説明

等速自在継手

【課題】 1種類のエンドキャップで内輪周り部品の複数のスライド長に対応でき、しかも車両組付け時の作業性向上およびコスト低減を図ることができると共に、軽量化およびコンパクト化を達成できる等速自在継手を提供する。
【解決手段】 内輪21の外周面と外輪22の内周面の各々に直線状のトラック溝26、27を軸方向に対して互いに反対方向に傾斜させた状態で軸方向に形成し、両トラック溝の交叉部にボール23を組み込み、それらボール23を内輪21の外周面と外輪22の内周面との間に配置したケージ24により保持した等速自在継手である。外輪22に対して内輪周り部品が軸方向にスライドするように構成した。車両取付け用フランジ34側の外輪端面22aに軸方向に伸縮可能な蛇腹状周壁39を有するエンドキャップ37を装着して、フランジ34側の継手開口部を塞ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や各種産業機械などに用いられる動力伝達装置であり、特に、4WD車やFR車などで使用されるプロペラシャフト等に組み込まれ、軸方向変位を吸収し得る構造を具備した等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
4WD車やFR車などの自動車で使用されるプロペラシャフトは、トランスミッションとディファレンシャル間の相対位置変化による軸方向変位と角度変位に対応できる構造とするために等速自在継手を具備する(特許文献1および特許文献2参照)。通常、車両全体の重量軽減という観点から、軽量で、しかも回転バランスおよび振動特性がよいレブロ型(あるいはクロスグルーブ型)と称される摺動型等速自在継手が組み込まれている。
【0003】
前記レブロ型等速自在継手としては、フロートタイプとノンフロートタイプの二種類に大別され、両タイプはプロペラシャフトが装備される車両の特性(スライド量など)に応じて使い分けられている。
【0004】
図6に示すように、この両タイプの等速自在継手は、内輪1、外輪2、ボール3およびケージ4を主要な構成要素としている。なお、この図6はフロートタイプを示している。
【0005】
内輪1は、その外周面に複数のトラック溝6が形成されている。この内輪1の中心孔5にプロペラシャフトのスタブシャフト8を挿入してスプライン嵌合させ、そのスプライン嵌合により両者間でトルク伝達可能としている。なお、スタブシャフト8は、スナップリング11により内輪1に対して抜け止めされている。
【0006】
そして、外輪2は、内輪1の外周に位置し、その内周面に内輪1のトラック溝6と同数のトラック溝7が形成されている。内輪1のトラック溝6と外輪2のトラック溝7は軸線に対して反対方向に傾斜した角度をなし、対をなす内輪1のトラック溝6と外輪2のトラック溝7との交叉部にボール3が組み込まれている。内輪1と外輪2の間にケージ4が配置され、ボール3は、ケージ4のポケット9内に保持されている。
【0007】
外輪2が、中空部15を有する車両取付け用フランジ(コンパニオンフランジ)16に装着される。すなわち、車両取付け用フランジ16と外輪2とでエンドキャップ10を挟み込んだ状態で、外輪2の挿通孔17に挿通されるボルト部材18を、車両取付け用フランジ16のねじ孔19に螺合させる。これによって、この等速自在継手が車両取付け用フランジ16に締結される。
【0008】
エンドキャップ10は、継手内部に充填したグリースの漏洩を防ぐと共に異物の侵入を防止するためのものであって、車両取付け用フランジ16に締結される際のボルト締めにより固定される。
【0009】
すなわち、エンドキャップ10は、外周側の外輪嵌合部10aと、反外輪側に膨出する深皿状部10bとを備える。外輪嵌合部10aが、フランジ側の外輪端面2aおよび外輪外周面20の一部(フランジ側の一部)に嵌合し、深皿状部10bが、車両取付け用フランジ16の中空部15に遊嵌状に収納される。
【0010】
外輪2の反フランジ側には密封装置が装着されている。この密封装置はブーツ12と金属製のブーツアダプタ13とからなる。ブーツ12は小端部と大端部を有し、中間にてV字形に折り返した格好になっている。ブーツアダプタ13は、円筒状部13aと、外輪嵌合部13bとを有し、この外輪嵌合部13bが外輪2の反フランジ側端面2bおよび外輪2の外周面20の一部(反フランジ側の一部)に嵌合する。
【0011】
このブーツアダプタ13も、前記ボルト部材18によるボルト締めにより外輪2に固定される。また、ブーツ12の小端部はスタブシャフト8に取り付けてブーツバンド14で締め付けられている。ブーツ12の大端部はブーツアダプタ13の端部を加締めて保持されている。
【0012】
以上の構成からなるレブロ型等速自在継手では、走行中に生じるトランスミッションとディファレンシャル間の相対位置変化による軸方向変位を、外輪2に対して内輪1、ボール3およびケージ4からなる内輪周り部品がその軸方向にスライドすることにより吸収するようになっている。
