説明

管体の押出成形方法および管体の押出成形装置

【課題】管体(ホース)の押出成形方法は、マンドレルを用いなくても、複雑な曲げ形状を有する管体を製造する。
【解決手段】製造方法は、断面円形の開口側内周面25aを有する押出孔25と、押出孔25と同芯上に配置された芯側ダイス26とを有する押出ダイス23を用いて、開口側内周面25aと芯側ダイス26の芯側外周面26dとの間に形成される押出通路27を通じて、ゴム材料を押し出すことにより押出管体HAを形成する。このとき、芯側ダイス26を押出孔25に対して回転および軸方向へ位置制御することにより、ゴム材料が開口側内周面25aと芯側外周面26dとに接触する面積を周方向で変更し、ゴム材料が押し出される速度を周方向で異なる値に設定して、押出管体HAを曲げ形状とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の温水配管、燃料配管、その他の機械に用いる曲げ形状の管体を製造する方法および管体の押出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の屈曲した形状のホースの製造方法は、以下の工程をとっている。すなわち、未加硫ゴムを押し出すことによりホース中間体を形成し、冷却しさらに離型剤を塗布した後に所定長さに切断し、さらにホース中間体を、曲がり形状の金属製のマンドレルに手作業で挿入して加硫することでホースを形成し、さらに該ホースを金属製のマンドレルから抜き取る。こうした金属製のマンドレルを用いる工程では、ホース中間体をマンドレルへ挿入する作業や、マンドレルから加硫後のホースを抜き取る作業が人手によるものであるために面倒であるという課題がある。
【0003】
また、曲がり部を有する押出製品を製造する方法として、特許文献1に記載されているように、曲がり部を有する押出材の製造方法が知られている。しかし、この技術を適用しても、3次元的な複雑な曲げ形状に対応できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−263682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の技術の問題点を解決することを踏まえ、マンドレルを用いなくても、複雑な曲げ形状を有する管体を製造する方法およびその管体の押出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
適用例1は、断面円形の開口側内周面を有する押出孔と、該押出孔と同芯上に配置された芯側ダイスとを有する押出ダイスを用いて、上記開口側内周面と芯側ダイスの芯側外周面との間に形成される押出通路を通じて、管材料を押し出すことにより押出管体を形成する方法であって、
上記芯側ダイスを上記押出孔に対して回転および軸方向へ位置制御することにより、上記管材料が上記開口側内周面と上記芯側外周面とに接触する面積を周方向で変更し、該管材料が押し出される速度を周方向で異なる値に設定して、押出管体を曲げ形状とする。
【0008】
適用例1のホースの押出方法によると、芯側ダイスを軸方向または回転方向へ位置制御することで、つまり、押出ダイスの開口側内周面と芯側外周面との周方向におけるゴム材料の接触面積を変更することで、ゴム材料を連続的に押出せば、ストレート形状および3次元の種々の曲率の曲げ形状の押出管体であっても、製造することができ、生産性に優れている。
【0009】
また、押出管体は、曲げ形状とするのに、従来の技術で説明したようなマンドレルを挿入する必要がなく、作業が簡単で生産性に優れている。
【0010】
[適用例2]
適用例2の上記芯側ダイスは、その先端部が円柱を斜めに切断した傾斜面を有する構成であり、これにより簡単な手法により周方向の接触面積を変更することができる。
【0011】
[適用例3]
適用例3は、管材料を押し出すことにより押出管体を形成する管体の押出成形装置において、
断面円形の開口側内周面を有する押出孔と、該押出孔と同芯上に配置された芯側ダイスとを有する押出ダイスとを有し、上記開口側内周面と上記芯側ダイスの芯側外周面との間に形成される押出通路を通じて、上記管材料を押し出すホース押出機と、
上記ホース押出機の押出通路に上記管材料を供給するゴム押出機と、
上記芯側ダイスを上記押出孔に対して回転および軸方向へ位置制御することにより、上記管材料が上記開口側内周面と上記芯側外周面とに接触する面積を周方向で変更し、該管材料が押し出される速度を周方向で異なる値に設定するダイス位置制御機構と、
を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施例にかかるホース(管体)の押出方法により製造されるホースを説明する説明図である。
【図2】ホースを押出成形するホース押出成形装置を説明する説明図である。
【図3】図2のホース押出機を拡大した説明図である。
【図4】押出ダイスの付近を拡大した説明図である。
【図5】押出ダイスの斜視図である。
【図6】押出ダイスを説明する説明図である。
【図7】ホース押出成形装置による製造工程を説明する説明図である。
【図8】図7に続く工程を説明する説明図である。
【図9】図8に続く工程を説明する説明図である。
【図10】図9に続く工程を説明する説明図である。
【図11】図10に続く工程を説明する説明図である。
【図12】図11に続く工程を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1) 曲がり形状のホースHの概略構成
