説明

管ライニング工法

【課題】大径の管ライニング材を用いて大口径の管路を更生する際に、熱流体を用いることなく管ライニング材に含浸される樹脂を効率良く硬化させることができる低コストの管ライニング工法を提供する。
【解決手段】管ライニング材の折り返した背面側に流体圧を作用させ、管ライニング材を反転ノズルから反転させながら管路に沿って引き出し、反転した管ライニング材を管路の内壁に沿わせて配置し、反転管ライニング材の内部に熱線を放射するランプヒータを備えた移動式加熱装置を導入し、ランプヒータが反転管ライニング材の全周をくまなく照射するようにランプヒータを保持した状態で移動式加熱装置を管路内で移動させ、ランプヒータから熱線を放射させ、管路の内壁に沿わせた管ライニング材を輻射加熱し、該管ライニング材に含浸される熱硬化性樹脂を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂含浸ライニング材を用いて大口径の管路を更生する管ライニング工法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された下水管、ガス管、通信ケーブル管、電力ケーブル管等の管路が老朽化した場合、この管路を地中から掘出すことなく、その内面にライニングを施して該管路を補修する管ライニング工法が提案され、既に実用に供されている。
【0003】
上記管ライニング工法の1つとして、外表面がプラスチックフィルムで気密的に被覆された管状樹脂吸着材に未硬化の液状硬化性樹脂を含浸せしめて成る管ライニング材を用いて施工する工法が例えば特許文献1に提案されている。この工法においては、管ライニング材は、平坦状にして折りたたんだ状態で密閉容器に収納され、管ライニング材の一端を外側に取り出してこれを密閉容器に接続された反転ノズルの開口端外周に取り付け、密閉容器内に流体圧を作用させて反転させながら管路内に挿入される。そして、反転装置を用いて管ライニング材を流体圧によって反転させ、さらに該管ライニング材を流体圧によって膨張させて管路の内面に押圧した状態で、ボイラからホースを介して温水等の熱媒体を管ライニング材の内部に導入し、管ライニング材に含浸された熱硬化性樹脂を加熱して硬化させている。
【特許文献1】特開2003−165158号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の管ライニング工法においては、多量の温水を管路内に導入するため、樹脂硬化後において管路内に残留する水を外部へ排出する必要があり、排水作業に多くの時間と労力を要している。この排水作業が、全体の施工コストを押し上げ、コスト増大の原因となっている。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、大径の管ライニング材を用いて大口径の管路を更生する際に、熱流体を用いることなく管ライニング材に含浸される樹脂を効率良く硬化させることができる低コストの管ライニング工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係る管ライニング工法は、熱硬化性樹脂を含浸する管ライニング材を反転装置により反転させて既設管路に挿入し該管路を更生する管ライニング工法であって、(i)熱硬化性樹脂を含浸させた筒状の管ライニング材の一端側を前記反転装置の反転ノズルに通過させ、該管ライニング材の一端を折り返して前記反転ノズルの先端外周に取り付け、前記反転ノズルを管路内に配置し、前記反転装置に圧力流体を供給して、前記反転ノズルに取り付けた管ライニング材の折り返した背面側に該流体圧を作用させ、前記反転圧力室内に引き込まれた管ライニング材を前記反転ノズルから反転させながら管路に沿って引き出し、該反転した管ライニング材を管路の内壁に沿わせて配置し、(ii)前記工程(i)において反転させた管ライニング材の内部に熱線を放射するランプヒータを備えた移動式加熱装置を導入し、(iii)前記ランプヒータが反転管ライニング材の全周をくまなく照射するように前記ランプヒータを保持した状態で前記移動式加熱装置を前記管路内で移動させ、前記ランプヒータから熱線を放射させ、管路の内壁に沿わせた前記管ライニング材を輻射加熱し、反転した管ライニング材に含浸される熱硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする。
