説明

管継手

【課題】排気管の微少な振動を吸収して接続部における軋み音の発生を防止する。
【解決手段】管継手100は、部分凹球面111を有する環状の第1座体110と、部分凹球面111に対向させて設けられた部分凸球面121を有する環状の第2座体120と、部分凹球面111と部分凸球面121に挟持された複数の剛体球150と、第1座体110と第2座体120の間に環装され、複数の剛体球150を一括保持し、かつ、部分凹球面111および部分凸球面121に対して、局所的に接触して両管201、202の接続部をシールする環装部材130と、第1座体110と第2座体120を管軸方向に互いに近づけるべく付勢する付勢機構140と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用エンジンからの排気通路等を形成する下流側排気管と上流側排気管とを相互に接続する継手構造に関し、より詳細には、一方の管と他方の管を相対的に揺動可能に接続する管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に車両用エンジンの排気系は、エンジンの排気ポートに接続された排気マニホールド(上流側排気管)とその下流側の排気管とが管継手を介して相互に接続されている。
【0003】
この種の管継手は、多くの場合球面継手の構造を有し、排気マニホールドと排気管との相対的な揺動を可能にすることにより、排気系を流れる排気脈動に起因する振動や、路面からの衝撃に起因する振動や、車両走行に伴う各種慣性力に起因する曲げ応力などを吸収し軽減する機能を担っている。従来のこの種の管継手は、一方の管の端部に固定された球面状の凹面を有する座体と、他方の管の端部に固定された球面状の凸面を有するシール体とを備え、座体の凹面とシール体の凸面とを互いに圧接させて摺動可能に接続することにより、両管が相対的に揺動できるようにしている(たとえば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−41932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の管継手では、シール体の凸面が座体の凹面に面接触した状態で圧接しているため、両面間の摩擦力の存在により、座体とシール体相互の十分な摺動性が得られない。このため、排気管の微少な振動を吸収することができなかった。また、この振動が異常音(軋み音)の発生原因になることがあった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、従来の球面継手構造の管継手では吸収することができなかったレベルの微少な振動を有効に吸収することができる新規な構造の管継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の管継手は、以下のように構成される。
【0007】
[構成1]
一方の管と他方の管を相対揺動可能に接続する管継手において、前記一方の管の外周面に固定され、前記他方の管側に拡径して開いた部分凹球面を有する環状の第1座体と、前記他方の管の外周面に固定され、前記一方の管側に縮径し、かつ、前記部分凹球面に対向させて設けられた部分凸球面を有する環状の第2座体と、前記部分凹球面と前記部分凸球面に挟持された同径の複数の剛体球と、前記部分凹球面及び前記部分凸球面に対して、局所的に接触しつつ前記第1座体と前記第2座体との間を全周に亘ってシールし、前記複数の剛体球をこれら剛体球相互の周方向の位置関係を一定に保ちつつ一括保持する環装部材と、前記第1座体と前記第2座体を管軸方向に互いに近づけるべく付勢する付勢機構と、を備えたことを特徴とする管継手。
【0008】
この管継手は、一方の管と他方の管とを軸方向に互いに接近させる向きに弾力的に付勢して連結するとともに、環装部材を第1座体の部分凹球面と第2座体の部分凸球面に同時に圧接させて、両管の接続部をシールする。そして、両座体と環装部材とが摺動可能であることにより両管の相対揺動を許容する。このとき環装部材は、第1座体の部分凹球面と第2座体の部分凸球面に対して局所的(線状又は帯状)に接触しつつ両座体間を全周に亘ってシールする。したがって、座体の部分凹球面がシール体とほぼ全面的に面接触している従来の管継手と比較して、より微少な振動を吸収することが可能となる。複数の剛体球が第1座体の部分凹球面と第2座体の部分凸球面間に挟まれた状態で且つ座体の周方向における剛体球相互の位置関係を一定に保った状態で配置されていることにより、部分凹球面と部分凸球面との相互の間隔が常に一定に保たれる。すなわち、部分凹球面と部分凸球面間の距離は、剛体球の直径に相当する距離に保たれる。これに0009座体と環装部材間の圧力(接触圧)が常に一定に保たれるので、環装部材による両座体間のシール性が常に安定に保たれる。両座体と剛体球間の摩擦力は両座体と環装部材間の摩擦力に比べて極小さいので、剛体球の存在によって両座体の相対揺動性が損なわれることはない。
【0009】
[構成2]
構成1を前提として、前記環装部材は、前記部分凸球面に対面する部分凹球面状の内周面と、前記部分凹球面に対面する部分凸球面状の外周面を有する球帯状のシール体であり、前記部分凹球面と全周に亘って接触する環状の突起と、前記部分凸球面と全周に亘って接触する環状の突起と、前記剛体球を収容した状態で保持するべく前記シール体をその内外周面間方向に貫通させて形成された貫通孔と、を備え、前記剛体球は、前記貫通孔に収容された状態で前記シール体の内外周面から部分的に突出していることを特徴とする管継手。
【0010】
この管継手は、環装部材である球帯状のシール体の内周面に形成された環状の突起を部分凸球面に接触させるとともに、そのシール体の外周面に形成された環状の突起を部分凹球面に接触させて、両座体間をシールする。部分凹球面と部分凸球面との相互の間隔は、シール体の貫通孔に保持されている剛体球によって常に一定に保たれる。
【0011】
[構成3]
構成1を前提として、前記環装部材は、前記複数の剛体球を一括保持する剛体球保持部と、前記剛体球保持部の形成位置よりも前記環装部材の小径側に位置する第1シール部と、前記剛体球保持部の形成位置よりも前記環装部材の大径側に位置する第2シール部と、を備えたことを特徴とする管継手。
【0012】
この管継手は、第1シール部と第2シール部によって両座体間の2カ所をシールする。1カ所のみをシールする場合と比較して、よりシール性を向上できる。
【0013】
[構成4]
前記環装部材は、外力による変形に対して反発復元性を有するよう成型された略円錐台形状又は略球帯形状の金属製一体成型品である管継手。
【0014】
環装部材が金属製一体成型品であることにより、管継手の部品点数を削減できる。
【0015】
[構成5]
構成1を前提として、前記環装部材は、前記部分凹球面に対面する環状の外側金属部材と前記部分凸球面に対面する環状の内側金属部材とを重ね合わるとともに小径側端部に曲げ代を残して互いに気密に接合してなり、前記部分凹球面及び前記部分凸球面に対して、局所的に接触しつつ前記第1座体と前記第2座体との間を全周に亘ってシールするべく形成された環状のシール部と、前記複数の剛体球をこれら剛体球相互の周方向の位置関係を一定に保ちつつ一括保持する剛体球保持部と、を備え、前記シール部は、前記外側金属部材の前記曲げ代の部分を曲げ加工することにより反発復元性を持たせて前記部分凹球面に全周に亘って接触させるとともに前記内側部材の前記曲げ代の部分を曲げ加工することにより反発復元性を持たせて前記部分凸球面に全周に亘って接触させて構成したことを特徴とする、管継手。
【0016】
