説明

管継手

【課題】不測の外力等が生じた場合でも、常に挿口管の管端面と防食部材とのシール性を維持することにより管端面を確実に防食することができる管継手を提供する。
【解決手段】一方の流体管を構成する挿口部12と、挿口部12が挿入され、内周面12bに環状の奥端面5dを有する他方の流体管を構成する受口部5と、受口部5に挿入された挿口部12の受口部5からの抜脱を規制する抜脱規制手段15と、環状に形成される弾性材から成り、管端面12cと奥端面5dとの間に配置された防食部材14と、を備えた管継手1において、防食部材14は、抜脱規制手段15により受口部5からの挿口部12の抜脱が規制された状態において、受口部5に挿入された挿口部12の管端面12cと受口部5の奥端面5dとの間で押圧されて弾性変形することにより管端面12cを被覆している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下水道や上水道等の流体管において、一方の流体管と他方の流体管とを水密状態で接続するための管継手に係り、特に流体管の管端面の腐食を防止するための防食部材が設けられた管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方の流体管の挿口部を他方の流体管の受口部に挿入して例えば金属製の流体管同士を接続する際において、設置現場の状況等に応じて挿口部を有する管体を切断して長さを調整する場合がある。一般的にこのような金属製の管体の表面には、防食塗料等によるコーティングがなされているが、上記のように切断した場合には挿口部の管端面に金属素地が露出してしまうため、そのまま設置すると流体により挿口部の管端面が腐食するという問題があった。
【0003】
そこで、切断後に管端面を防食塗料等によりコーティングすることが考えられるが、現場における作業負荷が増大するため、このような問題を解消するものとして、外周面に複数の環状フィンを有する弾性材等からなる筒状の防食部材と該防食部材を押圧する金属製筒とが挿入された挿口管を、防食部材及び金属製筒とともに受口管に挿入し、金属製筒の径方向に働く押圧により防食部材の外周面に複数形成された環状フィンを挿口管及び受口管の内周面に押圧して密接させるとともに、環状フィンのうち中央の環状フィンの側面に挿口管の管端面が当接することで、挿口管の管端面の腐食を防止しているもの等がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第2572578号公報(第2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の記載の管継手にあっては、地震等の不測の外力が生じた場合には、両管が抜脱方向に相対移動することで、挿口管の管端面が中央の環状フィンの側面から離間してしまい、管端面と中央の環状フィンの側面とのシール性が維持されないため、管端面の防食が確保されないといった虞があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、不測の外力等が生じた場合でも、常に挿口管の管端面と防食部材とのシール性を維持することにより管端面を確実に防食することができる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の管継手は、
一方の流体管を構成する挿口部と、
前記挿口部が挿入され、内周面に環状の奥端面を有する他方の流体管を構成する受口部と、
前記受口部に挿入された挿口部の該受口部からの抜脱を規制する抜脱規制手段と、
環状に形成される弾性材から成り、前記管端面と前記奥端面との間に配置された防食部材と、
を備え、
前記一方の流体管と前記他方の流体管とを水密状態で接続する管継手であって、
前記防食部材は、前記抜脱規制手段により前記受口部からの前記挿口部の抜脱が規制された状態において、前記受口部に挿入された前記挿口部の管端面と前記受口部の奥端面との間で押圧されて弾性変形することにより前記管端面を被覆していることを特徴としている。
この特徴によれば、抜脱規制手段により受口部からの挿口部の抜脱が規制され、この受口部からの挿口部の抜脱が規制されている状態において、防食部材は弾性変形した状態で管端面を被覆しており、その弾性復帰力により管端面を押圧するため、防食部材により管端面のシール性を常に維持することができる。また、不測の外力が生じた場合、受口部からの挿口部の抜脱が規制されている状態において、挿口部が受口部に対して若干移動しても、管端面は、弾性復帰力により管端面に追従して密着する防食部材により、常にシールされる。
【0008】
本発明の請求項2に記載の管継手は、請求項1に記載の管継手であって、
前記防食部材における前記挿口部の管端面との当接面は、前記挿口部側に向けて膨出していることを特徴としている。
この特徴によれば、管端面により防食部材が潰れやすくなるため、挿口部の受口部への挿入が容易になるばかりか、管端面が当接面を押圧する際に、管端面と当接面との間の空気が外に押し出されていくため、管端面と当接面との密着性の低下が防止される。
【0009】
本発明の請求項3に記載の管継手は、請求項1または2に記載の管継手であって、
前記防食部材における前記挿口部の管端面との当接面近傍に空隙が形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、管端面により防食部材が押し潰されやすくなるため、挿口部を容易に挿入することができる。
【0010】
本発明の請求項4に記載の管継手は、請求項1ないし3のいずれかに記載の管継手であって、
前記防食部材には、前記挿口部の管端面との当接面における外周側端部から連続して前記挿口部側に向けて延びるガイド面が周方向に沿って形成されており、
前記ガイド面は、前記当接面に向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、挿口部を受口部に挿入する際において、挿口部が軸心からずれることがあっても、挿口部の外周面がガイド面により軸心にむけて摺接案内され、管端面を当接面に確実に当接させて被覆することができる。
【0011】
本発明の請求項5に記載の管継手は、請求項1ないし4のいずれかに記載の管継手であって、
前記防食部材には、前記挿口部の管端面との当接面における内周側端部から連続して前記挿口部側に向けて延びる内周当接面が周方向に沿って形成されており、
前記内周当接面は、少なくとも前記防食部材が前記管端面を被覆している状態において前記挿口部の内周面に密着することを特徴としている。
