説明

管路の内張り材の製造方法

【解決手段】 繊維製筒状体1を扁平に折り畳み、当該繊維製筒状体1の両扁平面1a、1b上に順次合成樹脂フィルム3aを押出し、当該合成樹脂フィルム3aの熔融状態において、前記扁平面1a、1bの両縁に易破断部7、12を形成し、合成樹脂フィルム3aが冷却した後前記易破断部7、12に沿って余剰部分9を切除して一次皮膜層5a、5bを形成し、然る後前記繊維製筒状体1を先に耳部であった部分が扁平部の中央となるように折り畳み直し、当該繊維製筒状体1の両扁平面上において、前記一次皮膜層5a、5bの隙間1c、1dの幅よりも若干幅広の合成樹脂フィルム3bを被覆して二次皮膜層5c、5dを形成する。
【効果】 合成樹脂フィルム3の押し出し直後のまだ熔融状態にある間に易破断部7、12を形成し、そこで余剰部分9を引っ張って切除するので、繊維製筒状体1を傷付けることなく容易に余剰部分9を除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス導管、水道管、下水道管、電力線や通信線などの敷設管路などの主として地中に埋設された管路に対して、補強又は補修の目的で内張りするための、管路の内張り材の製造方法に関するものであって、特に当該内張り材を流体圧力で内外面を反転しながら管路内に挿通して内張りする方法において使用される、内張り材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述のような管路の内張り材は、織物や不織布などの繊維製の筒状体に硬化性樹脂を含浸して、管路の内面に剛直なFRPの補強層を形成し、その内面に合成樹脂のフィルムよりなる気密層を形成する。そのため前述のように、内外面を反転して内張りする工法において使用される内張り材においては、繊維製筒状体の外面に合成樹脂フィルムの気密層を形成したものが使用される。
【0003】
このように繊維製筒状体の外面に気密層を形成した内張り材を製造する方法としては、繊維製筒状体を押出機に通し、その繊維製筒状体の表面に合成樹脂を押出被覆して気密層を形成するのが一般的である。
【0004】
しかしながらこの方法においては、内張り材の口径に応じて押出設備を用意する必要があり、また口径が大きい内張り材になると、それを製造するためには大型の設備が必要となり、製造コストが高いものとなる。
【0005】
特開2001−179832号公報には、繊維層に合成樹脂フィルムを貼り合わせてなる帯状片の両縁を接合することにより筒状体とし、その接合部に合成樹脂フィルムを貼り付けて気密にすることが記載されているが、この構造では繊維層に接合部があるために、内張り材の全周に亙って均等な強度が得られにくい。
【0006】
また特開昭50−112478号公報や特開昭49−119971号公報には、扁平に折り畳んだ状態の繊維製筒状体をその両面から合成樹脂のフィルムで挟んだ内張り材が示されており、後者においてはそのフィルムの両縁が互いに接合されている。
【0007】
しかしながらこれらの構造では、これを内外面を裏返して内張りする内張り材に適用した場合には、フィルムの両縁のはみ出し部が内張りされた内張り材の内面に突出することとなり、管路内の流体の流通にとって障害となる恐れがある。
【0008】
このような事情に鑑み、出願人は先に内張り材の製造方法の発明について、特願2006−91970号出願をした。この方法は図1に示すように、扁平に折り畳んだ繊維製筒状体1の一方の扁平面1a上に、Tダイ2などの押出装置から繊維製筒状体1の折り畳み幅よりも若干幅広の合成樹脂フィルム3aを押出し、繊維製筒状体1の両側縁の位置で合成樹脂フィルム3aをカッター4で裁断して一次被膜層5aを形成し(a)、他方の扁平面1b上にも同様にして一次被膜層5bを形成し(b)、次いで繊維製筒状体1を先に耳部であった部分が扁平部のほゞ中央となるように扁平に折り畳み直し、当該繊維製筒状体1の一方の扁平面上において、Tダイ2から前記一次皮膜層5a、5bの隙間1cの幅よりも若干幅広の合成樹脂フィルム3bを押出被覆して二次皮膜層5cを形成し(c)、さらに他方の扁平面においても同様に隙間1dの位置に二次皮膜層5dを形成し(d)、繊維製筒状体1の全周に亙って被膜層を形成して内張り材6とするものである。
【0009】
