で濃縮し、塔頂流20で回収することができる。
【0046】
アルコールは、蒸留塔32に炭化水素流10とともに供給するか、または炭化水素供給流10の供給ポイントよりも上または下の段を含む、蒸留塔32の異なる位置に供給してもよい。アルコールと様々な炭化水素の間に形成され得る共沸混合物、ならびに選択される運転条件によって、アルコールは、塔底流18と塔頂流20の両方に存在する可能性がある。
【0047】
より具体的な実施形態では、上記の蒸留塔反応器系を用いて第三級アミルエーテルを生成することができる。再び図1を参照すると、C5留分およびニトリルを含有する炭化水素流10は、蒸留塔反応器12に供給され得る。上に記載したように、C5留分には、反応性および非反応性異性体を含む、ペンタンの異性体およびペンテンの異性体が含まれる可能性がある。炭化水素流10の供給位置は、触媒含有領域14より低いどの段であってもよい。炭化水素流10中に含まれるイソオレフィンは、触媒含有領域14中のエタノールと反応して第三級アミルエチルエーテルを生成することができる。蒸留塔反応器12には、各々蒸留塔反応器12での液体および蒸気の通過量を制御するリボイラ16および塔頂系17が含まれてもよい。
【0048】
蒸留塔反応器系5は、炭化水素流10中に含まれるニトリルが、C5留分炭化水素流10中に含まれる任意の重い炭化水素およびオレフィンとアルコールの反応により形成されるエーテルとともに、塔底流18で蒸留塔反応器12を出るように運転することができる。C5留分中に含まれる、任意の軽いアルカンおよび未反応のオレフィンを含む軽い炭化水素は、塔頂系17で濃縮し、塔頂流20に回収するか、または還流として蒸留塔反応器12の上部に再循環させることができる。
【0049】
エタノールは、蒸留塔反応器12に炭化水素流10とともに供給するか、または炭化水素供給流10の供給ポイントよりも上または下の段を含む、蒸留塔反応器12の異なる位置に供給してもよい。エタノールと様々な炭化水素の間に形成され得る共沸混合物、ならびに選択される運転条件によって、エタノールは、塔底流18と塔頂流20の両方に存在する可能性がある。
【0050】
同様に、図2に説明される蒸留塔反応器系25を用いても、第三級アミルエチルエーテルを生成することができる。同様の説明は、具体的なC4留分およびC6留分、または、いくつか例を挙げると、C4とC5の混合物、C5とC6の混合物、C4−C7の混合物、およびC5−C7の混合物を含む炭化水素の様々な混合物にも行うことができる。
【0051】
<蒸留塔反応器系の運転>
上記のように、蒸留塔反応器系は、ニトリルが塔の下方に押され、重い残液とともに出るように運転することができる。本出願人らは、使用する具体的なC2−C6アルコールまたはアルコールの混合物および形成した共沸混合物にもよるが、ニトリルが、蒸留塔反応器系の中で選択されるアルコール濃度プロフィールを維持することにより、塔の下方に押され得ることを見出した。
【0052】
例えば、本出願人らは、ニトリルが、エタノール/アミルエーテル共沸混合物よりも軽い留分で高濃度であることを見出した。主にC5を含有する混合物のエーテル化に関して、ニトリルは、蒸留塔反応器系の中で選択されるエタノール濃度プロフィールを維持することにより塔の下方に押され得る。従って、ニトリルを塔の下方に押すため、かつ、ニトリルが触媒と接触することを最小限に抑えるかまたは回避するためには、触媒含有帯よりも低い(または触媒含有反応器に供給されるサイドドロー(side draw)よりも低い)ポイントで、エタノールをピーク濃度に維持すればよい。一部の実施形態では、エタノールは、供給位置よりも低いポイントでピーク濃度に維持され得る。その他の実施形態では、エタノールは、残液中でピーク濃度であり得る。なおその他の実施形態では、エタノールの濃度は、一番上のトレイから触媒含有帯よりも低い(または触媒含有反応器に送り込まれるサイドドローよりも低い)ポイントまで増加してもよい。その他の実施形態では、エタノールの濃度は、一番上のトレイから供給位置よりも低いポイントまで増加してもよい。
【0053】
同様に、選択されるアルコールプロフィールが、ニトリルと触媒の接触を最小限に抑えるかまたは回避することのできる、その他のアルコール/炭化水素混合物を用いることができる。しかし、反応体の分子量により、選択されるアルコールプロフィールには制限がある。各々十分な濃度のアルコールおよびイソオレフィンが、所望の反応を得るために触媒帯に必要である。
【0054】
