説明

粉体搬送通風機

【課題】粉体による羽根部の損傷を効果的に抑えることができ、耐久性を向上した粉体搬送通風機を提供する。
【解決手段】回転軸の周囲に放射状に配置された断面翼形の複数の羽根部13を有する羽根車と、羽根車が収容される収容室を有すると共に羽根車の回転軸近傍に設けられて収容室内に気体を導入する導入口と羽根車の半径方向外側に設けられて収容室内の気体を排出する排出口とを有するケーシングとを具備する粉体搬送通風機において、羽根部13のそれぞれが少なくとも導入口側の表面に羽根部13の材料よりも硬質な材料からなる肉盛り部16を設けると共に、肉盛り部16の少なくとも羽根部13の腹側の端面16aを所定角度で傾斜する傾斜面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体を搬送するための気流を発生させる粉体搬送通風機に関し、特に、石炭を微粉炭機によって粉砕した微粉炭を、微粉炭機から燃焼炉に供給するための気流を発生させる粉体搬送通風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、火力発電設備において燃焼する微粉炭を燃焼炉に搬送するための方法として、例えば、気流によって微粉炭を搬送する方法が用いられている。このように微粉炭を搬送するための気流を発生させる装置としては、例えば、複数の羽根部を有する羽根車、いわゆる遠心ファンを有する粉体搬送通風機が一般的に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、このような火力発電設備に用いられる粉体搬送通風機には、燃焼炉内の気体が吸引口からケーシング内に供給されるようになっているものがある。ここで、燃焼炉内では、微粉炭が燃焼されることで石炭灰(フライアッシュ)が形成される。このフライアッシュはケーシング内に供給される気体にも当然含まれており、燃焼炉からケーシング内に気体が供給さると、気体に含まれるフライアッシュが羽根車を構成する羽根部に衝突して羽根部が損傷するという問題、すなわち、羽根部の表面が徐々に削れてしまうという問題がある。
【0004】
そして、このように羽根部が損傷すると、例えば、羽根車の重量バランスが崩れて振動や騒音が発生するという問題がある。例えば、羽根部が中空形状に形成されていると、フライアッシュによって羽根部に穴があき、この穴から羽根部内にフライアッシュが入り込むことで羽根車の重量バランスは大幅に崩れてしまう。さらに、このような問題を放置していると装置の他の部分にも影響し、装置が故障あるいは破損する虞がある。
【0005】
なお、このような問題は、ケーシング内にフライアッシュを含む気体が供給される場合だけでなく、勿論、他の粉体を含む気体が供給される場合にも発生する虞がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−172296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、粉体による羽根部の損傷を効果的に抑えることができ、耐久性を向上した粉体搬送通風機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、粉体を搬送するための気流を発生させる粉体搬送通風機であって、回転軸の周囲に放射状に配置された断面翼形の複数の羽根部を有する羽根車と、該羽根車が収容される収容室を有すると共に前記羽根車の回転軸近傍に設けられて前記収容室内に気体を導入する導入口と前記羽根車の半径方向外側に設けられて前記収容室内の気体を排出する排出口とを有するケーシングとを具備し、且つ前記羽根部のそれぞれが少なくとも前記導入口側の表面に前記羽根部の材料よりも硬質な材料からなる肉盛り部を有すると共に該肉盛り部の少なくとも前記羽根部の腹側の端面が所定角度で傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする粉体搬送通風機にある。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記羽根部が、中空形状となっていることを特徴とする第1の態様の粉体搬送通風機にある。
【0010】
本発明の第3の態様は、前記傾斜面の傾斜角度が、45°以下であることを特徴とする第1又は2の態様の粉体搬送通風機にある。
【0011】
本発明の第4の態様は、前記肉盛り部が、溶接によって形成されていることを特徴とする第1〜3の何れかの態様の粉体搬送通風機にある。
【0012】
