説明

粉体を含有する水中油乳化剤形の皮膚外用剤

【課題】PCA変性ジメチコンと粉体とを含有する、安定な水中油剤形の皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】1)アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、並びに、脂肪酸石鹸を実質的に含有しない水中油乳化剤形の皮膚外用剤に、2)ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンを含み、3)親水性の界面活性剤として、重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルと、4)重合度20〜60のポリオキシエチレンの脂肪酸のエステルと、5)粉体とを含有させる。親油性の界面活性剤として、ステアリン酸モノグリセライドと、少なくともどちらか1方が1気圧25℃の条件下で液状である、2種以上のソルビタン脂肪酸エステルとを含有させる。前記粉体は、表面を次に示す処理から選択される1種乃至は2種以上で処理されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には、紫外線防護化粧料などに好適な、粉体を含有する、水中油乳化剤形の皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ファンデーションなどにおいて隠蔽成分或いは着色成分として用いられている原料は、その多くが酸化亜鉛、二酸化チタン、酸化鉄乃至はこれらの複合化物等の様に、金属酸化物乃至はその改変体が殆どであり、その比重は何れも3以上であり、非常に大きい。この様な成分を水性成分乃至は水性成分を乳化してなる乳化構造中に安定に分散するためには、前記の大きな比重に抗する為の粘度構造が必要となる。又、前記金属酸化物は部分的に電離し、等電点を有する性質が存することから、ファンデルワールス力に起因する架橋構造によって粘度を創する、カルボキシビニルポリマー塩やアルキル変性カルボキシビニルポリマー塩等の、粉体を含有しない化粧料で使用される増粘剤を用いての粘度維持は実質的に不可能であった。これは金属酸化物の部分電離部分が、増粘剤の架橋構造を壊すため、増粘剤を添加しても、系の粘度は増加しないからである。この様な状況を反映して、水性担体に粉体を分散させるには、経時的に粉体が沈降し、二層構造を呈する用時分散型の製剤(例えば、特許文献1を参照)、脂肪酸石鹸と固形の脂肪酸と固形の非イオン界面活性剤の作るゲル構造を利用した水中油乳化剤形(例えば、特許文献2を参照)、乃至は、ジグリセリンモノ脂肪酸エステルと糖類の作る構造や有機変性粘土鉱物の作る構造を利用した油中水乳化剤形(例えば、特許文献3を参照)を利用するのが常法であった。
【0003】
しかしながら、この様な系に於いては、pHに対する系の許容度が狭い、特に、高pHを必要とする、或いは、内相が多いと言っても、使用感としては油中水乳化系の特徴を有しており、水中油乳化剤形ほどは軽くないし、脂っぽさを感じる等の欠点が存し、非石鹸乳化系であって、水中油乳化剤形の、粉体含有化粧料の開発が望まれていたと言える。
【0004】
又、ピロリドンカルボン酸(以下、PCA)変性ジメチルポリシロキサンは、乳化剤形、固形粉体剤形、油性ゲル剤形問わず、優れた、経皮的水分損失抑制作用(TEWL)を発現するので、有用な化粧料などの皮膚外用剤原料である。特に、ともすれば皮膚に乾燥感を生じさせる、粉体の存在下、しっとり感を向上せしめるとともに、実際の効果としてもTEWLを抑制させるというユニークな特性が存する。しかしながら、このものは乳化されにくい特性も同時に有しており、唯一製剤化可能な乳化剤形は、アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、或いは、脂肪酸石鹸等の水性架橋ゲル構造を利用した乳化系であると言われている。(例えば、特許文献4、特許文献5を参照)従って、粉体とPCA変性ジメチコンが共存する水中油乳化剤形は、優れた特性が予測されながら、非常に実現可能性の低い剤形であると考えられていた。従って、PCA変性ジメチコンと粉体とを含有する剤形としては、油性化粧料や固形粉末化粧料が知られているのみであった。(例えば、特許文献6、特許文献7を参照)
【0005】
一方、重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルを用いた乳化系としては、ホスファチジルコリンとともにラメラ構造を作り、これを利用して、アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、並びに、脂肪酸石鹸を実質的に含有しない水中油乳化剤形を具現化する技術が開示されている(例えば、特許文献8を参照)が、ホスファチジルコリンに由来する、他の成分との相溶性、ラメラ構造を利用することによる、系の絶対的な安定性に課題を残している。この為、この様な系には粉体を含有させることが出来ず、前記課題のは解決していないと言える。
【0006】