一部の実施形態では、エーテル化は、エーテル化反応帯がプロピオニトリルを実質的に含まないように運転されてもよい。本明細書において使用される、実質的に含まないとは、供給材料中25パーセント未満のプロピオニトリルがエーテル化反応帯の触媒と接触することを示す。その他の実施形態では、エーテル化は、供給材料中2ppm未満のプロピオニトリルがエーテル化反応帯に接触するように運転されてもよく、その他の実施形態では1ppm未満、その他の実施形態では0.5ppm未満、さらにその他の実施形態では0.1ppm未満である。一部の実施形態では、エーテル化は、プロピオニトリルが検出可能な濃度でエーテル化反応帯に接触しないように運転されてもよい。
【0055】
<その他の方法>
上記のように、触媒蒸留反応器系の運転は、その他の系と連結することができる。一部の実施形態では、蒸留塔からの残液生成物は、それに続く分離(例えば、エーテルまたは任意の残留アルコールを回収するなど)を受け得る。その他の実施形態では、エーテルを含む残液生成物をガソリン添加剤として用いることができる(例えば残液生成物またはガソリンブレンド中のニトリルおよびその他の窒素含有化合物の濃度が、ガソリン中の窒素含有化合物に設定されている限界よりも低い場合など)。その他の実施形態では、蒸留塔からの塔頂液生成物は、それに続く分離(例えば任意の未反応のアルコールを炭化水素から回収することなど)を受け得る。様々な実施形態では、これらの分離方法のいずれかで回収されるアルコールおよび/または炭化水素は、さらなる加工のために蒸留塔反応器系に再循環させることができる。
【0056】
その他の実施形態では、供給材料は、触媒蒸留反応器系へ入るより前に加工段階を受け得る。洗浄、溶媒抽出、保護床の使用、およびその他の処理を含む、炭化水素原料からニトリルを除去するための上記の系を用いて、炭化水素原料を触媒蒸留反応器系に供給するより前に少なくとも一部のニトリルを除去することができる。このようにして、既存のエーテル化方法の運転を、本明細書に開示される実施形態に従って改良し、触媒寿命および塔の運転を改良することができ、かつ、触媒蒸留系に入るニトリルの量を少なくとも一部分減少させることができる。
【0057】
一部の実施形態では、炭化水素およびアルコール供給をまず、固定床エーテル化反応器に通過させ、少なくとも一部の供給材料をエーテルに変換することができる。反応器からの流出液は、次にさらなる加工のために触媒蒸留反応器系に送られ、そこで触媒蒸留反応器系は、上記のように、ニトリル汚染物質からエーテル化触媒を保護するような方法で運転される。固定床反応器は単一相反応器、例えば液相もしくは気相反応器、固定床沸点反応器、またはそれらの組合せなどであってもよい。
【0058】
その他の実施形態では、エタノールまたは追加のエタノールを、炭化水素供給位置よりも上の位置で蒸留塔反応器系に加えてもよい。例えば、エタノールは、1つ以上の塔の上部、エーテル化触媒帯よりも上、エーテル化触媒帯の中、またはエーテル化触媒帯よりも低く供給トレイよりも高いトレイに加えてもよい。このようにして、エタノールの濃度は塔の上部に向かって増加して、ニトリル汚染物質を実質的に含まない触媒を維持するさらなる推進力を得てもよい。
【0059】
なおその他の実施形態では、塔の運転は、供給材料中のC6およびそれより重い化合物が、炭化水素供給位置から下向きに優先的に横切るようなものであってもよい。C6およびそれより重い化合物の供給材料位置からのあらゆる上向きの移動は、望ましくないことに、塔内のプロピオニトリルおよびその他のニトリル汚染物質をエーテル化触媒帯に向かって持ち上げる可能性がある。
【実施例】
【0060】
<実施例1−オールダーショウ型蒸留1>
オールダーショウ型蒸留をC5、エタノールおよびTAEE中にプロピオニトリルを含有する混合物で行った。混合物には、25重量パーセントのC5、25重量パーセントのエタノール、50重量パーセントのTAEE、および50ppmのプロピオニトリルが含まれた。オールダーショウ型蒸留を、10の等しい容積のカットを用い、充填された塔を使用して大気圧にて行った。蒸留の結果を図3に説明する。
【0061】
<実施例2−オールダーショウ型蒸留2>
オールダーショウ型蒸留をC5、エタノールおよびTAEE中にプロピオニトリルを含有する混合物で行った。混合物には、50重量パーセントのC5、40重量パーセントのエタノール、10重量パーセントのTAEE、および90ppmのプロピオニトリルが含まれた。オールダーショウ型蒸留を、10の等しい容積のカットを用い、充填された塔を使用して大気圧にて行った。蒸留の結果を図4に説明する。
【0062】
