説明

筒状電極を有するプレチャンバスパークプラグ及びプレチャンバスパークプラグの製造方法

【課題】急速で再現性の高い火炎伝播を実現する予燃焼チャンバスパークプラグを提供する。
【解決手段】シェル112と、前記シェルに取り付けられた端部キャップ116と、前記シェル内に配設された絶縁体104と、前記絶縁体に囲まれた第1の部分を有すると共に前記絶縁体から前記シェルと前記端部キャップとにより画成されたプレチャンバ内に延在する第2の部分を有する中心電極102と、前記シェルに取り付けられた接地電極110とを備え、前記接地電極は前記中心電極を囲むように間隔を置いて配置された筒状のインナーリングと前記シェルに取り付けられたアウターリングと前記インナーリングと前記アウターリングとを接続する複数のスポークとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2010年11月23日に出願された米国特許仮出願第61/416,588号の恩典を請求し、その教示及び開示の全体を引用により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は内燃エンジン用のスパークプラグに関し、特には、予燃焼チャンバ即ちプレチャンバを有するスパークプラグに関する。
【背景技術】
【0003】
天然ガス等の気体燃料で作動するエンジンには、一般に、希薄混合気が供給される。希薄混合気は、「化学的に正しい量」又は化学量論量(理論量)を超える余剰空気を含む燃料混合気である。希薄混合気を用いると、失火、不完全燃焼等の燃焼不良及び燃費の低下を招くことが多く、燃焼の改善を図ろうとするとデトネーション(ノッキングの原因となる異常燃焼)を発生することが多い。こうした事態を招く要因の一つとして、従来のスパークプラグでは、作動中のエンジンのシリンダ内における希薄混合気の点火を効果的かつ確実(安定的)に行う能力の低いことが挙げられる。予燃焼チャンバ即ちプレチャンバを用いることにより、希薄混合気をより効果的に燃焼することができる。
【0004】
プレチャンバスパークプラグは、典型的には天然ガスリーンバーンエンジン又は自動車用リーンガソリンエンジン等のリーンバーンエンジンの希薄燃焼限界を高めるために用いられる。米国特許第5,554,908号に開示されるような公知のプレチャンバスパークプラグでは、スパークギャップが、エンジンシリンダの全排気量(全行程容積)のうち比較的小さな一部に相当する容積を有するキャビティに収められている。実施の形態によっては、このキャビティの一部分がドーム状に設けられると共に、様々な接線方向の導入/放出孔を有する。エンジンの作動中、圧縮サイクルでエンジンのピストンが上方に移動する際、燃料混合気は導入孔を通じてプレチャンバ内へ押し込まれる。この孔の向き(配向)により、プレチャンバのキャビティ内側の燃料混合気及びプレチャンバを出る反応噴流(ジェット)の運動が決まる。
【0005】
プレチャンバのキャビティ内における燃料混合気の燃焼率(バーンレート)が増大すると、エンジンの燃焼室内への貫通性が高い火炎噴流(ジェット)が発生する。燃料混合気が希薄であっても、この火炎噴流により、エンジンの燃焼室内における急速で再現性の高い火炎伝播を実現するエンジンの能力が向上する。従来のプレチャンバスパークプラグの多くは性能特性に再現性がなく、予測不可能なため、所望の変動係数(COV)の値を超える超過、及びラフネス(粗さ)の尺度上にある失火につながる。更に、従来のプレチャンバスパークプラグの多くは製造上のばらつきによる影響を受けやすい。
【0006】
内燃エンジンにおける新気の充填は、通常は、多くの点(例えば、当量比、乱流、温度、残留物質)でサイクル毎に非均質で再現性がないものであるが、スパークプラグ設計で挑む課題の一つは、燃焼工程において再現性があって、制御可能な点火遅れ時間を実現するプラグを新たに創り出すことである。製造又は部品又はそれらの組み立てのばらつきの影響を比較的受け難いスパークプラグの実現も望ましい。
【0007】
本発明の実施の形態はこのようなスパークプラグを提供する。本発明の上記利点及び他の利点、並びに発明の更なる特徴は、本明細書に記載の説明から明らかとなるであろう。
【発明の概要】
【0008】
一の態様において、本発明の実施の形態は、シェルと、このシェルに取り付けられる端部キャップと、中心電極と、接地電極とを含むプレチャンバスパークプラグを提供する。更に、プレチャンバスパークプラグはシェル内に配設される絶縁体を含む。特定の実施の形態では、中心電極は、絶縁体に囲まれる第1の部分と、絶縁体からプレチャンバ内に延在する第2の部分とを有する。プレチャンバの容積はシェルと端部キャップとにより画成(define)される。更なる実施の形態では、接地電極はシェルに取り付けられて設けられる。特定の実施の形態では、接地電極は、中心電極を囲むように間を隔てて配置されるインナーリングと、シェルに取り付けられるアウターリングと、インナーリングとアウターリングとを接続する複数のスポークとを含む。特定の実施の形態では、接地電極は筒形状に設けられ、この筒形状により、中央孔に流入して中心電極と接地電極との間のギャップを通過する流れが、側部孔を介して流入する流れに妨害されることが防止される。また、この筒形状により、外縁(周縁)部において接地電極の後側(外側)を通る側部孔の流れは、ギャップから出る際に火花(スパーク)核に合流するように方向付けられる。更に、中心電極は、中央孔からギャップを通過する流れの流線を改善する空気力学的形状に設けられる。
【0009】