他方、1)アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、並びに、脂肪酸石鹸を実質的に含有しない水中油乳化剤形の化粧料であって、2)ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンを含み、3)親水性の界面活性剤として、重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルと、4)重合度20〜60のポリオキシエチレンの脂肪酸のエステルと、5)粉体とを含有する皮膚外用剤は全く知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開2007−119410号公報
【特許文献2】特開2007−39371号公報
【特許文献3】特開2007−269761号公報
【特許文献4】特開2007−210893号公報
【特許文献5】特開2007−210892号公報
【特許文献6】特開2006−169207号公報
【特許文献7】特開2003−261415号公報
【特許文献8】特開2007−314442号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、PCA変性ジメチコンと粉体とを含有する、安定な水中油剤形の皮膚外用剤を提供することを課題とする。尚、ここで、本発明で言う水中油乳化剤形とは、外相に連続相としての水相が存在する乳化剤形の総称で、分散滴は油滴であっても、油中水乳化滴であっても良い。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、PCA変性ジメチコンと粉体とを含有する、安定な水中油剤形の皮膚外用剤を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、親水性の界面活性剤として、重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルを用い、重合度20〜60のポリオキシエチレンの脂肪酸のエステルとともに、油性成分を乳化した剤形がこの様な特性を備えていることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
(1)1)アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、並びに、脂肪酸石鹸を実質的に含有しない水中油乳化剤形の皮膚外用剤であって、2)ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンを含み、3)親水性の界面活性剤として、重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルと、4)重合度20〜60のポリオキシエチレンの脂肪酸のエステルと、5)粉体とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
(2)親油性の界面活性剤として、ステアリン酸モノグリセライドと、少なくともどちらか1方が1気圧25℃の条件下で液状である、2種以上のソルビタン脂肪酸エステルとを含有することを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3)前記粉体は、表面を次に示す処理から選択される1種乃至は2種以上で処理されていることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
ハイドロジェンメチルシロキサン焼付処理、ジメチルポリシロキサン焼付処理、シリル化処理、N−アシルアミノ酸塩被覆処理、リン脂質被覆処理
(4)前記粉体の表面処理は、N−アシルアミノ酸塩被覆処理と、シリル化処理の二重処理であることを特徴とする、(3)に記載の皮膚外用剤。
(5)更に、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール及びバチルアルコールから選択される1種乃至は2種以上と、分岐の脂肪酸とを含有することを特徴とする、(1)〜(4)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(6)紫外線防護化粧料であることを特徴とする、(1)〜(5)何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、PCA変性ジメチコンと粉体とを含有する、安定な水中油剤形の皮膚外用剤を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサン
本発明の皮膚外用剤は、ピロリドンカルボン酸(PCA)変性ジメチルポリシロキサンを必須成分として含有することを特徴とする。かかる成分は、ジメチルポリシロキサン骨格の一部にPCA残基を導入したものであり、既に化粧料原料として使用されており、化粧料原料としての市販品も存在する。この様な市販品の内、特に好適なものとしては、ユニケマ社から販売されている「モナシルPCA」が例示できる。かかる成分は、粉体との共存下であっても、アトピー性皮膚炎、紫外線照射などで低下した皮膚バリア機能、例えば、経皮的水分散逸の亢進などを抑制する機能を、補完する作用を発揮する。更に、粉体によって誘起されやすい乾燥感の発現を抑制する作用も有する。この様な効果を奏するためには、本発明の皮膚外用剤においては、PCA変性ジメチルポリシロキサンを0.1〜10質量%含有することが好ましく、0.5〜5質量%含有することが特に好ましい。これは少なすぎるとこの様な効果を奏さない場合が存し、多すぎても、効果が頭打ちになり、乳化系の安定性を損なう場合が存するためである。