【0013】
このため、前記内輪周り部品がユニットとして、外輪2から車両取付け用フランジ15側へ突出する場合がある。そこで、前記エンドキャップ10は、フランジ側に突出する内輪周り部品を収容するためにお椀状とされ、深皿状部10bによって内輪周り部品の逃げ部が形成されている。
【特許文献1】特開2002−130317号公報
【特許文献2】特開2002−188653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記特許文献1および特許文献2等に記載のようなお椀状のエンドキャップ10では、内輪周り部品のスライド量(スライド長)に規制がある。このため、スライド長さが異なる等速自在継手毎に、そのスライド長に対応するエンドキャップ10を形成する必要があった。すなわち、この種の等速自在継手を製造する場合、各スライド長に対応する複種類のエンドキャップ10を揃えておく必要があって、コスト高となると共に、部品管理上においても好ましくなかった。
【0015】
ところで、最大スライド長さのものに合わせれば、エンドキャップ10として1種類で対応できる。しかしながら、最大スライド長さに対応させたものを、スライド長が短いものに使用すれば、車両組付けのために、組付け専用の(走行時には不要な)ストローク量を外輪と内輪周り部品との間においてとる必要がある。すなわち、エンドキャップ10の突出部(深皿状部10b)が車両取付け用フランジ15に干渉しないように、外輪2に対して内輪周り部品を軸方向にスライドさせる必要があった。このため、最大スライド長さのものに合わせたものを使用すれば、継手全体の重量および大きさ(体積)等が機能上の必要以上に大きくなる問題点があった。
【0016】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、
1種類のエンドキャップで内輪周り部品の複数のスライド長に対応でき、しかも車両組付け時の作業性向上およびコスト低減を図ることができると共に、軽量化およびコンパクト化を達成できる等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の等速自在継手は、内輪の外周面と外輪の内周面の各々に直線状のトラック溝を軸方向に対して互いに反対方向に傾斜させた状態で軸方向に形成し、両トラック溝の交叉部にボールを組み込み、それらボールを前記内輪の外周面と外輪の内周面との間に配置したケージにより保持して、外輪に対して内輪周り部品が軸方向にスライド可能に構成した等速自在継手において、車両取付け用フランジ側の外輪端面に、軸方向に伸縮可能な蛇腹状周壁を有するエンドキャップを装着して、車両取付け用フランジ側の継手開口部を塞ぐものである。
【0018】
エンドキャップは軸方向に伸縮可能な蛇腹状周壁を有するので、蛇腹状周壁を縮小状態とすれば、この縮小状態での車両取付け作業が可能となる。蛇腹状周壁を伸ばした状態とすれば、内輪周り部品のスライド長が大きいものに対応できる。
【0019】
エンドキャップは、車両組付け時において軸方向縮小状態に維持される。このため、車両取付け作業性の一層の向上を図ることができる。内輪周り部品の軸方向スライドの押圧によって軸方向伸びが許容される。このため、取付け後の使用中において、内輪周り部品のスライド長が大きいものに安定して対応できる。
【0020】
エンドキャップを弾性材にて構成し、車両取付け用フランジ側の外輪端面に、前記エンドキャップの外輪側装着部の肉厚よりも浅い周方向凹部を設け、この周方向凹部に外輪側装着部を嵌合させた状態で、車両取付け用フランジと前記外輪とで前記外輪側装着部を挟み込む。これにより、外輪側装着部が車両取付け用フランジと外輪とに密着する。
【0021】
エンドキャップの外輪側装着部に、前記挟み込み状態において車両取付け用フランジに圧接する周方向突起部を設ける。これにより、周方向突起部において接触面圧が高くなる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、蛇腹状周壁を縮小状態とすれば、縮小状態での車両取付け作業が可能となって、作業性の向上を図ることができる。蛇腹状周壁を伸ばした状態とすれば、内輪周り部品のスライド長が大きいものに対応できる。このため、1種類のエンドキャップでも、スライド長が異なる種々の等速自在継手に使用することができ、多品種対応によるコストの大幅な低減が可能であると共に、部品管理が行いやすくなる。
【0023】
使用中の高速回転時に継手内部側が発熱して、内圧が上昇しようとしても、エンドキャップが軸方向に伸びて、内部全体としての内圧上昇を抑えることができる。これにより、反フランジ側の密封装置を構成するブーツ等の変形を防止できて、この等速自在継手はその寿命を伸ばして、長期にわたって安定した機能を発揮する。