他の態様において、本発明の実施の形態は内燃エンジン内における燃焼を可能とする方法を提供する。この方法は、プレチャンバスパークプラグのプレチャンバ内で燃料混合気に点火するステップを含む。特定の実施の形態では、プレチャンバ内で燃料混合気に点火するステップは、第1のポートを提供して中心電極と接地電極との間のギャップ内への第1の量の燃料混合気の流れを許容するステップを含み、その主な逆流の方向はプレチャンバの前チャンバからの方向に設けられ、更に、ギャップ内の燃料混合気に点火するステップを含み、その点火により火炎核を発生するように構成される。更に、本方法は、この火炎核をプレチャンバの後チャンバへ移動させるステップ、及び第2のポートを提供して前チャンバ内への第2の量の燃料混合気の(横方向の)流れを許容するステップを含み、この第2の量の燃料混合気は後チャンバへ流れて火炎核により点火されるように構成される。また、第2の流れは、方位角(角度方向)における均一性が向上するように、後チャンバ内に展開する火炎を方位角方向に拡げるように作用するスワール(渦巻き/旋回)を有してもよい。第1及び第2の量の燃料混合気を点火することにより、プレチャンバ内の圧力が上昇し、第1及び第2のポートから火炎噴流(ジェット)を流出させる。ポート孔の大きさと角度とは、火炎噴流の速度と主燃焼室への貫通性を最大化するように最適化することにより、主燃焼室内における燃焼を強化することができる。孔の大きさにより流入量及び流出量の両方を制御し、このため、エンジン固有の所望の点火遅れ時間、噴流速度、及び火炎噴流の貫通性、ひいては主燃焼室における燃焼率を実現するように最適化される。
【0010】
更に他の態様において、本発明の複数の実施の形態は、シェルと、シェルに取り付けられる端部キャップとを含むプレチャンバスパークプラグを提供する。更に、プレチャンバスパークプラグはシェル内に配設された絶縁体を含む。特定の実施の形態では、中心電極は、絶縁体に囲まれる第1の部分と、絶縁体からプレチャンバ内に延在する第2の部分とを有する。プレチャンバはシェルと端部キャップとにより画成される。更なる実施の形態では、接地電極はシェルに取り付けられて設けられる。特定の実施の形態では、接地電極は、中心電極を囲むように間隔を置いて配置されるインナーリングと、このインナーリングから径方向の外側へ突出してインナーリングを定位置に保持する複数のスポークとを含む。一の実施の形態では、各スポークの端部がシェルに取り付けられる。
【0011】
更に、他の態様において、本発明の実施の形態はプレチャンバスパークプラグを製造する方法を提供する。方法は、シェルに接地電極を取り付けるステップを含む。特定の実施の形態では、接地電極は筒状電極を備える。少なくとも一つの実施の形態では、この筒状電極は、中心電極を囲むように配置されるインナーリングを有する。
【0012】
また、上記方法は、中心電極及び接地電極への貴金属の固着(取り付け)を含み、この貴金属がスパーク面を提供する。また、上記方法は製造工程を含み、それにより製造及び組み立ての間にギャップが精確に画成され、それにより製造後に再度ギャップを形成する必要性が減少するように、製造及び組み立て時にギャップ形成工具を用いて中心電極と接地電極との間にギャップを形成する。一の実施の形態では、このギャップ形成工具を中心電極と接地電極との間に挿入してから、接地電極をシェルへ最終的に取り付ける。これが、かかる工程の最終加熱ステップであるように設ければ、上記ギャップは最良の状態に維持される。
【0013】
同軸の中心電極を有する筒状の接地電極の特定の構成(機構)では、気体の流れがギャップを通過して接地電極の後側へ向かう条件を創り出すことができるが、このような構成は、スパークプラグのシェルを必要としないヘッド設計であって、シリンダヘッドのプレチャンバがスパークプラグのシェルの壁の代わりとなるようなヘッド設計を実現できる。更に、プレチャンバスパークプラグ又はシリンダヘッド装置内のプレチャンバのいずれかに燃料を加えることにより、希薄作動限界(希薄燃焼限界)を更に拡張するように設けてもよい。このような装置は「燃料供給機能付き」装置と呼ぶことができる。
【0014】
本発明の他の態様、目的及び利点は、添付図面を併せ見れば、以下の詳細な説明により更に明らかになるであろう。
【0015】
本明細書に組み入れられ、本明細書の一部を形成する添付図面は、本発明の複数の態様を例示し、記述と共に、本発明の原理の説明に資する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一の実施の形態によるプレチャンバスパークプラグの一部の断面図である。
【0017】
【図2】図2は、本発明の一の実施の形態に従って構成された筒状電極の斜視図である。
【0018】
【図3】図3は、本発明の一の実施の形態による第1及び第2の電極の表面リングの例示的な実施の形態を示す図である。
【0019】
【図4】図4は、本発明の代替の実施の形態に従って構成された筒状電極の平面図である。
【0020】
【図5】図5は、本発明の一の実施の形態による、基材上に第1の電極の表面リングを有する筒状電極の断面図である。
【0021】
【図6】図6は、本発明の他の実施の形態に従って構成された筒状電極の斜視図である。
【0022】
【図7】図7は、本発明の特定の実施の形態によるプレチャンバスパークプラグ用の端部キャップを端面より見る図である。
【0023】
【図8】図8は、図7に示す端部キャップの断面図である。
【0024】
【図9】図9は、本発明の特定の実施の形態によるプレチャンバスパークプラグの一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、ある好ましい実施の形態と関連付けて説明されるが、それら実施の形態に限定する意図はない。反対に、意図するところは、全ての代替物、変形、及び均等物を、特許請求の範囲に定義されているように本発明の精神と範囲の内に含まれるものとして、カバーすることである。
【0026】
