粉末化されたタンパク質組成物及びその作製方法
例えば、ペプチド又はタンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合部分)の約50mg/mL超及び少なくとも1つの賦形剤を含む溶液を噴霧乾燥することを含む、タンパク質又はペプチド粉末を調製するための方法が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年1月15日に出願された米国仮特許出願61/021,298号(これらの内容の全体は各々、参照により、本明細書に組み込まれる。)に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
医薬タンパク質製剤の基本原則は、ある種の不安定性を克服しなければならないことである。タンパク質の分解経路は2つの異なるクラスに分けることが可能であり、化学的不安定性と物理的不安定性が含まれる。化学的不安定性は、結合形成又は切断を通じて、タンパク質の修飾をもたらす。化学的不安定性の問題の例には、脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、β脱離及びジスルフィド交換が含まれる。他方、物理的不安定性は、タンパク質中の共有的変化をもたらさない。むしろ、物理的不安定性は、タンパク質の高次構造(二次及びそれ以上)の変化を伴う。これらには、変性、表面への吸着、凝集及び沈降が含まれる(Manning et al.,Pharm.Res.6,903(1989)。
【0003】
Watson及びCrick(1953)によるDNA−構造の発見及びヒトゲノム配列決定プロジェクトのその後の完了後、タンパク質化学への関心は、極めて迅速に高まった。疾病、組織又は発達における遺伝子及びそのタンパク質産物間の関係は、特に興味深かった。「Next generation pharmaceutical,Issue 6(GDS publishing Ltd.,2006」。その間の数十年間、タンパク質を基礎とする医薬の数は極めて急速に増加した。今日、ある種の疾患及び疾病を緩和又は比喩させるために、ある種のタンパク質又はペプチドを単離又は合成し、修飾及び送達することが可能である。タンパク質を基礎とする医薬に対する主な適用経路は、なお液体製剤の静脈内注射であるが、他の経路も検査され、使用されてきた。
【0004】
タンパク質溶液を固体形態へ転換するために、多くの努力が行われてきた。粉末化された組成物は、多くの利点を与える(例えば、ずっと小さな空間及び重量を伴うことによって、タンパク質のより多量を保存又は輸送することができ、保存及び搬送時に液体製剤を冷却するために必要とされるエネルギー消費よりエネルギー消費が少ない。)。粉末化された組成物は、吸入(Tzannis et al.,国際特許公開WO2005067898)又は無針注射(Burkoth,The Drug Delivery Companies Report76−78(2001))などの送達の新しい経路も促進する。とりわけ噴霧乾燥、スプレー凍結乾燥、凍結乾燥又は超臨界流体又は(部分的)有機溶液からの沈殿など、水性タンパク質溶液から粉末を作製するための幾つかの方法が使用されてきた。「Winters et al.,Journal of Pharm.Sci.85(6):586−594(1996)」。極めて高価であり、時間がかかる凍結乾燥とは異なり、噴霧乾燥は、生物医薬のための新たな送達形態(吸入など)を開発するための機会を与える、タンパク質が搭載された固体を作製する効果的で効率的な手段である。「Maa et al.,Pharm.Res.16(2):249−254(1999)」。
【0005】
純粋なタンパク質溶液を噴霧乾燥させることは、より低品質の医薬を自動的にもたらす部分的不活化を引き起こすリスクを有する。例えば、不活化は、変性若しくは凝集などの、高温、剪断ストレス及び大きな相界面(液体/気体)によるプロセス関連の物理的ストレスによって、又は化学的反応(例えば、加水分解又は酸化)によって引き起こされ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/067898号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Manning et al.,Pharm.Res.6,903、1989年
【非特許文献2】Watson and Crick、1953年
【非特許文献3】Next generation pharmaceutical,Issue 6(GDS publishing Ltd.,2006
【非特許文献4】Burkoth,The Drug Delivery Companies Report、2001年、pp.76−78
【非特許文献5】Winters et al.,Journal of Pharm.Sci.85(6)、1996年、pp.586−594
【非特許文献6】Maa et al.,Pharm.Res.16(2)、1999年、pp.249−254
【発明の概要】
【0008】
本発明は、タンパク質及び賦形剤を含むタンパク質製剤を噴霧乾燥させるための方法に関する。具体的には、本発明の方法及び組成物は、目的のタンパク質及び賦形剤を含有する溶液が噴霧乾燥される噴霧乾燥法を基礎とする。
【0009】
本発明の製剤は、標準的な溶液及び凍結乾燥された製剤に比べて多くの利点を有する。特に、本発明の噴霧乾燥法は、(例えば、凍結乾燥された組成物と比べて)方法に関連する分解を最小限に抑え、周囲温度でのタンパク質の安定性を増加させる。さらに、噴霧乾燥された製剤は輸送することもより容易であり、高濃度製剤を作製し、タンパク質の生物学的利用可能性を改善し、局所的放出(例えば、経肺送達)及び徐放(例えば、リポソームの及び(ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド))PLGA被覆された小球体)製剤を開発するのに有用である。
【0010】
目的のあらゆるタンパク質及び賦形剤を含む安定な粉末化された組成物又は製剤を提供するために、本発明の方法及び組成物を使用し得る。一態様において、本発明の方法及び組成物は、インビボ及びインビトロ用に使用されるものなどの抗体及びその断片に対して使用される。さらなる実施形態において、抗体断片は免疫グロブリンG(IgG)断片である。
【0011】
さらに、タンパク質及びペプチド製剤を調製するために必要とされる多段階工程の精製及び濃縮法は、製剤の正確な組成がロットごとに変動し得るように、しばしば、組成物に変動を導入する。連邦規則は、製造の場所又はロット番号に関わらず、薬物組成物がその製剤中で高度に一貫していることを要求する。本発明の方法は、正確な量で賦形剤が添加される粉末化されたタンパク質の製剤を作製するために使用することができ、賦形剤の正確な濃度を有するタンパク質製剤の作製を可能にする。
【0012】
一態様において、本発明は、タンパク質又はペプチド粉末が調製されるように、タンパク質又はペプチドの約50mg/mL超及び少なくとも1つの賦形剤を含む溶液を噴霧乾燥させることを含むタンパク質又はペプチド粉末を調製するための方法を提供する。幾つかの実施形態において、溶液は、タンパク質又はペプチドの約100mg/mL超を含む。タンパク質は、二重可変結合ドメイン(DVD)結合タンパク質でもあり得る。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記方法は、抗体粉末が調製されるように、抗体又はその抗原結合部分の約50mg/mL超及び少なくとも1つの賦形剤を含む溶液を噴霧乾燥することを含む、抗体粉末を調製することを含む。幾つかの実施形態において、溶液は、抗体又はその抗原結合部分の約100mg/mL超を含む。抗体又はその抗原結合部分は、免疫グロブリンG(IgG)、例えば、MAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147であり得る。幾つかの実施形態において、粉末は、周囲温度及び湿度で、少なくとも3ヶ月間安定であり、及び/又は少なくとも3ヶ月間、40℃で安定である。
【0014】
賦形剤は、例えば、トレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物を含み得る。幾つかの実施形態において、溶液は、約0.27:1.0と約2.8:1.0の間、約0.27:1.0と約1.4:1.0の間、約0.27:1.0と約0.7:1.0の間又は約0.7:1.0の比の賦形剤:タンパク質比を含む。幾つかの実施形態において、溶液は、約20と約30mM賦形剤又は約25mM賦形剤を含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記方法は、約100℃と約180℃の間の注入空気温度(Tin)及び約60℃と約110℃の間の排出空気温度(Tout)で噴霧乾燥させることを含む。ある種の実施形態において、前記方法は、約130℃のTin及び約80℃のToutでの噴霧乾燥を含む。前記方法は、例えば、溶液液滴を形成させるために溶液を微粉化し、粉末を形成させるために気体で液滴を乾燥させること、及び気体から粉末を回収することを含み得る。前記方法は、圧力ノズル微粉化装置を用いて溶液を微粉化すること並びに/又はサイクロンを用いて、抗体粉末を気体から分離及び回収することを含み得る。
【0016】
前記方法は、医薬として許容される担体中に抗体粉末を包埋させることも含み得る。医薬として許容される担体は、非経口、経口、経腸及び/又は局所投与に対して許容され得る。医薬として許容される担体は、水などの液体を含み得る。
【0017】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されている方法の何れかに従って調製された、抗体又はその抗原結合部分の有効量を含む医薬調製物に関する。さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載されている方法の何れかに従って調製された、タンパク質又はペプチドの有効量を含む医薬調製物に関する。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、タンパク質又はペプチド及び賦形剤を含み、組成物が約6%未満の残留水分、幾つかの実施形態では、約4%又は3%未満の残留水分を含む安定な粉末化された組成物を提供する。タンパク質又はペプチドは、例えば、MAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147などのIgG抗体又はその抗原結合部分などの抗体又はその抗原結合断片を含み得る。タンパク質は、二重可変結合ドメイン(DVD)結合タンパク質でもあり得る。
【0019】
幾つかの実施形態において、粉末化された組成物は、周囲温度及び湿度で、少なくとも3ヶ月間安定であり、及び/又は少なくとも3ヶ月間、約40℃で安定である。幾つかの実施形態において、タンパク質若しくはペプチド又は抗体若しくはその抗原結合部分は、その生物活性を保持する。
【0020】
賦形剤は、トレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物を含み得る。組成物は、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0又は約0.7:1の賦形剤(例えば、トレハロース及び/又はショ糖):抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し得る。組成物は、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0、約0.7:1又は約0.35:1の賦形剤(例えば、ソルビトール):抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し得る。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、医薬として許容される担体、例えば、水などの液体と本発明の安定な粉末化された組成物の有効量を混合することを含む医薬組成物を製造する方法を提供する。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、非経口、経口、経腸又は局所投与のために適合される。前記方法は、粉末化された組成物の安定性に著しく影響を及ぼさずに、周囲温度を著しく上回る温度(例えば、溶融押出)で安定な粉末化された組成物を処理することをさらに含むことができる。
【0022】
ある種の実施形態において、前記方法は、徐放又は遅延放出医薬組成物を形成するために、例えば、PLGAなどのポリマーで粉末化された組成物を被覆することを含む。これに加えて又はこれに代えて、前記方法は、腸溶コーティングで被覆することを含み得る。幾つかの実施形態において、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の活性は、沈殿、変性又は有機溶媒、例えば、PEG400、エタノール、DMSO、NMP又は氷酢酸による沈殿、変性又は酸化に対して賦形剤により保護される。
【0023】
現在、ほぼ全ての企業が凍結されたバルク薬物組成物を使用しており、凍結及び融解条件の再現性、バルク薬物物質内の賦形剤の予想されない結晶化、凍結乾燥の間の緩衝液のpHシフト及び融解による長いラグタイム(例えば、約37℃の温度の2リットル容器)などの問題に直面している。噴霧乾燥されたバルク薬物組成物を用いることは、これらの問題を回避することができる。さらに、噴霧乾燥されたバルク薬物組成物は、最終薬物産物組成物の配合の間の取り扱いが極めて便利であり、幅広い濃度範囲の製造を可能にする。さらに、水のみが添加される噴霧乾燥された薬物組成物は、古典的な配合を代替し得、従って、出力量を増加させつつ、薬物産物製造の間のリスクを減少させ得る。さらに、完全長/完全抗体は、モノクローナル抗体(mAb)断片と比べた物理的分解をより受けにくい場合があり得る。さらに、最大100mg/mLまでタンパク質濃度を増加させても、物理的又は化学的分解の増加は通例殆ど又は全く存在しない。より高い濃縮された溶液は方法の効率性を増加させるので、100mg/mLタンパク質の濃度の使用が有益である。
【0024】
本明細書に開示されている方法及び組成物のこれらの及び他の特徴及び利点は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例で使用されているBuchi噴霧乾燥機B−191を図示する。
【図2】異なるソルビトール−MAK混合物の収率及びTgを図示する。
【図3】様々なソルビトール−MAK混合物の凝集、結晶性及び水含量を図示する。
【図4】ソルビトール−MAK混合物3000x(a)25mM(b)100mMの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を与える。
【図5】様々なソルビトール−MAK混合物の収率及びTgを図示している。
【図6】様々なトレハロース−MAK混合物の凝集、結晶性及び水含量を図示する。
【図7】トレハロース−混合物3000x(a)10mMトレハロース;(b)100mMトレハロース及び(c)純粋なトレハロース噴霧乾燥のSEM画像を与える。
【図8】様々なショ糖−MAK混合物の収率及びTgを図示している。
【図9】様々なショ糖−MAK混合物の凝集、結晶性及び水含量を図示する。
【図10】噴霧乾燥されたMAK195F製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)物理的安定性データを図示する。(A)ソルビトール、トレハロース及びショ糖の効果並びに(B)タンパク質凝集の量に対する安定化剤濃度の効果。
【図11】200mMトレハロース溶液中の噴霧乾燥された高濃度MAK195F、アダリムマブ及びABT−325に対する(A)物理的安定性並びに(B)化学的安定性に対する、処理及び3ヶ月の保存の効果を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.定義
本発明をより容易に理解できるようにするために、まず、ある種の用語を定義する。
【0027】
本明細書において使用される「酸性成分」という用語は、酸性pH(すなわち、7.0未満)を有する溶液を含む因子を表す。酸性成分の例には、リン酸、塩酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸及びフマル酸が含まれる。
【0028】
本明細書において使用される「抗酸化剤」という用語は、酸化を阻害し又は抗酸化剤共力剤として作用し、従って、酸化的プロセスによる調製物の崩壊を防ぐために使用される因子を意味するものとする。このような化合物には、例として、限定なしに、αトコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸、ブチル化されたヒドロキシアニソール、ブチル化されたヒドロキシトルエン、エデト酸(EDTA、エデタート)及びその塩、ヒドロリン酸、リンゴ酸、モノチオグリセロール、プロピオン酸、没食子酸プロピル、メチオニン、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム並びに当業者に公知の他の化合物が含まれる。
【0029】
本明細書に別段の記載がなければ、「組成物」及び「製剤」という用語は互換的に使用される。
【0030】
「賦形剤」という用語は、例えば、バルク特性を変化させて所望の稠度を与えるために、安定性を向上させるために及び/又は浸透圧を調整するために製剤に添加され得る因子を表す。一般的に使用される賦形剤の例には、安定化剤、糖、ポリオール、アミノ酸、界面活性剤、キレート剤及びポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
組成物、例えば水性製剤に関して本明細書で使用される「医薬」という用語は、疾病又は疾患を治療するのに有用なものである。
【0032】
「タンパク質」という用語は、二次及び/又は三次及び/又は四次構造のより高次のレベルを生成するのに、鎖長が十分であるアミノ酸の配列を含むものとする。これは、このような構造を持たない「ペプチド」又は他の小分子量分子からは区別されるべきである。本明細書において使用される定義に包含されるタンパク質の例には、治療用タンパク質が含まれる。「治療活性を有するタンパク質」又は「治療用タンパク質」は、治療目的のために、すなわち、対象中の疾患を治療するために使用され得るタンパク質を表す。治療用タンパク質は治療目的のために使用され得るが、前記タンパク質はインビトロ研究のためにも使用され得るので、本発明はこのような用途に限定されるものではないことを銘記すべきである。好ましい実施形態において、治療用タンパク質は、融合タンパク質又は抗体若しくはその抗原結合部分である。一実施形態において、本発明の方法及び組成物は、異なるアミノ酸配列を有する2つのタンパク質として定義される少なくとも2つの異なるタンパク質を含む。追加の異なるタンパク質は、タンパク質の分解産物を含まない。
【0033】
「タンパク質粉末」という用語は、本発明の噴霧乾燥法に従って作製されたタンパク質を含む組成物を表す。「抗体粉末」は、本発明の噴霧乾燥法に従って作製された抗体又はその抗原結合部分を含む組成物を表す。
【0034】
「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物活性を有効とし得る形態であり、従って、治療用途のために対象に投与され得る調製物を表す。
【0035】
「溶液」という用語は、液体内の少なくとも1つの賦形剤又はタンパク質若しくはペプチドの混合物を表す。溶液は、溶液内の溶解されたタンパク質分子、コロイド状の溶解されたタンパク質分子、分散されたタンパク質凝集物若しくは結晶若しくは沈殿若しくは懸濁液又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0036】
「安定な」組成物とは、処理の間及び/又は保存時に、その中のタンパク質が、例えば、その物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を実質的に保持する製剤である。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が本分野において利用可能であり、例えば、「Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)」及び「Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)」に概説されている。一実施形態において、タンパク質の安定性は、溶液中の単量体タンパク質のパーセントに従って測定され、分解された(例えば、断片化された)及び/又は凝集されたタンパク質の低いパーセントを有する。例えば、安定なタンパク質を含む水性製剤は、少なくとも95%の単量体タンパク質を含み得る。あるいは、本発明の水性組成物は、5%以下の凝集物及び/又は分解されたタンパク質を含み得る。
【0037】
「安定化剤」という用語は、安定性を向上させ又はその他強化する賦形剤を表す。安定化剤には、α−リポ酸、α−トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ベンジルアルコール、亜硫酸水素塩、ホウ素、ブチル化されたヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化されたヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸及びそのエステル、カロテノイド、クエン酸カルシウム、アセチル−L−カルニチン、キレート剤、コンドロイチン、硫酸コンドロイチン、クロム、クエン酸、補酵素Q−10、EDTA(エチレンジアミン四酢酸;エデト酸二ナトリウム)、エリソルビン酸、フマル酸、没食子酸アルキル、グルコサミン(キトサン、ヒアルロン酸ナトリウム)、リンゴ酸、メタ重亜硫酸塩、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、酒石酸、チオサルファート、チオグリセロール、トコフェロール及びそのエステル、例えば、酢酸トコフェラール、コハク酸トコフェロール、トコトリエナール、d−α−トコフェロールアセタート、ビタミンA及びそのエステル、ビタミンE及びそのエステル、例えば、ビタミンEアセタート並びにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書において使用される「浸透圧修飾物質」という用語は、液体製剤の浸透圧を調整するために使用することができる一又は複数の化合物を意味するものとする。適切な浸透圧修飾物質には、グリセリン、ラクトース、マニトール、デキストロース、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、ショ糖、ラフィノース、マルトース及び当業者に公知の他の浸透圧修飾物質が含まれる。一実施形態において、液体製剤の浸透圧は、血液又は血漿の浸透圧とほぼ同じである。
【0039】
本明細書において使用される「抗体」という用語には、完全な抗体及びあらゆるその抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又は一本鎖が含まれる。「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質又はその抗原結合タンパク質を一般に表す。「抗体」という用語は、単離された天然に存在するその変形物も含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される。)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される。)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。VH及びVL領域は、より保存された領域(フレームワーク領域(FR)と称される。)に介在された超可変性の領域(相補性決定領域(CDR)と称される。)へさらに細分することができる。各VH及びVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へ配置された3つのCDRと4つのFRから構成される。重及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第一成分(C1q)など、宿主の組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0040】
本明細書において使用される抗体の「抗原結合部分」(又は、単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、TNFα、IL−12、IL−13)へ特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又はそれ以上の断片を表す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行され得る。抗体の「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片);(ii)F(ab’)2断片(ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片);(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VH又はVLドメインからなるdAb断片(Ward et al,(1989)Nature341:544−546);並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは別個の遺伝子によってコードされているが、VL及びVH領域が対合して一価の分子を形成している単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる。)として2つのドメインVL及びVHを作製することを可能にする合成リンカーによって、組み換え法を用いて連結することができる(例えば、Bird et al.(1988)Science242:423−426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−5883参照)。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものとする。これらの抗体断片は、当業者に公知の慣用技術を用いて取得され、完全状態の抗体と同じ様式で有用性に関して断片がスクリーニングされる。本発明の一実施形態において、抗体断片は、Fab、Fd、Fd’、一本鎖Fv(scFv)、scFva及びドメイン抗体(dAb)からなる群から選択される。
【0041】
さらに、抗体又はその抗原結合部分は、抗体又は抗体部分の1つ又はそれ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有会合によって形成されるより大きな免疫接着分子の一部であり得る。これらの他のタンパク質又はペプチドは、抗体若しくはその抗原結合部分の精製を可能にする又は互いに若しくは他の分子との会合を可能にする官能性を有し得る。従って、このような免疫接着分子の例には、四量体の一本鎖可変断片(scFv)分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas6:93−101)及び二価の及びビオチン化されたscFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov et al.(1994)Mol.Immunol.31:1047−1058)が含まれる。Fab及びF(ab’)2断片などの抗体部分は、それぞれ、完全抗体のパパイン又はペプシン消化などの慣用技術を用いて、完全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分及び免疫接着分子は、標準的な組換えDNA技術を用いて取得することができる。
【0042】
同属の対若しくは群を形成する構造のファミリーに属し、又はこのようなファミリーに由来し、及びこの特徴を保持する場合に、2つの抗体ドメインは、「相補的」である。例えば、抗体のVHドメイン及びVLドメインは相補的である。2つのVHドメインは相補的でなく、及び2つのVLドメインは相補的でない。相補的ドメインは、T細胞受容体のVα及びVβ(又はγ及びδ)ドメインなど、免疫グロブリンスーパーファミリーの他のメンバー中に見出され得る。
【0043】
「ドメイン」という用語は、タンパク質の残部とは独立に、その四次構造を保持する折り畳まれたタンパク質構造を表す。一般に、ドメインは、タンパク質の分離した機能特性に必要とされ、多くの事例で、タンパク質の及び/又はドメインの残部の機能を失わせることなく、他のタンパク質に付加され、除去され、又は転移され得る。単一の抗体可変ドメインは、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む折り畳まれたポリペプチドドメインを意味する。従って、単一の抗体可変ドメインには、完全な抗体可変ドメイン並びに例えば、抗体可変ドメインに特徴的でない配列によって1つ若しくはそれ以上のループが置換されている修飾された可変ドメイン、又は末端切断されている若しくはN末端若しくはC末端伸長を含む抗体可変ドメイン及び完全長ドメインの結合活性及び特異性を少なくとも部分的に保持する可変ドメインの折り畳まれた断片が含まれる。
【0044】
本発明の可変ドメインは、ドメインの群を形成するために組み合わされ得る。例えば、相補性ドメインが組み合わされ得る(VHドメインと組み合わされているVLドメインなど)。非相補的ドメインも組み合わされ得る。ドメインは共有又は非共有的手段によるドメインの連結など、多数の方法で組み合わされ得る。
【0045】
「dAb」又は「ドメイン抗体」は、抗原を特異的に結合する単一の抗体可変ドメイン(VH又はVL)ポリペプチドを表す。
【0046】
本明細書において使用される「抗原結合領域」又は「抗原結合部位」という用語は、抗原と相互作用し、抗原に対する抗体の特異性及び/又は親和性を抗体に付与するアミノ酸残基を含有する、抗体分子の一部又はその抗原結合部分を表す。
【0047】
「エピトープ」という用語は、抗体の抗原結合領域の1つ又はそれ以上において、抗体によって認識され得、及び抗体によって結合され得るあらゆる分子の部分を表すものとする。本発明において、第一及び第二の「エピトープ」は、同一でなく及び単一の一重特異的抗体又はその抗原結合部分によって結合されないエピトープであると理解される。
【0048】
「組換え抗体」という用語は、宿主細胞中に形質移入された組換え発現ベクターを用いて発現された抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関して遺伝子導入された動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295)又は他のDNA配列への特定の免疫グロブリン遺伝子配列(ヒト免疫グロブリン遺伝子配列など)のスプライシングを含むあらゆる他の手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離された抗体など、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離された抗体を表す。組換え抗体の例には、キメラ抗体、CDR移植された抗体及びヒト化抗体が含まれる。
【0049】
「ヒト抗体」という用語は、例えば、Kabat他(Kabat,et al.(1991)Sequences of Proteins Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242参照)によって記載されているように、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に対応し又は由来する可変及び定常領域を有する抗体を表す。しかしながら、本発明のヒト抗体は、例えば、CDR中に、特にCDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロで無作為若しくは部位特異的突然変異導入によって又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。
【0050】
本発明の組換えヒト抗体は、可変領域を有し、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する定常領域も含み得る(Kabat,et al.(1991)Sequences of Proteins Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242参照)。しかしながら、ある種の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列に対して遺伝子導入された動物を使用する場合には、インビボ体細胞突然変異誘発)に供され、従って、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、関連するが、インビボにおいて、ヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しない場合があり得る配列である。ある実施形態において、しかしながら、このような組換え抗体は、選択的突然変異誘発又は逆変異又は両者の結果である。
【0051】
「逆変異」という用語は、ヒト抗体の体細胞的に変異されたアミノ酸の幾つか又は全部を相同な生殖系列抗体配列由来の対応する生殖系列残基で置換する方法を表す。本発明のヒト抗体の重及び軽鎖配列は、最高の相同性を有する配列を同定するために、VBASEデータベース中の生殖系列配列と別個に並置される。このような異なるアミノ酸をコードする所定のヌクレオチド位置を変異させることによって、本発明のヒト抗体中の差は生殖系列配列に復帰される。このようにして逆変異のための候補として同定された各アミノ酸の役割は、抗原結合における直接又は間接的役割に関して調査されるべきであり、ヒト抗体のあらゆる望ましい特徴に影響を与えることが変異後に見出された何れのアミノ酸も、最終のヒト抗体中に含まれるべきでない。逆変異に供されるアミノ酸の数を最小限に抑えるために、第二の生殖系列配列が問題のアミノ酸の両側で少なくとも10個、好ましくは12個のアミノ酸に関して本発明のヒト抗体の配列と同一及び同一直線上である限り、最も近い生殖系列配列と異なるが、第二の生殖系列配列中の対応するアミノ酸と同一であることが明らかとなったアミノ酸位置は残存することができる。逆変異は、抗体最適化のあらゆる段階において行われ得る。
【0052】
「キメラ抗体」という用語は、ヒト定常領域に連結されたマウス重及び軽鎖可変領域を有する抗体など、ある種から得られる重及び軽鎖可変領域並びに別の種から得られる定常領域配列を含む抗体を表す。
【0053】
「CDR移植抗体」という用語は、マウスCDR(例えば、CDR3)の1つ又はそれ以上がヒトCDR配列で置換されているマウス重及び軽鎖可変領域を有する抗体など、ある種に由来する重及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVLのCDR領域の1つ又はそれ以上の配列が別の種のCDR配列で置換されている抗体を表す。
【0054】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒト以外の種(例えば、マウス)由来の重及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部がより「ヒト様」に改変されている、すなわち、ヒト生殖系列可変配列により類似している抗体を表す。ヒト化抗体の1つの種類は、対応する非ヒトCDR配列を置換するために、ヒトCDR配列が非ヒトVH及びVL配列中に導入されているCDR移植抗体である。
【0055】
本発明の様々な態様が、以下の節において、さらに詳しく記載されている。
【0056】
II.本発明の方法
本発明の方法及び本発明の得られた組成物は、薬物物質の搬送及び/又は流通に関して複数の利点をもたらす(例えば、調製物は軽量であり、周囲温度において安定である。)。薬物の配合及び/又は製造に関しても利点が存在する(例えば、調節された速度でのバルク溶液の長い融解はない。)。所望の濃度に十分な量で本発明の乾燥タンパク質粉末を容易に秤量し、水などの所望の賦形剤と混合又は配合することができる。タンパク質の沈降物又はタンパク質の結晶懸濁物の分離及び乾燥も、慣用の調製物のように必要でない。高濃度製剤、改善された生物学的利用可能性、局所的放出(例えば、経肺送達)、徐放(例えば、リポソーム及びPLGA被覆された小球体)並びに経口及び局所を含む様々な方法で投与することができる新しい固体又はハイドロゲルタンパク質剤形を達成する能力に関して、薬物産物の開発に関してさらなる利点が存在する。従って、幾つかの実施形態において、前記方法は、さらなる処理、例えば、被覆された徐放組成物、リポソーム、PLGA被覆された小球体中への粉末化された組成物の取り込み、溶融押し出しによる賦形剤マトリックス内への取り込みなども含む。得られた組成物、例えば、徐放又は標的化された組成物及び/又は代替的投与経路(例えば、経口、皮膚及び経腸投与)を可能にする組成物も、本発明のさらなる実施形態である。別の利点は、旧来の調製物より高い温度で、本発明の組成物を処理できることである。例えば、粉末は、MELTREX溶融押し出し技術などの溶融押し出し技術によって処理することができる。
【0057】
一態様において、本発明は、1つ又はそれ以上のタンパク質又はペプチドを含む安定な粉末を効率的に及び効果的に調製する方法を提供する。ある実施形態において、タンパク質又はペプチドは、抗体及び/又はその抗原結合部分である。粉末を調製するための方法は、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の溶液を噴霧乾燥することを含む。例えば、溶液は、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の少なくとも約50mg/mLを含み得る。さらなる実施形態において、溶液は異なる濃度を有することができ、例えば、さらに濃縮されることができ、例えば、溶液はタンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の少なくとも約40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、130mg/mL、150mg/mL、180mg/mLなどを含み得る。溶液は、1つ又はそれ以上の賦形剤も含み得る。前記方法は、例えば、限外ろ過を含むあらゆる公知の方法によって溶液を濃縮し又はさらに濃縮することを含み得る。タンパク質又はペプチドは、あらゆる適切なタンパク質又はペプチドであり得る。タンパク質は、抗体又はその抗原結合部分、例えば、免疫グロブリンG(IgG)抗体又はその抗原結合部分であり得る。ある種の実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、MAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147である。
【0058】
幾つかの実施形態において、溶液は賦形剤を含む。適切な賦形剤には、トレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。前記方法は、溶液又は粉末に、酸性成分、抗酸化剤及び/又は浸透圧調整物質を添加することをさらに含み得る。
【0059】
溶液は、約15と約140mMの間又は約20と約30mMの間のを含み得る。ある種の実施形態において、溶液は約25mMの賦形剤を含む。幾つかの実施形態において、溶液は、約0.27:1.0と約2.8:1.0の間、約0.27:1.0と約1.4:1.0の間、約0.27:1.0と約0.7:1.0の間の賦形剤:タンパク質比を含む。ある実施形態において、溶液は約0.7:1.0の賦形剤:タンパク質比を含む。
【0060】
幾つかの実施形態において、水性タンパク質製剤の高い濃度に関わらず、溶液はタンパク質凝集物の低いパーセントを有する。一実施形態において、水及びタンパク質(例えば、抗体)の高濃度を含む水溶液は、界面活性剤又は賦形剤の他の種類の不存在下でさえ、約5%未満のタンパク質凝集物を含有する。一実施形態において、溶液は約7.3%以下の凝集タンパク質を含む。溶液は約5%以下の凝集タンパク質を含み、溶液は約4%以下の凝集タンパク質を含み、溶液は約3%以下の凝集タンパク質を含み、溶液は約2%以下の凝集タンパク質を含み、又は溶液は約1%以下の凝集タンパク質を含む。一実施形態において、溶液は少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の単量体タンパク質を含む。上記濃度の中間の範囲、例えば、少なくとも約98.6%の単量体タンパク質、約4.2%以下の凝集タンパク質も、本発明の一部であることが意図される。さらに、上記値の何れかの組み合わせを上限及び/又は下限として用いる値の範囲も含まれるもとする。
【0061】
幾つかの実施形態において、注入空気温度(Tin)は、約105℃と約175℃の間、約130℃と約155℃の間、約120℃と約160℃の間又は約125℃と約160℃の間である。ある実施形態において、Tinは約130℃である。幾つかの実施形態において、排出空気温度(Tout)は、約60℃と約112℃の間、約60℃と約90℃の間、約70℃と約90℃の間又は約75℃と約85℃の間である。ある種の実施形態において、Toutは、約80℃である。
【0062】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、約100℃と約180℃の間の注入空気温度(Tin)及び約60℃と約110℃の間の排出空気温度(Tout)で噴霧乾燥することを含む。ある実施形態において、前記方法は約130℃のTin及び約80℃のToutで噴霧乾燥することを含む
幾つかの実施形態において、得られた粉末化された組成物の残留水分含量は、約1%と約3%の間、約1.5%と約2.5%の間、約1.4%と約2%の間、約4%と約6%の間又は約4.5%と約5%の間である。別の実施形態において、粉末化された組成物は約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%又は7%の残留水分を含む。
【0063】
一実施形態において、粉末は、少なくとも3ヶ月間、周囲温度及び湿度で安定である。幾つかの実施形態において、粉末は、周囲温度及び湿度で、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年又は5年間安定である。他の実施形態において、粉末は、40℃で少なくとも3ヶ月安定である。さらなる実施形態において、粉末は、40℃で少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年又は5年間安定である。
【0064】
幾つかの実施形態において、噴霧乾燥は、溶液液滴を形成するために溶液を微粉化すること、粉末を形成するために気体で液滴を乾燥させること及び気体から粉末を回収することを含む。溶液は、例えば、圧力ノズル微粉化装置を用いて微粉化することができる。粉末は、例えば、サイクロンを用いて回収することができる。噴霧乾燥の典型的な方法は、本明細書中に論述及び例示されている。