【0007】
ランプヒータには所定波長の熱線を放射する赤外線加熱ランプまたは遠赤外線加熱ランプを用いることができる。移動式加熱装置は単数または複数のランプヒータを保有することができ、複数のランプヒータを保有する場合は熱効率を向上させるために、各ランプヒータの背面側に反射板をそれぞれ設けることが望ましい。
【0008】
ランプヒータを網かご状の保護容器のなかに収容し、保護容器の網目の隙間を通って熱線が周囲に放射されるようにすることができる。保護容器は、熱線透過性の耐熱性材料として少なくとも200〜300℃の温度に耐えられる耐熱性とある程度の熱線透過性を有する材料であって、熱変形による狂いを少なくするために線膨張係数ができるだけ小さく、軽量化のために比重ができるだけ小さく、安全性のために高い絶縁性をもつ材料でつくることが望ましい。このような材料には各種の樹脂やエンジニアリングプラスチックが適している。例えば、耐熱性と絶縁性に優れた無溶剤エポキシ含浸樹脂、あるいはガラス繊維充填樹脂や炭素繊維充填樹脂などの複合材料を保護容器材料として用いることができる。
【0009】
上記工程(iii)において、反転させた管ライニング材の収束端末部に滑車を取り付け、該滑車において折り返し移動しうるように牽引ロープを掛け渡し、該牽引ロープに保護容器を連結し、該保護容器を伸縮自在の複数の車輪付き脚で支持し、牽引ロープを牽引することにより移動式加熱装置を管路内で移動させることができる。この場合に、管ライニング材の収束端末部にガイドローラを設け、ガイドローラによって牽引ロープを案内するようにすると、往路の牽引ロープと復路の牽引ロープとが絡まりにくくなり、移動式加熱装置を管路内で円滑に移動させることができる。また、移動式加熱装置の進行方向の前後にテンションローラホルダを設け、該テンションローラホルダにより牽引ロープを保持するようにすると、地上の搬送システムから所望の張力が牽引ロープに伝達されやすくなるとともに、牽引ロープが周囲の部材に擦れて断線する事故が少なくなる。また、保護容器を支持する車輪付き脚は、3本以上であればよく、4本、5本、6本、7本、8本と増やすことができる。支持脚が3本あれば管路の中心軸に保護容器を保持させることが容易になるからである。しかし、支持脚の本数を多くし過ぎると、加熱装置全体が重量化して円滑に移動させることが困難(特に垂直→水平の曲り部分を通過させるのが困難)になるので、支持脚の本数は最大8本までとする。なお、支持脚からの車輪は、主輪の他に補助輪を付属させるようにしてもよい。
【0010】
移動式加熱装置を1台のみ単独で管路内に導入するようにしてもよいし、または複数台連ねて管路内に導入するようにしてもよい。複数台の移動式加熱装置を導入する場合は、移動式加熱装置の相互間に衝突防止用の圧縮スプリングを設けることが望ましい。これにより加熱装置同士の衝突事故を防止できるばかりでなく、牽引ロープが絡まりにくくなり、移動式加熱装置の円滑な搬送が可能となる。
【0011】
移動式加熱装置のランプヒータへの給電方法には有線方式および無線方式のいずれも用いることができる。有線方式の場合は、給電ケーブルを牽引ロープに沿わせてロープとケーブルを一緒に束ねるようにするか、または牽引ロープを太くしてロープ内部にケーブルを通すようにしてもよい。無線方式の場合は、ヒータ電源および受信機を移動式加熱装置の保護容器に取り付け、地上の発信機からON/OFF信号を受信機に向けて送るようにする。無線方式は電源の搭載により加熱装置が大型重量化するため、一般的には有線方式とするほうが好ましい。しかし、大口径の管路を更生する場合は、加熱装置が大型化することをある程度は許容できるので、無線方式の採用を検討することも可能である。
【0012】
また、本発明に係る管ライニング工法は、熱硬化性樹脂を含浸する管ライニング材を既設管路に挿入して該管路を更生する管ライニング工法であって、(a)熱硬化性樹脂を含浸させた一端閉止筒状の管ライニング材を管路内に挿入し、該管ライニング材の内部に圧力流体を供給して該管ライニング材を膨張させ、該管ライニング材を管路の内壁に沿わせて配置し、(b)前記管ライニング材の内部に熱線を放射するランプヒータを備えた移動式加熱装置を導入し、(c)前記ランプヒータが管ライニング材の全周をくまなく照射するように前記ランプヒータを保持した状態で前記移動式加熱装置を前記管路内で移動させ、前記ランプヒータから熱線を放射させ、管路の内壁に沿わせた前記管ライニング材を輻射加熱し、該管ライニング材に含浸される熱硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする。