燃焼工程における点火遅れ時間を再現可能とし、制御可能とすれば、燃焼工程の更なる効率化及びスパークプラグの寿命の長期化につながる。この再現性及び制御の問題に対処するために、火炎核の拡大、点火遅れ時間、火炎噴流(ジェット)を制御する筒状電極を組み込み、エンジン性能を向上させるプレチャンバスパークプラグを開発した。遅れ時間とは、スパークから、燃焼がプレチャンバ内の圧力を増大させるに十分な体積変化を与えるまでの時間である。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態によるプレチャンバスパークプラグ100の一部の断面図である。プレチャンバスパークプラグ100は、長手方向軸101と、この長手方向軸101に沿って延在し、更に絶縁体104から、後チャンバ106及び前チャンバ108に分割された予燃焼チャンバ内に延在する中心電極102とを有する。接地電極として機能する筒状電極110は、シェル112の内側に配設されている。本発明の実施の形態において、シェル112は、高温曝露に耐える高強度の金属で設けられている。筒状電極110のディスク部114は、後チャンバ106と前チャンバ108とを分離するように設けられている。端部キャップ116は、スパークプラグ100のプレチャンバの容積を端部において画成すると共に、前チャンバ108の境界を画成する。図1に示すように、本発明の特定の実施の形態では、シェル112の内側の表面118は、プレチャンバスパークプラグ100の組み立てにおいて、筒状電極110を段状部分120上に着座させることができるように、段状部分120を有してもよい。
【0028】
図2は、本発明の実施の形態に従って構成された、筒状電極110の斜視図である。筒状電極110は、この筒状接地電極110内に組み込まれるインナーリング130とアウターリング132とを有する。図2の実施の形態において、インナーリング130とアウターリング132とは3つのスポーク134により接続される。筒状電極110の中央部分におけるインナーリング130から延在しているのは、筒状のインナーリング又は速度制御シュラウド136である。図1に示すように、本発明の特定の実施の形態において、この速度制御シュラウド136は、ディスク部114から前チャンバ108内まで一方向に延在するように設けられる。中央開口138は、インナーリング130と速度制御シュラウド136とを貫通して延在して設けられる。
【0029】
図2を更に参照して説明すると、本発明の一の実施の形態において、筒状電極110は、銅合金、ニッケル合金、又は他の比較的高い導電性を有する金属で設けられている。特定の実施の形態では、インナーリング130の内面140には貴金属が固着又は堆積される。貴金属は、典型的には、スパークプラグの寿命の延長及び性能の向上を図るようにスパークプラグの電極上に用いられる。この場合に選択される貴金属は、高い融点、高い導電性、そして高い耐酸化性を有する。本発明の実施の形態において、例えば、白金(プラチナ)又はその合金、ロジウム又はその合金、タングステン又はその合金、イリジウム又はその合金で設けられた第1の電極の表面リング142により、インナーリング130の内面140はライニングされる。他の代替の実施の形態では、インナーリング130の内面140はイリジウム‐ロジウム合金又はニッケル合金によりライニングされて設けられる。再び図1を参照すると、本発明の特定の実施の形態では、第2の電極の表面リング144は第1の電極の表面リング142と同様又は類似の材料で設けられ、中心電極102の外面146に固着又は堆積される。
【0030】
再び図2を参照すると、スポーク134は、製造を容易にするために縁部(エッジ)を直角として設けてもよく、又はスポーク134の間の空間を流れる気体の抵抗が減少するように曲面状の表面として設けてもよい。本発明の他の代替の実施の形態では、インナーリング130とアウターリング132とを接続するスポークの数を増減して設けてもよい。本発明の他の代替の実施の形態では、筒状電極110は貴金属製の電極の表面リングを有して設けられない。例示の実施の形態では、筒状電極110の全体は、ニッケル合金等の単一材料で設けられる。
【0031】
筒状電極110は実質的な単体として鋳造又は機械加工して設けられてもよいが、第1の電極の表面リングは、ある種の貴金属又は類似の適切な金属製の別体のリングで設けられてもよい。筒状電極110を、粉末金属を焼結、あるいは射出成形して製造することも考えられる。粉末金属を焼結するのではなく溶融する他の製造技術も考えられる。少なくとも一つの実施の形態では、第1及び第2の電極の表面リング142、144を、例えば、任意の長さに切断してリングを形成できる円筒状又は矩形の棒材から製造する。他の代替の実施の形態では、第1及び第2の電極の表面リング142、144を平板材から製造し、パンチプレスを用いて単体の平板材から多数の電極の表面リング142、144を打ち抜いて設ける。図3は、第1及び第2の電極の表面リング142、144の例示の実施の形態を示す。ここで、2つの電極の表面リングは単一工程(1ショット)で打ち抜かれ、第1及び第2の電極の表面リング142、144は3つのタブ148を介して取り付けられて設けられる。特定の実施の形態では、第1及び第2の電極の表面リング142、144は、電極の表面リング142、144の間の正しい間隔が維持される位置で、タブ148により筒状電極110に組み付けられる。第1の電極の表面リング142が筒状電極110に取り付けられ、第2の電極の表面リング144が中心電極102に取り付けられた後、タブ148は取り除かれる。第1の電極の表面リング142は、製造、組み立て、取り付け、及び/又は熱膨張に適合するように1つ以上の半円状の部分に切り分けてもよい。
【0032】