【0065】
別の態様において、本発明は、粉末を調製するための本明細書に記載されている方法のいずれかを含むことができ、及び医薬として許容される担体と粉末を混合する(例えば、包埋又は溶解する)ことをさらに含む医薬調製物を調製する方法を提供する。医薬として許容される担体は、非経口、経口、経腸又は局所投与に対して許容されるあらゆる担体であり得る。担体は、固体、半固体又は液体(例えば、水)又はこれらの組み合わせであり得る。
【0066】
幾つかの実施形態において、前記方法は、医薬として許容される担体中の抗体又はその抗原結合部分粉末を溶解することを含む。医薬として許容される担体は、例えば、非経口投与に対して許容され得、例えば、水を含み得る。前記方法は、1つ又はそれ以上の酸性成分、抗酸化剤及び/又は浸透圧調整物質を医薬組成物に添加することをさらに含み得る。これに加えて又はこれに代えて、本発明の医薬組成物に、適切な添加物、例えば、緩衝液、粘度調整物質、着香剤、着色剤などを添加することができる。
【0067】
前記方法は、粉末化された組成物の安定性に対して著しく影響を及ぼすことなく、周囲温度を上回る温度で本発明の安定な粉末化された組成物をさらに処理することを含み得る。例えば、前記方法は、安定な粉末化された組成物を溶融押し出しすることを含み得る。
【0068】
幾つかの実施形態において、例えば、別個の粒子若しくは粒子の凝集物が被覆されるように、及び/又は粒子の複合材料、例えば、圧縮された錠剤が被覆されるように、1つ又はそれ以上のコーティングが粉末化された組成物に付与される。コーティングには、本分野において一般的に使用され及び知られているあらゆるコーティングが含まれ得る。このようなコーティングは、徐放又は遅延放出医薬組成物を形成するために、PLGAなどのポリマーを含み得る。コーティングは、腸溶コーティングであり得、又は腸溶コーティングを含み得る。組成物は、例えば、ゼラチンカプセル中に封入し、又はヒドロゲル中に懸濁することができる。ある種の実施形態において、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の活性は、このようにして又はその他の方法で、有機溶媒による沈殿、変性又は酸化に対して賦形剤によって保護され、これにより、有機溶媒中にのみ可溶性であるPLGAなどの物質でのコーティングが可能となる。このような溶媒は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400などの低分子量)、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)又は氷酢酸などの(但し、これらに限定されない。)医薬調製物中に一般に見出される溶媒を含み得る。
【0069】
噴霧乾燥
噴霧乾燥機において、ポンプ注入可能な流体(溶液、懸濁物、エマルジョン又はペースト)は、乾燥された粒状形態へ転化される。このプロセスは、熱い乾燥媒体(通常、空気又は不活性気体)中に液体供給物を微粉化することによって、粒子形成と乾燥を1つの工程中に組み合わせる。本発明の幾つかの実施形態において、濃縮されたタンパク質溶液が噴霧乾燥される。従って、本発明の方法は、あらゆる適切な方法を用いて、タンパク質溶液を濃縮することを含み得る。幾つかの実施形態において、極めて迅速且つ穏やかな方法なので、Tangential Flow Filtration(TFF)技術が使用される。しかしながら、これに加えて又はこれに代えて、通常の流動ろ過又は透析を使用することができる。
【0070】
流体の微粉化は、液体の表面の増加をもたらし、従って、極めて短い乾燥時間をもたらす。例えば、液滴の大きさを10μmから1μmに減少させることは、600から6000m2への表面積の増加をもたらし、その乾燥時間を100倍短くする(例えば、0.01秒から0.0001秒)。「Stahl,Feuchtigkeit und Trocken in der Pharmazeutischen Technologie.Dr.Dieter Steinkopf Verlag GmbH & Co.KG,Darmstadt(1999)」。
【0071】
液体供給物と乾燥空気間の接触は、2つの異なる様式で起こり得る。同時流動系において、乾燥空気と粒子(液滴)は、乾燥チャンバーを通じて、同じ方向に移動する。最も熱い空気が湿った液滴と接触するので、これは、熱感受性物質(タンパク質など)に対する好ましい様式である。乾燥空気及び液滴が反対の方向に移動する場合、これは、逆流動様式と称される。逆流動様式で産生された粒子は、排出空気より高い温度を通常示す。排出空気そのものは、系を離れることができ(「開放サイクル」)又は再循環され得る(「閉鎖サイクル」、一般に、不活性気体を用いて有機溶媒を蒸発させるために使用される。)。「Spray Drying Process Principles(<<www.niro.com>>、2007年2月)。様々な噴霧乾燥機のデザイン(サイズ、微粉化装置、無菌条件など)から選択し、及び異なるプロセスパラメータ(乾燥空気流、乾燥空気温度など)を調整することによって、粒子のサイズ、形状及び構造又は無菌性のような最終粉末特性を調節することができる。回収された粉末の得られた水分が十分に低くなければ、例えば、流体床乾燥機及び冷却機、接触乾燥機又はマイクロ波乾燥機の形態で、後処理が必要とされ得る。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。
【0072】
噴霧乾燥過程は、液体供給物の微粉化、液滴の乾燥並びに乾燥された産物の分離及び回収を一般に含む。各工程は、得られた産物に対して固有の影響を有し、特にタンパク質のような感受性物質を取り扱う場合に、困難も与える。
【0073】
タンパク質又はペプチドを噴霧乾燥させるために、安定化性アジュバントを使用することがしばしば有利である。トレハロース及びショ糖などの糖は、有効なタンパク質安定化物質である。これらは、噴霧乾燥過程の間にタンパク質の凝集及び/又は不活化を低下させることができるだけでなく、そのガラス遷移温度を下回る温度で保存された場合、得られた粉末の保存安定性に正の影響も有し得る。「Lee,Rational Design of Stable Protein Formulations,Theory and Practice(Kluwer Academic/Plenum Publishres,2002)」。
【0074】
微粉化とは、液体を単一液滴の複数に断片化すること、いわゆる噴霧である。微粉化装置の選択は、最終製品の品質及び処理能力に影響を与える。「Richter,Verfahrenstechnik,Sonderausgabe Martubersicht 11:96−100(1997)」。全ての微粉化装置に共通するのは、液体を分断するためにエネルギーを使用することである。エネルギーの異なる種類により、異なる微粉化装置が区別される。エネルギーは、発生する液体中に乱流をもたらす。適用される空気の力と共に、液体の表面張力及び粘度が克服され、崩壊が生じる。
【0075】
噴霧乾燥の稼動に関して、最も適切な噴霧は、多かれ少なかれ等しいサイズの小さな液滴の1つである。全ての微粉化系が、噴霧乾燥された粉末に対して狭い粒子サイズ分布を与え得るとは限らない。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。タンパク質は極めて感受性が高い物質であり、微粉化は剪断力(不安定性の原因となり得る。)を与え得るので、ストレス因子である。Mahler他は、高い剪断力(撹拌及び振盪)とIgG1溶液の凝集増加の間に相関を見出した。「Mahler et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59:407−417(2005)」。リゾチーム溶液も、微粉化の間に、凝集及び活性の喪失を示した。「Yu et al.,Eur.Journal of Pharm.Sci27:9−18(2006)」。剪断ストレス及び液体/空気界面の突然の拡大が、この種のタンパク質崩壊の原因であるように見受けられる。「Maa et al.,Biotechnology and Bioengineering 54(6):503−512(1997)」。しかし、ポンプ操作において起こる剪断力でさえ、タンパク質溶液にストレスを与えるのに十分であり得る。「Brennan et al., Diabetes 34,353−359(1985)」。微粉化装置の多くの異なる種類が噴霧乾燥操作のために利用可能である。
【0076】
回転微粉化装置は、液体供給物が空気/気体雰囲気中に放出される前に、液体供給物を遠心的に加速する。液体供給物は、回転する輪、円板又はコップ上の中心に分布される。低い円板速度で、液滴の形成は、液体の粘度及び表面張力に主として依存する。円板速度が高いほど、内部及び空気の摩擦がより大きな役割を果たし、液滴形成の機序に寄与するようになる。さらに、液滴の大きさは、液体供給物の速度、その固体含量及び密度、噴霧装置の円板の直径及びデザインによって影響を受ける。羽根なし円板/椀/コップ又は曲線若しくは直線の羽根を有する羽根付き輪などの、回転式微粉化装置の様々なデザインが利用可能である。「Masters,Spray Drying Handbook(Wiley & Sons Inc.,New York,1991)。
【0077】
回転式微粉化装置は360°の噴霧角度を有し、従って、(壁沈着を最小限に抑えるために)乾燥チャンバーのある直径を必要とする。これらの系は、より高い能力のために、通常使用される。
【0078】
圧力ノズル系は、圧力エネルギーを速度エネルギーに変換することによって、液体を放出するために必要とされる全てのエネルギーを液体自体から得る。最も単純な一流体ノズルは、単一の液滴を滴下するために使用される管状毛細管である。この装置は、等しい液滴の少量を生じさせるためにのみ使用される。流速を増加させることにより、微粉化を達成することが可能であり、液体ジェットは、乱流を介して液滴へ断片化される。流体の崩壊は、例えば、ノズルに渦巻き挿入物又は渦巻きチャンバーを与えることにより、液体を屈曲、回転及びターンさせることによって軽減することができる。得られた液滴のサイズは、先述したパラメータ(粘度、流速など)の他に、適用される圧力及びノズルの直径によって影響を受ける。「Richter,Verfahrenstechni,Sonderausgabe Martubersicht11:96−100(1997)」。液体供給物は、中空の錐体としての開口部を離れる。すなわち、圧力ノズルは、低直径乾燥チャンバーを有する小さな噴霧乾燥の取り付けにおいて使用され得る。多数の様々なノズルデザインが溶液、エマルジョン及び懸濁物を微粉化するための多様な用途を与え、粒子サイズ(懸濁物)及び粘度(極めて高い圧力が必要とされる。)によってのみ制約される。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。
【0079】
空気式ノズル微粉化を使用する場合、液体との高速気体媒体(通常、空気)の衝突が液滴形成のためのエネルギーを提供する。液体と気体が衝突する場所に応じて、内部混合及び外部混合系が区別される。「Richter,Verfahrenstechnik,Sonderausgabe Martubersicht 11:96−100(1997)」。高度に粘性の液体を微細な大きさの液滴に分断しなければならない場合、2つの液体ノズルが好ましく使用される。気体媒体はノズル内部で加圧され(最大7バール)、液体供給物の崩壊を促進する気体乱流を生成するために、ノズル内部にはさらなる渦巻き挿入物が時折挿入される。液体供給物は、空気流射出効果を支える低圧ポンプによって、通常拍出される。空気式ノズル系は、5から75μmの範囲の液滴を生成する。欠点は、気体/空気を圧縮するための高い費用及び乾燥チャンバー内のその冷却効果である。極めて高い粘度を有する液体を取り扱う場合、ノズル開口部を封鎖する危険も存在する。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。
【0080】
超音波ノズルは、微粉化を達成するために高周波音波を使用する。圧電変換器は、超音波生成装置から高周波電気エネルギーを受け取り、これを同じ周波数で振動機構動作に変換する。ノズルの長さを走行する液体を導入する。液体供給物が開口部に到達すると、液体供給物は振動エネルギーを吸収し、液体供給物の微粉化を引き起こす。「Sono Tek Corporation:Ultrasonic spray nozzle systems(SONO TEK Corporation,New York,2007)」。
【0081】
音波ノズルは、(特に、空気式ノズルと比べて)低い圧力で動作し、得られる液滴は、10と50μmの間の直径を有する。超音波微粉化装置を使用することの1つの大きな欠点は、例えば、固体を含有する原材料に対して使用された場合の連続稼動の予測不能性であり、ノズル領域中での事前乾燥のリスクは、発生装置/微粉化プロセスの汚染をもたらし得る。従って、これらの系は、しばしば、微細スプレーを生成するために研究室規模及びパイロット乾燥機中で又は非ニュートン若しくは高粘性液体のために、他のノズル系を使用できない場合に、よりしばしば使用される。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。
【0082】
噴霧乾燥の間のスプレーの乾燥速度を予想することは、スプレー全体の挙動をモニターすることの困難さ及び乾燥チャンバー内部の不均一な条件によって困難である。しかしながら、単一の液滴の乾燥速度は、理論的に及び実際的に研究することができる。「Elversoon et al.,Journal of Pharm.Sci94(9):2049−2060(2005)」。
【0083】
液体供給物が微粉化されるとすぐに、その表面対質量比が増加し、空気と液滴間の熱伝導が加速され、この時点で、液滴は極めて迅速に乾燥することができる。100μm未満の一般的な液滴サイズにおいて、蒸発は1秒未満で起こる。「Nurnberg et al.,Acta Pharmaceutica Technologica,26(1):39−67,Tab3−1(1980)」。熱伝導(空気−>液滴)及び水分の物質移動(液滴−>空気)という2つの伝達過程が含まれる。後者において、水分は、各液滴を取り囲む境界層を通過して浸透しなければならない。移動速度は、周囲の空気の温度、湿度、輸送特性、液滴の直径及び液滴と空気の間の相対速度によって影響を受ける。「Masters,Spray Drying Handbook(Wiley & Sons Inc.,New York,1991)」。まず、蒸発が一定の速度で起こる(乾燥の第一段階=定速期間)。液滴内からの水分の拡散は、飽和された表面状態を保つ。いわゆる「臨界点」において、水分含量が低すぎて液滴表面上の飽和を保てなくなり、乾燥した層が液滴の表面に形成し始める。それ以降、拡散による横断に対してさらなる成長する障壁が存在する。液滴/粒子の常に変化する条件の結果、蒸発速度が減少する(減速期=乾燥の第二段階)。「Masters,Spray drying in Practice.SprayDryConsult International ApS:Charlottenlund(2002)」。プロセスの間の液滴/粒子の温度は、注入乾燥空気温度(Tin)及び液体供給速度(QLF)によって主に影響を受け、乾燥空気流速(QDA)及び微粉化空気流速(QAA)によって幾分影響を受ける。これら4つのパラメータは、Toutも決定する。実際には、ノズル開口部直下の温度はTinよりToutにずっと近く、従って、Toutは、液滴乾燥速度に対する主要な変数であるように見受けられる。もちろん、液滴内部の温度(Ti)は、その表面上(Ts)においてより低い。Tsは、湿球温度(Twb)にすぐ到達し、定速期の間そこに留まる。下降速度期に液滴表面上に増殖する外殻を伴って、Ts及びTiが増加し始める。「Maa et al.,Biotechnology and Bioengeneering 53(6):503−512(1997)」。得られた粒子の形態に関して、液滴の大きさ及び外殻の質感が重大な役割を果たす。Elversson他は、液滴の大きさと粒子の大きさの間の線形関係を推定したが、液体供給物中の固体含量が粒子の大きさに強く影響を及ぼすことも推定した。「Elversson et al.,Journal of Pharm.Sci.92(4):900−910(2003)」。
【0084】
乾燥は、熱及び脱水という、タンパク質に対する2つのさらなるストレス因子を示唆する。熱的ストレスに対するタンパク質の安定性は、タンパク質製剤における重要な変数である。噴霧乾燥過程の間の温度の変化は、タンパク質の安定性(例えば、プロセスの安定性、加速安定性試験の間の保存寿命)に対して多大な影響を有する。高温に曝露されると、タンパク質はより柔軟になり(水素結合が弱まり)、部分的に折り畳みが解除され、衝突頻度が増大する。「Brange,Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins(Taylor & Francis ltd.,2000)」。この過程は通常可逆的であるが、一旦、部分的に折り畳み解除されると、タンパク質は、凝集又は不正確な折り畳みのようなさらなる分解経路に対して極めて感受性が高くなり、これは、タンパク質の機能及び長期安定性に対して強く影響を及ぼす。
【0085】
最大安定性のための温度は、多くのタンパク質に関して、−10と35℃の間である。「Bummer et al.,Protein Formulation and Delivery(Marcel Dekker AG,Basel,2000)」。Mumenthaler他は、乾燥粒子がTOutを約25℃下回る最大温度に到達することを仮定した。「Mumenthaler et al.,Pharm.Res.11(1):12−20(1994)」。本発明において、TOutは、約60℃から約80℃の範囲であり得る。熱変性は、噴霧乾燥中の主な不安定性要因であるとは一般に考えられていない。「Maa et al.,Current Pharmaceutical Biotechnology1(3):283−302(2000)」。
【0086】
タンパク質の生物学的活性は、その固有の三次元構造に依存する。水溶液中において、タンパク質は、タンパク質表面上に非共有的に結合された水分子によって取り囲まれることによって、その固有の構造を維持する。通常、非極性アミノ酸残基は内部に埋め込まれており、極性アミノ酸残基は表面上に存在する。これは、溶液中においてタンパク質の極めて緊密な梱包(有機分子の結晶内より高い充填密度)をもたらす。「Brange,Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins(Taylor & Francis Ltd.,2000)」。水を除去することは、この梱包を不安定化し得、立体的な変化が起こり得る。
【0087】
噴霧乾燥プロセスの最後の工程は、通例、空気/気体からの粉末の分離及び乾燥された産物の除去である。幾つかの実施形態において、この工程は、高い粉末収率を得るのに及び大気への粉末の放出を通じた空気汚染を防ぐのに可能な限り効果的である。この目的のために、サイクロン、袋フィルター又は静電的沈殿装置のような、乾燥及び湿潤収集装置を使用することができる。これらのユニットの組み合わせさえ、搭載することができる。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。単純なデザインと有効性のために、サイクロン分離装置が最も一般的な分離装置の1つであり、様々な産業で使用されている。「Coulson and Richardson,Chemical Engineering,4th,Vol.2(Butterworth−Heinemann,Oxgford,1991)」。サイクロン内部での粒子の運動は、2つの相反する力の結果である。遠心力はサイクロン壁へ粒子を移動させるのに対して、空気/気体の牽引力は、粒子を中心の空気コア中に運搬して、サイクロンから離そうとする。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。粉末及び空気は、サイクロンの中に正接的に入り、サイクロンの底に向かう下方への螺旋形態で渦を巻く(外側渦巻き撹拌)。この時点で、殆どの粒子はサイクロンを離れて、底に戴置された容器中に収集され、微粒子画分及び分離できなかった他の粒子のみを含有する空気は、サイクロンの中心内へ上方に螺旋を形成し(内側渦巻き撹拌)、最上部を通過する。実際には、30μmを上回る粒子サイズが回収されるはずであり、これは、噴霧乾燥装置の大きさにも依存する。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。しかしながら、サイクロンの大きさを変動させることによって、収率を最適化させることが可能である。Maury他は、標準的なサイクロンと比べて、BuchiB−191噴霧乾燥装置に対して新たに開発されたサイクロン分離装置を用いて、ずっと高い収率を達成した。「Maury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59(3):565−573(2005)」。高性能サイクロン(小さな直径)は、より多く(極めて小さな粒子(1.5μmを下回る直径)さえ含む。)を分離した。
【0088】
サイクロン効率の計算に対して、理論的な研究が行われた。1つのアプローチは、例えば、以下の式によって、いわゆる「カットオフ点」を計算することである。
【0089】
【数1】
dp*はカットオフ粒子直径であり、ηは空気の粘度であり、riは内側渦巻き撹拌の半径を表し、vriは空気注入口での放射状空気速度であり、ρs及びρgは固体及び気体の密度を表し、uiはriでの正接粒子速度である。この点(粒子の直径)において、遠心力と牽引力は等しい値を有する。その大きさの粒子は、内側又は外側渦巻き撹拌の傾向なしに回転し、より小さな粒子は排出空気によって履引され、より大きな粒子は収集容器中に落ちる。「Staudinger et al.,VDI Berichte 1511:1−23(1999)」。
【0090】
飛行時間アプローチは、臨界粒子直径を計算するための別の方法である。このアプローチは、粒子がサイクロン壁へ移動するのに要する時間を考慮に入れる。このアプローチにおいて、サイクロン内部の気体の流れに影響を及ぼすので、収集容器の幾何学を考慮することができる。「Qian et al.,Chem.Eng.Technol.29(6):724−728(2006)」。
【0091】
一切アジュバントを加えずに水性タンパク質溶液を噴霧乾燥すると、折り畳み解除、凝集及び不活化が通常生じる。これは、様々なタンパク質:オキシヘモグロビン(Labrude et al.)、トリプシノーゲン(Tzannis et al.)、IgG(Maury et al.2005)を用いて数回試されており、全ての事例で、プロセスの不安定性が観察された。「Labrude et al.,Journal of Pharm.Sci.7883」:223−229(1989)、Tzannis, et al., Journal of Pharm.Sci.88(3):351−359(1999)及びMaury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59(2):251−261(2005)」。」従って、幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、噴霧乾燥プロセスの間及び保存の間にも、活性医薬成分(API)を保護する。タンパク質の凍結乾燥において、糖(トレハロ−ス、ショ糖)、アミノ酸(アルギニン)又は界面活性剤(Tween)が、安定化剤として使用されてきた。「Lee,Rational Design of Stable Protein Formulations,Theory and Practice(Kluwer Academic/Plenum Publishers,2002)」。ポリオール、二糖及びアミノ酸の使用に関して、幾つかの安定化理論が提案されてきた。それらのうちの1つは、Arakawa及びTimasheffによって確立されたいわゆる「優先的排除」である。「Arakawa et al.,Biochemistry 21:6536−6544(1982)」、「Arakawa et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 46:307−326(2001)」及び「Timasheff,Annual Revews Biophys.Biomol.Struct.22:67−97(1993)」。これは、タンパク質が溶液中で優先的に水和され、従って、共溶質がタンパク質表面との接触から除外されるという前提に基づいている。折り畳み解除がより大きなタンパク質表面をもたらすにつれて、共溶媒が排除される領域も大きくなる。この場合、折り畳み解除は熱力学的に好ましくない状況をもたらし、従って、タンパク質はその折り畳まれた自然の立体構造を保つ。「Arakawa et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 46:307−326(2001)」。タンパク質は、「水置換」機序によっても保護され得る。この理論は、蒸発した水の代わりに、乾燥されたタンパク質へ水素結合することによって、賦形剤が折り畳み解除を妨げると述べている。「Carpenter et al.,Rational Design of Stable Protein Formulations,Theory and Practice(Kluwer Academic/Plenum Publishres,2002)」。また、タンパク質を固定化するガラス状マトリックスの形成は、乾燥及び保存時のタンパク質の安定性に関する理由であり得る。「Tzannis et al.,Journal of Pharm.Sci.88(3):360−370(1999)」。従って、高いガラス遷移温度(Tg)(例えば、分子の運動を妨げるために、保存温度より高いTg)を示す製剤が必要とされる。界面活性剤の安定化機構は、界面(例えば、液体/空気界面)を占めるための界面活性剤とタンパク質の競合に基づき、界面活性剤に対する熱力学的エッジを示す。タンパク質が界面に吸着する可能性が小さくなるとともに、折り畳み解除及び凝集のリスクは著しく低下する。「Adler et al.,Journal of Pharm.Sci.,88(2),199−208(1999)」。
【0092】
湿度は、特に長期保存の間に、タンパク質の安定性に影響を及ぼす別の因子である。タンパク質粉末に対する水分の影響は、文献中に豊富に記載されている。通常、固体タンパク質製剤の化学的安定性は、反応試薬として又は反応試薬を動員するための溶媒としての役割を果たす水のために、水分含量の増加とともに減少する。水分は、タンパク質構造の立体構造的変化の原因ともなり得る。その他に、噴霧乾燥された粉末のTgも水によって影響を受ける。水は可塑剤として作用し、これは、水が物質のTgを低下させることを意味する。水の影響は、ゴードン・テイラー式(二相混合物のTg(Tgmix)を計算するための方程式)を用いて計算することができる。
【0093】
【数2】
ω、Tg及びρは、それぞれ、重量割合、ガラス遷移温度及び異なる成分の密度を表す。約−138℃のTgを有する水に関して、得られた粉末の水含量は低くなるべきことが明らかである。「Hancock et al.,Pharm.Res.11(4):471−477(1994)」。しかしながら、水含量と安定性の間の相関は線形的でないように見受けられる。Chang他は、2から3%の中間的水含量で、凍結乾燥されたIgGの最適な安定化を得た。「Chang et al.,Journal of Pharm.Sci94(7):1427−1444(2005)」。
【0094】
この知見の結果、噴霧乾燥プロセスから得られる粉末は、低い残留水分を示し、また、保存の間、湿気から保護されるはずである。「Maa et al.,Pharm.Res.15(5):768−775(1998)」。前者は、ある程度、プロセス条件(注入空気温度(Tin)、注入空気の相対湿度(RH))によって影響を受け得、後者は、耐漏出容器又は管理可能な保存条件の問題である。
【0095】
III.本発明の製剤
本発明の組成物を調製する際には、あらゆる適切なタンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分を使用することができる。例えば、それはIgG種であり得る。典型的な抗体又はその抗原結合部分には、MAK195F、アダリムマブ又はABT−325が含まれるが、これらに限定されない。本発明に従う使用に適した抗TNF抗体は、周知である(例えば、欧州特許A−0260610、欧州特許A−0351789、欧州特許A−0 218 868に記載されているとおり。)。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両方を使用することができる。さらに、Fab又はF(ab’)2断片又は一本鎖Fv断片などのTNF結合抗体断片も適している。適切なモノクローナル抗−hTNFα抗体は、欧州特許A0260610に記載されており(AM−195又はMAK−195と表記される。)、受託番号87 050803の下で、ECACCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される。MAK−195F(INN:アフェリモマブ)とも表記されるマウス抗TNF抗体断片(F(ab’)2)も適切である。
【0096】
一実施形態において、本発明の製剤は、例えば、アダリムマブ(Humira又はD2E7;Abbott Laboratoriesとも称される。)などのヒトTNFαを結合する抗体又はその抗原結合部分を含む。一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、1×10−8M又はそれ以下のKd及び1×10−3s−1又はそれ以下のKoff速度定数(何れも表面プラズモン共鳴によって測定される。)で、ヒトTNFαから解離し、1×10−7M又はそれ以下のIC50で標準的なインビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞毒性を中和する。抗体の配列を含む、ヒトTNFαに対して高い親和性を有するヒト中和抗体を作製するための例及び方法は、米国特許第6,090,382号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0097】
一実施形態において、本発明の製剤は、例えば、抗体ABT−874(Abbott Laboratories)(米国特許第6,914,128号)などのヒトインターロイキン−12(IL−12)を結合する抗体又はその抗原結合部分を含む。ABT−874は、インターロイキン−12及びインターロイキン−23を標的とし、これらを中和するように設計された完全ヒトモノクローナル抗体である。一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、以下の特徴の1つ又はそれ以上を有する。抗体又はその抗原結合断片は、3×10−7M又はそれ以下のKDで、ヒトIL−1αから解離し、5×10−5M又はそれ以下のKDでヒトIL−1βから解離し、マウスIL−1α又はマウスIL−1βを結合しない。抗体の配列を含めて、ヒトIL−12に対して高い親和性を有するヒト中和抗体を作製するための例及び方法は、米国特許第6,914,128号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0098】
一実施形態において、本発明の製剤は、例えば、抗体ABT−325(Abbott Laboratories)などのヒトIL−18を結合する抗体又はその抗原結合部分を含む(米国特許出願2005/0147610号を参照)。
【0099】
一実施形態において、本発明の製剤は、抗体ABT−147(Abbott Laboratories)などのヒトIL−12を結合する抗体又はその抗原結合部分を含む(2007年1月11日に公開されたWO2007/005608A2を参照)。
【0100】
一実施形態において、本発明の製剤は、抗体ABT−308(Abbott Laboratories)などのヒトIL−13を結合する抗体又はその抗原結合部分を含む(PCT/US2007/19660を参照)。
【0101】
粉末化された製剤中に含められ得るタンパク質の例には、抗体又はその抗原結合断片が含まれる。本発明において使用され得る抗体又はその抗原結合断片の異なる種類の例には、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及びドメイン抗体(dAb)が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明の方法及び組成物において使用される抗体は抗TNFα抗体若しくはその抗原結合部分又は抗IL−12抗体若しくは抗IL−13抗体若しくはこれらの抗原結合部分である。本発明において使用され得る抗体又はその抗原結合断片のさらなる例には、ABT−147(Abbott Laboratories)、ABT−325(抗IL−18;Abbott Laboratories)、ABT−308(Abbott Laboratories)、ABT−874(抗IL−12;Abbott Laboratories)、アフェリモマブ(Fab2抗TNF;Abbott Laboratories)、Humira(アダリムマブ;Abbott Laboratories)、Campath(Alemtuzumab)、CEA−Scan Arcitumomab(fab断片)、Erbitux(Cetuximab)、Herceptin(Trastuzumab)、Myoscint(Imciromab Pentetate)、ProstaScint(Capromab Pendetide)、Remicade(Infliximab)、ReoPro(Abciximab)、Rituxan(Rituximab)、Simulect(Basiliximab)、Synagis(Palivizumab)、Verluma(Nofetumomab)、Xolair(Omalizumab)、Zenapax(Daclizumab)、Zevalin(Ibritumomab Tiuxetan)、OrthocloneOKT3(Muromonab−CD3)、Panorex(Edrecolomab)及びMylotarg(Gemtuzumab ozogamicin)が含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
1つの別例において、タンパク質は、Pulmozyme(ドルナーゼα)、Rebif、Regranex(ベカプレルミン)、Activase(アルテプラーゼ)、Aldurazyme(ラロニダーゼ)、Amevive(Alefacept)、Aranesp(ダルベポエチンα)、Becaplermin濃縮物、Betaseron(インターフェロンβ−1b)、BOTOX(ボツリヌス毒素A型)、Elitek(ラスブリカーゼ)、Elspar(アスパラギナーゼ)、Epogen(エポエチンα)、Enbrel(Etanercept)、Fabrazyme(アガルシダーゼβ)、Infergen(インターフェロンαcon−1)、IntronA(インターフェロンα−2a)、Kineret(Anakinra)、MYOBLOC(ボツリヌス毒素B型)、Neulasta(Pegfilgrastim)、Neumega(Oprelvekin)、Neupogen(Filgrastim)、Ontak(Denileukin diftitox)、PEGASYS(Peginterferonα−2a)、Proleukin(Aldesleukin)、Pulmozyme(ドルナーゼα)、Rebif(インターフェロンβ−1a)、Regranex(Becaplermin)、Retavase(Reteplase)、Roferon−A(インターフェロンα−2)、TNKase(Tenecteplase)及びXigris(Drotrecoginα)などの(但し、これらに限定されない。)融合タンパク質である。
【0103】
本明細書に記載されている方法及び組成物中に含められ得るタンパク質の他の例には、例えば、成長ホルモン(ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む。)、成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−アンチトリプシン;インシュリンA鎖;インシュリンB鎖;プロインシュリン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子;第IX因子;組織因子及びフォン・ビルブランド因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼ又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボムバジン;トロンビン;腫瘍壊死因子−α及び−βエンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;リラキシンA−鎖;リラキシンB−鎖;プロリラキシン;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;DNアーゼ;インヒビン;アクチビン;血管内皮性成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子に対する受容体;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4−、−5−若しくは−6(NT−3、NT4、NT−5又はNT−6)又はNGF−βなどの神経成長因子などの神経栄養因子;血小板由来成長因子(PDGF);aFGF及びbFGFなどの繊維芽成長因子;上皮成長因子(EGF);TGFα及びTGF−β(TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4又はTGF−β5など)などの形質転換成長因子(TGF);インシュリン様成長因子−I及び−II(IGF−I及びIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I);インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20などのCDタンパク質;エリスロポエチン(EPO);トロンボポエチン(TPO);骨誘導性因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);成長及び分化因子、インターフェロン−α、−β及び−γなどのインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF及びG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1からIL−10;スーパーオキシドディスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子(DAF);例えば、AIDS外被の一部などのウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレッシン;制御タンパク質;免疫接着物質;抗体及び上に列記されているポリペプチドの何れかの生物学的に活性な断片又は変形物などの哺乳動物タンパク質(その組換えタンパク質を含む。)が含まれる。
【0104】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、ある抗原に対して特異的であるが、前記抗原上の異なるエピトープに結合する抗体の混合物を一般に表す。ポリクローナル抗体は、関連する抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって動物内で一般に産生される。二官能性剤又は誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を通じた連結)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2又はR1NCNR(R及びR1は、異なるアルキル基である。)を用いて、免疫化されるべき種内において免疫原性であるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又は大豆トリプシン阻害剤)へ関連抗原を連結するのに有用であり得る。ポリクローナル抗体を作製するための方法は本分野において公知であり、例えば、「Antibodies:A Laboratory Manual,Lane and Harlow(1988)」(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0105】
モノクローナル抗体
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマに由来する抗体(例えば、標準的なKohler及びMilsteinハイブリドーマ法などのハイブリドーマ技術によって調製されたハイブリドーマによって分泌される抗体)を表すものとする。例えば、モノクローナル抗体は、「Kohler et al.,Nature,256:495(1975)」によって最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製され得、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。従って、本発明のハイブリドーマ由来二重特異性抗体は単一の抗原より多くの抗原に対して抗原特異性を有するが、なおモノクローナル抗体と称される。
【0106】
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体(すなわち、集団を構成する各抗体は、微量に存在する可能性がある天然の変異を除き同一である。)の集団から得られる。従って、「モノクローナル」という修飾語は、異なる抗体の混合物でないという抗体の特徴を示す。
【0107】
さらなる実施形態において、抗体は、「McCafferty et al.,Nature,348:552−554(1990)」に記載されている技術を用いて作製された抗体ファージライブラリーから単離され得る。「Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)」及び「Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)」は、それぞれ、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記載する。その後の刊行物は、極めて巨大なファージライブラリーを構築するための戦略として、鎖シャッフリング(Marks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992))並びにコンビナトリアル感染及びインビボ組換え(Waterhouse et al.,Nuc.Acids.Res.,21:2265−2266(1993))による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の作製を記載する。従って、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する実行可能な代替技術である。