図1は本発明の一実施例にかかるホース(管体)の押出方法により製造されるホースを説明する説明図である。ホースHは、例えば、ラジエータとエンジンとの接続する箇所に使用されるゴム製のホースであり、エンジンルーム内における配策経路にしたがって3次元形状に曲げられている。ホースHは、以下に説明するホース押出成形装置により製造される。
【0014】
(2) ホースHの製造方法
(2)−1 ホース押出成形装置10
図2はホースHを押出成形するホース押出成形装置10を説明する説明図である。ホース押出成形装置10は、ホース押出機20と、ホース押出機20から押し出される押出管体HAの曲がり形状を変更するように駆動するダイス位置制御機構30と、ホース押出機20にゴム材料(管材料)を供給するゴム押出機40とを備えている。
【0015】
図3は図2のホース押出機20を拡大した説明図である。ホース押出機20は、ダイス基部22と、ダイス基部22の端部に設けられた押出ダイス23とを備えている。ダイス基部22は、ゴム押出機40(図2)から供給されるゴム材料が供給される材料供給室22aと、材料供給室22aに接続されゴム材料を押出ダイス23へ送る材料供給通路22bとを備えている。
【0016】
図4は押出ダイス23の付近を拡大した説明図、図5は押出ダイス23の斜視図である。押出ダイス23は、開口側ダイス24と、芯側ダイス26とを備えている。開口側ダイス24は、ホースの外径に対して所定の倍率で設定された内径の開口側内周面25aを有する押出孔25を有しており、芯側ダイス26との間で押出通路27を形成しており、材料供給通路22bに接続されている。図3に示す芯側ダイス26は、ダイス基部22の貫通孔22cを貫通する支持基材26aと、支持基材26aの一端に一体形成された芯部26bとを備えている。支持基材26aの他端は、図2に示すダイス位置制御機構30側に連結されており、進退および回転可能なように貫通孔22cに支持されている。図4および図5に示すように芯部26bの先端は、傾斜面26cとなるように所定角度でカットされている。また芯部26bの外周は、開口側内周面25aに対向する芯側外周面26dとなっており、その間で押出通路27および押出通路27の端部に押出開口28を形成している。ここで、図6に示すように、開口側内周面25aの軸方向Dの長さをLaとし、芯側外周面26dが開口側内周面25aと全周にわたって軸方向に重なり合う長さを重複長Lで定義すると、芯側ダイス26の芯部26bの軸方向の位置により重複長Lは、0≦L<Laで変更可能になっている。つまり、押出通路27を通るゴム材料は、重複長Lを変更することで、開口側内周面25aと芯側外周面26dとの両面に接触する面積が周方向Rで異なり、摩擦力が異なるように設定される。ここで、開口側内周面25aの軸方向の長さLaは、例えば、10mmに設定することができ、この場合には、重複長Lは、0〜10mmの範囲で変更されることになる。
【0017】
図2において、ダイス位置制御機構30は、前後駆動モータ32と、支持台33上に載置された回転駆動モータ34とを備えている。前後駆動モータ32は、駆動軸32aを駆動することで支持台33上の回転駆動モータ34を軸方向に移動することができる。回転駆動モータ34は、その駆動軸34aを、カップリング36を介して芯側ダイス26の一端に連結している。したがって、芯側ダイス26は、前後駆動モータ32の駆動により、支持台33上の回転駆動モータ34の移動を介して軸方向へ位置制御することができ、また、回転駆動モータ34の駆動により周方向に位置制御することができる。
【0018】
ゴム押出機40は、充填室41aを形成するシリンダ41と、充填室41a内に配置され図示しないモータにより回転駆動されるスクリュウ42とを備え、シリンダ41の先端の押出ヘッド43に形成された注入通路43aを通じてホース押出機20のダイス基部22に接続されている。このゴム押出機40の構成により、スクリュウ42が回転駆動されると、シリンダ41内に充填されているゴム材料が注入通路43aを通じてホース押出機20へ供給される。
【0019】
(2)−2 ホースHの製造方法
次に、ホース押出成形装置10により曲がりホースHを製造する工程を説明する。図2において、ホース押出成形装置10は、ゴム押出機40のスクリュウ42を回転駆動することで充填室41a内のゴム材料を、注入通路43aを通じてホース押出機20の材料供給室22aに供給する。そして、図3に示すように、材料供給室22aのゴム材料は、材料供給通路22bを通り、さらに押出ダイス23の押出通路27を通り、押出開口28から押出管体HAが押し出される。
【0020】
また、ホースHの曲げ形状は、ダイス位置制御機構30の位置制御により行なわれる。図2に示すダイス位置制御機構30の前後駆動モータ32および回転駆動モータ34の位置制御により、図7に示すように、芯側ダイス26が図示の位置にあるとする。すなわち、芯側ダイス26の芯部26bは、その芯側外周面26dが開口側内周面25aと軸方向に重なる重複長LがL1(La)に設定されている。この状態にて、ゴム材料は、押出開口28から押し出される際に、芯側外周面26dと開口側内周面25aとが周方向で等しい接触面積であるから、均一な摩擦力を受ける。よって、ゴム材料は、周方向で同じ速度で押し出され、ストレート形状の押出管体HAを形成する。
【0021】