【0013】
このように管ライニング材を反転させることなく管路内に挿入し、これを膨張させて管路の内壁に沿わせた状態でランプヒータを用いて加熱し、含浸樹脂を硬化させることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、管ライニング材に含浸される樹脂をランプヒータからの輻射熱により効率良く硬化させることができ、樹脂の加熱に温水を用いないので、排水作業が不要になる。このため全体の施工コストを低減できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0016】
更生対象となる水平管路3は、図1に示すように、垂直管路(マンホール)2を介して地上1に開口している。垂直管路2の開口を塞ぐように固定ベース5が設けられている。固定ベース5には反転装置(図示せず)の反転ノズル6が取り付けられている。筒状の管ライニング材4が図示しない上部圧力室を通って反転ノズル6をも通過され、該管ライニング材4の一端を折り返し、該折り返し端部4bが反転ノズル6の先端外周にボルト・ナットで締結されている。
【0017】
エアバッグ7が収縮状態で管路3内の所定位置(管路3の開口部から所定距離だけ入り込んだ位置)に配置されている。このエアバッグ7は膨張・収縮自在であって、塩化ビニル、ウレタン、EVA(酢酸ビニル)等で袋状に成形されており、エアホース8を介して地上のコンプレッサー9に接続されている。
【0018】
管ライニング材4はポリエステル、ポリプロピレン、アクリル等の管状不織布に不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させたものであって、その内周面はポリウレタン、ポリエチレン等の気密性の高いプラスチックフィルムで被覆されている。管ライニング材4は、その一端部4bが金属製円筒状の反転ノズル6の上端部外周に取り付けられている。すなわち、反転ノズル6の上端部外周にはシリコン等の接着剤が全周に亘って塗布され、その接着剤が塗布された部分に相当する管ライニング材4の部分がバンドによって反転ノズル6に締め付けられている。また、管ライニング材4の端部外周には気密性の高い管状フィルムの一端がバンドによって取り付けられており、管ライニング材4の端面と反転ノズル6との間には接着剤と同様の接着剤が塗布され、管ライニング材4の端部と接着剤とは管状フィルムによって覆われ、管状フィルムの他端はバンドによって反転ノズル6の外周に固定されている。このようなライニング材端末部分の取付け構造は例えば特開平9−131795号公報などに詳しく開示されている。
【0019】
上述のように反転ノズル6の上端部外周にそのまま取り付けられた大径の管ライニング材4は、その反転ノズル6への取付部4bに近い部分が内側に凹状に折り返されて反転ノズル6内に挿入され、その折り返された凹状部分に加圧室(図示せず)から密閉箱室(図示せず)を通って加圧流体として例えば圧縮エアが供給されるようになっている。このような加圧室、密閉箱室、反転ノズルを具備する反転装置は、例えば特願2004−313204号の出願明細書・図面に詳しく記載されている。
【0020】
圧縮エアが反転ノズル6に導入されると、管ライニング材4は流体圧によって反転され、図1中に二点鎖線で示すように、その一部が水平管路3の開口部の近傍に部分的に挿入される。そして、反転ノズル6を介して管ライニング材4内に更に圧縮エアを供給すると、管ライニング材4は水平管路3内を図1の矢印方向(左方向)に反転されて進行し、図2に示すように、その先端部4aが水平管路3内に予め配備されていた収縮状態にあるエアバッグ7を乗り越える。なお、反転前の管ライニング材4の外周部の1箇所には、地上に設置されたコンプレッサー10に接続されたエアホース11の一端が取り付けられており、管ライニング材4が図2に示すように反転されると、該エアホース11は管ライニング材4内に引き込まれ、その一端は管ライニング材4内にて開口するようになっている。
【0021】