【0108】
抗体及び抗体断片は、米国特許第6,423,538号;6,696,251号;6,699,658号;6,300,065号;6,399,763号及び6,114,147号に記載されているように、発現ライブラリーを用いて、酵母及びその他の真核細胞からも単離され得る。真核細胞は、細胞表面上に提示するために、コンビナトリアル抗体ライブラリーから得られるものなどのライブラリータンパク質を発現するように改変され得、標的分子を選択するための親和性を有する抗体に関して、ライブラリークローンを含有する特定の細胞を選択することが可能となる。単離された細胞からの回収後に、目的の抗体をコードするライブラリークローンは、適切な哺乳動物細胞株から高レベルで発現され得る。
【0109】
目的の抗体を開発するためのさらなる方法には、米国特許第7,195,880;同第6,951,725号;同第7,078,197号;同第7,022,479号、同第6,518,018号;同第7,125,669号;同第6,846,655号;同第6,281,344号;同第6,207,446号;同第6,214,553号;同第6,258,558号;同第6,261,804号;同第6,429,300号;同第6,489,116号;同第6,436,665号;同第6,537,749号;同第6,602,685号;同第6,623,926号;同第6,416,950号;同第6,660,473号;同第6,312,927号;同第5,922,545号;及び同第6,348,315号に記載されているように、核酸ディスプレイ技術を用いた無細胞スクリーニングが含まれる。これらの方法は、タンパク質が由来する核酸にそのタンパク質が物理的に会合又は結合されるように、核酸からインビトロでタンパク質を転写するために使用することができる。標的分子を有する発現されたタンパク質に関して選択することによって、タンパク質をコードする核酸も選択される。無細胞スクリーニング技術に対する一つの変法では、免疫系細胞から単離された抗体配列を単離し、抗体の多様性を増大させるために、部分的に無作為化されたポリメラーゼ連鎖反応突然変異誘発技術を使用することができる。次いで、これらの部分的に無作為化された抗体遺伝子は、無細胞系内で発現され、核酸と抗体の間に同時に物理的会合が作出される。
【0110】
DNAは、例えば、相同なマウス配列の代わりに、ヒト重および軽鎖定常ドメインに対するコード配列を置換することによって、(米国特許第4,816,567号;Morrison,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、又は非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列の全部又は一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによっても修飾され得る。
【0111】
抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位及び異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製するために、典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに対して置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに対して置換される。
【0112】
キメラ又はハイブリッド抗体は、架橋剤を用いるものなど、合成タンパク質化学における公知の方法を用いて、インビトロでも調製され得る。例えば、イムノトキシンは、ジスルフィド交換反応を用いて、又はチオエーテル結合を形成することによって構築され得る。この目的のための適切な試薬の例には、イミノチオラート及びメチル−4−メルカプトブチルイミダートが含まれる。
【0113】
ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである源からその中に導入された1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「輸入」可変ドメインから通例採取される「輸入」残基としばしば称される。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列に対する非ヒト(例えば、げっ歯類)CDR又はCDR配列を置換することによって、Winter及び共同研究者(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988)の方法に従って本質的に実施することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、非ヒト種由来の対応する配列によって、完全状態より大幅に少ないヒト可変ドメインが置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は、通例、幾つかのCDR残基及びおそらくは幾つかのフレームワーク(FR)残基がげっ歯類抗体中の同等の部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体である。ヒト化プロセスを記載するさらなる参考文献には、「Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987);Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)(これらの各々は、参照により、本明細書に組み込まれる。)が含まれる。
【0114】
ヒト抗体
あるいは、免疫化時に、内在の免疫グロブリン産生の不存在下でヒト抗体の完全なレパートリーを作製可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが現在では可能である。例えば、キメラ及び生殖系列変異体マウス中の抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失は内在の抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列変異体マウス中へのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の導入は、抗原攻撃誘発時に、ヒト抗体の作製をもたらす。例えば、「Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993)」を参照されたい。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーから得ることもできる(Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991))。
【0115】
二重特異的抗体
二重特異的抗体(BsAb)は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して特異性を有する抗体である。このような抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異的抗体)に由来し得る。
【0116】
二重特異的抗体を作製するための方法は、本分野において公知である。完全長二重特異的抗体の伝統的な作製は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(2つの鎖は異なる特異性を有する。)の同時発現を基礎としている(Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重及び軽鎖の無作為仕分けのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子(そのうち一つのみが正しい二重特異的構造を有する。)を含む可能性を有する混合物を産生する。通常アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われる正しい分子の精製はかなり骨が折れ、産物の収率は低い。類似の操作が、WO93/08829及び「Traunecker et al.,EMBOJ.,10:3655−3659(1991)」に開示されている。
【0117】
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)が免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。
【0118】
好ましくは、融合は、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインを用いて行われる。融合物の少なくとも1つの中に存在する軽鎖結合のために必要な部位を含有する第一の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物及び所望に応じて、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別個の発現ベクター中に挿入され、適切な宿主生物中へ同時形質移入される。これにより、構築に使用される3つのポリペプチドの鎖の等しくない比率が最適な収率を与える実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する上で大幅な柔軟性が得られる。しかしながら、等しい比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率をもたらす場合に、又は比率がまったく重要でない場合に、1つの発現ベクター中に、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖に対するコード配列を挿入することが可能である。
【0119】
このアプローチの好ましい実施形態において、二重特異的抗体は、一方のアーム中の第一の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖及び他方のアーム中のハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を与える。)から構成される。二重特異的分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することによって、容易な分離法が与えられるので、この非対称的な構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異的化合物の分離を容易にすることが見出された。このアプローチは、1994年3月3日に公開されたWO94/04690に開示されている。二重特異的抗体の作製に関するさらなる詳細については、例えば、「Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)」を参照されたい。
【0120】
二重特異的抗体には、架橋された又は「ヘテロ連結」抗体が含まれる。例えば、ヘテロ連結体中の抗体の一方はアビジンに、他方はビオチンに結合させることが可能である。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的誘導すると提案され(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療(WO91/00360、WO92/200373及びEP03089)が提案されている。ヘテロ連結抗体は、あらゆる都合のよい架橋法を用いて作製され得る。適切な架橋剤は本分野において周知であり、多数の架橋技術とともに、米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0121】
抗体断片から二重特異的抗体を作製するための技術も、この文献中に記載されている。二価の抗体断片(必ずしも二重特異的でない。)を作製するために、以下の技術を使用することもできる。例えば、二価抗体を形成するために、イー・コリ(E.coli)から回収されたFab’断片をインビトロで化学的に結合することができる。「Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217−225(1992)」を参照されたい。
【0122】
組換え細胞培養から直接得られた二価抗体断片を作製及び単離するための様々な技術も記載されている。例えば、ロイシンジッパーを用いて、二価のヘテロ二量体が作製されている。「Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)」。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。単量体を形成するために、ヒンジ領域において、抗体ホモ二量体が還元され、次いで、抗体ヘテロ二量体を形成するために再酸化した。「Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)」によって記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異的/二価抗体断片を作製するための別の機序を与えた。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間での対合が不可能であるほど極めて短いリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つの断片のVH及びVLドメインは、別の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対合され、これにより、2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異的/二価抗体断片を作製するための別の戦略も報告されている。「Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)」を参照されたい。
【0123】
一実施形態において、本発明の製剤は、IL−1(IL−1α及びIL−1βを含む。)に対して二重特異的である抗体を含む。二重特異的IL−1抗体を作製するための例及び方法は、2008年7月10日に公開されたWO08/082651号に見出すことができる。
【0124】
二重可変ドメイン(DVD)結合タンパク質
二重可変ドメイン(DVD結合タンパク質とは、2つ又はそれ以上の抗原結合部位を含み、四価又は多価の結合タンパク質であるタンパク質である。DVDは、一重特異的(すなわち、1つの抗原を結合することができる。)又は多重特異的(すなわち、2つ又はそれ以上の抗原を結合することができる。)。2つの重鎖DVDポリペプチド及び2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合タンパク質は、DVDIgTMと称される。DVDIgの各半分は重鎖DVDポリペプチド及び軽鎖DVDポリペプチド並びに2つの抗原結合部位を含む。各結合部位は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、抗原結合部位当り合計6つのCDRが抗原結合に関与する。ある種の実施形態において、DVDは、2007年3月29日に公開されたWu他に対する米国特許公開20070071675号(参照により、本明細書に組み込まれている。)に開示されているDVDのいずれかを含み得る。
【0125】
DVD−Igは、2つの異なる標的を同時に遮断して効力/安全性を増強し及び/又は患者の範囲を増加させるための治療剤として有用である。このような標的は、可溶性標的(IL−13及びTNF)及び細胞表面受容体標的(VEGFR及びEGFR)を含み得る。DVD−Igは、癌治療のために腫瘍細胞とT細胞(Her2及びCD3)間の又は自己免疫/移植のために自己反応性細胞とエフェクター細胞間の又はあらゆる所定の疾患において疾病の原因となる細胞を除去するために、何れかの標的細胞とエフェクター細胞間の再誘導された細胞毒性を誘導するためにも使用することができる。
【0126】
さらに、同じ受容体上の2つの異なるエピトープを標的とするようにDVD−Igが設計されている場合、受容体のクラスター化及び活性化を引き起こすためにDVD−Igを使用することができる。これは、作動性及び拮抗性の抗GPCR治療薬を作製する上で利点を有し得る。この事例では、DVD−Igは、クラスター化/シグナル伝達(2つの細胞表面分子)又はシグナル伝達(1つの分子上)のために、1つの細胞上の2つの異なるエピトープを標的とするために使用することができる。同様に、DVD−Ig分子は、CTLA−4連結及びCTLA4細胞外ドメインの2つの異なるエピトープ(又は同じエピトープの2つのコピー)を標的とすることによる負のシグナルの引き金を引き、免疫応答の下方制御をもたらすように設計することができる。同様に、DVD−Igは、細胞表面受容体複合体(例えば、IL−12Rα及びβ)の2つの異なる一員を標的とすることができる。さらに、DVD−Igは、標的可溶性タンパク質/病原体の迅速な排除を誘導するために、標的CR1及び可溶性タンパク質/病原体を標的とすることができる。
【0127】
さらに、本発明のDVD−Igは、細胞内送達(内部取り込み受容体及び細胞内分子を標的とする。)、脳内への送達(血液脳関門を横切るために、トランスフェリン受容体及び中枢神経系疾患媒介物質を標的とする。)など、組織特異的送達(増強された局所PK、従って、より高い効力及び/又はより低い毒性のために、組織マーカー及び疾病媒介物質を標的とする。)のために使用することができる。DVD−Igは、抗原の非中和エピトープへの結合を介して、抗原を特異的な位置に送達し、抗原の半減期も増加させるための担体タンパク質としての役割も果たし得る。
【0128】
本発明は、本明細書に記載されているものなどのあらゆる適切なタンパク質を含み、本明細書に記載されているように調製された安定な粉末化された組成物を提供する。例えば、粉末は、タンパク質又はペプチド(例えば、抗体又はその抗原結合部分)及び賦形剤を含むことができ、組成物は約6%未満の残存水分を含む。ある実施形態において、組成物は約5.5%、5%、4.4%、4%、3.5%又は3%の残存水分を含む。幾つかの実施形態において、組成物が2%又は1%未満の残存水分を含む。他の実施形態において、組成物は、上記値によって境界が画される残存水分範囲(例えば、約4%と6%の間、約4.5%と5.5%の間又は約3%と5%の間の残存水分)を含む。幾つかの実施形態において、得られる粉末化された組成物の残存水分含量は、約1%と約3%の間、約1.5%と2.5%の間、約1.4%と約2%の間、約4%と6%の間又は約4.5%と約5%の間である。他の実施形態において、粉末化された組成物は、約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%又は7%の残存水分を含む。
【0129】
幾つかの実施形態において、タンパク質は、所望の期間にわたって、その生物学的活性を保持する。一実施形態において、粉末は、少なくとも3ヶ月間、周囲温度及び湿度において安定である。幾つかの実施形態において、粉末は、周囲温度及び湿度において、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年又は5年間安定である。他の実施形態において、粉末は、40℃で少なくとも3ヶ月安定である。さらなる実施形態において、粉末は、40℃で少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年又は5年間安定である。さらに別の実施形態において、粉末は、40℃及び周囲湿度で、少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年又は5年間安定である。
【0130】
本発明の粉末化された組成物及び/又は粉末化された組成物を含む医薬組成物は、賦形剤を含み得る。適切な賦形剤には、トレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。前記方法は、酸性成分、抗酸化剤及び/又は浸透圧調整物質を添加することをさらに含み得る。
【0131】
幾つかの実施形態において、組成物は、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0又は約0.7:1.0の賦形剤:抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し、賦形剤はトレハロース又はショ糖である。他の実施形態において、組成物は、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0又は約0.7:1.0又は約0.35:1の賦形剤:抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し、賦形剤はソルビトールである。
【0132】
さらに、本発明は、本明細書に記載されている粉末の有効量を含む医薬調製物を提供する。医薬として許容される担体は、非経口、経口、経腸又は局所投与に対して許容されるあらゆる担体であり得る。担体は、固体、半固体若しくは液体(例えば、水又は有機性液体)又はこれらの組み合わせであり得る。
【0133】
粉末は、医薬として許容される担体中で混合(例えば、溶解又は包埋)され得る。医薬として許容される担体は、例えば、非経口投与に関して許容され得、例えば、水を含み得る。前記方法は、1つ又はそれ以上の酸性成分、抗酸化剤及び/又は浸透圧調製物質を医薬組成物に添加することをさらに含み得る。これに加えて又はこれに代えて、適切な添加物、例えば、緩衝液、粘度調整物質、着香剤、着色剤などを本発明の医薬組成物に添加することができる。
【0134】
粉末化された医薬組成物は、例えば、錠剤又は他の固体若しくは半固体組成物を形成するために、溶融押し出しされ、圧縮され又はその他加工され得る。粉末は、徐放及び/又は遅延放出医薬組成物を形成するために、例えばPLGAなどのポリマーで被覆され得る。これに加えて又はこれに代えて、組成物は、例えば、腸溶コーティングでカプセル化され又は被覆され得る。コーティング及び/又は賦形剤は、例えば、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、エタノール、DMSO、NMP、氷酢酸などの有機溶媒による沈殿、変性又は酸化に対して薬物を保護するために使用することができる。
【0135】
液体組成物、例えば、水性組成物も想定される。このような組成物は、例えば、経口又は静脈内投与に適し得、浸透圧調整物質又は緩衝液などのあらゆる適切な賦形剤又は添加物を含み得る。幾つかの実施形態において、水性タンパク質製剤の高い濃度に関わらず、液体医薬組成物はタンパク質凝集物の低いパーセントを有する。一実施形態において、水性組成物は水及びタンパク質(例えば、抗体)の高い濃度を含み、界面活性剤又は賦形剤の他の種類の不存在下でさえ、約5%未満のタンパク質凝集物を含有する。一実施形態において、前記組成物は約7.3%以下の凝集タンパク質を含み、前記組成物は約5%以下の凝集タンパク質を含み、前記組成物は約4%以下の凝集タンパク質を含み、前記組成物は約3%の凝集タンパク質を含む。前記組成物は約2%以下の凝集タンパク質を含み、又は前記組成物は約1%以下の凝集タンパク質を含む。一実施形態において、前記組成物は、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の単量体タンパク質を含む。上記濃度の中間の範囲、例えば、少なくとも約98.6%の単量体タンパク質、約4.2%以下の凝集タンパク質も、本発明の一部であることが意図される。さらに、上記値の何れかの組み合わせを上限及び/又は下限として用いる値の範囲も含まれるものとする。
【0136】
IV.本発明の使用
本発明の組成物は、治療的に(すなわち、インビボで)又はインビトロ若しくはインサイチュ用の試薬として使用され得る。本明細書に記載及び例示されているように、噴霧乾燥は、例えば、(a)潰瘍性大腸炎を治療するためのABT−874の腸溶製剤、(b)糖尿病性潰瘍のためのアダリムマブの局所製剤及び(c)喘息の治療のためのABT−308の肺剤形の開発/製造のための出発材料として使用するための乾燥タンパク質粉末を調製するために使用され得る。さらに、ガラス状賦形剤マトリックス(例えば、トレハロース)内に取り込まれたモノクローナル抗体(mAb)は熱液折り畳み解除/変性に対してより高い安定性を示すことが可能であり得るので、噴霧乾燥された抗体はMELTREX溶融押し出しプロセスとともに使用され得る。同じく、これは、例えば、タンパク質の経口投与用の新しい固体タンパク質剤形の開発に対する機会を与え得る。
【0137】
治療的使用
本発明の方法は、治療的使用に有利な特徴を有する組成物を調製するためにも使用され得る。医薬組成物(液体又は固体組成物を含む。)は、対象中の疾患を治療するための医薬組成物又は製剤として使用され得る。
【0138】
本発明の組成物は、治療用タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分が治療に適しているあらゆる疾患を治療するために使用され得る。「疾患」は、抗体を用いた治療が有益であるあらゆる症状である。これには、問題の疾患に対して哺乳動物が素因を有するようにする病的症状を含む、慢性及び急性疾患又は疾病が含まれる。抗TNFα抗体の場合には、抗体の治療的有効量は、関節リウマチなどの自己免疫疾患、クローン病などの腸疾患、強直性脊椎炎などの脊椎関節症又は乾癬などの皮膚疾患を治療するために投与され得る。抗IL−12抗体の場合には、多発性硬化症などの神経疾患又は乾癬などの皮膚疾患を治療するために、抗体の治療的有効量が使用され得る。治療のために本発明の組成物を使用し得る疾患の他の例には、乳癌、白血病、リンパ腫及び大腸癌などの癌が含まれる。
【0139】
「対象」という用語は、生物(例えば、原核生物及び真核生物)が含まれるものとする。対象の例には、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット及びトランスジェニック非ヒト動物が含まれる。本発明の特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0140】
「治療」という用語は、治療的処置及び予防的又は防止的措置の何れをも表す。治療が必要なものには、疾患を既に有するものの他に、疾患を予防すべきものが含まれる。
【0141】
水性又は固体組成物は、投与の公知の方法に従って、治療を必要としている哺乳動物(ヒトを含む。)に投与され得る。投与の方法の例には、大量瞬時投与又はある期間にわたる継続的注入によるなどの静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、皮内、経皮、経口、局所又は吸入投与が含まれる。
【0142】
一実施形態において、組成物は、皮下投与によって、哺乳動物に投与される。このような目的のために、組成物は、注射器及び注射装置(例えば、Inject−eas及びGenject装置)、注射用ペン(GenPenなど)、無針装置(例えば、MediJector及びBiojector)及び皮下パッチ送達系などのその他の装置を用いて注射され得る。
【0143】
組成物を収容する送達装置も、本発明に含まれる。このような装置の例には、注射器、ペン、インプラント及びパッチが含まれるが、これらに限定されない。自動注射用ペンの例は、2007年6月29日に出願された米国特許出願11/824516号に記載されている。
【0144】
タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の適切な投薬量(「治療的有効量」)は、例えば、治療されるべき症状、症状の重度及び期間、タンパク質が予防目的又は治療目的のために投与されるかどうか、以前の治療、患者の既往歴及び当該タンパク質に対する応答、使用されるタンパク質の種類並びに担当医の裁量に依存する。本発明の組成物は、一回で又は一連の治療にわたって患者に適切に投与され、診断開始から任意の時点で患者に投与され得る。組成物は、単一の治療として、又は問題の症状を治療する上で有用な他の薬物若しくは治療と組み合わせて投与され得る。
【0145】
一実施形態において、本発明の組成物、例えば、アフェリモマブ及び/又はあらゆる他の適切な抗体又はその抗原結合部分などは、治療的に使用される。一実施形態において、組成物は、敗血症を治療する際に使用するための医薬組成物である。
【0146】
敗血症、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)及びアフェリモマブ
敗血症は、感染に対する全身的な炎症応答として定義される。感染は、例えば、ウイルス性、細菌性、真菌性又は寄生生物性であり得る。敗血症は、免疫適格性細胞の活性化及び複数のサイトカイン(TNF−α、IL−1など)の放出に関連する全身性炎症応答を最終的にもたらす。ACCP(American College of Chest Physicians):SIRS(全身性炎症性応答症候群)(様々な発症原因(感染、紅斑など)の全身性炎症応答);敗血症(感染によって引き起こされるSIRS);重度の敗血症(臓器機能不全/障害を伴う敗血症)及び敗血性ショック(ショックを伴う敗血症)によって定義されているように、敗血症の異なる段階/種類が存在する。敗血症のこれらの種類を診断するためには、様々な基準に合致しなければならない。
【0147】
原発性免疫応答は、様々な二次的媒介物質によって協調及び増幅される。生物は、炎症をその元の場所(多くは、肺又は血液循環)に限定することはない。様々な臓器が影響を受け得、これは幾つかの身体機能に強い影響を有する。従って、敗血症の可能な徴候には、高熱、多呼吸、頻脈、血圧低下及び錯乱が含まれる。指標が多様であるために、敗血症は診断するのが極めて困難であり、敗血症患者の高い死亡率の原因となっている。
【0148】
敗血症患者を治療するための様々な医薬、とりわけ、血液凝固及びコルチゾン(低用量)を遮断して炎症を弱めるためのドロトレコギンα(活性化されたタンパク質C)及びアンチトロンビンIIIが知られている。「Bloos et al.,Aktuelle Ernahrungsmedizin,28:186−190(2003)」。TNF−αは敗血症の主な媒介物質の1つであるので、敗血症を取り扱うための1つのアプローチは、TNF−αの効果を回避するためにTNF−αを遮断することである。TNF−αの局所的な放出は、血流及び血管透過性を増加させる。これによって、宿主防御に関与する流体、細胞及びタンパク質の感染組織内への流入が可能となる。感染が血液に伝播するのを防ぐために、小さな血管はその後凝固し、適応免疫応答が開始されるリンパ節へ流体が流入する。全身性感染の間、TNF−αは同様に機能し、ショック及び播種性血管内凝固をもたらす。結果は、凝固因子の枯渇、絶え間ない出血及び多臓器不全である。「Janeway et al.,Immunobiology(Garland Publishing,1994)。TNF−αを遮断することは、抗TNF−α抗体の非経口投与によって達成することができる。抗体断片アフェリモマブを設計することにより、より低い免疫原性の問題とともによりよい組織浸透が達成されるはずである。
【0149】
幾つかの実施形態において、本発明は、対象中の標的の活性が阻害され及び治療が達成されるように、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合タンパク質を対象(例えば、ヒト)に投与することを含む。幾つかの実施形態において、このような疾病は、関節炎、骨関節炎、若年性関節リウマチ、化膿性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性紅斑性狼瘡、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インシュリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、臓器移植に関連する急性又は慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固、川崎病、バセドウ病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーライン紫斑症、腎臓の顕微鏡的血管炎、慢性活動性肝炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染性疾患、寄生性疾患、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、発作、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、孤発性の、多内分泌腺機能低下症候群I型及び多内分泌腺機能低下症候群II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸促迫症候群、脱毛症、円形脱毛症(alopecia greata)、血清反応陰性関節炎、関節炎、ライター病、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸性関節炎、腸疾患性滑膜炎、クラミジア、エルシニア及びサルモネラ関連関節炎、脊椎関節症、アテローム性疾患/アテローム性動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱性疾患、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA病、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳脊髄炎/ロイヤルフリー病、慢性粘膜皮膚カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、突発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全関連疾患、B型肝炎、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型原発性低γグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣機能不全、早期卵巣機能不全、繊維性肺疾患、突発性間質性肺炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織疾患関連間質性肺疾患、混合性結合組織疾患関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性紅斑性狼瘡関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、シェーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患(vasculitic diffuse lung disease)、ヘモシデローシス関連肺疾患、薬物によって誘導された間質性肺疾患、繊維症、放射性繊維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性又はルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫媒介性低血糖症、黒色表皮腫を伴うB型インシュリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に関連する急性免疫疾患、臓器移植に関連する慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、1型乾癬、2型乾癬、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎臓病NOS、糸球体腎炎、腎臓の顕微鏡的血管炎、ライム病、円板状紅斑性狼瘡、男性不妊症特発性又はNOS、精子自己免疫、多発性硬化症(全てのサブタイプ)、交感性眼炎、結合組織疾患に続発する肺高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スチル病、全身性硬化症、シェーグレン症候群、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫(primary myxoedema)、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性血管炎、白斑急性肝疾患、慢性肝疾患、アルコール性肝硬変、アルコール誘発性肝障害、胆汁うっ滞(choleosatatis)、特異体質性肝疾患、薬物誘発性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、アレルギー及び喘息、B群連鎖球菌(GBS)感染、精神障害(例えば、うつ病及び統合失調症)、Th2型及びTh1型によって媒介される疾病、急性及び慢性疼痛(疼痛の様々な形態)、並びに、肺癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌及び直腸癌及び造血性悪性病変(白血病及びリンパ腫)などの癌、無βリポタンパク質血症、先端チアノーゼ、急性及び慢性寄生性又は感染性プロセス、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性又は慢性細菌感染、急性膵炎、急性腎不全、腺癌、心房(aerial)異所性拍動、AIDS認知症複合、アルコール誘発性肝炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、同種移植拒絶、α−1−アンチトリプシン欠乏症、筋萎縮性側索硬化症、貧血、狭心症、前角細胞変性、抗cd3治療、抗リン脂質症候群、抗受容体過敏症反応(anti−receptor hypersensitivity reactions,)、大動脈(aordic)及び末梢動脈瘤、大動脈解離、動脈性高血圧、動脈硬化症、動静脈痩、運動失調、心房細動(持続的又は発作性)、心房粗動、房室ブロック、B細胞リンパ腫、骨移植拒絶、骨髄移植(BMT)拒絶、脚ブロック、バーキットリンパ腫、火傷、心不整脈、心機能不全症候群(cardiac stun syndrome)、心臓腫瘍、心筋症、心肺バイパス炎症反応、軟骨移植拒絶、小脳皮質変性、小脳疾患、無秩序な又は多巣性心房頻脈、化学療法関連疾患、慢性(chromic)骨髄性白血病(CML)、慢性アルコール症、慢性炎症性病変、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性サリチル酸中毒、結腸直腸癌、うっ血性心不全、結膜炎、接触性皮膚炎、肺性心、冠動脈疾患、クロイツフェルト−ヤコブ病、培養陰性敗血症、嚢胞性繊維症、サイトカイン療法関連疾患、ボクサー脳、脱髄性疾患、デング出血熱、皮膚炎、皮膚科学的症状、糖尿病、真性糖尿病、糖尿病性動脈硬化疾患、瀰漫性レビー小体病、拡張型うっ血性心筋症、大脳基底核の疾患、中年のダウン症候群、中枢神経ドーパミン受容体を遮断する薬物によって誘発された薬物誘発性運動疾患、薬物感受性、湿疹、脳脊髄炎、心内膜炎、内分泌疾患、喉頭蓋炎、エプスタイン−バーウイルス感染、紅痛症、垂体外路及び小脳疾患、家族性血球貪食性リンパ組織球症(familial hematophagocytic lymphohistiocytosis)、致死的胸腺移植組織拒絶、フリードライヒ失調症、機能的末梢動脈疾患、真菌性敗血症、ガス壊疸、胃潰瘍、糸球体腎炎、何れかの臓器又は組織の移植片拒絶、グラム陰性敗血症、グラム陽性敗血症、細胞内生物に起因する肉芽腫、有毛細胞白血病、ハラーホルデン・スパッツ病、橋本甲状腺炎、枯草熱、心臓移植拒絶、血色素症、血液透析、溶血性尿毒症症候群/血栓溶解血小板減少紫斑病、出血、肝炎(A型)、ヒス束不整脈、HIV感染/HIV神経障害、ホジキン病、運動過剰疾患、過敏症反応、過敏性肺炎、高血圧、運動低下疾患、視床下部−下垂体−副腎皮質系評価、特発性アジソン病、特発性肺繊維症、抗体媒介性細胞毒性、無力症、乳児脊髄性筋萎縮症、大動脈の炎症、A型インフルエンザ、電離放射線曝露、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、虚血再灌流障害、虚血性発作、若年性関節リウマチ、若年性脊髄性筋萎縮症、カポジ肉腫、腎移植拒絶、レジオネラ、リーシュマニア症、ハンセン病、皮質脊髄系の病変、脂肪血症(lipedema)、肝臓移植拒絶、リンパ浮腫(lymphederma)、マラリア、悪性リンパ腫、悪性組織球増殖症、悪性黒色腫、髄膜炎、髄膜炎菌血症(meningococcemia)、代謝性/特発性、偏頭痛、ミトコンドリア多系疾患(mitochondrial multi−system disorder)、混合性結合組織病、モノクローナル高ガンマグロブリン血症、多発性骨髄腫、多系統変性(メンセル・デジェリーヌ−トーマス シャイ−ドレーガー及びマシャド−ジョセフ)、重症筋無力症、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ(mycobacterium avium intracellulare)、マイコバクテリウム・チュバキュロシス(mycobacterium tuberculosis)、骨髄形成異常、心筋梗塞、真菌虚血疾患、上咽頭癌、新生児慢性肺疾患、腎炎、ネフローゼ、神経変性疾患、神経原性I筋萎縮、好中球減少性発熱、非ホジキンリンパ腫、腹部大動脈及びその分枝の閉塞、閉塞性動脈疾患、okt3療法、精巣炎/精巣上体炎、精巣炎/精管復元術処置、臓器肥大、骨粗鬆症、膵臓移植拒絶、膵癌、腫瘍随伴性症候群/悪性腫瘍の高カルシウム血症、副甲状腺移植拒絶、骨盤内炎症性疾患、通年性鼻炎、心膜疾患、末梢アテローム硬化性疾患、末梢血管疾患、腹膜炎、悪性貧血、ニューモシスチス・カリニ(pneumocystis carinii)肺炎、肺炎、POEMS症候群(多発神経炎、臓器肥大、内分泌疾患、単クローン性γグロブリン血症及び皮膚変化症候群(skin changes syndrome))、灌流後症候群(post perfusion syndrome)、ポンプ後症候群(post pump syndrome)、心筋梗塞後開心術症候群、子癇前症、進行性核上性麻痺、原発性肺高血圧、放射線療法、レイノー現象及び病、レイノー病、レフサム病、規則的なQRS幅の狭い頻脈症(regular narrow QRS tachycardia)、腎血管性高血圧、再灌流障害、拘束型心筋症、肉腫、強皮症、老年性舞踏病、レビー小体型の老年性認知症、血清反応陰性関節炎、ショック、鎌形赤血球貧血症、皮膚同種異系移植拒絶、皮膚変化症候群、小腸移植拒絶、固形腫瘍、固有不整脈(specific arrythmias)、脊髄性運動失調、脊髄小脳変性、連鎖球菌性筋炎、小脳の構造的病変、亜急性硬化性全脳炎、湿疹、心血管系の梅毒、全身性アナフィラキシー、全身性炎症反応症候群、全身性発症若年性関節リウマチ、T細胞又はFABALL、毛細血管拡張症、閉塞性血栓血管炎、血小板減少症、毒性、移植、外傷/出血、III型過敏症反応、IV型過敏症、不安定狭心症、尿毒症、尿路性敗血症、じんましん、心臓弁膜症、静脈瘤、血管炎、静脈疾患、静脈血栓症、心室細動、ウイルス及び真菌感染、ウイルス性脳炎(vital encephalitis)/無菌性髄膜炎、ウイルス関連血球貪食症候群、ウェルニッケ−コルサコフ症候群、ウィルソン病、何れかの臓器又は組織の異種移植拒絶からなる群から選択される。