この管継手は、環装部材のシール部が外側金属部材の曲げ代の部分と内側金属部材の曲げ代の部分とで構成される。そして、外側金属部材の曲げ代の部分を部分凹球面に全周に亘って接触させるとともに内側金属部材の曲げ代の部分を部分凸球面に全周に亘って接触させて、両座体間をシールする。外側金属部材の曲げ代の部分は部分凹球面に局所的に接触する。内側金属部材の曲げ代の部分は部分凸球面に局所的に接触する。そして、剛体球およびシール部が部分凹球面および部分凸球面に対して相対揺動方向に摺動可能であることにより、両管の相対揺動を許容する。環装部材は、外側金属部材と内側金属部材とをそれぞれ曲げ加工するとともに両部材を重ね合わせて曲げ代の部分を残して気密に接合してなるので製造が容易である。
【0017】
[構成6]
構成4を前提として、前記外側金属部材と前記内側金属部材のうちいずれか一方の部材は、前記曲げ代と前記曲げ代を縁取るようにして他方の部材と気密に接合された接合部のみからなる第1金属部材と、他方の部材と共に前記剛体球保持部を構成する第2金属部材とを有し、当該他方の部材には、前記シール部と前記剛体球保持部とを接続するブリッジ部を残して切欠孔が形成されていることを特徴とする管継手。
【0018】
この管継手は、シール部と剛体球保持部とを接続するブリッジ部を残して切欠孔が形成されていることにより、構成5の管継手と比較して、環装部材を軽量化するとともに剛体球保持部とシール部との接続部すなわちブリッジ部に柔軟性を持たせてシール部による両座体間のシール性を高めることができる。すなわち、剛体球保持部とシール部とが柔軟に接続されている(接続部の剛性が比較的小さい)ことにより両座体相互の揺動運動に対するシール部の追従性を向上させて、安定したシール性能を確保できる。
【0019】
[構成7]
構成1〜6のいずれかを前提として、前記環装部材の前記部分凹球面および前記部分凸球面との接触部には潤滑材層が形成されていることを特徴とする管継手。
【0020】
この管継手では、環装部材の両座体に対する摺動性を向上させて、より微少な振動を吸収することが可能となる。
【0021】
[構成8]
構成1〜7のいずれかを前提として、前記環装部材の前記第1座体又は前記第2座体に対する位置を保持するための保持機構を備えたことを特徴とする管継手。
【0022】
この管継手は、保持機構により、環装部材の第1座体又は第2座体に対する位置が保持されるので、その製作段階において、環装部材の位置決めを容易にすることができる。
【0023】
[構成9]
構成1〜8のいずれかを前提として、前記剛体球がシリコン窒化物製セラミックボールであることを特徴とする管継手。
【0024】
この管継手においては、剛体球がシリコン窒化物製セラミックボールであることにより、座体との摺動により生ずるマイクロピット等の問題を防止することができ、長期に亘って性能を維持することができる。
【0025】
[構成10]
構成1〜9のいずれかを前提として、前記剛体球を3個以上備えたことを特徴とする管継手。
【0026】
この管継手は、剛体球を3個以上備えたことにより、あらゆる方向への相対揺動を安定して許容することができる。
【発明の効果】
【0027】
上記の構成の管継手によれば、座体の凹球面のほぼ全面がシール体と接触している従来構造の管継手と比較して、微少な振動を吸収することが可能となり、異常音(軋み音)の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下本発明を、図面を参照しながら、実施形態に即して詳細に説明する。
【0029】
[第1形態例]
図1は本発明に係る管継手の第1形態例の要部断面図である。
【0030】
この管継手100は、上流側排気管(一方の管)201の端部に設けられた環状の第1座体110と、下流側排気管(他方の管)202の端部に設けられた環状の第2座体120と、両座体110、120間に挟持された複数(この例では4個とする。)の剛体球150と、両座体110、120間に環装された環装部材130と、両座体110、120を互いに近づける方向に弾力的に付勢する付勢機構140と、を備えている。排気管201、202はエンジンに接続された排気系の一部を構成するものである。また、本例では下流側排気管202の端部は拡径しており、上流側排気管201の端部を収容する形状となっている。
【0031】
第1座体110は、上流側排気管201の端部外周面に全周に亘って気密に密着させて溶接固定されている。第1座体110は、下流側排気管202側に拡径した部分凹球面111を有している。第1座体110は、部分凹球面111の開端部を外方に折り返すようにして形成されたフランジ部114を有している。フランジ部114は、周方向2カ所に設けられている。フランジ部114には、それぞれ一箇所にボルト固定孔113が形成されている。さらに第1座体は、第1座体から延設されたカバー部117を有している。カバー部117は、第1座体110と第2座体120とによって形成される空間内に、水、泥などの異物が侵入するのを防止するために設けられており、その端部は相対揺動を許容するための隙間を隔てて第2座体120の端部を全周に亘って覆うように設けられている。
【0032】
第2座体120は、下流側排気管202の端部外周面に全周に亘って気密に密着させて溶接固定されている。第2座体120は、部分凹球面111と対応して、上流側排気管201側に突出(縮径)した球面状の部分凸球面121を有している。第2座体120は、第1座体110のフランジ部114に対面して形成されたフランジ部124を有している。第2フランジ部124には、第1フランジ部114のボルト固定孔113と対応させてボルト挿通孔123が形成されている。
【0033】
剛体球150は、第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面121との間に挟まれた状態で且つ両座体110、120の周方向における4個の剛体球150相互の位置関係を一定に保った状態で配置されている。これら4個の剛体球150の直径は互いに等しい。
【0034】
環装部材130は、第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面121とに局所的に接触しつつ第1座体110と第2座体120との間を全周に亘ってシールする球帯状のシール体である。環装部材130は、部分凸球面121に対面する部分凹球面状の内周面130aと、部分凹球面111に対面する部分凸球面状の外周面130bと、小径側環状端面130cと、大径側環状端面130dとを有している。
【0035】
環装部材130は、小径側環状端面130cの近傍にて両座体110、120間をシールする第1シール部130Aと、大径側環状端面130dの近傍にて両座体110、120間をシールするする第2シール部130Bとを有している。第1シール部130Aは、内周面130aの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起131bと外周面130bの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起132bとで構成される。第2シール部130Bは、内周面130aの大径側開口端縁に沿って形成された環状の突起132aと外周面130bの大径側開口端縁に沿って形成された環状の突起131aとで構成される。両シール部130A、130Bの内側の突起132a、132bは部分凸球面121に、外側の突起131a、131bは部分凹球面111に、それぞれ全周に亘って接触しており、これにより、両座体110、120の間がシールされている。
【0036】