管ライニング材の先端部4aがエアバッグ7を乗り越えると、図3に示すように、コンプレッサー9が駆動されて圧縮エアがエアホース8を介してエアバッグ7に供給され、該エアバッグ7が膨張されるとともに、図3の紙面垂直方向に長い丸棒状のバー18がマンホール2内を下降されて管ライニング材4の一部に押圧される。
【0022】
図3に示す状態において、コンプレッサー10を駆動して圧縮エアをエアホース11から管ライニング材4内に供給すると、圧縮エアはその圧力で管ライニング材4内の水を部分的に排除して管ライニング材4内に圧縮エアで満たされる密閉空間を形成する。さらに、管ライニング材4内の密閉空間にエアホース11から圧縮エアを供給し続けると、管ライニング材4は、圧縮エアの圧力を受けて順次反転されながら管路3内を図中矢印方向(左方向)に進行していく。
【0023】
上述のようにして管ライニング材4が水平管路3の全長にわたって反転挿入されると、図3に示すように、収束端末部15が管ライニング材の先端部4aのところに位置する。この収束端末部15には滑車16及びガイドローラ17が取り付けられ、滑車16及びガイドローラ17には牽引ロープ13a,13bが掛け渡されている。
【0024】
図示しない反転装置の上部圧力室を固定ベース5から取り外し(反転ノズル6はそのまま残す)、図4に示すように、金属製のキャップ12および移動式加熱装置20を準備する。キャップ12には圧力計19が取り付けられ、キャップ内部の圧力が計測されるようになっている。
【0025】
また、牽引ロープ13a,13bおよびエアホース11がキャップ12にそれぞれ挿通保持されている。牽引ロープ13a,13bのキャップ貫通部には密閉ボックス14a,14bがそれぞれ設けられ、対向配置されたエアバッグを作動させることによりキャップ内部の圧力流体が外部へ漏れ出さないようにされている。このような密閉ボックス14a,14bは、対向配置されたエアバッグを有し、特願2004−313204号の出願明細書・図面に詳しく記載されている。
【0026】
図4に示すように、キャップ12を貫通した往路側の牽引ロープ13aには移動式加熱装置20が結びつけられている。本実施形態の移動式加熱装置20は伸縮自在な支持脚付き車輪30でそれぞれ支持された2つの本体21を連結してなるものである。加熱装置本体21の相互間には衝突防止用の圧縮スプリング28が取り付けられ、移動中においても一方側の本体21と他方側の本体21との間がほぼ一定の間隔に保たれるようにされている。
【0027】
なお、本実施形態では2つの本体21を直列に連結した移動式加熱装置20としているが、図13の(a)に示すように1つの本体21のみを有する移動式加熱装置20Aとしてもよいし、図13の(b)に示すように3つの本体21を直列に連結した移動式加熱装置20Bとしてもよい。前者の加熱装置20Aは管路内での機動性が向上するという利点があり、後者の加熱装置20Bは管ライニング材の含浸樹脂を迅速かつ均一に加熱して硬化させることができる(未硬化部分がなくなる)という利点がある。
【0028】
図11に示すように、移動式加熱装置20は、本体21の前部および後部をそれぞれ支持する6本×2組の車輪付き支持脚31を有する。これらの支持脚31は、中心に位置する本体21Aから放射状にそれぞれ延び出し、先端に取り付けた車輪30が管路の内周面に押圧された管ライニング材4に当接するように、脚長さ調整部32によって延び出し長さがそれぞれ調整されている。脚長さ調整部32は、支持脚31の長さを伸縮させて調整するための伸縮機構を有するとともに、管ライニング材4から受ける力を和らげるための緩衝機構を有するものである。なお、本実施形態では6本×2組のすべてを主輪としているが、このうちの前後3本ずつを補助輪とすることもできる。すなわち、主輪の支持脚から補助輪の支持脚を分岐させることにより、本体21Aに直接接続される支持脚の数を減らすことができる。このようにすると装置20が軽量化される。
【0029】
図12の(a)に示すように、本実施形態の加熱装置本体21Aでは、1つの保護容器22内に1個のランプヒータ26Aが収容されている。保護容器22は網かご状をなし、保護容器の網目の隙間22aを通ってランプヒータ26Aから熱線が周囲に放射されるようになっている。保護容器22は、熱線透過性の耐熱性材料として少なくとも200〜300℃の温度に耐えられる耐熱性とある程度の熱線透過性を有する材料であって、熱変形による狂いを少なくするために線膨張係数ができるだけ小さく、軽量化のために比重ができるだけ小さく、安全性のために高い絶縁性をもつ材料でつくられている。このような材料には各種の樹脂やエンジニアリングプラスチックが適している。例えば、耐熱性と絶縁性に優れた無溶剤エポキシ含浸樹脂、あるいはガラス繊維充填樹脂や炭素繊維充填樹脂などの複合材料を保護容器材料として用いることができる。なお、保護容器22の形状は、袋状、かご状、ラグビーボール状、円筒状など種々の形状とすることができる。
