説明

管腔用補綴物

【課題】フィッシュスケール、トラッキング不良、フレア、および展開時の望ましくないねじれなど、さまざまな性能上の制限が生じにくい、ステントなどの補綴物を提供する。
【解決手段】典型的にはS字状リンクで連結された蛇行リングセグメントである、隣り合う伸展可能なセグメントを含む管腔用補綴物を提供する。S字状リンク19を適切に配向させること、および隣り合う蛇行リング上のヒンジ領域25A,25Bをアライメントすることにより、性能を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、医療装置およびその使用方法に関する。より具体的には、本発明は、ステントおよびグラフトを含む、放射状に伸展可能な管腔用補綴物の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
管腔用補綴物はさまざまな医学目的用に提供されている。例えば、管腔用ステントは、血管、尿管、尿道、胆道、胃腸管などさまざまな体内管腔において、開存性を維持する目的で留置することができる。管腔用ステントは、予め拡張した、血管内のアテローム硬化部位への留置に特に有用である。管腔用グラフトは、腹部大動脈瘤およびその他の動脈瘤などの疾患領域に支持を与える目的で血管内に留置することができる。
【0003】
ステント補綴物およびグラフト補綴物のいずれも、正常に機能するためには、特定の機械的基準を満たす必要がある。具体的には、このような補綴物は、冠血管の管腔など蛇行する体内管腔内を進めることができるよう、その長さの少なくとも一部が可撓性であるかまたは関節式(例えば、互いに関節接続する剛性部分)でなければならない。さらに補綴物は、伸展した状態になったとき、元の長さを維持するかまたは短縮が最小限であることが好ましい。そのような補綴物はさらに、管腔の壁強度を機械的に増強しこれにより管腔を確実に開存させるため、十分な機械的強度、特にフープ強度を有している必要がある。これらの要件を満たせる可能性は、放射方向に圧迫されたまたはつぶされた状態で送達される円筒形の管腔内補綴物の場合、厳しく制限される。そのような補綴物は体内管腔内の標的部位で放射状に伸展する必要があるため、可撓性を増大させることを目的とした適合は、いかなる適合であっても、放射状に伸展する能力または伸展後に強度を保つ能力に干渉しない。
【0004】
ステントを含むそのような補綴物には、フィッシュスケール、トラッキング不良、フレア、および展開時の望ましくないねじれなど、さまざまな性能上の制限が生じ得る。フィッシュスケールとは、送達中またはトラッキング中に補綴物が屈曲または関節作動したときに生じる現象で、その結果、伸展した補綴物の表面に望ましくない外向きの突起部分が生じ、そのため、送達中に補綴物が体内管腔の壁に潜り込むかまたはその他の様式で壁にひっかかる可能性、さらには疾患部位(または標的部位)への補綴物およびその送達システムの進行が妨げられる可能性が高くなる。トラッキング性能の低下は、蛇行する経路を円滑に通過するという補綴物の能力が、望ましい水準を下回ったときに生じ得る。フレアとは、蛇行する体内経路を補綴物が通過する際に補綴物の遠位端または近位端に印加される曲げ力によって、これらの部位が外向きに曲がり王冠状の構造が生じる現象で、そのため多くの場合、上記のフィッシュスケール現象と同じ有害作用が生じ、血管内で補綴物を送達またはトラッキングする際に血管が損傷または傷害される。現行の装置の多くに共通する問題の1つは、管腔内での展開時または展開後にねじれが生じ、その結果、望ましくない変形が起こることである。この望ましくないねじれは、装置の展開中に生じる可能性がある。装置は多くの場合、例えばバルーンなどの伸展可能部品により展開されるとき、まず2つの端部が伸展し、装置の中間部分(通常は中央)には、頂点が管腔の内側を指す、内向きの折り目が生じる。このような内向きの頂点があると、装置の内径が局所的に小さくなり、これは管腔の閉塞の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、改良された装置およびその使用法を提供することは重大な進歩であると考えられる。本発明はこれらおよびその他の需要の少なくともいくつかを満たす。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、体内管腔内への留置に好適な、改良された管腔用補綴物を提供する。