この方法によれば、扁平に折り畳んだ繊維製筒状体1の扁平面上に、Tダイ2から合成樹脂フィルム3を押出被覆することを繰り返して、繊維製筒状体1の全面を皮膜層5で覆って内張り材とするので、繊維製筒状体1に皮膜層2を形成するための設備としてはTダイなどの押出設備のみがあればよく、繊維製筒状体の径の大きさにかかわらず、合成樹脂フィルムの押出幅を繊維製筒状体の径に応じて適宜変更することにより、極めて安価に内張り材を製造することができる。
【0010】
しかしながらその反面、扁平状態の繊維製筒状体1の扁平面1a、1b上に合成樹脂フィルム3aを押し出して被覆した後、繊維製筒状体1の両側縁の位置でその繊維製筒状体1に密着した合成樹脂フィルム3aの余剰部分を裁断しなければならず、カッター4で繊維製筒状体1が傷付く恐れがある。
【特許文献1】特開2001−179832号公報
【特許文献2】特開昭50−112478号公報
【特許文献3】特開昭49−119971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はかかる事情に鑑みなされたものであって、前記方法により管路の内張り材を製造するにあたり、カッター4を使用することなく合成樹脂フィルム3aの余剰部分を裁断し、繊維製筒状体1を傷付けることなく内張り材を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
而して本発明は、繊維製筒状体を扁平に折り畳み、当該繊維製筒状体の両扁平面上に順次、押出装置から当該扁平面の幅よりも若干幅広の合成樹脂フィルムを押出し、当該合成樹脂フィルムの少なくとも繊維製筒状体に接した面が熔融している状態において、前記扁平面の両縁において合成樹脂フィルムに厚みが極端に薄くなった易破断部を形成し、合成樹脂フィルムが冷却した後余剰部分を引っ張って、前記易破断部に沿って合成樹脂フィルムの余剰部分を切除して一次皮膜層を形成し、然る後前記繊維製筒状体を先に耳部であった部分が扁平部のほゞ中央となるように扁平に折り畳み直し、当該繊維製筒状体の新たな両扁平面上において、前記一次皮膜層の隙間の幅よりも若干幅広の合成樹脂フィルムを被覆して二次皮膜層を形成し、繊維製筒状体の全周を合成樹脂フィルムの被膜層で覆うことを特徴とするものである。
【0013】
本発明において易破断部を形成する具体的な方法としては、扁平状態の繊維製筒状体の扁平面上に合成樹脂フィルムを押し出した後、当該合成樹脂フィルムの熔融状態において前記扁平面の両縁において、合成樹脂フィルムの表面から押圧して前記易破断部としての連続又は断続する凹溝を形成することができる。
【0014】
また易破断部を形成する他の方法としては、扁平状態の繊維製筒状体の扁平面上に合成樹脂フィルムを押し出した後、当該合成樹脂フィルムの少なくとも繊維製筒状体に接した面が熔融している状態において、前記合成樹脂フィルムをその全幅に亙って押圧して、繊維製筒状体の両縁に形成された彎曲部により合成樹脂フィルムに厚みが極端に薄い易破断部を形成することもできる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、合成樹脂フィルムの裁断箇所において、合成樹脂フィルムの押し出し直後のまだ熔融状態にある間に易破断部を形成するので、上方からローラーなどの適宜の手段で押圧することにより、繊維製筒状体1を傷付けることなく容易に易破断部を形成することができる。
【0016】
そして合成樹脂フィルムが十分に冷却して固化した後、合成樹脂フィルムの余剰部分を引っ張ることにより、その合成樹脂フィルムは前記凹溝の位置で千切れて、余剰部分を容易に切除することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明の実施の形態を図面に従って説明する。図2は本発明により内張り材6を製造する過程において、一次皮膜層5aを形成する工程を示すものであって、扁平に折り畳まれた筒状織物又は不織布などの繊維製筒状体1の一方の扁平面1a上に、合成樹脂フィルム3aを押出した状態を示しており、その合成樹脂フィルム3aにおける繊維製筒状体1の両側縁に相当する位置に、断続的に凹溝7が形成されている。
【0018】
図3は合成樹脂フィルム3aに凹溝7を形成する状態を示すものであって、繊維製筒状体1上に合成樹脂フィルム3aを押出した直後の、合成樹脂フィルム3aがまだ熔融状態にある間に、繊維製筒状体1の両側縁に相当する位置で、合成樹脂フィルム3aの上方からローラー8を押し当て、凹溝7を形成している。