環装部材130は、第1シール部130Aと第2シール部130Bとの間に、剛体球150を保持するための4つの貫通孔135を有している。貫通孔135は、環装部材130の周方向に等間隔に形成されている。貫通孔135は、剛体球150を収容した状態で保持するべく環装部材130をその内外周面間方向に貫通させて形成された部分球面状の内面を有する。剛体球150は、貫通孔135に収容された状態で環装部材130の内外周面130a、130bから部分的に突出している。貫通孔135の内周面130a側の開口径は剛体球150の直径よりも小さく選定されている。一方、貫通孔135の外周面130b側の開口径は、貫通孔135内への剛体球150の装着を容易にするべく、剛体球150の直径よりも大きく選定されている。
【0037】
また、環装部材130は、第1座体110(すなわち上流側排気管201)との相対的な位置関係を保持するため、保持部材170(弾性体)によって強制的に第1座体110に押し付けられている。保持部材170が設けられていることにより、管継手100の作製段階における環装部材130の位置決めが容易になるとともに、管継手100の使用時における環装部材130の軸方向への過大な移動を防止できる。保持部材170は、ステンレス製の棒状部材を曲げ加工することにより作られており、環装部材130の過大な移動を抑止して定位置に復帰させるのに十分な剛性と弾性を兼ね備えている。そして本例の保持部材170は、その両端がカバー部117に設けられた保持部材係合孔116に係合しており、その中間部が環装部材130の大径側環状端面130dを押圧している。
【0038】
付勢機構140は、段付きボルト141と、ナット144と、コイルばね(弾性体)143とを備えている。段付きボルト141は、フランジ部124のボルト挿通孔123に下流側排気管202側から挿入され、先端部に形成されたねじ部が第1フランジ部114のボルト固定孔113に挿通され離脱しないようにナット144に固定されることで、上流側排気管201と下流側排気管202を接続している。また、ボルト挿通孔123は段付きボルト141の径に対して余裕を持って形成されており、上流側排気管201と下流側排気管202の相対揺動を許容する構造となっている。コイルばね143は、段付きボルト141を取り巻くようにして設けられている。
【0039】
上記のように構成された管継手100は、上流側排気管201と下流側排気管202とを軸方向に互いに接近させる向きに弾力的に付勢して連結するとともに、環装部材130を第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面121に同時に圧接させて、両管201、202の接続部をシールする。そして、両座体110、120と環装部材130とが摺動可能であることにより両管201、202の相対揺動を許容する。このとき環装部材130は、第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面121に対して局所的に接触しつつ両座体110、120間を全周に亘ってシールする。したがって、座体の部分凹球面がシール体とほぼ全面的に面接触している従来の管継手と比較して、より微少な振動を吸収することが可能となる。
【0040】
より詳細には、環装部材130は、剛体球150の保持位置よりも小径側と大径側に形成された二つのシール部130A、130Bにより両座体110、120間をシールする。第1シール部130Aは、内周面130aの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起132bを全周に亘って第2座体120の部分凸球面121に接触させるとともに、外周面130bの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起131bを全周に亘って第1座体110の部分凹球面111に接触させることにより、小径側環状端面130cの近傍にて両座体110、120間をシールする。第2シール部130Bは、内周面130aの大径側開口端縁に沿って形成された環状の突起132aを全周に亘って第2座体120の部分凸球面121に接触させるとともに、外周面130bの大径側開口端縁に沿って形成された環状の突起131aを全周に亘って第1座体110の部分凹球面111に接触させることにより、大径側環状端面130dの近傍にて両座体110、120間をシールする。このように、両座体110、120間の二箇所を全周に亘ってシールすることにより、一箇所のみをシールした場合と比較して、よりシール性を向上できる。
【0041】
また、この管継手100では、4個の剛体球150が第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面間121に挟まれた状態で且つ両座体110、120の周方向における剛体球150相互の位置関係を一定に保った状態で配置されていることにより、部分凹球面111と部分凸球面121との相互の間隔が常に一定に保たれる。すなわち、部分凹球面111と部分凸球面121間の距離は、剛体球150の直径に相当する距離に保たれる。これにより、両座体110、120とシール体である環装部材130間に働く圧力(接触圧)が常に一定に保たれるので、環装部材130による両座体110、120間のシール性が常に安定に保たれる。両座体110、120と剛体球150間の摩擦力は両座体110、120と環装部材130間の摩擦力に比べて極小さいので、4個の剛体球150の存在によって両座体110、120の相対揺動性が損なわれることはない。
【0042】
したがって、この管継手100によれば、上流側排気管201と下流側排気管202の一方の管に微少な振動が発生したとしても、その微少な振動が他方の管に伝わるのを極力防止するとともに、異常音(軋み音)の発生を抑制することができる。
【0043】
[第2形態例]
図2は本発明にかかる管継手の第2形態例を示す要部断面図である。また、図1の管継手100と共通する名称の部材に関しては同じ符号が付されている。
【0044】
この管継手200において、環装部材230以外の構成は管継手100と同様であるので説明を省略する。
【0045】
環装部材230は、両座体110、120の間に環装されている。環装部材230は、第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面121とに局所的に接触しつつ第1座体110と第2座体120との間を全周に亘ってシールするシール体であり、球帯状の本体とこれに組み付けられた第1及び第2の環状シール部材237a、237bとからなる。第1環状シール部材237bは、環装部材230の内周面230aの小径側開口端縁に沿って埋設されている。第2環状シール部材237aは、環装部材230の内周面230aの大径側開口端縁に沿って埋設されている。
【0046】
環装部材230は、部分凸球面121に対面する部分凹球面状の内周面230aと、部分凹球面111に対面する部分凸球面状の外周面230bと、小径側環状端面230cと、大径側環状端面230dとを有している。
【0047】
環装部材230は、小径側環状端面230cの近傍にて両座体110、120間をシールする第1シール部230Aと、大径側環状端面230dの近傍にて両座体110、120間をシールするする第2シール部230Bとを有している。
【0048】
第1シール部230Aは、第1環状シール部材237bと、外周面230bの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起231bとで構成される。
【0049】
第2シール部230Bは、第2環状シール部材237aと、外周面230bの大径側開口端縁に沿って形成された環状の突起231aとで構成される。
【0050】
各環状シール部材237a、237bは、環装部材230の内周面230aの小径側と大径側に同軸的に形成された環状溝236a、236bにそれぞれ嵌合することにより内周面230a部に大部分が埋設された状態で保持され、その一部(内周側の部分)が内周面230aから突出している。
【0051】
