説明

筐体用部材及びその製造方法

【課題】ソフト触感と良好なグリップ感を有し、衝撃吸収性、耐スクラッチ性、耐摩耗性に優れた筐体用部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂製のカバー部材21の片側表面に、射出成形によりショア硬さHsが30〜70の軟質なシリコーンゴムを一体成形してシリコーンゴム層22とカバー部材21を密着させ、シリコーンゴム層22の表面に、シリコーン系着色コート層23と、プライマー層24とを介して、最外層にウレタン系コート層25を積層する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の筐体用部材に関する。より具体的には、物理的及び化学的性質とハンドリング性が改善された電子機器の筐体用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器の筐体の表面には、耐引っかき性、耐摩耗性、密着性及び耐久性等の物理的及び化学的性質を備えたUVコート等の硬化コーティングを形成するのが一般的である。典型的なUVハードコートとして、反応性の高いアクリレート官能基から形成される高分子量の高度架橋フィルムが知られているが、そのようなUVハードコートは、限られた耐久性、低い固形分、及び硬化樹脂の収縮に悩まされてきた。また、硬化のために大量のUV光が必要となる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
これに対し、向上した物理的及び化学的性質(例えば、耐引っかき性、耐摩耗性、密着性及び耐久性)を示す硬化コーティングとして、2種以上の多官能性アクリレート誘導体、光開始剤、及びナノスケール充填材を含んでなる硬化性アクリレートコーティング組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−1756号公報
【特許文献2】特表2007−517935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に開示されているようなハードコートを、携帯電話等の電子機器の筐体のカバー部材のハードトップコートとして適用すると、カバー部材は硬質な感触となり滑り易くグリップ感が悪くなるというハンドリング上の問題が生じ、又、樹脂成形体にハードトップコートが施される構成の為に、落下時等において衝撃を吸収することが出来ず、筐体自体や内部の精密部品に衝撃が伝わり、破損を生じる原因となるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、ソフト触感と良好なグリップ感を有し、衝撃吸収性、耐スクラッチ性、耐摩耗性に優れた筐体用部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
【0008】
(1)熱可塑性樹脂からなる筐体カバー部材と、そのカバー部材の片側表面に接着されたシリコーンゴム層と、そのシリコーンゴム層の表面に設けられたプライマー層と、そのプライマー層の表面に塗布されたウレタン系コート層と、から順になる積層構造を有することを特徴とする筐体用部材。
【0009】
(2)シリコーンゴム層とプライマー層の間にさらにシリコーン系着色層を設けたことを特徴とする(1)に記載の筐体用部材。
【0010】
(3)熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)のいずれか1つからなることを特徴とする(1)又は(2)に記載の筐体用部材。
【0011】
(4)熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート(PC)樹脂であることを特徴とする(3)に記載の筐体用部材。
【0012】
(5)シリコーンゴム層は、熱可塑性樹脂に対して自己接着性を有し、ショア硬さHsが30〜70の範囲であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の筐体用部材。
【0013】
(6)シリコーンゴム層は、着色されたシリコーンゴムからなることを特徴とする(1)、(3)〜(5)のいずれかに記載の筐体用部材。
【0014】
(7)(a)熱可塑性樹脂からなる筐体カバーの片側表面に、射出成形によりシリコーンゴム層を被覆する工程と、(c1)被覆した前記シリコーンゴム層の表面にプラズマ処理を行う工程と、(d)プラズマ処理を行ったシリコーンゴム層表面にプライマーを塗布してプライマー層を設ける工程と、(e)プライマー層の表面にウレタン系塗料を塗布する工程と、を順に含むことを特徴とする筐体用部材の製造方法。