【0012】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分である重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステル
本発明の皮膚外用剤は、アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、並びに、脂肪酸石鹸を実質的に含有しない水中油乳化剤形の皮膚外用剤であって、親水性の界面活性剤として、重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルを必須成分として含有することを特徴とする。かかる界面活性剤において、エステルとしてモノ脂肪酸エステルも利用できるし、ジ脂肪酸エステルも利用できるが、乳化特性からはモノ脂肪酸エステルを用いることが好ましい。又、脂肪酸残基としては、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、ベヘン酸残基、イソパルミチン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、リノレイン酸残基等が好ましく例示でき、具体的には、モノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましく用いられる。ポリエチレングリコールの平均重合度としては、100〜200のものが、より好ましくは、140〜160のものが安定性の高く、ゲル構造もしっかりした水中油乳化系を形成するので好ましい。この様な平均重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルには既に市販のものが存し、かかる市販品を購入して利用することが出来る。この様な市販品としては、例えば、「AEC PEG−100 Stearate」(平均重合度100のモノステアリン酸エステル;A&E Connock社製)、「Botanimulse 100−S」(平均重合度100のモノステアリン酸エステル;Botanigenics社製)、「Crodet S100」(平均重合度100のモノステアリン酸エステル;Crodet Chemicals Europe社製)、「エマレックス6300MST」(平均重合度150のモノステアリン酸エステル;日本エマルジョン株式会社製)などが好ましく例示できる。かかる成分は、唯一種を含有させることも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来、後記の重合度20〜60のポリオキシエチレンの脂肪酸のエステルとともに働いて、pH許容性が高く、粉体凝集性も少ない水中油乳化剤形を実現する。この為には、かかる成分は、皮膚外用剤全量に対して、総量で0.1〜2質量%含有することが好ましく、より好ましくは0.2〜1質量%である。
【0013】
(3)本発明の皮膚外用剤の必須成分である重合度20〜60のポリオキシエチレンの脂肪酸のエステル
本発明の皮膚外用剤は、アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、並びに、脂肪酸石鹸を実質的に含有しない水中油乳化剤形の皮膚外用剤であって、親水性の界面活性剤として、重合度20〜60のポリオキシエチレンの脂肪酸のエステルを必須成分として含有することを特徴とする。かかる界面活性剤において、エステルとしてモノ脂肪酸エステルも利用できるし、ジ脂肪酸エステルも利用できるが、乳化特性からはモノ脂肪酸エステルを用いることが好ましい。又、脂肪酸残基としては、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、ベヘン酸残基、イソパルミチン酸残基、イソステアリン酸残基、オレイン酸残基、リノール酸残基、リノレイン酸残基等が好ましく例示でき、具体的には、モノステアリン酸ポリエチレングリコールが好ましく用いられる。かかるモノステアリン酸ポリエチレングリコールに於いて、好ましいポリエチレングリコールの平均重合度は、20〜60であり、より好ましくは25〜50である。かかる成分は、前記重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルとともに働いて、pH許容性が高く、粉体凝集性も少ない水中油乳化剤形を実現する。この為には、かかる成分は、皮膚外用剤全量に対して、総量で0.5〜3質量%含有することが好ましく、より好ましくは1〜2質量%である。又、かかる含有量は、前記重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルの含有量の総量に対して、3〜6質量倍であることが好ましい。
【0014】
(4)本発明の皮膚外用剤の必須成分である粉体
