管端フランジの成形方法
【課題】振動等による破損のおそれがないとともに重量や部品点数の増大を避けることができる。
【解決手段】 管体5の開口端部を拡径する拡径工程と、拡径された開口端部の筒壁52の径方向対称部分を削除して、対向する一対の凸状部521,522を形成する削除工程と、両凸状部521,522を管体5に略直交する位置へ折り曲げて管端フランジとする折曲げ工程とを備えている。上記削除工程において、筒壁52の径方向対称部分は、頂点が筒壁52の基端近くへ至る、管端フランジの外形に沿った展開曲線に削除される。
【解決手段】 管体5の開口端部を拡径する拡径工程と、拡径された開口端部の筒壁52の径方向対称部分を削除して、対向する一対の凸状部521,522を形成する削除工程と、両凸状部521,522を管体5に略直交する位置へ折り曲げて管端フランジとする折曲げ工程とを備えている。上記削除工程において、筒壁52の径方向対称部分は、頂点が筒壁52の基端近くへ至る、管端フランジの外形に沿った展開曲線に削除される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管端フランジの成形方法に関し、特に、車両排気管の連結等に利用できる管端フランジの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図11、図12には従来の排気管連結構造の一例を示す。図12において、上流側排気管1および下流側排気管2の管端外周には略菱形(図11)の連結用フランジ61,62が溶接により固定されており、両排気管1,2は、ガスケット63を介して連結用フランジ61,62をボルト64とナット65で結合することによって連結されている。
【0003】
なお、特許文献1には、一方の排気管とこれの一端開口内に嵌挿された他方の排気管の各外周にそれぞれフランジ部材を溶接固定し、これらフランジ部材をボルトとナットで連結した構造が示されている。
【特許文献1】特開平8−75063
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の構造では連結用フランジ61,62を排気管1,2の管端外周に溶接で固定する必要があるため、溶接接合部に応力が集中して車両振動等によってひび割れ破損が生じ易いとともに、溶接工程に手間とコストを要するという問題があった。
【0005】
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、排気管の連結に利用した場合に、振動等による破損のおそれがないとともに重量や部品点数、コストの増大も避けることができる、管端フランジの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、管体(5)の開口端部(51)を拡径する拡径工程と、拡径された開口端部(51)の筒壁(52)の径方向対称部分を削除して、対向する一対の凸状部(521,522)を形成する削除工程と、両凸状部(521,522)を管体(5)に略直交する外方へ折り曲げて管端フランジ(12,22)とする折曲げ工程とを備えている。
【0007】
本第1発明においては、管端フランジを管体の一端に一体に形成することができるから、従来のように別体のフランジを管体の管端外周に溶接で固定する必要がない。したがって、これを例えば排気管に利用すれば、フランジの溶接接合部に応力が集中して車両振動等によってひび割れ破損が生じることはない。また、本発明によれば、溶接工程に手間を要さず、大幅な重量増や、部品点数、コストの増大も避けることができる。
【0008】
本第2発明では、上記削除工程において、筒壁(52)の径方向対称部分を、頂点が筒壁(52)の基端近くへ至る、管端フランジ(12,22)の外形に沿った展開曲線に削除する。本第2発明においては、両凸状部を管体に略直交する位置へ折り曲げるだけで、その後の加工を要することなく適正な外形の管端フランジが得られる。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の管端フランジの成形方法によれば、排気管の連結に利用した場合に、振動等による破損のおそれがないとともに重量や部品点数の増大も避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1には本発明の方法で成形された管端フランジによって、上流側排気管と下流側排気管を連結した一例を示す。図1において、上流側排気管1の下流端11開口の開口縁および下流側排気管2の上流端21開口縁には、それぞれ外方へ延出する管端フランジ12,22が形成され、これら管端フランジ12,22が、凹陥する収容部13,23内に挿置されたシール部材3を介してボルト41とナット42で連結結合されている。
【0012】