【0007】
体内管腔とは特に血管を指し、中でも特に冠動脈および末梢動脈を指す。管腔用補綴物は、管腔の開存を維持することを目的としたステントの形態であってもよく、または、管腔壁を保護するかもしくはその強度を高めることを目的としたグラフトの形態であってもよい。概して、「ステント」という用語は、管腔壁に押し付けられる開格子またはフレームワークを伸展時に形成するリングセグメントなどの伸展可能構成要素を含む、脈管構造またはその他の足場構造を意味する。一方、「グラフト」という用語は概して、ライナー、膜、またはその他の透過性もしくは不透過性の層で少なくとも一部が覆われた、管腔状の足場を意味する。本明細書に含まれる図面は概ねステント構造を対象としているが、ステントの外面または内面のいずれかにライナーまたは膜などを組み込むことにより、対応するグラフト構造を提供できることが理解されるものと思われる。
【0008】
補綴物は、好ましくは管腔内に留置される。本明細書において、「管腔内に」とは、補綴物を遠隔部位から体内管腔内の標的部位まで経管的に進める、身体開口部を通じた留置または経皮的手技もしくは血管切開手技による留置を意味する。脈管手技において、補綴物は典型的に、ガイドワイヤ上のカテーテルを用いて透視ガイド下で「脈管内に」導入される。カテーテルおよびガイドワイヤは、例えば冠動脈にアクセスするための大腿動脈、または、上腕動脈、鎖骨下動脈、もしくは橈骨動脈など、脈管系にアクセスするための従来のアクセス部位から導入してもよい。
【0009】
本発明の管腔用補綴物は通常、放射状に伸展可能であり通常は円筒形であるリングセグメントを少なくとも2つ含む。典型的に同補綴物は、リングセグメントを少なくとも4つ有し、多くの場合は5つ、6つ、7つ、8つ、10個、またはそれ以上有する。リングセグメントのうち少なくともいくつかは互いに隣り合うが、他のリングセグメントは他の非リング構造によって隔てられていてもよい。
【0010】
本発明の管腔用補綴物は放射状に伸展可能である。本明細書において「放射状に伸展可能」とは、直径の小さい状態(管腔内の留置に使用される状態)から、補綴物が所望の標的部位に埋植されたときに実現される、放射状に伸展し通常は円筒形である状態へと、転換できる補綴物を意味する。
【0011】
補綴物は、例えば展性であるなど、弾性が最小限であってもよく、したがって、補綴物を伸展させ標的部位にセットするために内力の印加を必要としてもよい。典型的に、伸展力は、脈管手技用の血管形成カテーテルのバルーンなどのバルーンによって提供してもよい。
【0012】
1つの態様において、通常は、放射状外向きの内力を印加することにより、弾性が最小限である(通常は展性である)補綴物構造を伸展させる。そのような放射状外向きの内力は、通常、膨張可能なバルーンによって提供される。そのようなバルーン伸展式ステントは当技術分野において周知であり、且つ、上記に引用され且つ参照により本明細書に組み入れられる、背景となる参考文献に記載されている。
【0013】
または、本発明の放射状に伸展可能な管腔用補綴物の少なくともいくつかは、自己伸展式であってもよい。例えばばねステンレス鋼またはニッケル-チタン合金(例えばニチノール(登録商標)合金)など、通常は金属である弾性材料で補綴物を作製することにより、非拘束状態で直径が大きくなる(完全に伸展する)ように補綴物を設計することができる。補綴物の直径は、例えば補綴物をスリーブ、チューブ、またはその他の拘束構造内に配置するなどして放射状の拘束を加えることにより、小さくできる。この方式により、自己伸展式の補綴物を、拘束状態で送達し、そして体内管腔内の標的部位で拘束を解放することにより展開させることができる。自己伸展式のステントおよびその他の管腔用補綴物を構成する一般的な原理は当技術分野において周知であり、且つ、本明細書に既に組み入れられている、背景となる参考文献の少なくともいくつかに記載されている。
【0014】
1つの態様において、放射状に伸展可能な管腔用補綴物は、ヒンジ領域によって接続されたストラット領域を含む、通常は蛇行リングセグメントであるユニットセグメントを複数含む。
【0015】
1つの態様において、ヒンジ領域は通常、短い曲線状(通常はC型またはU型)の領域であって、蛇行リングパターンを規定するため、接続されたヒンジが反対方向に向くことを許容する領域によって形成される。1つの態様において、ヒンジ領域は尖部を含み、尖部は、尖部のいずれかの側方から伸びリングのストラット領域へと移り変わる側部を有する。