上記の2つのオールダーショウ型蒸留の結果は、最高濃度のプロピオニトリルがエタノール/TAEE共沸混合物よりもほんの少し軽く現れたことを示す。図3のオールダーショウ型蒸留1では、プロピオニトリル濃度はカット4で最大であり、カット1〜3および5〜6においてそれより低い程度まで示される。図4のオールダーショウ型蒸留2では、プロピオニトリル濃度はカット6で最大であり、カット1〜4で最小であった。
【0063】
先行技術の方法(米国特許第5,292,993号および同第5,446,231号に記載されるものなど)と比較すると、メタノールの共沸蒸留は、エタノールを用いる上記の蒸留とは基本的に異なる力学を有する。メタノールの共沸蒸留では、プロピオニトリルは塔の下方に押し下げられる。その一方、エタノールを用いる蒸留は、塔においてエタノール/TAEE共沸混合物のポイントよりも上のポイントまでプロピオニトリルを持ち上げる結果となる。従って、塔におけるエタノール濃度プロフィールは、塔においてプロピオニトリルの濃度プロフィールを制御する際に重要な変数であり得る。
【0064】
<実施例3−連続触媒蒸留>
触媒蒸留反応器を用いて、FCC C5およびエタノールを用いるTAEEの生成を実証した。供給原料は、主にFCCナフサからのC5パラフィンおよびオレフィンの混合物であり、それに、17重量%のイソアミレン(IA)、少量のC6化合物(数重量パーセントまで)および約20ppmのプロピオニトリルを含有するエタノールを加えた。塔は110フィートの高さであり、触媒は60フィートと100フィートの間に位置し、供給材料ポイントは45フィートに位置した。イソアミレンを含有する供給材料を、固定床沸点反応器に供給した。次に、反応器流出液を触媒蒸留塔のストリッピング部(stripping section)に送った。固定床反応器には約42ポンドのRohm and Haas A35エーテル化触媒が含まれた。触媒蒸留塔には、Rohm and Haas A35エーテル化触媒を含有する36フィートのCDModules(Catalytic Distillation Technologiesより入手可能な有標の(proprietary)構造充填物)が含まれた。残りの44フィートの触媒蒸留塔には、5/8インチのPallリングが含まれた。第一反応器への入口温度は120°Fであった。触媒蒸留塔は40〜60psigの間で運転した。供給流は0〜110ポンド/時間の間で変動した。還流は、100〜200ポンド/時間の間で変動した。全体的なイソアミレン転化率は65〜98%の間であった。エタノール対イソアミレンのモル比は、1〜2.5の間で変動した。塔の運転の間、液体サンプルを様々な塔高で採取した。
【0065】
連続触媒蒸留運転のスナップショットを、141時間の連続運転後の状態を説明する図5に示す。図5に説明されるように、エタノール濃度が供給材料ポイントより下で最大であるようにエタノールプロフィールを維持した結果、プロピオニトリルが塔の底を出た。その上、プロピオニトリル濃度は、供給材料位置より上で実質的にごくわずかである。供給材料位置より上のごくわずかな濃度のプロピオニトリルは、塔の上部から供給材料位置より低いポイントまでエタノールの濃度を増加させたことによるものであり、塔の底に向かってプロピオニトリルを引き下げるのに役立った。
【0066】
塔の運転の間になされたさらなる所見は(実施例3)、供給材料位置よりも上の塔への二次的なエタノール注入が、プロピオニトリルを塔の下方に向けるのに役立ち得ることを示した。これは、塔の上部分でのエタノールの濃度を増加させ、さらにプロピオニトリルを塔内の所望の方向へ押しやる。さらに、供給材料中のC6およびそれよりも重い化合物を、塔の上側よりもより下側に導くように塔を運転し、従って供給材料中のプロピオニトリルが遭遇し得る「上昇距離(lift)」を最小限に抑えることは、有益である。
【0067】
有利には、本明細書に開示される実施形態は、蒸留塔反応器系において選択されるアルコール濃度プロフィールを維持することにより、プロピオニトリルとエーテル化触媒との接触を最小限に抑えるか、または除去することのできるエーテル化方法を提供することができる。本出願人らは、先行技術に反して、エタノールをエーテル化反応に用いることができ、プロピオニトリルを塔の底に向かって押すことができ、従って炭化水素供給混合物からニトリルを除去または反応させるための供給前処理の必要性をなくすか、または減少させることを見出した。蒸留塔反応器において選択されるアルコール濃度プロフィールを維持することにより、供給前処理およびその他の分離方法の必要性の低下によってピース数を最小限に抑えることが可能となり、それによりエーテル化方法を簡略化し、資本および運転コストを減少させることができる。