【0015】
(8)(a)工程の次に、(b)被覆した前記シリコーンゴム層の表面にシリコーン系の色塗装を行って着色層を設ける工程と、(c1)工程の代りに、(c2)着色層の表面にプラズマ処理を行う工程と、を含むことを特徴とする(7)に記載の筐体用部材の製造方法。
【0016】
(9)熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)のいずれか1つからなることを特徴とする(7)又は(8)に記載の筐体用部材。
【0017】
(10)熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート(PC)樹脂であることを特徴とする(9)に記載の筐体用部材。
【0018】
(11)シリコーンゴム層は、熱可塑性樹脂に対して自己接着性を有し、ショア硬さHsが30〜70の範囲であることを特徴とする(7)〜(10)のいずれかに記載の筐体用部材。
【0019】
(12)シリコーンゴム層は、着色されたシリコーンゴムからなることを特徴とする(7)、(9)〜(11)のいずれかに記載の筐体用部材。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ソフト触感と良好なグリップ感を有し、衝撃吸収性、耐スクラッチ性、耐摩耗性に優れた筐体用部材及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る筐体用部材の構成を示す模式的断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る筐体用部材の製造方法を示す流れ図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る筐体用部材の構成を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る筐体用部材の製造方法を示す流れ図である。
【図5】本発明の実施例1に係る携帯用筐体用部材の構成を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の実施例2に係る携帯用筐体用部材の構成を示す模式的断面図である。
【図7】本発明の比較例1に係る携帯用筐体用部材の構成を示す模式的断面図である。
【図8】本発明の比較例2に係る携帯用筐体用部材の構成を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という。)について詳細に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る筐体用部材の構成を示す模式的断面図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る筐体用部材の製造方法を示す流れ図である。
【0024】
本発明の第1実施形態に係る筐体用部材1は、図1に示したように、熱可塑性樹脂からなる筐体カバー部材11と、カバー部材11の片側表面に接着されたシリコーンゴム層12と、シリコーンゴム層12の表面に設けられたプライマー層14と、プライマー層14の表面に塗布されたウレタン系コート層15とからなる。
【0025】
カバー部材11を構成する熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)のいずれかの硬質樹脂を用いることができるが、物理的、化学的性質に優れ、シリコーンゴムとの接着性の良好なポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0026】
カバー部材11の片側表面には、ショア硬さHsが30〜70の軟質なシリコーンゴムからなるシリコーンゴム層12が接着されている。第1実施形態に係る筐体用部材1を例えば携帯に適用した場合、シリコーンゴム層12が接着されていることにより、ソフトな感触及び落下時の衝撃吸収性が得られ、又、カバー部材11が硬質樹脂からなるため、良好なグリップ感が得られる。
【0027】
カバー部材11とシリコーンゴム層12の間に、有機ケイ素化合物の燃焼により形成させた酸化ケイ素皮膜を介在させることにより、カバー部材11とシリコーンゴム層12の接着性を高めることもできる。
【0028】