【0016】
1つの態様において、ヒンジ領域の少なくとも一部、通常全部は、放射方向に互いにオフセットされている。別の態様において、ヒンジ領域の少なくとも一部、通常全部は、放射方向に互いにアライメントされている。
【0017】
縦方向に隣り合う蛇行リングの少なくともいくつかは、隣り合うセグメントが補綴物の送達中および伸展中に互いに対して屈曲できるよう、展性であってもまたは弾性変形可能であってもよいリンクによって接続される。
【0018】
リンクは、1つのリングの少なくともいくつかのヒンジ領域を、同1つのリングに隣り合い且つ縦方向にオフセットされた別のリングの少なくともいくつかのヒンジ領域に接続する。1つの態様において、接続されたリングセグメントは縦方向に互いにすぐ近くに隣り合い、接続リンクは、互いに放射方向にオフセットされた複数のリンクを含む管状のコラムを形成する。
【0019】
リンクは、尖部もしくは側部、またはその中間のどこかなど、ヒンジ領域の任意の部分から伸びていてよい。1つの態様において、リンクの少なくとも一部、好ましくは全部は、各ヒンジ領域から、典型的にはヒンジ領域がストラットに移り変わる箇所から、側方に伸びる。
【0020】
1つの態様において、リンクは概して、通常はS字状であり普通は「S」形である、複数(通常は2つ)の滑らかな曲線形を有する。1つの態様において、リンクは、隣り合うユニットセグメント間に伸展および収縮の両方を提供するように構成される。
【0021】
1つの態様において、二重曲りリンクは、2つの曲線部分とその間の直線部分とを含む。1つの態様において、同じ接続リンクコラム内の接続リンクは同じ方向に配向され、その方向は、隣りの接続リンクコラムの方向と概ね異なる方向である。
【0022】
1つの態様において、同じコラム内のリンクの直線部分の少なくとも一部、通常は全部は、補綴物の仮想縦軸と、通常は鋭角または鈍角のいずれかである、斜角を形成する。1つの態様において、隣り合うコラムの接続リンクの直線部分の少なくとも一部、通常は全部は、補綴物の縦軸と、隣り合う接続コラムの角度の補角を形成する。本明細書において、補角とは、合わせて軸と180度の角度を形成する2つ以上の角度を意味する。
【0023】
このようなS字状リンクを使用すると、補綴物が縦方向に伸縮または収縮し、補綴物が伸展する際の長さの変化に対応できるので、有益である。このようなリンクは、隣り合う蛇行リングの差動運動を可能にするので、補綴物の屈曲がさらに可能になる。このような可撓性は、補綴物を管腔内の位置に送達する際の補綴物のトラッキングを向上させるので、特に有利である。S字状リンクはまた、伸展した補綴物を自然の血管、人工グラフト、またはその他の体内管腔位置に留置した際の順応性も向上させる。リンクがヒンジ領域の尖部から離れた位置に取り付く態様においては、尖部にかかる応力が低減し、各リングセグメントがより均一に伸展する。
【0024】
管腔用補綴物の寸法はその目的用途によって異なる。典型的に、補綴物の長さは、脈管用用途の場合、約1〜100mm、通常は約8〜50mmであり、非脈管用用途の場合、約20〜約200mm、通常は約50〜約150mmである。
【0025】
円筒形補綴物の小さい直径(放射状につぶれたときの直径)は、典型的に約0.25〜約20mmであり、通常は約0.4〜約15mmであり、普通は約0.8〜約10mmである。
【0026】
脈管用用途の円筒形補綴物の小さい直径(放射状につぶれたときの直径)は、典型的に、冠動脈用では約0.25〜約1.5mm、末梢用では約1〜約4mmであり、通常、冠動脈用では約0.4〜約1.25mm、末梢用では約1.5〜約3mmであり、普通、冠動脈用では約0.8〜約1.2mm、末梢用では約1.75〜約2.5mmである。
【0027】
非脈管用用途の補綴物の小さい直径は、典型的に約1.5〜約20mmであり、通常は約2〜約15mmであり、普通は約5〜約10mmである。
【0028】
円筒形補綴物の大きい直径(放射状に拡がったときの直径)は、典型的に約1〜約100mmであり、通常は約1.5〜約75mmであり、普通は約2〜約50mmである。
【0029】
脈管用用途の円筒形補綴物の大きい直径(放射状に拡がったときの直径)は、典型的に、冠動脈用では約1〜約7mm、末梢用では約1〜約30mmであり、通常、冠動脈用では約1.5〜約5mm、末梢用では約3〜約25mmであり、普通、冠動脈用では約2〜約4mm、末梢用では約5〜約20mmである。