【0150】
非治療的使用
本発明の組成物は、非治療的使用のために、すなわち、インビトロ目的でも使用され得る。例えば、本明細書に記載されているタンパク質粉末及び関連組成物は、ゲノミクス、プロテオミクス、バイオインフォマティクス、細胞培養、植物生物学及び細胞生物学における使用など(但し、これらに限定されない。)の医学及びバイオテクノロジーにおける診断又は実験的方法のために使用され得る。例えば、本明細書に記載されている組成物は、標識及び検出法における分子プローブとして必要とされるタンパク質を提供するために使用され得る。本明細書に記載されている組成物のさらなる使用は、製造目的のための細胞増殖及びタンパク質製造など、細胞培養試薬のための補充物を提供することである。
【0151】
例えば、抗体の高い濃度を含有する組成物は、研究室用途のための試薬として使用され得る。抗体のこのような高度に濃縮された形態は、研究室実験の現行の制限を拡張する。
【0152】
本発明の製造に対する別の使用は、食品に対する添加物を提供することである。幾つかの実施形態において、本発明の組成物は本質的にタンパク質及び糖からなるので、栄養補助物などの所望のタンパク質の高い濃度を食品に送達するために使用され得る。従って、本発明の組成物は、タンパク質の高い濃度を提供することができる。
【0153】
製品
本発明の別の実施形態において、本発明のタンパク質粉末又は関連組成物を含有する製品が提供され、その使用説明書を提供する。一実施形態において、製品は容器を含む。適切な容器には、例えば、1つ又はそれ以上の瓶、容器(例えば、二重チャンバー容器)、注射器(単一及び二重チャンバー注射器を含む。)、注射器を含有する自動注射ペン及び試験管が含まれる。容器は、ガラス、プラスチック又はポリカーボネートなどの様々な材料から形成され得る。容器は、水性製剤を保持し、容器上のラベル又は容器に付属されたラベルは使用のための指示を示し得る。例えば、ラベルは、組成物が皮下投与のために有用であり、又は皮下投与が予定されることを示し得る。例えば、ラベルは、使用者が、例えば注射によって、液体(例えば、投与用組成物を調製するための無菌水又は生理的食塩水)を添加することを指示し得る。組成物を保持する容器は、例えば、水性製剤の反復投与(例えば、2から6回の投与)を可能にする複数回使用容器であり得る。製品は、第二の容器をさらに含み得る。製品は、他の緩衝液、希釈液、フィルター、針、注射器及び同封物など、商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を使用説明書とともにさらに含み得る。
【0154】
本発明は、以下の例によってさらに説明されるが、以下の例を限定的なものと解釈してはならない。
【0155】
本発明の例示
本例では、IgG分子のFab断片を噴霧乾燥し、分析した。この研究の対象は、適切な製剤並びに高い収率及び(保存中間体としての使用が予定されているので)優れた保存安定性を有するFab断片を噴霧乾燥させるためのプロセス条件を発見することであった。噴霧乾燥プロセス及びその後の保存の間のタンパク質の安定化は、様々な糖の添加によって達成された。この研究のために、トレハロース、ショ糖及びソルビトールを液体タンパク質濃縮物に添加した。タンパク質の安定性は、様々な分析法、特に、サイズ排除クロマトグラフィー、動的光散乱、濁度測定及び等電点電気泳動から得られたデータを用いて分析した。
【0156】
材料
MAK195F濃縮物
この実施例において使用されるタンパク質は、MAK195F(12.4mg/mL);NaCl(8.77mg/mL);Na3PO4(1.64mg/mL);Pluronic(R)F68(0.1mg/mL)及び水(適量)を含有する水溶液として、Abbott laboratoriesによって提供されたアフェリモマブ(MAK195F)であった。MAK195F濃縮物は、7.2のpHを有し、等張(約286mosmol/kg)に近かった。MAK195F濃縮物は、0.981mPasの粘度(Schott Ubbelohde粘度測定器を用いて測定)及び1.0086g/cm3の密度(Chemproから得たDMA46を用いて測定)を有していた。
【0157】
アフェリモマブタンパク質は、100キロダルトン(kDa)のおよその分子量を有するマウス抗TNFα抗体(IgG3)のF(ab’)2断片である。アフェリモマブタンパク質は、それぞれ214アミノ酸を含む軽鎖及び233から241アミノ酸を含有する重鎖をもたらすIgG3モノクローナル抗体のペプシン切断によって作製される。Fd’断片の約30%がSerH222においてグリコシル化されている。異なるグリコシル化パターンのために、アフェリモマブは、7.5から8.8の等電点(IEP)範囲の最大7つのイソフォームを有する。
【0158】
濃縮物は、約400gの一部の中に、ドライアイス下で得られた。凍結融解サイクルの繰り返し及び液体状態での長期保存を回避するために、濃縮物を融解し、40から50mL部分で分取し、−80℃で保存し、使用の前に新たに融解した。
【0159】
賦形剤
タンパク質を安定化させるために、D−ソルビトール(Sigma、Product:S−7547、Lot:108H01461);ショ糖(Sigma、ProductS−7903、Lot014K0010)及びD−(+)トレハロース二水和物(Sigma、Product:T5251、Lot:113K3775)という3つの異なる糖を使用した。
【0160】
全ての水溶液は、必要であれば、0.2μmの膜フィルター(Schleicher & Schuell)を通してろ過された二重蒸留水(Fi−stream4BD;Fisons)を用いて調製した。
【0161】
方法
噴霧乾燥
噴霧乾燥実験は、粉末回収用の高性能サイクロン1を用いて、Buchi Mini−Spray DryerB−191(図1)上で行った。加熱装置3及び乾燥チャンバー内に入る前に、800L/分の空気流速で(90%吸引力)、Luwa Ultrafilter2(ファイバーガラス;フィルタークラス:HEPAH13 High Efficiency Particle Absorber)を通して、乾燥空気をろ過した。蠕動式ポンプ5(QLF=約3mL/分;シリコンチューブφ=3mm)によって、乾燥チャンバー4に輸送される前に、0.22μmフィルターユニットを通して、全ての液体供給物をろ過した。微粉化は、社内供給(QAA=700L/時間)からの圧縮空気を用いて、2つの液体ノズル6(開口部直径:0.7mm)によって行われた。2つの液体ノズルには、圧縮空気(4.5バール)及び水冷却システムを用いて、自動清浄システムが搭載された。噴霧乾燥後、乾燥空気グローブボックス(glove box)(RH<2%)の中で、収集容器7から得られた粉末を回収し、ガラス容器(クロロブチルゴム栓)の中に充填し、パラフィルムで密閉し、−80℃で保存した。粉末の収率は、液体供給物中の全ての固体によって除された収集容器内の粉末の量として定義した。サイクロンの内部への粉末の堆積は収集されなかった。
【0162】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
可溶性凝集物を検出するために、サイズ排除クロマトグラフィーを使用した。Amersham Biosciencesによって購入されたTricorn Superose12/300GLカラム(分離域1から300kDa)を、シリーズ200LCポンプ、ISS200自動試料採取装置及び235Cダイオードアレイ検出装置を含むPerkin Elmer High Pressure Liquid Chromatography(HPLC)システムに接続された。粗い粒子のきょう雑を回避するために、Superoseカラムの前に、phenomenexセキュリティーガードプレカラム(AJ0−4489カートリッジを搭載)を取り付けた。移動相(緩衝液A、流速:0.5mL/分)は、塩化ナトリウムが添加され(0.5mol/L)、0.2μmの膜フィルター(Schleicher&Schuell、FP30/0.2CA)を通してろ過され、ヘリウムを用いて約10分間脱気されたリン酸カリウム緩衝液(pH6.9)であった。全ての試料は、直接測定され(例えば、液体供給物)、又は1mg/mLのタンパク質濃度になるように緩衝液Aを用いて注意深く再溶解し(噴霧乾燥された(sd)粉末)、調製直後に分析した。操作当りの注射容量は100μLであり、一般に、再現可能な結果を確保するために、全ての試料を2回(液体供給物)又は3回(噴霧乾燥粉末)測定された。全てのクロマトグラムは、Perkin Elmer TotalChrom Navigatorソフトウェア、バージョン6.2を用いて手動で積算した。
【0163】
示差走査熱量測定(DSC)
Mettler Toledo DSC 822eを用いて、熱的現象を調べた。乾燥空気条件(glove box)下で、アルミニウムのフライパンの中に、粉末5から15mgを秤量した(Mettler、AT DeltaRange(R))。アルミニウムのフライパンを冷却密封し、熱量測定装置中に挿入した(フライパンは、予想されるTg(加熱/冷却速度:10℃/分)を通じて、順次加熱及び冷却する定義された温度プログラム(製剤に依存する。)に曝露した。ガラス遷移温度は、Mettler STARe SoftwareV6.10によって推定され、加熱工程の間に吸熱性遷移の中点として予め定義した。他の不可逆的吸熱現象の妨害を避けるために、第二及び第三の加熱サイクルのみを考慮に入れた。実験全体を通じて、測定セルは乾燥され、N2気体を噴き付けた。
【0164】
広角度X線回折(WAXD)
粉末の結晶性は、40kV/40mA及び25℃でのCuKα放射(λ=0.15418mm)によるPhilipsモデルX’pert MPDを使用するx線粉末回折によって調査した。60から80mgの粉末量をアルミニウム試料ホルダー中に充填し、直ちに走査した。全ての走査は、0.02°/秒の段階サイズを用いて、範囲2θ=0.5°−40°で測定した。Black及びLoveringの方法を基礎とした方法を用いることによって、回折ダイアグラム(下記参照)の結晶及び非晶質の面積から試料の結晶性(結晶性の程度)を計算した。「Black,Lovering Journal of Pharmacy and Pharmacology 29:684−687(1977)」。
【0165】
C=Ic/(Ic+Ia)=AUC結晶/AUC合計=(AUC合計−AUC非晶質)/AUC合計
Cは、結晶性の程度であり(100を乗じた場合、パーセント結晶性と記載される場合もある。)、Ic及びIaは、それぞれ、結晶又は非晶質領域によって散乱されたX線の強度(ピーク及び幅広い輪(halo)の曲線下面積(AUC)に等しい。)を表す。AUC非晶質は、ダイアグラムから結晶ピークを切除し、曲線フィッティングを使用することによって計算した。
【0166】
動的光散乱
可溶性及び不溶性凝集物を検出するために、Zetasizer Nano ZS(Malvern、Germany、ソフトウェア:DTSバージョン:4.2)を用いて、動的光散乱(DLS)測定を行った。Zetasizerは、633nmのレーザー光を使用し、173°での散乱を検出する(裏散乱検出)。Zetasizerは、サイズ測定に対して0.6から6000nmの測定範囲を有する。粒子サイズは、試料中での粒子のブラウン運動を測定することによって測定した。「Malvern Instruments:Malvern Nano Series User Mannual.MAN0317、Issue2.0、March2004」。液体製剤は添加物を一切加えずに検査し、粉末は、元のタンパク質濃度になるように二重蒸留水(0.2μmを通してろ過)を用いて希釈した。低容量キュベット(使い捨ての低容量キュベット、Malvern)を使用することによって、測定当り0.5mLの溶液が必要とされるに過ぎなかった。2mLキュベットを用いた検査は、同じ結果を与えた(データは図示せず。)。2分の平衡化時間(25℃)の後、各試料の3つの測定を行った(それぞれ、5回の実行(実行時間:30秒、実行間の遅延:2秒))。この手順は、全ての粉末/溶液試料に対して3回行った。得られたダイアグラムをスコア表として輸出し、MSExcelを用いてダイアグラムに変換し、サイズ容積及びサイズ強度分布を示す試料当り3つプロットされた曲線を得た。
【0167】
走査型電子顕微鏡(SEM)
20kVでAmray1810T走査型電子顕微鏡を用いた電子顕微鏡写真を介して、粒子サイズ及び形態を調べた。自己接着性フィルムを用いて、A1試料スタブ(stub)(G301、Plano)上に小粉末試料を固定した。1.5分間、20mA/kV(Hummer JR Technics)で、Auを用いてスパッタリングを行った後、試料を顕微鏡下に配置し、異なる倍率(通常、1000x、2000x及び3000x)の写真を撮影した。一般に、3000xの倍率で撮影された写真を評価した。
【0168】
カール・フィッシャー滴定
噴霧乾燥された(sd)粉末の水分含量は、Mitsubishi Moisture Meter(CA−06 Coulometric)及びMitsubishi水蒸発装置(VA−06)を用いて測定した。約70mgの粉末試料は、乾燥空気条件下で(glove box)、特殊な試料ホルダー中に充填した。Mettler AT DeltaRange分析用の秤を用いて、空の試料ホルダーを秤量した。試料ホルダーを蒸発装置ユニットに接続することによって、加熱されたオーブンユニット中に引き込まれているガラスボートの中に粉末を充填した。水を蒸発させ(150℃)、窒素気体流(約200mL/分)を介して、滴定セル中に定量的に移しながら、真の試料重量を計算するために、試料ホルダーを再秤量した。滴定は、0.01μgH2O/分以下の滴定速度で始まった。
【0169】
眼に見えない粒子
例えば、再溶解された噴霧乾燥粉末の粒子きょう雑は、コンピュータ補助粒子計数装置Syringe(Klotz、Germany、Software:SW−CA Version1.2)を用いて観察した。レーザーの前で、250μmの直径まで縮小されたフロースルーセルを介して、液体を吸引した。粒子がレーザー光線に当ると、粒子の検出される強度は低下した。レーザー光の減弱は、粒子サイズの指標であった。全ての粉末は、二重蒸留水(0.2μmを通してろ過)を用いて、元の濃度になるように再構成され、システムを通して0.8mL溶液をポンプで拍出した(システムを洗浄するために1回、粒子計算のために3回)。溶液1mLに対して、結果を計算した。医薬的応用のために、ソフトウェアは、米国薬局方(SPP)又は欧州薬局方(Ph.Eur.)の規制に従って、粒子を8つの異なるサイズ範囲(1から50μm)に段階付けした。
【0170】
等電点電気泳動(IEF)
アフェリモマブのIEF分離は、Fd’断片と軽鎖変形物の電荷の差を基礎とした。アフェリモマブのIEF分離は、アフェリモマブの同一性試験としての役割を主に果たしたが、安定性試験のための手段としても使用することが可能であった。等電点電気泳動は、Serva Blue Power3000電源に取り付けられたPharmacia MultiphorIIチャンバーを用いて行った。6から9のpH勾配(Servalyt Pr ecotes6−9、125×125mm、厚さ0.3mm;Serva、Germany)を有する即時使用ゲルを冷却プレート(4℃、熱伝導媒体としての幾らかのBayolFで被覆されている。)上に配置した。全ての試料を約4mg/mLのタンパク質濃度まで希釈し、10μLをゲル上に配置した。等電点電気泳動プログラムは、200Vで始まり、約195分を要した(終点電圧2000V)。20分間固定した後に、Coomassie Brilliant Blueを用いてゲルを染色し(20分)、次いで、数回脱染色した。使用した溶液が、下表1に列記されている。
【0171】
【表1】
【0172】
水で濯ぎ、室温で一晩乾燥させた後、ProViDoc(R)ソフトウェア(Version3.20)とともにDesaga CAB UVIS VD40ワクステーションを用いて、ゲルを検査及び走査した。
【0173】
濁度
濁度は、試料を通して直線的に透過せずに、光を散乱及び吸収させる光学的特性の表れである。濁りは、固体、コロイド及び気泡などのあらゆる懸濁された粒子によって引き起こされ得る。濁度は、明確に定義されたパラメータではないので、乳白光標準(例えば、ヒドラジンゲル)と試料を比較することによって測定した。試料の比濁式濁度単位(NTU)を推定するために、Hach Ratio XR濁度計を使用した。濁度計は、Hydrazin標準を用いて較正した。Nessler管のブランク値を測定した後、元のタンパク質濃度になるように、二重蒸留水(0.2μmを通してろ過)で試料を希釈又は再構成し、次いで、光線の中に配置した。ガラスの不均一性の影響を除外するために、ブランク測定の間に、管の方向に印を付けること、及び試料測定のために同じ方向で管を使用することが重要であった。
【0174】
発色
再溶解された噴霧乾燥粉末の発色の変化を検出するために、透明な液体の色を測定するための発色測定装置であるLICO400(Hach Lange、Switzerland)を使用した。これは、試料に最も近い参照溶液を決定し、試料と参照間の発色の変動を定量した。この研究では、明るさ(L、黒−白)及び色(±a、赤−緑;±b、黄色−青)の座標として色を定義するCIE−Lab色空間を使用した(CIEは、Commission Internationale d’Eclairageの略である。)。LICO400は、欧州薬局方からの標準溶液を用いて較正した。(BG5−7、茶色っぽい−黄色、希釈;B5−9、茶色)。全ての粉末試料は元の濃度になるように再構成し、小容積水晶ガラスキュベット中に200μLを充填した。
【0175】
UV分光光度法
濃縮物又は限外ろ過された分取試料のタンパク質濃度を測定するために、Perkin Elmer Lambda25UV/VIS Spectrometerを使用した。約0.6mg/mLのタンパク質濃度になるように、試料を希釈した。3つの水晶ガラスキュベットに試料溶液を充填し、キュベットの各1つを、波長(λ)=280nm及びλ=320nmで3回測定した。以下の式を用いて、タンパク質濃度を計算するために、(UVWinLab5.0ソフトウェア、Perkin Elmerによって得られた)吸光度の値を使用した。
【0176】
c=[(A280−A320)平均/1.37]*F(mg/mL)
1.37=ε280nm−ε320nm
F=VH2O/Vprot+1
これらの式において、Fは希釈倍数であり、Aは測定された吸光度を表し、εはモル濃度吸光係数(1mg/mL溶液の吸光度、1cmキュベットを使用)及びVは第一の希釈工程における容積を表す。
【0177】
クロスフローろ過
より高い濃縮されたアフェリモマブ溶液を達成するために、Millipore Labscale(R)TFFシステムを用いて、濃縮物を限外ろ過した。30kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有するフィルター装置に沿って、当初のアフェリモマブ濃縮物を絶えずポンプで拍出した。タンパク質を除く全ての成分は膜を通過し、外部容器中に集められた。タンパク質自体は環状流に戻された。現在の濃度は、容積の規模によって概ね推定され得る。UV分光光度法を使用することによって、ろ過プロセスが停止された後、正確なタンパク質濃度を計算した。
【0178】
結果
MAK濃縮物の性質決定
融解直後の濃縮物は、約0.9から1%の凝集(分取試料間の差があり得るので、全ての分取試料は融解直後のSECを介して調べられる。)を通常示し、検出可能な断片化を示さなかった。分子量マーカーキット(炭酸脱水酵素、分子量(Mr)=29kDa及びβ−アミラーゼ、Mr=200kDa)を用いた実験によれば、凝集物は主に二量体であった。DLSダイアグラムは、単量体が約10nmの水力学的直径を有することを示した。濃縮物は、相対的に低い眼に見えない粒子のきょう雑及び約5NTUの濁度値を示した。5つのイソフォームの典型的なIEFバンドパターンが見られた。全てのさらなるIEF実験において、純粋な濃縮物がマーカー/標準として使用されたので、あらゆる差は直接検出された。
【0179】
着色測定において、濃縮物は、僅かに茶色がかったほぼ無色の溶液である標準溶液B9に最も近かった。濃縮物は、1.009g/cm3の密度及び0.981mPasの粘度(何れも20℃で測定された。)を有していた。
【0180】
MAK濃縮物の噴霧乾燥
第一の噴霧乾燥実験は、さらなる安定化物質を一切含まない純粋な濃縮物を用いて行った。乾燥プロセスの間のタンパク質損傷の程度を測定した。
【0181】
MAKのプロセス安定性
噴霧乾燥プロセスの間にタンパク質がどのような悪影響を受けるかについて測定するために、第一の実験に対するプロセスパラメータは、Buchi191に対する既存の研究から採用された。例えば、Maury:Tin=130℃、QLF=約3mL/分、QAA=700L/時間、QDA=800L/分、約80℃のToutをもたらした。「Maury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Bioharm.59(3):565−573(2005)」。
【0182】
得られた白色粉末(サイクロン収率:約60%)は、最大13μmの直径を有する球形、ドーナツ型又はギザギザの粒子を含んでいた。再溶解された粉末(22.9mg粉末/mL水)は、12から13mg/mLのタンパク質濃度を有しており、粉末の喪失は噴霧乾燥のプロセス及びサイクロンの分離性能によって引き起こされたものと推測される。タンパク質溶液からのタンパク質又は賦形剤の優先的な喪失は、噴霧乾燥後に非晶質の状態であったので検出することができなかった。噴霧乾燥されたMAK濃縮物のX線回折ダイアグラムは、バルク薬物物質の他の成分(例えば、リン酸ナトリウム及び塩化ナトリウム)によって引き起こされた結晶ピークを示した。ピークパターンは、噴霧乾燥された塩化ナトリウムのピークパターンに極めて近かった。粉末の残留水分含量は1.4から2%であり、プロセスの間の周囲条件(乾燥空気の室内湿度、室温など)に依存していた。
【0183】
SECでは、再溶解された粉末は凝集の顕著な増加(2.5から3%)を示した。しかしながら、安定化物質を加えていないタンパク質溶液に関しては、増加はそれほどでなかった。Mauryは、噴霧乾燥され、透析されたIgG溶液に対して最大17%を見出した。「Maury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59(2):251−261(2005)」。これは、断片が、噴霧乾燥の間に、完全長抗体より低い感受性であるが、凍結融解によって誘導される凝集に関してはそうではないことを示す。「Wang et al.,Journal of Pharm.Sci.96(1):1−26(2007)」。別の可能性は、塩化ナトリウムの存在によって引き起こされた安定化効果が存在したことである。Arakawa他は、溶液中のタンパク質と塩化ナトリウムの間に安定化相互作用を経験したが、Arakawa他は、本明細書において使用されている塩濃度より高い塩濃度のみを調べた。「Arakawa et al.,Biochemistry21:6545−6551(1982)」。凝集の増加は、DLS及びIEFの結果にも見られた。
【0184】
等電点電気泳動の間、新しいバンドが等電点電気泳動の出発点に現れた。これは、ゲル内に浸透できず、従って、その等電点に従って移動できない大きい凝集物が原因である可能性があった(Serva GmbHによれば、Serva GmbHのIEFゲルの孔は、約200から300kDaのカットオフを有する。)。DLSの結果は、μmサイズにさらなるピークを示した。ピークは、サイズ−容量分布の中に認めることは困難であったが、サイズ−強度分布中では明瞭であった。粒子の散乱の強度はその直径の6乗に比例するので、多くの小さな粒子よりずっと多くの光を散乱する大きな粒子は、ほとんどなかった。「Malvern Instruments:Zetasizer Nano Series User Manual.MAn0317、Issue2.0、March2004」。プラセボ濃縮物を用いたDLS実験はその水力学的直径のピークを示さなかったので、明らかに、追加のピークはタンパク質によって引き起こされた。これらの大きな凝集物はSEC中において見られなかったので、不溶性であるに違いない。再溶解された粉末の粒子きょう雑は、全ての粒子画分を通じて増加された。しかしながら、研究室噴霧乾燥装置上でのプロセスは、(注入乾燥空気はろ過されたが)粒子きょう雑を完全には排除できなかった。さらに、試料を採取するための容器の開放も、粒子源であり得た。さらに、再溶解された粉末の濁度は、濃縮物と比べて著しく増加していた(濃縮物:5NTU;濃縮物噴霧乾燥:118NTU)。
【0185】
適切なTinを見つける
130℃のTinがアフェリモマブタンパク質を噴霧乾燥するのに適しているかどうかを見出すために、異なる温度を用いた実験系列を実施した。この系列に対するQLF=約3mL/分でのTin及び得られたToutが、表2に列記されている。意図は、乾燥効率とタンパク質のプロセス安定性との間の満足できる妥協点を見出すことである。
【0186】
【表2】
【0187】
180℃の粒子が100℃の粒子より若干多くの皺を有していたことを除き(但し、差は極めて僅かであった。)、粒子の形態には、差が観察されなかった。水の含量は、Tinの増加とともに減少する傾向があり、100℃と130℃の間に著しく下降する段階があった。検出可能な凝集には著しい差は存在しなかったので、凝集はあまり温度依存性であるようには見受けられなかった。粉末収率は、より高温で小さな改善を示した。これらの結果は全て高いTinの使用を推奨するものであったが、等電点電気泳動(IEF)及び動的光散乱(DLS)の結果はアフェリモマブに対する適切なTinが真ん中の範囲にあることを示唆した。IEF中の凝集バンドの強度は、乾燥空気注入温度に線形的に依存していた。また、DLSダイアグラムは180℃で劣る結果を示した。より高い水力学的直径(約16nm)に、単量体ピークが現れた。凝集物は、IEFにおいて推定されたように、より数が多くなるように見受けられるだけでなく、より大きくなるように見受けられた。さらに、単量体ピークの形状(より小さな分布の方向へ)及びサイズはシフトし、タンパク質に対する大幅な損傷を示唆する。特に小粒子画分(<15μm)において、粒子のきょう雑も、180℃においてより高かった。これらの結果に従って、さらなる研究のために、130℃及び155℃のみが許容されると考えることができる。これら2つの注入温度の結果は似通っているので、130℃のTinを選択した。この温度での操作は、産物品質に対して全体的な許容できる結果を与えながら、タンパク質に対する熱的ストレスを最小限に抑えるはずである。
【0188】
凝集の源
噴霧乾燥プロセスは、タンパク質に対する多数の不活化の原因を含む。幾つかは、製剤を賦形剤で修飾することによって低減することができるのに対して、不活化の他の原因には影響を与えることができない。プロセスの間の凝集の増加の原因を単一のストレス因子に明確に求めることはできない。熱ストレスは、正しいTin(ここでは、約130℃)を選択することによって、ある程度まで調節することができる。不可避なストレスの程度を見出すために、以下の実験を行った。
【0189】
蠕動式ポンプの影響
凝集に対する蠕動式ポンプの剪断ストレスの影響を定量するために、SECを使用した。アフェリモマブ濃縮物10mLを液体供給物として使用した。試料は、配管及びBuchiB−191の蠕動式ポンプを通して試料を拍出し、2つの液体ノズルに入る直前に収集した。液体供給物は、ポンプ拍出過程の前及び後に検査した。凝集の変化は全く認められなかった。研究室の噴霧乾燥装置の蠕動式ポンプはアフェリモマブタンパク質の凝集に影響を及ぼさないこと又は増加させないことが推定され得る。Brennan他(Diabetes34、353−359(1985))によって観察されたポンプにより誘導されたインシュリン凝集は、長期拍出後にインシュリンが溶液を出たときのみに起こった。この研究での配管を通じた通過は最大数分を要するに過ぎないので、損傷の危険は極めて小さい。
【0190】
微粉化プロセスの影響
微粉化の間の剪断ストレスの程度は、濃縮物の2つの試料(2mL)を微粉化し、その後、SEC及びIEFを介して検査することによって検査した。IEFにおいて、試料間に差を観察することはできなかった(さらなるバンド又はバンドパターンの変化はなし)。SECの結果は、凝集の僅かな増加を示した。この増加は、完全な噴霧乾燥プロセスの間ほど高くなかった。従って、凝集の僅かな部分が微粉化によって引き起こされたと結論付けることができるが、Maa他が仮定したように、タンパク質の損傷は剪断力のみならず、大きな空気/液体界面の結果であり得る。「Maa et al.,Biotechnology and Bioengineering54(6):503−512(1997)」。
【0191】
熱液ストレスの影響
タンパク質は熱感受性材料であるが、全てのタンパク質が熱的ストレスに対して等しく感受性であるとは限らない。アフェリモマブ濃縮物がどのくらい温度に対して耐えることができるのか(熱的ストレス)を測定するために、異なる期間にわたって、タンパク質溶液の少量を異なる温度に曝露した。濃縮物の安定性に対する基準はSECデータ、IEFの結果及び溶液の光学的外観であった。凝集の出現後、試験を終了した。結果は、下表3に示されている。
【0192】
【表3】
【0193】
濃縮物は、約60℃より高い温度に耐えることができなかった。IEFゲルにおいて、濁りの出現には、出発点におけるさらなるバンドの出現が伴った。元のバンドパターンの漂白は可溶性タンパク質の喪失を示唆する。可溶性タンパク質の喪失は、SECファイル中にも検出された。単量体のピークは、温度及び時間が増加するとともに縮んだ(縦座標)。40℃は、24時間にわたって適用された場合でさえ、アフェリモマブ濃縮物に影響を及ぼさなかった。タンパク質の熱的ストレス損傷は、凝集の増加によっては表されず、断片の出現によって表された。凝集ピークは概ね変化しなかった。従って、濃縮物に対して適用された熱ストレスは、断片化及び凝集をもたらしたのに対して、噴霧乾燥の間に微粉化された濃縮物に対して適用された熱ストレスは、主に凝集をもたらした。アフェリモマブ濃縮物は、短期間、最大約50℃の温度に耐えることができた。約60℃において、タンパク質の損傷は迅速に起こった。噴霧乾燥プロセスの間、液滴は湿球温度(Twb)(通常、Toutより25から30℃低い(この研究では、通常80℃))に曝露され、曝露の時間は極めて短かった。「Mumenthaler et al.,Pharm.Res.11(1):12−20(1994)」。
【0194】
まとめ
凝集は、ポンプ拍出操作の間の剪断力によって引き起こされるものとは考えられなかった。微粉化は、噴霧乾燥プロセスの間の凝集の増加の一部に対する原因であった。熱的ストレスは、タンパク質の安定性に対して主要な役割を果たしたが、濃縮物に対して適用された場合、断片化及び不溶性凝集物をもたらした。液滴は、噴霧乾燥の間に約55℃の臨界温度に達したので(Toutを25から30℃下回る(Mumenthaler他によって推定された。)が、極めて短期間に過ぎない。)、凝集の増加は、温度及び微粉化の相互作用によって引き起こされるものと思われた。「Mumenthaler1994」。
【0195】
賦形剤を用いた噴霧乾燥実験
アフェリオマブタンパク質の安定化を最適化するために、様々な賦形剤を検査した。最終目的は、乾燥プロセス及びその後の保存の間でにおける十分な安定性であった。
【0196】
10から150mMソルビトールの添加
本例では、表4に示されているように、安定化物質:タンパク質の最良のモル比を決定するために、10、25、50、100又は150mMソルビトールをアフェリモマブ濃縮物に添加した。結果は、図2及び3に示されている。150mMソルビトール溶液に関して、Tgはプロセス及び室温さえずっと超えて下降し、極めて低い収率から明らかなように、この混合物を適切に噴霧乾燥することはできない。混合物は、乾燥チャンバーを通過する間に乾燥されることはできず、サイクロン分離装置に入るときにはなお粘っているので、大部分がサイクロンの壁に接着し、収集することができない。「Maury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59(3):565−573(2005)」。
【0197】
【表4】
【0198】
小さな収率のために、これらの試料のカール・フィッシャー滴定(KF)及び広角x線回折(WAXD)分析は実行することができなかった。10mMが不十分であったことを除き、凝集の増加はソルビトールの量にあまり依存していなかった。ソルビトールの様々な量は粒子の形態に影響を及ぼさなかったが、混合物中に存在する賦形剤が多いほど、粒子は丸い形状を採った(図4参照)。(対照として)純粋なソルビトール溶液を噴霧乾燥することは不可能だったが、様々なソルビトール濃度のプラセボ粉末は全て、球形の粒子を示した。
【0199】
ソルビトールの正味重量が高くなるほど、結晶性の程度は減少した。IEFの結果は、さらなるバンドは、存在するにしても、不明瞭に検出できるに過ぎないという点で、純粋な濃縮物の結果と概ね合致していた。10mM混合物も、予期されないDLSダイアグラムを示した。μmサイズの明瞭なピークはサイズ・容積分布において殆ど検出できなかったので、大きな凝集物の量は極めて少なかった。しかしながら、添加されたソルビトールの25、50及び100mMはほぼ同一のダイアグラムを示した。粒子のきょう雑はソルビトール(固体)の量に線形的に依存しているようであり、10mMと25mMの間に最も大きな段階を示す。しかしながら、差は、より小さな粒子サイズに主として限定された。15μmより大きな粒子に対する値は、多かれ少なかれ等しかった。従って、25又は50mMソルビトールの添加によって、アフェリモマブ濃縮物の十分な安定化が実行可能であるように見受けられた。これら2つの混合物は、水含量及びその結果として得られるTgを除き、大きな差を示さなかった。
【0200】
10から100mMトレハロースの添加
高いソルビトール量を用いて見出された結果のため、トレハロース検査系列からは150mM混合物を除外した。トレハロース二水和物としてトレハロースを添加したので、混合物は、アフェリモマブ濃縮物15mL中に、56.7と567mgの間のトレハロース二水和物を含み、トレハロース:MAKの質量比は表5中に見ることができる。図5と6から明らかなように、25mMと100mMの間で、結果は同様であった。収率は、ソルビトールと比べて若干高い総濃度を平均した。トレハロースを用いて、極めて優れた安定化が得られ、また、収率は全ての濃度にわたって安定であった。増加した凝集は最小限であり、10mM混合物に関してのみ、SEC中の凝集の僅かな増加が見られた(0.2%)。
【0201】
【表5】
【0202】
それにも関わらず、DLSダイアグラムから明らかなように、全ての混合物中に不溶性の凝集が生じた。単量体の量はソルビトールの結果と同等であった。粒子の結晶性及び球状性は、トレハロースの量と共に直接変動した。純粋なトレハロースの噴霧乾燥は球状粒子を与えるので、トレハロースの添加は、粒子により丸い形状を採らせた(図7参照)。ソルビトール実験から明らかなように、粒子のきょう雑は賦形剤濃度によって影響を受けるように見受けられたが、同じく、小さな粒子サイズ(<15μm)に限定された。トレハロースの高いTgの故に(乾燥されたトレハロースに対するTgは、115℃である。)、トレハロース混合物のTgも高く、これは粉末安定性研究に対する利点であり得る。「Adler et al.,Journal of Pharm.Sci.88(2):199−208(1999)」。適切なプロセス及び保存時安定性を有する粉末を作製するために、25mM及び50mMがトレハロースの最も有望な割合であるように見受けられた。得られた粉末は、ソルビトール粉末より少ない残留水を示した。これらの混合物を用いて満足できる結果が得られたので、150mMトレハロースを用いるその後の検査という選択肢は放棄した。
【0203】
10から100mMショ糖の添加
アフェリモマブ濃縮物への25mMから100mMショ糖の添加を検査した(表6参照)。25mMから100mMまでのショ糖の添加は、70から80%の高い粉末収率を与えた(図8及び9)。Tgは、25mMで最適に達した。凝集の増加は、全濃度を通じて大幅に異ならなかった。同じく、結晶性(C)の程度はショ糖の量とともに線形的に減少した。様々な粉末の残留水含量は、トレハロース混合物に対して観察された残留水分含量より、平均して若干高かった。粒子の球状性はショ糖の量によって影響を受けた。タンパク質はギザギザの球形を形成する傾向があったのに対して、ショ糖は球形粒子を形成する傾向があった。
【0204】
【表6】
【0205】
DLSファイルにおいて、単量体の量は10mMと比べて100mMショ糖においてより低かったが、この印象は強度・サイズ分布ダイアグラムに限定された。100mMショ糖に対する容量・サイズ分布では、凝集ピークの検出は困難であった。10mM混合物では、より大きな凝集物(>1μm)を認めることができた。これらのさらなるピークは、ショ糖混合物の残りには現れなかった。IEFゲルは、実質的な異常を一切示さなかった。さらなるバンドは、50及び100mMに対して、不明瞭に検出できるに過ぎず、濃縮物の元のバンドパターンを明確に認めることができた。粒子のきょう雑は、10mMから100mMまで減少し、10mMと25mMの間に最も大きな段階を示した。粒子サイズが大きくなるほど、差はより小さくなり、15μmより大きな粒子に対して、全ての混合物は類似の粒子量を示した。これらの結果全てを考慮に入れると、アフェリモマブ濃縮物への10mMショ糖の添加は不十分であり、最良の結果は25mM及び50mMにおいて得られた。
【0206】
まとめ
異なる量の3つの賦形剤に対する結果を比較すると、噴霧乾燥プロセスの間にタンパク質の保存を与えるために、賦形剤10mMが十分ではないことは明白である。従って、全ての賦形剤に関して最も好ましい結果は、25mM及び50mMを用いて得られた。100mM又は150mMでさえ、結果を改善しなかった(150mMソルビトールに関しては、全く逆)。凝集の増加に対する結果は、ソルビトールに関して若干高かった。結果の残り(ショ糖及びトレハロース)は、幅広く似通っていた。トレハロース及びショ糖は、アフェリモマブタンパク質を同じ程度まで保護し、ソルビトールより優れていた。
【0207】
保存時安定性試験
噴霧乾燥された粉末を、異なる温度及び残留水分条件に3ヶ月間曝露した。検査条件は、冷蔵庫(5℃、湿度なし)、60%相対湿度で25℃(中欧、北アメリカと類似)及び75%相対湿度で40℃(東南アジアと類似)であった。
【0208】
調製及び検査計画
純粋な濃縮物及び噴霧乾燥されたプラセボを保存した。プラセボ粉末は、アフェリモマブタンパク質を除き、ベラム(verum)粉末(噴霧乾燥されたタンパク質−賦形剤混合物)と同じ固体を含んだ。液体供給物のバッチサイズを推定するために、分析検査のために必要とされる粉末の量を予め計算した。同じ条件下で、50mLの液体供給物の3つ又は4つのバッチを噴霧乾燥し、Viton(R)密封蛍光弾性体及びDuroplast(R)ネジ蓋を有する小さなAl−バイアル中に計算された量がそこから充填された1つのバルクとして、得られた粉末を一緒に混合した。予備試験において、少量の水蒸気透過性を示すに過ぎなかったので(10日以上、室温で65%室内湿度下において保存したときに、噴霧乾燥された乳糖の水含量の変化は観察されなかった。)、Viton(R)密封蛍光弾性体を有するAlバイアルを選択した。各検査時において(t=1、2及び3ヶ月)、各混合物の2つの同じ試料(Alバイアル)を様々な空調されたチャンバーから取り出した。一方を分析のために使用し、他方を凍結装置に移し、(実施される可能性がある追加試験のための予備として)−80℃で保存した。これによって、合計152の容器が得られた(毎月チャンバーから取り出すための48(各温度に対して、ベラム4つ、ベラムの予備4つ、プラセボ4つ、プラセボの予備4つ)に加えて、さらなる熱処理なしに−80℃で保存された8つの容器(純粋な濃縮物又は新たに噴霧凍結された粉末))。
【0209】
アフェリモマブ濃縮物
SECの結果(表7参照)。SECクロマトグラムは、5℃において、濃縮物が凝集による僅かな損傷を受けるに留まったが、これらの凝集物は主に二量体でないように見受けられる。凝集物ピークの幅広い平坦域は、三量体/オリゴマーの存在を示した。断片化の発生及びクロマトグラムの減少するAUCによって明らかなように、より高い温度及びより長い保存期間は著しい分解をもたらす。
【0210】
【表7】
【0211】
異なる画分の保存時安定性の速度論を研究した。単量体の量は全ての温度で常に下降したのに対して、凝集は、25℃及び40℃で約2ヶ月後に、断片化に切り替わるように見受けられた。40℃において、凝集は、クロマトグラム中の分離したピークとしてもはや検出できず、3ヶ月後には、ピークパターンとして断片化ピークが優勢となった。40℃での著しい損傷は、試料を巨視的に分析することによって既に観察することができた。1ヶ月後に、40℃で保存された濃縮物は濁りを示したのに対して、5℃及び25℃の試料は裸眼で見ることができない発色の小さなシフトを示すに過ぎなかった。
【0212】
濁度の測定は、同等の結果を示した。濁度の明瞭なシフトは、ベラム(タンパク質を含有する試料)及びプラセボ濃縮物中に、40℃でのみ検出することができた。1ヶ月後、濃縮物は、150NTUを上回る値を示し、翌月にもなお増加した。光学的な濁りのために、40℃試料に対して、DLS測定を終結した。より低い温度では、変化は検出できなかった。粒子測定は、断片化及び凝集についてのさらなる情報を与えた。微粒子画分は減少したのに対して(25μm未満の粒子)、大きな粒子の数は常に増大した(おそらく、(クロマトグラムの減少するAUCによって仮定されるように)SECによって検出されなかった不溶性凝集物に相当する。)。これらも、試料の可視的濁りの原因となる粒子であるはずである。
【0213】
現在まで、25℃での損傷は極めて深刻であるようには見受けられなかった。しかし、IEFゲルを分析すると、この印象は誤っていることが判明した。1ヶ月後に、バンド強度の小さなシフトを既に認めることができ、3ヶ月後に、バンドパターンは元のバンドパターンから明瞭に異なっていた。最も高い等電点(IEP)(pH8.6から8.7)を有するイソフォームに対するバンドは完全に消失した。40℃の保存は、1ヶ月後に著しい損傷を引き起こし、保存検査の間さらに悪化した。
【0214】
従って、アフェリモマブ濃縮物は、低温で保存されたときに相対的に安定であった。しかし、濃縮物がより高い温度に置かれると、様々な経路を介して分解が起こった。長期間にわたって保存された場合、室温(25℃)でさえストレス因子であった。
【0215】
噴霧乾燥された粉末の安定性
噴霧乾燥を介して長期的な安定化を与えるために、追加の賦形剤を加えたアフェリモマブ濃縮物は、25℃で保存された濃縮物に対する結果に劣らない分解を示すべきである。追加の検査として、Alバイアルの密封(これまで、短期間に対してのみ検査された。)及び/又は噴霧乾燥された粉末の安定性に対する水分の影響を調べるために、噴霧乾燥プロセス直後及び3ヶ月の保存後にカール・フィッシャー滴定を行った。
【0216】
濃縮物+25mMソルビトール
