説明

筋力補助装置

【課題】 脚部の筋肉に加わる負荷が自然で、専門家を頼らずに手軽に使用できる筋力補助装置を提供する。
【解決手段】 脚部フレーム2と、この脚部フレーム2の足首に対応する箇所で回動可能に連結された足部フレーム3とを、複数の固定ベルト4で固定し、脚部フレーム2の上部に設けられた駆動制御部6と足部フレーム3の踵部とに連結リボン7を張り渡した。従って、足首が伸びるときに、連結リボン7の巻取動作を駆動制御部6で制御し、脹脛の筋肉収縮による足の動きとほぼ同じ動作をさせ、脹脛の筋肉に加わる負荷を自然な状態にすることができる。また、足部フレーム3の踵部分に設けられた第1圧力センサ8と、足部フレーム3のつま先部分に設けられた第2圧力センサ9とで検出された各圧力値に基づいて、駆動制御部6が連結リボン7の巻取動作を制御するので、連結リボン7の巻取制御が単純で、専門家を頼らずに手軽に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歩行時における足の筋肉動作を補助する筋力補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筋力補助装置においては、特許文献1に記載されているように、歩行時に足の筋肉動作を補助して歩行を助けるために、脚部の上肢部(大腿部)と下肢部(脛部)とに金属製のフレームをそれぞれ装着して膝関節に対応する部分で連結し、この状態で一方の金属製のフレームを他方の金属製のフレームに対してモータで動かす際、使用者の脚部の筋肉緊張度を筋電センサで測定し、その測定結果に基づいてモータを駆動するように構成したものがある。
【特許文献1】特開平7−163607号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来の筋力補助装置では、脚部の筋肉緊張度を筋電センサによって測定しているため、この装置を購入するときに、専門家によって使用者個人の筋肉緊張度合を予め測定しておかなければ、使用者個人に合った脚部の筋肉緊張度を正確に測定することができず、このため手軽に使用することができないという問題がある。
【0004】
また、このような従来の筋力補助装置では、人が足を動かす際に脚部の関節付近の筋肉を収縮させて脚部を動かしているにもかかわらず、金属製のフレーム同士を互いに押すことにより、脚部の動きを補助しているので、足の筋肉に加わる負荷が不自然であり、その制御が複雑になるという問題もある。
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、脚部の筋肉に加わる負荷が自然で、専門家を頼らずに、手軽に使用することができる筋力補助装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
なお、各構成要素には、後述する各実施形態の項で説明される各要素に付されている図面の参照番号などを括弧と共に付す。
【0007】
請求項1に記載の発明は、図1〜図11に示すように、脚部に配置される脚部フレーム(2)と、足部に配置されて前記脚部フレームにおける足首と対応する箇所に回動可能に連結された足部フレーム(3)と、前記脚部フレームと前記足部フレームとをそれぞれ前記脚部と前記足部とに固定する複数の固定ベルト(4)と、前記脚部フレームの上部に設けられた駆動制御部(6、32、42、52)と、この駆動制御部と前記足部フレームの踵部とに張り渡された連結リボン(7)と、前記足部フレームの前記踵部分に対応する底部に設けられて前記踵部分の圧力を検出する第1圧力センサ(8)と、前記足部フレームのつま先部分に対応する底部に設けられて前記つま先部分の圧力を検出する第2圧力センサ(9)とを備え、
前記第1、第2圧力センサで検出された各圧力値に基づいて、前記駆動制御部が前記連結リボンの巻取動作を制御することを特徴とする筋力補助装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、図1〜図11に示すように、前記駆動制御部(6、32、42、52)が、前記連結リボン(7)の巻取動作を行う駆動機構部(10)と、この駆動機構部の動作を制御する制御部(11、33、43、53)とを備え、前記駆動機構部は、モータ(12)と、このモータによって回転する駆動歯車(13)と、この駆動歯車の回転に伴って回転移動する遊星歯車(14)と、前記駆動歯車が所定方向に回転したときに前記遊星歯車が接離可能に噛み合って回転する従動歯車(15)と、この従動歯車に設けられて前記連結リボンを巻き取る巻取部材(巻取コア16)とを備え、前記制御部は、前記第1、第2圧力センサ(8、9)で検出された各圧力値に基づいて、前記駆動機構部の前記モータを制御することを特徴とする請求項1記載の筋力補助装置である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、図1〜図11に示すように、前記駆動制御部(6、32、42、52)が、前記第1圧力センサ(8)で検出された圧力値が所定の値を超えた後に次第に低下し、前記第2圧力センサ(9)で検出された圧力値がほぼ0値から次第に上昇して、前記第1、第2圧力センサの各圧力値がほぼ同じ値になったときに、前記連結リボン(7)の巻取動作を開始し、前記第1圧力センサの圧力値がほぼ0値で、前記第2圧力センサの圧力値が上昇した後に低下してほぼ0値に到達したときに、前記連結リボンの巻取動作を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の筋力補助装置である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、図1〜図11に示すように、前記駆動制御部(6、32、42、52)が設けられた前記脚部フレーム(2)と前記第1、第2圧力センサ(8、9)が設けられた前記足部フレーム(3)とが、それぞれ前記複数の固定ベルト(4)によって右足と左足とに別々に取り付けられ、前記脚部フレームの前記駆動制御部と前記足部フレームの前記踵部とに、それぞれ前記連結リボン(7)が張り渡されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の筋力補助装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、図5〜図7に示すように、前記脚部フレーム(2)と前記足部フレーム(2)との相対的な回動角度を足首の屈曲角度として検出する角度センサ(31)を備え、この角度センサで検出された角度データと前記第1、第2圧力センサ(8、9)で検出された各圧力値とに基づいて、前記駆動制御部(32)が前記連結リボン(7)の巻取動作を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の筋力補助装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、図8および図9に示すように、前記右足と前記左足との前後方向の距離を検出する距離センサ(41)を備え、この距離センサで検出された距離データと前記第1、第2圧力センサ(8、9)で検出された各圧力値とに基づいて、前記駆動制御部(42)が前記連結リボン(7)の巻取動作を制御することを特徴とする請求項4または5に記載の筋力補助装置である。
【0013】