【0019】
このローラー8は、熔融状態の合成樹脂フィルム3aに凹溝7を形成するものであるから、合成樹脂フィルム3aを切断することができるほどの鋭い刃を有して居る必要はなく、熔融状態の合成樹脂を変形させて凹溝7を形成することができれば足りるものであり、ローラー8により繊維製筒状体1が傷付くことはない。
【0020】
そしてこの凹溝7の底部においては、合成樹脂フィルム3aの厚みが極端に薄くなっており、そこからはみ出した余剰部分9を引っ張ることにより、容易に破断する易破断部を形成している。
【0021】
図4は凹溝7の位置で繊維製筒状体1を切断した縦断面図であって、合成樹脂フィルム3aには断続的に凹溝7が形成されている。この凹溝7を形成する手段は前記ローラー8に限定されるものではなく、また凹溝7は連続的なものであってもよく、その凹溝7が合成樹脂フィルム3aを貫通していたとしても差し支えない。
【0022】
而して合成樹脂フィルム3aが繊維製筒状体1の表面において冷却され、固化した後、合成樹脂フィルム3aの余剰部分9を引っ張って、図5に示すように合成樹脂フィルム3aを凹溝7の位置で切断し、余剰部分9を切除する。これによって繊維製筒状体1の表面に合成樹脂フィルム3aよりなる一次皮膜層5aが形成されるのである。
【0023】
この後繊維製筒状体1のもう一方の扁平面1b上にも、同様にして一次皮膜層5bを形成する。然る後先に図1で説明したと同様に、繊維製筒状体1を先に耳部であった部分が扁平部のほゞ中央となるように扁平に折り畳み直し、当該繊維製筒状体1の一方の扁平面上において、Tダイ2から前記一次皮膜層5a、5bの隙間1cの幅よりも若干幅広の合成樹脂フィルム3cを押出被覆して二次皮膜層5cを形成し、さらに他方の扁平面においても同様に隙間1dの位置に二次皮膜層5dを形成し、繊維製筒状体1の全周に亙って被膜層5を形成して内張り材6とする。
【0024】
なお合成樹脂フィルム3cを形成するには、前述のようにTダイ2で直接押出被覆しても良いが、テープ状に成型された合成樹脂フィルムをアイロンなどにより前記隙間1c、1dに熱融着することもできる。
【0025】
図6は本発明において合成樹脂フィルム3aの両縁部に易破断部を形成する他の方法を示すものであって、扁平に折り畳まれた繊維製筒状体1上に押し出された合成樹脂フィルム3aを、その全幅に亙ってローラー11で押圧している。
【0026】
繊維製筒状体1は繊維製の筒状の織物又は不織布よりなるものであるが、これが扁平に折り畳まれることにより、その両縁部の耳部1e、1fにおいては織物などが小さいアールで強く折り畳まれて歪みがかかり、その反発でアールが拡大する傾向にある。一方繊維製筒状体1の扁平面1a、1bにおいては、織物などは平らであるために特段の歪みがかかることがなく、容易に間隔が縮小する。
【0027】
そのため繊維製筒状体1上に合成樹脂フィルム3aを押出して上方から押圧すると、扁平面1a、1bにおいては合成樹脂フィルム3aを介して押圧されて、容易に下方に撓んでその間隔が小さくなるが、耳部1eにおいては容易に押圧されず、逆に弾性によりアールが膨らんで上方に膨出部1gが形成されるため、その膨出部1gが熔融状態の合成樹脂フィルム3aに食い込み、図7に示すように合成樹脂フィルム3aが局部的に極端に厚みが薄くなった易破断部12が形成されるのである。
【0028】
特に前記繊維製筒状体1が複数のたて糸と当該たて糸にスパイラル状に織り込まれたよこ糸とよりなる筒状織物である場合には、その表面には前記たて糸とよこ糸との交差による凹凸が形成されており、前記膨出部1gにもその凹凸が形成されているので、膨出部1gで押圧された合成樹脂フィルム3aにはその凹凸が転写され、凹凸状の易切断部12が容易に形成される。
【0029】
この状態で合成樹脂フィルム3aが十分に冷却された後、合成樹脂フィルム3aにおける余剰部分9を強く引っ張ることにより、図8に示すように合成樹脂フィルム3aは易破断部12において千切れ、余剰部分9が除去される。
【0030】