5℃及び25℃で保存された試料は、(表8に示されているように)3ヶ月にわたって優れた安定性を示す。SECの結果では、明瞭な変動は認められなかった(デルタ凝集は1%未満である。)。40℃では、大幅な分解が起こり、凝集は強い増加を示し、二量体ピークに加えて大きな多量体が出現した。3ヶ月後、明瞭な断片ピークを検出することができた。
【0217】
【表8】
【0218】
5℃及び25℃で保存された試料は発色に一切シフトを示さなかったのに対して、40℃の試料(再溶解された)の色は1ヵ月後に僅かに変化し、時間が経過するに連れて、目に見える濁りさえ示した。プラセボ試料は何れの時間又は温度においても発色を変化させなかったので、この濁りはタンパク質によって引き起こされた。濁度測定の間の最も顕著な結果も、40℃において得られた。噴霧乾燥直後の約20NTUから始まり、40℃の試料は3ヶ月に120NTUを超える値に達した。しかしながら、20NTUは、示された純粋な濃縮物より顕著に高かった。40℃はTgより大きいので、ソルビトール混合物に対する臨界的パラメータであり、従って、ガラス状態はもはや維持することができない。
【0219】
粒子のきょう雑は類似の結果を示した。5℃及び25℃で検出可能な小さな変化のみが存在した。40℃/75%RHで保存された試料は、特に、小さな粒子に対して顕著な増加を示した。これは、僅かな濁りを観察することなく、粉末を再溶解することができないという事実によるものであった。プラセボ試料では、粒子の数はベラム試料中よりずっと少なく、特別な粒子サイズに限られなかった。予備研究は絶対的な水蒸気不透過性を示唆したが、粉末を保存するために使用されるAlバイアルは絶対的な水蒸気不透過性を確実には示さなかった。
【0220】
カール・フィッシャー滴定は、噴霧乾燥プロセスの直後及び保存の3ヶ月後に行った。初期値が僅かに高いことを除き、プラセボ試料は等しい結果を示したので、水の取り込みはタンパク質依存的でなかった。5℃の粉末は湿気の小さな増加を示したので、水の取り込みは空調されたチャンバーの室内湿度に依存していた。プラセボ試料に対する値は、ベラム試料に対する値より僅かに高かったので、ソルビトールとMAKの組み合わせは純粋な賦形剤より吸湿性であった。温度、残留水分及び容器の水蒸気透過性は、x線回折ダイアグラムに対して全く影響を与えなかった。3ヶ月後、最初のダイアグラム(t=0)に比べて回折パターンになお差は存在しなかった。
【0221】
粉末の巨視的外観でさえ、湿度によって影響を受けた。多くの試料はなお流動可能なバルク材料であったが、40℃の試料は融合した(特に、プラセボ試料)。40℃の試料で見られた凝集の増加は、DLSの結果を用いて確認した。5℃及び25℃は典型的なパターン(10nmに単量体ピーク及びμmサイズに小さな凝集ピーク)をなお示したが、40℃の試料に対しては異なるパターンが見られた。サイズ・容積分布においてさえ、単量体ピークに小さな肩が生じ、3ヶ月後にさらに顕著となった多量体ピークに相当した。IEFゲルにおいて、40℃で2時間の保存後に変化を検出することができ、より低温では見られないさらなるバンドが出発点に現れる。
【0222】
濃縮物+25mMトレハロース
トレハロース混合物は、優れた安定性を示した(表9)。5℃及び25℃/60%室内湿度での保存の間、分析全体にわたって実質的な変化を検出することはできなかった。40℃/75%RHでのみ、粉末は僅かに異なる結果を示した。凝集は、40℃でのみ増加した。3ヶ月後、合計約2%の総凝集の増加が検出された。より低い温度は、タンパク質に対して著しい損傷をもたらさなかった。しかし、40℃でさえ、3ヶ月後の単量体の量はなお95%を上回っていた。安定化剤としてトレハロースを用いると、断片の形成は観察されず、少なくとも、クロマトグラム中に存在する顕著なピークは存在しなかった。IgG断片は、完全な抗体より、保存の間に温度によって誘導される凝集に対する感受性がより低い可能性があり得る。
【0223】
【表9】
【0224】
類似の結果が、濁度測定の間に得られた。5℃及び25℃での保存の間に、濁度の変化は認めることができず、40℃の試料でさえ、濁度の小さな増加を示したに過ぎない。プラセボ試料はゼロに近いNTU値を有していたので、同じく、濁りの大半はタンパク質によって引き起こされた。粒子のきょう雑は、より高い温度又はより高い残留水分によって影響を受けなかった。ベラムとプラセボ試料の間の差を除き、粒子の数は、概ね、保存の3ヶ月にわたって、同じ水準に留まった。これは、再溶解された粉末の光学的外観によっても確認された。全ての試料は透明な溶液をもたらし、発色測定さえ、保存の間に全く差を示さなかった。
【0225】
安定性検査のために使用されたAl容器は、粉末から湿気を完全に除外することはできなかった。従って、25℃及び40℃での高湿条件は、粉末の湿気の増加をもたらす。5℃で保存された粉末は、変化しない水含量を示した。温度及び増加した室内湿度というストレス因子は何れも、粉末試料の結晶性に対して全く影響を及ぼさなかった。回折ダイアグラムは不変のままであった。WAXDダイアグラムでは、塩化ナトリウムのピークパターンがなお優勢であった。SEC及び濁度測定の結果は、DLSを用いて得られた結果と合致した。低温及び低い残留水分はタンパク質が搭載された粉末に害を与えなかった。全ての試料が同じパターンを示し、40℃で保存された混合物でさえ、異常なピーク又はピークの肩を示さなかった。40℃で保存された混合物は、約10nmにおける大きなピーク及びμmサイズにおけるさらなるピークとともに見られる通常のパターンを示した。
【0226】
IEFの結果では、等電点電気泳動の出発点にさらなるバンドを示す唯一のゲルは、40℃/75%RH試料を用いたゲルであった。そこでさえ、3ヶ月後に、僅かな青色のスポットが見られたに過ぎない(「40℃」の直下)。全ての温度及び湿度条件にわたって、トレハロースは、アフェリモマブタンパク質に対して極めて優れた安定化能を示した。
【0227】
濃縮物+25mMショ糖
アフェリモマブ濃縮物中のショ糖の溶液は、特に、5℃及び25℃/60%RHにおいて、優れた保存安定性を示す(表10)。凝集の変化は、これらの条件で全く観察されなかった。5℃及び25℃に対する全てのクロマトグラムは類似していた。異なる結果は、3ヶ月にわたって約2.5%の凝集の増加が検出された40℃/75%RH試料に対してのみ見ることができた。しかし、なお、この時点での単量体の量は約95%であった。
【0228】
【表10】
【0229】
全ての再溶解された粉末は光学的に無色透明の外観を示し、アフェリモマブ濃縮物又は液体供給物と区別することはできなかった。発色測定は、高温保存(40℃)の後でさえ、3ヶ月にわたって色の変化を一切示さなかった。溶液は、参照溶液R6又はB5(視覚的な補助を用いてのみ同定可能な赤又は茶色がかった光度に希釈された液体であった。)になお最も近かった。濁度計の補助を得ても、幅広い変化は観察されなかった。40℃/75%RHでの保存後、当初の12NTから20NTUまで濁度の増加が存在したが、濁度の結果は噴霧乾燥直後に20NTUを既に示していたソルビトール及びトレハロースに対する結果より優れていた。プラセボ試料は、極めて低い濁度を示したに過ぎず、安定性試験期間全体にわたって著しい変化がなかった。
【0230】
ベラム試料に対する眼に見えない粒子のきょう雑は、濁度と同様、プラセボ試料に対するきょう雑より大幅に高かった。しかしながら、大きな粒子画分(10μmより大きな粒子)には、小さな変化が観察されたに過ぎない。40μmより大きな粒子の数は通常ゼロに近く、10μmより大きな粒子の数は(mL溶液当り)100以下又は100付近であり、従って、総粒子きょう雑はそれほど高くなかった。高温保存での全ての分解は、カール・フィッシャー分析の結果と合致していた。空調された保存チャンバー中の残留水分が高くなるほど、粉末によって取り込まれる水の量は多くなった。ショ糖試料は、ベラムとプラセボ粉末間で大きな差を示さなかった。
【0231】
より高い残留水分条件下で水含量は増加したが、水の吸収は粉末の結晶性に対して一切影響を有していなかった。3ヶ月後のWAXDダイアグラムは、全ての温度に対して同じ回折パターン(噴霧乾燥直後に得られたWAXDダイアグラム(t=0)と同じ)を示した。DLSダイアルガム及びIEFゲル中には、最小限の分解のみが検出された。40℃及び75%RHで3ヶ月後、ショ糖試料は噴霧乾燥直後のものと極めて似通った光散乱ダイアグラムを示した。10nm水力学的直径に明瞭な単量体ピークが存在し、μmサイズに極めて小さなピークが存在した(拡大された部分に見られる。)。同じく、40℃及び75%RHが、濃縮物のIEFバンドパターンと異なるIEFバンドパターンをもたらす唯一の条件であった。等電点電気泳動の出発点の僅かなバンドは幾つかの大きな凝集物を示したが、DLSダイアグラム中に見られるように、それらの数は実質的に重要でなかった。
【0232】
比較とまとめ
安定性実験は異なる安定化剤が異なる結果をもたらすことを示した。賦形剤又は保存条件を変更することは、粒子の形態に対して影響を有するようには見受けられなかった。噴霧乾燥直後の噴霧乾燥ソルビトール混合物の走査型電子顕微鏡画像は、40℃及び75%RH下で3ヶ月間保存されたトレハロース試料とは殆ど区別できなかった。5℃は著しいタンパク質損傷を引き起こさなかった。アフェリムマブ濃縮物でさえ、これらの条件下で3ヶ月にわたって実質的な分解を示さなかった。25℃60%RH又は40℃75%RHで保存されると、凝集及び断片化を示すことによって純粋な濃縮物は応答した。
【0233】
トレハロースとショ糖は、幅広く均一な結果を示した。粉末は、極めて優れた安定性を有していた。40℃及び75%RHでさえ、小さな変化が検出されたに過ぎない。しかしながら、吸湿性はトレハロース及びショ糖に対して異なる結果を示すパラメータの1つであった。トレハロースを含む噴霧乾燥粉末は、全般に、ショ糖混合物と比べて、噴霧乾燥後により低い水含量を示した。安定性検査のために使用されたAl容器は水蒸気に対して完全には不透過性でなかったので、噴霧乾燥されたショ糖はトレハロースより吸湿性が高いという事実のために、ショ糖粉末は3ヶ月後により高い水含量も有していた。
【0234】
濁度測定では、ショ糖とトレハロースの間に別の差が見られる。ショ糖混合物は、トレハロース粉末より、噴霧乾燥直後により小さなNTUを示した。濁度測定は、別の予想されない特徴も明らかにした。噴霧乾燥プロセスは、高温での保存より、タンパク質−賦形剤混合物に対してより大きなストレスを与えるように見受けられた。噴霧乾燥されると、粉末は、少なくとも噴霧乾燥粉末のTg未満で保存されたときに十分な安定性を示した。
【0235】
ソルビトールも、安定化の可能性を有していた。ソルビトールは、5℃及び25℃で優れた結果を示した。しかしながら、ソルビトールを含む噴霧乾燥粉末は、長期間にわたって、より高い温度に耐えられなかった。これらの結果に対する重要なパラメータは、ソルビトールの低いTgであるように思われる。この温度を超えると(40℃の保存に対する結果から明らかなように)、ガラス状製剤が粘性のある液体に転化され、その運動性を増強し、様々な分解経路を開く。
【0236】
噴霧乾燥プロセスの間の濁りの増加を低減するための試み
濁度は噴霧乾燥プロセスの間に変動性を示すパラメータであることが明らかとなったので、乾燥プロセス後の濁度値を最小限の水準まで低下させる試みで、プロセスパラメータを再び変動させた。これらの実験に関して、アフェリモマブタンパク質に対して最小限の損傷をもたらすことを既に証明している前の乾燥実験から得られるプロセスパラメータを使用した。この目的のために、130℃及び100℃のTinを用いて、賦形剤トレハロース及びショ糖の25mM及び50mMを添加した噴霧乾燥実験を行った。上述したように、100℃のTinは130℃のTinを用いて得られたものに近い分析結果を示した。Tinを減少させることはタンパク質に対する熱的ストレスを低下させ、従って、より低いNTU値をもたらすことができた。同様の考察を、50mM及び25mMの賦形剤に対して与えた。両製剤は、以前の検査において同様の結果を示した。賦形剤の量を増加させることによって、より優れたNTU値をもたらすことができた。プロセス設定の変更は何れも、以前の試験において実質的な変化を示さなかったので、これらの実験に対して使用された唯一の分析法は濁度測定であった。
【0237】
トレハロースの添加
25mM及び50mMトレハロースを含むアフェリモマブ濃縮物を、100℃及び130℃のTinで噴霧乾燥した。各実験から少なくとも3つの噴霧乾燥粉末が濁度に関して検査できるように、あらゆる製剤は複数で噴霧乾燥した。粉末収率は、Tinによっても、又は賦形剤の量によっても、大幅な差を示さなかった。平均収率は約70%であり、130℃のTin及び賦形剤の25mM添加に対してより高い値を示した。濁度測定の結果は、より変動した。
【0238】
25mM及び50mMトレハロースに対するNTU値は大幅に異ならなかったので、賦形剤の量は濁度に対して大きな影響を有していなかった。しかしながら、異なるTinは異なる濁度をもたらす。130℃のTinは、より低いNTU値及び標準偏差をもたらす。100℃のTinでは、NTU値は一般により高く、より大きな変動も示した。130℃及び25mMトレハロースの添加に対する値も、安定性検査の間に得られた濁度の結果と合致していた。
【0239】
ショ糖の添加
25mM及び50mMショ糖の添加とのアフェリモマブ濃縮物の混合物を、100℃及び130℃のTinで噴霧乾燥した。ショ糖の異なる濃度は、噴霧乾燥プロセスの粉末収率に対して大きな影響を有するようには見受けられなかった。全ての混合物が約70%の粉末収率を与え、130℃粉末は僅かにより小さな標準偏差を示した。さらに顕著なのは、濁度測定から得られた結果であった。25mM及び50mMに対するNTU値は極めて近く、100℃のTinにおいて、50mMショ糖に僅かに向かい(より低い濁度を示す。)、Tin=130℃に関しては、ショ糖の25mM添加に向かった。これらの傾向は大きくなかったので、賦形剤の量は噴霧乾燥された粉末の濁度に対して大きな影響を有していなかった。より明瞭なのは、Tinに関する決定であった。100℃は、時には50NTUを超える大幅により高いNTU値を与え、これは、130℃粉末に対しては、40℃での保存の3ヶ月の間にさえ到達されなかった。さらに、100℃のTinで得られた大きな標準偏差は、再現性のある結果を約束しなかった。130℃のTinで噴霧乾燥されると、再溶解された粉末は20NTU付近の再現性のある低い濁度を示す。これらの値も、安定性検査の間に得られた結果と合致する。
【0240】
まとめ
噴霧乾燥プロセスの間の濁度の増加は、Tinを減少させることによって低下させることができない。トレハロース含有粉末及びショ糖混合物は、100℃で、より高いNTU値を示した。Tinとして130℃を使用すると、25mM賦形剤の添加は、50mMより僅かに低い濁度値を与えた。従って、前の実験(130℃及び25mM添加物)から結論されたプロセスパラメータは、アフェリモマブタンパク質の噴霧乾燥に対して最適であるように思われる。濁度に関しては、ショ糖がトレハロースより僅かに良好な成績を収めた。25mMショ糖を含有するアフェリモマブ濃縮物から噴霧乾燥された粉末は15NTUの平均を示したのに対して、類似のトレハロース混合物は17NTUの平均を示した。
【0241】
より濃縮されたMAK195F溶液の噴霧乾燥
トレハロース、ショ糖又はソルビトールを用いて、12.4mg/mLMAK195Fを含むアフェリモマブ濃縮物を実験室規模で首尾よく噴霧乾燥させ、安定な粉末を得た。乾燥プロセスの規模を大きくするためには、プロセスの時間が極めて重要な要素である。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。より大きなロットに対するプロセスの時間を短縮するために、液体供給物中のより高いタンパク質濃度は、他のプロセスパラメータに対して大幅な影響を与えずに、噴霧乾燥機のタンパク質処理量を増強させた。より高く濃縮されたMAK195F溶液を達成するために、アフェリモマブ濃縮物を限外ろ過した。このろ過プロセスの間、水、塩及び界面活性剤は低下したのに対して、タンパク質は膜を横切ることはできなかった。これはタンパク質濃度の増加をもたらしたが、他の溶質の濃度は変化させなかった。
【0242】
アフェリモマブ濃縮物50.6mg/mL
第一の限外ろ過プロセスにおいて、濃縮物は50.6mg/mLタンパク質/mLの濃度に達した(UV分光法によって推定)。溶液は光学的に透明で、ほぼ無色(僅かに茶色味を帯びていた。)であり、元のアフェリモマブ濃縮物(12.4mg/mL)とは巨視的にはほとんど区別できなかった。SEC及びDLSは、元の濃縮物からの変化を示さなかった。
【0243】
凝集は元の濃縮物(約1%)になお近く、DLSプロファイルは元の濃縮物のものと正確に合致しており、約10nmに単一のピークを示すに過ぎなかった。タンパク質は、その濃度を増加させることによって悪影響を受けなかった。より高いタンパク質濃度を用いると、幾らかの測定可能な物理的特性が変化し得る。濃縮物50.6mg/mLは、1.017g/cm3の密度及び1.375mPasの粘度を示し(何れも、20℃で測定)、何れも元の濃縮物と比べて若干高かった。濃縮物50.6mg/mLに対する濁度の値も、元の溶液より高く、それぞれ、118NTU及び約5NTUであった。溶液中の高分子(タンパク質)の量が増加し、従って、光強度を低減させるために光を散乱又は吸収し得るより多くの高分子が存在したので、この増加は予想された。
【0244】
粒子測定は、限外ろ過プロセスの間に著しい変化を示さなかった。濃縮物50.6mg/mLの全ての粒子画分は、濃縮物12.4mg/mLと同じ又はより少ない粒子きょう雑を示した。また、IEFゲルはさらなるバンドを示さなかった。溶液中のMAK195Fの濃度を50.6mg/mLまで増加させることはタンパク質及びその機能に関して実質的な損傷又は他の変化をもたらさなかったと仮定できる。
【0245】
濃縮物50.6mg/mLを噴霧乾燥する 賦形剤なしの噴霧乾燥
濃縮物50.6mg/mLは、噴霧乾燥された場合に、濃縮物12.4mg/mLと全く同じように損傷を受けやすかった。噴霧乾燥プロセスの間、凝集は約2%まで増加した(1%の増加)。粉末収率は約55%であったが、水含量は相対的に高い(3.5%)。さらに、粉末の高い静電荷のために、粉末の取り扱い(充填など)は幾分困難であった。
【0246】
DLSダイアグラムは、明瞭な単量体ピーク及び小さな凝集物(オリゴマー)に相当する小さな肩を示した。噴霧乾燥された元の凝集物(12.4mg/mL)とは反対に、μmサイズのピークの形態の大きな凝集物は検出されなかった。検出可能な小さな凝集物のみが存在したので、IEFゲルの実質的な変化は噴霧乾燥プロセスの間には見られなかった。
【0247】
限外ろ過プロセスの間、タンパク質濃度は増加したのに対して、他の溶質(NaCl、Na3PO4及びPluronic(R)F68)は全て、元の濃度を維持した。この変化の1つの影響は、噴霧乾燥された製剤のX線回折パターン中に見ることができる。タンパク質は噴霧乾燥後に完全に非晶質であったので、塩化ナトリウムによって引き起こされた結晶ピークの大きさは大幅に減少した。液滴中の固体のより高い量によって引き起こされたより大きな粒子に対する傾向を除き、粒子形態に対する影響は検出できなかった。
【0248】
賦形剤なしに濃縮物50.6mg/mLを噴霧乾燥することによっても、極めて高い粒子きょう雑がもたらされる。濃縮物12.4mg/mL噴霧乾燥と比べて、25μm未満の全ての粒子画分は粒子のより高い量を含有していた。
【0249】
噴霧乾燥前に賦形剤を添加することによって、これらの結果は改善されるはずである。安定性試験におけるように、濃縮物12.4mg/mLに対する25mM混合物と等しい質量比で賦形剤を添加した。
【0250】
ソルビトールの添加
濃縮物12.4mg/mLに対する25mM混合物に従って、0.35:1のソルビトール:MAK195F質量比でソルビトールを添加した。噴霧乾燥された混合物の粉末収率は、約60%であった。粉末は20℃のTg及び2.3%の水含量を有していた。これらの値は、濃縮物12.4mg/mLとの類似の混合物に対して得られた結果と広く合致していた(67%粉末収率、2.0%RH、Tg=19℃)。噴霧乾燥粉末を再溶解することによって、当初のMAK195F濃縮物50.6mg/mLと全く同様に、参照溶液B2(僅かに茶色味を帯びている。)と最も近い発色を有する透明で、ほぼ無色の溶液をもたらす。
【0251】
噴霧乾燥後、再溶解された粉末は凝集の小さな増加を示した。SECは、純粋な濃縮物50.6mg/mLに対する約1%と比べて、1.3%の凝集レベルを示した。同じく、これは、ソルビトールの25mM添加を有する噴霧乾燥された濃縮物12.4mg/mLと比べて実質的な変化でなかった。
【0252】
不溶性凝集物の量は、DLSの結果において見られたように、大幅には増加しなかった。明確な単量体ピークが10nmの水力学的直径に、及び凝集ピークがμmサイズにおいて検出された。液体供給物の固体含量が2.8倍増加したので、再溶解された粉末の眼に見えない粒子のきょう雑が増加した。特に、小さな粒子画分(<10μm)は極めて高いきょう雑レベルを示したのに対して、大きな粒子(>10μm)の数はより低く濃縮された溶液のものと類似のレベルに留まった。
【0253】
液体供給物中のタンパク質濃度を変化させることは、粒子の形状に対して小さな影響を有するに過ぎなかった。粒子はギザギザの球形の典型な形状を示すが、より大きな粒子に対する傾向があるように見受けられた。アフェリモマブ12.4mg/mLを含有する溶液に対する粒子の直径は約2.5から13μmであったので、より高度に濃縮された溶液を噴霧乾燥することは15μmより大きな粒子を部分的にもたらす。
【0254】
トレハロースの添加
0.7:1の賦形剤:MAK105F比は、濃縮物12.4mg/mLに対する25mM賦形剤の添加を用いて、安定性試験系列から採用された。二糖としてのトレハロースは単糖であるソルビトールの約2倍高い分子量を有するので、賦形剤の量は、この実験ではソルビトール実験より高かった。液体供給物溶液の固体含量のこの増加によって、前記噴霧乾燥実験と同じ程度高い粉末収率を得ることが難しくなった。高い固体含量を有する噴霧乾燥溶液は高性能サイクロンの粉末排出口を目詰まりさせるリスクをもたらし、収率は50%未満に減少した(この実験では、約45%)。高い静電荷のために、粉末は取り扱いが困難であった。粉末は、3.6%の水含量及び約66℃のTgを有し、類似の低濃度混合物(3.3%RH、Tg=56℃)に幾分合致していた。再溶解された噴霧乾燥粉末は、僅かに茶色がかった参照溶液B2と最も近い発色を有していた。
【0255】
トレハロースの安定化能は優れていた。可溶性凝集物の増加は、SECクロマトグラムにおいては検出することができなかった。凝集は1%のレベルに維持され、元の濃縮物50.6mg/mLとは区別できなかった。DLSファイルにおいて見られるように、不溶性凝集物の量もきわめて低く、単量体ピーク及びμmサイズのピークによって表される大きな凝集物の少量を示す。
【0256】
眼に見えない粒子のきょう雑は、より低い濃度の混合物(トレハロースを加えた濃縮物12.4mg/mL)に関してより高かった。これは、高い固体含量(MAK195K濃縮物12.4mg/mLを用いた混合物におけるより約3倍高い。)によって説明することができた。
【0257】
液体供給物中のタンパク質濃度及び固体含量の変化は、粒子形状に対して大きな影響を有していなかった。粒子の形状は、より濃縮された粉末中への、単離されたより大きな粒子の出現を除き、実質的な変化を一切示さなかった。
【0258】
ショ糖の添加
0.7:1のショ糖:MAK195Fの質量比(濃縮物12.4mg/mL及び25mM賦形剤と同様)を維持するために、全ての噴霧乾燥実験に対するショ糖の量は、4.08倍(50.6/12.4)増加されなければなかった。上から明らかなように、この質量比を用いると、噴霧乾燥プロセスの間にほぼ完全なタンパク質の保存が達成された。固体のこの高い量を含む溶液の噴霧乾燥は、特に高性能サイクロンに対して、極めて小さな直径を有するサイクロンの粉末出口を目詰まりさせるリスクをもたらす。従って、粉末収率は、プロセスの安定性に一切影響を有することなく、時々50%未満に減少した。
【0259】
濃縮物50.6mg/mLは元の濃縮物12.4mg/mLとは異なる発色を有するので、より高度に濃縮されたタンパク質溶液を基礎とする再溶解された噴霧乾燥粉末も発色を示したと予想される。トレハロース混合物は、僅かに茶色がかった参照溶液B1に最も近い発色を有した。
【0260】
1%のレベルに留まった凝集は、液体濃縮物50.6mg/mL又は元の濃縮物12.4mg/mLとはあまり異ならなかった。
【0261】
DLS分析は、約10nmの水力学的直径に単量体ピークを示し、μmサイズにおける周知の小さな凝集ピークは大きな凝集物の少数に相当した。眼に見えない粒子のきょう雑は、全ての粒子サイズ画分を通じて、低濃縮混合物より僅かに高かった。
【0262】
粒子の形態は、同じ賦形剤:MAK195F比を含む前実験において得られた結果と異ならなかった。液体供給物中のより高い固体含量の結果、より低濃縮の製剤中には存在しない単離されたより大きな粒子が幾つか見られた。粉末の残留水分は、2.6%であり、製剤のTgは約60℃であった。何れの値も、安定性検査における類似の低濃度製剤に対して得られたものと同等であった(2.6%RH、Tg=63℃)。
【0263】
まとめ
液体供給物のタンパク質濃度を50.6mg/mLまで増加させることは、得られる粉末に対して実質的な影響を一切有していなかった。分析検査のほぼ全てが、賦形剤:MAK195Fに対して等しい質量比を有する濃縮物12.4mg/mLを用いる噴霧乾燥実験と同等の結果をもたらす。従って、賦形剤の安定化能は、質量比賦形剤:MAK195Fに依存し、モル比には依存しなかった。
【0264】
低濃度液体供給物(12.4mg/mL)を用いた実験におけるのと同様、トレハロース及びショ糖は、アフェリモマブの噴霧乾燥の間に、プロセス安定性に関してほぼ同じ結果をもたらす。抗体断片を安定化させるためのソルビトールの使用は、特に凝集において僅かに劣る結果を示した。高濃度粉末のIEF比較は、実質的な差を示さず、全ての混合物は、さらなるバンド(大きな凝集物)がない元のアフェリモマブバンドパターンを示した。
【0265】
賦形剤の異なる量によれば、顕著なWAXDダイアグラムの差が存在した。使用した全ての糖(及びタンパク質)は、噴霧乾燥後に完全に非晶質であったので、主要な結晶成分としての塩化ナトリウムの量が結晶ピークの外観を調節した。アフェリモマブ濃縮物12.4mg/mLは38%w/w(固体に関する)の塩化ナトリウム濃度を有し、32の°2θに明瞭な塩化ナトリウムのピークを示した。噴霧乾燥された濃縮物では、塩化ナトリウムの濃度は約14%w/wであり、結晶ピーク高の減少をもたらした。賦形剤としてトレハロース及びショ糖を添加することによって、塩化ナトリウム濃度は9%の値まで減少した。その結果、結晶ピークは、タンパク質及び安定化剤によって引き起こされ非晶質の輪(halo)を目立たなくすることはもはやなかった。ソルビトールの質量比は二糖の質量比より低かったので、塩化ナトリウムの結晶ピークは、ソルビトール混合物のWAXDダイアグラム中になお見ることができた。
【0266】
浸透圧の計算
アフェリモマブ濃縮物は、元来、非経口投与のために開発及び調合されたので、等張性は重要な要因であった。「Reinhart et al.,Crit Care Medicine29(4):765−769(2001)」。静脈内適用のための溶液は、血液と概ね同じ浸透圧(286mosmol/kg)を有するべきである。「Kommentar zum Europaischen Arzneibush,Wiss.Verlagsgesellschaft Stuttgart mbH,Band2(5.2)(2006)」。浸透圧は、「Deutscher Arzneimittelcodex,dt.Apotheker Verlag Stuttgart,Band1(AnlageB)、1−6(2006)」から得られる以下の式を使用して、凝固点降下を介して計算することができる。
【0267】
1%(w/V)溶液の凝固点降下の計算:
【0268】
【数3】
【0269】
混合物のデルタTの計算:
【0270】
【数4】
【0271】
混合物の浸透圧の計算:
【0272】
【数5】
【0273】
上式において、デルタTは純水と比較した当該物質の1%(w/V)溶液の凝固点降下を表し、Lisoは等張濃度での凝固点降下であり、及びMrは分子量である。Liso値は、異なる電解質に対して変動する(表11参照)。血清の凝固点降下は0.52℃(286mosmol/kgの浸透圧に等しい。)であるので、純水と比較した混合物の1%溶液の凝固点降下に対する値(デルタTmix)は、0.52℃を超えないはずである。高い分子量を有するアフェリモマブは、製剤の凝固点降下に対して実質的な影響を有さず、従って、計算には含まれなかった。
【0274】
【表11】
【0275】
これらの式を用いて、様々な濃縮物及び混合物が表12に記載されている浸透圧の計算値を与える。
【0276】
【表12】
【0277】
生理学的な浸透圧を維持するために、より高度に濃縮されたMAK195F溶液が使用された場合には、塩化ナトリウムの量を低下させる必要があった。元の塩化ナトリウム濃度は、8.8mg/mLであった。この研究において推定される賦形剤:MAK195F質量比を用いて(濃縮物12.4mg/mL中の25mM賦形剤)、タンパク質濃度を約130mg/mLに上昇させることができたが、但し、全ての塩化ナトリウムは製剤から除去された。これにより、約300mosmol/kgの浸透圧がもたらされた。
【0278】
まとめ
この研究は、噴霧乾燥を含む抗体粉末を調製するための典型的な方法を示す。具体的には、この例では、IgG断片;アフェリモマブ=MAK195F溶液を乾燥バルク材料へ転化した。様々な賦形剤及びプロセス条件をスクリーニングすることによって、保存時安定性と組み合わされたプロセス安定性を与える噴霧乾燥法が開発された。
【0279】
タンパク質の物理的又は化学的分解を検出することができる様々な方法(例えば、SEC及びDLSを介して可溶性及び不溶性凝集、DSCを介して熱的現象並びにカール・フィッシャー滴定を介して噴霧乾燥粉末の水分)を使用することによって安定性を分析した。幾つかのストレス因子によって引き起こされるように乾燥プロセスの間に分解が起こり、又は高温での長期保存の結果であった。IgG断片は、タンパク質に糖を添加することによって安定化された。乾燥及びその後の保存の間の安定化能に関して、トレハロース、ショ糖及びソルビトールを研究した。
【0280】
研究の第一部では、タンパク質濃縮物を性質決定した後、乾燥プロセスの間の濃縮物の感受性をチェックするために、一切賦形剤なしに噴霧乾燥した。さらに、正しいプロセスパラメータを見出すための検査系列を実施した。純粋な濃縮物を噴霧乾燥することは、タンパク質に損傷をもたらす。特に、その後の保存が計画された場合に、凝集の増加は大幅であった(約2%)。Tinを変動させることは、凝集を低下させるのに、又は最小の凝集が起こるプロセスパラメータを見出すのに役立つはずである。
【0281】
噴霧乾燥プロセスの間のタンパク質の損傷は、様々なストレス因子(例えば、熱、微粉化、剪断力)の相互作用によって引き起こされるようであった。これらのストレス因子は何れも、噴霧乾燥プロセスと同等のタンパク質の崩壊を単独では引き起こすことができなかった。
【0282】
10mMと150mMの間の様々な濃度のタンパク質濃縮物に、安定化する糖を添加した。液体供給物の固体含量は極めて高く、サイクロン分離装置は目詰まりする傾向があったので(これは、低い粉末収率をもたらした。)、150mMは不適切であるように見受けられた。賦形剤の10mM添加は、検査された全ての糖に関して不十分であった。最良の結果は、25mMの添加によって得られた(トレハロース及びショ糖に関しては、賦形剤:MAK195F=0.7:1の質量比、ソルビトールに関しては0.35:1の質量比に等しい。)。50mMは同等の結果をもたらすが、目的は、可能な程度まで添加物の量を最小化することであった。噴霧乾燥プロセスに対する安定化能を比較すると、トレハロースとショ糖は類似の結果をもたらす。ソルビトールは、二糖より少し劣るようであった。しかし、これは、小さな質量比では創設されず、さらなるソルビトールの添加が結果を改善しなかった。プロセス安定性に関しては、好ましくはトレハロース又はショ糖の25mMの添加が推奨される。
【0283】
25mM混合物がプロセス安定性のために最も効果的であったので、短期安定性検査(3ヶ月)のために25mM混合物を使用した。類似のプラセボ混合物及び液体濃縮物と一緒に、一般的に使用される3つの異なる天候(冷蔵庫:5℃、中欧:25℃/60%RH、東南アジア:45℃/75%RH)に噴霧乾燥粉末を曝露した。予想通り、液体濃縮物は高温の全てに耐えることができず、1ヶ月後には、著しいタンパク質の損傷がもたらされた(凝集、断片化及び光学的濁度)。賦形剤を加えた噴霧乾燥粉末は、3ヶ月にわたって良好な安定性を示した。トレハロース及びショ糖製剤は、40℃/75%RHで保存された場合に、大幅な損傷を受けたに過ぎない(2%の凝集増加)。凝集の小さな増加(0.5%)を除き、25℃/60%RHでさえ、粉末に影響を与えなかった。プロセス安定性に対する結果が示唆したように、ソルビトールは保存時にも最も弱い安定化剤であった。5℃及び25℃で保存された混合物は他の賦形剤とともに同様に安定であったが、40℃はソルビトール−タンパク質混合物に対する臨界的パラメータであった。40℃は混合物のTgを超えたので、タンパク質の固定化によって引き起こされる保存安定性はもはや保証され得ない。これは、この研究の何れの予備研究においても観察されなかった約12%の凝集の増加をもたらす。眼に見えない粒子及び濁りの測定は、満足できない結果をもたらす。これらの試料の多くは、視覚的な濁り又は凝固さえ示した。安定性研究の主要な問題は、粉末を保存するために使用したAl容器であった。Al容器は完全な水蒸気不透過性を示さなかったので、吸湿性粉末の残留水含量を一定に保つことができなかった。
【0284】
賢明な製剤を用いると、ほぼ全てのタンパク質変化を最小レベルにまで低下させることができた。大幅な変化をなお示す唯一のパラメータは濁度であった。保存プロセスではなく、噴霧乾燥プロセスが、濁度の増加をもたらす。より多くの賦形剤の添加又はより低い乾燥温度の使用によってこの増加を低下させるための試みは失敗した。約5NTU(濃縮物)から15ないし20NTU(噴霧乾燥混合物)への濁度の増加を避けることはできなかった。しかし、他の分析法は、タンパク質−糖製剤の噴霧乾燥の間に、大幅な変化を示さなかった。
【0285】
この研究の最後の部分では、噴霧乾燥機のより高い処理量を達成することを最終目標として、液体供給物中のタンパク質濃度を増加させた。50.6mg/mLのタンパク質濃度を用いる実験を行った。限外ろ過のプロセス及びより濃縮されたタンパク質溶液(糖添加物の同定された最良の質量比を有する。)の噴霧乾燥は、アフェリモマブタンパク質の安定性に対して実質的な影響を及ぼさなかった。多くの結果(より高い固体含量による粒子のきょう雑又は濁度を除く。)が濃縮物12.4mg/mLを用いた類似の実験と同等であった。100mg/mLの濃度の噴霧乾燥は、サイクロン出口の目詰まりを防ぐことができれば実行可能なはずである。元の緩衝液は十分な塩化ナトリウムを含有しており、塩化ナトリウムは安定化剤に対する交換で除去することができるので、低眼圧症又は高眼圧症のリスクをもたらさずに、より濃縮された粉末を非経口的に投与することができる。最大130mg/mLのタンパク質濃度が可能であり得る。
【0286】
抗体製剤の組成
先述のように、Buchi Mini−Spray Dryer B−191に対して、噴霧乾燥実験を行った。要約すれば、加熱装置及び乾燥チャンバーに入る前に、Luwa Ultrafilter2(ファイバーガラス;フィルタークラス:HEPA H13)を通して、乾燥空気をろ過した。全ての液体供給物は、蠕動式ポンプ(QLF=約3mL/分;シリコンチューブφ=3mm)によって乾燥チャンバーに輸送される前に、0.22μmフィルターユニットを通してろ過した。乾燥窒素(QAA=700L/h)を使用して、2つの液体ノズルによって微粉化を行った。噴霧乾燥後、得られた粉末を収集容器から回収し、ガラス容器(ブロモブチルゴム栓)中に満たし、パラフィルムで密封した。組成が、表13に要約されている。タンパク質の性質決定は、UV/VIS、SEC、IEC、PCS、DSC、XRD及びカール・フィッシャー法を使用することによって行った。
【0287】
【表13】
【0288】
上で論述されているように、製剤及びプロセスパラメータは、12mg/mLの濃度を使用し、モデル化合物としてMAK195Fを用いて評価した。図10は、噴霧乾燥されたMAK195F製剤に対するSEC物理的安定性データを図示する2つの棒グラフを含む:(A)ソルビトール、トレハロース及びショ糖(濃度=25mM)の効果並びに(B)40℃/75%RHでの3ヶ月の保存後のタンパク質凝集の量に対する安定化剤濃度の効果。図10Aに与えられているデータから、トレハロース及びショ糖が最も安定な産物を与えるのに対して、ソルビトールは十分な長期のタンパク質安定性を与えなかったことが明らかである。安定化剤の最小量は、賦形剤:タンパク質=0.7:1の質量比に等しい25mMで測定された(図10B参照)。図10Aでは、各グループ中の棒は、左から右に、それぞれ、MAK195F(バルク)、MAK195F+ソルビトール、MAK195F+トレハロース及びMAK195F+ショ糖を表す。図10Bでは、各グループ中の棒は、左から右に、それぞれ、ソルビトール、トレハロース及びショ糖を表す。
【0289】
12、50及び100mg/mLの範囲のタンパク質濃度を使用することによって、これらのパラメータは再現された。全ての製剤が許容可能な粉末を与えた。表14に示されている平均残留水分は、4.6重量%(MAK195F)及び5.5重量%(アダリムマブ)の間であり、したがって、1%を下回る典型値を有する凍結乾燥された製剤と比べて、かなり高かった。それにも関わらず、ガラス遷移温度はMAK195Fに関しては60℃で、完全な両抗体に対しては約70℃で測定され、少なくとも5℃の保存温度での適切な安定性を示唆した。これらの高濃度(100mg/mL)噴霧乾燥MAK195F、アダリムマブ及びABT−325製剤の予備的分析データが、図11に示されている。図11は、(A)SEC法を使用することによる物理的安定性に対する処理及び40℃/75%RHでの3ヶ月の保存の影響及び(B)200mMトレハロース溶液中の噴霧乾燥された高濃度MAK195F、アダリムマブ及びABT−325に関して、IEC法によって測定された化学的安定性(処理後に100%標準化された。)に対する影響。図11Aでは、各グループ中の棒は、左から右に、それぞれ、MAK195F(95mg/mL、噴霧乾燥)、アダリムマブ(100mg/mL、噴霧乾燥);ABT−325(100mg/mL、噴霧乾燥)及びABT−325(100mg/mL、凍結乾燥)を表す(ABT−325(100mg/mL、凍結乾燥)に対して、1ヶ月保存データが存在せず、MAK195F(95mg/mL、噴霧乾燥)に対して、3ヶ月保存データが存在しないことを除く。)。
【0290】
【表14】
【0291】
全ての検査された製剤に対するデータは、40℃で最長3ヶ月間、処理及び保存の間のタンパク質の許容される物理的安定性を示し、ABT−325凍結乾燥物と等しい。しかしながら、対応するPCSデータ(図示せず)は、タンパク質の特性に対する効果を示唆し、これは、さらに詳しく分析しなければならない。化学的安定性に関して、図11B中のデータは、標準的な凍結乾燥された製剤と比べて、噴霧乾燥された製剤に対して同等の結果を示した。図11Bでは、各グループ中のバーは、左から右に、それぞれ、ABT−325(100mg/mL、噴霧乾燥)、ABT−325(100mg/mL、凍結乾燥)及びアダリムマブ(100mg/mL、噴霧乾燥)を表す。
【0292】
まとめ
これは、最大100mg/mLまでの濃度で、mAb溶液から噴霧乾燥抗体粉末を一般的に首尾よく製造できることを示している。MAK195F、アダリムマブ及びABT−325に対して提示されたデータは、タンパク質の物理的又は化学的安定性に関して、プロセッシングの間にも、加速された安定性研究の間にも著しい効果を示さなかった。しかしながら、噴霧乾燥されたタンパク質の観察された多分散をより詳しく分析すべきである。
【0293】
さらに、長期保存を達成するために、製剤の中に安定化剤の十分な量が必要とされる。それにも関わらず、この技術の汎用性の故に、この技術はバルク薬物物質製剤に関して並びに新しい剤形及び投与経路に向けて興味深い展望を与える。
【0294】
参照による組み込み
本願を通じて引用され得る全ての引用されている参考文献(文献参考文献、特許、特許出願及びウェブサイトを含む。)の内容は、参照により、本明細書に明示的に組み込まれる。本発明の実施は、別段の記載がなければ、本分野において周知である噴霧乾燥及びタンパク質製剤の慣用技術を使用する。
【0295】
均等物
当業者は、定型的な実験操作のみを用いて、本明細書に記載されている発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識し、又は確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものとする。本願を通じて引用されている全ての参考文献、特許及び公開された特許出願の内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年1月15日に出願された米国仮特許出願61/021,298号(これらの内容の全体は各々、参照により、本明細書に組み込まれる。)に対する優先権の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
医薬タンパク質製剤の基本原則は、ある種の不安定性を克服しなければならないことである。タンパク質の分解経路は2つの異なるクラスに分けることが可能であり、化学的不安定性と物理的不安定性が含まれる。化学的不安定性は、結合形成又は切断を通じて、タンパク質の修飾をもたらす。化学的不安定性の問題の例には、脱アミド化、ラセミ化、加水分解、酸化、β脱離及びジスルフィド交換が含まれる。他方、物理的不安定性は、タンパク質中の共有的変化をもたらさない。むしろ、物理的不安定性は、タンパク質の高次構造(二次及びそれ以上)の変化を伴う。これらには、変性、表面への吸着、凝集及び沈降が含まれる(Manning et al.,Pharm.Res.6,903(1989)。
【0003】
Watson及びCrick(1953)によるDNA−構造の発見及びヒトゲノム配列決定プロジェクトのその後の完了後、タンパク質化学への関心は、極めて迅速に高まった。疾病、組織又は発達における遺伝子及びそのタンパク質産物間の関係は、特に興味深かった。「Next generation pharmaceutical,Issue 6(GDS publishing Ltd.,2006」。その間の数十年間、タンパク質を基礎とする医薬の数は極めて急速に増加した。今日、ある種の疾患及び疾病を緩和又は比喩させるために、ある種のタンパク質又はペプチドを単離又は合成し、修飾及び送達することが可能である。タンパク質を基礎とする医薬に対する主な適用経路は、なお液体製剤の静脈内注射であるが、他の経路も検査され、使用されてきた。