この特徴によれば、管端面が被覆されるだけでなく、挿口部の内周面も被覆されるため、管端面と当接面との間への流体の進入をより確実に阻止できる。
【0012】
本発明の請求項6に記載の管継手は、請求項5に記載の管継手であって、
前記内周当接面は、該内周当接面の先端に向けて前記挿口部の内周面に対し漸次離間するテーパ面状に形成されており、
前記防食部材が前記受口部に挿入された前記挿口部の管端面と前記受口部の奥端面との間で押圧されて弾性変形することにより、前記挿口部の内周面に当接するように構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、内周当接面が、内周当接面の先端に向けて挿口部の内周面に対し漸次離間していることで、挿口部を受口部に挿入しやすくなるとともに、管端面の押圧による弾性変形によって挿口部の内周面に当接されるため、内周当接面を挿口部の内周面に対して押圧するための部材等を別途設けることなく、弾性変形を利用するだけで内周当接面により挿口部の内周面を確実に被覆することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例1における管継手の配設状況を示す概略図である。図2は、受口部と挿口部とを示す断面図である。図3(a)は、防食部材を示す正面図であり、(b)は、防食部材を示す右側面図であり、(c)は防食部材を示す左側面図であり、(d)は、図3(c)のA−A断面図である。図4(a)は、挿口部の管端面が未だ防食部材により被覆されていない状態を示す断面図であり、(b)は、挿口部が図4(a)の状態から挿入方向に挿入された状態を示す断面図である。図5(a)は、挿口部が図4(b)の状態から更に挿入方向に挿入された後、挿口部の抜脱が規制された状態を示す断面図、(b)は、挿口部が図5(a)の状態から抜脱方向に移動した状態を示す断面図である。
【0015】
先ず、本発明の配管路4は、本実施例の図1にて示されるように、例えば地中に配設される直管11、或いはT字管若しくは管軸に沿って一部に曲部を有するエルボ管2または曲部を有するとともに、比較的短寸であるベンド管13等の金属製の流体管から構成されており、配管内部に形成される経路を、例えば上下水道やガスなどの流体が流下したり、或いは電線等が配線されたりするようになっている。
【0016】
特に、地中には既設管若しくは既設ケーブルなどの既設の埋設物3が埋設されていることが多く、該埋設物3を回避して配管路4を配設することが不可避であり、エルボ管2、直管11、ベンド管13を適宜組み合わせて、該管同士を管継手1、100を介して接続することにより所望の配管経路を構成できる。このように配管路4を構成する部材の種類は多岐にわたり、各々の部材を接続する管継手については、配管内部を流下する流体が外部に漏洩することなく密封することが必要とされる。
【0017】
また、エルボ管2、直管11及びベンド管13の夫々の両端には、一方の管体を他方の管体に挿入して接続するために一端に形成された大径をなす受口部5と、他端に形成された挿口部12と、を有しており、これら挿口部12及び受口部5は管継手1,100の一部を構成している。また、これら各流体管の表面(内周面、外周面、管端面)には防食塗料等が塗布され、防食用のコーティング層が形成されている。
【0018】
尚、管継手1及び各管継手100はほぼ同様に構成されているため、以下においては、エルボ管2の受口部5と直管11の挿口部12とからなる管継手1を管継手の一例として説明し、他の管継手100に関する説明は省略することとする。
【0019】
図2に示されるように、本実施例における管継手1は、受口部5を備えたエルボ管2と、受口部5の内周面に挿入される挿口部12を備えた直管11と、弾性を有し受口部5の内周面と受口部5に挿入される挿口部12の外周面12aとの間から流体が漏出することを防止するシール部材8と、挿口部12の管端面12cの腐食を防止する防食部材14と、受口部5から挿口部12の抜脱を規制する抜脱規制手段15と、から構成されている。
【0020】
管継手1の接続については後述するが、この挿口部12が受口部5に図2紙面右側に向かう挿入方向に挿入され、抜脱規制手段15で受口部5から挿口部12の抜脱を規制する。以下、図2紙面左側から右側に向かう方向を挿入方向として説明する。尚、後述する図5(b)においては、挿口部12が受口部5から抜け方向に移動していることが示されているが、図5(b)の紙面右側から左側に向かう方向を抜脱方向として説明する。
【0021】
図2に示されるように、挿口部12の内径(コーティング層12dの内径)は、エルボ管2の管部6の内径と略同径であり、挿口部12の外径は、受口部5の内径よりもわずかに小径であって、直管11の外周面12aの先端近傍には、面取り加工が施されている。また、挿口部12の先端には、挿口部12の外周面12aと挿口部12の内周面12bと、に連続する周方向に沿って形成された管端面12cを有している。尚、この管端面12cは後述する現場における切断により金属素地が露呈した面となっている。
【0022】
シール部材8と防食部材14が装着されるエルボ管2の受口部5の内部には、エルボ管2の開口端側に周方向に沿って設けられた凹部5aと、凹部5aよりも管奥側の内周面に周方向に沿って形成された収容溝5eと、収容溝5eよりも管奥側の内周面に周方向に沿って形成された収容溝5fと、が形成されている。尚、特に図示しないが、受口部5の内周面にも、挿口部12と同様にコーティング層が薄層に設けられている。
【0023】
収容溝5fは、管軸Cとほぼ平行をなす収容面5cと、この収容面5cの管奥側の端部から管軸Cに向けて縮径するように連設され、挿口部12の管端面12cに対向する奥端面5dと、から構成されている。
【0024】
シール部材8は、受口部5の内周面に周方向に沿って形成される凹部5aに嵌合される嵌合部8aと、収容溝5eに配置され、受口部5の内周面と受口部5に挿入される挿口部12の外周面12aとの間隙を水密的に密封するバルブ部8cと、を有しており、外径が受口部5の内径と略同径のリング体からなり、弾性を有するゴム体からなる。
【0025】
シール部材8は、受口部5の内周面に形成される凹部5aに嵌合部8aが周方向に亘って嵌合されている。また、バルブ部8cは、該嵌合された状態において、エルボ管2の管軸C方向に向かって、収容溝5eに位置しており、図2に示されるように、直管11の挿口部12が未だ挿入されずに、バルブ部8cの圧縮がされない状態において、断面形状が略円形に形成されているとともに、嵌合部8aと比較して、内周面が管軸Cに向かって膨出している。