本発明の皮膚外用剤は、粉体を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤で使用できる粉体としては、化粧料などの皮膚外用剤で使用されている粉体、乃至は、該化粧料用の粉体の表面処理を改変した粉体などが好ましく例示でき、基体となる粉体としては、具体的には、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、群青、紺青、カオリン、タルク、ベントナイト、マイカ、セリサイト、チタンマイカ、チタンセリサイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、或いは、これらの複合化体などが好適に例示でき、表面処理としては、ハイドロジェンメチルシロキサン焼付処理、ジメチルポリシロキサン焼付処理、シリル化処理、N−アシルアミノ酸塩被覆処理及びリン脂質被覆処理から選択される1種乃至は2種以上が好ましく、処理量としては、全粉体量に対して、1〜30質量%が好ましい。かかる表面処理は少なくとも2種以上を施す。特に好ましい処理は、第1の処理として、N−アシルアミノ酸塩で被覆処理した形態である。該N−アシルアミノ酸塩としては、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基、オレオイル基など、アシル基として炭素数10〜30の脂肪族のアシル基を好ましく有し、アミノ酸部分としては、リジン残基乃至はグルタミン酸残基を好ましく有し、塩としては、アルミニウム塩乃至は亜鉛塩を好ましく採用するものである。具体的な例示としては、N−ラウロイルグルタミン酸アルミニウム塩、N−ラウロイルグリシンアルミニウム塩、N−ラウロイルグルタミン酸亜鉛塩、N−ラウロイルグリシン亜鉛塩、N−ステアロイルグルタミン酸アルミニウム塩、N−ステアロイルグルタミン酸亜鉛塩等が好適に例示でき、N−ラウロイルグルタミン酸アルミニウム塩が特に好適に例示できる。この様なN−アシルアミノ酸塩の被覆は、例えば、N−ステアロイルグルタミン酸アルミニウム被覆を例に取れば、N−ステアロイルグルタミン酸ナトリウムの水溶液に粉体を分散させ、しかる後、かかる粉体に、塩化アルミニウムの水溶液を添加し、N−ステアロイルグルタミン酸アルミニウムを粉体上に沈着させればよい。
【0015】
<製造例1>
二酸化チタン100gを500mlの1%N−ステアロイルグルタミン酸ナトリウム水溶液に分散させ、これに125mlの1%塩化アルミニウム水溶液を加え、緩やかに4時間攪拌し、N−ステアロイルグルタミン酸アルミニウムを二酸化チタン表面に沈積させた。反応終了後遠心分離(3000g、10分)して上清を捨て、更に1000mlの水を加え、攪拌した後、遠心分離し、洗浄する作業を3回行った。沈殿した粉体を乾燥させ、擂壊機で壊砕し、1mmヘリングボーンスクリーンを装着したパルベライザーで粉砕し、N−ステアロイルグルタミン酸アルミニウム被覆二酸化チタンである粉体1を得た。(被覆率約5質量%)
【0016】
<製造例2>
二酸化チタンをベンガラ(赤)に代えて、同様に処置し、粉体2を得た。
【0017】
<製造例3>
二酸化チタンを黄色酸化鉄に代えて、同様に処置し、粉体3を得た。
【0018】
<製造例4>
二酸化チタンをベンガラ(紫)に代えて、同様に処置し、粉体4を得た。
【0019】
斯くして得られた第一の表面処理を施された粉体は、第一の処理とは異なる第二の表面処理を施される。第二の表面処理として好適なものとしては、シリル化処理、ハイドロジェンメチルポリシロキサン焼付処理、ジメチルポリシロキサン焼付処理などが好適に例示でき、シリル化処理乃至はハイドロジェンメチルポリシロキサン処理が特に好ましい。かかる処理は、塩化メチレンなどの溶媒で処理成分を希釈し、該希釈液を第一の表面処理を施した粉体に被覆せしめ、しかる後に100〜200℃で1〜72時間焼付を行うことによりなされる。かかる処理は、粉体全量に対して1〜30質量%施すことが好ましい。斯くの如く二重の処理を施された粉体は、そのものを本発明の皮膚外用剤に含有せしめることも出来るし、更に、第一の処理、或いは、第一の処理とも第二の処理とも異なる処理を施すことも出来る。
【0020】
<製造例5>
粉体1の105gに1gのハイドロジェンメチルポリシロキサンを50mlの塩化メチレンに溶解させて、コーティングし、ロータリーエバポレーターで攪拌しながら減圧乾燥させ、これを電気炉中で100℃36時間焼付を行い、粉体5を得た。
【0021】
<製造例6>
粉体1を粉体2に代えて、同様に処置し、粉体6を得た。
【0022】
<製造例7>
粉体1を粉体3に代えて、同様に処置し、粉体7を得た。
【0023】
<製造例8>
粉体1を粉体2に代えて、同様に処置し、粉体8を得た。
【0024】
<製造例9>
粉体5の106gに1gのメトキシトリメチルシランを50mlの塩化メチレンに溶解させて、コーティングし、ロータリーエバポレーターで攪拌しながら減圧乾燥させ、これを電気炉中で100℃36時間焼付を行い、粉体9を得た。
【0025】
<製造例10>
粉体5を粉体6に代えて、同様に処置し、粉体10を得た。
【0026】
<製造例11>
粉体5を粉体7に代えて、同様に処置し、粉体11を得た。
【0027】
<製造例12>
粉体5を粉体8に代えて、同様に処置し、粉体12を得た。
【0028】