【0004】
タンパク質溶液を固体形態へ転換するために、多くの努力が行われてきた。粉末化された組成物は、多くの利点を与える(例えば、ずっと小さな空間及び重量を伴うことによって、タンパク質のより多量を保存又は輸送することができ、保存及び搬送時に液体製剤を冷却するために必要とされるエネルギー消費よりエネルギー消費が少ない。)。粉末化された組成物は、吸入(Tzannis et al.,国際特許公開WO2005067898)又は無針注射(Burkoth,The Drug Delivery Companies Report76−78(2001))などの送達の新しい経路も促進する。とりわけ噴霧乾燥、スプレー凍結乾燥、凍結乾燥又は超臨界流体又は(部分的)有機溶液からの沈殿など、水性タンパク質溶液から粉末を作製するための幾つかの方法が使用されてきた。「Winters et al.,Journal of Pharm.Sci.85(6):586−594(1996)」。極めて高価であり、時間がかかる凍結乾燥とは異なり、噴霧乾燥は、生物医薬のための新たな送達形態(吸入など)を開発するための機会を与える、タンパク質が搭載された固体を作製する効果的で効率的な手段である。「Maa et al.,Pharm.Res.16(2):249−254(1999)」。
【0005】
純粋なタンパク質溶液を噴霧乾燥させることは、より低品質の医薬を自動的にもたらす部分的不活化を引き起こすリスクを有する。例えば、不活化は、変性若しくは凝集などの、高温、剪断ストレス及び大きな相界面(液体/気体)によるプロセス関連の物理的ストレスによって、又は化学的反応(例えば、加水分解又は酸化)によって引き起こされ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005/067898号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Manning et al.,Pharm.Res.6,903、1989年
【非特許文献2】Watson and Crick、1953年
【非特許文献3】Next generation pharmaceutical,Issue 6(GDS publishing Ltd.,2006
【非特許文献4】Burkoth,The Drug Delivery Companies Report、2001年、pp.76−78
【非特許文献5】Winters et al.,Journal of Pharm.Sci.85(6)、1996年、pp.586−594
【非特許文献6】Maa et al.,Pharm.Res.16(2)、1999年、pp.249−254
【発明の概要】
【0008】
本発明は、タンパク質及び賦形剤を含むタンパク質製剤を噴霧乾燥させるための方法に関する。具体的には、本発明の方法及び組成物は、目的のタンパク質及び賦形剤を含有する溶液が噴霧乾燥される噴霧乾燥法を基礎とする。
【0009】
本発明の製剤は、標準的な溶液及び凍結乾燥された製剤に比べて多くの利点を有する。特に、本発明の噴霧乾燥法は、(例えば、凍結乾燥された組成物と比べて)方法に関連する分解を最小限に抑え、周囲温度でのタンパク質の安定性を増加させる。さらに、噴霧乾燥された製剤は輸送することもより容易であり、高濃度製剤を作製し、タンパク質の生物学的利用可能性を改善し、局所的放出(例えば、経肺送達)及び徐放(例えば、リポソームの及び(ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド))PLGA被覆された小球体)製剤を開発するのに有用である。
【0010】
目的のあらゆるタンパク質及び賦形剤を含む安定な粉末化された組成物又は製剤を提供するために、本発明の方法及び組成物を使用し得る。一態様において、本発明の方法及び組成物は、インビボ及びインビトロ用に使用されるものなどの抗体及びその断片に対して使用される。さらなる実施形態において、抗体断片は免疫グロブリンG(IgG)断片である。
【0011】
さらに、タンパク質及びペプチド製剤を調製するために必要とされる多段階工程の精製及び濃縮法は、製剤の正確な組成がロットごとに変動し得るように、しばしば、組成物に変動を導入する。連邦規則は、製造の場所又はロット番号に関わらず、薬物組成物がその製剤中で高度に一貫していることを要求する。本発明の方法は、正確な量で賦形剤が添加される粉末化されたタンパク質の製剤を作製するために使用することができ、賦形剤の正確な濃度を有するタンパク質製剤の作製を可能にする。
【0012】
一態様において、本発明は、タンパク質又はペプチド粉末が調製されるように、タンパク質又はペプチドの約50mg/mL超及び少なくとも1つの賦形剤を含む溶液を噴霧乾燥させることを含むタンパク質又はペプチド粉末を調製するための方法を提供する。幾つかの実施形態において、溶液は、タンパク質又はペプチドの約100mg/mL超を含む。タンパク質は、二重可変結合ドメイン(DVD)結合タンパク質でもあり得る。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記方法は、抗体粉末が調製されるように、抗体又はその抗原結合部分の約50mg/mL超及び少なくとも1つの賦形剤を含む溶液を噴霧乾燥することを含む、抗体粉末を調製することを含む。幾つかの実施形態において、溶液は、抗体又はその抗原結合部分の約100mg/mL超を含む。抗体又はその抗原結合部分は、免疫グロブリンG(IgG)、例えば、MAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147であり得る。幾つかの実施形態において、粉末は、周囲温度及び湿度で、少なくとも3ヶ月間安定であり、及び/又は少なくとも3ヶ月間、40℃で安定である。
【0014】
賦形剤は、例えば、トレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物を含み得る。幾つかの実施形態において、溶液は、約0.27:1.0と約2.8:1.0の間、約0.27:1.0と約1.4:1.0の間、約0.27:1.0と約0.7:1.0の間又は約0.7:1.0の比の賦形剤:タンパク質比を含む。幾つかの実施形態において、溶液は、約20と約30mM賦形剤又は約25mM賦形剤を含む。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記方法は、約100℃と約180℃の間の注入空気温度(Tin)及び約60℃と約110℃の間の排出空気温度(Tout)で噴霧乾燥させることを含む。ある種の実施形態において、前記方法は、約130℃のTin及び約80℃のToutでの噴霧乾燥を含む。前記方法は、例えば、溶液液滴を形成させるために溶液を微粉化し、粉末を形成させるために気体で液滴を乾燥させること、及び気体から粉末を回収することを含み得る。前記方法は、圧力ノズル微粉化装置を用いて溶液を微粉化すること並びに/又はサイクロンを用いて、抗体粉末を気体から分離及び回収することを含み得る。
【0016】
前記方法は、医薬として許容される担体中に抗体粉末を包埋させることも含み得る。医薬として許容される担体は、非経口、経口、経腸及び/又は局所投与に対して許容され得る。医薬として許容される担体は、水などの液体を含み得る。
【0017】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載されている方法の何れかに従って調製された、抗体又はその抗原結合部分の有効量を含む医薬調製物に関する。さらに別の態様において、本発明は、本明細書に記載されている方法の何れかに従って調製された、タンパク質又はペプチドの有効量を含む医薬調製物に関する。
【0018】
さらに別の態様において、本発明は、タンパク質又はペプチド及び賦形剤を含み、組成物が約6%未満の残留水分、幾つかの実施形態では、約4%又は3%未満の残留水分を含む安定な粉末化された組成物を提供する。タンパク質又はペプチドは、例えば、MAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147などのIgG抗体又はその抗原結合部分などの抗体又はその抗原結合断片を含み得る。タンパク質は、二重可変結合ドメイン(DVD)結合タンパク質でもあり得る。
【0019】
幾つかの実施形態において、粉末化された組成物は、周囲温度及び湿度で、少なくとも3ヶ月間安定であり、及び/又は少なくとも3ヶ月間、約40℃で安定である。幾つかの実施形態において、タンパク質若しくはペプチド又は抗体若しくはその抗原結合部分は、その生物活性を保持する。
【0020】
賦形剤は、トレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物を含み得る。組成物は、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0又は約0.7:1の賦形剤(例えば、トレハロース及び/又はショ糖):抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し得る。組成物は、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0、約0.7:1又は約0.35:1の賦形剤(例えば、ソルビトール):抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し得る。
【0021】
さらに別の態様において、本発明は、医薬として許容される担体、例えば、水などの液体と本発明の安定な粉末化された組成物の有効量を混合することを含む医薬組成物を製造する方法を提供する。幾つかの実施形態において、医薬組成物は、非経口、経口、経腸又は局所投与のために適合される。前記方法は、粉末化された組成物の安定性に著しく影響を及ぼさずに、周囲温度を著しく上回る温度(例えば、溶融押出)で安定な粉末化された組成物を処理することをさらに含むことができる。
【0022】
ある種の実施形態において、前記方法は、徐放又は遅延放出医薬組成物を形成するために、例えば、PLGAなどのポリマーで粉末化された組成物を被覆することを含む。これに加えて又はこれに代えて、前記方法は、腸溶コーティングで被覆することを含み得る。幾つかの実施形態において、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の活性は、沈殿、変性又は有機溶媒、例えば、PEG400、エタノール、DMSO、NMP又は氷酢酸による沈殿、変性又は酸化に対して賦形剤により保護される。
【0023】
現在、ほぼ全ての企業が凍結されたバルク薬物組成物を使用しており、凍結及び融解条件の再現性、バルク薬物物質内の賦形剤の予想されない結晶化、凍結乾燥の間の緩衝液のpHシフト及び融解による長いラグタイム(例えば、約37℃の温度の2リットル容器)などの問題に直面している。噴霧乾燥されたバルク薬物組成物を用いることは、これらの問題を回避することができる。さらに、噴霧乾燥されたバルク薬物組成物は、最終薬物産物組成物の配合の間の取り扱いが極めて便利であり、幅広い濃度範囲の製造を可能にする。さらに、水のみが添加される噴霧乾燥された薬物組成物は、古典的な配合を代替し得、従って、出力量を増加させつつ、薬物産物製造の間のリスクを減少させ得る。さらに、完全長/完全抗体は、モノクローナル抗体(mAb)断片と比べた物理的分解をより受けにくい場合があり得る。さらに、最大100mg/mLまでタンパク質濃度を増加させても、物理的又は化学的分解の増加は通例殆ど又は全く存在しない。より高い濃縮された溶液は方法の効率性を増加させるので、100mg/mLタンパク質の濃度の使用が有益である。
【0024】
本明細書に開示されている方法及び組成物のこれらの及び他の特徴及び利点は、添付の図面と組み合わせて、以下の詳細な説明を参照することによって、より完全に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】実施例で使用されているBuchi噴霧乾燥機B−191を図示する。
【図2】異なるソルビトール−MAK混合物の収率及びTgを図示する。
【図3】様々なソルビトール−MAK混合物の凝集、結晶性及び水含量を図示する。
【図4】ソルビトール−MAK混合物3000x(a)25mM(b)100mMの走査型電子顕微鏡(SEM)画像を与える。
【図5】様々なソルビトール−MAK混合物の収率及びTgを図示している。
【図6】様々なトレハロース−MAK混合物の凝集、結晶性及び水含量を図示する。
【図7】トレハロース−混合物3000x(a)10mMトレハロース;(b)100mMトレハロース及び(c)純粋なトレハロース噴霧乾燥のSEM画像を与える。
【図8】様々なショ糖−MAK混合物の収率及びTgを図示している。
【図9】様々なショ糖−MAK混合物の凝集、結晶性及び水含量を図示する。
【図10】噴霧乾燥されたMAK195F製剤に対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)物理的安定性データを図示する。(A)ソルビトール、トレハロース及びショ糖の効果並びに(B)タンパク質凝集の量に対する安定化剤濃度の効果。
【図11】200mMトレハロース溶液中の噴霧乾燥された高濃度MAK195F、アダリムマブ及びABT−325に対する(A)物理的安定性並びに(B)化学的安定性に対する、処理及び3ヶ月の保存の効果を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
I.定義
本発明をより容易に理解できるようにするために、まず、ある種の用語を定義する。
【0027】
本明細書において使用される「酸性成分」という用語は、酸性pH(すなわち、7.0未満)を有する溶液を含む因子を表す。酸性成分の例には、リン酸、塩酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、グリコール酸及びフマル酸が含まれる。
【0028】
本明細書において使用される「抗酸化剤」という用語は、酸化を阻害し又は抗酸化剤共力剤として作用し、従って、酸化的プロセスによる調製物の崩壊を防ぐために使用される因子を意味するものとする。このような化合物には、例として、限定なしに、αトコフェロール(ビタミンE)、アスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビル、クエン酸、ブチル化されたヒドロキシアニソール、ブチル化されたヒドロキシトルエン、エデト酸(EDTA、エデタート)及びその塩、ヒドロリン酸、リンゴ酸、モノチオグリセロール、プロピオン酸、没食子酸プロピル、メチオニン、アスコルビン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、硫化ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム並びに当業者に公知の他の化合物が含まれる。
【0029】
本明細書に別段の記載がなければ、「組成物」及び「製剤」という用語は互換的に使用される。
【0030】
「賦形剤」という用語は、例えば、バルク特性を変化させて所望の稠度を与えるために、安定性を向上させるために及び/又は浸透圧を調整するために製剤に添加され得る因子を表す。一般的に使用される賦形剤の例には、安定化剤、糖、ポリオール、アミノ酸、界面活性剤、キレート剤及びポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
組成物、例えば水性製剤に関して本明細書で使用される「医薬」という用語は、疾病又は疾患を治療するのに有用なものである。
【0032】
「タンパク質」という用語は、二次及び/又は三次及び/又は四次構造のより高次のレベルを生成するのに、鎖長が十分であるアミノ酸の配列を含むものとする。これは、このような構造を持たない「ペプチド」又は他の小分子量分子からは区別されるべきである。本明細書において使用される定義に包含されるタンパク質の例には、治療用タンパク質が含まれる。「治療活性を有するタンパク質」又は「治療用タンパク質」は、治療目的のために、すなわち、対象中の疾患を治療するために使用され得るタンパク質を表す。治療用タンパク質は治療目的のために使用され得るが、前記タンパク質はインビトロ研究のためにも使用され得るので、本発明はこのような用途に限定されるものではないことを銘記すべきである。好ましい実施形態において、治療用タンパク質は、融合タンパク質又は抗体若しくはその抗原結合部分である。一実施形態において、本発明の方法及び組成物は、異なるアミノ酸配列を有する2つのタンパク質として定義される少なくとも2つの異なるタンパク質を含む。追加の異なるタンパク質は、タンパク質の分解産物を含まない。
【0033】
「タンパク質粉末」という用語は、本発明の噴霧乾燥法に従って作製されたタンパク質を含む組成物を表す。「抗体粉末」は、本発明の噴霧乾燥法に従って作製された抗体又はその抗原結合部分を含む組成物を表す。
【0034】
「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物活性を有効とし得る形態であり、従って、治療用途のために対象に投与され得る調製物を表す。
【0035】
「溶液」という用語は、液体内の少なくとも1つの賦形剤又はタンパク質若しくはペプチドの混合物を表す。溶液は、溶液内の溶解されたタンパク質分子、コロイド状の溶解されたタンパク質分子、分散されたタンパク質凝集物若しくは結晶若しくは沈殿若しくは懸濁液又はこれらの組み合わせを含み得る。
【0036】
「安定な」組成物とは、処理の間及び/又は保存時に、その中のタンパク質が、例えば、その物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を実質的に保持する製剤である。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が本分野において利用可能であり、例えば、「Peptide and Protein Drug Delivery,247−301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)」及び「Jones,A.Adv.Drug Delivery Rev.10:29−90(1993)」に概説されている。一実施形態において、タンパク質の安定性は、溶液中の単量体タンパク質のパーセントに従って測定され、分解された(例えば、断片化された)及び/又は凝集されたタンパク質の低いパーセントを有する。例えば、安定なタンパク質を含む水性製剤は、少なくとも95%の単量体タンパク質を含み得る。あるいは、本発明の水性組成物は、5%以下の凝集物及び/又は分解されたタンパク質を含み得る。
【0037】
「安定化剤」という用語は、安定性を向上させ又はその他強化する賦形剤を表す。安定化剤には、α−リポ酸、α−トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ベンジルアルコール、亜硫酸水素塩、ホウ素、ブチル化されたヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化されたヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸及びそのエステル、カロテノイド、クエン酸カルシウム、アセチル−L−カルニチン、キレート剤、コンドロイチン、硫酸コンドロイチン、クロム、クエン酸、補酵素Q−10、EDTA(エチレンジアミン四酢酸;エデト酸二ナトリウム)、エリソルビン酸、フマル酸、没食子酸アルキル、グルコサミン(キトサン、ヒアルロン酸ナトリウム)、リンゴ酸、メタ重亜硫酸塩、没食子酸プロピル、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、酒石酸、チオサルファート、チオグリセロール、トコフェロール及びそのエステル、例えば、酢酸トコフェラール、コハク酸トコフェロール、トコトリエナール、d−α−トコフェロールアセタート、ビタミンA及びそのエステル、ビタミンE及びそのエステル、例えば、ビタミンEアセタート並びにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書において使用される「浸透圧修飾物質」という用語は、液体製剤の浸透圧を調整するために使用することができる一又は複数の化合物を意味するものとする。適切な浸透圧修飾物質には、グリセリン、ラクトース、マニトール、デキストロース、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、ソルビトール、トレハロース、ショ糖、ラフィノース、マルトース及び当業者に公知の他の浸透圧修飾物質が含まれる。一実施形態において、液体製剤の浸透圧は、血液又は血漿の浸透圧とほぼ同じである。
【0039】
本明細書において使用される「抗体」という用語には、完全な抗体及びあらゆるその抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又は一本鎖が含まれる。「抗体」は、ジスルフィド結合によって相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質又はその抗原結合タンパク質を一般に表す。「抗体」という用語は、単離された天然に存在するその変形物も含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される。)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される。)及び軽鎖定常領域から構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLから構成される。VH及びVL領域は、より保存された領域(フレームワーク領域(FR)と称される。)に介在された超可変性の領域(相補性決定領域(CDR)と称される。)へさらに細分することができる。各VH及びVLは、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へ配置された3つのCDRと4つのFRから構成される。重及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第一成分(C1q)など、宿主の組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0040】
本明細書において使用される抗体の「抗原結合部分」(又は、単に「抗体部分」)という用語は、抗原(例えば、TNFα、IL−12、IL−13)へ特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ又はそれ以上の断片を表す。抗体の抗原結合機能は、完全長抗体の断片によって実行され得る。抗体の「抗原結合部分」内に包含される結合断片の例には、(i)Fab断片(VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価断片);(ii)F(ab’)2断片(ヒンジ領域において、ジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片);(iii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)VH又はVLドメインからなるdAb断片(Ward et al,(1989)Nature341:544−546);並びに(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインVL及びVHは別個の遺伝子によってコードされているが、VL及びVH領域が対合して一価の分子を形成している単一のタンパク質鎖(一本鎖Fv(scFv)として知られる。)として2つのドメインVL及びVHを作製することを可能にする合成リンカーによって、組み換え法を用いて連結することができる(例えば、Bird et al.(1988)Science242:423−426;及びHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−5883参照)。このような一本鎖抗体も、抗体の「抗原結合部分」という用語に包含されるものとする。これらの抗体断片は、当業者に公知の慣用技術を用いて取得され、完全状態の抗体と同じ様式で有用性に関して断片がスクリーニングされる。本発明の一実施形態において、抗体断片は、Fab、Fd、Fd’、一本鎖Fv(scFv)、scFva及びドメイン抗体(dAb)からなる群から選択される。
【0041】
さらに、抗体又はその抗原結合部分は、抗体又は抗体部分の1つ又はそれ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有会合によって形成されるより大きな免疫接着分子の一部であり得る。これらの他のタンパク質又はペプチドは、抗体若しくはその抗原結合部分の精製を可能にする又は互いに若しくは他の分子との会合を可能にする官能性を有し得る。従って、このような免疫接着分子の例には、四量体の一本鎖可変断片(scFv)分子を作製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas6:93−101)及び二価の及びビオチン化されたscFv分子を作製するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジンタグの使用(Kipriyanov et al.(1994)Mol.Immunol.31:1047−1058)が含まれる。Fab及びF(ab’)2断片などの抗体部分は、それぞれ、完全抗体のパパイン又はペプシン消化などの慣用技術を用いて、完全抗体から調製することができる。さらに、抗体、抗体部分及び免疫接着分子は、標準的な組換えDNA技術を用いて取得することができる。
【0042】
同属の対若しくは群を形成する構造のファミリーに属し、又はこのようなファミリーに由来し、及びこの特徴を保持する場合に、2つの抗体ドメインは、「相補的」である。例えば、抗体のVHドメイン及びVLドメインは相補的である。2つのVHドメインは相補的でなく、及び2つのVLドメインは相補的でない。相補的ドメインは、T細胞受容体のVα及びVβ(又はγ及びδ)ドメインなど、免疫グロブリンスーパーファミリーの他のメンバー中に見出され得る。
【0043】
「ドメイン」という用語は、タンパク質の残部とは独立に、その四次構造を保持する折り畳まれたタンパク質構造を表す。一般に、ドメインは、タンパク質の分離した機能特性に必要とされ、多くの事例で、タンパク質の及び/又はドメインの残部の機能を失わせることなく、他のタンパク質に付加され、除去され、又は転移され得る。単一の抗体可変ドメインは、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む折り畳まれたポリペプチドドメインを意味する。従って、単一の抗体可変ドメインには、完全な抗体可変ドメイン並びに例えば、抗体可変ドメインに特徴的でない配列によって1つ若しくはそれ以上のループが置換されている修飾された可変ドメイン、又は末端切断されている若しくはN末端若しくはC末端伸長を含む抗体可変ドメイン及び完全長ドメインの結合活性及び特異性を少なくとも部分的に保持する可変ドメインの折り畳まれた断片が含まれる。
【0044】
本発明の可変ドメインは、ドメインの群を形成するために組み合わされ得る。例えば、相補性ドメインが組み合わされ得る(VHドメインと組み合わされているVLドメインなど)。非相補的ドメインも組み合わされ得る。ドメインは共有又は非共有的手段によるドメインの連結など、多数の方法で組み合わされ得る。
【0045】
「dAb」又は「ドメイン抗体」は、抗原を特異的に結合する単一の抗体可変ドメイン(VH又はVL)ポリペプチドを表す。
【0046】
本明細書において使用される「抗原結合領域」又は「抗原結合部位」という用語は、抗原と相互作用し、抗原に対する抗体の特異性及び/又は親和性を抗体に付与するアミノ酸残基を含有する、抗体分子の一部又はその抗原結合部分を表す。
【0047】
「エピトープ」という用語は、抗体の抗原結合領域の1つ又はそれ以上において、抗体によって認識され得、及び抗体によって結合され得るあらゆる分子の部分を表すものとする。本発明において、第一及び第二の「エピトープ」は、同一でなく及び単一の一重特異的抗体又はその抗原結合部分によって結合されないエピトープであると理解される。
【0048】
「組換え抗体」という用語は、宿主細胞中に形質移入された組換え発現ベクターを用いて発現された抗体、組換えコンビナトリアル抗体ライブラリーから単離された抗体、ヒト免疫グロブリン遺伝子に関して遺伝子導入された動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287−6295)又は他のDNA配列への特定の免疫グロブリン遺伝子配列(ヒト免疫グロブリン遺伝子配列など)のスプライシングを含むあらゆる他の手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離された抗体など、組換え手段によって調製され、発現され、作製され、又は単離された抗体を表す。組換え抗体の例には、キメラ抗体、CDR移植された抗体及びヒト化抗体が含まれる。
【0049】
「ヒト抗体」という用語は、例えば、Kabat他(Kabat,et al.(1991)Sequences of Proteins Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242参照)によって記載されているように、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に対応し又は由来する可変及び定常領域を有する抗体を表す。しかしながら、本発明のヒト抗体は、例えば、CDR中に、特にCDR3中に、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロで無作為若しくは部位特異的突然変異導入によって又はインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。
【0050】
本発明の組換えヒト抗体は、可変領域を有し、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する定常領域も含み得る(Kabat,et al.(1991)Sequences of Proteins Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242参照)。しかしながら、ある種の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(又は、ヒトIg配列に対して遺伝子導入された動物を使用する場合には、インビボ体細胞突然変異誘発)に供され、従って、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、関連するが、インビボにおいて、ヒト抗体生殖系列レパートリー内に天然には存在しない場合があり得る配列である。ある実施形態において、しかしながら、このような組換え抗体は、選択的突然変異誘発又は逆変異又は両者の結果である。
【0051】
「逆変異」という用語は、ヒト抗体の体細胞的に変異されたアミノ酸の幾つか又は全部を相同な生殖系列抗体配列由来の対応する生殖系列残基で置換する方法を表す。本発明のヒト抗体の重及び軽鎖配列は、最高の相同性を有する配列を同定するために、VBASEデータベース中の生殖系列配列と別個に並置される。このような異なるアミノ酸をコードする所定のヌクレオチド位置を変異させることによって、本発明のヒト抗体中の差は生殖系列配列に復帰される。このようにして逆変異のための候補として同定された各アミノ酸の役割は、抗原結合における直接又は間接的役割に関して調査されるべきであり、ヒト抗体のあらゆる望ましい特徴に影響を与えることが変異後に見出された何れのアミノ酸も、最終のヒト抗体中に含まれるべきでない。逆変異に供されるアミノ酸の数を最小限に抑えるために、第二の生殖系列配列が問題のアミノ酸の両側で少なくとも10個、好ましくは12個のアミノ酸に関して本発明のヒト抗体の配列と同一及び同一直線上である限り、最も近い生殖系列配列と異なるが、第二の生殖系列配列中の対応するアミノ酸と同一であることが明らかとなったアミノ酸位置は残存することができる。逆変異は、抗体最適化のあらゆる段階において行われ得る。
【0052】
「キメラ抗体」という用語は、ヒト定常領域に連結されたマウス重及び軽鎖可変領域を有する抗体など、ある種から得られる重及び軽鎖可変領域並びに別の種から得られる定常領域配列を含む抗体を表す。
【0053】
「CDR移植抗体」という用語は、マウスCDR(例えば、CDR3)の1つ又はそれ以上がヒトCDR配列で置換されているマウス重及び軽鎖可変領域を有する抗体など、ある種に由来する重及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVLのCDR領域の1つ又はそれ以上の配列が別の種のCDR配列で置換されている抗体を表す。
【0054】
「ヒト化抗体」という用語は、ヒト以外の種(例えば、マウス)由来の重及び軽鎖可変領域配列を含むが、VH及び/又はVL配列の少なくとも一部がより「ヒト様」に改変されている、すなわち、ヒト生殖系列可変配列により類似している抗体を表す。ヒト化抗体の1つの種類は、対応する非ヒトCDR配列を置換するために、ヒトCDR配列が非ヒトVH及びVL配列中に導入されているCDR移植抗体である。
【0055】
本発明の様々な態様が、以下の節において、さらに詳しく記載されている。
【0056】
II.本発明の方法
本発明の方法及び本発明の得られた組成物は、薬物物質の搬送及び/又は流通に関して複数の利点をもたらす(例えば、調製物は軽量であり、周囲温度において安定である。)。薬物の配合及び/又は製造に関しても利点が存在する(例えば、調節された速度でのバルク溶液の長い融解はない。)。所望の濃度に十分な量で本発明の乾燥タンパク質粉末を容易に秤量し、水などの所望の賦形剤と混合又は配合することができる。タンパク質の沈降物又はタンパク質の結晶懸濁物の分離及び乾燥も、慣用の調製物のように必要でない。高濃度製剤、改善された生物学的利用可能性、局所的放出(例えば、経肺送達)、徐放(例えば、リポソーム及びPLGA被覆された小球体)並びに経口及び局所を含む様々な方法で投与することができる新しい固体又はハイドロゲルタンパク質剤形を達成する能力に関して、薬物産物の開発に関してさらなる利点が存在する。従って、幾つかの実施形態において、前記方法は、さらなる処理、例えば、被覆された徐放組成物、リポソーム、PLGA被覆された小球体中への粉末化された組成物の取り込み、溶融押し出しによる賦形剤マトリックス内への取り込みなども含む。得られた組成物、例えば、徐放又は標的化された組成物及び/又は代替的投与経路(例えば、経口、皮膚及び経腸投与)を可能にする組成物も、本発明のさらなる実施形態である。別の利点は、旧来の調製物より高い温度で、本発明の組成物を処理できることである。例えば、粉末は、MELTREX溶融押し出し技術などの溶融押し出し技術によって処理することができる。
【0057】
一態様において、本発明は、1つ又はそれ以上のタンパク質又はペプチドを含む安定な粉末を効率的に及び効果的に調製する方法を提供する。ある実施形態において、タンパク質又はペプチドは、抗体及び/又はその抗原結合部分である。粉末を調製するための方法は、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の溶液を噴霧乾燥することを含む。例えば、溶液は、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の少なくとも約50mg/mLを含み得る。さらなる実施形態において、溶液は異なる濃度を有することができ、例えば、さらに濃縮されることができ、例えば、溶液はタンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の少なくとも約40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mL、130mg/mL、150mg/mL、180mg/mLなどを含み得る。溶液は、1つ又はそれ以上の賦形剤も含み得る。前記方法は、例えば、限外ろ過を含むあらゆる公知の方法によって溶液を濃縮し又はさらに濃縮することを含み得る。タンパク質又はペプチドは、あらゆる適切なタンパク質又はペプチドであり得る。タンパク質は、抗体又はその抗原結合部分、例えば、免疫グロブリンG(IgG)抗体又はその抗原結合部分であり得る。ある種の実施形態において、抗体又はその抗原結合部分は、MAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147である。
【0058】
幾つかの実施形態において、溶液は賦形剤を含む。適切な賦形剤には、トレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。前記方法は、溶液又は粉末に、酸性成分、抗酸化剤及び/又は浸透圧調整物質を添加することをさらに含み得る。
【0059】
溶液は、約15と約140mMの間又は約20と約30mMの間のを含み得る。ある種の実施形態において、溶液は約25mMの賦形剤を含む。幾つかの実施形態において、溶液は、約0.27:1.0と約2.8:1.0の間、約0.27:1.0と約1.4:1.0の間、約0.27:1.0と約0.7:1.0の間の賦形剤:タンパク質比を含む。ある実施形態において、溶液は約0.7:1.0の賦形剤:タンパク質比を含む。
【0060】
幾つかの実施形態において、水性タンパク質製剤の高い濃度に関わらず、溶液はタンパク質凝集物の低いパーセントを有する。一実施形態において、水及びタンパク質(例えば、抗体)の高濃度を含む水溶液は、界面活性剤又は賦形剤の他の種類の不存在下でさえ、約5%未満のタンパク質凝集物を含有する。一実施形態において、溶液は約7.3%以下の凝集タンパク質を含む。溶液は約5%以下の凝集タンパク質を含み、溶液は約4%以下の凝集タンパク質を含み、溶液は約3%以下の凝集タンパク質を含み、溶液は約2%以下の凝集タンパク質を含み、又は溶液は約1%以下の凝集タンパク質を含む。一実施形態において、溶液は少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の単量体タンパク質を含む。上記濃度の中間の範囲、例えば、少なくとも約98.6%の単量体タンパク質、約4.2%以下の凝集タンパク質も、本発明の一部であることが意図される。さらに、上記値の何れかの組み合わせを上限及び/又は下限として用いる値の範囲も含まれるもとする。
【0061】
幾つかの実施形態において、注入空気温度(Tin)は、約105℃と約175℃の間、約130℃と約155℃の間、約120℃と約160℃の間又は約125℃と約160℃の間である。ある実施形態において、Tinは約130℃である。幾つかの実施形態において、排出空気温度(Tout)は、約60℃と約112℃の間、約60℃と約90℃の間、約70℃と約90℃の間又は約75℃と約85℃の間である。ある種の実施形態において、Toutは、約80℃である。
【0062】
幾つかの実施形態において、本発明の方法は、約100℃と約180℃の間の注入空気温度(Tin)及び約60℃と約110℃の間の排出空気温度(Tout)で噴霧乾燥することを含む。ある実施形態において、前記方法は約130℃のTin及び約80℃のToutで噴霧乾燥することを含む
幾つかの実施形態において、得られた粉末化された組成物の残留水分含量は、約1%と約3%の間、約1.5%と約2.5%の間、約1.4%と約2%の間、約4%と約6%の間又は約4.5%と約5%の間である。別の実施形態において、粉末化された組成物は約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%又は7%の残留水分を含む。
【0063】
一実施形態において、粉末は、少なくとも3ヶ月間、周囲温度及び湿度で安定である。幾つかの実施形態において、粉末は、周囲温度及び湿度で、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年又は5年間安定である。他の実施形態において、粉末は、40℃で少なくとも3ヶ月安定である。さらなる実施形態において、粉末は、40℃で少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年又は5年間安定である。
【0064】
幾つかの実施形態において、噴霧乾燥は、溶液液滴を形成するために溶液を微粉化すること、粉末を形成するために気体で液滴を乾燥させること及び気体から粉末を回収することを含む。溶液は、例えば、圧力ノズル微粉化装置を用いて微粉化することができる。粉末は、例えば、サイクロンを用いて回収することができる。噴霧乾燥の典型的な方法は、本明細書中に論述及び例示されている。
【0065】
別の態様において、本発明は、粉末を調製するための本明細書に記載されている方法のいずれかを含むことができ、及び医薬として許容される担体と粉末を混合する(例えば、包埋又は溶解する)ことをさらに含む医薬調製物を調製する方法を提供する。医薬として許容される担体は、非経口、経口、経腸又は局所投与に対して許容されるあらゆる担体であり得る。担体は、固体、半固体又は液体(例えば、水)又はこれらの組み合わせであり得る。
【0066】
幾つかの実施形態において、前記方法は、医薬として許容される担体中の抗体又はその抗原結合部分粉末を溶解することを含む。医薬として許容される担体は、例えば、非経口投与に対して許容され得、例えば、水を含み得る。前記方法は、1つ又はそれ以上の酸性成分、抗酸化剤及び/又は浸透圧調整物質を医薬組成物に添加することをさらに含み得る。これに加えて又はこれに代えて、本発明の医薬組成物に、適切な添加物、例えば、緩衝液、粘度調整物質、着香剤、着色剤などを添加することができる。
【0067】
前記方法は、粉末化された組成物の安定性に対して著しく影響を及ぼすことなく、周囲温度を上回る温度で本発明の安定な粉末化された組成物をさらに処理することを含み得る。例えば、前記方法は、安定な粉末化された組成物を溶融押し出しすることを含み得る。
【0068】
幾つかの実施形態において、例えば、別個の粒子若しくは粒子の凝集物が被覆されるように、及び/又は粒子の複合材料、例えば、圧縮された錠剤が被覆されるように、1つ又はそれ以上のコーティングが粉末化された組成物に付与される。コーティングには、本分野において一般的に使用され及び知られているあらゆるコーティングが含まれ得る。このようなコーティングは、徐放又は遅延放出医薬組成物を形成するために、PLGAなどのポリマーを含み得る。コーティングは、腸溶コーティングであり得、又は腸溶コーティングを含み得る。組成物は、例えば、ゼラチンカプセル中に封入し、又はヒドロゲル中に懸濁することができる。ある種の実施形態において、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の活性は、このようにして又はその他の方法で、有機溶媒による沈殿、変性又は酸化に対して賦形剤によって保護され、これにより、有機溶媒中にのみ可溶性であるPLGAなどの物質でのコーティングが可能となる。このような溶媒は、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400などの低分子量)、エタノール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)又は氷酢酸などの(但し、これらに限定されない。)医薬調製物中に一般に見出される溶媒を含み得る。