【0026】
抜脱規制手段15は、受口部5の外端近傍の外周面に周方向に所定間隔おきに複数形成されたボルト孔5bと、エルボ管2の外方から管軸Cに対し直交する方向に向かってボルト孔5bに螺挿された押し込みボルト9と、押し込みボルト9の先方であって、受口部5の外端近傍の内周面に周方向に所定間隔おきに複数(本実施例では60度間隔おきに6個)形成された円弧溝7と、該円弧溝7内に配置され、先端に尖鋭刃10aを有している複数の固定つめ10と、から構成されており、この抜脱規制手段15により、受口部5と挿口部12とが接続され、受口部5からの挿口部12の抜脱を規制できるようになっている。
【0027】
また、図2に示されるように、挿口部12が挿入されない状態においては、後述する挿口部12の挿入の邪魔にならないように、固定つめ10の尖鋭刃10aが、受口部5の内周面よりも外方に退避している。尚、押し込みボルト9は、必ずしも管軸に対し直交する方向に螺挿されるに限られず、管軸に対し平行若しくは斜方向に螺挿されるものであってもよい。
【0028】
防食部材14は、図2、図3(a)〜(c)に示されるように、環状に形成された弾性を有するゴム体からなり、図3(d)に示されるように、断面視略コ字形状に形成されている。
【0029】
この防食部材14における挿口部12の管端面12cが当接する当接部には、図2、図3(a)〜(d)に示すように、後述する挿口部12の管端面12cに押圧される膨出部17が形成されている。この膨出部17は、周方向の中央部が外周側及び内周側よりも挿口部12側(図3(d)の紙面左側)に向けて膨出するように形成されており、該膨出部17の表面は、後述する挿口部12が挿入された状態において挿口部12の管端面12cと当接する湾曲状の当接面17aとされている(図4(a)参照)。
【0030】
また、防食部材14の膨出部17の外周側には、図2、図3(a)〜(d)に示されるように、当接面17aの外周側端部より挿口部12側に向けて突出するガイド部16が周方向に沿って形成されている。また、このガイド部16の膨出部17側の周面、すなわちガイド部16の内周面は、当接面17aの外周端縁部から連設され、挿口部12側に向けて延びるガイド面16aとされており、このガイド面16aは、挿口部12が受口部5に挿入される際において、挿口部12の外周面12aを軸心に向けてガイドするために、先端から当接面17aに向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されている。
【0031】
防食部材14の内周側には、当接面17aの内周側端部より挿口部12側に向けて突出する内周当接部18が周方向に沿って形成されている。また、この内周当接部18の膨出部17側の周面、すなわち内周当接部18の外周面は、当接面17aの外周端縁部から連設され、挿口部12側に向けて延びる内周当接面18aとされている。
【0032】
この内周当接面18aは、後述するように、挿口部12が受口部5に挿入される際、受口を広げることにより挿口部12が受口部5に挿入されやすいように、挿口部12の内周面12bに対し漸次離間するテーパ面状に形成されているとともに(図4(a)参照)、防食部材14が管端面12cを被覆している状態において、挿口部12の内周面12bに密着するように構成されている。
【0033】
また、防食部材14の背面19は、奥端面5dと略平行に形成されており、後述するように挿口部12が挿入された状態において奥端面5dに密接して、流体の漏洩を防止可能になっている。
【0034】
防食部材14の外径は、受口部5の収容面5cにおける内径よりも若干大径に形成されており、図2に示されるように受口部5の収容溝5f内に装着されて収容された状態において、防食部材14の外周面20が受口部5の収容面5cに密接するようになっている。
【0035】
次に、本発明の管継手1の接続について説明する。
【0036】
図2に示されるように、先ず、エルボ管2の管端開口から受口部5内に防食部材14を挿入し、奥端面5dに背面19が当接するまで押し込んで収容溝5f内に装着した後、エルボ管2の管端開口から受口部5内にシール部材8を挿入し、受口部5の凹部5aに嵌合部8aを嵌合させて装着する。尚、受口部5内への防食部材14の装着作業若しくはシール部材8の装着作業は、エルボ管2の出荷段階において予め完了させる場合もあるし、管継手1の接続現場において実施する場合もある。
【0037】
次いで、エルボ管2の管端開口内に直管11の挿口部12が挿入されると、挿口部12の外周面12aが受口部5の内周面に嵌合されたシール部材8の嵌合部8aと摺接しつつ、受口部5に挿入され、バルブ部8cを挿口部12の外周面12aと受口部5の内周面とにより周方向に沿って形成される収容溝5eで圧縮する。これにより、受口部5の内周面と挿口部12の外周面12aとの間隙が密封され、受口部5の内周面と挿口部12の外周面12aとの間からの流体の漏出が防止される。
【0038】
さらに挿口部12が挿入され、挿口部12の先端がガイド部16の先端に到達すると、該挿口部12の開口端部における外周面12aがガイド面16aに当接した後、該ガイド面16aに摺接案内されながら管奥側に向けて挿入される。そして、このガイド面16aは先端から当接面17aに向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されていることで、挿口部12の軸心が受口部5の軸心に対してずれた状態で挿入されても、挿口部12の外周面12aがガイド面16aにより軸心に向けて摺接案内される。これにより、図4(a)に示されるように、管端面12cが膨出部17の当接面17aの頂部と当接した当接位置aにおいて、管端面12cの略全域がガイド面16aと内周当接面18aとの間における当接面17aと対向するように配置されるため、管端面12cが当接面17aと周方向に亘って確実に当接する。尚、ガイド部のガイド面は、防食部材の周方向に沿って形成されていればよく、本実施例のようにガイド面16aが防食部材14の全周に亘って形成されていてもよいし、あるいはガイド面が、防食部材の周方向の一部に、若しくは周方向に所定間隔に形成されていてもよい。
【0039】
また、内周当接部18の内周当接面18aは、上記したように当接面17a側から内周当接面18aの先端に向けて漸次拡径するテーパ面状に形成され、内周当接部18の受口が広がっているため、管端面12cが内周当接部18の先端に当接することがなく挿口部12が挿入され、該管端面12cにより内周当接部18が押し潰されることがない。尚、当接位置aにおいて、膨出部17は未だ管端面12cにより押し潰されてはいない。