多層表面被覆処理粉体は前記の如くに調整して用いることも出来るが、既に、多層表面被覆処理を施した粉体が市販されているので、この様な市販の粉体を購入して使用することも可能である。この様な市販品としては、例えば、三好化成工業株式会社から販売されている、「SA/NAI−Y−10」(N−ラウロリルグルタミン酸アルミニウム1.2%、トリメチルシリルジメチコン8%被覆黄色酸化鉄)、「SA/NAI−R−10」(N−ラウロリルグルタミン酸アルミニウム1.2%、トリメチルシリルジメチコン8%被覆ベンガラ)、「SA/NAI−ベンガラ79−P」(N−ラウロリルグルタミン酸アルミニウム1.2%、トリメチルシリルジメチコン8%被覆ベンガラ)、「SA/NAI−TR−10」(N−ラウロリルグルタミン酸アルミニウム1.2%、トリメチルシリルジメチコン8%被覆二酸化チタン)等が好ましく例示できる。
【0029】
(4)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分を含有し、アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、並びに、脂肪酸石鹸を実質的に含有しない水中油乳化剤形の皮膚外用剤であることを特徴とする。言い換えれば、本発明の皮膚外用剤は脂肪酸石鹸ゲルや、水溶性増粘剤の架橋ゲル構造に、その安定性を委ねていない水中油乳化剤形であり、この為、pH許容性が高く、粉体凝集性も少ない特性を有する。加えて、比重の大きい粉体を沈降することなく、長期にわたって分散安定化する作用を有する。この様な特性をより明確なものにするためには、親油性の界面活性剤として、ステアリン酸モノグリセライドと、少なくともどちらか1方が1気圧25℃の条件下で液状である、2種以上のソルビタン脂肪酸エステルとを含有することが好ましい。前記ソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノステアレート(固体)、ソルビタンセスキステアレート(固体)、ソルビタンジステアレート(固体)、ソルビタンモノラウレート(液体)、ソルビタンセスキラウレート(液体)、ソルビタンオレート(液体)、ソルビタンセスキオレート(液体)、ソルビタンモノイソステアレート(液体)、ソルビタンセスキイソステアレート(液体)等が好ましく例示できる。かかる組合せに於いて、好ましい組合せは、ソルビタンジステアレートとソルビタンセスキイソステアレートの組合せが特に好ましい。かかる組合せの質量比は、20:1〜10:1が好ましく例示できる。又、ステアリン酸モノグリセライドと、ソルビタン脂肪酸エステルの好ましい質量比は、3:1〜1:1であり、2:1〜1:1が特に好ましい。更に、親油性の非イオン界面活性剤の含有量は、総量で1〜10質量%が好ましく、2〜5質量%がより好ましい。更に詳細には、ステアリン酸モノグリセライド1〜5質量%とソルビタン脂肪酸エステルを0.5〜3質量%とを含有する形態が好適に例示できる。
【0030】
本発明の皮膚外用剤においては、かかる成分以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤、エストラジオール、エストリオール、ハイドロコルチゾンなどのステロイド剤、ブテナフィン、アモロルフィン、テルビナフィン、ビフォナゾール、フルコナゾールなどの抗真菌剤、インドメタシン、ブフェキサマクなどの抗炎症剤、鎮痛剤などが好ましく例示できる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤は、前記必須成分、任意成分を常法に従って処理することにより製造することが出来る。本発明の皮膚外用剤としては、例えば、医薬部外品を包含する化粧料、皮膚外用医薬品、皮膚外用雑貨等が好ましく例示できる。特に好ましいものは化粧料であり、これは本願発明の皮膚外用剤の使用感の心地よさに起因する。又、アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、並びに、脂肪酸石鹸を実質的に含有しないことから、これらの成分に起因する化粧崩れ伸しやすさも抑制でき、又、粉体類を長期間安定に分散保持できることも考え合わせると、メークアップ化粧料或いは紫外線防護化粧料に応用することが好ましい。この様な形態での使用により、化粧持ちを著しく向上した、メークアップ化粧料や紫外線防護化粧料を提供することが可能である。
以下に、実施例を挙げて本発明について、更に詳細に説明を加える。
【実施例1】
【0032】
下記の処方に従って、本発明の皮膚外用剤(紫外線防護化粧料;水中油滴乳化剤形)を作成した。即ち、イ、ロを80℃に加温し、攪拌下徐々にイにロを加え、しかる後に攪拌冷却し、本発明の皮膚外用剤1を乳液として得た。尚、ペーストは下記の表2の成分をコボルミルで均一分散させたものを用いた。同様に操作して、「エマレックス6000MST」をPOE(45)ステアリン酸に置換した比較例1、POE(45)ステアリン酸を「エマレックス6000MST」に置換した比較例2、POE(20)ベヘニルエーテルに置換した比較例3、「エマレックス6000MST」とPOE(45)ステアリン酸をともにPOE(20)に置換した比較例3、比較例1の「モナシルPCA」をフェニルメチコンに置換した比較例4も作成した。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
<試験例1>
