説明

粉体塗装装置における塗料残量計測装置

【課題】 粉体塗装装置の稼働時間から簡単に、粉体塗料タンク1内の粉体塗料Aの残量を計測することができるようにする。
【解決手段】 メインエアーノズル7の流量絞り弁10と、サブエアーノズル8の流量絞り弁11を調節する電子制御装置13に、インジェクター2の稼働時間を積算し、その積算時間に、単位時間当たりの粉体塗料Aの吐出量を掛けあわせて計算した粉体塗料積算使用量を計算し、粉体塗料タンク1の初期投入量から粉体塗料積算使用量を減算して粉体塗料タンク1の残量を計測する残量計測プログラムを内蔵させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、粉体塗料タンクから粉体塗料を吸引し、粉体塗装ガンに供給する粉体塗装装置における塗料残量計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粉体塗装装置は、粉体塗料タンクから粉体塗料を吸引し、吐出口から搬送ホースを介して、粉体塗装ガンに粉体塗料をエアー搬送するインジェクターを備えている。
【0003】
インジェクターは、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるメインエアーノズルを有し、このメインエアーノズルから供給されるメインエアーによってインジェクター本体内に負圧を生じさせ、この負圧によって粉体塗料タンクから粉体を吸引し、メインエアーと共に、吐出口から粉体塗料を吐出する装置である。
【0004】
ところで、インジェクター本体から吐出された粉体塗料は、メインエアーによって搬送ホース内に搬送されるが、搬送ホース内に安定した搬送エアーを供給するために、インジェクターに、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるサブエアーノズルを設けて、搬送ホース内に、メインエアーと共に、サブエアーを供給するようにしたものが一般的に用いられている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−273282号公報
【特許文献2】特開2006−102708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来、粉体塗料タンクから粉体塗料を吸引し、粉体塗装ガンに供給する粉体塗装装置においては、粉体塗料タンク内の粉体塗料の残量が少なくなると、粉体塗料タンクに新粉を補充したり、粉体塗料タンクを新しいものに取り替えたりする必要がある。
【0007】
ところが、従来、粉体塗料タンク内の粉体塗料の残量を知るためには、粉体塗料タンクの重量を計測したり、粉体塗料タンク内の粉体塗料の高さをレベラーで計測したりする必要がある。
【0008】
このような方法で、残量を計測するには、装置コストが掛かったり、複雑な制御を行ったりする必要がある。
【0009】
そこで、この発明は、粉体塗装装置の稼働時間から簡単に、粉体塗料タンク内の粉体塗料の残量を計測しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の課題を解決するために、この発明は、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるメインエアーノズルを有し、このメインエアーノズルから供給されるメインエアーによって粉体塗料タンクから粉体塗料を吸引し、吐出口から搬送ホースを介して粉体塗装ガンに粉体塗料のエアー搬送を行うインジェクターを備え、インジェクターにサブエアーを供給する、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるサブエアーノズルを設け、メインエアーノズルの流量絞り弁と、サブエアーノズルの流量絞り弁を調節する電子制御装置を備え、上記電子制御装置に、インジェクターの稼働時間を積算し、その積算時間に、単位時間当たりの粉体塗料の吐出量を掛けあわせて計算した粉体塗料積算使用量を計算し、粉体塗料タンクの初期投入量から粉体塗料積算使用量を減算して粉体塗料タンクの残量を計測する残量計測プログラムを内蔵させたものである。
【0011】