【0030】
ランプヒータ26Aは所定波長の赤外線を放射する赤外線加熱ランプまたは遠赤外線を放射する遠赤外線加熱ランプからなり、図示しないケーブルを介して地上の電源から電力が供給されるようになっている。給電ケーブル(図示せず)は牽引ロープ13aに沿って設けられ、所定間隔ごとにバンド(図示せず)で牽引ロープ13aと一緒に結束されている。
【0031】
なお、本実施形態では図12の(a)に示すように1つの保護容器22内に1個のランプヒータ26Aを収容しているが、図12の(b)に示すように1つの保護容器22内に4個のランプヒータ26Bを収容するようにしてもよい。他の実施形態では各ランプヒータ26Bの背面側に反射板25をそれぞれ設けて、各ランプヒータ26Bから放射される熱線の輻射エネルギレベルを高めるようにしている。このようにすると、ランプヒータからの輻射熱量が増大し、管ライニング材4の含浸樹脂を短時間で迅速に硬化させることができるようになる。
【0032】
図5に示すように、移動式加熱装置20を反転ノズル6の開口6aから管ライニング材4の内部へ導入した後に、キャップ12を反転ノズル6に被着して反転ノズル6の上面開口部をキャップ12で塞ぐ。前述のように反転ノズル6にキャップ12が被着されて管ライニング材4内に密閉空間が形成されると、エアバッグ7から圧縮エアが抜かれてエアバッグ7が収縮した状態で管路3内から取り除かれるとともに、バー18がマンホール2から取り除かれる。
【0033】
次いで、コンプレッサー10からエアホース11を介して管ライニング材4内に圧縮エアを供給し、管ライニング材4を管路3の内周壁に密着させる。管ライニング材の密着が完了すると、搬送システム40の制御器45から電源44に制御信号を送り、移動式加熱装置20の搬送を開始する。すなわち、電源44から巻取り機41,42の駆動回路にそれぞれ給電され、緩んだ状態にある牽引ロープ13a,13bをそれぞれ巻き取り、牽引ロープ13a,13bを張った状態にする。図示しないセンサで牽引ロープ13a,13bの張力を検出し、検出張力が所定の閾値を越えたところで、牽引ロープ13a,13bの巻き取りをいったん停止させる。
【0034】
次いで、制御器45から電源44に次の制御信号を送り、第1の巻取り機41から往路の牽引ロープ13aを送り出すとともに、第2の巻取り機42により復路の牽引ロープ13bを巻き取り、これにより移動式加熱装置20を管路の奥のほうへ前進移動させる。移動式加熱装置20の移動中において、往路側の牽引ロープ13aが滑車16を通過して、復路側の牽引ロープ13bとなって円滑に戻るようにするために、ロープ張力に打ち勝つように管ライニング材4の内圧を十分に高めておく必要がある。制御器45は圧力計19からの検出圧力に基づいてコンプレッサー10の動作を制御し、管ライニング材の内圧をコントロールする。
【0035】
往路側の牽引ロープ13aの送り出し長さと復路側の牽引ロープ13bの巻き取り長さとを図示しないセンサでそれぞれ検出し、それらの検出結果に基づいて制御器45から電源44に停止指令信号を送り、図6に示すように、移動式加熱装置20の先行本体21が収束端末部15の近傍に到着したところで移動式加熱装置20の前進移動を停止させる。そして、制御器45から図示しないヒータ電源に信号を送り、各ランプヒータ26Aに給電して、図7に示すように、ランプヒータ26Aから360°全方位に赤外線を放射させ、所定時間の熱線照射により管ライニング材4の含浸樹脂を硬化させる。
【0036】
硬化処理が完了すると、図8に示すように、第2の巻取り機42から牽引ロープ13bを送り出すとともに、第1の巻取り機41により牽引ロープ13aを巻き取り、これにより移動式加熱装置20を管路の開口のほうに向けて退出移動させる。そして、図9に示すように、管路内の適所適所において移動式加熱装置20を停止させて熱線の放射を繰り返し、管路内の管ライニング材4の含浸樹脂を次々に硬化させていく。そして、管路内のすべての管ライニング材4の含浸樹脂を硬化させた後に、図10に示すように、キャップ12を固定ベース5から取り外して移動式加熱装置20を管路内から取り出す。