【0040】
次いで、図4(a)に示される当接位置aから更に挿口部12が管奥側に挿入されると、防食部材14は、挿口部12の管端面12cと受口部5の奥端面5dとの間で管軸方向に挟圧された状態となり、管端面12cにより膨出部17が押圧されて押し潰され、つまり膨出部17の弾性変形が開始される。
【0041】
そして、図4(b)に示されるように、膨出部17が完全に押し潰された位置、すなわち被覆開始位置bに管端面12cが到達すると、管端面12cにより押圧された膨出部17の当接面17aが管端面12cの略全域にわたり密着するため、該管端面12c略全域が当接面17aにより被覆される被覆状態となる。
【0042】
また、図4(b)に示されるように、膨出部17が奥端面5d側に向けて押し潰されて弾性変形することで、防食部材14の内周側が管軸Cに向けて押し出され、この変形作用により内周当接部18が挿口部12の内周面12bに向けて移動して、内周当接面18aが挿口部12の内周面12bと当接する。
【0043】
そして本実施例では、図5(a)に示されるように、挿口部12は、管端面12cが前記被覆開始位置bから更に被覆幅寸法L1分管奥側の挿入完了位置cまで受口部5に挿入された時点で挿入作業が終了されるようになっている。つまり、被覆開始位置bからさらに深く挿口部12を挿入し、防食部材14を強く押し潰すことにより、該防食部材14の弾性復帰力が高まり、当接面17aによる管端面12cの水密性が向上する。さらに、内周当接面18aが挿口部12の内周面12bに向けて強く押し付けられるため、内周当接面18aによる内周面12bの水密性が向上する。
【0044】
尚、ガイド部16については、挿口部12の外周面12a及び受口部5の収容面5cとの間における収容溝5fで弾性変形することにより、その圧縮に応じて挿口部12の外周面12aと受口部5の収容面5cとの水密性が増加するとともに、挿口部12の軸心の受口部5の軸心に対する位置ずれが規制される。
【0045】
そして管端面12cが前記挿入完了位置cに到達した状態において、この状態を保持したまま、押し込みボルト9を円弧溝7の外側からねじ込み、固定つめ10を挿口部12の外周面12aに押し付け、押し込みボルト9をさらに螺入し、固定つめ10の尖鋭刃10aを管軸Cに向けて押圧して挿口部12の外周面12aに食い込ませ、受口部5と挿口部12とを接続する。これにより、受口部5からの挿口部12の抜脱が規制された規制状態となる。
【0046】
つまり、受口部5に対する挿口部12の抜脱方向への移動を規制した状態で保持する固定つめ10の保持力は、防食部材14の弾性復帰力よりも大とされている。
【0047】
従って、管端面12cが、前記被覆開始位置bから前記挿入完了位置c間に位置している状態においては、常に膨出部17の当接面17aにより管端面12cが略全域にわたり密着されている被覆状態であるため、抜脱規制手段15により受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されることで、防食部材14により管端面12cが被覆される被覆状態が維持される。
【0048】
一方、図5(a)に示す抜脱規制状態において、例えば地震等の不測の外力が生じて、挿口部12が受口部5に対して抜脱方向(図5(a)中左方向)に移動しようとする力が働いた場合、挿口部12の管端面12cは、図5(a)に示す挿入完了位置cから図5(b)に示す抜脱規制位置dまでの規制幅寸法L2分の移動が許容されている。
【0049】
具体的には、固定つめ10は、円弧溝7内で押し込みボルト9の底面を支点として先端側が管軸方向に傾動可能とされており、固定つめ10の先端に形成された尖鋭刃10aが抜脱方向に移動許容幅寸法L3分移動することで、尖鋭刃10aが管軸Cに向かって挿口部12の外周面12aに食い込み、固定つめ10の管端開口側の側面が円弧溝7の内側面に当接することで、挿口部12の受口部5からの抜脱が規制されるようになっている。
【0050】
このように、図5(b)に示されるように、固定つめ10の移動許容幅寸法L3分、受口部5と挿口部12との相対移動が許容されているため、管端面12cは、図5(a)に示す挿入完了位置cと図5(b)に示す抜脱規制位置dとの間で相対移動可能であり、移動許容幅寸法L3と挿入完了位置cと抜脱規制位置dとの間の規制幅寸法L2とは同寸である(L2=L3)。すなわち、本実施例においては、管端面12cが図5(a)に示す挿入完了位置cと図5(b)に示す抜脱規制位置dとの間に位置している状態において、抜脱規制手段15により受口部5から挿口部12の抜脱が規制されている抜脱規制状態とされている。
【0051】
また、管端面12cが図5(a)に示す挿入完了位置cに位置している状態において、管端面12cが抜脱方向に規制幅寸法L2分抜脱方向に移動して抜脱規制位置dに位置したとしても、この抜脱規制位置dは、防食部材14により管端面12cが略全域にわたり密着する被覆状態が維持される被覆開始位置bと挿入完了位置cとの間に位置するため、防食部材14の弾性復帰力により管端面12cに追従して防食部材14が管端面12cに密着した状態が維持される。
【0052】
このように、相対移動が許容される規制幅寸法L2(L3)よりも、前記被覆状態が維持される被覆幅寸法L1が長寸となるように設定されていれば、挿口部12と受口部5とが抜脱規制状態において所定幅の相対移動が許容されるようになっている場合でも、防食部材14により管端面12cが略全域にわたり密着して被覆される被覆状態が維持されるため、本実施例にようにL1>L3の条件を満たすような管継手を適用することが好ましい。
【0053】
以上に説明したように、本実施例の管継手1においては、抜脱規制手段15により受口部5からの挿口部12の抜脱が規制され、この受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されている状態において、防食部材14は弾性変形した状態で管端面12cを被覆しており、その弾性復帰力により管端面12cを押圧するため、防食部材14により管端面12cのシール性を常に維持することができる。また、不測の外力が生じた場合、受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されている状態において、挿口部12が受口部5に対して若干移動しても、管端面12cは、弾性復帰力により管端面12cに追従して密着する防食部材14により、常にシールされる。
【0054】