そして、粉体塗料タンクの残量が、予め入力した値を下回った場合に、警告表示あるいは粉体塗料の補充表示を行うようにする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、メインエアーノズルの流量絞り弁と、サブエアーノズルの流量絞り弁を調節する電子制御装置に、インジェクターの稼働時間と、インジェクターを稼働させた場合における単位時間当たりの粉体塗料の吐出量を予め実測して入力しておくだけで、粉体塗料タンクの残量計算が行える。
【0013】
したがって、特別な重量計やレベラーを使用することなく、粉体塗装装置の稼働時間から簡単に、粉体塗料タンク内の粉体塗料の残量を計測することができるので、装置コストの低減化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明に係る粉体塗装装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
図1は、流動式の粉体塗料タンク1から粉体塗料Aをインジェクター2によって吸引して、塗装ガン3に粉体塗料をエアー搬送して吐出する粉体塗装装置に使用する粉体搬送装置を示している。塗装ガン3としては、ガン先端にコロナ電極を備えたコロナ静電式塗装ガン、ガン本体内に摩擦チューブを備える摩擦帯電式静電塗装ガンがある。
【0016】
粉体塗料タンク1は、下部が多孔質板4によって仕切られ、多孔質板4の下方から除湿除油されたコンプレサーエアー5が導入されている。多孔質板4から吐出される流動エアーにより、粉体塗料タンク1内の粉体塗料Aは、除湿され流動状態になって分散している。
【0017】
粉体塗料タンク1の上部には、粉体塗料タンク1内の粉体塗料Aを吸引して、搬送ホース6を介して、粉体塗料Aを塗装ガン3にエアー搬送するインジェクター2が設置されている。
【0018】
インジェクター2には、メインエアーノズル7とサブエアーノズル8が設けられている。
【0019】
メインエアーノズル7とサブエアーノズル8には、圧縮エアーが供給されるコンプレッサー等の圧縮エアー源9にそれぞれ流量絞り弁10、11を介して接続されている。
【0020】
圧縮エアー源9と流量絞り弁10、11との間には、減圧弁15が設置されている。
【0021】
流量絞り弁10、11は、電子制御装置13によって開度が自動調整される。
【0022】
電子制御装置13には、流量絞り弁10、11の開度と、メインエアーノズル7のメインエアー量に対応する粉体吸引量、サブエアーノズル8のサブエアー量の実測値との関係が予め指令値として入力されている。また、電子制御装置13には、インジェクター2の稼働時間を積算する積算手段と、その積算時間に、単位時間当たりの粉体塗料Aの吐出量を掛けあわせて計算した粉体塗料積算使用量を計算し、粉体塗料タンク1の初期投入量から粉体塗料積算使用量を減算して粉体塗料タンク1の残量を計測する残量計測手段を備えるプログラムを内蔵させている。
【0023】
そして、粉体塗料タンク1の残量が、予め入力した値を下回った場合に、警告表示あるいは粉体塗料Aの補充表示を行うようにしている。
【0024】
インジェクター2のメインエアーノズル7から供給される圧縮エアーは、メインエアーと呼ばれ、粉体塗料Aをベンチュリーの原理で吸引口12に負圧を与えて吸引管16を経由して粉体塗料Aを吸引して塗装ガン3に搬送を行なう作用を有する。一般に、このメインエアーのエアーの圧、量を多くすると、吸引口12からのベンチュリー効果が増大し、吐出口14からの吐出量が増え、塗装ガン3からの単位時間当たりの粉体量が多くなる。
【0025】
次に、サブエアーノズル8から供給されるサブエアーは、主として、塗料タンク1の設置場所や、ガン配置によって搬送ホース6の長さ及びその抵抗が異なるため、粉体塗料Aが搬送ホース6内を均一に安定した速度で搬送する役目を担っている。
【0026】
塗装時は、メインエアーノズル7とサブエアーノズル8からメインエアーとサブエアーの2つのエアーがインジェクター2に供給され、塗料タンク1内の粉体塗料Aが、吸引管16、吸引口12、吐出口14、搬送ホース6を経て塗装ガン3から粉体塗料が吐出される。
【0027】
このメインエアーとサブエアーの調整は、次のように行われる。
メインエアー量(l/min)は、塗装ガン3から吐出する単位時間当たりの粉体塗料Aの吐出量(g/min)が目的とする吐出量になるように、設定される。
【0028】