【0068】
その上、プロピオニトリルまたはその他の汚染物質が保護床および水洗浄を通過する可能性があることが先行技術において示されているが、本明細書に開示される実施形態を用いて既存の方法を改良する、有利にはプロピオニトリルを含む、前処理後の残留汚染物質とエーテル化触媒との接触を最小限に抑えることができる。例えば、既存の方法はメチルエーテルの製造に限定されているが、選択されるアルコール濃度プロフィールで運転することにより、既存の方法は、現在、プロピオニトリルに起因してエーテル化触媒が著しく失活化することなくエチルエーテルを製造することが可能であり得る。
【0069】
本開示には限られた数の実施形態しか含まれないが、本開示の利益を有する当業者であれば、本開示の範囲を逸脱することなくその他の実施形態を考案することができることを理解するであろう。したがって、本開示の範囲は、添付される特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第三級エーテルの製造のための方法であって、
イソオレフィンおよびプロピオニトリルを含む炭化水素流を、少なくとも1つのエーテル化反応帯を含む蒸留塔反応器系に供給する段階と、
2−C6モノアルコールまたはその混合物を前記蒸留塔反応器系に供給する段階と、
同時に前記蒸留塔反応器系において、
前記イソオレフィンの一部と前記アルコールの一部を反応させて第三級エーテルを形成し、かつ
前記第三級エーテルを未反応のイソオレフィンから分離する段階と、
前記第三級エーテルおよびプロピオニトリルを前記蒸留塔反応器系から残液として抜き出す段階と、
未反応のイソオレフィンを前記蒸留塔反応器系から塔頂液として抜き出す段階と、
前記エーテル化反応帯がプロピオニトリルを実質的に含まないように、前記蒸留塔反応器系を運転する段階と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記炭化水素流が、前記蒸留塔反応器のエーテル化反応帯よりも低いポイントに供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記運転する段階が、前記炭化水素流中2ppm未満のプロピオニトリルが前記エーテル化反応帯に接触するように前記蒸留塔反応器系を運転することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記運転する段階が、前記炭化水素流中1ppm未満のプロピオニトリルが前記エーテル化反応帯に接触するように前記蒸留塔反応器系を運転することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記運転する段階が、プロピオニトリルが前記エーテル化反応帯に検出可能な濃度で接触しないように前記蒸留塔反応器系を運転することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記蒸留塔反応器系が、エーテル化触媒を含有する触媒蒸留帯を含む蒸留塔反応器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記蒸留塔反応器系が、エーテル化反応器に送り込まれる液体サイドドローを有する蒸留塔を含み、前記エーテル化反応器からの生成物が蒸留塔に戻される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記運転する段階が、前記エーテル化反応帯と底部との間の位置でアルコール濃度を最大に維持することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記運転する段階が、前記最大濃度の位置から塔頂まで漸減濃度のアルコールを維持することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記炭化水素流が、FCC装置からのC4−C7炭化水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記炭化水素流が、FCC装置からのC5−C6炭化水素を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素流が少なくとも5ppmのプロピオニトリルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記炭化水素流が少なくとも20ppmのプロピオニトリルを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記残液が未反応のアルコールをさらに含み、前記アルコールとエーテルを分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