【0024】
車両組付け時において軸方向縮小状態に維持され、車両取付け作業性の向上を図ることができる。さらに、車両組付け時には軸方向縮小状態であるので、外輪と内輪周り部品との間において取付け専用の大きなストローク量をとる必要がない。このため、等速自在継手全体の軽量化および小型化(コンパクト化)が可能となる。
【0025】
さらに、内輪周り部品の軸方向スライドの押圧によって軸方向伸びが許容される。このため、取付け後の使用中において、内輪周り部品のスライド長が大きいものに安定して対応でき、内輪周り部品の軸方向スライドを確実に吸収できる。
【0026】
外輪側装着部が車両取付け用フランジと外輪とに密着し、この外輪側装着部の弾性(弾力性)によって高精度のシール機能を発揮することができる。これによって、継手内部からのグリースの漏洩および異物の継手内部への侵入を安定して防止できる。
【0027】
また、エンドキャップの外輪側装着部に周方向突起部を設けた場合、この周方向突起部において接触面圧が高くなるので、シール性能が一層向上して、グリースの漏洩防止機能および異物侵入防止機能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明の実施形態として、ケージの最小内径を内輪の最大外径よりも大きく設定したフロートタイプのレブロ型(あるいはクロスグルーブ型)等速自在継手を図1と図2に示す。なお、ノンフロートタイプにも適用可能である。
【0029】
この実施形態における等速自在継手は、内輪21、外輪22、ボール23およびケージ
24を主要な構成要素としている。
【0030】
内輪21は、その外周面に複数のトラック溝26が形成されている。この内輪21の中心孔25にスタブシャフト28を挿入してスプライン嵌合させ、そのスプライン嵌合により両者間でトルク伝達可能としている。なお、スタブシャフト28は、スナップリング31により内輪21に対して抜け止めされている。
【0031】
外輪22は、内輪21の外周に位置し、その内周面に内輪21のトラック溝26と同数のトラック溝27が形成されている。内輪21のトラック溝26と外輪22のトラック溝27は、図3に示すように軸線に対して反対方向に傾斜した角度(トラック交叉角α)をなし、対をなす内輪21のトラック溝26と外輪22のトラック溝27との交叉部にボール23が組込まれている。内輪21と外輪22の間にケージ24が配置され、ボール23はケージ24のポケット29内に保持されている。
【0032】
外輪22が、中空部33を有する車両取付け用フランジ(コンパニオンフランジ)34に装着される。すなわち、車両取付け用フランジ34と外輪22とで、後述するエンドキャップ37を挟み込んだ状態で、外輪22の挿通孔35に挿通されるボルト部材36を、車両取付け用フランジ34のねじ孔30に螺合させる。これによって、この等速自在継手が車両取付け用フランジ34に締結される。
【0033】
エンドキャップ37は、車両取付け用フランジ側の継手開口部を塞ぐものであって、継手内部に充填したグリースの漏洩を防ぐと共に異物の侵入を防止する。エンドキャップ37は、この等速自在継手が使用される環境下において、劣化しにくい樹脂やゴム等にて形成され、円板状の底壁38と、この底壁38に連設される軸方向に伸縮する蛇腹状周壁39と、蛇腹状周壁39の外輪側の端縁(開口端縁)に連設される平板リング状体の外輪側装着部40とからなる。
【0034】
蛇腹状周壁39は、山部41と谷部42とが交互に軸方向に沿って形成されてなり、底壁38側から外輪22側に向かって拡径している。なお、山部41の高さおよび谷部42の深さは外輪22側に向かって順次小さくなっている。
【0035】
また、外輪22の一端面(フランジ側の外輪端面)22aには、断面扁平矩形状の周方向凹部43が形成され、図4に示すように、エンドキャップ37の外輪側装着部40が嵌合される。この周方向凹部43の深さAを、外輪側装着部40の厚さBよりも僅かに小さくしている。また、エンドキャップ37の外輪側装着部40の外径と周方向凹部43の外径とを略同一としている。
【0036】
このため、エンドキャップ37の外輪側装着部40が外輪22の周方向凹部43に嵌合された状態では、外輪側装着部40の外周面44が周方向凹部43の内周面45とが当接し、さらに、外輪側装着部40の外端面(フランジ対応面)46が外輪22の一端面22aよりもフランジ側に突出している。
【0037】
このように、周方向凹部43に外輪側装着部40を嵌合させた状態で、車両取付け用フランジ34と前記外輪22とで外輪側装着部40を挟み込む。これにより、外輪側装着部40が車両取付け用フランジ34と外輪22とに密着することになる。
【0038】