サブエアー量(l/min)は、被塗装物の形状等により設定した総エアー量からメインエアー量を差し引いた量に設定される。
【0029】
そして、総エアー量を変更する場合、例えば、総エアー量を100(l/min)で運転していた塗装作業を、総エアー量を90(l/min)に落として行う場合には、メインエアー量は変更させずに、サブエアー量だけを、10(l/min)減少するように、サブエアーノズル8の流量絞り弁11の開度を、電子制御装置13により調整する。
【0030】
このように、総エアー量を変更しても、メインエアー量は変更されないので、粉体塗料の吐出量(g/min)を一定に保つことができる。
【0031】
したがって、予め計測しておいたメインエアー量と塗料吐出量の関係式を用いることで、現在の設定値(吐出指令値)に対する粉体塗料Aの吐出量、即ち、単位時間当たりの吐出量(g/min)を計算で求めることができるので、この値を、メインエアーノズル8が稼働している時間に掛け合わすと、粉体塗料Aの積算使用量を求めることができ、この積算使用量を粉体塗料タンク1の初期の塗料量から減算していくことにより、粉体塗料タンク1の残量を簡単に求めることができる。
【0032】
例えば、吐出量の設置値が50で、総エアー量の設定値が100という条件で、インジェクター2を稼働させて、30秒間スプレーした際の粉体塗料Aの吐出量が実測値で60gの場合、吐出量の設置値が40で、50分間稼動し、さらに吐出量の設定値が60で、20分間稼働した場合の塗料残量は次のように計算される。
なお、粉体塗料タンク1の初期の粉体塗料Aの量は、15kgとする。
吐出量の設置値が100の場合、1秒間当たりの吐出量は、
(60g/30sec)×100/50=4g
吐出量の設置値が40では、1秒間当たりの吐出量は、
(4g)×40/100=1.6g
吐出量の設置値が60では、1秒間当たりの吐出量は、
(4g)×60/100=2.4g
となる。
【0033】
したがって、初期の粉体塗料Aの量を15kgから現在の塗料残量は、
15000g−(1.6g×3000sec)−(2.4g×1200sec)=7320g
になる。
【符号の説明】
【0034】
1 粉体塗料タンク
2 インジェクター
3 塗装ガン
4 多孔質板
5 コンプレサーエアー
6 搬送ホース
7 メインエアーノズル
8 サブエアーノズル
9 圧縮エアー源
10、11 流量絞り弁
12 吸引口
13 電子制御装置
14 吐出口
15 減圧弁
16 吸引管
A 粉体塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるメインエアーノズルを有し、このメインエアーノズルから供給されるメインエアーによって粉体塗料タンクから粉体塗料を吸引し、吐出口から搬送ホースを介して粉体塗装ガンに粉体塗料のエアー搬送を行うインジェクターを備え、インジェクターにサブエアーを供給する、圧縮エアー源に流量絞り弁を介して接続されるサブエアーノズルを設け、メインエアーノズルの流量絞り弁と、サブエアーノズルの流量絞り弁を調節する電子制御装置を備え、上記電子制御装置に、インジェクターの稼働時間を積算し、その積算時間に、単位時間当たりの粉体塗料の吐出量を掛けあわせて計算した粉体塗料積算使用量を計算し、粉体塗料タンクの初期投入量から粉体塗料積算使用量を減算して粉体塗料タンクの残量を計測する残量計測プログラムを内蔵させたことを特徴とする粉体塗装装置における塗料残量計測装置。
【請求項2】
上記粉体塗装ガンが静電塗装ガンである請求項1記載の粉体塗装装置における塗料残量計測装置。
【請求項3】
粉体塗料タンクの残量が、予め入力した値を下回った場合に、警告表示あるいは粉体塗料の補充表示を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の粉体塗装装置における塗料残量計測装置。


【図1】
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【公開番号】特開2012−16639(P2012−16639A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153570(P2010−153570)
【出願日】平成22年7月6日(2010.7.6)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】