図4に筒状電極の他の実施の形態を示す。この実施の形態では、インナーリング130、アウターリング132、スポーク134、及び速度制御シュラウド136は、筒状電極110と実質的に同一に設けられる。しかし、筒状電極111では、第2の電極の表面リング144が3つのタブ156により第1の電極の表面リング142に取り付けられて設けられる。このように、第1及び第2の電極の表面リング142、144の間の正しい間隔は、組み立てが完了するまで維持される。組み立て後、タブ156を、機械的に、又は電子ビームにより、又はウォータージェットにより、又は類似の方法で取り除くことができる。しかし、特定の実施の形態では、タブ156を、例えば、筒状電極111や第2の電極の表面リング144で用いる材料よりも実質的に融点が低い材料で製造してもよい。このように設けると、筒状電極111のプレチャンバスパークプラグ100への組み付けの後で、タブ156を燃焼又は溶融により取り除くことができる。
【0033】
第1の電極の表面リング142を筒状電極110に取り付ける方法はいくつかある。本発明の特定の実施の形態では、筒状電極110を第1の電極表面リング142の周りに鋳造する。他の代替の実施の形態では、内面に貴金属層又は同様に適切な金属の層を固着した別体の金属リングを、筒状電極110のインナーリング130に組み付ける。
【0034】
例えば、物理蒸着(PVD)又は化学的気相成長(CVD)を利用して、電極の表面リングの材料を、粉末金属基材上へ堆積させることができる。例えば、粉末金属基材は中空円筒に設けられてもよく、電極の表面リングの材料をこの中空円筒の内面に堆積させてもよい。この円筒を輪切りにして、多数の第1の電極の表面リング142を得ることができる。小さい中空円筒の外側に同じ材料を堆積する場合、これを輪切りにして多数の第2の電極の表面リング144を得ることができる。このような方法で製造することにより、第1の電極の表面リング142は、筒状電極110の中央開口に挿入でき、定位置に溶接又はろう付けすることができる。図5は、例えば、ニッケル合金又は高導電性合金からなる基材143に第1の電極の表面リング142を固着又は堆積させた筒状電極110の断面図である。特定の実施の形態では、溶接は1ヶ所又は数ヶ所でのタック溶接により行われ、材料毎に異なる熱膨張率に起因する相対的な移動を許容する。筒状電極110に貴金属を付加する上記方法を用いることにより、従来のプレチャンバスパークプラグで用いられた典型的な量よりも少ない貴金属でプレチャンバスパークプラグ100を製造することができ、このため、多くの従来のプレチャンバスパークプラグよりも安価にプレチャンバスパークプラグ100を製造できる。
【0035】
更なる実施の形態では、筒状電極110を別々の構成部品から組み立ててもよい。図5に示す実施の形態では、別体に設けられたディスク部114と速度制御シュラウド136とを有する筒状電極110の特定の実施の形態の断面図を示す。少なくとも一つの実施の形態では、速度制御シュラウド136は、一端にノッチ部152を有し、このノッチ部はディスク部114の環状受容部154に圧入(プレス嵌め)される。更なる実施の形態では、環状受容部154は、これを定位置に保持する速度制御シュラウド136のノッチ部152内に向けて内方にプレスされてもよい。更なる実施の形態では、ノッチ部152は環状突出部を含み、この環状突出部の外周周りに筒状電極110の環状受容部154の窪みが嵌合して、ディスク部114と速度制御シュラウド136との間の取り付けをより良好にする。他の代替の実施の形態では、ノッチ部152は、環状受容部154の内側の表面に対応する形でねじ切り(加工)され、速度制御シュラウド136をディスク部114に螺合できるように設けられている。
【0036】
再び図1を参照すると、エンジンの作動中、燃料混合気は、エンジン(不図示)のメインシリンダから、端部キャップ116(図7及び図8参照)の中央孔162と、複数の外縁孔164(図7及び図8参照)とを通って、プレチャンバスパークプラグ100の前チャンバ108に吸入される。中央孔162を通って吸入される燃料混合気は、速度制御シュラウド136を通り、中心電極102と筒状電極110との間の、電気火花による点火が行われるスパークギャップへと流れる。燃料混合気の速度により、最初の火炎核が後チャンバ106に移動される。
【0037】
外縁孔164を通って吸入される燃料混合気は外縁孔164が持つ角度によりスワール(渦巻き/旋回)運動を行う。スワール運動を行う燃料混合気は、速度制御シュラウド136の外側を通過し、後チャンバ106に向かって流れる。後チャンバ106において、燃料混合気は、中央孔からの流れに乗る火炎核により点火される。燃料混合気のスワール運動に起因して発生する乱流により、後チャンバ106内の燃料を主に消費すると共に後チャンバ106周りに拡がる火炎核が分配(分散)される。これにより、後チャンバ106から前チャンバ108へと燃料混合気の燃焼が進行する際に、より速く燃焼し、プレチャンバ内の圧力が急速に増加する。その結果、燃料混合気はより完全に燃焼するので、プレチャンバ内の圧力は増加する。これにより、高速の火炎噴流(ジェット)が、中央孔162及び複数の外縁孔164を通過して、主燃焼室(不図示)へ流入する。
【0038】
このように、火炎核が後チャンバ106に流れることにより点火を遅らせる。燃焼工程は後チャンバ106において開始され、発生した火炎が主燃焼室内に放射される前に燃焼工程は前チャンバ108を通過しなくてはならない。点火遅れ時間を延長することで、より完全に燃焼が行われるので、この工程は再現性が高く、変動が少ないため、典型的な従来のプレチャンバスパークプラグよりもCOV(変動係数)が低くなる。点火遅れによる更なる利点は、点火遅れのない場合よりもシリンダの圧力が低いときに、燃焼サイクルの早い時点でスパークを開始できることである。シリンダの圧力が低いときにスパークを開始することにより、プレチャンバスパークプラグ100の寿命が延びる。
【0039】