以下、上記管端フランジ12の成形工程を説明する。図2に示すように、排気管1,2となる円形管体5の一方の開口端部51を、バルジ用パンチとダイ(図示略)によって一定長さLで段付きに拡径する。一例として、外径φ1が48.6mmで、肉厚1.2mmの管体5の開口端部51をφ2=61mmに拡径する(第1拡径工程)。この拡径工程は必要に応じて複数工程で行う。本実施形態では、上記第1拡径工程に続いて、バルジ用パンチとダイによって開口端部51の外径をφ3=67.4mmに拡径する(図3、第2拡径工程)。そして、第2拡径工程に続いて第3拡径工程を行ない、バルジ用パンチとダイによって開口端部51の外径をφ4=74.0mmに拡径する(図4、)。さらに、第3拡径工程に続いて、バルジ用パンチとダイによって開口端部51の外径をφ5=80.3mmまで拡径する(図5、第4拡径工程)。
【0013】
第4拡径工程を終了した後、拡径された開口端部51の筒壁52の、180°離れた径方向対称位置を、頂点が筒壁の基端近くに至るような展開曲線に削除する(削除工程)。この展開曲線は、後述する凸状部が折曲げ工程で水平に展開されたときに所定形状の管端フランジとなるような曲線である。上記削除は例えばサンダを使用して研磨したり、レーザーカットすることにより行う。これによって筒壁52には、180°離れて互いに対向する位置に一対の山形の凸状部521,522が残される。なお、削除工程で必ずしも円弧状に削除する必要はないが、これによれば山形の凸状部521,522が得られるので、後述のように折り曲げるだけで適正な外形の管端フランジが得られる。
【0014】
削除工程の後は、ベンドパンチによって上記筒壁52の凸状部521,522を外方へ折り曲げる。本実施形態ではこの折曲げ工程を二工程で行う。第1折曲げ工程(図7)では山形状部521,522を外方へ45°程度折曲げ、続く第2折り曲げ工程で山形状部521,522を外方へ略90°の水平位置まで折り曲げる(図8)。これによって図10に示すように、円形管体5の開口縁に、凸状部521,522が左右に延びる管端フランジ12が形成される。
【0015】
第2折り曲げ工程(図8)の後には、管端フランジ12の、管体開口外周に沿う一定幅の環状領域を、段付きパンチによって一定量(例えば2mm)凹陥させて、収容部13を形成する(図9)。その後、管端フランジ12の左右の凸状部521,522の板面にボール盤によってボルト挿通孔14を形成する。なお、管端フランジ22の形成工程も同様である。
【0016】
このように管端フランジ12,22を形成した管体5を上流側排気管1および下流側排気管2として使用すれば、既述したように、管端フランジ12,22の収容部13にシール部材3を介在させて、両排気管1,2を、ボルト挿通孔14に通したボルト41とナット42で気密的に連結することができる。
【0017】
本実施形態によれば、管端フランジ12,22を排気管1,2の一端に一体に形成することができるから、従来のように別体のフランジを排気管の管端外周に溶接で固定する必要がない。したがって、フランジの溶接接合部に応力が集中して車両振動等によってひび割れ破損が生じたり、溶接工程に手間を要するという問題はなく、また、大幅な重量増や部品点数の増大も避けることができる。なお、本発明は車両排気管への利用に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における、連結された車両排気管の横断面図である。
【図2】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図3】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図4】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図5】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図6】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図7】管端フランジの製造工程を示す断面図である。
【図8】管端フランジの製造工程を示す断面図である。
【図9】管端フランジの製造工程を示す断面図である。
【図10】管端フランジの製造工程を示す正面図である。
【図11】従来例を示す、連結された車両排気管の横断面図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿った縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1…上流側排気管、12…管端フランジ、2…下流側排気管、22…管端フランジ、41…ボルト、42…ナット、5…管体、51…開口端部、52…筒壁、521,522…凸状部。
【技術分野】
【0001】
本発明は管端フランジの成形方法に関し、特に、車両排気管の連結等に利用できる管端フランジの成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図11、図12には従来の排気管連結構造の一例を示す。図12において、上流側排気管1および下流側排気管2の管端外周には略菱形(図11)の連結用フランジ61,62が溶接により固定されており、両排気管1,2は、ガスケット63を介して連結用フランジ61,62をボルト64とナット65で結合することによって連結されている。