続いて、ダイス位置制御機構30の前後駆動モータ32の駆動により、図8に示すように芯側ダイス26を矢印方向d1に移動させて、重複長LをL2にまで小さくすると、ゴム材料は、押出開口28から押し出される際に、芯側外周面26dと開口側内周面25aに対して異なった接触面積となり、図示の下方が上方より大きな摩擦力を受ける。よって、ゴム材料は、周方向で異なった速度で押し出され、遅い速度の方向へ曲がった押出管体HAを形成する。
【0022】
図9に示すように、芯側ダイス26を矢印方向d1にさらに移動して、重複長LをL3まで短くすると、ゴム材料は、周方向での速度差がより大きくなり、押出管体HAはさらに大きな曲率で曲がることになる。そして、図10に示すように、芯側ダイス26を矢印方向d2に移動し、さらに180゜回転すると、押出管体HAはストレート形状になる。そして、図11に示すように芯側ダイス26を矢印方向d1に移動して重複長LをL5に設定すると、押出管体HAは図示上方への曲げ形状となり、さらに図12に示すように芯側ダイス26を矢印方向d1に移動して、重複長LをL6に設定すると押出管体HAの曲げ形状の曲率を上げることができる。そして、押出管体HAが所定長さまで押し出されたときに切断し、これを図示しない加硫釜に装填することで加硫を行なうことで曲げ形状のホースが完成する。
【0023】
(3) 実施例の作用・効果
上記実施例の構成により、上述した効果のほか、以下の効果を奏する。
(3)−1 実施例にかかるホースの押出方法によると、芯側ダイス26を軸方向または回転方向へ位置制御することで、つまり、押出ダイス23の開口側内周面25aと芯側外周面26dとの周方向におけるゴム材料の接触面積を変更することで、ゴム材料を連続的に押出せば、ストレート形状および3次元の種々の曲率の曲げ形状の押出管体HAであっても、製造することができ、生産性に優れている。
【0024】
(3)−2 押出管体HAは、曲げ形状とするのに、従来の技術で説明したようなマンドレルを挿入する必要がなく、作業が簡単で生産性に優れている。
【0025】
(3)−3 押出管体HAは、押出開口28が一定であり、押出速度が周方向で異なるだけであるから、その肉厚も一定になる。
【0026】
なお、この発明は上記実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
上記実施例では、管体として、ゴム製のホースについて説明したが、これに限らず、エラストマや金属などの各種の管材料を適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10…ホース押出成形装置
20…ホース押出機
22…ダイス基部
22a…材料供給室
22b…材料供給通路
22c…貫通孔
23…押出ダイス
24…開口側ダイス
25…押出孔
25a…開口側内周面
26…芯側ダイス
26a…支持基材
26b…芯部
26c…傾斜面
26d…芯側外周面
27…押出通路
28…押出開口
30…ダイス位置制御機構
32…前後駆動モータ
32a…駆動軸
33…支持台
34…回転駆動モータ
34a…駆動軸
36…カップリング
40…ゴム押出機
41…シリンダ
41a…充填室
42…スクリュウ
43…押出ヘッド
43a…注入通路
H…ホース
HA…押出管体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の開口側内周面(25a)を有する押出孔(25)と、該押出孔(25)と同芯上に配置された芯側ダイス(26)とを有する押出ダイス(23)を用いて、上記開口側内周面(25a)と芯側ダイス(26)の芯側外周面(26d)との間に形成される押出通路(27)を通じて、管材料を押し出すことにより押出管体(HA)を形成する方法であって、
上記芯側ダイス(26)を上記押出孔(25)に対して回転および軸方向へ位置制御することにより、上記管材料が上記開口側内周面(25a)と上記芯側外周面(26d)とに接触する面積を周方向で変更し、該管材料が押し出される速度を周方向で異なる値に設定して、押出管体(HA)を曲げ形状とする管体の押出成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の管体の押出成形装置において、
上記芯側ダイス(26)は、その先端部が円柱を斜めに切断した傾斜面(26c)を有する管体の押出成形方法。
【請求項3】
管材料を押し出すことにより押出管体(HA)を形成する管体の押出成形装置において、
断面円形の開口側内周面(25a)を有する押出孔(25)と、該押出孔(25)と同芯上に配置された芯側ダイス(26)とを有する押出ダイス(23)とを有し、上記開口側内周面(25a)と上記芯側ダイス(26)の芯側外周面(26d)との間に形成される押出通路(27)を通じて、上記管材料を押し出すホース押出機(20)と、
上記ホース押出機(20)の押出通路(27)に上記管材料を供給するゴム押出機(40)と、
上記芯側ダイス(26)を上記押出孔(25)に対して回転および軸方向へ位置制御することにより、上記管材料が上記開口側内周面(25a)と上記芯側外周面(26d)とに接触する面積を周方向で変更し、該管材料が押し出される速度を周方向で異なる値に設定するダイス位置制御機構(30)と、
を備えることを特徴とする管体の押出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−93167(P2011−93167A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248353(P2009−248353)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】