シール体230の外側の突起231a、231bは第1座体110の部分凹球面111に、両環状シール部材237a、237b内周面は第2座体120の部分凸球面121に、それぞれ全周に亘って接触しており、これにより、両座体110、120の間がシールされている。
【0052】
環装部材230は、第1シール部230Aと第2シール部230Bとの間に、剛体球150を保持するための4つの貫通孔235を有している。貫通孔235は、環装部材230の周方向に等間隔に形成されている。貫通孔235は、剛体球150を収容した状態で保持するべく環装部材230をその内外周面間方向に貫通させて形成された部分球面状の内面を有する。剛体球150は、貫通孔235に収容された状態で環装部材230の内外周面230a、230bから部分的に突出している。貫通孔235の内周面230a側の開口径は剛体球150の直径よりも小さく選定されている。一方、貫通孔235の外周面230b側の開口径は、貫通孔235内への剛体球150の装着を容易にするべく、剛体球150の直径よりも大きく選定されている。
【0053】
上記のように構成された管継手200は、上流側排気管201と下流側排気管202とを軸方向に互いに接近させる向きに弾力的に付勢して連結するとともに、環装部材230を第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面121に同時に圧接させて、両管201、202の接続部をシールする。そして、両座体110、120と環装部材130とが摺動可能であることにより両管201、202の相対揺動を許容する。このとき環装部材230は、第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面121に対して局所的に接触しつつ両座体110間を全周に亘ってシールする。したがって、座体の部分凹球面がシール体とほぼ全面的に面接触している従来の管継手と比較して、より微少な振動を吸収することが可能となる。
【0054】
より詳細には、環装部材230は、剛体球150の保持位置よりも小径側と大径側に形成された二つのシール部230A、230Bにより両座体110、120間をシールする。第1シール部230Aは、内周面230aの小径側開口端縁に沿って設けられた環状シール部材237bを全周に亘って第2座体120の部分凸球面121に接触させるとともに、外周面230bの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起231bを全周に亘って第1座体110の部分凹球面111に接触させることにより、小径側環状端面230cの近傍にて両座体110、120間をシールする。第2シール部230Bは、内周面230aの大径側開口端縁に沿って設けられた環状シール部材237aを全周に亘って第2座体120の部分凸球面121に接触させるとともに、外周面230bの大径側開口端縁に沿って形成された環状の突起231aを全周に亘って第1座体110の部分凹球面111に接触させることにより、大径側環状端面230dの近傍にて両座体110、120間をシールする。このように、両座体110、120間の二箇所を全周に亘ってシールすることにより、一箇所のみをシールした場合と比較して、よりシール性を向上できる。
【0055】
また、この管継手200では、4個の剛体球150が第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面間121に挟まれた状態で且つ両座体110、120の周方向における剛体球150相互の位置関係を一定に保った状態で配置されていることにより、部分凹球面111と部分凸球面121との相互の間隔が常に一定に保たれる。すなわち、部分凹球面111と部分凸球面121間の距離は、剛体球150の直径に相当する距離に保たれる。これにより、両座体110、120とシール体である環装部材230間に働く圧力(接触圧)が常に一定に保たれるので、環装部材230による両座体110、120間のシール性が常に安定に保たれる。両座体110、120と剛体球150間の摩擦力は両座体110、120と環装部材230間の摩擦力に比べて極小さいので、4個の剛体球150の存在によって両座体110、120の相対揺動性が損なわれることはない。
【0056】
したがって、この管継手200によれば、上流側排気管201と下流側排気管202の一方の管に微少な振動が発生したとしても、その微少な振動が他方の管に伝わるのを極力防止するとともに、異常音(軋み音)の発生を抑制することができる。この管継手200は、環装部材230が、第1座体110との間をシールする環状の突起231a、231bを有する球帯状の本体とこれに組み付けられて第2座体120との間をシールする第1及び第2の環状シール部材237a、237bとで構成されているため、本体とシール部材237a、237bのいずれかが先に摩耗若しくは破損したときに、その部材のみ交換することができるので、非常に経済的である。また、環状シール部材237a、237bの厚さを調整することにより、環装部材230のシール性及び摺動性すなわち両座体110、120に対する環装部材230の接触圧などを容易に調整することができる。
【0057】
[第3形態例]
図3は本発明にかかる管継手300を示す要部断面図である。また、図1の管継手100と共通する名称の部材に関しては同じ符号が付されている。
【0058】
この管継手300において、環装部材330以外の構成は管継手100と同様であるので説明を省略する。
【0059】
環装部材330は、両座体110、120の間に環装されている。環装部材330は、第1シール体334と第2シール体331とを備えている。両シール体334、331は、互いに形状・寸法の異なる略球帯状の部材である。
【0060】
第2シール体331は、第2座体120と対面する部分凹球面状の内周面331aと、第1座体110と対面する部分凸球面状の外周面331bと、小径側環状端面331cと、大径側環状端面331dとを有する。第1シール体331の外周面331bには、これと同軸的に環状凹部333が形成されている。
【0061】
第1シール体334は、第1座体110と対面する部分凸球面状の外周面334bと、第2シール体331の外周面331bと対面する部分凹球面状の内周面334aと、小径側環状端面334cと、大径側環状端面334dとを有する。第1シール体334は、その内周側の部分が第2シール体331の凹部333に嵌合しており、その外周側の部分は第2シール体331の外周面331bから突出している。第1シール体334の小径側環状端面334c及び大径側環状端面334dは、第2シール体331の環状凹部333の内壁と摺動可能である。
【0062】
第1シール体334と第2シール体331との間には、弾性部材345a、345bが介設されている。弾性部材345a、345bは、環状凹部333の大径側と小径側の端部周面に環装されている。第1シール体334と第2シール体331は、弾性部材345a、345bの段発力により、それぞれ第1座体110と第2座体120に圧接している。
【0063】
環装部材330は、小径側環状端面331cの近傍にて両座体110、120間をシールする第1シール部330Aと、大径側環状端面331dの近傍にて両座体110、120間をシールするする第2シール部330Bとを有している。
【0064】
第1シール部330Aは、第2シール体331の内周面331aの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起332bと、第1シール体334の外周面334bの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起336bとで構成される。
【0065】
第2シール部330Bは、第2シール体331の内周面330aの大径側開口端縁に沿って形成された環状の突起332aと、第1シール体334の外周面334bの大径側開口端縁に沿って形成された環状の突起336aとで構成される。