本発明の第5の態様は、前記ケーシングの前記排出口が、石炭を粉砕して燃焼炉に供給する微粉炭を製造する微粉炭機に接続され、前記排出口から排出された気体を当該微粉炭機に供給することで前記燃焼炉に前記微粉炭を搬送するための気流を発生させることを特徴とする第1〜4の何れかの態様の粉体搬送通風機にある。
【0013】
本発明の第6の態様は、前記ケーシングの前記導入口が前記燃焼炉に接続されており、前記燃焼炉で形成される石炭灰を含む気体が前記導入口から前記ケーシング内に供給されるようになっていることを特徴とする第5の態様の粉体搬送通風機にある。
【発明の効果】
【0014】
かかる本発明では、ケーシング内に供給される気体に微粉が含まれている場合でも、この微粉が肉盛り部に衝突するため、微粉の衝突による羽根部の表面が削れるのを抑えることができる。さらに、肉盛り部の少なくとも羽根部の腹側の端面が傾斜面となっていることで、羽根部の周囲での気流がスムーズになり、肉盛り部の外側で羽根部の表面が削れるのを確実に防止することができる。よって、装置の耐久性が向上してコストの低減を図ることができると共に、装置の信頼性も向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、一実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、図1は、一実施形態に係る粉体搬送通風機の断面図であり、図2は、火力発電設備の一部を示す概略構成図であり、図3は、羽根車のA−A′断面図であり、図4は、羽根部の拡大断面図である。
【0016】
本実施形態に係る粉体搬送通風機1は、図示するように、羽根車10と、この羽根車10が収容される収容室21を有するケーシング20とを有し、ケーシング20に設けられた導入口22から収容室21内に導入された気体が、羽根車10の回転によって昇圧されて排出口23から排出されるようになっている。
【0017】
このような粉体搬送通風機1は、例えば、石炭を燃料として燃焼炉で燃焼させて発電する火力発電設備に用いられる。具体的には、図2に示すように、粉体搬送通風機1は、気体を排出する排出口23が、炭素を粉砕する微粉炭機(ミル)100に排出管101を介して接続されている。また、この微粉炭機100は、微粉炭を燃焼させる燃焼炉200と供給管201を介して接続されている。そして、粉体搬送通風機1の排出口23から排出された気体が排出管101からこの微粉炭機100に供給されると、微粉炭機100で形成された微粉炭が、この気体の流れ(圧力)によって搬送され、供給管201を介して燃焼炉200に投入されるようになっている。また、本実施形態では、燃焼炉200が、粉体搬送通風機1の導入口22に導入管202を介して接続されており、燃焼炉200内の気体の一部がこの導入管202から収容室21内に流れ込むようになっている。なお、燃焼炉200には、図示しないが、脱硫装置、電気集塵機、脱硫装置等が接続されており、燃焼炉200内の気体の多くはこれらの装置に順次送られた後、煙突等から排ガスとして排出されるようになっている。
【0018】
以下、本発明に係る粉体搬送通風機の構造について詳細に説明する。本実施形態に係る粉体搬送通風機は、上述したように、羽根車10とこの羽根車10が収容されるケーシング20とを有する。ケーシング20は、羽根車10を収容する収容室21を有し、羽根車10はこの収容室21内で回転可能に保持されている。
【0019】
この羽根車10は、回転軸11と、回転軸11に嵌着される回転板本体12と、この回転板本体12に固定される複数の羽根部13と、羽根部13の回転板本体12とは逆側に固定される回転側板14とで構成されている。そして、この羽根車10の回転軸11の両端が、ケーシング20の外側に設けられた軸受け15によって支持されることによって、羽根車10がケーシング20内で回転可能に保持されている。
【0020】
羽根車10を構成する各羽根部13は、断面翼形に形成されており、また本実施形態では中空形状に形成されている。そして、このような羽根部13は、回転軸11の周囲に放射状に一定間隔で配置され、回転板本体12及び回転側板14に固定されている。例えば、本実施形態では、回転軸11の周囲に、10個の羽根部13が配置されている。また、各羽根部13は、回転軸11の半径方向に対して所定角度で傾斜するように配置されると共に、全て一定の向き、すなわち、隣接する羽根部13同士は、背側と腹側とが向き合うようにそれぞれ配置されている。
【0021】