【0037】
以上のようにして管ライニング材4の含浸樹脂の加熱硬化処理を終了する。
【0038】
なお、上記の実施形態では、管路内に反転挿入した管ライニング材の含浸樹脂を硬化させる例について説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、例えば特開平8−127068号公報に記載されている管ライニング工法にも本発明を適用することができる。すなわち、一端閉止筒状の管ライニング材を反転させることなくそのままの状態で管路内に挿入し、この管ライニング材の内部に圧力流体を供給して管ライニング材を膨張させ、膨張した管ライニング材を管路の内壁に沿わせた状態で移動式加熱装置のランプヒータにより含浸樹脂を輻射加熱して硬化させることができる。このように管ライニング材そのものは反転されるか否かに拘わらず、本発明の工法を用いて管ライニング材の含浸樹脂をドライな環境下で効率よく硬化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は地中に埋設された下水管、ガス管、通信ケーブル管、電力ケーブル管等の管路の内壁を補修して老朽化した管路を更生する管ライニング工法に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図2】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図3】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図4】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図5】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図6】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図7】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図8】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図9】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図10】本発明の管ライニング工法を説明するための透視断面図。
【図11】移動式加熱装置を管軸方向から見て示す断面模式図。
【図12】(a)は加熱装置の本体部分を管軸方向から見て示す透視断面図、(b)は加熱装置の本体部分を管軸方向から見て示す透視断面図。
【図13】(a)は本発明の他の実施形態の加熱装置を管軸方向から見て示す透視断面図、(b)は本発明のさらに他の実施形態の加熱装置を管軸方向から見て示す透視断面図。
【符号の説明】
【0041】
4…管ライニング材(熱硬化性樹脂含浸シート)、4a…反転先端部、4b…締結端末部、
5…固定ベース、6…反転ノズル、6a…導入口(ノズル開口)、
7…エアバッグ、8,11…エアホース、9,10…コンプレッサー、
12…キャップ(耐圧カバー)、13a,13b…牽引ロープ、
14a,14b…密閉ボックス、
15…収束端末部、16…滑車、17…ガイドローラ、19…圧力計、
20,20A,20B…移動式加熱装置、
21,21A,21B…本体、
22…保護容器(耐火ネット袋、耐火かご)、
22a…網目、25…反射板、
26A,26B…ランプヒータ(赤外線ランプ、遠赤外線ランプ)、
27…テンションローラホルダ、28…圧縮スプリング、
30…車輪、31…脚、32…脚長さ調整部(伸縮・緩衝機構)、
40…搬送システム、41,42…巻取り機、43…滑車、44…電源、45…制御器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂を含浸する管ライニング材を反転装置により反転させて既設管路に挿入し該管路を更生する管ライニング工法であって、