【0003】
なお、特許文献1には、一方の排気管とこれの一端開口内に嵌挿された他方の排気管の各外周にそれぞれフランジ部材を溶接固定し、これらフランジ部材をボルトとナットで連結した構造が示されている。
【特許文献1】特開平8−75063
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の構造では連結用フランジ61,62を排気管1,2の管端外周に溶接で固定する必要があるため、溶接接合部に応力が集中して車両振動等によってひび割れ破損が生じ易いとともに、溶接工程に手間とコストを要するという問題があった。
【0005】
そこで本発明はこのような課題を解決するもので、排気管の連結に利用した場合に、振動等による破損のおそれがないとともに重量や部品点数、コストの増大も避けることができる、管端フランジの成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本第1発明では、管体(5)の開口端部(51)を拡径する拡径工程と、拡径された開口端部(51)の筒壁(52)の径方向対称部分を削除して、対向する一対の凸状部(521,522)を形成する削除工程と、両凸状部(521,522)を管体(5)に略直交する外方へ折り曲げて管端フランジ(12,22)とする折曲げ工程とを備えている。
【0007】
本第1発明においては、管端フランジを管体の一端に一体に形成することができるから、従来のように別体のフランジを管体の管端外周に溶接で固定する必要がない。したがって、これを例えば排気管に利用すれば、フランジの溶接接合部に応力が集中して車両振動等によってひび割れ破損が生じることはない。また、本発明によれば、溶接工程に手間を要さず、大幅な重量増や、部品点数、コストの増大も避けることができる。
【0008】
本第2発明では、上記削除工程において、筒壁(52)の径方向対称部分を、頂点が筒壁(52)の基端近くへ至る、管端フランジ(12,22)の外形に沿った展開曲線に削除する。本第2発明においては、両凸状部を管体に略直交する位置へ折り曲げるだけで、その後の加工を要することなく適正な外形の管端フランジが得られる。
【0009】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明の管端フランジの成形方法によれば、排気管の連結に利用した場合に、振動等による破損のおそれがないとともに重量や部品点数の増大も避けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1には本発明の方法で成形された管端フランジによって、上流側排気管と下流側排気管を連結した一例を示す。図1において、上流側排気管1の下流端11開口の開口縁および下流側排気管2の上流端21開口縁には、それぞれ外方へ延出する管端フランジ12,22が形成され、これら管端フランジ12,22が、凹陥する収容部13,23内に挿置されたシール部材3を介してボルト41とナット42で連結結合されている。
【0012】
以下、上記管端フランジ12の成形工程を説明する。図2に示すように、排気管1,2となる円形管体5の一方の開口端部51を、バルジ用パンチとダイ(図示略)によって一定長さLで段付きに拡径する。一例として、外径φ1が48.6mmで、肉厚1.2mmの管体5の開口端部51をφ2=61mmに拡径する(第1拡径工程)。この拡径工程は必要に応じて複数工程で行う。本実施形態では、上記第1拡径工程に続いて、バルジ用パンチとダイによって開口端部51の外径をφ3=67.4mmに拡径する(図3、第2拡径工程)。そして、第2拡径工程に続いて第3拡径工程を行ない、バルジ用パンチとダイによって開口端部51の外径をφ4=74.0mmに拡径する(図4、)。さらに、第3拡径工程に続いて、バルジ用パンチとダイによって開口端部51の外径をφ5=80.3mmまで拡径する(図5、第4拡径工程)。
【0013】
第4拡径工程を終了した後、拡径された開口端部51の筒壁52の、180°離れた径方向対称位置を、頂点が筒壁の基端近くに至るような展開曲線に削除する(削除工程)。この展開曲線は、後述する凸状部が折曲げ工程で水平に展開されたときに所定形状の管端フランジとなるような曲線である。上記削除は例えばサンダを使用して研磨したり、レーザーカットすることにより行う。これによって筒壁52には、180°離れて互いに対向する位置に一対の山形の凸状部521,522が残される。なお、削除工程で必ずしも円弧状に削除する必要はないが、これによれば山形の凸状部521,522が得られるので、後述のように折り曲げるだけで適正な外形の管端フランジが得られる。
【0014】