【0069】
噴霧乾燥
噴霧乾燥機において、ポンプ注入可能な流体(溶液、懸濁物、エマルジョン又はペースト)は、乾燥された粒状形態へ転化される。このプロセスは、熱い乾燥媒体(通常、空気又は不活性気体)中に液体供給物を微粉化することによって、粒子形成と乾燥を1つの工程中に組み合わせる。本発明の幾つかの実施形態において、濃縮されたタンパク質溶液が噴霧乾燥される。従って、本発明の方法は、あらゆる適切な方法を用いて、タンパク質溶液を濃縮することを含み得る。幾つかの実施形態において、極めて迅速且つ穏やかな方法なので、Tangential Flow Filtration(TFF)技術が使用される。しかしながら、これに加えて又はこれに代えて、通常の流動ろ過又は透析を使用することができる。
【0070】
流体の微粉化は、液体の表面の増加をもたらし、従って、極めて短い乾燥時間をもたらす。例えば、液滴の大きさを10μmから1μmに減少させることは、600から6000m2への表面積の増加をもたらし、その乾燥時間を100倍短くする(例えば、0.01秒から0.0001秒)。「Stahl,Feuchtigkeit und Trocken in der Pharmazeutischen Technologie.Dr.Dieter Steinkopf Verlag GmbH & Co.KG,Darmstadt(1999)」。
【0071】
液体供給物と乾燥空気間の接触は、2つの異なる様式で起こり得る。同時流動系において、乾燥空気と粒子(液滴)は、乾燥チャンバーを通じて、同じ方向に移動する。最も熱い空気が湿った液滴と接触するので、これは、熱感受性物質(タンパク質など)に対する好ましい様式である。乾燥空気及び液滴が反対の方向に移動する場合、これは、逆流動様式と称される。逆流動様式で産生された粒子は、排出空気より高い温度を通常示す。排出空気そのものは、系を離れることができ(「開放サイクル」)又は再循環され得る(「閉鎖サイクル」、一般に、不活性気体を用いて有機溶媒を蒸発させるために使用される。)。「Spray Drying Process Principles(<<www.niro.com>>、2007年2月)。様々な噴霧乾燥機のデザイン(サイズ、微粉化装置、無菌条件など)から選択し、及び異なるプロセスパラメータ(乾燥空気流、乾燥空気温度など)を調整することによって、粒子のサイズ、形状及び構造又は無菌性のような最終粉末特性を調節することができる。回収された粉末の得られた水分が十分に低くなければ、例えば、流体床乾燥機及び冷却機、接触乾燥機又はマイクロ波乾燥機の形態で、後処理が必要とされ得る。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。
【0072】
噴霧乾燥過程は、液体供給物の微粉化、液滴の乾燥並びに乾燥された産物の分離及び回収を一般に含む。各工程は、得られた産物に対して固有の影響を有し、特にタンパク質のような感受性物質を取り扱う場合に、困難も与える。
【0073】
タンパク質又はペプチドを噴霧乾燥させるために、安定化性アジュバントを使用することがしばしば有利である。トレハロース及びショ糖などの糖は、有効なタンパク質安定化物質である。これらは、噴霧乾燥過程の間にタンパク質の凝集及び/又は不活化を低下させることができるだけでなく、そのガラス遷移温度を下回る温度で保存された場合、得られた粉末の保存安定性に正の影響も有し得る。「Lee,Rational Design of Stable Protein Formulations,Theory and Practice(Kluwer Academic/Plenum Publishres,2002)」。
【0074】
微粉化とは、液体を単一液滴の複数に断片化すること、いわゆる噴霧である。微粉化装置の選択は、最終製品の品質及び処理能力に影響を与える。「Richter,Verfahrenstechnik,Sonderausgabe Martubersicht 11:96−100(1997)」。全ての微粉化装置に共通するのは、液体を分断するためにエネルギーを使用することである。エネルギーの異なる種類により、異なる微粉化装置が区別される。エネルギーは、発生する液体中に乱流をもたらす。適用される空気の力と共に、液体の表面張力及び粘度が克服され、崩壊が生じる。
【0075】
噴霧乾燥の稼動に関して、最も適切な噴霧は、多かれ少なかれ等しいサイズの小さな液滴の1つである。全ての微粉化系が、噴霧乾燥された粉末に対して狭い粒子サイズ分布を与え得るとは限らない。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。タンパク質は極めて感受性が高い物質であり、微粉化は剪断力(不安定性の原因となり得る。)を与え得るので、ストレス因子である。Mahler他は、高い剪断力(撹拌及び振盪)とIgG1溶液の凝集増加の間に相関を見出した。「Mahler et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59:407−417(2005)」。リゾチーム溶液も、微粉化の間に、凝集及び活性の喪失を示した。「Yu et al.,Eur.Journal of Pharm.Sci27:9−18(2006)」。剪断ストレス及び液体/空気界面の突然の拡大が、この種のタンパク質崩壊の原因であるように見受けられる。「Maa et al.,Biotechnology and Bioengineering 54(6):503−512(1997)」。しかし、ポンプ操作において起こる剪断力でさえ、タンパク質溶液にストレスを与えるのに十分であり得る。「Brennan et al., Diabetes 34,353−359(1985)」。微粉化装置の多くの異なる種類が噴霧乾燥操作のために利用可能である。
【0076】
回転微粉化装置は、液体供給物が空気/気体雰囲気中に放出される前に、液体供給物を遠心的に加速する。液体供給物は、回転する輪、円板又はコップ上の中心に分布される。低い円板速度で、液滴の形成は、液体の粘度及び表面張力に主として依存する。円板速度が高いほど、内部及び空気の摩擦がより大きな役割を果たし、液滴形成の機序に寄与するようになる。さらに、液滴の大きさは、液体供給物の速度、その固体含量及び密度、噴霧装置の円板の直径及びデザインによって影響を受ける。羽根なし円板/椀/コップ又は曲線若しくは直線の羽根を有する羽根付き輪などの、回転式微粉化装置の様々なデザインが利用可能である。「Masters,Spray Drying Handbook(Wiley & Sons Inc.,New York,1991)。
【0077】
回転式微粉化装置は360°の噴霧角度を有し、従って、(壁沈着を最小限に抑えるために)乾燥チャンバーのある直径を必要とする。これらの系は、より高い能力のために、通常使用される。
【0078】
圧力ノズル系は、圧力エネルギーを速度エネルギーに変換することによって、液体を放出するために必要とされる全てのエネルギーを液体自体から得る。最も単純な一流体ノズルは、単一の液滴を滴下するために使用される管状毛細管である。この装置は、等しい液滴の少量を生じさせるためにのみ使用される。流速を増加させることにより、微粉化を達成することが可能であり、液体ジェットは、乱流を介して液滴へ断片化される。流体の崩壊は、例えば、ノズルに渦巻き挿入物又は渦巻きチャンバーを与えることにより、液体を屈曲、回転及びターンさせることによって軽減することができる。得られた液滴のサイズは、先述したパラメータ(粘度、流速など)の他に、適用される圧力及びノズルの直径によって影響を受ける。「Richter,Verfahrenstechni,Sonderausgabe Martubersicht11:96−100(1997)」。液体供給物は、中空の錐体としての開口部を離れる。すなわち、圧力ノズルは、低直径乾燥チャンバーを有する小さな噴霧乾燥の取り付けにおいて使用され得る。多数の様々なノズルデザインが溶液、エマルジョン及び懸濁物を微粉化するための多様な用途を与え、粒子サイズ(懸濁物)及び粘度(極めて高い圧力が必要とされる。)によってのみ制約される。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。
【0079】
空気式ノズル微粉化を使用する場合、液体との高速気体媒体(通常、空気)の衝突が液滴形成のためのエネルギーを提供する。液体と気体が衝突する場所に応じて、内部混合及び外部混合系が区別される。「Richter,Verfahrenstechnik,Sonderausgabe Martubersicht 11:96−100(1997)」。高度に粘性の液体を微細な大きさの液滴に分断しなければならない場合、2つの液体ノズルが好ましく使用される。気体媒体はノズル内部で加圧され(最大7バール)、液体供給物の崩壊を促進する気体乱流を生成するために、ノズル内部にはさらなる渦巻き挿入物が時折挿入される。液体供給物は、空気流射出効果を支える低圧ポンプによって、通常拍出される。空気式ノズル系は、5から75μmの範囲の液滴を生成する。欠点は、気体/空気を圧縮するための高い費用及び乾燥チャンバー内のその冷却効果である。極めて高い粘度を有する液体を取り扱う場合、ノズル開口部を封鎖する危険も存在する。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。
【0080】
超音波ノズルは、微粉化を達成するために高周波音波を使用する。圧電変換器は、超音波生成装置から高周波電気エネルギーを受け取り、これを同じ周波数で振動機構動作に変換する。ノズルの長さを走行する液体を導入する。液体供給物が開口部に到達すると、液体供給物は振動エネルギーを吸収し、液体供給物の微粉化を引き起こす。「Sono Tek Corporation:Ultrasonic spray nozzle systems(SONO TEK Corporation,New York,2007)」。
【0081】
音波ノズルは、(特に、空気式ノズルと比べて)低い圧力で動作し、得られる液滴は、10と50μmの間の直径を有する。超音波微粉化装置を使用することの1つの大きな欠点は、例えば、固体を含有する原材料に対して使用された場合の連続稼動の予測不能性であり、ノズル領域中での事前乾燥のリスクは、発生装置/微粉化プロセスの汚染をもたらし得る。従って、これらの系は、しばしば、微細スプレーを生成するために研究室規模及びパイロット乾燥機中で又は非ニュートン若しくは高粘性液体のために、他のノズル系を使用できない場合に、よりしばしば使用される。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。
【0082】
噴霧乾燥の間のスプレーの乾燥速度を予想することは、スプレー全体の挙動をモニターすることの困難さ及び乾燥チャンバー内部の不均一な条件によって困難である。しかしながら、単一の液滴の乾燥速度は、理論的に及び実際的に研究することができる。「Elversoon et al.,Journal of Pharm.Sci94(9):2049−2060(2005)」。
【0083】
液体供給物が微粉化されるとすぐに、その表面対質量比が増加し、空気と液滴間の熱伝導が加速され、この時点で、液滴は極めて迅速に乾燥することができる。100μm未満の一般的な液滴サイズにおいて、蒸発は1秒未満で起こる。「Nurnberg et al.,Acta Pharmaceutica Technologica,26(1):39−67,Tab3−1(1980)」。熱伝導(空気−>液滴)及び水分の物質移動(液滴−>空気)という2つの伝達過程が含まれる。後者において、水分は、各液滴を取り囲む境界層を通過して浸透しなければならない。移動速度は、周囲の空気の温度、湿度、輸送特性、液滴の直径及び液滴と空気の間の相対速度によって影響を受ける。「Masters,Spray Drying Handbook(Wiley & Sons Inc.,New York,1991)」。まず、蒸発が一定の速度で起こる(乾燥の第一段階=定速期間)。液滴内からの水分の拡散は、飽和された表面状態を保つ。いわゆる「臨界点」において、水分含量が低すぎて液滴表面上の飽和を保てなくなり、乾燥した層が液滴の表面に形成し始める。それ以降、拡散による横断に対してさらなる成長する障壁が存在する。液滴/粒子の常に変化する条件の結果、蒸発速度が減少する(減速期=乾燥の第二段階)。「Masters,Spray drying in Practice.SprayDryConsult International ApS:Charlottenlund(2002)」。プロセスの間の液滴/粒子の温度は、注入乾燥空気温度(Tin)及び液体供給速度(QLF)によって主に影響を受け、乾燥空気流速(QDA)及び微粉化空気流速(QAA)によって幾分影響を受ける。これら4つのパラメータは、Toutも決定する。実際には、ノズル開口部直下の温度はTinよりToutにずっと近く、従って、Toutは、液滴乾燥速度に対する主要な変数であるように見受けられる。もちろん、液滴内部の温度(Ti)は、その表面上(Ts)においてより低い。Tsは、湿球温度(Twb)にすぐ到達し、定速期の間そこに留まる。下降速度期に液滴表面上に増殖する外殻を伴って、Ts及びTiが増加し始める。「Maa et al.,Biotechnology and Bioengeneering 53(6):503−512(1997)」。得られた粒子の形態に関して、液滴の大きさ及び外殻の質感が重大な役割を果たす。Elversson他は、液滴の大きさと粒子の大きさの間の線形関係を推定したが、液体供給物中の固体含量が粒子の大きさに強く影響を及ぼすことも推定した。「Elversson et al.,Journal of Pharm.Sci.92(4):900−910(2003)」。
【0084】
乾燥は、熱及び脱水という、タンパク質に対する2つのさらなるストレス因子を示唆する。熱的ストレスに対するタンパク質の安定性は、タンパク質製剤における重要な変数である。噴霧乾燥過程の間の温度の変化は、タンパク質の安定性(例えば、プロセスの安定性、加速安定性試験の間の保存寿命)に対して多大な影響を有する。高温に曝露されると、タンパク質はより柔軟になり(水素結合が弱まり)、部分的に折り畳みが解除され、衝突頻度が増大する。「Brange,Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins(Taylor & Francis ltd.,2000)」。この過程は通常可逆的であるが、一旦、部分的に折り畳み解除されると、タンパク質は、凝集又は不正確な折り畳みのようなさらなる分解経路に対して極めて感受性が高くなり、これは、タンパク質の機能及び長期安定性に対して強く影響を及ぼす。
【0085】
最大安定性のための温度は、多くのタンパク質に関して、−10と35℃の間である。「Bummer et al.,Protein Formulation and Delivery(Marcel Dekker AG,Basel,2000)」。Mumenthaler他は、乾燥粒子がTOutを約25℃下回る最大温度に到達することを仮定した。「Mumenthaler et al.,Pharm.Res.11(1):12−20(1994)」。本発明において、TOutは、約60℃から約80℃の範囲であり得る。熱変性は、噴霧乾燥中の主な不安定性要因であるとは一般に考えられていない。「Maa et al.,Current Pharmaceutical Biotechnology1(3):283−302(2000)」。
【0086】
タンパク質の生物学的活性は、その固有の三次元構造に依存する。水溶液中において、タンパク質は、タンパク質表面上に非共有的に結合された水分子によって取り囲まれることによって、その固有の構造を維持する。通常、非極性アミノ酸残基は内部に埋め込まれており、極性アミノ酸残基は表面上に存在する。これは、溶液中においてタンパク質の極めて緊密な梱包(有機分子の結晶内より高い充填密度)をもたらす。「Brange,Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins(Taylor & Francis Ltd.,2000)」。水を除去することは、この梱包を不安定化し得、立体的な変化が起こり得る。
【0087】
噴霧乾燥プロセスの最後の工程は、通例、空気/気体からの粉末の分離及び乾燥された産物の除去である。幾つかの実施形態において、この工程は、高い粉末収率を得るのに及び大気への粉末の放出を通じた空気汚染を防ぐのに可能な限り効果的である。この目的のために、サイクロン、袋フィルター又は静電的沈殿装置のような、乾燥及び湿潤収集装置を使用することができる。これらのユニットの組み合わせさえ、搭載することができる。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。単純なデザインと有効性のために、サイクロン分離装置が最も一般的な分離装置の1つであり、様々な産業で使用されている。「Coulson and Richardson,Chemical Engineering,4th,Vol.2(Butterworth−Heinemann,Oxgford,1991)」。サイクロン内部での粒子の運動は、2つの相反する力の結果である。遠心力はサイクロン壁へ粒子を移動させるのに対して、空気/気体の牽引力は、粒子を中心の空気コア中に運搬して、サイクロンから離そうとする。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。粉末及び空気は、サイクロンの中に正接的に入り、サイクロンの底に向かう下方への螺旋形態で渦を巻く(外側渦巻き撹拌)。この時点で、殆どの粒子はサイクロンを離れて、底に戴置された容器中に収集され、微粒子画分及び分離できなかった他の粒子のみを含有する空気は、サイクロンの中心内へ上方に螺旋を形成し(内側渦巻き撹拌)、最上部を通過する。実際には、30μmを上回る粒子サイズが回収されるはずであり、これは、噴霧乾燥装置の大きさにも依存する。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。しかしながら、サイクロンの大きさを変動させることによって、収率を最適化させることが可能である。Maury他は、標準的なサイクロンと比べて、BuchiB−191噴霧乾燥装置に対して新たに開発されたサイクロン分離装置を用いて、ずっと高い収率を達成した。「Maury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59(3):565−573(2005)」。高性能サイクロン(小さな直径)は、より多く(極めて小さな粒子(1.5μmを下回る直径)さえ含む。)を分離した。
【0088】
サイクロン効率の計算に対して、理論的な研究が行われた。1つのアプローチは、例えば、以下の式によって、いわゆる「カットオフ点」を計算することである。
【0089】
【数1】
dp*はカットオフ粒子直径であり、ηは空気の粘度であり、riは内側渦巻き撹拌の半径を表し、vriは空気注入口での放射状空気速度であり、ρs及びρgは固体及び気体の密度を表し、uiはriでの正接粒子速度である。この点(粒子の直径)において、遠心力と牽引力は等しい値を有する。その大きさの粒子は、内側又は外側渦巻き撹拌の傾向なしに回転し、より小さな粒子は排出空気によって履引され、より大きな粒子は収集容器中に落ちる。「Staudinger et al.,VDI Berichte 1511:1−23(1999)」。
【0090】
飛行時間アプローチは、臨界粒子直径を計算するための別の方法である。このアプローチは、粒子がサイクロン壁へ移動するのに要する時間を考慮に入れる。このアプローチにおいて、サイクロン内部の気体の流れに影響を及ぼすので、収集容器の幾何学を考慮することができる。「Qian et al.,Chem.Eng.Technol.29(6):724−728(2006)」。
【0091】
一切アジュバントを加えずに水性タンパク質溶液を噴霧乾燥すると、折り畳み解除、凝集及び不活化が通常生じる。これは、様々なタンパク質:オキシヘモグロビン(Labrude et al.)、トリプシノーゲン(Tzannis et al.)、IgG(Maury et al.2005)を用いて数回試されており、全ての事例で、プロセスの不安定性が観察された。「Labrude et al.,Journal of Pharm.Sci.7883」:223−229(1989)、Tzannis, et al., Journal of Pharm.Sci.88(3):351−359(1999)及びMaury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59(2):251−261(2005)」。」従って、幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、噴霧乾燥プロセスの間及び保存の間にも、活性医薬成分(API)を保護する。タンパク質の凍結乾燥において、糖(トレハロ−ス、ショ糖)、アミノ酸(アルギニン)又は界面活性剤(Tween)が、安定化剤として使用されてきた。「Lee,Rational Design of Stable Protein Formulations,Theory and Practice(Kluwer Academic/Plenum Publishers,2002)」。ポリオール、二糖及びアミノ酸の使用に関して、幾つかの安定化理論が提案されてきた。それらのうちの1つは、Arakawa及びTimasheffによって確立されたいわゆる「優先的排除」である。「Arakawa et al.,Biochemistry 21:6536−6544(1982)」、「Arakawa et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 46:307−326(2001)」及び「Timasheff,Annual Revews Biophys.Biomol.Struct.22:67−97(1993)」。これは、タンパク質が溶液中で優先的に水和され、従って、共溶質がタンパク質表面との接触から除外されるという前提に基づいている。折り畳み解除がより大きなタンパク質表面をもたらすにつれて、共溶媒が排除される領域も大きくなる。この場合、折り畳み解除は熱力学的に好ましくない状況をもたらし、従って、タンパク質はその折り畳まれた自然の立体構造を保つ。「Arakawa et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 46:307−326(2001)」。タンパク質は、「水置換」機序によっても保護され得る。この理論は、蒸発した水の代わりに、乾燥されたタンパク質へ水素結合することによって、賦形剤が折り畳み解除を妨げると述べている。「Carpenter et al.,Rational Design of Stable Protein Formulations,Theory and Practice(Kluwer Academic/Plenum Publishres,2002)」。また、タンパク質を固定化するガラス状マトリックスの形成は、乾燥及び保存時のタンパク質の安定性に関する理由であり得る。「Tzannis et al.,Journal of Pharm.Sci.88(3):360−370(1999)」。従って、高いガラス遷移温度(Tg)(例えば、分子の運動を妨げるために、保存温度より高いTg)を示す製剤が必要とされる。界面活性剤の安定化機構は、界面(例えば、液体/空気界面)を占めるための界面活性剤とタンパク質の競合に基づき、界面活性剤に対する熱力学的エッジを示す。タンパク質が界面に吸着する可能性が小さくなるとともに、折り畳み解除及び凝集のリスクは著しく低下する。「Adler et al.,Journal of Pharm.Sci.,88(2),199−208(1999)」。
【0092】
湿度は、特に長期保存の間に、タンパク質の安定性に影響を及ぼす別の因子である。タンパク質粉末に対する水分の影響は、文献中に豊富に記載されている。通常、固体タンパク質製剤の化学的安定性は、反応試薬として又は反応試薬を動員するための溶媒としての役割を果たす水のために、水分含量の増加とともに減少する。水分は、タンパク質構造の立体構造的変化の原因ともなり得る。その他に、噴霧乾燥された粉末のTgも水によって影響を受ける。水は可塑剤として作用し、これは、水が物質のTgを低下させることを意味する。水の影響は、ゴードン・テイラー式(二相混合物のTg(Tgmix)を計算するための方程式)を用いて計算することができる。
【0093】
【数2】
ω、Tg及びρは、それぞれ、重量割合、ガラス遷移温度及び異なる成分の密度を表す。約−138℃のTgを有する水に関して、得られた粉末の水含量は低くなるべきことが明らかである。「Hancock et al.,Pharm.Res.11(4):471−477(1994)」。しかしながら、水含量と安定性の間の相関は線形的でないように見受けられる。Chang他は、2から3%の中間的水含量で、凍結乾燥されたIgGの最適な安定化を得た。「Chang et al.,Journal of Pharm.Sci94(7):1427−1444(2005)」。
【0094】
この知見の結果、噴霧乾燥プロセスから得られる粉末は、低い残留水分を示し、また、保存の間、湿気から保護されるはずである。「Maa et al.,Pharm.Res.15(5):768−775(1998)」。前者は、ある程度、プロセス条件(注入空気温度(Tin)、注入空気の相対湿度(RH))によって影響を受け得、後者は、耐漏出容器又は管理可能な保存条件の問題である。
【0095】
III.本発明の製剤
本発明の組成物を調製する際には、あらゆる適切なタンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分を使用することができる。例えば、それはIgG種であり得る。典型的な抗体又はその抗原結合部分には、MAK195F、アダリムマブ又はABT−325が含まれるが、これらに限定されない。本発明に従う使用に適した抗TNF抗体は、周知である(例えば、欧州特許A−0260610、欧州特許A−0351789、欧州特許A−0 218 868に記載されているとおり。)。ポリクローナル及びモノクローナル抗体の両方を使用することができる。さらに、Fab又はF(ab’)2断片又は一本鎖Fv断片などのTNF結合抗体断片も適している。適切なモノクローナル抗−hTNFα抗体は、欧州特許A0260610に記載されており(AM−195又はMAK−195と表記される。)、受託番号87 050803の下で、ECACCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生される。MAK−195F(INN:アフェリモマブ)とも表記されるマウス抗TNF抗体断片(F(ab’)2)も適切である。
【0096】
一実施形態において、本発明の製剤は、例えば、アダリムマブ(Humira又はD2E7;Abbott Laboratoriesとも称される。)などのヒトTNFαを結合する抗体又はその抗原結合部分を含む。一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、1×10−8M又はそれ以下のKd及び1×10−3s−1又はそれ以下のKoff速度定数(何れも表面プラズモン共鳴によって測定される。)で、ヒトTNFαから解離し、1×10−7M又はそれ以下のIC50で標準的なインビトロL929アッセイにおいてヒトTNFα細胞毒性を中和する。抗体の配列を含む、ヒトTNFαに対して高い親和性を有するヒト中和抗体を作製するための例及び方法は、米国特許第6,090,382号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0097】
一実施形態において、本発明の製剤は、例えば、抗体ABT−874(Abbott Laboratories)(米国特許第6,914,128号)などのヒトインターロイキン−12(IL−12)を結合する抗体又はその抗原結合部分を含む。ABT−874は、インターロイキン−12及びインターロイキン−23を標的とし、これらを中和するように設計された完全ヒトモノクローナル抗体である。一実施形態において、抗体又はその抗原結合断片は、以下の特徴の1つ又はそれ以上を有する。抗体又はその抗原結合断片は、3×10−7M又はそれ以下のKDで、ヒトIL−1αから解離し、5×10−5M又はそれ以下のKDでヒトIL−1βから解離し、マウスIL−1α又はマウスIL−1βを結合しない。抗体の配列を含めて、ヒトIL−12に対して高い親和性を有するヒト中和抗体を作製するための例及び方法は、米国特許第6,914,128号(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0098】
一実施形態において、本発明の製剤は、例えば、抗体ABT−325(Abbott Laboratories)などのヒトIL−18を結合する抗体又はその抗原結合部分を含む(米国特許出願2005/0147610号を参照)。
【0099】
一実施形態において、本発明の製剤は、抗体ABT−147(Abbott Laboratories)などのヒトIL−12を結合する抗体又はその抗原結合部分を含む(2007年1月11日に公開されたWO2007/005608A2を参照)。
【0100】
一実施形態において、本発明の製剤は、抗体ABT−308(Abbott Laboratories)などのヒトIL−13を結合する抗体又はその抗原結合部分を含む(PCT/US2007/19660を参照)。
【0101】
粉末化された製剤中に含められ得るタンパク質の例には、抗体又はその抗原結合断片が含まれる。本発明において使用され得る抗体又はその抗原結合断片の異なる種類の例には、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体及びドメイン抗体(dAb)が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態において、本発明の方法及び組成物において使用される抗体は抗TNFα抗体若しくはその抗原結合部分又は抗IL−12抗体若しくは抗IL−13抗体若しくはこれらの抗原結合部分である。本発明において使用され得る抗体又はその抗原結合断片のさらなる例には、ABT−147(Abbott Laboratories)、ABT−325(抗IL−18;Abbott Laboratories)、ABT−308(Abbott Laboratories)、ABT−874(抗IL−12;Abbott Laboratories)、アフェリモマブ(Fab2抗TNF;Abbott Laboratories)、Humira(アダリムマブ;Abbott Laboratories)、Campath(Alemtuzumab)、CEA−Scan Arcitumomab(fab断片)、Erbitux(Cetuximab)、Herceptin(Trastuzumab)、Myoscint(Imciromab Pentetate)、ProstaScint(Capromab Pendetide)、Remicade(Infliximab)、ReoPro(Abciximab)、Rituxan(Rituximab)、Simulect(Basiliximab)、Synagis(Palivizumab)、Verluma(Nofetumomab)、Xolair(Omalizumab)、Zenapax(Daclizumab)、Zevalin(Ibritumomab Tiuxetan)、OrthocloneOKT3(Muromonab−CD3)、Panorex(Edrecolomab)及びMylotarg(Gemtuzumab ozogamicin)が含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
1つの別例において、タンパク質は、Pulmozyme(ドルナーゼα)、Rebif、Regranex(ベカプレルミン)、Activase(アルテプラーゼ)、Aldurazyme(ラロニダーゼ)、Amevive(Alefacept)、Aranesp(ダルベポエチンα)、Becaplermin濃縮物、Betaseron(インターフェロンβ−1b)、BOTOX(ボツリヌス毒素A型)、Elitek(ラスブリカーゼ)、Elspar(アスパラギナーゼ)、Epogen(エポエチンα)、Enbrel(Etanercept)、Fabrazyme(アガルシダーゼβ)、Infergen(インターフェロンαcon−1)、IntronA(インターフェロンα−2a)、Kineret(Anakinra)、MYOBLOC(ボツリヌス毒素B型)、Neulasta(Pegfilgrastim)、Neumega(Oprelvekin)、Neupogen(Filgrastim)、Ontak(Denileukin diftitox)、PEGASYS(Peginterferonα−2a)、Proleukin(Aldesleukin)、Pulmozyme(ドルナーゼα)、Rebif(インターフェロンβ−1a)、Regranex(Becaplermin)、Retavase(Reteplase)、Roferon−A(インターフェロンα−2)、TNKase(Tenecteplase)及びXigris(Drotrecoginα)などの(但し、これらに限定されない。)融合タンパク質である。
【0103】
本明細書に記載されている方法及び組成物中に含められ得るタンパク質の他の例には、例えば、成長ホルモン(ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む。)、成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α−1−アンチトリプシン;インシュリンA鎖;インシュリンB鎖;プロインシュリン;濾胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;第VIIIC因子;第IX因子;組織因子及びフォン・ビルブランド因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼ又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボムバジン;トロンビン;腫瘍壊死因子−α及び−βエンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症タンパク質(MIP−1−α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;リラキシンA−鎖;リラキシンB−鎖;プロリラキシン;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;DNアーゼ;インヒビン;アクチビン;血管内皮性成長因子(VEGF);ホルモン又は成長因子に対する受容体;インテグリン;プロテインA又はD;リウマチ因子;骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4−、−5−若しくは−6(NT−3、NT4、NT−5又はNT−6)又はNGF−βなどの神経成長因子などの神経栄養因子;血小板由来成長因子(PDGF);aFGF及びbFGFなどの繊維芽成長因子;上皮成長因子(EGF);TGFα及びTGF−β(TGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4又はTGF−β5など)などの形質転換成長因子(TGF);インシュリン様成長因子−I及び−II(IGF−I及びIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I);インシュリン様成長因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20などのCDタンパク質;エリスロポエチン(EPO);トロンボポエチン(TPO);骨誘導性因子;イムノトキシン;骨形成タンパク質(BMP);成長及び分化因子、インターフェロン−α、−β及び−γなどのインターフェロン;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF及びG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1からIL−10;スーパーオキシドディスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子(DAF);例えば、AIDS外被の一部などのウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレッシン;制御タンパク質;免疫接着物質;抗体及び上に列記されているポリペプチドの何れかの生物学的に活性な断片又は変形物などの哺乳動物タンパク質(その組換えタンパク質を含む。)が含まれる。
【0104】
ポリクローナル抗体
ポリクローナル抗体は、ある抗原に対して特異的であるが、前記抗原上の異なるエピトープに結合する抗体の混合物を一般に表す。ポリクローナル抗体は、関連する抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって動物内で一般に産生される。二官能性剤又は誘導化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を通じた連結)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基による)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2又はR1NCNR(R及びR1は、異なるアルキル基である。)を用いて、免疫化されるべき種内において免疫原性であるタンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又は大豆トリプシン阻害剤)へ関連抗原を連結するのに有用であり得る。ポリクローナル抗体を作製するための方法は本分野において公知であり、例えば、「Antibodies:A Laboratory Manual,Lane and Harlow(1988)」(参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されている。
【0105】
モノクローナル抗体
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」とは、ハイブリドーマに由来する抗体(例えば、標準的なKohler及びMilsteinハイブリドーマ法などのハイブリドーマ技術によって調製されたハイブリドーマによって分泌される抗体)を表すものとする。例えば、モノクローナル抗体は、「Kohler et al.,Nature,256:495(1975)」によって最初に記載されたハイブリドーマ法を用いて作製され得、又は組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製され得る。従って、本発明のハイブリドーマ由来二重特異性抗体は単一の抗原より多くの抗原に対して抗原特異性を有するが、なおモノクローナル抗体と称される。
【0106】
モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体(すなわち、集団を構成する各抗体は、微量に存在する可能性がある天然の変異を除き同一である。)の集団から得られる。従って、「モノクローナル」という修飾語は、異なる抗体の混合物でないという抗体の特徴を示す。
【0107】
さらなる実施形態において、抗体は、「McCafferty et al.,Nature,348:552−554(1990)」に記載されている技術を用いて作製された抗体ファージライブラリーから単離され得る。「Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)」及び「Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991)」は、それぞれ、ファージライブラリーを使用したマウス及びヒト抗体の単離を記載する。その後の刊行物は、極めて巨大なファージライブラリーを構築するための戦略として、鎖シャッフリング(Marks et al.,Bio/Technology,10:779−783(1992))並びにコンビナトリアル感染及びインビボ組換え(Waterhouse et al.,Nuc.Acids.Res.,21:2265−2266(1993))による高親和性(nM範囲)ヒト抗体の作製を記載する。従って、これらの技術は、モノクローナル抗体を単離するための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する実行可能な代替技術である。
【0108】
抗体及び抗体断片は、米国特許第6,423,538号;6,696,251号;6,699,658号;6,300,065号;6,399,763号及び6,114,147号に記載されているように、発現ライブラリーを用いて、酵母及びその他の真核細胞からも単離され得る。真核細胞は、細胞表面上に提示するために、コンビナトリアル抗体ライブラリーから得られるものなどのライブラリータンパク質を発現するように改変され得、標的分子を選択するための親和性を有する抗体に関して、ライブラリークローンを含有する特定の細胞を選択することが可能となる。単離された細胞からの回収後に、目的の抗体をコードするライブラリークローンは、適切な哺乳動物細胞株から高レベルで発現され得る。
【0109】
目的の抗体を開発するためのさらなる方法には、米国特許第7,195,880;同第6,951,725号;同第7,078,197号;同第7,022,479号、同第6,518,018号;同第7,125,669号;同第6,846,655号;同第6,281,344号;同第6,207,446号;同第6,214,553号;同第6,258,558号;同第6,261,804号;同第6,429,300号;同第6,489,116号;同第6,436,665号;同第6,537,749号;同第6,602,685号;同第6,623,926号;同第6,416,950号;同第6,660,473号;同第6,312,927号;同第5,922,545号;及び同第6,348,315号に記載されているように、核酸ディスプレイ技術を用いた無細胞スクリーニングが含まれる。これらの方法は、タンパク質が由来する核酸にそのタンパク質が物理的に会合又は結合されるように、核酸からインビトロでタンパク質を転写するために使用することができる。標的分子を有する発現されたタンパク質に関して選択することによって、タンパク質をコードする核酸も選択される。無細胞スクリーニング技術に対する一つの変法では、免疫系細胞から単離された抗体配列を単離し、抗体の多様性を増大させるために、部分的に無作為化されたポリメラーゼ連鎖反応突然変異誘発技術を使用することができる。次いで、これらの部分的に無作為化された抗体遺伝子は、無細胞系内で発現され、核酸と抗体の間に同時に物理的会合が作出される。
【0110】