請求項7に記載の発明は、図10および図11に示すように、前記足が移動するときの加速度を検出する加速度センサ(51)を備え、この加速度センサで検出された加速度データと前記第1、第2圧力センサ(8、9)で検出された各圧力値とに基づいて、前記駆動制御部(52)が前記連結リボン(7)の巻取動作を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の筋力補助装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、脚部に配置される脚部フレームと、足部に配置されて脚部フレームにおける足首と対応する箇所に回動可能に連結された足部フレームとを、複数の固定ベルトでそれぞれ固定し、この状態で脚部フレームの上部に設けられた駆動制御部と足部フレームの踵部とに連結リボンを張り渡した構成であるから、足首が伸びて脹脛の筋肉が収縮するときに、連結リボンの巻取動作を駆動制御部で制御することにより、連結リボンの巻取動作が脹脛の筋肉収縮による足の動きとほぼ同じ動作をするので、脹脛の筋肉に加わる負荷を自然な状態にすることができる。
【0015】
また、足部フレームの踵部分に対応する底部に設けられて踵部分の圧力を検出する第1圧力センサと、足部フレームのつま先部分に対応する底部に設けられてつま先部分の圧力を検出する第2圧力センサとを備え、これら第1、第2圧力センサで検出された各圧力値に基づいて駆動制御部が連結リボンの巻取動作を制御するので、連結リボンの巻取制御が複雑にならず、その制御が単純で、使い勝手が良く、専門家を頼らずに、手軽に使用することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、駆動制御部が、連結リボンの巻取動作を行う駆動機構部と、この駆動機構部の動作を制御する制御部とを備え、駆動機構部が、モータと、このモータによって回転する駆動歯車と、この駆動歯車の回転に伴って回転移動する遊星歯車と、駆動歯車が所定方向に回転したときに遊星歯車が接離可能に噛み合って回転する従動歯車と、この従動歯車に設けられて連結リボンを巻き取る巻取部材とを備えていることにより、モータによって駆動歯車を所定方向(例えば正方向)に回転させると、遊星歯車が駆動歯車の回転に伴って回転移動して従動歯車に噛み合うので、従動歯車が回転し、この回転に伴って巻取部材で連結リボンを巻き取ることができる。
【0017】
このため、制御部が、第1、第2圧力センサで検出された各圧力値に基づいて駆動機構部のモータを制御するだけで良いので、制御が単純で、簡単に制御することができる。この場合、駆動機構部は、モータが逆方向に回転すると、駆動歯車が逆回転し、これに伴って遊星歯車が従動歯車から離脱するので、巻取部材による連結リボンの巻取動作を停止することができるほか、特に遊星歯車が従動歯車から離脱することにより、足首の屈曲時における曲がり動作に伴って連結リボンが巻取部材から引き出されるときに、モータの負荷が連結リボンに加わらないため、円滑に連結リボンを送り出すことができ、これにより足首が曲がって脹脛が伸びるときに、その動作をモータが妨げないようにすることができる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、駆動制御部が、第1圧力センサで検出された圧力値が所定の値を超えた後に次第に低下し、第2圧力センサで検出された圧力値がほぼ0値から次第に上昇して、第1、第2圧力センサの各圧力値がほぼ同じ値になったときに、連結リボンの巻取動作を開始し、第1圧力センサの圧力値がほぼ0値で、第2圧力センサの圧力値が上昇した後に低下してほぼ0値に到達したときに、連結リボンの巻取動作を停止することにより、体重が足の踵からつま先に移動するときに、連結リボンの巻取動作を開始することができ、また踵とつま先とに体重が加わらなくなると、連結リボンの巻取動作を停止することができ、このため連結リボンの巻取動作の開始および停止のタイミングを正確に判断することができ、これによっても制御が簡単で、専門家を頼らず、安全に且つ良好に使用することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、駆動制御部が設けられた脚部フレームと、第1、第2圧力センサが設けられた足部フレームとが、それぞれ複数の固定ベルトによって右足と左足とに別々に取り付けられ、脚部フレームの駆動制御部と足部フレームの踵部とに、それぞれ連結リボンが張り渡されていることにより、右足と左足との動作を別々に補助することができ、これにより歩行時における動作を良好に補助することができる。すなわち、人が歩行するときに、右足に体重が加わっているときには、左足にはほとんど体重が加わらないため、右足のみの動作を補助すれば良く、また左足に体重が加わっているときには、右足にはほとんど体重が加わらないため、左足のみの動作を補助すれば良い。このため、左右の足を別々に補助すれば良いので、歩行動作を安全に且つ良好に補助することができる。
【0020】
請求項5に記載の発明によれば、脚部フレームと足部フレームとの相対的な回動角度を足首の屈曲角度として検出する角度センサを備え、この角度センサで検出された角度データと第1、第2圧力センサで検出された各圧力値とに基づいて、駆動制御部が連結リボンの巻取動作を制御することにより、第1、第2圧力センサで検出された各圧力値以外に、角度センサによって検出した足首の屈曲角度をも考慮して、連結リボンの巻取動作の開始および停止のタイミングを判断することができ、これにより、より一層、正確に且つ安全に足の動作を補助することができる。この場合、特に筋力補助装置を左右の両足に装着することにより、一方の足、例えば右足を制御するときに、他方の足、例えば左足の足首の屈曲状態をも考慮することができるので、安全性が高く、より一層、歩行動作を正確に且つ良好に補助することができる。
【0021】
請求項6に記載の発明によれば、右足と左足との前後方向の距離を検出する距離センサを備え、この距離センサで検出された距離データと第1、第2圧力センサで検出された各圧力値とに基づいて、駆動制御部が連結リボンの巻取動作を制御することにより、第1、第2圧力センサで検出された各圧力値以外に、距離センサによって検出した右足と左足との前後方向の距離データをも考慮して、連結リボンの巻取動作の開始および停止のタイミングを判断することができ、これによっても正確に且つ安全に足の動作を補助することができる。
【0022】
請求項7に記載の発明によれば、足が移動するときの加速度を検出する加速度センサを備え、この加速度センサで検出された加速度データと第1、第2圧力センサで検出された各圧力値とに基づいて、駆動制御部が連結リボンの巻取動作を制御することにより、第1、第2圧力センサで検出された各圧力値以外に、加速度センサによって検出した足の加速度データをも考慮して、連結リボンの巻取動作の開始および停止のタイミングを判断することができ、これによっても正確に且つ安全に足の動作を補助することができる。この場合にも、筋力補助装置を左右の両足に装着することにより、一方の足、例えば右足を制御するときに、他方の足、例えば左足の加速度状態をも考慮することができるので、安全性が高く、より一層、歩行動作を正確に且つ良好に補助することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施形態1)
以下、図1〜図4を参照して、この発明の筋力補助装置の実施形態1について説明する。
この筋力補助装置1は、図1に示すように、身体の脚部に配置される金属または硬質合成樹脂などからなる脚部フレーム2と、足部に配置される屈曲可能な合成樹脂からなる足部フレーム3とを備え、脚部フレーム2と足部フレーム3とが複数の固定ベルト4によって脚部と足部とにそれぞれ着脱可能に固定されるように構成されている。