シリコーンゴム層12の上には、プライマー層14を介してウレタン系コート層15が設けられており、このウレタン系コート層15によって筐体用部材1の耐スクラッチ性、耐摩耗性が付与される。
【0029】
プライマー層14は、シリコーンゴム層12とウレタン系コート層15の密着性を高める作用をするもので、溶媒で希釈したシランカップリング剤をシリコーンゴム層12の表面に塗布することにより、好適に形成することができる。
【0030】
ウレタン系コート層15は、熱硬化型弾性ウレタン塗料を塗布後、加熱処理を施して形成することができる。
【0031】
以下、図1、図2に基いて本発明の第1実施形態に係る筐体用部材の製造方法について説明する。
【0032】
(a)まず、所定の用途の筐体カバーの形状に成形加工された熱可塑性樹脂製のカバー部材11を用意し、カバー部材11の片側表面に、射出成形によりショア硬さHsが30〜70の軟質なシリコーンゴムを一体成形してシリコーンゴム層12とカバー部材11を密着させる。
【0033】
シリコーンゴム層12を着色したシリコーンゴムを用いて形成してもよい。
【0034】
シリコーンゴム層12上にシリコーン系印刷インクで文字、数字、記号、マークなどの印刷を施すことも可能である。
【0035】
(c1)シリコーンゴム層12の表面にプラズマ照射して、表面改質を行う。
【0036】
(d)表面改質を行ったシリコーンゴム層12の表面に、溶媒で希釈したシランカップリング剤を塗布し、プライマー層14を形成する。
【0037】
(e)プライマー層14の上に熱硬化型弾性ウレタン塗料を塗布後、加熱処理を施し、ウレタン系コート層15を形成する。
【0038】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態に係る筐体用部材の構成を示す模式的断面図である。図4は、本発明の第2実施形態に係る筐体用部材の製造方法を示す流れ図である。
【0039】
本発明の第2実施形態に係る筐体用部材2は、図3に示したように、熱可塑性樹脂からなる筐体カバー部材21と、カバー部材21の片側表面に接着されたシリコーンゴム層22と、シリコーンゴム層22の表面に設けられたシリコーン系着色コート層23と、シリコーン系着色コート層23の表面に設けられたプライマー層24と、プライマー層24の表面に塗布されたウレタン系コート層25とからなる。
【0040】
カバー部材21を構成する熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリフェニレンサルファイド樹脂のいずれかの硬質樹脂を用いることができるが、物理的、化学的性質に優れ、シリコーンゴムとの接着性の良好なポリカーボネート樹脂が好ましい。
【0041】
カバー部材21の片側表面には、ショア硬さHsが30〜70の軟質なシリコーンゴムからなるシリコーンゴム層22が接着されている。第2実施形態に係る筐体用部材2を例えば携帯に適用した場合、シリコーンゴム層22が接着されていることにより、ソフトな感触及び落下時の衝撃吸収性が得られ、又、カバー部材21が硬質樹脂からなるため、良好なグリップ感が得られる。
【0042】
カバー部材21とシリコーンゴム層22の間に、有機ケイ素化合物の燃焼により形成させた酸化ケイ素皮膜を介在させることにより、カバー部材21とシリコーンゴム層22の接着性を高めることもできる。
【0043】
シリコーンゴム層22の上には、シリコーンゴム層22と接着性の良好な任意の色相のシリコーン系着色塗料が塗布されて、シリコーン系着色コート層23が形成され、例えば筐体用部材2を携帯に用いる場合、色の選択肢が広がる。シリコーン系着色コート層23を設けずに、着色したシリコーンゴム層22を用いてもよいし、着色したシリコーンゴム層22を用いてさらにシリコーン系着色コート層23を形成してもよい。
【0044】
シリコーン系着色コート層23の上には、プライマー層24を介してウレタン系コート層25が設けられており、このウレタン系コート層25によって筐体用部材2の耐スクラッチ性、耐摩耗性が付与される。
【0045】
プライマー層24は、シリコーン系着色コート層23とウレタン系コート層25の密着性を高める作用をするもので、溶媒で希釈したシランカップリング剤をシリコーン系着色コート層23の表面に塗布することにより、好適に形成することができる。
【0046】
ウレタン系コート層25は、任意に着色した熱硬化型弾性ウレタン塗料を塗布後、加熱処理を施して形成することができる。
【0047】
以下、図3、図4に基いて本発明の第2実施形態に係る筐体用部材の製造方法について説明する。