【0030】
非脈管用用途の補綴物の大きい直径は、典型的に約1〜約100mmであり、通常は約5〜約75mmであり、普通は約10〜約50mmである。
【0031】
上記課題を解決可能な構成としてより具体的には、以下の構成が考えられる。
【0032】
第1の構成
以下を含む、放射状に伸展可能な管腔用補綴物:
ストラットと、その間に位置するヒンジ領域とを含む、複数の蛇行リングセグメント;
少なくとも1つの曲線部分と、補綴物の仮想縦軸と斜角を形成する少なくとも1つの直線部分とを含む、多重曲りリンクであって、隣り合う蛇行リング上の少なくともいくつかのヒンジ領域を接続するリンク。
【0033】
第2の構成
直接隣り合うリングを接続するリンクが放射状のコラムを形成し、同じ放射状コラムの各リンクの直線部分が補綴物の縦軸と鋭角または鈍角を形成する、上記第1の構成に記載の補綴物。
【0034】
第3の構成
同じ放射状コラムの角度がすべて実質的に同程度である、上記第2の構成に記載の補綴物。
【0035】
第4の構成
1つの放射状コラムの角度が、隣の放射状コラムの角度の補角である、上記第3の構成に記載の補綴物。
【0036】
第5の構成
隣り合う放射状コラムの放射状リンクが互いに鏡像である、上記第3の構成に記載の補綴物。
【0037】
第6の構成
多重曲りリンクが、直線部分を間に備えた互いに反対方向に突出する2つの曲線部分を含み、該直線部分の仮想軸の各端部が、該曲線部分の1つを二分する1本の仮想線と仮想角を形成する、上記第1の構成に記載の補綴物。
【0038】
第7の構成
多重曲りリンクが、直線部分を間に備えた2つの曲線部分を含み、該直線部分の仮想軸の各端部が、該曲線部分の1つを二分する1本の仮想線と仮想角を形成するように、該曲線部分が互いに反対方向に突出する、上記第1の構成に記載の補綴物。
【0039】
第8の構成
各二分線により形成される角度の大きさが実質的に同程度である、上記第7の構成に記載の補綴物。
【0040】
第9の構成
多重曲りリンクが、直線部分を間に備えた2つの曲線部分を含み、且つ、少なくともいくつかのリンクについて、所与のリンクの両曲線部分と交差する少なくとも1つの仮想放射平面が存在する、上記第1の構成に記載の補綴物。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の特徴を具現化した例示的な補綴物の非伸展時の状態を示した略図である。
【図2】図2A〜2Bは、図1の補綴物の例示的態様の「圧延」図である。図2C〜2Dは、図1の補綴物の例示的態様の、それぞれ非伸展時および伸展時の状態を示した「圧延」図である。
【図3】リンクの直線部分が補綴物の縦軸と斜角を形成している、図2Aの構造の部分「圧延」図である。
【図4A】ヒンジ部分の直線部分が、リンクの曲線部分を二分する仮想線と交差する様子を示した、図2Aの構造の1つの態様の部分「圧延」図である。
【図4B】ヒンジ部分の直線部分が、リンクの曲線部分を二分する仮想線と平行である様子を示した、図2Aの構造の1つの態様の部分「圧延」図である。
【図5A】リンクが尖部から突出している、図2Aの構造の別の態様を示した部分「圧延」図である。
【図5B】縦方向に隣り合うリングのヒンジ部分が放射方向に互いにアライメントされている、図3の構造の別の態様を示した部分「圧延」図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に、本発明の特徴を概ね具現化し、且つ、複数の放射状に伸展可能なリングセグメント16で形成されたフレーム13を含む、ステントなどの、放射状に伸展可能な管腔用補綴物10を示す。補綴物10の最終的な形状は概ね円筒形であるが、補綴物は横断面が非円筒形の管腔に順応可能であってもよく、且つ、横方向に湾曲した管腔に順応可能であってもよいことが理解されるべきである。
【0043】
血管系(例えば冠血管または末梢血管)への留置を特に目的とした例示的な管腔用補綴物10は、S字状リンク19などの少なくとも1つのリンクによって、縦方向に隔てられた隣のリングセグメントと接続された、4〜50個(図に示すのは7個)のリングセグメント16を含む。
【0044】