【0066】
第2シール体331の内側の突起332a、332bは部分凸球面121に、第1シール体334の外側の突起336a、336bは部分凹球面111に、それぞれ全周に亘って接触しており、これにより、両座体110、120の間がシールされている。
【0067】
環装部材330は、第1シール部330Aと第2シール部330Bとの間に、剛体球150を保持するための4つの貫通孔339を有している。貫通孔339は、環装部材330の周方向に等間隔に形成されている。貫通孔339は、剛体球150を収容した状態で保持するべく環装部材330をその内外周面間方向に貫通させて形成された部分球面状の内面を有する。この例の貫通孔339は、第2シール体331の凹部333の部分を内外に貫通する貫通孔339aと、これと連通して第1シール体334を内外に貫通する貫通孔339bとからなる。
【0068】
剛体球150は、貫通孔339に収容された状態で環装部材330の内外周面331a、334bから部分的に突出している。貫通孔339aの内周面331a側の開口径は剛体球150の直径よりも小さく選定されている。一方、貫通孔339bの外周面334b側の開口径は、貫通孔339内への剛体球150の装着を容易にするべく、剛体球150の直径よりも大きく選定されている。
【0069】
上記のように構成された管継手300は、上流側排気管201と下流側排気管202とを軸方向に互いに接近させる向きに弾力的に付勢して連結するとともに、環装部材330を第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面121に同時に圧接させて、両管201、202の接続部をシールする。そして、両座体110、120と環装部材330とが摺動可能であることにより両管201、202の相対揺動を許容する。このとき環装部材330は、第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面121に対して局所的に接触しつつ両座体110、120間を全周に亘ってシールする。したがって、座体の部分凹球面がシール体とほぼ全面的に面接触している従来の管継手と比較して、より微少な振動を吸収することが可能となる。
【0070】
より詳細には、環装部材330は、剛体球150の保持位置よりも小径側と大径側に形成された二つのシール部330A、330Bにより両座体110、120間をシールする。第1シール部330Aは、内周面331aの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起332bを全周に亘って第2座体120の部分凸球面121に接触させるとともに、外周面334bの小径側開口端縁に沿って形成された環状の突起336bを全周に亘って第1座体110の部分凹球面111に接触させることにより、小径側環状端面331cの近傍にて両座体110、120間をシールする。第2シール部330Bは、内周面331aの大径側開口端縁に沿って形成された突起332aを全周に亘って第2座体120の部分凸球面121に接触させるとともに、外周面334bの大径側開口端縁に沿って形成された環状の突起336aを全周に亘って第1座体110の部分凹球面111に接触させることにより、大径側環状端面331dの近傍にて両座体110、120間をシールする。このように、両座体110、120間の二箇所を全周に亘ってシールすることにより、一箇所のみをシールした場合と比較して、よりシール性を向上できる。
【0071】
また、この管継手300では、4個の剛体球150が第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面間121に挟まれた状態で且つ両座体110、120の周方向における剛体球150相互の位置関係を一定に保った状態で配置されていることにより、部分凹球面111と部分凸球面121との相互の間隔が常に一定に保たれる。すなわち、部分凹球面111と部分凸球面121間の距離は、剛体球150の直径に相当する距離に保たれる。これにより、両座体110、120とシール体である環装部材330間に働く圧力(接触圧)が常に一定に保たれるので、環装部材330による両座体110、120間のシール性が常に安定に保たれる。両座体110、120と剛体球150間の摩擦力は両座体110、120と環装部材330間の摩擦力に比べて極小さいので、4個の剛体球150の存在によって両座体110、120の相対揺動性が損なわれることはない。
【0072】
さらに、この管継手300では、第1シール体334と第2シール体331との間に、弾性部材345a、345bが環装されると共に、第2シール体331の小径側環状端面334cと大径側環状端面334dは第2シール体331の環状凹部333の内壁と摺動可能になっていることにより、第1形態例と比較して環装部材150の弾性変形が許容され易くなるので、両管201、202の相対揺動がより円滑になる。
【0073】
したがって、この管継手300によれば、上流側排気管201と下流側排気管202の一方の管に微少な振動が発生したとしても、その微少な振動が他方の管に伝わるのを極力防止するとともに、異常音(軋み音)の発生を抑制することができる。この管継手300は、環装部材330が、第1座体110との間をシールする第1シール体334と第2座体120との間をシールする第2シール体331とで構成されているため、両シール体334、331のどちらかが先に摩耗若しくは破損したときに、その部材のみ交換することができるので、非常に経済的である。また、両シール体334、331間に介設された弾性部材345a、345bの段発性を調整することにより、環装部材330のシール性及び摺動性すなわち両座体110、120に対する環装部材330の接触圧などを容易に調整することができる。
【0074】
[第4形態例]
図4(a)は本発明にかかる管継手を示す要部断面図である。図4(b)は、(a)に示す管継手が備える環装部材の全体斜視図である。図1の管継手100と共通する名称の部材に関しては同じ符号が付されている。
【0075】
この管継手400において、環装部材430と付勢機構140以外の構成は、管継手100と同様である。
【0076】
環装部材430は、外力による変形に対して反発復元性を有するよう成型された略円錐台形状(略球帯形状)の金属製一体成型品である。この環装部材430は、剛体球保持部430Aと、第1シール部430Bと、第2シール部430Cと、アーム部430Dとを備えている。
【0077】
剛体球保持部430Aは、環装部材430の周方向に等間隔に設けられた四つの剛体球保持孔438からなる。剛体球保持孔438の周縁部には、これを縁取るようにして内外に開いた断面二股形状の円環状の一対の保持片438a、438bが形成されている。剛体球150は、保持片438a、438b内に嵌合した状態で剛体球保持孔438に保持されている。
【0078】
第1シール部430Bは、環装部材430の小径側開口縁部に形成された内外に開いた断面二股形状の環状弾発部からなる。この弾発部の先端部には、第1座体110の部分凹球面111と全周に亘って接触する接触部432aと、第2座体120の部分凸球面121と全周に亘って接触する接触部432bとが形成されている。接触部432a、432bの断面形状は略円形である。
【0079】
第2シール部430Cは、環装部材430の大径側開口縁部に形成された内外に開いた断面二股形状の環状弾発部からなる。この弾発部の先端部には、第1座体110の部分凹球面111と全周に亘って接触する接触部431aと、第2座体120の部分凸球面121と全周に亘って接触する接触部431bとが形成されている。接触部431a、431bの断面形状は略円形である。接触部431a、431b、432a、432bの表面には潤滑材層が形成されている。潤滑材層は、部分凹球面111及び部分凸球面121に対して高い潤滑性を有している。潤滑材層は、塗布、蒸着など公知の方法により形成される。