皮膚外用剤1、比較例1〜4及び下記に処方を示す参考例(カルボキシビニルポリマーを利用した乳液;表3)について、40℃1ヶ月の条件での温度安定性を調べた。結果を表4に示す。これより、本発明の皮膚外用剤は粉体分散性及びその安定性に優れることが分かる。又、粉体の存在下、水中油乳化剤形に於いては、「モナシルPCA」の添加により、乳化性が損なわれていることも確認できた。本発明の皮膚外用剤は粉体存在下、「モナシルPCA」を好適に乳化できる水中油乳化剤形であるとも言える。
【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
<試験例2>
前腕内側部に2cm×4cmの部位を作成し、ここに皮膚外用剤1、比較例1〜4及び参考例の化粧料を40μl塗布し、10分間静置した後、温水を1分間流し、水気をタオルで軽くぬぐい、地肌との色差をコニカミノルタ社製色彩色差計CR400で測定した。結果を表5に示す。
【0039】
【表5】

【実施例2】
【0040】
皮膚外用剤1のペーストを下記に示すペースト2(表6)、ペースト3(表7)に置換して、同様に操作して、本発明の皮膚外用剤2、3を作成した。皮膚外用剤2は40℃でやや離しょうを観察し、評価2でのΔEは1.5であり、皮膚外用剤3は40℃でやや離しょうを観察し、評価2でのΔEは1.8であった。多層被覆粉体を使用することが好ましいことが分かる。
【0041】
【表6】

【0042】
【表7】

【実施例3】
【0043】
実施例1と同様に、下記の処方に従ってペースト3を作成し、皮膚外用剤1のペーストと置換して、同様に処理し、皮膚外用剤4(ファンデーション)を得た。このものは、40℃1ヶ月の保存で安定であり、評価2でのΔEは2.3であった。
【0044】
【表8】

【実施例4】
【0045】
実施例1と同様に本発明の皮膚外用剤5(ファンデーション)を作成した。このものを40℃で1ヶ月保存しても、分離は全く観察されなかった。又、試験例2の評価試験の結果はΔEが1.9であり、その効果が確認された。
【0046】
【表9】

【実施例5】
【0047】
実施例1と同様に本発明の皮膚外用剤6(ファンデーション)を作成した。このものを40℃で1ヶ月保存しても、分離は全く観察されなかった。又、試験例2の評価試験の結果はΔEが1.8であり、その効果が確認された。
【0048】
【表10】

【実施例6】
【0049】
ペーストをペースト4(表11)に置換して、実施例1と同様に処理して、本発明の皮膚外用剤7(ファンデーション)を作成した。このものを40℃で1ヶ月保存しても、分離は全く観察されなかった。又、試験例2の評価試験の結果はΔEが1.9であり、その効果が確認された。
【0050】
【表11】

【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、紫外線防護化粧料やファンデーションなどの皮膚外用剤に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)アルキル変性されていても良い、アクリル酸及び/又はメタクリル酸のポリマーの塩、並びに、脂肪酸石鹸を実質的に含有しない水中油乳化剤形の皮膚外用剤であって、2)ピロリドンカルボン酸変性ジメチルポリシロキサンを含み、3)親水性の界面活性剤として、重合度100〜200のポリオキシエチレンの脂肪酸エステルと、4)重合度20〜60のポリオキシエチレンの脂肪酸のエステルと、5)粉体とを含有することを特徴とする、皮膚外用剤。
【請求項2】
親油性の界面活性剤として、ステアリン酸モノグリセライドと、少なくともどちらか1方が1気圧25℃の条件下で液状である、2種以上のソルビタン脂肪酸エステルとを含有することを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
前記粉体は、表面を次に示す処理から選択される1種乃至は2種以上で処理されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
ハイドロジェンメチルシロキサン焼付処理、ジメチルポリシロキサン焼付処理、シリル化処理、N−アシルアミノ酸塩被覆処理、リン脂質被覆処理
【請求項4】
前記粉体の表面処理は、N−アシルアミノ酸塩被覆処理と、シリル化処理の二重処理であることを特徴とする、請求項3に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
更に、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール及びバチルアルコールから選択される1種乃至は2種以上と、分岐の脂肪酸とを含有することを特徴とする、請求項1〜4何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
紫外線防護化粧料であることを特徴とする、請求項1〜5何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2009−149556(P2009−149556A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328306(P2007−328306)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】