更に、プレチャンバスパークプラグを構成する際に、筒状電極110の後方の後チャンバ106と筒状電極110の前方の前チャンバ108との容積を最適化して火炎核の拡大を制御することにより、点火遅れ時間を制御できる。後チャンバ106の容積に対する前チャンバ108の容積の比が、中央孔162から流出する火炎噴流(ジェット)の大きさと貫通性とを制御する。
【0040】
図6は、本発明の実施の形態に従って構成された筒状電極180の斜視図である。筒状電極180は接地電極として機能し、この筒状電極180は、アウターリングを持たないことを除き、筒状電極110と同一に設けられている。筒状電極180は、中央開口138を有するインナーリング130を含む。このインナーリング130は径方向に延在して速度制御シュラウド136を形成する。図6に示す実施の形態では、3つのスポーク134はインナーリング130の外面から径方向の外側に延在する。特定の実施の形態では、筒状電極180は、各スポーク134の端部182をシェル112に直接に取り付けることによりプレチャンバスパークプラグ100に組み付けられる。取り付けは溶接又はろう付け等で行うことができる。
【0041】
図7及び図8はそれぞれ、本発明の特定の実施の形態によるプレチャンバスパークプラグ100の端部キャップ116を端面より見る図及び断面図である。特定の実施の形態では、端部キャップ116はカップ状に設けられ、シェル112の端部から僅かに突出して設けられる。端部キャップ116は、少なくとも一つの実施の形態では、プレチャンバスパークプラグ100の長手方向軸101上に中心を置く中央孔162を有する。中央孔162は、前チャンバ108内へ燃料混合気の流量(フローレート)を制御するように構成される。端部キャップ116は複数の外縁孔164を更に含む。これらの外縁孔164は、端部キャップ116の側壁166に穿孔するか、成形して設けてもよい。外縁孔164は、予燃焼チャンバ内で燃料混合気のスワール(渦巻き/旋回)運動を発生させるように構成される。本発明の一の実施の形態において、端部キャップ116は溶接、ろう付け等によりシェル112に取り付けられる。
【0042】
図7及び図8は、側壁166に7つの外縁孔164と7つの外縁孔軸168とを有する端部キャップ116の実施の形態を示す。図7では説明を容易にするために、1つの外縁孔軸168のみを示す。図7は、外縁孔164の例示としてのスワール角度と、プレチャンバスパークプラグ100の長手方向軸101とを更に含む端部キャップ116を端面より見る図である。この図では、特定の実施の形態において、端部キャップ116がシェル112に組み付けられる際に存在するであろう位置に配置されている。図8は端部キャップ116の断面図であり、外縁孔164の例示としての貫通角度を示す図である。
【0043】
端部キャップ116の他の実施の形態では、7つではない数の外縁孔164を有してもよい。外縁孔164は、どの外縁孔軸168も長手方向軸101と交わらないように角度を成すように設けられる。上記のように、図7に外縁孔164のスワール角度を示す。図7に示すように、スワール角度は、外縁孔軸168と、端部キャップ116の中心から投影され、シリンダの端部との間に位置すると共に、対応する外縁孔164により画成される外縁孔軸168上の点を通過する、放射線169との間の角度として画成される。
【0044】
図7及び図8に示す実施の形態では、スワール角は45度に設けられているが、他の代替の実施の形態では45度以外の角度で設けられてもよい。図8は、外縁孔164の貫通角度を示す図である。図8に示すように、貫通角度は、外縁孔軸168と長手方向軸101又は長手方向軸101に平行な線171との間の角度により画成される。エンジンの作動中、燃料混合気がプレチャンバの前チャンバ108内に導入されると、外縁孔164の成す角度により、プレチャンバ内の燃料混合気にスワール(渦巻き/旋回)効果が発生する。外縁孔164の厳密な位置(即ち、側壁166上の位置)及び構成(例えば、直径、角度)は予燃焼チャンバ内の所望の流れ場及び燃料混合気の分配(分布)を実現するように定められる。
【0045】
図9は、本発明の実施の形態に従って構成されたプレチャンバスパークプラグ200の断面図である。プレチャンバスパークプラグ200は長手方向軸201を有する。中心電極102は長手方向軸201に沿って延在し、更に絶縁体104から後チャンバ106及び前チャンバ108に分割されたプレチャンバ内までに延在するように設けられる。筒状電極210はシェル112の内側に配設され、接地電極として機能する。筒状電極210のディスク部214は前チャンバ108から後チャンバ106を分離するように設けられる。端部キャップ116は、プレチャンバスパークプラグ200の端部を画成すると共に前チャンバ108の境界を画成する。本発明の特定の実施の形態では、シェル112の内側の表面118は、プレチャンバスパークプラグ200の組み立てにおいて、筒状電極210を段状部分120上に着座させることができるように、段状部分120を有してもよい。
【0046】
作動において、プレチャンバスパークプラグ200は、前述のプレチャンバスパークプラグ100の作動と同様に作動する。しかし、図9から分かるように、筒状のインナーリング又は速度制御シュラウド236は前チャンバ108内と後チャンバ106内との両方に向かって径方向に延在して設けられる。速度制御シュラウド236の長さを増加すること、即ち、後チャンバ106内に延在する部分を追加することにより、点火遅れ時間を更に延ばすことができる。この場合、点火遅れ時間は、速度制御シュラウド236の後方への延長部分の長さと、速度制御シュラウド236の後方への延長部分における流速により制御される。速度制御シュラウド236における流速は中央ポート162を通る質量流量の関数である。速度制御シュラウド236を延ばすことによる点火遅れ時間の延長により、プレチャンバスパークプラグ100の場合よりも更に早期のスパーク開始が可能となる。シリンダ圧力が低い時点でのより早期のスパーク開始は、スパークプラグの寿命を延長する。このような設計により、貴金属を全く用いない中心電極及び接地電極を有するプレチャンバスパークプラグの製造が可能となる。これにより、材料コストを削減することができると共に、スパークプラグの実質的な製造及び組み立てを簡易化することができる。