【0024】
この場合、脚部フレーム2は、一対の固定フレーム部2aが脹脛の両側に上下方向に沿って配置され、これら一対の固定フレーム部2aの各上端部が脹脛の円周に沿うほぼ半円弧状の連結フレーム部2bによって連結され、一対の固定フレーム部2aの各下端部が足首の両側つまり踝に対応して配置され、この状態で固定ベルト4によって脚部の下肢部に固定されている。また、足部フレーム3は、足の踵部分と足のつま先部分との間が屈曲自在に形成された底部3aと、この足の底部3aから踵の後部および踵の両側部を覆う側部3bとを備え、足首の両側つまり踝に対応する側部3bの箇所が連結軸5によって脚部フレーム3の各下端部に回動可能に取り付けられている。
【0025】
また、脚部フレーム2の上部に位置する連結フレーム部2bには、図1に示すように、駆動制御部6が設けられており、この駆動制御部6と足部フレーム3の踵部分に対応する側部3bの後部に設けられた取付部3cとには、布製の連結リボン7が掛け渡されている。更に、足部フレーム3における踵部分に対応する底部3aには、図1に示すように、踵部分の圧力を検出する第1圧力センサ8が設けられており、足部フレーム3におけるつま先部分に対応する底部3aには、つま先部分の圧力を検出する第2圧力センサ9が設けられている。
【0026】
駆動制御部6は、図2に示すように、連結リボン7の巻取動作を行う駆動機構部10と、図3に示すように、駆動機構部10の動作を制御する制御部11とを備えている。駆動機構部10は、図2に示すように、モータ12(図3参照)と、このモータ12によって回転する駆動歯車13と、この駆動歯車13の回転に伴って回転移動する遊星歯車14と、駆動歯車13が所定方向つまり正回転方向(図2に矢印で示す方向)に回転したときに遊星歯車14が接離可能に噛み合って回転する従動歯車15と、この従動歯車15に設けられて連結リボン7を巻き取る巻取コア16とを備えている。
【0027】
この場合、遊星歯車14は、図2に示すように、駆動歯車13の軸部13aに一端部が回動可能に取り付けられた連結アーム17の他端部に遊星歯車14の軸部14aが回動可能に取り付けられ、この状態で駆動歯車13に噛み合い、この駆動歯車13の回転に伴って自転しながら駆動歯車13の周囲に沿って旋回移動するように構成されている。すなわち、この遊星歯車14は、駆動歯車13が正回転したときに、その正回転に伴って自転しながら正回転方向に移動して従動歯車15に噛み合い、また駆動歯車13が逆回転したときに、その逆回転に伴って自転しながら逆回転方向に移動して従動歯車15から離れ、連結アーム17がストッパ部18に当接して遊星歯車14の移動が停止され、この状態で空転するように構成されている。
【0028】
また、従動歯車15は、図2に示すように、渦巻きばねなどのばね部材(図示せず)によって連結リボン7に常に巻取方向に軽いテンションが加わり、従動歯車15の空転時における足首の曲げ伸ばしに対して連結リボン7が弛まないように構成されている。従って、この駆動機構10は、図1に示すように、歩行時に足の踵部分が接地し、この踵部分からつま先部分に体重が移動するときに、モータ12が正回転して巻取コア16で連結リボン7を巻き取ることにより、脹脛の筋肉収縮を補助するように構成されている。
【0029】
また、制御部11は、図3に示すように、回路全般を制御するMPUであり、第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値をメモリ20に記憶すると共に、その各圧力値に基づいて駆動機構部10のモータ12を制御するように構成されている。すなわち、この制御部11は、第1圧力センサ8で検出された圧力値が所定の値(つまり使用者の体重よりも少し軽い圧力値)を超えた後に次第に低下し、第2圧力センサ9で検出された圧力値がほぼ0値から次第に上昇して、第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値がほぼ同じ値になったときに、モータ12を正回転させて連結リボン7の巻取動作を開始し、第1圧力センサ8の圧力値がほぼ0値で、第2圧力センサ9の圧力値が上昇した後に低下してほぼ0値に到達したときに、モータ12を停止または逆回転させて連結リボン7の巻取動作を停止するように構成されている。
【0030】
次に、図4を参照して、この筋力補助装置1を右足と左足とにそれぞれ装着して歩行する場合における両足の第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値と、両足の各モータ12の駆動タイミングとについて説明する。
人が歩行するときには、左右の足を交互に前方へ出して歩行する。このときに、一方の足、例えば右足を前方に出すと、まず、右足の踵部分が接地し、この後、右足の踵部分から右足のつま先部分に体重が移動するので、右足の踵部分に設けられた第1圧力センサ8の圧力値が、0値から次第に上昇した後に、次第に低下する。また、右足のつま先部分に設けられた第2圧力センサ9は、第1圧力センサ8の圧力値が最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)に到達して降下するときに、第2圧力センサ9の圧力値が0値から次第に上昇する。
【0031】
そして、第1圧力センサ8の圧力値と第2圧力センサ9の圧力値とがほぼ同じ圧力値になったとき、つまり図4において第1圧力センサ8の圧力値が低下する圧力低下線8aと、第2圧力センサ9の圧力値が上昇する圧力上昇線9aとが交差するP点で、第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値が同じになり、このときに右足の駆動制御部6の制御部11が右足の駆動機構部10のモータ12を正回転させる。これにより、駆動歯車13が正回転し、この回転に伴って遊星歯車14が自転しながら旋回移動して従動歯車15に噛み合い、この従動歯車15が回転して巻取コア16を回転させ、この回転に伴って巻取コア16が連結リボン7を巻き取り、この巻き取られる連結リボン7によって右足の脹脛の筋肉収縮を補助する。
【0032】
この後、右足の踵部分からつま先部分に体重が移動して右足のつま先部分に体重が完全に移動すると、踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が0値になり、右足のつま先部分の第2圧力センサ9の圧力値が最大値になり、この最大値を維持した後に、第2圧力センサ9の圧力値が低下すると、左足の踵部分が接地し、この左足の第1圧力センサ8の圧力値が0値から次第に上昇する。このときには、体重が右足から左足に移動し、右足のつま先部分の第2圧力センサ9の圧力値が0値になる。そして、左足の第1圧力センサ8の圧力値が上昇して最大値に到達すると、連結リボン7の巻取量が最大になり、右足の脹脛の筋肉収縮が最大になるので、右足の駆動制御部6の制御部11が右足の駆動機構部10のモータ12を停止する。これにより、右足の巻取コア16による連結リボン7の巻取動作が停止する。
【0033】
このように、左足の踵部分が接地し、この左足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が0値から次第に上昇して最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)になると、右足から左足に体重がほぼ完全に移動したことになる。この状態で、左足の踵部分から左足のつま先部分に体重が移動するときには、右足の場合と同様、左足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が最大値から次第に低下し、左足のつま先部分に設けられた第2圧力センサ9の圧力値が0値から次第に上昇する。