【0048】
(a)まず、所定の用途の筐体カバーの形状に成形加工された熱可塑性樹脂製のカバー部材21を用意し、カバー部材21の片側表面に、射出成形によりショア硬さHsが30〜70の軟質なシリコーンゴムを一体成形してシリコーンゴム層22とカバー部材21を密着させる。
【0049】
(b)シリコーンゴム層22の上に、シリコーンゴム層22と接着性の良好な任意の色相のシリコーン系着色塗料を塗布して、シリコーン系着色コート層23を形成する。
【0050】
シリコーン系着色コート層23を設けずに、着色したシリコーンゴム層22を用いてもよいし、着色したシリコーンゴム層22を用いてさらにシリコーン系着色コート層23を形成してもよい。
【0051】
シリコーン系着色コート層23上、及び/又はシリコーンゴム層22上にシリコーン系印刷インクで文字、数字、記号、マークなどの印刷を施すことも可能である。
【0052】
(c2)シリコーンゴム層22の表面にプラズマ照射して、表面改質を行う。
【0053】
(d)表面改質を行ったシリコーンゴム層22の表面に、溶媒で希釈したシランカップリング剤を塗布し、プライマー層24を形成する。
【0054】
(e)プライマー層24の上に任意に着色した熱硬化型弾性ウレタン塗料を塗布後、加熱処理を施し、ウレタン系コート層25を形成する。
【実施例】
【0055】
以下、第1実施形態に対応する実施例1、第2実施形態に対応する実施例2、及び比較例1、2について説明する。
【0056】
(実施例1)
図2に示した第1実施形態の筐体用部材の製造方法に準じて、図5に示した断面構成の携帯用筐体用部材を作製した。
【0057】
(a)所定の携帯用筐体カバーの形に成形加工された黒色のポリカーボネート(PC)製カバー部材31を用意し、PC製カバー部材31の表面のみにシリコーンゴム層32を0.4mmで形成できるように設計された金型にセットし射出成形によりPC製カバー部材31の表面のみをシリコーンゴムで被覆した。シリコーンゴムはPCに自己接着性を有すもの(信越化学工業(株)製 KE−2090−40A/B)を使用した。
【0058】
(c1)シリコーンゴム層32付きPC製カバー部材31のシリコーンゴム層32側にプラズマ処理による表面改質を行った。
【0059】
(d)信越化学工業(株)製KBP−40をトルエンで希釈したものを塗布してプライマー層34を形成した。
【0060】
(e)続いてソフトな触感を発現する処方の塗料として、大日精化工業(株)製 DAIPLACOAT SO−6024P CLEARに所定の硬化剤・シンナーを加えたものに信越化学工業(株)製のシリコーンオイル KF−6002を添加したものを塗装し、乾燥機で120℃×60minの熱処理を施して加熱硬化させてウレタン系コート層35を形成し、ソフトな感触を有する携帯電話用筐体用部材3を作製した。
【0061】
(実施例2)
図4に示した第2実施形態の筐体用部材の製造方法に準じて、図6に示した断面構成の携帯用筐体用部材を作製した。
【0062】
(a)所定の携帯用筐体カバーの形に成形加工された白色のポリカーボネート(PC)製カバー部材41を用意し、PC製カバー部材41の表面のみにシリコーンゴム層42を0.4mmで形成できるように設計された金型にセットし射出成形によりPC製カバー部材41の表面のみをシリコーンゴムで被覆した。シリコーンゴムはPCに自己接着性を有するもの(信越化学工業(株)製 KE−2090−40A/B)を使用した。
(b)シリコーンゴム層42付きPC製カバー部材41のシリコーンゴム層42側に、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 XE14−648AとXE14−648Bを1:1で混合したもの100質量部に、DIC(株)製 スプラブラックA3377を24質量部と、エポニック デグサ ジャパン(株)製 OK410を6質量部とを加え、更にトルエンにて希釈した黒色の着色塗料にて塗装を行い所定条件で加熱硬化させてシリコーン系黒色コート層43を形成した。
(c2)シリコーン系黒色コート層43の上面に、プラズマ処理による表面改質を行った。
(d)信越化学工業(株)製 KBP−40をトルエンで希釈したものを塗布してプライマー層44を形成した。
(e)ウレタン系コーティングとして大日精化工業(株)製 SO−1501に所定の硬化剤・シンナーを加えたものを塗装し、乾燥機で120℃×60minの処理を加熱硬化させてウレタン系コート層45を形成し、ソフトな感触を有する携帯電話用筐体カバー部材4を作製した。