また、本実施例では、防食部材14における挿口部12の管端面12cとの当接面17aは、挿口部12側に向けて膨出しているため、管端面12cにより防食部材14が潰れやすくなり、挿口部12の受口部5への挿入が容易になるばかりか、管端面12cが当接面17aを押圧する際に、管端面12cと当接面17aとの間の空気が外に押し出されていくため、管端面12cと当接面17aとの密着性の低下が防止される。
【0055】
また、本実施例では、防食部材14には、挿口部12の管端面12cとの当接面17aにおける外周側端部から連続して前記挿口部側に向けて延びるガイド面16aが周方向に沿って形成されており、ガイド面16aは、当接面17aに向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されている。これにより、挿口部12を受口部5に挿入する際において、挿口部12が軸心からずれることがあっても、挿口部12の外周面12aがガイド面16aにより軸心にむけて摺接案内されることにより管端面12cが当接面17aに対して位置ずれなく当接するため、管端面12cが当接面17aに当接した際に該当接面17aに対する管端面12cの位置ずれを補正するといった工程が不要であり、挿口部12を受口部5に挿入する工程だけで当接面17aが管端面12cを確実に被覆することができる。
【0056】
また、本実施例の防食部材14には、挿口部12の管端面12cとの当接面17aおける内周側端部から連続して挿口部12側に向けて延びる内周当接面18aが周方向に沿って形成されており、内周当接面18aは、防食部材14が管端面12cを被覆している状態において挿口部12の内周面12bに密着している。すなわち、膨出部17が管端面12cにより弾性変形することで、内周当接部18が挿口部12の内周面12bに向けて移動して、内周当接面18aが挿口部12の内周面12bと当接するため、管端面12cが被覆されるだけでなく、挿口部12の内周面12bも被覆され、管端面12cと当接面17aとの間への流体の進入をより確実に阻止できる。
【0057】
また、本実施例では、内周当接面18aは、内周当接面18aの先端に向けて挿口部12の内周面12bに対し漸次離間するテーパ面状に形成されており、防食部材14が受口部5に挿入された挿口部12の管端面12cと受口部5の奥端面5dとの間で押圧されて弾性変形することにより、挿口部12の内周面12bに当接するように構成されているため、挿口部12が受口部5に挿入される際、受口が広がっているため、挿入された管端面12cにより内周当接部18が押し潰されることなく挿口部12を受口部5に挿入しやすくなるとともに、管端面12cの押圧による弾性変形によって挿口部12の内周面12bに当接されるため、内周当接面18aを挿口部12の内周面12bに対して押圧するための部材等を別途設けることなく、防食部材14の弾性変形を利用するだけで内周当接面18aにより挿口部12の内周面12bを確実に被覆することができる。
【0058】
また、実施例1における防食部材14のガイド部16の先端は、図4(a)に示されるように、内周当接部18の先端よりも挿口部12側に向けて突出している方が好ましい。このようにすることで、挿口部12が受口部5に挿入される際、挿口部12の外周面12aが内周当接部18の先端よりも先にガイド面16aにより摺接案内されて位置ずれが補正されるため、管端面12cにより内周当接部18を押し潰すことなく、挿口部12を受口部5に挿入することができる。
【0059】
また、実施例1における内周当接部18は、先端に向けて漸次肉薄となるように形成されているため、膨出部17が管端面12c押圧され弾性変形作用により挿口部12の内周面12bに向けて変形しやすくなるばかりか、内周面12bに密接した状態において、挿口部12から受口部5方向へ移動する流体による抵抗がかかりにくくなるので、内周当接部18の先端が流体により捲れにくくなる。
【実施例2】
【0060】
次に、実施例2に係る管継手につき図面に基づいて説明すると、図6(a)は、実施例2の管継手における挿口部の管端面が未だ防食部材により被覆されていない状態を示す断面図であり、(b)は、挿口部が図6(a)の状態から挿入方向に挿入された状態を示す断面図である。図7(a)は、挿口部が図6(b)の状態からさらに挿入方向に挿入された後、挿口部の抜脱が規制された状態を示す断面図、(b)は、挿口部が図6(a)の状態から抜脱方向に移動した状態を示す断面図である。
【0061】
実施例2に係る管継手は、防食部材の形状のみが異なっているだけで、他の構成は実施例1で示した管継手1の形態とほぼ同様であるため、同様の構成部位には同一の符号を付すことにより、ここでの詳細な説明は省略することとする。
【0062】
図6(a)に示されるように、実施例2としての防食部材24は、環状に形成された弾性を有するゴム体からなり断面視L字形状に形成されており、管端面12cに対向する位置には、管端面12cとほぼ平行をなす平坦状の当接面27が形成されている。
【0063】
また当接面27の外周側には、当接面27の外周側端部より挿口部12側に向けて突出するガイド部26が周方向に沿って形成されており、該ガイド部26の内周面は、当接面27の外周端縁部から連設され、挿口部12側に向けて延びるガイド面26aとされており、このガイド面26aは、挿口部12が受口部5に挿入される際において、挿口部12の外周面12aを軸心に向けてガイドするために、先端から当接面27に向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されている。
【0064】
また、防食部材24の背面29は、奥端面5dと略平行に形成されており、後述するように挿口部12が挿入された状態において奥端面5dに密接するようになっている。
【0065】
次に、実施例2の管継手1の接続について説明する。尚、実施例2の管継手1の接続工程において、実施例1の管継手1の接続工程と同一工程で重複する工程を省略して説明する。
【0066】
図6(a)に示されるように、先ず、エルボ管2の管端開口から受口部5内に防食部材24、次いでシール部材8を挿入して配置した後、挿口部12を受口部5内に挿入する。
【0067】
そして、挿口部12の先端がガイド部26の先端に到達すると、該挿口部12の開口端部における外周面12aがガイド面26aに当接した後、該ガイド面26aに摺接案内されながら管奥側に向けて挿入され、図6(b)に示されるように、管端面12cが当接面27と当接した被覆開始位置eにおいて、該管端面12cが当接面27に確実に当接する。
【0068】