【0034】
そして、左足の第1圧力センサ8の圧力値と左足の第2圧力センサ9の圧力値とがほぼ同じ圧力値になると、右足の場合と同様に、左足の駆動制御部6の制御部11が左足の駆動機構部10のモータ12を正回転させる。これにより、巻取コア16が左足の連結リボン7を巻き取るので、左足の脹脛の筋肉収縮を補助する。この後、左足から右足に体重が移動すると、右足の場合と同様に、左足の駆動制御6の制御部11がモータ12を停止し、左足の巻取コア16による連結リボン7の巻取動作を停止する。このような右足と左足の各動作を交互に繰り返すことにより、歩行時における左右の脹脛の筋肉動作を交互に補助することができる。
【0035】
このように、この筋力補助装置1によれば、脚部に配置される脚部フレーム2と、足部に配置されて脚部フレーム2における足首と対応する箇所に回動可能に連結された足部フレーム3とを、複数の固定ベルト4でそれぞれ固定し、この状態で脚部フレーム2の上部に位置する連結フレーム部2bに設けられた駆動制御部6と足部フレーム3の踵部に位置する取付部3cとに連結リボン7を掛け渡した構成であるから、足首が伸びて脹脛の筋肉が収縮するときに、連結リボン7の巻取動作を駆動制御部6で制御することにより、連結リボン7の巻取動作が脹脛の筋肉収縮による足の動きとほぼ同じ動作をするので、脹脛の筋肉に加わる負荷を自然な状態にすることができる。
【0036】
また、足部フレーム3の踵部分に対応する底部3aに設けられて踵部分の圧力を検出する第1圧力センサ8と、足部フレーム3のつま先部分に対応する底部3aに設けられてつま先部分の圧力を検出する第2圧力センサ9とを備え、これら第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値に基づいて駆動制御部6が連結リボン7の巻取動作を制御するので、連結リボン7の巻取制御が複雑にならず、その制御が単純で、使い勝手が良く、専門家を頼らずに、手軽に使用することができる。
【0037】
特に、駆動制御部6は、連結リボン7の巻取動作を行う駆動機構部10と、この駆動機構部10の動作を制御する制御部11とを備え、駆動機構部10が、モータ12と、このモータ12によって回転する駆動歯車13と、この駆動歯車13の回転に伴って回転移動する遊星歯車14と、遊星歯車14が接離可能に噛み合って回転する従動歯車15と、この従動歯車15に設けられて連結リボン7を巻き取る巻取コア16とを備えているので、制御部11が、第1、第2圧力センサ部8、9で検出された各圧力値に基づいて、駆動機構部10のモータ12を制御するだけで良く、このため制御が簡単である。
【0038】
すなわち、駆動機構部10は、モータ12によって駆動歯車13を正方向に回転させると、遊星歯車14が駆動歯車15の回転に伴って回転移動して従動歯車15に噛み合うので、従動歯車15が回転して巻取コア16が連結リボン7を巻き取ることができる。このため、制御部11が、第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値に基づいて、駆動機構部10のモータ12を制御するだけで良いので、制御が単純で、簡単に制御することができる。
【0039】
この場合、駆動機構部10は、モータ12を逆方向に回転させると、駆動歯車13が逆回転し、これに伴って遊星歯車14が従動歯車15から離脱するので、巻取コア16による連結リボン7の巻取動作を停止させることができるほか、特に遊星歯車14が従動歯車15から離脱することにより、足首の屈曲時における曲がり動作に伴って連結リボン7が巻取コア16から引き出されるときに、モータ12の負荷が連結リボン7に加わらないため、円滑に連結リボン7を送り出すことができ、これにより足首が曲がって脹脛が伸びるときに、その動作をモータ12が妨げないようにすることができる。
【0040】
また、駆動制御部6が、第1圧力センサ8で検出された圧力値が所定の値を超えた後に次第に低下し、第2圧力センサ9で検出された圧力値がほぼ0値から次第に上昇して、第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値がほぼ同じ値になったときに、連結リボン7の巻取動作を開始し、第1圧力センサ8の圧力値がほぼ0値で、第2圧力センサ9の圧力値が上昇した後に低下してほぼ0値に到達したときに、連結リボン7の巻取動作を停止することにより、体重が足の踵からつま先に移動するときに、連結リボン7の巻取動作を開始することができ、また足の踵とつま先とに体重が加わらなくなると、連結リボン7の巻取動作を停止することができる。このため、連結リボン7の巻取動作の開始および停止のタイミングを正確に判断することができ、これにより制御が簡単で、専門家を頼らず、安全に且つ良好に使用することができる。
【0041】
また、この筋力補助装置1を右足と左足とに別々に取り付けることにより、右足と左足との動作を別々に補助することができ、これにより歩行時における動作を良好に補助することができる。すなわち、人が歩行するときに、右足に体重が加わっているときには、左足にはほとんど体重が加わらないため、右足の筋力補助装置1で右足の動作のみを補助すれば良く、また左足に体重が加わっているときには、右足にはほとんど体重が加わらないため、左足の筋力補助装置1で左足の動作のみを補助すれば良い。このため、左右の足を別々に補助することができるので、歩行動作を安全に且つ良好に補助することができる。
【0042】
(実施形態2)
次に、図5〜図7を参照して、この発明の筋力補助装置の実施形態2について説明する。なお、図1〜図4に示された実施形態1と同一部分には同一符号を付して説明する。
この筋力補助装置30は、図5および図6に示すように、脚部フレーム2と足部フレーム3との相対的な回動角度を足首の屈曲角度として検出する角度センサ31を備え、この角度センサ31で検出された角度データと第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値とに基づいて、駆動制御部32が連結リボン7の巻取動作を制御する構成で、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0043】
すなわち、この角度センサ31は、脚部フレーム2と足部フレーム3との相対的な回動角度を検出するロータリーエンコーダであり、図5に示すように、脚部フレーム2と足部フレーム3とを回動可能に連結する連結軸5に設けられ、足首の屈曲角度をリアルタイムで検出するように構成されている。また、駆動制御部32は、図6に示すように、駆動機構部10と制御部33とを備えており、この制御部33は、第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値と角度センサ31で検出された角度データとに基づいて、駆動機構部10のモータ12を制御することにより、連結リボン7の巻取動作を制御するように構成されている。
【0044】
次に、図7を参照して、この筋力補助装置30を右足と左足とにそれぞれ装着して歩行する場合における両足の第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値と、両足の角度センサ31による各足首の角度データと、両足の各モータ12の駆動タイミングとについて説明する。