【0063】
(比較例1)
図7に示した断面構成の、シリコーンゴム層を含まない携帯用筐体用部材を作製した。
【0064】
(イ)所定の携帯用筐体カバーの形に成形加工された白色のPC製カバー部材51を用意し、PC製カバー部材51の表面を黒色の塗料(オリジン電気(株)製 オリジンプレートZ−NY)を塗装し所定条件で硬化させて黒色のウレタン系コート層53を形成した。
【0065】
(ロ)UV系のトップコート(武蔵塗料(株)製 UV−720)を塗装し、所定条件で硬化させて硬質のUV系トップコート層55を形成し、携帯用筐体カバー部材5を作製した。
【0066】
(比較例2)
図4に示した第2実施形態の筐体用部材の製造方法に準じて、図8に示した断面構成の、シリコーンゴム層を含まない携帯用筐体用部材を作製した。
【0067】
(b)所定の携帯用筐体カバーの形に成形加工された白色のシリコーンゴム製カバー部材61を用意し、シリコーンゴム製カバー部材61の表面を黒色の塗料(信越化学工業(株)製 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製 XE14−648AとXE14−648Bを1:1で混合したもの100質量部に、DIC(株)製 スプラブラックA3377を24質量部と、エポニック デグサ ジャパン(株)製 OK410を6質量部とを加え、トルエンで希釈したもの)で塗装し、所定条件で硬化させてシリコーン系黒色コート層63を形成した。
【0068】
(c2)シリコーン系黒色コート層63の表面にプラズマ処理による表面改質を行った。
【0069】
(d)表面改質したシリコーン系黒色コート層63の表面にプライマー(信越化学工業(株)性製 KBP−40)を塗布して、プライマー層64を形成した。
【0070】
(e)プライマー層64にウレタン系塗料(大日精化工業(株)製 ダイプラコートSO−1501を所定配合したもの)を塗布して所定条件で硬化させ、ウレタン系コート層64を形成した。
【0071】
(f)ウレタン系コート層64に信越化学工業(株)製 KE−1800A及びKE−1800Bを所定の割合で混合し、トルエンで希釈したものを塗布し所定条件の加熱処理にて硬化させてシリコーンゴム系トップコート層66を形成し、携帯電話用筐体カバー部材を作製した。
【0072】
実施例1、2、及び比較例1、2で作製した携帯用筐体カバー部材について、ソフト触感、グリップ感、耐スクラッチ性、及び砂消し耐摩耗性を評価した結果を表1に示した。
【0073】
(評価方法)
(ソフト感)
指先で触りしっとりとしたウエットなソフト感があるかを確認した。
有:○、無:×
【0074】
(グリップ感)
手からの滑落感がなく安定して持つ事が出来るかを確認した。
出来る:○、出来ない:×
【0075】
(耐スクラッチ性)
爪先で擦って傷跡が残らないかを確認する。
残らない:○、残る:×
【0076】
(砂消し耐磨耗性)
500gの荷重で砂消しゴム(ライオン事務機GAZA砂)で3000往復擦って表面コート材が摩滅し第二層の露出の有無を確認した。
3000回往復以上下地露出しない:○
3000回往復以下では下地露出する:×
【0077】
【表1】

【0078】
本発明の実施形態から、以下のことが明らかとなった。
(A)カバー部材として樹脂成型体を使用しその外周部にシリコーンゴム層を付与したことにより、ソフトな感触を得ながら(シリコーンゴム層による効果)、良好なグリップ感(芯に樹脂成形体を有することによる効果)を得ることができ、ハンドリング性に優れた電子機器筐体用部材を提供することができる。
(B)シリコーンゴム層を付与したことにより落下時の衝撃吸収性に優れ、電子機器を保護することができる。
(C)トップコート層としてのウレタン系塗膜の形成により十分な耐磨耗性を付与することができる。
(D)シリコーンゴム層の上にシリコーン系色塗装をするか、シリコーンゴム自体に着色し、さらにシリコーン系色コート層及び/又はシリコーンゴム層上に、印刷により加飾することでデザインの選択肢が増す。
(E)筐体にゴム製カバーを被せる手法も考えられるが、本案ではゴムが一体成型されているので一々カバーを被せる必要がなく、カバーが外れる心配もない。
【0079】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0080】
1 筐体用部材
2 筐体用部材
3 携帯用筐体用部材
4 携帯用筐体用部材
5 携帯用筐体用部材
6 携帯用筐体用部材
11 カバー部材