ケーシング20には、外部から収容室21内に気体を導入するための導入口22が、羽根車10の回転軸11近傍、すなわち、羽根車10の中心部近傍に設けられ、また収容室21内の気体を外部に排出するための排出口23が、羽根車10の半径方向外側の領域に設けられている。例えば、本実施形態では、導入口22内に回転軸11が挿通されており、回転軸11の周囲から収容室21内に気体が導入されるようになっている。ケーシング20の導入口22と羽根車10(回転側板14)との間には、筒状のガイド部材24が設けられており、導入口22から収容室21内に導入された気体が、羽根車10内、すなわち、回転板本体12と回転側板14との間に誘導される。そして、羽根車10内に導入された気体は、羽根車10が回転することによって昇圧されて、排出口23から排出されるようになっている。
【0022】
ここで、上述したようにケーシング20の導入口22には、導入管202を介して燃焼炉200が接続されており(図2)、燃焼炉200内の気体の一部が、ケーシング20の収容室21内に導入されるようになっている。
【0023】
このように燃焼炉200から収容室21内に供給される気体には、燃焼炉200で微粉炭を燃焼することで発生する石炭灰(フライアッシュ)等の粉体が含まれている。このため、燃焼炉200から収容室21内に気体が導入されると、気体に含まれる粉体が羽根部13に衝突して羽根部13の表面が損傷する、すなわち、羽根部13の表面が削れてしまうという問題がある。そして、このように羽根部13が損傷すると、例えば、羽根車10の重量バランスが崩れて振動や騒音が発生するという問題がある。特に、本実施形態のように羽根部13が中空形状である場合、羽根部13の表面が削れることで羽根部13に穴があいてしまい、その穴から羽根部13内に粉体が入り込んで羽根車10の重量バランスが大幅に崩れてしまうこともある。
【0024】
そこで、本発明では、羽根車10を構成する各羽根部13の表面の少なくとも導入口22の近傍に、羽根部13の材料よりも硬質な材料からなる肉盛り部16を設けるようにした。すなわち、羽根部13の表面を肉盛り部16によって保護するようにした。肉盛り部16の材料は、羽根部13の材料よりも硬質な材料であれば特に限定されないが、例えば、本実施形態では、羽根部13の材料としてSM材(SM41BW)を用い、肉盛り部16の材料としてそれよりも硬質な材料であるSB材(SM400B)を用いた。また、肉盛り部16を形成する領域は、収容室21内に導入される気体の流速等の条件を考慮して適宜決定されればよいが、羽根部13の比較的広い領域に形成するのが好ましい。また、肉盛り部16の厚さは、特に限定されないが、耐久性等の面から比較的厚いことが好ましい。なお、このような肉盛り部16の形成方法は、特に限定されないが、例えば、溶接等によって比較的容易に形成することができる。
【0025】
羽根部13の表面にこのような肉盛り部16を設けることで、収容室21内に導入された気体に含まれる粉体が羽根部13に衝突しても、肉盛り部16によって保護されるため羽根部13自体の表面が削れてしまうのを防止することができる。しかしながら、このような肉盛り部16を設けた場合でも、肉盛り部16の端面が羽根部13の端面に対して略垂直に形成されていると、肉盛り部16の外側の領域で、羽根部13の表面が損傷してしまうという問題がある。肉盛り部16を比較的広い領域に形成した場合でも、このような問題を完全に抑えることは難しい。また、このような問題は、肉盛り部16の端面部分で気流に急激な変化が生じることに起因すると考えられる。例えば、本実施形態のように、羽根部13が断面翼形に形成されている場合、その腹側で気流が密になり、また気流の乱れが発生するためか、このような問題は、羽根部13の腹側で特に発生しやすい。
【0026】
そこで、本発明では、羽根部13の少なくとも腹側の肉盛り部16の端面16aが所定角度で傾斜する傾斜面となるようにした。すなわち、肉盛り部16は、羽根部13の少なくとも腹側の端部近傍の厚さが外側に向かって漸小するように形成した。例えば、本実施形態では、肉盛り部16を溶接によって形成した後、その端面16aをグラインダ等によって加工を施すことで、所定角度で傾斜する傾斜面としている。この肉盛り部16の端面(傾斜面)16aの傾斜角度θは、90°よりも小さければよいが、45°以下とすることが好ましく、特に、30°以下とすることが望ましい。
【0027】
このように肉盛り部16の端面16aを傾斜面とすることで、気流の急激な変化が抑えられる。すなわち、気体がスムーズに流れるようになる。これにより、肉盛り部16の端面16a近傍の羽根部13の表面に粉体が強く衝突して羽根部13の表面が削れてしまうのを防止することができる。したがって、羽根車10の取り替え周期が長くなり費用の低減を図ることができ、また設備の信頼性を向上することもできる。