この場合にも、実施形態1と同様、人が歩行するときに左右の足を交互に前方へ出す際、一方の足、例えば右足を前方に出すと、まず、右足の踵部分が接地し、この後、踵部分からつま先部分に体重が移動するので、右足の踵部分に設けられた第1圧力センサ8の圧力値が、0値から次第に上昇した後、次第に低下する。また、つま先部分に設けられた第2圧力センサ9は、第1圧力センサ8の圧力値が最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)に到達して降下するときに、第2圧力センサ9の圧力値が0値から次第に上昇する。
【0045】
このように右足が動作するときには、両足の足首の角度が常に変化し、その足首の角度を両足の各角度センサ31でそれぞれ検出する。すなわち、右足の踵部分が接地したときには、右足の足首がほぼ直角であるので、右足の角度センサ31による足首の検出角度がほぼ90°になり、右足の踵部分からつま先部分に体重が移動するときに、右足の足首が徐々に伸びた後に徐々に曲がるので、右足の角度センサ31による足首の検出角度が90°から徐々に大きくなった後に、徐々に小さくなる。また、右足の踵部分が接地したときの左足の足首はほぼ直角であるので、左足の角度センサ31による足首の検出角度がほぼ90°になり、右足の踵部分からつま先部分に体重が移動するときに、左足の足首がほぼ直角から伸びた後に、再びほぼ直角になるまで曲がるので、左足の角度センサ31による足首の検出角度が90°から最も大きくなった後に、再び90°になるまで小さくなる。
【0046】
そして、右足の第1圧力センサ8の圧力値と右足の第2圧力センサ9の圧力値とがほぼ同じ圧力値になったとき、つまり図7において第1圧力センサ8の圧力値が低下する圧力低下線8aと、第2圧力センサ9の圧力値が上昇する圧力上昇線9aとが交差するP点で、第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値が同じになり、このときの右足の角度センサ31で検出される角度が徐々に小さくなってほぼ90°になり、また左足の角度センサ31で検出される角度がほぼ90°を維持する。
【0047】
このように、右足の第1、第2圧力センサ8、9の圧力値がほぼ同じで、右足の角度センサ31の検出角度がほぼ90°で、左足の角度センサ31もほぼ90°のときには、右足の駆動制御部32の制御部33が右足の駆動機構部10のモータ12を正回転させる。これにより、駆動歯車13が正回転し、この回転に伴って遊星歯車14が自転しながら旋回移動して従動歯車15に噛み合い、この従動歯車15が回転して巻取コア16を回転させ、この回転に伴って巻取コア16が連結リボン7を巻き取り、この巻き取られる連結リボン7によって右足の脹脛の筋肉収縮を補助する。
【0048】
この後、右足の踵部分からつま先部分に体重が移動して右足のつま先部分に体重が完全に移動すると、右足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が0値になり、右足のつま先部分の第2圧力センサ9の圧力値が最大値になり、この最大値を維持した後に、第2圧力センサ9の圧力値が低下すると、左足の踵部分が接地し、この左足の第1圧力センサ8の圧力値が0値から次第に上昇する。このときには、右足の足首が最も曲がった後に、再び伸びるので、右足の角度センサ31による足首の検出角度が、90°から最も小さくなった後に、再び90°以上に大きくなる。また、このときの左足の足首は、ほぼ直角を維持した後、徐々に伸びるので、左足の角度センサ31による足首の検出角度は、90°を維持した後に、徐々に大きくなる。
【0049】
このように、体重が右足から左足に移動し、右足のつま先部分の第2圧力センサ9の圧力値が0値になり、左足の第1圧力センサ8の圧力値が上昇して最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)に到達し、且つ右足の角度センサ31で検出された足首の角度が最も大きくなり、左足の角度センサ31で検出された足首の角度が90°以上になったときに、右足の足首が最も伸びて、連結リボン7の巻取量が最大になり、右足の脹脛の筋肉収縮が最大になるので、右足の駆動制御部32の制御部33が右足の駆動機構部10のモータ12を停止する。これにより、右足の巻取コア16による連結リボン7の巻取動作が停止する。
【0050】
このときには、左足の踵部分が接地し、この左足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が0値から次第に上昇して最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)になり、右足の角度センサ31の検出角度が最も大きくなって右足の足首が伸びた状態になり、また左足の角度センサ31の検出角度が大きくなって左足の足首が曲がった状態になるので、右足から左足に体重がほぼ完全に移動したことになる。この状態で、左足の踵部分から左足のつま先部分に体重が移動するときに、左足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が最大値から次第に低下し、左足のつま先部分に設けられた第2圧力センサ9の圧力値が0値から次第に上昇し、右足の角度センサ31の検出角度が小さくなってほぼ90°を維持すると共に、左足の角度センサ31の検出角度も徐々に小さくなる。
【0051】
そして、第1圧力センサ8の圧力値と第2圧力センサ9の圧力値とがほぼ同じ圧力値になり、右足の角度センサ31の検出角度が90°を維持すると共に、左足の角度センサ31の検出角度が徐々に小さくなってほぼ90°になると、右足の場合と同様に、左足の駆動制御部32の制御部33が左足の駆動機構部10のモータ12を正回転させる。これにより、巻取コア16が左足の連結リボン7を巻き取るので、左足の脹脛の筋肉収縮を補助する。この後、左足から右足に体重が移動すると、左足の駆動制御部32の制御部33がモータ12を停止させて、左足の巻取コア16による連結リボン7の巻取動作を停止する。このような右足と左足の各動作を交互に繰り返すことにより、歩行時における左右の脹脛部の筋肉動作を交互に補助することができる。
【0052】
このように、この筋力補助装置30によれば、脚部フレーム2と足部フレーム3との相対的な回動角度を足首の屈曲角度として検出する角度センサ31を備え、この角度センサ31で検出された角度データと第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値とに基づいて、駆動制御部32が連結リボン7の巻取動作を制御することにより、第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値以外に、角度センサ31によって検出した足首の屈曲角度をも考慮して、連結リボン7の巻取動作の開始および停止のタイミングを判断することができ、これにより、より一層、正確に且つ安全に足の動作を補助することができる。特に、筋力補助装置30が左右の両足に装着されているので、一方の足、例えば右足を制御するときに、他方の足、例えば左足の足首の屈曲状態をも考慮することができ、このため、安全性が高く、より一層、歩行動作を正確に且つ良好に補助することができる。
【0053】
(実施形態3)
次に、図8および図9を参照して、この発明の筋力補助装置の実施形態3について説明する。この場合にも、図1〜図4に示された実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明する。