次に図2A〜図2Dにおいて、リングセグメント16は、ヒンジ領域25で接続された、普通は直線のストラットである複数のストラット22を含む。図に示すように、ヒンジ領域25は曲線形であり、且つ、尖部28と、尖部28の反対側のトラフ領域34とを含み、尖部28は、尖部のいずれかの側から伸びストラット22へと移り変わる側部31を備える。
【0045】
リンク19は、隣り合うリング(16Aおよび16Bなど)の、最も近いヒンジ領域(25Aおよび25Bなど)を接続する。隣り合うリングセグメント(例えば16Aおよび16B)を接続するリンクは、放射状のコラム37を形成する。接続リンク19は概して、通常はS字状であり普通は「S」形である、複数(通常は2つ)の滑らかな曲線形を有する。
【0046】
リンク19は、リングセグメントのヒンジ領域のうち、隣り合うリングのヒンジ領域に接続されないものも存在するよう、同じリングセグメント16の中の放射状ヒンジ領域のうち一部から伸びるが、最も近いヒンジ領域をすべて接続する態様、またはその他の構成も、本発明の範囲に含まれる。例えば、図2Aに示すように、リングセグメント16Aおよび16Bは、リンク19により互いに接続されたヒンジ領域25Aおよび25B、ならびに、隣り合うリングのヒンジ領域への接続を持たないヒンジ領域25Cおよび25Dを含む。接続ヒンジ領域と非接続ヒンジ領域とは、交互であってもよく、または特定の繰返しパターンを有していてもよい。図2Cに示すように、補綴物の中間部では接続ヒンジ領域と非接続ヒンジ領域とが交互になり、補綴物の両端の最遠位2つのリンクコラムでは接続ヒンジ領域3つの後に非接続ヒンジ領域1つが現れるというパターンを形成していてもよい。
【0047】
再度、図2Aおよびその拡大図である図2Bにおいて、二重曲りリンク19は、2つの曲線部分40(40’および40’’など)と、その間に位置する直線部分43とを含む。同じ接続リンクコラム37の中の接続リンク19は同じ方向に配置され、少なくともいくつかのリンクの直線部分43はフレーム13の仮想縦軸46と斜角を形成する。
【0048】
例えば、隣り合う2つのコラムのリンクの直線部分は、例えば鈍角または鋭角など、同様の種類の角度を縦軸と形成してもよい。さらに、同じコラム内の角度は、概ね鈍角かまたは鋭角である場合であっても、同じコラム内の他の角度と同程度であってもまたは異なっていてもよい。
【0049】
図3にさらに示すように、1つのコラム37Aの接続リンク19Aの直線部分43Aは、フレーム13の仮想縦軸46と鈍角αを形成する。各コラムの鈍角αは、独立に、約95〜約170°であり、通常は約100〜約135°であり、普通は約105〜約130°である。
【0050】
コラム37Aの隣のコラム37Bの接続リンク19Bの直線部分43Bは、縦軸46と鋭角βを形成する。各コラムの鋭角βは、独立に、約10〜約85°であり、通常は約45〜約80°であり、普通は約50〜約75°である。
【0051】
隣り合うリングの鈍角αおよび鋭角βは、好ましくは、縦軸46に対して互いに補角となる。
【0052】
1つの態様において、リンク19は、隣り合うコラムのリンクが互いに鏡像となるように、寸法が互いに同程度である(例えば、直線部分43Aの長さは、直線部分43Bの長さと同程度であり、通常は等しい)。
【0053】
図に示す補綴物は、偶数個の接続コラム37を含み、1つおきのコラムの直線部分が鈍角または鋭角のいずれかを形成しているが、本発明がそのような交互パターンに限定されるわけではなく、他の構成およびパターンも本発明の範囲に含まれる。
【0054】
図4Aに示すように、1つの態様において、多重曲りリンク19の曲線部分40’Aおよび40’’Aは、直線部分43Aの仮想軸49Aの各端部が、曲線部分の1つを二分する1本の仮想線と交差するように、互いに反対方向に突出する。図に示すように、仮想線52’Aおよび52’’Aは、それぞれ曲線部分40’Aおよび40’’Aを二分する。直線部分の軸49と仮想線52’Aおよび52’’Aとの交点は、それぞれ、角度λおよびμを形成する。この説明では、補綴物の縦軸と鈍角を形成する1つのリンクコラムに関して、二分線と直線部分の仮想軸との交点を説明したが、補綴物の縦軸と鋭角を形成する隣のコラムにおいても交点が形成されてよく、このことは理解されるべきである。
【0055】
図4Bにさらに示すように、1つの態様において、リンク65Aの曲線部分62’Aおよび62’’Aをそれぞれ二分する仮想線59’Aおよび59’’Aは、直線部分71Aの軸68Aと平行である。
【0056】