この場合、図1と図2に示すように、車両取付け用フランジ34には外輪対応面には凹窪部32が設けられ、この凹窪部32に外輪22のフランジ側が嵌合している。このため、エンドキャップ37は、前記ボルト部材36をねじ孔30に螺合させることによって、フランジ34の凹窪部32の底面32aと、外輪22の周方向凹部43の底面43aとで、エンドキャップ37の外輪側装着部40が挟まれた状態で固定される。なお、エンドキャップ37を装着する際には、接着剤等にて図4に示すように、外輪側装着部40を周方向凹部43に嵌合させた状態で貼り付けておくのが好ましい。これによって、エンドキャップ37の組付け作業性の向上を図ることができる。もちろん、接着剤等を使用しないものであってもよい。
【0039】
図1は、キャップ37の軸方向長さを小としている状態(閉じた状態)を示している。この場合、隣合う山部41を密着状としている。そして、このエンドキャップ37においては、自由状態(自然状態)でこの閉じた状態が保持(維持)される形状となるような、いわゆるくせを付けておく。図2は、周壁39を軸方向に伸ばした状態(開いた状態)であって、エンドキャップ37の軸方向長さを大としている状態を示している。この場合、後述する内輪周り部品の押圧等にて開いた状態となる。
【0040】
外輪22の反フランジ側には密封装置が装着されている。この密封装置はブーツ48と金属製のブーツアダプタ49とからなる。ブーツ48は小径端部48aと大径端部48bを有し、中間にてV字形に折り返した格好になっている。ブーツアダプタ49は、円筒状部49aと、外輪嵌合部49bとを有し、この外輪嵌合部49bが外輪22の反フランジ側端面22bおよび外輪22の外周面50の一部(反フランジ側の一部)に嵌合する。
【0041】
そして、外輪嵌合部49bには前記ねじ部材36が挿通される挿通孔が設けられ、この挿通孔を介して外輪22の挿通孔35に挿通されるねじ部材36をフランジ34のねじ孔30に螺合させることによって、ブーツアダプタ49を外輪22に固定する。ブーツ48の小径端部48aをスタブシャフト28に外嵌させた状態で、ブーツバンド51で締め付ける。ブーツ48の大径端部48bはブーツアダプタ49の端部を加締めて保持されている。
【0042】
前述した構成の等速自在継手では、走行中に生じるトランスミッションとディファレンシャル間の相対位置変化による軸方向変位を、外輪22に対して内輪21、ボール23およびケージ24からなる内輪周り部品がその軸方向にスライドすることにより吸収するようになっている。
【0043】
すなわち、車両への組付時には、図1に示すように、エンドキャップ37が閉じた状態であって、車両走行時に軸方向変位が加わって、内輪周り部品が、車両取付け用フランジ34側に突出した際には、この突出に対応して図2に示すような開いた状態となる。これによって、エンドキャップ37がこの内輪周り部品の軸方向のスライドに対応する。なお、車両取付け用フランジ34の中空部33は、エンドキャップ37が開いた状態を許容できるスペースが確保されている。また、車両取付け用フランジ34には通気孔53が形成され、この通気孔53を介して、外部と、中空部33におけるエンドキャップ37の外側とが連通されている。これによって、エンドキャップ37の中空部33内での伸縮を行い易くしている。
【0044】
前記等速自在継手は、エンドキャップ37の蛇腹状周壁39を縮小状態とすれば、車両取付け作業が可能となって、作業性の向上を図ることができる。蛇腹状周壁39を伸ばした状態とすれば、内輪周り部品のスライド長が大きいものに対応できる。このため、1種類のエンドキャップでも、スライド長が異なる種々の等速自在継手に使用でき、多品種対応によるコストの大幅な低減が可能であると共に、部品管理が行い易くなる。
【0045】
使用中の高速回転時に継手内部側が発熱して、内圧が上昇しようとしても、エンドキャップが軸方向に伸びて、内部全体としての内圧上昇を抑えることができる。これにより、反フランジ側の密封装置を構成するブーツ等の変形を防止できて、この等速自在継手は寿命を伸ばして、長期にわたって安定した機能を発揮する。
【0046】
自由状態において、軸方向縮小状態に維持させることができるので、車両組付け時において軸方向縮小状態に維持され、車両取付け作業性の向上を図ることができる。さらに、車両組付け時には軸方向縮小状態であるので、外輪と内輪周り部品との間において取付け専用の大きなストローク量をとる必要がない。このため、等速自在継手全体の軽量化および小型化(コンパクト化)が可能となる。
【0047】
さらに、内輪周り部品の軸方向スライドの押圧によって軸方向伸びが許容される。このため、取付け後の使用中において、内輪周り部品のスライド長が大きいものに安定して対応でき、内輪周り部品の軸方向スライドを確実に吸収できる。
【0048】