この筋力補助装置40は、人が立っている状態のときに左右の足が接近し、歩いているときに左右の足の前後の距離が近づいたり離れたりを繰り返すことに着目し、左右の足の前後の距離を距離センサ41で測定し、この測定した距離データと第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値とに基づいて、駆動制御部42が連結リボン7の巻取動作を制御する構成で、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0054】
この場合、距離センサ41は、左右の足が揃って最も接近したときの距離を基準(0値)とし、右足が左足よりも前方に位置しているときに正(+)の値とし、左足が右足の前方に位置しているとき、つまり右足が左足の後方に位置しているときに負(−)の値として、左右の足の前後方向の距離をリアルタイムで測定するように構成されている。また、駆動制御部42は、図8に示すように、駆動機構部10と制御部43とを備えており、この制御部43は、第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値と距離センサ41で検出された距離データとに基づいて、駆動機構部10のモータ12を制御することにより、連結リボン7の巻取動作を制御するように構成されている。
【0055】
次に、図9を参照して、この筋力補助装置40を右足と左足とにそれぞれ装着して歩行する場合における両足の第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値と、距離センサ41による左右の足の前後の距離データと、両足の各モータ12の駆動タイミングとについて説明する。
この場合にも、実施形態1と同様、人が歩行するときに左右の足を交互に前方へ出す際、一方の足、例えば右足を前方に出すと、まず、右足の踵部分が接地し、この後、踵部分からつま先部分に体重が移動するので、右足の踵部分に設けられた第1圧力センサ8の圧力値が、0値から次第に上昇した後に、次第に低下する。
【0056】
また、右足のつま先部分に設けられた第2圧力センサ9は、第1圧力センサ8の圧力値が最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)に到達して降下するときに、第2圧力センサ9の圧力値が0値から次第に上昇する。このように右足が動作するときには、左右の足の前後の距離が常に変化し、その両足の前後の距離を距離センサ41で測定する。すなわち、右足の踵部分が接地したときに、右足が左足に対し前方に最も離れていることにより、距離センサ41による左右の足の前後の距離の測定値が正の値で最も長くなる。
【0057】
そして、右足の第1圧力センサ8の圧力値と右足の第2圧力センサ9の圧力値とがほぼ同じ圧力値になったとき、つまり図9において第1圧力センサ8の圧力値が低下する圧力低下線8aと、第2圧力センサ9の圧力値が上昇する圧力上昇線9aとが交差するP点で、第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値が同じなったときに、左右の足が最も接近するので、距離センサ41による距離の測定値が徐々に短くなってほぼ基準値(ほぼ0値)になる。
【0058】
このように、右足の第1、第2圧力センサ8、9の圧力値がほぼ同じで、距離センサ41の測定値が基準値であるほぼ0値になると、右足の駆動機構部10のモータ12を正回転させる。これにより、駆動歯車13が正回転し、この回転に伴って遊星歯車14が自転しながら旋回移動して従動歯車15に噛み合い、この従動歯車15が回転して巻取コア16を回転させ、この回転に伴って巻取コア16が連結リボン7を巻き取り、この巻き取られる連結リボン7によって右足の脹脛の筋肉収縮を補助する。
【0059】
この後、右足の踵部分からつま先部分に体重が移動して右足のつま先部分に体重が完全に移動すると、右足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が0値になり、右足のつま先部分の第2圧力センサ9の圧力値が最大値になり、この最大値を維持した後に、第2圧力センサ9の圧力値が低下すると、左足の踵部分が接地し、この左足の第1圧力センサ8の圧力値が0値から次第に上昇する。このときには、右足が左足の最も後方に位置するので、距離センサ41による距離の測定値が負の値で最も長くなる。
【0060】
このように、体重が右足から左足に移動し、右足のつま先部分の第2圧力センサ9の圧力値が0値になり、左足の第1圧力センサ8の圧力値が上昇して最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)に到達し、且つ距離センサ41による距離の測定値が負の値で徐々に小さくなると、連結リボン7の巻取量が最大になり、右足の脹脛の筋肉収縮が最大になるので、右足の駆動制御部42の制御部43が右足の駆動機構部10のモータ12を停止する。これにより、右足の巻取コア16による連結リボン7の巻取動作が停止する。
【0061】
このときには、左足の踵部分が接地し、この左足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が0値から次第に上昇して最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)になるので、右足から左足に体重がほぼ完全に移動したことになる。この状態で、左足の踵部分から左足のつま先部分に体重が移動すると、左足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が最大値から次第に低下し、左足のつま先部分に設けられた第2圧力センサ9の圧力値が0値から次第に上昇し、距離センサ41による距離の測定値が基準値(ほぼ0値)になり、左右の足が最も接近した状態になる。
【0062】
そして、第1圧力センサ8の圧力値と第2圧力センサ9の圧力値とがほぼ同じ圧力値になり、距離センサ41の測定値が基準値(ほぼ0値)で左右の足が接近した状態になると、右足の場合と同様に、左足の駆動制御部42の制御部43が左足の駆動機構部10のモータ12を正回転させる。これにより、巻取コア16が左足の連結リボン7を巻き取るので、左足の脹脛の筋肉収縮を補助する。この後、左足から右足に体重が移動すると、右足の場合と同様に、左足の駆動制御部42の制御部43がモータ12を停止させて、左足の巻取コア16による連結リボン7の巻取動作を停止する。このような右足と左足の各動作を交互に繰り返すことにより、歩行時における左右の脹脛の筋肉動作を交互に補助することができる。
【0063】
このように、この筋力補助装置40によれば、右足と左足との前後方向の距離を検出する距離センサ41を備え、この距離センサ41で検出された距離データと第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値とに基づいて、駆動制御部42が連結リボン7の巻取動作を制御することにより、第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値以外に、距離センサ41によって検出した右足と左足との前後方向の距離データをも考慮して、連結リボン7の巻取動作の開始および停止のタイミングを判断することができ、これによっても正確に且つ安全に足の動作を補助することができる。
【0064】
(実施形態4)
次に、図10および図11を参照して、この発明の筋力補助装置の実施形態4について説明する。この場合にも、図1〜図4に示された実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明する。