(i)熱硬化性樹脂を含浸させた筒状の管ライニング材の一端側を前記反転装置の反転ノズルに通過させ、該管ライニング材の一端を折り返して前記反転ノズルの先端外周に取り付け、前記反転ノズルを管路内に配置し、前記反転装置に圧力流体を供給して、前記反転ノズルに取り付けた管ライニング材の折り返した背面側に該流体圧を作用させ、前記反転圧力室内に引き込まれた管ライニング材を前記反転ノズルから反転させながら管路に沿って引き出し、該反転した管ライニング材を管路の内壁に沿わせて配置し、
(ii)前記工程(i)において反転させた管ライニング材の内部に熱線を放射するランプヒータを備えた移動式加熱装置を導入し、
(iii)前記ランプヒータが反転管ライニング材の全周をくまなく照射するように前記ランプヒータを保持した状態で前記移動式加熱装置を前記管路内で移動させ、前記ランプヒータから熱線を放射させ、管路の内壁に沿わせた前記管ライニング材を輻射加熱し、反転した管ライニング材に含浸される熱硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする管ライニング工法。
【請求項2】
前記ランプヒータとして赤外線加熱ランプまたは遠赤外線加熱ランプを用い、該加熱ランプを熱線透過性の耐熱性材料でつくられた網かご状の保護容器のなかに収容することを特徴とする請求項1記載の管ライニング工法。
【請求項3】
前記工程(iii)において、反転させた管ライニング材の収束端末部に滑車を取り付け、該滑車において折り返し移動しうるように牽引ロープを掛け渡し、該牽引ロープに前記保護容器を連結し、前記保護容器を伸縮自在の複数の車輪付き脚で支持し、前記牽引ロープを牽引することにより前記移動式加熱装置を管路内で移動させることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項記載の管ライニング工法。
【請求項4】
前記収束端末部にガイドローラを設け、該ガイドローラにより前記牽引ロープを案内することを特徴とする請求項3記載の管ライニング工法。
【請求項5】
前記移動式加熱装置の進行方向の前後にテンションローラホルダを設け、該テンションローラホルダにより前記牽引ロープを保持することを特徴とする請求項3又は4のいずれか1項記載の管ライニング工法。
【請求項6】
前記移動式加熱装置を複数台連ねて管路内に導入することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の管ライニング工法。
【請求項7】
前記移動式加熱装置の相互間に衝突防止用の圧縮スプリングが設けられることを特徴とする請求項6記載の管ライニング工法。
【請求項8】
前記移動式加熱装置は、単数のランプヒータを有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項記載の管ライニング工法。
【請求項9】
前記移動式加熱装置は、複数のランプヒータを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の管ライニング工法。
【請求項10】
前記移動式加熱装置は、各ランプヒータの背面にそれぞれ設けられた反射板を有することを特徴とする請求項9記載の管ライニング工法。
【請求項11】
熱硬化性樹脂を含浸する管ライニング材を既設管路に挿入して該管路を更生する管ライニング工法であって、
(a)熱硬化性樹脂を含浸させた一端閉止筒状の管ライニング材を管路内に挿入し、該管ライニング材の内部に圧力流体を供給して該管ライニング材を膨張させ、該管ライニング材を管路の内壁に沿わせて配置し、
(b)前記管ライニング材の内部に熱線を放射するランプヒータを備えた移動式加熱装置を導入し、
(c)前記ランプヒータが管ライニング材の全周をくまなく照射するように前記ランプヒータを保持した状態で前記移動式加熱装置を前記管路内で移動させ、前記ランプヒータから熱線を放射させ、管路の内壁に沿わせた前記管ライニング材を輻射加熱し、該管ライニング材に含浸される熱硬化性樹脂を硬化させることを特徴とする管ライニング工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−297615(P2006−297615A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118259(P2005−118259)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(592057385)株式会社湘南合成樹脂製作所 (61)
【Fターム(参考)】