説明

粉末剤

【課題】プランルカスト水和物の製剤化の障害となる強い付着凝集性の問題を克服し、ドライシロップ剤やカプセル剤として使用し得るプランルカスト水和物含有の粉末剤を提供する。
【解決手段】ふるい分け法による平均粒子径が100μm〜800μmの糖類が、プランルカスト水和物と結合剤を含有する層にて被覆され、さらに水溶性高分子を含有する層にて被覆されてなる水分散性が改善された粉末剤。この粉末剤は、カプセルに充填して用いることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランルカスト水和物(日本医薬品一般的名称)を含有する粉末剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プランルカスト水和物は、ロイコトリエン受容体拮抗剤として気管支喘息等の治療に用いられ、ドライシロップ剤やカプセル剤の形態で服用されている。ドライシロップ剤の場合、用時にプランルカストの微小造粒物である粉末剤を水に懸濁して用いられ、カプセル剤の場合は、その粉末剤をカプセルに充填したものが用いられているが、プランルカスト水和物の造粒には、その強い付着凝集性に起因する種々の困難を伴うことが知られている。
そこで、その付着凝集性に起因する問題点を解決することにより目的の微小造粒物を得る方法として、プランカスト水和物、糖類、水溶性高分子及び/又は界面活性剤を含有する組成物を噴霧乾燥造粒物とする方法や、プランルカスト水和物とセルロース誘導体とを含有する組成物を撹拌造粒する方法が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特許第2958863号公報
【特許文献2】特開2005−187406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、プランルカスト水和物の強い付着凝集性の問題を解決し、例えばドライシロップ剤やカプセル剤として使用し得る水分散性が改善された粉末剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、前記課題を解決するため、微小の核となる基材にプランルカストと添加剤とを被覆する方法について鋭意検討した。その結果、核としてふるい分け法による平均粒子径が約410μmの白糖を用い、これにプランルカスト水和物と水溶性の高分子とを噴霧コーティングすると、プランルカストの強い付着凝集性による困難を伴うことなく、所期の目的を達成できることを見出した。そこで本発明者らは、さらに検討を加え、本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち、本発明によれば、
[1]ふるい分け法による平均粒子径が100μm〜800μmの糖類が、プランルカスト水和物と結合剤を含有する層にて被覆され、さらに水溶性高分子を含有する層にて被覆されてなる水分散性が改善された粉末剤、
[2]結合剤および水溶性高分子がセルロース誘導体である前記[1]に記載の粉末剤、
[3]ドライシロップ剤として使用する前記[1]又は[2]に記載の粉末剤を提供することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、プランルカスト水和物の強い付着凝集性が製剤化の困難因子とならず、プランルカスト水和物を粉末剤として容易に製造することができ、ドライシロップ剤用又はカプセル剤用としても利用可能なプランルカスト水和物含有の粉末剤を提供することができる。
また、本発明の粉末剤をカプセルに充填する場合も、何ら困難はなく、通常の方法により充填し、カプセル剤とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において用いられるプランルカストの原末は、粉末剤化後の適度な溶出速度を得るために、平均粒子径(光散乱法による測定値)が1μm〜100μmのものが好ましく、より好ましくは2μm〜50μmである。
本発明において核として使用される糖類は、例えば白糖、乳糖、ソルビトール、還元麦芽糖水飴等が挙げられ、特に白糖が好ましい。核として使用する糖類の平均粒子径はふるい分け法による測定で100μm〜800μmが好ましく、より好ましくは300μm〜700μmである。この糖類をプランルカスト水和物とともに被覆する結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体やポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルピロリドン、デキストリン、アルファー化澱粉等が好ましく、より好ましくはヒドロキシプロピルセルロースである。
【0009】
本発明の粉末剤は、糖類を核としてその表面をプラルンカスト水和物と結合剤を被覆した造粒物に、水に対する親和性を付加させるため、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体やポリビニルピロリドン等の水溶性高分子基材で更に被覆する。中でも好ましい水溶性高分子は、ヒドロキシプロピルセルロースである。その被覆操作において均一被覆を容易にするため、例えば軽質無水ケイ酸、タルク等の滑沢剤を添加してもよい。
【0010】
本発明の粉末剤を製造するに際し、特に困難はなく、通常の噴霧造粒法に準拠して目的の粉末剤を製造することができる。また、これをカプセルに充填する場合も、何ら困難はなく、通常の方法により充填し、カプセル剤とすることができる。
【実施例1】
【0011】
(1)粉末剤
ヒドロキシプロピルセルロース10gと白糖530gを精製水760gに加えて撹拌し溶解後、さらに光散乱法による平均粒子径が約15μmのプランルカスト水和物200gとトウモロコシ澱粉200gとを加え、撹拌して均一に分散させ、被覆用液1とした。
次にふるい分け法による平均粒子径が約410μmの白糖1000gを噴流流動層(ワースター)に投入し、先の被覆用液1を噴霧して造粒し、乾燥後、粉末を得た。
【0012】
(2)水溶性高分子の被覆
ヒドロキシプロピルセルロース40gを精製水760gに加え溶解後、軽質無水ケイ酸20gを加え撹拌し、被覆用液2を得た。
次に(1)で製造した粉末を噴流流動層(ワースター)に投入し、先に調製した被覆用液2を噴霧被覆後、乾燥させて目的の粉末剤を得た。
【0013】
[試験例1]
10ml用の試験管に実施例1の粉末剤2.5gを入れ、その上に「日局」精製水10mlを加えて撹拌し、粉末剤が均一に分散した白濁液を得、放置した。放置後8時間経過時において粉末の沈降は殆ど認められず、懸濁性は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明によれば、気管支喘息又はアレルギー性鼻炎の症状改善に有用なプランルカスト水和物を含有する粉末剤を、プランルカスト水和物の物性である強い付着凝集性の影響を受けることなく、工業的に容易に製造することができ、そのカプセル剤も容易に製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ふるい分け法による平均粒子径が100μm〜800μmの糖類が、プランルカスト水和物と結合剤を含有する層にて被覆され、さらに水溶性高分子を含有する層にて被覆されてなる水分散性が改善された粉末剤。
【請求項2】
結合剤および水溶性高分子がセルロース誘導体である請求項1記載の粉末剤。
【請求項3】
ドライシロップ剤として使用する請求項1又は請求項2に記載の粉末剤。

【公開番号】特開2007−161587(P2007−161587A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355613(P2005−355613)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(593030071)大原薬品工業株式会社 (40)
【Fターム(参考)】