【0047】
本明細書中で引用する公報、特許出願及び特許を含む全ての文献は、各文献を個々に、具体的に示し、引用して組み込むかのように、又、その全体を本明細書に記載するかのように、引用して組み込まれる。
【0048】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」及び「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(即ち「〜を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明される全ての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本発明の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0049】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正及び均等物を全て含む。更に、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、全ての変形における上記要素のいずれの組み合わせも本発明に包含される。
【符号の説明】
【0050】
100 プレチャンバスパークプラグ
101 長手方向軸
102 中心電極
104 絶縁体
106 後チャンバ(予燃焼チャンバ)
108 前チャンバ(予燃焼チャンバ)
110 筒状電極(接地電極)
111 筒状電極(接地電極)
112 シェル
114 ディスク部(筒状電極)
116 端部キャップ
118 内側の表面(シェル)
120 段状部分(シェル)
130 インナーリング(筒状電極)
132 アウターリング(筒状電極)
134 スポーク(筒状電極)
136 速度制御シュラウド(筒状電極)
138 中央開口(筒状電極)
140 インナーリング内面(筒状電極)
142 第1の電極の表面リング(筒状電極)
143 基材(筒状電極)
144 第2の電極の表面リング(中央電極)
146 中心電極外面(中心電極)
148 タブ(電極の表面リング)
152 ノッチ部(速度制御シュラウド)
154 環状受容部(ディスク部)
156 タブ(電極の表面リング)
162 中央孔(端部キャップ)
164 外縁孔(端部キャップ)
166 側壁(端部キャップ)
168 外縁孔軸(端部キャップ)
169 放射線(端部キャップ)
171 長手方向軸との平行線(端部キャップ)
180 筒状電極(接地電極)
182 端部(スポーク)
200 プレチャンバスパークプラグ
201 長手方向軸
210 筒状電極(接地電極)
214 ディスク部(筒状電極)
236 速度制御シュラウド(筒状電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シェルと;
前記シェルに取り付けられた端部キャップと;
前記シェル内に配設された絶縁体と;
前記絶縁体に囲まれた第1の部分を有すると共に、前記絶縁体から前記シェルと前記端部キャップとにより画成されたプレチャンバ内に延在する第2の部分を有する中心電極と;
前記シェルに取り付けられた接地電極とを備え;
前記接地電極は:
前記中心電極を囲むように間隔を置いて配置された筒状のインナーリングと;
前記シェルに取り付けられたアウターリングと;
前記インナーリングと前記アウターリングとを接続する複数のスポークとを備える;
プレチャンバスパークプラグ。
【請求項2】
前記筒状のインナーリングの前記中心電極に隣接する一部分は、白金合金、ロジウム合金、及びイリジウム‐ロジウム合金の内の一を備える層を含む、請求項1に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項3】
前記筒状のインナーリングの前記中心電極に隣接する一部分は、タングステン合金、イリジウム合金、及びニッケル合金の内の一を備える層を含む、請求項1に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項4】
前記中心電極の前記インナーリングに隣接する一部分は、白金合金、ロジウム合金、及びイリジウム‐ロジウム合金の内の一を備える層を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項5】
前記中心電極の前記インナーリングに隣接する一部分は、タングステン合金、イリジウム合金、及びニッケル合金の内の一を備える層を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項6】
前記複数のスポークのそれぞれの形状は、前記複数のスポークの間の空間における気体の流通を可能とするように構成される、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項7】
前記端部キャップは、燃料混合気の第1の流れを前記筒状のインナーリング内へ方向付けるように構成される中央ポートを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項8】
前記端部キャップは、前記プレチャンバ内への燃料混合気の第2の流れを前記プレチャンバを中心とする前記プレチャンバ内へのスワール流れとするように構成される複数の外縁ポートを更に含む、請求項7に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項9】