【0080】
アーム部430Dは、剛体球保持部430Aの大径側端部に両フランジ部114及び124の位置に合わせて周方向2カ所に設けられている。アーム部430Dの先端には、円環状のボルト挿通部430Eが形成されており、このボルト挿通部430Eに段付きボルト141が相対揺動及び摺動可能に挿通されている。
【0081】
上記のように構成された管継手400は、環装部材430の二つのシール部430B、430Cにより両座体110、120間をシールする。第1シール部430Bは、環装部材430の小径側開口縁部に形成された環状弾発部の内側の接触部432bを全周に亘って第2座体120の部分凸球面121に接触させるとともに、当該環状弾発部の外側の接触部432aを全周に亘って第1座体110の部分凹球面111に接触させることにより、両座体110、120間をシールする。第2シール部430Cは、環装部材430の大径側開口縁部に形成された環状弾発部の内側の接触部431bを全周に亘って第2座体120の部分凸球面121に接触させるとともに、当該環状弾発部の外側の接触部431aを全周に亘って第1座体110の部分凹球面111に接触させることにより、両座体110、120間をシールする。このように、両座体110、120間の二箇所を全周に亘ってシールすることにより、一箇所のみをシールした場合と比較して、よりシール性を向上できる。
【0082】
また、この管継手400では、4個の剛体球150が第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面間121に挟まれた状態で且つ両座体110、120の周方向における剛体球150相互の位置関係を一定に保った状態で配置されていることにより、部分凹球面111と部分凸球面121との相互の間隔が常に一定に保たれる。すなわち、部分凹球面111と部分凸球面121間の距離は、剛体球150の直径に相当する距離に保たれる。これにより、両座体110、120とシール体である環装部材430間に働く圧力(接触圧)が常に一定に保たれるので、環装部材430による両座体110、120間のシール性が常に安定に保たれる。両座体110、120と剛体球150間の摩擦力は両座体110、120と環装部材430間の摩擦力に比べて極小さいので、4個の剛体球150の存在によって両座体110、120の相対揺動性が損なわれることはない。
【0083】
したがって、この管継手400によれば、上流側排気管201と下流側排気管202の一方の管に微少な振動が発生したとしても、その微少な振動が他方の管に伝わるのを極力防止するとともに、異常音(軋み音)の発生を抑制することができる。環装部材430が金属製一体成型品であるため、第1〜第3形態例のものと比較して管継手100の部品点数を削減できる。
【0084】
[第5形態例]
図5は本発明にかかる管継手500を示す要部断面図である。また、図1の管継手100と共通する名称の部材に関しては同じ符号が付されている。
【0085】
この管継手500は、下流側排気管(一方の管)201の端部に設けられた環状の第1座体110と、上流側排気管(他方の管)202の端部に設けられた環状の第2座体120と、両座体110、120間に挟持された複数の剛体球150と、両座体110、120間に環装された環装部材530と、両座体110、120を互いに近づける方向に弾力的に付勢する付勢機構140と、を備えている。排気管201、202はエンジンに接続された排気系の一部を構成するものである。また、本例では下流側排気管201の端部は拡径しており、上流側排気管202の端部を収容する形状となっている。
【0086】
第1座体110は、下流側排気管201の端部外周面に全周に亘って気密に密着させて溶接固定されている。第1座体110は、上流側排気管202側に開いた球面状の部分凹球面111を有している。第1座体110は、部分凹球面111から延設された部材であって、その開端部を外方に折り返すようにして形成されたフランジ部114を有している。フランジ部114は、周方向2カ所に設けられている。フランジ部114には、それぞれ一箇所にボルト挿通孔115が形成されている。
【0087】
第2座体120は、上流側排気管202の端部外周面に全周に亘って気密に密着させて溶接固定されている。第2座体120は、部分凹球面111と対応して、下流側排気管201側に突出した球面状の部分凸球面121を有している。第2座体120は、第1座体110のフランジ部114に対面して形成されたフランジ部124を有している。フランジ部124には、フランジ部114のボルト挿通孔115と対応させてボルト固定孔125が形成されている。さらに第2座体120は、第2座体120から延設されたカバー部127を有している。カバー部127は、第1座体110と第2座体120とによって形成される空間内に、水、泥などの異物が侵入するのを防止するために設けられており、その端部は相対揺動を許容するための隙間を隔てて第1座体110の端部を全周に亘って覆うように設けられている。
【0088】
環装部材530は、第1座体110の部分凹球面111に対面する環状の外側金属部材530aと第2座体120の部分凸球面121に対面する環状の内側金属部材530bとを重ね合わるとともに小径側端部に曲げ代531a、531bを残して互いに気密に接合してなる。環装部材530は、部分凹球面111及び部分凸球面121に対して、局所的に接触しつつ第1座体110と第2座体120との間を全周に亘ってシールするべく形成された環状のシール部530Aと、複数の剛体球150をこれら剛体球相互の周方向の位置関係を一定に保ちつつ一括保持する剛体球保持部530Bとを備えている。
【0089】
シール部530Aは、外側金属部材530aの曲げ代531aの部分を曲げ加工することにより反発復元性を持たせて部分凹球面111に全周に亘って接触させるとともに内側金属部材530bの曲げ代531bの部分を曲げ加工することにより反発復元性を持たせて部分凸球面121に全周に亘って接触させてなる。
【0090】
外側金属部材530aの曲げ代531aには、その内縁部を縁取るようにして、部分凹球面111と接触する環状の接触部532aが形成されている。内側金属部材530bの曲げ代531bには、その内縁部を縁取るようにして、部分凸球面121と接触する環状の接触部532bが形成されている。接触部532a、532bの断面形状は略円弧状である。また、接触部532a、532bには潤滑材層が形成されている。
【0091】
剛体球保持部530Bは、環装部材530の周方向に等間隔に設けられた四つの剛体球保持孔535からなる。剛体球保持孔535は、外側金属部材530aと内側金属部材530bのそれぞれに互いに連通させて貫通孔535a、535bを形成してなる。
【0092】
内側金属部材530aに形成された貫通孔535bの内縁部は内側すなわち部分凸球面121側に折り返されている。外側金属部材530aに形成された貫通孔535aの内縁部は外側すなわち部分凹球面111側に折り返されている。剛体球150は、貫通孔535a、535bの内縁部に嵌合した状態で剛体球保持孔535に保持されている。
【0093】
外側金属部材530aには、第1座体110のフランジ部114と対面するフランジ部534aが設けられている。内側金属部材530bには、第2座体120のフランジ部124と対面するフランジ部534bが設けられている。両フランジ部534a、534bには、互いに連通するボルト挿通孔533a、533bが形成されており、ボルト挿通孔533a、533bに段付きボルト141が相対揺動及び摺動可能に挿通されている。
【0094】