削除工程の後は、ベンドパンチによって上記筒壁52の凸状部521,522を外方へ折り曲げる。本実施形態ではこの折曲げ工程を二工程で行う。第1折曲げ工程(図7)では山形状部521,522を外方へ45°程度折曲げ、続く第2折り曲げ工程で山形状部521,522を外方へ略90°の水平位置まで折り曲げる(図8)。これによって図10に示すように、円形管体5の開口縁に、凸状部521,522が左右に延びる管端フランジ12が形成される。
【0015】
第2折り曲げ工程(図8)の後には、管端フランジ12の、管体開口外周に沿う一定幅の環状領域を、段付きパンチによって一定量(例えば2mm)凹陥させて、収容部13を形成する(図9)。その後、管端フランジ12の左右の凸状部521,522の板面にボール盤によってボルト挿通孔14を形成する。なお、管端フランジ22の形成工程も同様である。
【0016】
このように管端フランジ12,22を形成した管体5を上流側排気管1および下流側排気管2として使用すれば、既述したように、管端フランジ12,22の収容部13にシール部材3を介在させて、両排気管1,2を、ボルト挿通孔14に通したボルト41とナット42で気密的に連結することができる。
【0017】
本実施形態によれば、管端フランジ12,22を排気管1,2の一端に一体に形成することができるから、従来のように別体のフランジを排気管の管端外周に溶接で固定する必要がない。したがって、フランジの溶接接合部に応力が集中して車両振動等によってひび割れ破損が生じたり、溶接工程に手間を要するという問題はなく、また、大幅な重量増や部品点数の増大も避けることができる。なお、本発明は車両排気管への利用に限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態における、連結された車両排気管の横断面図である。
【図2】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図3】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図4】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図5】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図6】管端フランジの製造工程を示す側面図である。
【図7】管端フランジの製造工程を示す断面図である。
【図8】管端フランジの製造工程を示す断面図である。
【図9】管端フランジの製造工程を示す断面図である。
【図10】管端フランジの製造工程を示す正面図である。
【図11】従来例を示す、連結された車両排気管の横断面図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿った縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1…上流側排気管、12…管端フランジ、2…下流側排気管、22…管端フランジ、41…ボルト、42…ナット、5…管体、51…開口端部、52…筒壁、521,522…凸状部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体の開口端部を拡径する拡径工程と、拡径された開口端部の筒壁の径方向対称部分を削除して、対向する一対の凸状部を形成する削除工程と、両凸状部を管体に略直交する外方へ折り曲げて管端フランジとする折曲げ工程とを備える管端フランジの成形方法。
【請求項2】
前記削除工程において、筒壁の径方向対称部分を、頂点が前記筒壁の基端近くへ至る、前記管端フランジの外形に沿った展開曲線に削除する請求項1に記載の管端フランジの成形方法。
【請求項1】
管体の開口端部を拡径する拡径工程と、拡径された開口端部の筒壁の径方向対称部分を削除して、対向する一対の凸状部を形成する削除工程と、両凸状部を管体に略直交する外方へ折り曲げて管端フランジとする折曲げ工程とを備える管端フランジの成形方法。
【請求項2】
前記削除工程において、筒壁の径方向対称部分を、頂点が前記筒壁の基端近くへ至る、前記管端フランジの外形に沿った展開曲線に削除する請求項1に記載の管端フランジの成形方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−120066(P2010−120066A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297430(P2008−297430)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000211857)中川産業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000211857)中川産業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】
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