この筋力補助装置50は、人が歩行するときに左右の足が交互に移動することに着目し、その移動する足の加速度を加速度センサ51で検出し、この加速度センサ41で検出された加速度データと第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値とに基づいて、駆動制御部52が連結リボン7の巻取動作を制御する構成で、これ以外は実施形態1とほぼ同じ構成になっている。
【0065】
すなわち、加速度センサ51は、左右の足が交互に移動する際、その移動する足の加速度をリアルタイムで測定するように構成されている。また、駆動制御部52は、図10に示すように、駆動機構部10と制御部53とを備えており、この制御部53は、第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値と加速度センサ51で検出された加速度データとに基づいて駆動機構部10のモータ12を制御することにより、連結リボン7の巻取動作を制御するように構成されている。
【0066】
次に、図11を参照して、この筋力補助装置50を右足と左足とにそれぞれ装着して歩行する場合における両足の第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値と、両足の加速度センサ51による各足が移動するときの加速度データと、両足の各モータ12の駆動タイミングとについて説明する。
この場合にも、実施形態1と同様、人が歩行するときに左右の足を交互に前方へ出す際、一方の足、例えば右足を前方に出すと、まず、右足の踵部分が接地し、この後、踵部分からつま先部分に体重が移動するので、右足の踵部分に設けられた第1圧力センサ8の圧力値が、0値から次第に上昇した後に、次第に低下する。
【0067】
また、右足のつま先部分に設けられた第2圧力センサ9は、第1圧力センサ8の圧力値が最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)に到達して降下するときに、第2圧力センサ9の圧力値が0値から次第に上昇する。このように右足が動作するときには、右足が接地して移動が停止していることにより、右足の加速度センサ51による加速度データの測定値は0値を維持するが、左足は前方に向けて移動を開始するので、この左足の加速度センサ51が左足の加速度を左足の速度として測定する。このときの左足の加速度センサ51による測定値は0値から次第に上昇する。
【0068】
そして、右足の第1圧力センサ8の圧力値と右足の第2圧力センサ9の圧力値とがほぼ同じ圧力値になったとき、つまり図11において第1圧力センサ8の圧力値が低下する圧力低下線8aと、第2圧力センサ9の圧力値が上昇する圧力上昇線9aとが交差するP点で、第1、第2圧力センサ8、9の各圧力値が同じなったときに、右足の加速度センサ51による測定値が0値を維持し、また左足の加速度センサ51による測定値が最も高くなる。
【0069】
このように、右足の第1、第2圧力センサ8、9の圧力値がほぼ同じで、右足の加速度センサ51による測定値が0値を維持し、左足の加速度センサ51による測定値が最も高くなると、右足の駆動制御部52の制御部53が駆動機構部10のモータ12を正回転させる。これにより、駆動歯車13が正回転し、この回転に伴って遊星歯車14が自転しながら旋回移動して従動歯車15に噛み合い、この従動歯車15が回転して巻取コア16を回転させ、この回転に伴って巻取コア16が連結リボン7を巻き取り、この巻き取られる連結リボン7によって右足の脹脛の筋肉収縮を補助する。
【0070】
この後、右足の踵部分からつま先部分に体重が移動して右足のつま先部分に体重が完全に移動すると、右足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が0値になり、右足のつま先部分の第2圧力センサ9の圧力値が最大値になり、この最大値を維持した後に、第2圧力センサ9の圧力値が低下すると、左足の踵部分が接地し、この左足の第1圧力センサ8の圧力値が0値から次第に上昇する。このときには、左足が接地して移動が停止していることにより、左足の加速度センサ51による測定値は0値になるが、右足は前方に向けて移動を開始するので、その右足の加速度センサ51が右足の加速度を右足の速度として測定する。このときの右足の加速度センサ51による測定値は0値から次第に上昇する。
【0071】
このように、体重が右足から左足に移動し、左足のつま先部分の第2圧力センサ9の圧力値が0値になり、左足の第1圧力センサ8の圧力値が上昇して最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)に到達し、且つ左足の加速度センサ51による測定値が0値を維持し、右足の加速度センサ51による測定値が0値から次第に上昇すると、連結リボン7の巻取量が最大になり、右足の脹脛の筋肉収縮が最大になるので、右足の駆動制御部52の制御部53が右足の駆動機構部10のモータ12を停止する。これにより、右足の巻取コア16による連結リボン7の巻取動作が停止する。
【0072】
このときには、左足の踵部分が接地し、この左足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が0値から次第に上昇して最大値(つまり使用者の体重とほぼ同じ圧力値)になるので、右足から左足に体重がほぼ完全に移動したことになる。この状態で、左足の踵部分から左足のつま先部分に体重が移動するときに、左足の踵部分の第1圧力センサ8の圧力値が最大値から次第に低下し、左足のつま先部分に設けられた第2圧力センサ9の圧力値が0値から次第に上昇し、左足の加速度センサ51による測定値が0値を維持し、右足の加速度センサ51による測定値が徐々に上昇し続ける。
【0073】
そして、第1圧力センサ8の圧力値と第2圧力センサ9の圧力値とがほぼ同じ圧力値になり、左足の加速度センサ51による測定値が0値を維持し、右足の加速度センサ51による測定値が最も高くなると、右足の場合と同様に、左足の駆動制御部52の制御部53が左足の駆動機構部10のモータ12を正回転させる。これにより、巻取コア16が左足の連結リボン7を巻き取るので、左足の脹脛の筋肉収縮を補助する。この後、左足から右足に体重が移動すると、左足の駆動制御部52の制御部53がモータ12を停止させて、左足の巻取コア16による連結リボン7の巻取動作を停止する。このような右足と左足の各動作を交互に繰り返すことにより、歩行時における左右の脹脛の筋肉動作を交互に補助することができる。
【0074】
このように、この筋力補助装置50によれば、足が移動するときの加速度を検出する加速度センサ51を備え、この加速度センサ51で検出された加速度データと第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値とに基づいて、駆動制御部52が連結リボン7の巻取動作を制御することにより、第1、第2圧力センサ8、9で検出された各圧力値以外に、加速度センサ51によって検出した足の移動するときの加速度データをも考慮して、連結リボン7の巻取動作の開始および停止のタイミングを判断することができ、これによっても正確に且つ安全に足の動作を補助することができる。この場合にも、筋力補助装置50が左右の両足に装着されているので、一方の足、例えば右足を制御するときに、他方の足、例えば左足の足首の加速度状態をも考慮することができ、このため、安全性が高く、より一層、歩行動作を正確に且つ良好に補助することができる。
【0075】