また、環装部材530は、これと第2座体120(すなわち上流側排気管201)との相対的な位置関係を保持するために、保持部材170(弾性体)によって強制的に第2座体120に押し付けられている。保持部材170が設けられていることにより、管継手500の作製段階における環装部材530の位置決めが容易になるとともに、管継手500の使用時における環装部材530の軸方向への過大な移動を防止できる。保持部材170は、ステンレス製の棒状部材を曲げ加工することにより作られており、環装部材530の過大な移動を抑止して定位置に復帰させるのに十分な剛性と弾性を兼ね備えている。そして本例の保持部材170は、その両端がフランジ部124の保持部材貫通孔128を貫通するとともに、ナット144締付位置近傍に溶接固定され、その中間部が環装部材530のフランジ部534aを押圧している(図8参照)。
【0095】
上記のように構成された管継手500は、環装部材530を構成する外側金属部材530aの曲げ代531aの部分を第1座体110の部分凹球面111に全周に亘って接触させるとともに内側金属部材530bの曲げ代531bの部分を部分凸球面121に全周に亘って接触させて、両座体110、120間をシールする。外側金属部材530aの曲げ代531aの部分は部分凹球面111に局所的(線状又は帯状)に接触する。内側金属部材530bの曲げ代531bの部分は部分凸球面121に局所的(線状又は帯状)に接触する。そして、剛体球150およびシール部530Aが部分凹球面111および部分凸球面121に対して相対揺動方向に摺動可能であることにより、両管201、202の相対揺動を許容する。
【0096】
この管継手500においても、4個の剛体球150が第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面間121に挟まれた状態で且つ両座体110、120の周方向における剛体球150相互の位置関係を一定に保った状態で配置されていることにより、部分凹球面111と部分凸球面121との相互の間隔が常に一定に保たれ、両座体110、120と環装部材530間に働く圧力(接触圧)が常に一定に保たれるので、環装部材530による両座体110、120間のシール性が常に安定に保たれる。
【0097】
したがって、この管継手500によれば、上流側排気管201と下流側排気管202の一方の管に微少な振動が発生したとしても、その微少な振動が他方の管に伝わるのを極力防止するとともに、異常音(軋み音)の発生を抑制することができる。環装部材530は、外側金属部材530aと内側金属部材530bとをそれぞれ曲げ加工するとともに両部材530a、530bを重ね合わせて曲げ代531a、531bの部分を残して気密に接合してなるので製造が容易である。
【0098】
[第6形態例]
図6は本発明にかかる管継手の環装部材の部分正面図である。図7は図6の管継手の断面図(図6のA線で切断した場合の断面図)である。図8は図6の管継手の別の断面図(図6のB線で切断した場合の断面図)である。これらの図において、図1又は図5の管継手と共通する部材に関しては同じ符号が付されている。
【0099】
この管継手600において、環装部材630以外の構成は管継手500と同様であるので説明を省略する。
【0100】
環装部材630は、第1座体110の部分凹球面111に対面する環状の外側金属部材630aと第2座体120の部分凸球面121に対面する環状の内側金属部材630b(630b、630b)とを重ね合わるとともに小径側端部に曲げ代631a、631bを残して互いに気密に接合してなる。
【0101】
第1内側金属部材630bは、外側金属部材630aの小径側開口端部に接合されている。第2内側金属部材630bは、外側金属部材630aの大径側開口端部に接合されている。
【0102】
環装部材630は、部分凹球面111及び部分凸球面121に対して、局所的(線状又は帯状)に接触しつつ第1座体110と第2座体120との間を全周に亘ってシールするべく形成された環状のシール部630Aと、複数の剛体球150をこれら剛体球相互の周方向の位置関係を一定に保ちつつ一括保持する剛体球保持部630Bとを備えている。
【0103】
シール部630Aは、外側金属部材630aの曲げ代631aの部分を曲げ加工することにより反発復元性を持たせて部分凹球面111に全周に亘って接触させるとともに外側金属部材630bの曲げ代631bの部分を曲げ加工することにより反発復元性を持たせて部分凸球面121に全周に亘って接触させてなる。
【0104】
外側金属部材630aの曲げ代631aには、その内縁部を縁取るようにして、部分凹球面111と接触する環状の接触部632aが形成されている。内側金属部材630bの曲げ代631bには、その内縁部を縁取るようにして、部分凸球面121と接触する環状の接触部632bが形成されている。接触部632a、632bの断面形状は略円弧状である。また、接触部632a、632bには潤滑材層が形成されている。
【0105】
剛体球保持部630Bは、環装部材630の周方向に等間隔に設けられた四つの剛体球保持孔635からなる。剛体球保持孔635は、外側金属部材630aと内側金属部材630bのそれぞれに互いに連通させて貫通孔635a、635bを形成してなる。内側金属部材630bに形成された貫通孔635bの内縁部は内側すなわち部分凸球面121側に折り返されている。外側金属部材630aに形成された貫通孔635aの内縁部は外側すなわち部分凹球面111側に折り返されている。剛体球150は、貫通孔635a、635bの内縁部に嵌合した状態で剛体球保持孔635に保持されている。
【0106】
外側金属部材630aには、第1座体110のフランジ部114と対面するフランジ部634aが設けられている。内側金属部材630bには、第2座体120のフランジ部124と対面するフランジ部634bが設けられている。両フランジ部634a、634bには、互いに連通するボルト挿通孔633a、633bが形成されており、ボルト挿通孔633a、633bに段付きボルト141が相対揺動及び摺動可能に挿通されている。
【0107】
以上の構成は第5形態例と同様である。この形態例の環装部材630は、これを構成する外側金属部材630aと内側金属部材630bのうち、内側金属部材630bは、曲げ代631bと曲げ代631bを縁取るようにして外側金属部材630aと気密に接合された接合部のみからなる第1金属部材630bと、外側金属部材630aと共に剛体球保持部630Bを構成する第2金属部材630bとからなる。そして、外側金属部材630aには、シール部630Aと剛体球保持部630Bとを接続するブリッジ部630Cを残して切欠孔630Dが形成されている。
【0108】
上記のように構成された管継手600は、環装部材630を構成する外側金属部材630aの曲げ代631aの部分を第1座体110の部分凹球面111に全周に亘って接触させるとともに第1金属部材630bの曲げ代631bの部分を部分凸球面121に全周に亘って接触させて、両座体110、120間をシールする。外側金属部材630aの曲げ代631aの部分は部分凹球面111に局所的(線状又は帯状)に接触する。第1金属部材630bの曲げ代631bの部分は部分凸球面121に局所的(線状又は帯状)に接触する。そして、剛体球150およびシール部630Aが部分凹球面111および部分凸球面121に対して相対揺動方向に摺動可能であることにより、両管201、202の相対揺動を許容する。
【0109】
この管継手600においても、4個の剛体球150が第1座体110の部分凹球面111と第2座体120の部分凸球面間121に挟まれた状態で且つ両座体110、120の周方向における剛体球150相互の位置関係を一定に保った状態で配置されていることにより、部分凹球面111と部分凸球面121との相互の間隔が常に一定に保たれ、両座体110、120と環装部材530間に働く圧力(接触圧)が常に一定に保たれるので、環装部材630による両座体110、120間のシール性が常に安定に保たれる。