図4Bにその特徴を示す1つの態様においては、与えられたリンク78の両曲線部分77’および77’’と交差する、少なくとも1つの放射平面74が存在する。この特徴は、図4Aおよび図4Bを参照して既に説明した他の特徴と独立に存在していてもよいことが理解されるべきである。
【0057】
図2を参照した前述の説明では、リンクはヒンジ領域の側部から突出していたが、図5Aに示す別の態様においては、これと対照的に、リンク74は、概ね、ヒンジ領域80の尖部77から突出する。
【0058】
図5Bにその特徴を示す1つの態様において、接続されたヒンジ領域(ヒンジ領域83Aおよび83Bなど)は、図2のように放射方向にオフセットされたヒンジ領域と異なり、放射方向に互いにアライメントされる。
【0059】
使用時、本発明の補綴物は、当技術分野において公知のとおり、バルーンカテーテルの伸長可能部分の上または送達用カテーテルの管腔内に装填し、所望の管腔部位に送達し、そしてそこに配置してもよい。
【0060】
以上、特定の好ましい態様および方法を本明細書に開示したが、当業者には、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなくこれらの態様および方法に対して変更および修正を行い得ることが以上の開示内容から明らかであると思われる。したがって、以上の説明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものと捉えられるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射状に伸展可能な管腔用補綴物であって、
補綴物の仮想縦軸の方向にリングセグメントを複数備えるとともに、当該仮想縦軸の方向に隣り合うリングセグメントを接続するように設けられたリンクを備え、
前記リングセグメントのそれぞれは、前記仮想縦軸の方向の両端に設けられ各端部において当該仮想縦軸の方向の外側に凸となるように曲げて形成された複数のヒンジ領域と、前記仮想縦軸の方向の両端に位置しているヒンジ領域を接続するように設けられた複数のストラットと、を備えており、それら複数のヒンジ領域及び複数のストラットにより蛇行した形状とされており、
前記リンクとして、少なくとも1つの曲線部分と、前記仮想縦軸と斜角を形成する少なくとも1つの直線部分とを含むとともに、隣り合う前記リングセグメントのヒンジ領域を接続する多重曲りリンクを有し、
前記仮想縦軸の方向の端部に存在するリングセグメントでは、一のヒンジ領域と、同一の端部側において当該一のヒンジ領域に対して前記仮想縦軸の周りに隣り合う一対のヒンジ領域とのそれぞれが、当該リングセグメントに対して隣り合うリングセグメントと接続されるように、それら各ヒンジ領域のそれぞれに対して前記リンクが設けられており、
前記仮想縦軸の方向の中間部に存在するリングセグメントでは、当該リングセグメントの同一の端部側において、当該リングセグメントに対して隣り合うリングセグメントに接続されるヒンジ領域及び接続されないヒンジ領域がそれぞれ複数存在し、且つ前記接続されるヒンジ領域の全てについて、当該接続されるヒンジ領域に対して同一の端部側において前記仮想縦軸の周りに隣り合う両側のヒンジ領域が前記接続されないヒンジ領域となるように、前記リンクが設けられていることを特徴とする管腔用補綴物。
【請求項2】
前記仮想縦軸の方向の端部に存在するリングセグメントでは、前記一のヒンジ領域及び前記一対のヒンジ領域を含む接続ヒンジ領域群が、当該リングセグメントに隣り合うリングセグメントと接続されないヒンジ領域を挟んで前記仮想縦軸の回りに複数存在していることを特徴とする請求項1に記載の管腔用補綴物。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【公開番号】特開2011−120920(P2011−120920A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3279(P2011−3279)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【分割の表示】特願2006−533603(P2006−533603)の分割
【原出願日】平成16年6月7日(2004.6.7)
【出願人】(502435258)アバンテク バスキュラー コーポレーション (2)
【Fターム(参考)】