ここで、当接面27は平坦状に形成されているため、管端面12cが当接面27に当接した段階で管端面12cが略全域にわたり当接面27により被覆される。
【0069】
次いで、被覆開始位置eから更に挿口部12が管奥側に挿入されると、防食部材24は、管端面12cと受口部5の奥端面5dとの間で管軸方向に挟圧された状態となり、管端面12cにより当接面27が押圧されて防食部材24の弾性変形が開始され、これにより主に防食部材24の内周面28側が管軸Cに向けて押し出される。このように防食部材24が押し潰されて弾性変形が開始された状態において、管端面12cに対して防食部材24の弾性復帰力が作用することになるため、管端面12cが当接面27により被覆される被覆状態となる。
【0070】
そして、本実施例においては、図7(a)に示されるように、挿口部12は、管端面12cが前記被覆開始位置eから更に被覆幅寸法L4分僅かに管奥側の挿入完了位置fまで受口部5に挿入された時点で挿入作業が終了される。つまり、被覆開始位置eからL4分挿入方向に挿口部12を挿入し、防食部材24を押し潰すことにより、当接面27による管端面12cの水密性が維持される。さらに、防食部材24の内周面28側が管軸C方向に押し出されて膨出することで、挿口部12の内周面12bにおける当接面27の近傍位置が、膨出した防食部材24の内周面28側により若干被覆され、水密状態になる。
【0071】
そして、管端面12cが前記挿入完了位置fに到達した状態において、実施例1と同様に抜脱規制手段15により挿口部12と受口部5とを接続する。これにより、受口部5からの挿口部12の抜脱が規制された規制状態となり、管端面12cが、前記被覆開始位置eから前記挿入完了位置f間に位置している状態においては、当接面27により管端面12cが略全域にわたり密着されている被覆状態であるため、抜脱規制手段15により受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されることで、防食部材24により管端面12cが被覆される被覆状態が維持される。
【0072】
一方、図7(a)に示す抜脱規制状態において、例えば地震等の不測の外力が生じて、挿口部12が受口部5に対して抜脱方向(図7(a)中左方向)に移動しようとする力が働いた場合、管端面12cは、図7(a)に示す挿入完了位置fから図7(b)に示す抜脱規制位置gまでの移動が実施例1と同様、抜脱規制手段15により許容されている。
【0073】
すなわち、図7(b)に示されるように、固定つめ10の移動許容幅寸法L6分、受口部5と挿口部12との相対移動が許容されているため、管端面12cは、図7(a)に示す挿入完了位置fと図7(b)に示す抜脱規制位置gとの間で相対移動可能であり、移動許容幅寸法L6と挿入完了位置fと抜脱規制位置gとの間の規制幅寸法L5は同寸である(L5=L6)。すなわち、本実施例においては、管端面12cが図7(a)に示す挿入完了位置fと図7(b)に示す抜脱規制位置gとの間に位置している状態において、抜脱規制手段15により受口部5から挿口部12の抜脱が規制されている抜脱規制状態とされている。
【0074】
また、管端面12cが図7(a)に示す挿入完了位置fに位置している状態において、管端面12cが抜脱方向に規制幅寸法L5分抜脱方向に移動して抜脱規制位置gに位置したとしても、この抜脱規制位置gは、防食部材24により管端面12cが略全域にわたり密着する被覆状態が維持される被覆開始位置eと挿入完了位置fとの間に位置するため、防食部材24の弾性復帰力により管端面12cに追従して防食部材24が管端面12cに密着した状態が維持される。
【0075】
このように、相対移動が許容される規制幅寸法L5(L6)よりも、前記被覆状態が維持される被覆幅寸法L4が長寸となるように設定されていれば、挿口部12と受口部5とが抜脱規制状態において所定幅の相対移動が許容されるようになっている場合でも、防食部材24により管端面12cが略全域にわたり密着して被覆される被覆状態が維持されるため、本実施例にようにL4>L6の条件を満たすような管継手を適用することが好ましい。
【0076】
以上に説明したように、実施例2における管継手1においては、防食部材24の当接面27が平坦状に形成されているため、挿口部12が受口部5に挿入される際、挿口部12の管端面12cが当接した後、管端面12cを挿入方向に僅かに挿入するだけで、管端面12cに対して防食部材24の弾性復帰力が作用して、管端面12c略全域が当接面27により被覆されるため、管端面12cが防食部材24に当接した位置から挿入完了位置fまでの寸法を小寸にすることができ、挿口部12の挿入が容易になる。
【実施例3】
【0077】
次に、実施例3に係る管継手につき図面に基づいて説明すると、図8(a)は、実施例3の管継手における挿口部の管端面が未だ防食部材により被覆されていない状態を示す断面図であり、(b)は、挿口部が図8(a)の状態から挿入方向に挿入された状態を示す断面図、(c)は、挿口部が図8(b)の状態から更に挿入方向に挿入された後、挿口部の抜脱が規制された状態を示す断面図である。なお、上記実施形態と同一構成で重複する構成を省略する。
【0078】
実施例3に係る管継手は、防食部材の形状のみが異なっているだけで、他の構成は実施例1,2で示した管継手1の形態とほぼ同様であるため、同様の構成部位には同一の符号を付すことにより、ここでの詳細な説明は省略することとする。
【0079】
図8(a)に示されるように、実施例3の防食部材34は、環状に形成された弾性を有するゴム体から形成されている。
【0080】
防食部材34は、受口部5の奥端面5d側に周方向に沿って形成される本体部35における管端面12cとの当接面側に、径方向に向けて複数(本実施例では5つ)形成される櫛部37v、37w、37x、37y、37zからなる櫛状部37が形成されている。
【0081】
詳しくは、各櫛部37v、37w、37x、37y、37zは、本体部35における管端面12cとの当接面側に、空隙としての複数の所定深さL7の凹溝Kを環状に形成することにより、それぞれ管軸Cからの径が異なるとともに、径方向に互いに離間して配置される環状の櫛部として形成されている。また、各櫛部37v、37w、37x、37y、37zのうち内側の櫛部37w、37x、37y端面は、後述する挿口部12の管端面12cと当接する当接面37aとされている。すなわち、防食部材34における櫛状部37は、複数の凹溝Kにより空隙が形成されていることで、構造的に弾性復帰力を抑えているため、管端面12cにより押し潰れやすくなっている。
【0082】