【0110】
したがって、この管継手600によれば、上流側排気管201と下流側排気管202の一方の管に微少な振動が発生したとしても、その微少な振動が他方の管に伝わるのを極力防止するとともに、異常音(軋み音)の発生を抑制することができる。
【0111】
また、この管継手600は、環装部材630を構成する内側金属部材630bが、曲げ代631bと曲げ代631bを縁取るようにして外側金属部材630aと気密に接合された接合部のみからなる第1金属部材630bと、外側金属部材630aと共に剛体球保持部630Bを構成する第2金属部材630bとからなり、外側金属部材630aには、シール部630Aと剛体球保持部630Bとを接続するブリッジ部630Cを残して切欠孔630Dが形成されていることにより、構成5の管継手と比較して、環装部材を軽量化するとともに剛体球保持部とシール部との接続部すなわちブリッジ部に柔軟性を持たせてシール部による両座体間のシール性を高めることができる。
【0112】
なお、本発明の管継手で使用される剛体球150としては、特に制限はないが、好ましくはステンレス鋼球、セラミックボールなどが使用され、より好ましくはシリコン窒化物製セラミックボールを使用する。シリコン窒化物製セラミックボールは硬質、かつ軽量であり耐久性にも優れており、円滑性により微少な振動を吸収しやすくなる。また、ボールとフランジの材質が異なることによりマイクロピット(微少な凹凸)の発生を防ぐことができ、性能が長期に亘って維持できる。
【0113】
また、上記の各形態例で説明した環装部材として使用されるシール体の材料としては、たとえば無機質充填剤や炭化材などにて構成された耐熱シール材、ステンレス金網圧縮品もしくはステンレス金網圧縮品と耐熱樹脂との混合材などがあげられる。そして、これらのうちのいずれかの耐熱材料からなるシール体の表面に潤滑材層が形成されていることが好ましい。また、部分凹球面111や部分凸球面121に、耐熱性および潤滑性を有する層を形成してもよい。
【0114】
また、本発明の管継手において、剛体球150が回転可能に環装部材に保持されるようにしてもよい。
【0115】
また、本発明の管継手が備える剛体球150の数は少なくとも3個である。したがって、上記の例では剛体球150の数が4個の場合について説明したが、3個でも5個以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明に係る管継手の第1形態例を示す要部断面図
【図2】本発明に係る管継手の第2形態例を示す要部断面図
【図3】本発明に係る管継手の第3形態例を示す要部断面図
【図4】(a)は本発明にかかる管継手を示す要部断面図、(b)は(a)に示す管継手が備える環装部材の全体斜視図
【図5】本発明に係る管継手の第5形態例を示す要部断面図
【図6】本発明に係る管継手の第6形態例を示す要部断面図
【図7】図6に示す管継手の断面図
【図8】図6に示す管継手の別の断面図
【符号の説明】
【0117】
100、200、300、400、500、600 管継手
110 第1座体
111 部分凹球面
113 ボルト固定孔
114、124 フランジ部
116 保持部材係合孔
117、127 カバー部
120 第2座体
121 部分凸球面
123 ボルト挿通孔
128 保持部材貫通孔
130、230、330、430、530、630 環装部材
135、235、339、438、535、635 貫通孔
140 付勢機構
141 弾付きボルト
143 コイルバネ
144 ナット
150 剛体球
170 保持部材
201 上流側排気管
202 下流側排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の管と他方の管を相対揺動可能に接続する管継手において、
前記一方の管の外周面に固定され、前記他方の管側に拡径して開いた部分凹球面を有する環状の第1座体と、
前記他方の管の外周面に固定され、
前記一方の管側に縮径し、かつ、前記部分凹球面に対向させて設けられた部分凸球面を有する環状の第2座体と、
前記部分凹球面と前記部分凸球面に挟持された同径の複数の剛体球と、
前記部分凹球面及び前記部分凸球面に対して局所的に接触しつつ前記第1座体と前記第2座体との間を全周に亘ってシールし、且つ前記複数の剛体球をこれら剛体球相互の周方向の位置関係を一定に保ちつつ一括保持する環装部材と、
前記第1座体と前記第2座体を管軸方向に互いに近づけるべく付勢する付勢機構と、を備えたことを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記環装部材は、前記凸球面に対面する部分凹球面状の内周面と、前記部分凹球面に対面する部分凸球面状の外周面を有する球帯状のシール体であり、
前記部分凹球面と全周に亘って接触する環状の突起と、
前記部分凸球面と全周に亘って接触する環状の突起と、
前記剛体球を収容した状態で保持するべく前記シール体をその内外周面間方向に貫通させて形成された貫通孔と、を備え、
前記剛体球は、前記貫通孔に収容された状態で前記シール体の内外周面から部分的に突出していることを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項3】
前記環装部材は、
前記複数の剛体球を一括保持する剛体球保持部と、
前記剛体球保持部の形成位置よりも前記環装部材の小径側に位置する第1シール部と、
前記剛体球保持部の形成位置よりも前記環装部材の大径側に位置する第2シール部と、を備えたことを特徴とする請求項1記載の管継手。
【請求項4】
前記環装部材は、
外力による変形に対して反発復元性を有するよう成型された略円錐台形状又は略球帯形状の金属製一体成型品である請求項3記載の管継手。
【請求項5】
前記環装部材は、前記部分凹球面に対面する環状の外側金属部材と前記部分凸球面に対面する環状の内側金属部材とを重ね合わるとともに小径側端部に曲げ代を残して互いに気密に接合してなり、
前記部分凹球面及び前記部分凸球面に対して、局所的に接触しつつ前記第1座体と前記第2座体との間を全周に亘ってシールするべく形成された環状のシール部と、前記複数の剛体球をこれら剛体球相互の周方向の位置関係を一定に保ちつつ一括保持する剛体球保持部と、を備え、
前記シール部は、前記外側金属部材の前記曲げ代の部分を曲げ加工することにより反発復元性を持たせて前記部分凹球面に全周に亘って接触させるとともに前記内側部材の前記曲げ代の部分を曲げ加工することにより反発復元性を持たせて前記部分凸球面に全周に亘って接触させて構成したことを特徴とする、請求項1記載の管継手。
【請求項6】
前記外側金属部材と前記内側金属部材のうちいずれか一方の部材は、前記曲げ代と前記曲げ代を縁取るようにして他方の部材と気密に接合された接合部のみからなる第1金属部材と、他方の部材と共に前記剛体球保持部を構成する第2金属部材とを有し、
当該他方の部材には、前記シール部と前記剛体球保持部とを接続するブリッジ部を残して切欠孔が形成されていることを特徴とする請求項4記載の管継手。
【請求項7】
前記環装部材の前記部分凹球面および前記部分凸球面との接触部には潤滑材層が形成されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−14040(P2009−14040A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−174277(P2007−174277)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【出願人】(391003185)株式会社ケットアンドケット (8)
【Fターム(参考)】