炭化水素の供給ポイントよりも上のポイントでエタノールを塔に添加する段階をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
固定床反応器においてイソアミレンを含む混合物とエタノールを反応させる段階と、
イソオレフィンおよびプロピオニトリルを含む炭化水素流として使用するために前記固定床反応器の流出液からの流出液を回収する段階とをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
第三級アミルエチルエーテルの製造のための方法であって、
5イソオレフィンおよびプロピオニトリルを含む炭化水素流を、少なくとも1つのエーテル化反応帯を含む蒸留塔反応器に供給する段階であって、前記炭化水素を含む流が、エーテル化蒸留反応帯よりも低いポイントで前記蒸留塔反応器に供給される、段階と、
エタノールを前記蒸留塔反応器に供給する段階と、
同時に前記蒸留塔反応器において、
5イソオレフィンの一部とエタノールの一部を反応させて第三級アミルエチルエーテルを形成し、かつ
前記第三級アミルエチルエーテルを未反応のC5イソオレフィンから分離する段階と、
前記第三級アミルエチルエーテルおよびプロピオニトリルを前記蒸留塔反応器から残液として抜き出す段階と、
未反応のC5イソオレフィンを前記蒸留塔反応器から塔頂液として抜き出す段階と、
前記エーテル化蒸留反応帯がプロピオニトリルを実質的に含まないように、前記蒸留塔反応器を運転する段階とを含む、方法。
【請求項18】
前記炭化水素流が、少なくとも5ppmのプロピオニトリルを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記運転する段階が、前記炭化水素流中1ppm未満のプロピオニトリルが前記エーテル化蒸留反応帯に接触するように前記蒸留塔反応器を運転することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記運転する段階が、前記プロピオニトリルが前記エーテル化反応帯に検出可能な濃度で接触しないように前記蒸留塔反応器を運転することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記運転する段階が、前記エーテル化蒸留反応帯と底部との間の位置でエタノール濃度を最大に維持することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記運転する段階が、前記最大濃度の位置から塔頂まで漸減濃度のエタノールを維持することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記残液が未反応のエタノールをさらに含み、前記エタノールと第三級アミルエチルエーテルを分離することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
炭化水素の供給ポイントよりも上のポイントでエタノールを塔に添加する段階をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
固定床反応器においてイソアミレンを含む混合物とエタノールを反応させる段階と、
イソオレフィンおよびプロピオニトリルを含む炭化水素流として使用するために前記固定床反応器からの流出液を回収する段階とをさらに含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−539175(P2010−539175A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524908(P2010−524908)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/074188
【国際公開番号】WO2009/035844
【国際公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(599003073)キャタリティック・ディスティレイション・テクノロジーズ (28)
【Fターム(参考)】