また、防食部材34の背面39は、奥端面5dと略平行に形成されており、後述するように挿口部12が挿入された状態において奥端面5dに密接するようになっている。
【0083】
次に、実施例3の管継手1の接続について説明する。尚、実施例3の管継手1の接続工程において実施例1の管継手1の接続工程と同一工程で重複する工程を省略して説明する。
【0084】
さらに挿口部12が挿入され、図8(a)に示されるように、管端面12cが膨出部17の当接面17aと当接した当接位置hにおいて、管端面12cが当接面17aと当接する。
【0085】
次いで、図8(a)に示される当接位置hから更に挿口部12が管奥側に挿入されると、櫛部37v、37w、37x、37y、37zのうち管端面12cと直接当接する内側の櫛部37w、37x、37yは、挿口部12の管端面12cと受口部5の奥端面5dとの間で管軸方向に挟圧された状態となり、図8(b)に示されるように管端面12cにより押し潰されて弾性変形する。
【0086】
さらに、櫛部37v、37wは、収容溝5fに向かって押し出され、櫛部37y、37zは、挿口部12の内周面12bに向かって押し出される。すなわち、防食部材34における櫛状部37が管端面12cにより押し潰されて弾性変形する。
【0087】
そして、本実施例においては、該当接位置hから所定深さL7分管奥側の被覆開始位置iに管端面12cが到達すると、中央の櫛部37xのみが、櫛部37w、37yの間で完全に管端面12cにより押し潰され、管端面12cの略全域にわたり、櫛部37w、37y間における凹溝Kの内面が密着して被覆される。つまり、櫛部37w、37x、37yの先端の当接面37aではなく、防食部材34における凹溝Kの底部付近が管端面12cと当接して該管端面12cを被覆する。尚、外周側の櫛部37v、37wは外周面12aに密接し、内周側の櫛部37y、37zは内周面に密接されることで、管端面12cから内周面12b側にかけて広範囲にわたり水密状態となる。
【0088】
そして本実施例では、図8(c)に示されるように、挿口部12は、管端面12cが前記被覆開始位置iから更に被覆幅寸法L8分管奥側の挿入完了位置mまで受口部5に挿入された時点で挿入作業が終了されるようになっている。つまり、被覆開始位置iからさらに深く挿口部12を挿入し、防食部材34を強く押し潰すことにより、該防食部材34の弾性復帰力が高まり、防食部材34と管端面12cの水密性が向上する。さらに櫛部37zは内周面12bに向けて強く押し付けられるため、櫛部37zにおける内周面12bの水密性が向上する。
【0089】
尚、櫛部37v、37wについては、挿口部12の外周面12a及び受口部5の収容面5cとの間における収容溝5fで弾性変形することにより、その圧縮に応じて挿口部12の外周面12aと受口部5の収容面5cとの水密性が増加するとともに、挿口部12の軸心の受口部5の軸心に対する位置ずれが規制される。
【0090】
そして、抜脱規制手段15により、挿口部12の受口部5からの抜脱を規制することにより、防食部材34における櫛状部37が弾性変形した状態で管端面12cを被覆し、その弾性復帰力により常に管端面12cに対して押圧するため、防食部材34により管端面12cを確実に被覆する。
【0091】
従って、管端面12cが、前記被覆開始位置iから前記挿入完了位置m間に位置している状態においては、常に防食部材34により管端面12cが略全域にわたり密着されている被覆状態であるため、抜脱規制手段15により受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されることで、防食部材34により管端面12cが被覆される被覆状態が維持される。
【0092】
以上に説明したように、実施例3における管継手においては、防食部材34における挿口部12の管端面12cとの当接面37aに凹溝Kが内部に向けて形成されていることにより、管端面12cにより櫛状部37が押し潰されやすくなるため、挿口部12を容易に挿入することできる。また、防食部材34の材質硬度に関わらず、所定深さ寸法L7の凹溝Kを形成すれば、その分挿口部12の挿入深さを任意に変更することが可能となる。
【0093】
また、防食部材34における管端面12cとの当接面側に櫛状部37が形成されているため、受口部5からの挿口部12の抜脱が規制されている状態において、管端面12cが防食部材34に被覆されるだけでなく、櫛状部37は挿口部12の内周面12bに密着するように弾性変形して内周面12bも被覆されるため、管端面12cへの流体の進入をより確実に阻止できる。
【0094】
また、本実施例3においては、防食部材34における当接面37a近傍に、外部に連通する凹溝K(空隙)を当接面側から内向きに形成して弾性復帰力を抑えて櫛状部37を形成することにより、挿口部12が受口部5に挿入される際、防食部材34が押し潰れやすくしていたが、これに限らず、例えば、防食部材34内部における当接面37a近傍に、外部に連通しない空隙を形成しても、同様の作用・効果を得ることができる。
【0095】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0096】
例えば、前記実施例1〜3においては、防食部材14,24,34とシール部材8とが別々に設けられ、かつ、互いに管軸方向に所定距離離間した状態で配置されていたため、挿口部12が挿入した状態において、それぞれ別個に弾性変形するとともに、それぞれ弾性変形した部分が互いに干渉し合うことがなく、影響を及ぼすことがない。つまり、弾性変形した防食部材14,24,34がシール部材8に干渉して水密性に支障をきたしたり、逆に弾性変形したシール部材8が防食部材14,24,34に干渉して、管端面12cの被覆に支障をきたすようなことがない。
【0097】
また、シール部材8には、挿口部12の外周面12aと受口部5の内周面との間からの流体の漏出を防ぐに適した弾性を有する弾性材を選択し、防食部材14には、管端面12cの防食に適した弾性を有する弾性材を選択することができるため、管端面12cの腐食及び挿口部12の外周面12aと受口部5の内周面との間からの流体の漏出を効率よく防止することができる。
【0098】
また、シール部材8と防食部材14,24,34とを一体的に形成して、挿口部12の外周面12aと受口部5の内周面との間からの流体の漏出を防止するとともに、挿口部12の管端面12cの腐食を防止することができる防食部材としてもよく、このような場合、受口部5に対する部材の装着が1回で済むため、現場作業が容易になる。
【0099】