外輪側装着部40が車両取付け用フランジ34と外輪22とに密着し、この外輪側装着部40の弾性(弾力性)によって高精度のシール機能を発揮することができる。これによって、継手内部からのグリースの漏洩および異物の継手内部への侵入を安定して防止できる。このため、エンドキャップ37の弾性材としては、密着させた際に外輪側装着部40が僅かに扁平となるように弾性変形するものであればよい。
【0049】
ところで、図5に示すように、エンドキャップ37の外輪側装着部40のフランジ対応面46に、断面三角形状の周方向突起部52を設けてもよい。このように、エンドキャップ37の外輪側装着部40に周方向突起部52を設けた場合、車両取付け用フランジ34と外輪22とで外輪側装着部40を挟み込んだ状態で、周方向突起部52において接触面圧が高くなる。このため、シール性能が一層向上して、グリースの漏洩防止機能および異物侵入防止機能を高めることができる。
【0050】
なお、エンドキャップ37を構成する材質としては、この等速自在継手が使用される環境下において、劣化しにくいものであれば、種々の種類のものを使用することができ、例えば、ブーツ48に使用したものと同様、加硫ゴム系のエラストマーまたはプラスチック系のエラストマー等も使用することができる。また、蛇腹状周壁39の山部41や谷部42の数、形状、蛇腹状周壁39の肉厚等も、使用する樹脂等によって相違するが、図1に示すように閉じた状態や図2に示すように開いた状態を構成できれば、任意に変更できる。
【0051】
エンドキャップ37の蛇腹状周壁39として、底壁38側から外輪22側に向かって拡径させずに、底壁38側と外輪22側とが略同一外径となるものであってもよい。
【0052】
また、図5では、周方向突起部52はその断面が三角形状であったが、これ以外に、その断面が半円、半楕円、矩形、台形、半多角形等の種々の形状のものであってもよい。また、径が相違する複数の周方向突起部52を配置するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る等速自在継手の実施形態を示し、エンドキャップが閉じた状態の断面図である。
【図2】前記等速自在継手のエンドキャップが開いた状態の断面図である。
【図3】前記等速自在継手の内輪および外輪におけるトラック交叉角を説明するための部分正面図である。
【図4】前記等速自在継手のエンドキャップの要部拡大断面図である。
【図5】前記等速自在継手の他のエンドキャップの要部拡大断面図である。
【図6】従来の等速自在継手の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
21 内輪
22 外輪
22a 外輪端面
23 ボール
24 ケージ
26、27 トラック溝
34 車両取付け用フランジ
37 エンドキャップ
39 蛇腹状周壁
40 外輪側装着部
43 周方向凹部
52 周方向突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪の外周面と外輪の内周面の各々に直線状のトラック溝を軸方向に対して互いに反対方向に傾斜させた状態で軸方向に形成し、両トラック溝の交叉部にボールを組み込み、それらボールを前記内輪の外周面と外輪の内周面との間に配置したケージにより保持して、外輪に対して内輪周り部品が軸方向にスライド可能に構成した等速自在継手において、車両取付け用フランジ側の外輪端面に、軸方向に伸縮可能な蛇腹状周壁を有するエンドキャップを装着して、車両取付け用フランジ側の継手開口部を塞ぐことを特徴とする等速自在継手。
【請求項2】
前記エンドキャップは、車両組付け時において軸方向縮小状態に維持され、内輪周り部品の軸方向スライドの押圧によって軸方向伸びが許容されることを特徴とする請求項1に記載の等速自在継手。
【請求項3】
前記エンドキャップを弾性材にて構成し、車両取付け用フランジ側の外輪端面に、前記エンドキャップの外輪側装着部の肉厚よりも浅い周方向凹部を設け、この周方向凹部に外輪側装着部を嵌合させた状態で、車両取付け用フランジと前記外輪とで前記外輪側装着部を挟み込んだことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の等速自在継手。
【請求項4】
前記エンドキャップの外輪側装着部に、前記挟み込み状態において車両取付け用フランジに圧接する周方向突起部を設けたことを特徴とする請求項3に記載の等速自在継手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−64327(P2007−64327A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250179(P2005−250179)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】