なお、上記実施形態2〜4では、第1、第2圧力センサ8、9で検出した各圧力値以外に、角度センサ31で測定した足首の角度データ、距離センサ41で測定した左右の足の前後の距離データ、加速度センサ51で測定した足の移動時における加速度データのうち、いずれかのデータを取り込み、この取り込んだデータと第1、第2圧力センサ8、9で検出した圧力値とに基づいて、連結リボン7の巻取動作を制御する場合について述べたが、これに限らず、第1、第2圧力センサ8、9による各圧力値以外に、各センサ31、41、51で測定した各測定値を組み合わせて制御するようにしても良い。
【0076】
例えば、角度センサ31による角度データと距離センサ41による距離データ、または角度センサ31による角度データと加速度センサ51による加速度データ、あるいは距離センサ41による距離データと加速度センサ51による加速度データ、もしくはこれら全てのデータを取り込み、これら複数のデータと第1、第2圧力センサ8、9による各圧力値とに基づいて、連結リボン7の巻取動作を制御するようにしても良い。このようにすれば、連結リボン7の巻取動作の開始および停止のタイミングを、より一層、正確に判断することができ、これにより足の動作を更に安全に且つ良好に補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】この発明の筋力補助装置を足に取り付けた状態を示した図である。(実施形態1)
【図2】図1の駆動制御部の駆動機構部を示した拡大構成図である。
【図3】図1の駆動制御部の回路構成を示したブロック図である。
【図4】図1の筋力補助装置を両足に装着して歩行するときにおける両足の第1、第2圧力センサの各圧力値と、両足の各モータの動作タイミングとを示した図である。
【図5】この発明の筋力補助装置を足に取り付けた状態を示した図である。(実施形態2)
【図6】図5の駆動制御部の回路構成を示したブロック図である。
【図7】図5の筋力補助装置を両足に装着して歩行するときにおける両足の第1、第2圧力センサの各圧力値と、両足の各角度センサによる各足首の各角度データと、両足の各モータの動作タイミングとを示した図である。
【図8】この発明の筋力補助装置における駆動制御部の回路構成を示したブロック図である。(実施形態3)
【図9】図8の筋力補助装置を両足に装着して歩行するときにおける両足の第1、第2圧力センサの各圧力値と、距離センサによる左右の足におけり前後の距離データと、両足の各モータの動作タイミングとを示した図である。
【図10】この発明の筋力補助装置における駆動制御部の回路構成を示したブロック図である。(実施形態4)
【図11】図10の筋力補助装置を両足に装着して歩行するときにおける両足の第1、第2圧力センサの各圧力値と、両足の加速度センサによる各足の加速度データと、両足の各モータの動作タイミングとを示した図である。
【符号の説明】
【0078】
1、30、40、50 筋力補助装置
2 脚部フレーム
3 足部フレーム
4 固定ベルト
5 連結軸
6、32、42、52 駆動制御部
7 連結リボン
8 第1圧力センサ
9 第2圧力センサ
10 駆動機構部
11、33、43、53 制御部
12 モータ
13 駆動歯車
14 遊星歯車
15 従動歯車
16 巻取コア
20 メモリ
31 角度センサ
41 距離センサ
51 加速度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚部に配置される脚部フレームと、
足部に配置されて前記脚部フレームにおける足首と対応する箇所に回動可能に連結された足部フレームと、
前記脚部フレームと前記足部フレームとをそれぞれ前記脚部と前記足部とに固定する複数の固定ベルトと、
前記脚部フレームの上部に設けられた駆動制御部と、
この駆動制御部と前記足部フレームの踵部とに張り渡された連結リボンと、
前記足部フレームの前記踵部分に対応する底部に設けられて前記踵部分の圧力を検出する第1圧力センサと、
前記足部フレームのつま先部分に対応する底部に設けられて前記つま先部分の圧力を検出する第2圧力センサとを備え、
前記第1、第2圧力センサで検出された各圧力値に基づいて、前記駆動制御部が前記連結リボンの巻取動作を制御することを特徴とする筋力補助装置。
【請求項2】
前記駆動制御部は、前記連結リボンの巻取動作を行う駆動機構部と、この駆動機構部の動作を制御する制御部とを備え、
前記駆動機構部は、モータと、このモータによって回転する駆動歯車と、この駆動歯車の回転に伴って回転移動する遊星歯車と、前記駆動歯車が所定方向に回転したときに前記遊星歯車が接離可能に噛み合って回転する従動歯車と、この従動歯車に設けられて前記連結リボンを巻き取る巻取部材とを備え、
前記制御部は、前記第1、第2圧力センサで検出された各圧力値に基づいて前記駆動機構部の前記モータを制御する
ことを特徴とする請求項1記載の筋力補助装置。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記第1圧力センサで検出された圧力値が所定の値を超えた後に次第に低下し、前記第2圧力センサで検出された圧力値がほぼ0値から次第に上昇して、前記第1、第2圧力センサの各圧力値がほぼ同じ値になったときに、前記連結リボンの巻取動作を開始し、前記第1圧力センサの圧力値がほぼ0値で、前記第2圧力センサの圧力値が上昇した後に低下してほぼ0値に到達したときに、前記連結リボンの巻取動作を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の筋力補助装置。
【請求項4】
前記駆動制御部が設けられた前記脚部フレームと前記第1、第2圧力センサが設けられた前記足部フレームとは、それぞれ前記複数の固定ベルトによって右足と左足とに別々に取り付けられ、前記脚部フレームの前記駆動制御部と前記足部フレームの前記踵部とには、それぞれ前記連結リボンが張り渡されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の筋力補助装置。
【請求項5】
前記脚部フレームと前記足部フレームとの相対的な回動角度を足首の屈曲角度として検出する角度センサを備え、この角度センサで検出された角度データと前記第1、第2圧力センサで検出された各圧力値とに基づいて、前記駆動制御部が前記連結リボンの巻取動作を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の筋力補助装置。
【請求項6】
前記右足と前記左足との前後方向の距離を検出する距離センサを備え、この距離センサで検出された距離データと前記第1、第2圧力センサで検出された各圧力値とに基づいて、前記駆動制御部が前記連結リボンの巻取動作を制御することを特徴とする請求項4または5に記載の筋力補助装置。
【請求項7】
前記足が移動するときの加速度を検出する加速度センサを備え、この加速度センサで検出された加速度データと前記第1、第2圧力センサで検出された各圧力値とに基づいて、前記駆動制御部が前記連結リボンの巻取動作を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の筋力補助装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−89633(P2007−89633A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−279353(P2005−279353)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】