【0028】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、本実施形態に限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、本実施形態では、羽根部の腹側の肉盛り部の端面が所定角度で傾斜する傾斜面となるようにしたが、勿論、羽根部の背側の肉盛り部の端面も、同様に傾斜面とするようにしてもよい。また、例えば、本実施形態では、モータ等の駆動手段によって羽根車を回転させることによって、微粉炭機に気体を供給するようにしているが、これに限定されず、例えば、燃焼炉内の温度上昇に伴ってケーシング内に流れ込む気流を羽根車の動力源とすることもできる。
【0029】
また、本実施形態では、粉体搬送通風機を、火力発電設備において微粉炭機から燃焼炉に微粉炭を搬送するために用いた例を説明したが、粉体搬送通風機の用途は、特に限定されるものではなく、例えば、燃焼炉内のフライアッシュを燃焼炉の外部に排出するために用いることもできる。また、粉体搬送通風機は、火力発電設備以外の設備にも用いることができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る粉体搬送通風機の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る火力発電設備の一部を示す概略構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る羽根車のA−A′断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る羽根部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 粉体搬送通風機
10 羽根車
11 回転軸
12 回転板本体
13 羽根部
14 回転側板
15 軸受け
16 肉盛り部
20 ケーシング
21 収容室
22 導入口
23 排出口
24 ガイド部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を搬送するための気流を発生させる粉体搬送通風機であって、
回転軸の周囲に放射状に配置された断面翼形の複数の羽根部を有する羽根車と、該羽根車が収容される収容室を有すると共に前記羽根車の回転軸近傍に設けられて前記収容室内に気体を導入する導入口と前記羽根車の半径方向外側に設けられて前記収容室内の気体を排出する排出口とを有するケーシングとを具備し、
且つ前記羽根部のそれぞれが少なくとも前記導入口側の表面に前記羽根部の材料よりも硬質な材料からなる肉盛り部を有すると共に該肉盛り部の少なくとも前記羽根部の腹側の端面が所定角度で傾斜する傾斜面となっていることを特徴とする粉体搬送通風機。
【請求項2】
前記羽根部が、中空形状となっていることを特徴とする請求項1に記載の粉体搬送通風機。
【請求項3】
前記傾斜面の傾斜角度が、45°以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉体搬送通風機。
【請求項4】
前記肉盛り部が、溶接によって形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の粉体搬送通風機。
【請求項5】
前記ケーシングの前記排出口が、石炭を粉砕して燃焼炉に供給する微粉炭を製造する微粉炭機に接続され、前記排出口から排出された気体を当該微粉炭機に供給することで前記燃焼炉に前記微粉炭を搬送するための気流を発生させることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の粉体搬送通風機。
【請求項6】
前記ケーシングの前記導入口が前記燃焼炉に接続されており、前記燃焼炉で形成される石炭灰を含む気体が前記導入口から前記ケーシング内に供給されるようになっていることを特徴とする請求項5に記載の粉体搬送通風機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−198183(P2007−198183A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15507(P2006−15507)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】