また、前記実施例1では、径方向の中央部が両端部よりも挿口部12側に膨出する環状の膨出部が形成されていたが、例えば膨出部は必ずしも環状に形成されていなくてもよく、管端面との当接面から管端面に向けて複数の膨出部が周方向に沿って突設されていてもよい。
【0100】
また、前記実施例1〜3では、防食部材14,24,34として適宜弾性変形力を有するゴム材からなるゴム体が適用されていたが、押し潰された管端面12cに対して弾性復帰力により被覆して水密状態を形成しうるものであれば、材質はゴムに限定されるものではなく、種々の弾性材を適用可能である。
【0101】
また、前記実施例1〜3では、防食部材14,24,34全体が同一素材にて形成されていたが、例えば管端面との当接面近傍のみを、他の部位と比較して軟質なゴム材にて形成して潰れやすくしてもよいし、あるいは管端面との当接面近傍のみを、他の部位と比較して高反発性を有するゴム材にて形成して弾性復帰力を向上させるようにしてもよい。
【0102】
また、前記実施例3では、凹溝Kが環状に形成されて櫛状部37が径方向に複数形成されていたが、凹溝により弾性復帰力を抑えることができるものであれば、例えば径方向を向く凹溝を周方向に所定間隔おきに複数形成し、これにより複数の径方向を向く櫛状部を形成してもよい。
【0103】
また、前記実施例における抜脱規制手段は、ボルト孔5bと、固定爪10を押し込む押し込みボルト9と、固定爪10と、固定爪10が収容される円弧溝7と、から構成されていたが、受口部5に挿入された挿口部12の該受口部5からの抜脱を規制するものであれば、上記抜脱規制手段に限定されるものではなく、いわゆる押し輪等の受口部5とは別個に設けられたもの等、他の抜脱規制手段であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施例1における管継手の配設状況を示す概略図である。
【図2】受口部と挿口部とを示す断面図である。
【図3】(a)は、防食部材を示す正面図であり、(b)は、防食部材を示す右側面図であり、(c)は防食部材を示す左側面図であり、(d)は、図3(c)のA−A断面図である。
【図4】(a)は、挿口部の管端面が未だ防食部材により被覆されていない状態を示す断面図であり、(b)は、挿口部が図4(a)の状態から挿入方向に挿入された状態を示す断面図である。
【図5】(a)は、挿口部が図4(b)の状態から更に挿入方向に挿入された後、挿口部の抜脱が規制された状態を示す断面図、(b)は、挿口部が図5(a)の状態から抜脱方向に移動した状態を示す断面図である。
【図6】(a)は、実施例2の管継手における挿口部の管端面が未だ防食部材により被覆されていない状態を示す断面図であり、(b)は、挿口部が図6(a)の状態から挿入方向に挿入された状態を示す断面図である。
【図7】(a)は、挿口部が図6(b)の状態からさらに挿入方向に挿入された後、挿口部の抜脱が規制された状態を示す断面図、(b)は、挿口部が図6(a)の状態から抜脱方向に移動した状態を示す断面図である。
【図8】(a)は、実施例3の管継手における挿口部の管端面が未だ防食部材により被覆されていない状態を示す断面図であり、(b)は、挿口部が図8(a)の状態から挿入方向に挿入された状態を示す断面図、(c)は、挿口部が図8(b)の状態から更に挿入方向に挿入された後、挿口部の抜脱が規制された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0105】
1 管継手
5 受口部
5d 奥端面
12 挿口部
12b 内周面
12c 管端面
14 防食部材
15 抜脱規制手段
16 ガイド部
16a ガイド面
17 膨出部
17a 当接面
18 内周当接部
18a 内周当接面
K 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の流体管を構成する挿口部と、
前記挿口部が挿入され、内周面に環状の奥端面を有する他方の流体管を構成する受口部と、
前記受口部に挿入された挿口部の該受口部からの抜脱を規制する抜脱規制手段と、
環状に形成される弾性材から成り、前記管端面と前記奥端面との間に配置された防食部材と、
を備え、
前記一方の流体管と前記他方の流体管とを水密状態で接続する管継手であって、
前記防食部材は、前記抜脱規制手段により前記受口部からの前記挿口部の抜脱が規制された状態において、前記受口部に挿入された前記挿口部の管端面と前記受口部の奥端面との間で押圧されて弾性変形することにより前記管端面を被覆していることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記防食部材における前記挿口部の管端面との当接面は、前記挿口部側に向けて膨出していることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記防食部材における前記挿口部の管端面との当接面近傍に空隙が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の管継手。
【請求項4】
前記防食部材には、前記挿口部の管端面との当接面における外周側端部から連続して前記挿口部側に向けて延びるガイド面が周方向に沿って形成されており、
前記ガイド面は、前記当接面に向けて漸次縮径するテーパ面状に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の管継手。
【請求項5】
前記防食部材には、前記挿口部の管端面との当接面における内周側端部から連続して前記挿口部側に向けて延びる内周当接面が周方向に沿って形成されており、
前記内周当接面は、少なくとも前記防食部材が前記管端面を被覆している状態において前記挿口部の内周面に密着することを特徴としている請求項1ないし4のいずれかに記載の管継手。
【請求項6】
前記内周当接面は、該内周当接面の先端に向けて前記挿口部の内周面に対し漸次離間するテーパ面状に形成されており、
前記防食部材が前記受口部に挿入された前記挿口部の管端面と前記受口部の奥端面との間で押圧されて弾性変形することにより、前記挿口部の内周面に当接するように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−309252(P2008−309252A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157846(P2007−157846)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000105556)コスモ工機株式会社 (270)
【Fターム(参考)】