前記外縁ポートはそれぞれ長手方向軸を有し、前記外縁ポートの長手方向軸が前記プレチャンバスパークプラグの長手方向軸に対して垂直でも平行でもなく、前記プレチャンバスパークプラグの前記長手方向軸と交差しないように、前記複数の外縁ポートが角度を有するように構成された、請求項8に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項10】
前記筒状のインナーリングの一部分は前記中心電極の先端から前記端部キャップに向かって軸方向に延在するように構成された、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項11】
前記筒状のインナーリングの一部分は前記中心電極の先端から前記端部キャップより遠ざかるように軸方向に延在するように構成された、請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項12】
内燃エンジンにおける燃焼を可能とする方法であって:
プレチャンバスパークプラグのプレチャンバ内で燃料混合気に点火するステップを備え;
前記プレチャンバ内で前記燃料混合気に点火するステップは:
前記プレチャンバの前チャンバ内への前記燃料混合気の第1の量の流れを許容する第1のポートを提供するステップと;
火炎核を生成するように前記燃料混合気を点火するステップと;
前記火炎核を前記プレチャンバの後チャンバへ移動させるステップと;
前記後チャンバ内に前記燃料混合気の第2の量が流入するように流れを許容する第2のポートを提供して前記火炎核により点火するステップとを備え;
前記燃料混合気の第1及び第2の量の点火が、前記第1及び第2のポートからの火炎噴流をもたらす;
方法。
【請求項13】
前記第1のポートを提供するステップは、前記プレチャンバスパークプラグの端部キャップに中央孔を提供するステップを備える、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2のポートを提供するステップは、前記プレチャンバスパークプラグの長手方向軸に対して平行でも垂直でもなく、交差しない長手方向軸を有するポートを提供するステップを備える、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記第2のポートを提供するステップは、前記プレチャンバにおいて前記燃料混合気の第2の量の乱流を発生するように構成されるポートを提供するステップを備える、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記プレチャンバスパークプラグのプレチャンバ内で燃料混合気に点火するステップは、前記燃料混合気の前記点火を遅れさせるように構成された接地電極を提供するステップを備える、請求項12乃至請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記接地電極は中心電極に近接する位置に設けられた筒状部分を含み、前記筒状部分は前記プレチャンバスパークプラグの長手方向軸と平行に軸方向に延在するように設けられた、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記燃料混合気の第1の量は前記筒状部分の内部を通って流れると共に、前記燃料混合気の第2の量は前記筒状部分の外部の周りを流れるように構成された、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
シュエルと;
前記シェルに取り付けられた端部キャップと;
前記シェル内に配設された絶縁体と;
前記絶縁体に囲まれた第1の部分を有すると共に、前記絶縁体から前記シェルと前記端部キャップとにより画成されたプレチャンバ内に延在する第2の部分とを有する中心電極と;
前記シェルに取り付けられた接地電極とを備え;
前記接地電極は:
前記中心電極を囲むように間隔を置いて配置された筒状のインナーリングと;
前記インナーリングから径方向の外側に突出し、それぞれの端部が前記シェルに取り付けられた複数のスポークとを有する;
プレチャンバスパークプラグ。
【請求項20】
前記筒状のインナーリングの前記中心電極に隣接する一部分は、白金合金、ロジウム合金、及びニッケル合金の内の一を備える層を含む、請求項19に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項21】
前記筒状のインナーリングの前記中心電極に隣接する一部分は、タングステン合金、イリジウム合金、及びイリジウム‐ロジウム合金を備える層を含む、請求項19に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項22】
前記中心電極の前記インナーリングに隣接する一部分は、白金合金、ロジウム合金、及びニッケル合金の内の一を備える層を含む、請求項19乃至請求項21のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項23】
前記中心電極の前記インナーリングに隣接する一部分は、タングステン合金、イリジウム合金、及びイリジウム‐ロジウム合金の内の一を備える層を含む、前記請求項19乃至請求項21のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項24】
前記端部キャップは、燃料混合気の第1の流れを前記筒状のインナーリング内に方向付けるように構成された中央ポートを含む、請求項19乃至請求項23のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項25】
前記端部キャップは、前記燃料混合気の第2の流れを前記プレチャンバを中心とする前記プレチャンバ内へのスワール流れとするように構成された複数の外縁ポートを更に含む、請求項24に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項26】