12 シリコーンゴム層
14 プライマー層
15 ウレタン系コート層
21 カバー部材
22 シリコーンゴム層
23 シリコーン系着色コート層
24 プライマー層
25 ウレタン系コート層
31 PC製カバー部材
32 シリコーンゴム層
34 プライマー層
35 ウレタン系コート層
41 PC製カバー部材
42 シリコーンゴム層
43 シリコーン系黒色コート層
44 プライマー層
45 ウレタン系コート層
51 PC製カバー部材
53 ウレタン系コート層
55 UV系トップコート層
61 シリコーンゴム製カバー部材
63 シリコーン系黒色コート層
64 プライマー層
65 ウレタン系コート層
66 シリコーン系トップコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる筐体カバー部材と、
当該カバー部材の片側表面に接着されたシリコーンゴム層と、
当該シリコーンゴム層の表面に設けられたプライマー層と、
当該プライマー層の表面に塗布された任意に着色されたウレタン系コート層と、
から順になる積層構造を有することを特徴とする筐体用部材。
【請求項2】
前記シリコーンゴム層と前記プライマー層の間にさらにシリコーン系着色層を設けたことを特徴とする請求項1に記載の筐体用部材。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)のいずれか1つからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の筐体用部材。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート(PC)樹脂であることを特徴とする請求項3に記載の筐体用部材。
【請求項5】
前記シリコーンゴム層は、前記熱可塑性樹脂に対して自己接着性を有し、ショア硬さHsが30〜70の範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の筐体用部材。
【請求項6】
前記シリコーンゴム層は、着色されたシリコーンゴムからなることを特徴とする請求項1、3〜5のいずれか1項に記載の筐体用部材。
【請求項7】
(a)熱可塑性樹脂からなる筐体カバー筐体カバーの片側表面に、射出成形によりシリコーンゴム層を被覆する工程と、
(c1)被覆した前記シリコーンゴム層の表面にプラズマ処理を行う工程と、
(d)前記プラズマ処理を行った前記シリコーンゴム層表面にプライマーを塗布してプライマー層を設ける工程と、
(e)前記プライマー層の表面に任意に着色したウレタン系塗料を塗布する工程と、
を順に含むことを特徴とする筐体用部材の製造方法。
【請求項8】
前記(a)工程の次に、
(b)被覆した前記シリコーンゴム層の表面にシリコーン系の色塗装を行って着色層を設ける工程と、
前記(c1)工程の代りに、
(c2)前記着色層の表面にプラズマ処理を行う工程と、
を含むことを特徴とする請求項7に記載の筐体用部材の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂及びアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体(ABS)のいずれか1つからなることを特徴とする請求項7又は8に記載の筐体用部材。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート(PC)樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の筐体用部材。
【請求項11】
前記シリコーンゴム層は、前記熱可塑性樹脂に対して自己接着性を有し、ショア硬さHsが30〜70の範囲であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の筐体用部材。
【請求項12】
前記シリコーンゴム層は、着色されたシリコーンゴムからなることを特徴とする請求項7、9〜11のいずれか1項に記載の筐体用部材。




【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−206321(P2012−206321A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72555(P2011−72555)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】