本発明の方法によれば、繊維製筒状体1の扁平面1a、1b上に合成樹脂フィルム3aを押出し、その合成樹脂フィルム3aが熔融状態の間に繊維製筒状体1の両側部の位置に易破断部7、12を形成し、その合成樹脂フィルム3aが固化した後、その余剰部分9を引っ張って易破断部7、12の位置で切除するので、余剰部分9を除去する際に鋭い刃物を使用することがなく、繊維製筒状体1を傷付ける恐れがない。
【0031】
また合成樹脂フィルム3aの余剰部分9を切除する際には、易破断部7、12において一次皮膜層5a、5bと余剰部分9との間が繋がっており、余剰部分9を引っ張ることによりその繋がりの部分が引き千切られ、図5及び図8に示すように部分的に引き伸ばされた毛羽10が生じる。
【0032】
しかしながらその毛羽10は細く熔融しやすいので、後の工程において一次皮膜層5a、5bの隙間1c、1dに合成樹脂フィルム3bを押出して二次皮膜層5c、5dを形成するときに、毛羽10が熔融状態の合成樹脂フィルム3bに触れて軟化して一体化し、一次皮膜層5a、5bと二次皮膜層5c、5dとが一体化して、連続した皮膜層5を形成する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の方法による内張り材の製造方法の工程を示す横断面図
【図2】本発明の方法により繊維製筒状体の扁平面上に合成樹脂フィルムを押出した状態の斜視図
【図3】本発明において合成樹脂フィルムに凹溝を形成する状態を示す横断面図
【図4】凹溝の位置における縦断面図
【図5】凹溝において余剰部分を切除した状態を示す横断面図
【図6】本発明の他の方法を示す斜視図
【図7】図6の方法における、繊維製筒状体の耳部の拡大横断面図
【図8】図7の状態から余剰部分を切除した状態を示す横断面図
【符号の説明】
【0034】
1 繊維製筒状体
2 Tダイ
3 合成樹脂フィルム
5 皮膜層
6 内張り材
7 凹溝(易破断部)
8 ローラー
9 余剰部分
12 易破断部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維製筒状体(1)を扁平に折り畳み、当該繊維製筒状体(1)の両扁平面(1a、1b)上に順次、押出装置(2)から当該扁平面(1a、1b)の幅よりも若干幅広の合成樹脂フィルム(3a)を押出し、当該合成樹脂フィルム(3a)の少なくとも繊維製筒状体(1)に接した面が熔融している状態において、前記扁平面(1a、1b)の両縁において合成樹脂フィルム(3a)に厚みが極端に薄くなった易破断部(7、12)を形成し、合成樹脂フィルム(3a)が冷却した後余剰部分(9)を引っ張って、前記易破断部に沿って合成樹脂フィルム(3a)の余剰部分(9)を切除して一次皮膜層(5a、5b)を形成し、然る後前記繊維製筒状体(1)を先に耳部であった部分が扁平部のほゞ中央となるように扁平に折り畳み直し、当該繊維製筒状体(1)の新たな両扁平面上において、前記一次皮膜層(5a、5b)の隙間(1c、1d)の幅よりも若干幅広の合成樹脂フィルム(3b)を被覆して二次皮膜層(5c、5d)を形成し、繊維製筒状体(1)の全周を合成樹脂フィルムの被膜層で覆うことを特徴とする、管路の内張り材の製造方法
【請求項2】
扁平状態の繊維製筒状体(1)の扁平面(1a、1b)上に合成樹脂フィルム(3a)を押し出した後、当該合成樹脂フィルム(3a)の熔融状態において前記扁平面(1a、1b)の両縁において、合成樹脂フィルム(3a)の表面から押圧して前記易破断部としての連続又は断続する凹溝(7)を形成して易破断部とすることを特徴とする、請求項1に記載の管路の内張り材の製造方法
【請求項3】
扁平状態の繊維製筒状体(1)の扁平面(1a、1b)上に合成樹脂フィルム(3a)を押し出した後、当該合成樹脂フィルム(3a)の少なくとも繊維製筒状体(1)に接した面が熔融している状態において、前記合成樹脂フィルム(3a)をその全幅に亙って押圧して、繊維製筒状体(1)の両縁に形成された彎曲部により合成樹脂フィルム(3a)に厚みが極端に薄い易破断部(12)を形成することを特徴とする、請求項1に記載の管路の内張り材の製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−55615(P2008−55615A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231590(P2006−231590)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】