前記外縁ポートはそれぞれ長手方向軸を有し、前記外縁ポートの長手方向軸が前記プレチャンバスパークプラグの長手方向軸に対して垂直でも平行でもなく、前記プレチャンバスパークプラグの前記長手方向軸と交差しないように、前記複数の外縁ポートが角度を有するように構成された、請求項25に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項27】
前記筒状のインナーリングの一部分は、前記中心電極の先端から前記端部キャップに向けて軸方向に延在するように構成された、請求項19乃至請求項26のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項28】
前記筒状のインナーリングの一部分は、前記中心電極の先端から前記端部キャップより遠ざかるように軸方向において延在するように構成された、請求項19乃至請求項27のいずれか一項に記載のプレチャンバスパークプラグ。
【請求項29】
プレチャンバスパークプラグを製造する方法であって:
シェルを提供するステップと;
前記シェル内に絶縁体を挿入するステップと;
前記絶縁体内に中心電極を部分的に挿入するステップと;
前記中心電極を囲むように配設される筒状のインナーリングを有する接地電極を前記シェルに取り付けるステップと;
前記シェルに端部キャップを組み付けるステップとを備える;
方法。
【請求項30】
前記接地電極を前記シェルに取り付けるステップは、前記接地電極を、前記シェルにろう付けするステップ又は溶接するステップのいずれかを備える、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記接地電極を前記シェルに取り付けるステップは、前記筒状のインナーリングの内側の表面に取り付けられた第1の電極の表面リングを有する接地電極を取り付けるステップを備え、前記第1の電極の表面リングは径方向の内側に向けられる複数のタブを有し、前記複数のタブは、前記中心電極に取り付けるように構成される第2の電極の表面リングで終端を成すように設けられ、前記第2の電極の表面リングの前記中心電極への取り付け後に前記複数のタブが取り除かれる、請求項29又は請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記中心電極を挿入するステップは、第2の金属により設けられた表面層を有する第1の金属により設けられた前記中心電極を挿入するステップを備え、前記表面層は、前記筒状のインナーリングに近接する前記中心電極の一部分に配置される、請求項29乃至請求項31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第2の金属は、白金、イリジウム、ロジウム、及びタングステン、又はこれらの合金により構成される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記接地電極を取り付けるステップは、第2の金属により設けられた表面層を有する第1の金属により設けられた接地電極を取り付けるステップを備え、前記表面層は、前記中心電極に近接する前記筒状のインナーリングに配置された、請求項29乃至請求項31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第2の金属は、白金、イリジウム、ロジウム、及びタングステン、又はこれらの合金により構成される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第2の金属は環状体に構成されると共に、前記接地電極は前記環状体の周りに鋳造される、請求項34又は請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第2の金属は環状体に構成され、次いで前記筒状のインナーリングの内側の表面にタック溶接される、請求項34又は請求項35に記載の方法。
【請求項38】
粉末金属で設けられた環状の基材上に前記第2の金属を堆積させるステップにより前記環状体を製造するステップを更に備える、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記シェルを提供するステップは、筒状の前記シェルを提供するステップを備え、前記中心電極を挿入するステップは、円筒状の前記中心電極を挿入するステップを備える、請求項29乃至請求項38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記中心電極を囲むように配設される筒状のインナーリングを有する接地電極を前記シェルに取り付けるステップは、点火遅れ時間を制御するように機能する種々の断面形状及び長さを有する筒状のインナーリングを有する前記接地電極を前記シェルに取り付けるステップを備える、請求項29乃至請求項39のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−114077(P2012−114077A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−189180(P2011−189180)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(503400008)ウッドワード,インコーポレーテッド (29)
【氏名又は名称原語表記】Woodward,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 E. Drake Road, P.O. Box 1519, Fort Collins, Colorado 80525, United States of America
【Fターム(参考)】