DNAは、例えば、相同なマウス配列の代わりに、ヒト重および軽鎖定常ドメインに対するコード配列を置換することによって、(米国特許第4,816,567号;Morrison,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851(1984))、又は非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列の全部又は一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合することによっても修飾され得る。
【0111】
抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位及び異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を作製するために、典型的には、このような非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインに対して置換され、又は抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインに対して置換される。
【0112】
キメラ又はハイブリッド抗体は、架橋剤を用いるものなど、合成タンパク質化学における公知の方法を用いて、インビトロでも調製され得る。例えば、イムノトキシンは、ジスルフィド交換反応を用いて、又はチオエーテル結合を形成することによって構築され得る。この目的のための適切な試薬の例には、イミノチオラート及びメチル−4−メルカプトブチルイミダートが含まれる。
【0113】
ヒト化抗体
非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野において周知である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである源からその中に導入された1つ又はそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「輸入」可変ドメインから通例採取される「輸入」残基としばしば称される。ヒト化は、ヒト抗体の対応する配列に対する非ヒト(例えば、げっ歯類)CDR又はCDR配列を置換することによって、Winter及び共同研究者(Jones et al.,Nature,321:522−525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323−327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534−1536(1988)の方法に従って本質的に実施することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、非ヒト種由来の対応する配列によって、完全状態より大幅に少ないヒト可変ドメインが置換されているキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際には、ヒト化抗体は、通例、幾つかのCDR残基及びおそらくは幾つかのフレームワーク(FR)残基がげっ歯類抗体中の同等の部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体である。ヒト化プロセスを記載するさらなる参考文献には、「Sims et al.,J.Immunol.,151:2296(1993);Chothia et al.,J.Mol.Biol.,196:901(1987);Carter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);Presta et al.,J.Immunol.,151:2623(1993)(これらの各々は、参照により、本明細書に組み込まれる。)が含まれる。
【0114】
ヒト抗体
あるいは、免疫化時に、内在の免疫グロブリン産生の不存在下でヒト抗体の完全なレパートリーを作製可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)を作製することが現在では可能である。例えば、キメラ及び生殖系列変異体マウス中の抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合欠失は内在の抗体産生の完全な阻害をもたらすことが記載されている。このような生殖系列変異体マウス中へのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子列の導入は、抗原攻撃誘発時に、ヒト抗体の作製をもたらす。例えば、「Jakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255−258(1993);Bruggermann et al.,Year in Immuno.,7:33(1993)」を参照されたい。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーから得ることもできる(Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581−597(1991))。
【0115】
二重特異的抗体
二重特異的抗体(BsAb)は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して特異性を有する抗体である。このような抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異的抗体)に由来し得る。
【0116】
二重特異的抗体を作製するための方法は、本分野において公知である。完全長二重特異的抗体の伝統的な作製は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(2つの鎖は異なる特異性を有する。)の同時発現を基礎としている(Millstein et al.,Nature,305:537−539(1983))。免疫グロブリン重及び軽鎖の無作為仕分けのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子(そのうち一つのみが正しい二重特異的構造を有する。)を含む可能性を有する混合物を産生する。通常アフィニティークロマトグラフィー工程によって行われる正しい分子の精製はかなり骨が折れ、産物の収率は低い。類似の操作が、WO93/08829及び「Traunecker et al.,EMBOJ.,10:3655−3659(1991)」に開示されている。
【0117】
異なるアプローチによれば、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原結合部位)が免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。
【0118】
好ましくは、融合は、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインを用いて行われる。融合物の少なくとも1つの中に存在する軽鎖結合のために必要な部位を含有する第一の重鎖定常領域(CH1)を有することが好ましい。免疫グロブリン重鎖融合物及び所望に応じて、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別個の発現ベクター中に挿入され、適切な宿主生物中へ同時形質移入される。これにより、構築に使用される3つのポリペプチドの鎖の等しくない比率が最適な収率を与える実施形態において、3つのポリペプチド断片の相互割合を調整する上で大幅な柔軟性が得られる。しかしながら、等しい比率の少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収率をもたらす場合に、又は比率がまったく重要でない場合に、1つの発現ベクター中に、2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖に対するコード配列を挿入することが可能である。
【0119】
このアプローチの好ましい実施形態において、二重特異的抗体は、一方のアーム中の第一の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖及び他方のアーム中のハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第二の結合特異性を与える。)から構成される。二重特異的分子の半分のみに免疫グロブリン軽鎖が存在することによって、容易な分離法が与えられるので、この非対称的な構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異的化合物の分離を容易にすることが見出された。このアプローチは、1994年3月3日に公開されたWO94/04690に開示されている。二重特異的抗体の作製に関するさらなる詳細については、例えば、「Suresh et al.,Methods in Enzymology,121:210(1986)」を参照されたい。
【0120】
二重特異的抗体には、架橋された又は「ヘテロ連結」抗体が含まれる。例えば、ヘテロ連結体中の抗体の一方はアビジンに、他方はビオチンに結合させることが可能である。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的誘導すると提案され(米国特許第4,676,980号)及びHIV感染の治療(WO91/00360、WO92/200373及びEP03089)が提案されている。ヘテロ連結抗体は、あらゆる都合のよい架橋法を用いて作製され得る。適切な架橋剤は本分野において周知であり、多数の架橋技術とともに、米国特許第4,676,980号に開示されている。
【0121】
抗体断片から二重特異的抗体を作製するための技術も、この文献中に記載されている。二価の抗体断片(必ずしも二重特異的でない。)を作製するために、以下の技術を使用することもできる。例えば、二価抗体を形成するために、イー・コリ(E.coli)から回収されたFab’断片をインビトロで化学的に結合することができる。「Shalaby et al.,J.Exp.Med.,175:217−225(1992)」を参照されたい。
【0122】
組換え細胞培養から直接得られた二価抗体断片を作製及び単離するための様々な技術も記載されている。例えば、ロイシンジッパーを用いて、二価のヘテロ二量体が作製されている。「Kostelny et al.,J.Immunol.,148(5):1547−1553(1992)」。Fos及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab’部分に連結された。単量体を形成するために、ヒンジ領域において、抗体ホモ二量体が還元され、次いで、抗体ヘテロ二量体を形成するために再酸化した。「Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993)」によって記載された「ダイアボディ」技術は、二重特異的/二価抗体断片を作製するための別の機序を与えた。断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間での対合が不可能であるほど極めて短いリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つの断片のVH及びVLドメインは、別の断片の相補的VL及びVHドメインと強制的に対合され、これにより、2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異的/二価抗体断片を作製するための別の戦略も報告されている。「Gruber et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)」を参照されたい。
【0123】
一実施形態において、本発明の製剤は、IL−1(IL−1α及びIL−1βを含む。)に対して二重特異的である抗体を含む。二重特異的IL−1抗体を作製するための例及び方法は、2008年7月10日に公開されたWO08/082651号に見出すことができる。
【0124】
二重可変ドメイン(DVD)結合タンパク質
二重可変ドメイン(DVD結合タンパク質とは、2つ又はそれ以上の抗原結合部位を含み、四価又は多価の結合タンパク質であるタンパク質である。DVDは、一重特異的(すなわち、1つの抗原を結合することができる。)又は多重特異的(すなわち、2つ又はそれ以上の抗原を結合することができる。)。2つの重鎖DVDポリペプチド及び2つの軽鎖DVDポリペプチドを含むDVD結合タンパク質は、DVDIgTMと称される。DVDIgの各半分は重鎖DVDポリペプチド及び軽鎖DVDポリペプチド並びに2つの抗原結合部位を含む。各結合部位は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み、抗原結合部位当り合計6つのCDRが抗原結合に関与する。ある種の実施形態において、DVDは、2007年3月29日に公開されたWu他に対する米国特許公開20070071675号(参照により、本明細書に組み込まれている。)に開示されているDVDのいずれかを含み得る。
【0125】
DVD−Igは、2つの異なる標的を同時に遮断して効力/安全性を増強し及び/又は患者の範囲を増加させるための治療剤として有用である。このような標的は、可溶性標的(IL−13及びTNF)及び細胞表面受容体標的(VEGFR及びEGFR)を含み得る。DVD−Igは、癌治療のために腫瘍細胞とT細胞(Her2及びCD3)間の又は自己免疫/移植のために自己反応性細胞とエフェクター細胞間の又はあらゆる所定の疾患において疾病の原因となる細胞を除去するために、何れかの標的細胞とエフェクター細胞間の再誘導された細胞毒性を誘導するためにも使用することができる。
【0126】
さらに、同じ受容体上の2つの異なるエピトープを標的とするようにDVD−Igが設計されている場合、受容体のクラスター化及び活性化を引き起こすためにDVD−Igを使用することができる。これは、作動性及び拮抗性の抗GPCR治療薬を作製する上で利点を有し得る。この事例では、DVD−Igは、クラスター化/シグナル伝達(2つの細胞表面分子)又はシグナル伝達(1つの分子上)のために、1つの細胞上の2つの異なるエピトープを標的とするために使用することができる。同様に、DVD−Ig分子は、CTLA−4連結及びCTLA4細胞外ドメインの2つの異なるエピトープ(又は同じエピトープの2つのコピー)を標的とすることによる負のシグナルの引き金を引き、免疫応答の下方制御をもたらすように設計することができる。同様に、DVD−Igは、細胞表面受容体複合体(例えば、IL−12Rα及びβ)の2つの異なる一員を標的とすることができる。さらに、DVD−Igは、標的可溶性タンパク質/病原体の迅速な排除を誘導するために、標的CR1及び可溶性タンパク質/病原体を標的とすることができる。
【0127】
さらに、本発明のDVD−Igは、細胞内送達(内部取り込み受容体及び細胞内分子を標的とする。)、脳内への送達(血液脳関門を横切るために、トランスフェリン受容体及び中枢神経系疾患媒介物質を標的とする。)など、組織特異的送達(増強された局所PK、従って、より高い効力及び/又はより低い毒性のために、組織マーカー及び疾病媒介物質を標的とする。)のために使用することができる。DVD−Igは、抗原の非中和エピトープへの結合を介して、抗原を特異的な位置に送達し、抗原の半減期も増加させるための担体タンパク質としての役割も果たし得る。
【0128】
本発明は、本明細書に記載されているものなどのあらゆる適切なタンパク質を含み、本明細書に記載されているように調製された安定な粉末化された組成物を提供する。例えば、粉末は、タンパク質又はペプチド(例えば、抗体又はその抗原結合部分)及び賦形剤を含むことができ、組成物は約6%未満の残存水分を含む。ある実施形態において、組成物は約5.5%、5%、4.4%、4%、3.5%又は3%の残存水分を含む。幾つかの実施形態において、組成物が2%又は1%未満の残存水分を含む。他の実施形態において、組成物は、上記値によって境界が画される残存水分範囲(例えば、約4%と6%の間、約4.5%と5.5%の間又は約3%と5%の間の残存水分)を含む。幾つかの実施形態において、得られる粉末化された組成物の残存水分含量は、約1%と約3%の間、約1.5%と2.5%の間、約1.4%と約2%の間、約4%と6%の間又は約4.5%と約5%の間である。他の実施形態において、粉末化された組成物は、約1%、1.5%、2%、2.5%、3%、3.5%、4%、4.5%、5%、5.5%、6%、6.5%又は7%の残存水分を含む。
【0129】
幾つかの実施形態において、タンパク質は、所望の期間にわたって、その生物学的活性を保持する。一実施形態において、粉末は、少なくとも3ヶ月間、周囲温度及び湿度において安定である。幾つかの実施形態において、粉末は、周囲温度及び湿度において、少なくとも6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、3年又は5年間安定である。他の実施形態において、粉末は、40℃で少なくとも3ヶ月安定である。さらなる実施形態において、粉末は、40℃で少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年又は5年間安定である。さらに別の実施形態において、粉末は、40℃及び周囲湿度で、少なくとも3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年又は5年間安定である。
【0130】
本発明の粉末化された組成物及び/又は粉末化された組成物を含む医薬組成物は、賦形剤を含み得る。適切な賦形剤には、トレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物を含み得るが、これらに限定されない。前記方法は、酸性成分、抗酸化剤及び/又は浸透圧調整物質を添加することをさらに含み得る。
【0131】
幾つかの実施形態において、組成物は、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0又は約0.7:1.0の賦形剤:抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し、賦形剤はトレハロース又はショ糖である。他の実施形態において、組成物は、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0又は約0.7:1.0又は約0.35:1の賦形剤:抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し、賦形剤はソルビトールである。
【0132】
さらに、本発明は、本明細書に記載されている粉末の有効量を含む医薬調製物を提供する。医薬として許容される担体は、非経口、経口、経腸又は局所投与に対して許容されるあらゆる担体であり得る。担体は、固体、半固体若しくは液体(例えば、水又は有機性液体)又はこれらの組み合わせであり得る。
【0133】
粉末は、医薬として許容される担体中で混合(例えば、溶解又は包埋)され得る。医薬として許容される担体は、例えば、非経口投与に関して許容され得、例えば、水を含み得る。前記方法は、1つ又はそれ以上の酸性成分、抗酸化剤及び/又は浸透圧調製物質を医薬組成物に添加することをさらに含み得る。これに加えて又はこれに代えて、適切な添加物、例えば、緩衝液、粘度調整物質、着香剤、着色剤などを本発明の医薬組成物に添加することができる。
【0134】
粉末化された医薬組成物は、例えば、錠剤又は他の固体若しくは半固体組成物を形成するために、溶融押し出しされ、圧縮され又はその他加工され得る。粉末は、徐放及び/又は遅延放出医薬組成物を形成するために、例えばPLGAなどのポリマーで被覆され得る。これに加えて又はこれに代えて、組成物は、例えば、腸溶コーティングでカプセル化され又は被覆され得る。コーティング及び/又は賦形剤は、例えば、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400)、エタノール、DMSO、NMP、氷酢酸などの有機溶媒による沈殿、変性又は酸化に対して薬物を保護するために使用することができる。
【0135】
液体組成物、例えば、水性組成物も想定される。このような組成物は、例えば、経口又は静脈内投与に適し得、浸透圧調整物質又は緩衝液などのあらゆる適切な賦形剤又は添加物を含み得る。幾つかの実施形態において、水性タンパク質製剤の高い濃度に関わらず、液体医薬組成物はタンパク質凝集物の低いパーセントを有する。一実施形態において、水性組成物は水及びタンパク質(例えば、抗体)の高い濃度を含み、界面活性剤又は賦形剤の他の種類の不存在下でさえ、約5%未満のタンパク質凝集物を含有する。一実施形態において、前記組成物は約7.3%以下の凝集タンパク質を含み、前記組成物は約5%以下の凝集タンパク質を含み、前記組成物は約4%以下の凝集タンパク質を含み、前記組成物は約3%の凝集タンパク質を含む。前記組成物は約2%以下の凝集タンパク質を含み、又は前記組成物は約1%以下の凝集タンパク質を含む。一実施形態において、前記組成物は、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%又は少なくとも約99%の単量体タンパク質を含む。上記濃度の中間の範囲、例えば、少なくとも約98.6%の単量体タンパク質、約4.2%以下の凝集タンパク質も、本発明の一部であることが意図される。さらに、上記値の何れかの組み合わせを上限及び/又は下限として用いる値の範囲も含まれるものとする。
【0136】
IV.本発明の使用
本発明の組成物は、治療的に(すなわち、インビボで)又はインビトロ若しくはインサイチュ用の試薬として使用され得る。本明細書に記載及び例示されているように、噴霧乾燥は、例えば、(a)潰瘍性大腸炎を治療するためのABT−874の腸溶製剤、(b)糖尿病性潰瘍のためのアダリムマブの局所製剤及び(c)喘息の治療のためのABT−308の肺剤形の開発/製造のための出発材料として使用するための乾燥タンパク質粉末を調製するために使用され得る。さらに、ガラス状賦形剤マトリックス(例えば、トレハロース)内に取り込まれたモノクローナル抗体(mAb)は熱液折り畳み解除/変性に対してより高い安定性を示すことが可能であり得るので、噴霧乾燥された抗体はMELTREX溶融押し出しプロセスとともに使用され得る。同じく、これは、例えば、タンパク質の経口投与用の新しい固体タンパク質剤形の開発に対する機会を与え得る。
【0137】
治療的使用
本発明の方法は、治療的使用に有利な特徴を有する組成物を調製するためにも使用され得る。医薬組成物(液体又は固体組成物を含む。)は、対象中の疾患を治療するための医薬組成物又は製剤として使用され得る。
【0138】
本発明の組成物は、治療用タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分が治療に適しているあらゆる疾患を治療するために使用され得る。「疾患」は、抗体を用いた治療が有益であるあらゆる症状である。これには、問題の疾患に対して哺乳動物が素因を有するようにする病的症状を含む、慢性及び急性疾患又は疾病が含まれる。抗TNFα抗体の場合には、抗体の治療的有効量は、関節リウマチなどの自己免疫疾患、クローン病などの腸疾患、強直性脊椎炎などの脊椎関節症又は乾癬などの皮膚疾患を治療するために投与され得る。抗IL−12抗体の場合には、多発性硬化症などの神経疾患又は乾癬などの皮膚疾患を治療するために、抗体の治療的有効量が使用され得る。治療のために本発明の組成物を使用し得る疾患の他の例には、乳癌、白血病、リンパ腫及び大腸癌などの癌が含まれる。
【0139】
「対象」という用語は、生物(例えば、原核生物及び真核生物)が含まれるものとする。対象の例には、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット及びトランスジェニック非ヒト動物が含まれる。本発明の特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0140】
「治療」という用語は、治療的処置及び予防的又は防止的措置の何れをも表す。治療が必要なものには、疾患を既に有するものの他に、疾患を予防すべきものが含まれる。
【0141】
水性又は固体組成物は、投与の公知の方法に従って、治療を必要としている哺乳動物(ヒトを含む。)に投与され得る。投与の方法の例には、大量瞬時投与又はある期間にわたる継続的注入によるなどの静脈内投与、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑膜内、くも膜下腔内、皮内、経皮、経口、局所又は吸入投与が含まれる。
【0142】
一実施形態において、組成物は、皮下投与によって、哺乳動物に投与される。このような目的のために、組成物は、注射器及び注射装置(例えば、Inject−eas及びGenject装置)、注射用ペン(GenPenなど)、無針装置(例えば、MediJector及びBiojector)及び皮下パッチ送達系などのその他の装置を用いて注射され得る。
【0143】
組成物を収容する送達装置も、本発明に含まれる。このような装置の例には、注射器、ペン、インプラント及びパッチが含まれるが、これらに限定されない。自動注射用ペンの例は、2007年6月29日に出願された米国特許出願11/824516号に記載されている。
【0144】
タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の適切な投薬量(「治療的有効量」)は、例えば、治療されるべき症状、症状の重度及び期間、タンパク質が予防目的又は治療目的のために投与されるかどうか、以前の治療、患者の既往歴及び当該タンパク質に対する応答、使用されるタンパク質の種類並びに担当医の裁量に依存する。本発明の組成物は、一回で又は一連の治療にわたって患者に適切に投与され、診断開始から任意の時点で患者に投与され得る。組成物は、単一の治療として、又は問題の症状を治療する上で有用な他の薬物若しくは治療と組み合わせて投与され得る。
【0145】
一実施形態において、本発明の組成物、例えば、アフェリモマブ及び/又はあらゆる他の適切な抗体又はその抗原結合部分などは、治療的に使用される。一実施形態において、組成物は、敗血症を治療する際に使用するための医薬組成物である。
【0146】
敗血症、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)及びアフェリモマブ
敗血症は、感染に対する全身的な炎症応答として定義される。感染は、例えば、ウイルス性、細菌性、真菌性又は寄生生物性であり得る。敗血症は、免疫適格性細胞の活性化及び複数のサイトカイン(TNF−α、IL−1など)の放出に関連する全身性炎症応答を最終的にもたらす。ACCP(American College of Chest Physicians):SIRS(全身性炎症性応答症候群)(様々な発症原因(感染、紅斑など)の全身性炎症応答);敗血症(感染によって引き起こされるSIRS);重度の敗血症(臓器機能不全/障害を伴う敗血症)及び敗血性ショック(ショックを伴う敗血症)によって定義されているように、敗血症の異なる段階/種類が存在する。敗血症のこれらの種類を診断するためには、様々な基準に合致しなければならない。
【0147】
原発性免疫応答は、様々な二次的媒介物質によって協調及び増幅される。生物は、炎症をその元の場所(多くは、肺又は血液循環)に限定することはない。様々な臓器が影響を受け得、これは幾つかの身体機能に強い影響を有する。従って、敗血症の可能な徴候には、高熱、多呼吸、頻脈、血圧低下及び錯乱が含まれる。指標が多様であるために、敗血症は診断するのが極めて困難であり、敗血症患者の高い死亡率の原因となっている。
【0148】
敗血症患者を治療するための様々な医薬、とりわけ、血液凝固及びコルチゾン(低用量)を遮断して炎症を弱めるためのドロトレコギンα(活性化されたタンパク質C)及びアンチトロンビンIIIが知られている。「Bloos et al.,Aktuelle Ernahrungsmedizin,28:186−190(2003)」。TNF−αは敗血症の主な媒介物質の1つであるので、敗血症を取り扱うための1つのアプローチは、TNF−αの効果を回避するためにTNF−αを遮断することである。TNF−αの局所的な放出は、血流及び血管透過性を増加させる。これによって、宿主防御に関与する流体、細胞及びタンパク質の感染組織内への流入が可能となる。感染が血液に伝播するのを防ぐために、小さな血管はその後凝固し、適応免疫応答が開始されるリンパ節へ流体が流入する。全身性感染の間、TNF−αは同様に機能し、ショック及び播種性血管内凝固をもたらす。結果は、凝固因子の枯渇、絶え間ない出血及び多臓器不全である。「Janeway et al.,Immunobiology(Garland Publishing,1994)。TNF−αを遮断することは、抗TNF−α抗体の非経口投与によって達成することができる。抗体断片アフェリモマブを設計することにより、より低い免疫原性の問題とともによりよい組織浸透が達成されるはずである。
【0149】
幾つかの実施形態において、本発明は、対象中の標的の活性が阻害され及び治療が達成されるように、タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合タンパク質を対象(例えば、ヒト)に投与することを含む。幾つかの実施形態において、このような疾病は、関節炎、骨関節炎、若年性関節リウマチ、化膿性関節炎、ライム関節炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、脊椎関節症、全身性紅斑性狼瘡、クローン病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、インシュリン依存性糖尿病、甲状腺炎、喘息、アレルギー性疾患、乾癬、皮膚炎、強皮症、移植片対宿主病、臓器移植拒絶、臓器移植に関連する急性又は慢性免疫疾患、サルコイドーシス、アテローム性動脈硬化症、播種性血管内凝固、川崎病、バセドウ病、ネフローゼ症候群、慢性疲労症候群、ウェゲナー肉芽腫症、ヘノッホ・シェーライン紫斑症、腎臓の顕微鏡的血管炎、慢性活動性肝炎、ブドウ膜炎、敗血症性ショック、毒素性ショック症候群、敗血症症候群、悪液質、感染性疾患、寄生性疾患、後天性免疫不全症候群、急性横断性脊髄炎、ハンチントン舞踏病、パーキンソン病、アルツハイマー病、発作、原発性胆汁性肝硬変、溶血性貧血、悪性腫瘍、心不全、心筋梗塞、アジソン病、孤発性の、多内分泌腺機能低下症候群I型及び多内分泌腺機能低下症候群II型、シュミット症候群、成人(急性)呼吸促迫症候群、脱毛症、円形脱毛症(alopecia greata)、血清反応陰性関節炎、関節炎、ライター病、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸性関節炎、腸疾患性滑膜炎、クラミジア、エルシニア及びサルモネラ関連関節炎、脊椎関節症、アテローム性疾患/アテローム性動脈硬化症、アトピー性アレルギー、自己免疫性水疱性疾患、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、類天疱瘡、線状IgA病、自己免疫性溶血性貧血、クームス陽性溶血性貧血、後天性悪性貧血、若年性悪性貧血、筋痛性脳脊髄炎/ロイヤルフリー病、慢性粘膜皮膚カンジダ症、巨細胞性動脈炎、原発性硬化性肝炎、突発性自己免疫性肝炎、後天性免疫不全症候群、後天性免疫不全関連疾患、B型肝炎、C型肝炎、分類不能型免疫不全症(分類不能型原発性低γグロブリン血症)、拡張型心筋症、女性不妊症、卵巣機能不全、早期卵巣機能不全、繊維性肺疾患、突発性間質性肺炎、炎症後間質性肺疾患、間質性肺炎、結合組織疾患関連間質性肺疾患、混合性結合組織疾患関連肺疾患、全身性硬化症関連間質性肺疾患、関節リウマチ関連間質性肺疾患、全身性紅斑性狼瘡関連肺疾患、皮膚筋炎/多発性筋炎関連肺疾患、シェーグレン病関連肺疾患、強直性脊椎炎関連肺疾患、血管炎性びまん性肺疾患(vasculitic diffuse lung disease)、ヘモシデローシス関連肺疾患、薬物によって誘導された間質性肺疾患、繊維症、放射性繊維症、閉塞性細気管支炎、慢性好酸球性肺炎、リンパ球浸潤性肺疾患、感染後間質性肺疾患、痛風関節炎、自己免疫性肝炎、1型自己免疫性肝炎(古典的自己免疫性又はルポイド肝炎)、2型自己免疫性肝炎(抗LKM抗体肝炎)、自己免疫媒介性低血糖症、黒色表皮腫を伴うB型インシュリン抵抗性、副甲状腺機能低下症、臓器移植に関連する急性免疫疾患、臓器移植に関連する慢性免疫疾患、変形性関節症、原発性硬化性胆管炎、1型乾癬、2型乾癬、特発性白血球減少症、自己免疫性好中球減少症、腎臓病NOS、糸球体腎炎、腎臓の顕微鏡的血管炎、ライム病、円板状紅斑性狼瘡、男性不妊症特発性又はNOS、精子自己免疫、多発性硬化症(全てのサブタイプ)、交感性眼炎、結合組織疾患に続発する肺高血圧症、グッドパスチャー症候群、結節性多発動脈炎の肺症状、急性リウマチ熱、リウマチ性脊椎炎、スチル病、全身性硬化症、シェーグレン症候群、高安病/動脈炎、自己免疫性血小板減少症、特発性血小板減少症、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺機能亢進症、甲状腺腫自己免疫性甲状腺機能低下症(橋本病)、萎縮性自己免疫性甲状腺機能低下症、原発性粘液水腫(primary myxoedema)、水晶体起因性ブドウ膜炎、原発性血管炎、白斑急性肝疾患、慢性肝疾患、アルコール性肝硬変、アルコール誘発性肝障害、胆汁うっ滞(choleosatatis)、特異体質性肝疾患、薬物誘発性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎、アレルギー及び喘息、B群連鎖球菌(GBS)感染、精神障害(例えば、うつ病及び統合失調症)、Th2型及びTh1型によって媒介される疾病、急性及び慢性疼痛(疼痛の様々な形態)、並びに、肺癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、大腸癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌及び直腸癌及び造血性悪性病変(白血病及びリンパ腫)などの癌、無βリポタンパク質血症、先端チアノーゼ、急性及び慢性寄生性又は感染性プロセス、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性又は慢性細菌感染、急性膵炎、急性腎不全、腺癌、心房(aerial)異所性拍動、AIDS認知症複合、アルコール誘発性肝炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性接触性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、同種移植拒絶、α−1−アンチトリプシン欠乏症、筋萎縮性側索硬化症、貧血、狭心症、前角細胞変性、抗cd3治療、抗リン脂質症候群、抗受容体過敏症反応(anti−receptor hypersensitivity reactions,)、大動脈(aordic)及び末梢動脈瘤、大動脈解離、動脈性高血圧、動脈硬化症、動静脈痩、運動失調、心房細動(持続的又は発作性)、心房粗動、房室ブロック、B細胞リンパ腫、骨移植拒絶、骨髄移植(BMT)拒絶、脚ブロック、バーキットリンパ腫、火傷、心不整脈、心機能不全症候群(cardiac stun syndrome)、心臓腫瘍、心筋症、心肺バイパス炎症反応、軟骨移植拒絶、小脳皮質変性、小脳疾患、無秩序な又は多巣性心房頻脈、化学療法関連疾患、慢性(chromic)骨髄性白血病(CML)、慢性アルコール症、慢性炎症性病変、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、慢性サリチル酸中毒、結腸直腸癌、うっ血性心不全、結膜炎、接触性皮膚炎、肺性心、冠動脈疾患、クロイツフェルト−ヤコブ病、培養陰性敗血症、嚢胞性繊維症、サイトカイン療法関連疾患、ボクサー脳、脱髄性疾患、デング出血熱、皮膚炎、皮膚科学的症状、糖尿病、真性糖尿病、糖尿病性動脈硬化疾患、瀰漫性レビー小体病、拡張型うっ血性心筋症、大脳基底核の疾患、中年のダウン症候群、中枢神経ドーパミン受容体を遮断する薬物によって誘発された薬物誘発性運動疾患、薬物感受性、湿疹、脳脊髄炎、心内膜炎、内分泌疾患、喉頭蓋炎、エプスタイン−バーウイルス感染、紅痛症、垂体外路及び小脳疾患、家族性血球貪食性リンパ組織球症(familial hematophagocytic lymphohistiocytosis)、致死的胸腺移植組織拒絶、フリードライヒ失調症、機能的末梢動脈疾患、真菌性敗血症、ガス壊疸、胃潰瘍、糸球体腎炎、何れかの臓器又は組織の移植片拒絶、グラム陰性敗血症、グラム陽性敗血症、細胞内生物に起因する肉芽腫、有毛細胞白血病、ハラーホルデン・スパッツ病、橋本甲状腺炎、枯草熱、心臓移植拒絶、血色素症、血液透析、溶血性尿毒症症候群/血栓溶解血小板減少紫斑病、出血、肝炎(A型)、ヒス束不整脈、HIV感染/HIV神経障害、ホジキン病、運動過剰疾患、過敏症反応、過敏性肺炎、高血圧、運動低下疾患、視床下部−下垂体−副腎皮質系評価、特発性アジソン病、特発性肺繊維症、抗体媒介性細胞毒性、無力症、乳児脊髄性筋萎縮症、大動脈の炎症、A型インフルエンザ、電離放射線曝露、虹彩毛様体炎/ブドウ膜炎/視神経炎、虚血再灌流障害、虚血性発作、若年性関節リウマチ、若年性脊髄性筋萎縮症、カポジ肉腫、腎移植拒絶、レジオネラ、リーシュマニア症、ハンセン病、皮質脊髄系の病変、脂肪血症(lipedema)、肝臓移植拒絶、リンパ浮腫(lymphederma)、マラリア、悪性リンパ腫、悪性組織球増殖症、悪性黒色腫、髄膜炎、髄膜炎菌血症(meningococcemia)、代謝性/特発性、偏頭痛、ミトコンドリア多系疾患(mitochondrial multi−system disorder)、混合性結合組織病、モノクローナル高ガンマグロブリン血症、多発性骨髄腫、多系統変性(メンセル・デジェリーヌ−トーマス シャイ−ドレーガー及びマシャド−ジョセフ)、重症筋無力症、マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ(mycobacterium avium intracellulare)、マイコバクテリウム・チュバキュロシス(mycobacterium tuberculosis)、骨髄形成異常、心筋梗塞、真菌虚血疾患、上咽頭癌、新生児慢性肺疾患、腎炎、ネフローゼ、神経変性疾患、神経原性I筋萎縮、好中球減少性発熱、非ホジキンリンパ腫、腹部大動脈及びその分枝の閉塞、閉塞性動脈疾患、okt3療法、精巣炎/精巣上体炎、精巣炎/精管復元術処置、臓器肥大、骨粗鬆症、膵臓移植拒絶、膵癌、腫瘍随伴性症候群/悪性腫瘍の高カルシウム血症、副甲状腺移植拒絶、骨盤内炎症性疾患、通年性鼻炎、心膜疾患、末梢アテローム硬化性疾患、末梢血管疾患、腹膜炎、悪性貧血、ニューモシスチス・カリニ(pneumocystis carinii)肺炎、肺炎、POEMS症候群(多発神経炎、臓器肥大、内分泌疾患、単クローン性γグロブリン血症及び皮膚変化症候群(skin changes syndrome))、灌流後症候群(post perfusion syndrome)、ポンプ後症候群(post pump syndrome)、心筋梗塞後開心術症候群、子癇前症、進行性核上性麻痺、原発性肺高血圧、放射線療法、レイノー現象及び病、レイノー病、レフサム病、規則的なQRS幅の狭い頻脈症(regular narrow QRS tachycardia)、腎血管性高血圧、再灌流障害、拘束型心筋症、肉腫、強皮症、老年性舞踏病、レビー小体型の老年性認知症、血清反応陰性関節炎、ショック、鎌形赤血球貧血症、皮膚同種異系移植拒絶、皮膚変化症候群、小腸移植拒絶、固形腫瘍、固有不整脈(specific arrythmias)、脊髄性運動失調、脊髄小脳変性、連鎖球菌性筋炎、小脳の構造的病変、亜急性硬化性全脳炎、湿疹、心血管系の梅毒、全身性アナフィラキシー、全身性炎症反応症候群、全身性発症若年性関節リウマチ、T細胞又はFABALL、毛細血管拡張症、閉塞性血栓血管炎、血小板減少症、毒性、移植、外傷/出血、III型過敏症反応、IV型過敏症、不安定狭心症、尿毒症、尿路性敗血症、じんましん、心臓弁膜症、静脈瘤、血管炎、静脈疾患、静脈血栓症、心室細動、ウイルス及び真菌感染、ウイルス性脳炎(vital encephalitis)/無菌性髄膜炎、ウイルス関連血球貪食症候群、ウェルニッケ−コルサコフ症候群、ウィルソン病、何れかの臓器又は組織の異種移植拒絶からなる群から選択される。
【0150】
非治療的使用
本発明の組成物は、非治療的使用のために、すなわち、インビトロ目的でも使用され得る。例えば、本明細書に記載されているタンパク質粉末及び関連組成物は、ゲノミクス、プロテオミクス、バイオインフォマティクス、細胞培養、植物生物学及び細胞生物学における使用など(但し、これらに限定されない。)の医学及びバイオテクノロジーにおける診断又は実験的方法のために使用され得る。例えば、本明細書に記載されている組成物は、標識及び検出法における分子プローブとして必要とされるタンパク質を提供するために使用され得る。本明細書に記載されている組成物のさらなる使用は、製造目的のための細胞増殖及びタンパク質製造など、細胞培養試薬のための補充物を提供することである。
【0151】
例えば、抗体の高い濃度を含有する組成物は、研究室用途のための試薬として使用され得る。抗体のこのような高度に濃縮された形態は、研究室実験の現行の制限を拡張する。
【0152】
本発明の製造に対する別の使用は、食品に対する添加物を提供することである。幾つかの実施形態において、本発明の組成物は本質的にタンパク質及び糖からなるので、栄養補助物などの所望のタンパク質の高い濃度を食品に送達するために使用され得る。従って、本発明の組成物は、タンパク質の高い濃度を提供することができる。
【0153】
製品
本発明の別の実施形態において、本発明のタンパク質粉末又は関連組成物を含有する製品が提供され、その使用説明書を提供する。一実施形態において、製品は容器を含む。適切な容器には、例えば、1つ又はそれ以上の瓶、容器(例えば、二重チャンバー容器)、注射器(単一及び二重チャンバー注射器を含む。)、注射器を含有する自動注射ペン及び試験管が含まれる。容器は、ガラス、プラスチック又はポリカーボネートなどの様々な材料から形成され得る。容器は、水性製剤を保持し、容器上のラベル又は容器に付属されたラベルは使用のための指示を示し得る。例えば、ラベルは、組成物が皮下投与のために有用であり、又は皮下投与が予定されることを示し得る。例えば、ラベルは、使用者が、例えば注射によって、液体(例えば、投与用組成物を調製するための無菌水又は生理的食塩水)を添加することを指示し得る。組成物を保持する容器は、例えば、水性製剤の反復投与(例えば、2から6回の投与)を可能にする複数回使用容器であり得る。製品は、第二の容器をさらに含み得る。製品は、他の緩衝液、希釈液、フィルター、針、注射器及び同封物など、商業的及び使用者の見地から望ましい他の材料を使用説明書とともにさらに含み得る。
【0154】
本発明は、以下の例によってさらに説明されるが、以下の例を限定的なものと解釈してはならない。
【0155】
本発明の例示
本例では、IgG分子のFab断片を噴霧乾燥し、分析した。この研究の対象は、適切な製剤並びに高い収率及び(保存中間体としての使用が予定されているので)優れた保存安定性を有するFab断片を噴霧乾燥させるためのプロセス条件を発見することであった。噴霧乾燥プロセス及びその後の保存の間のタンパク質の安定化は、様々な糖の添加によって達成された。この研究のために、トレハロース、ショ糖及びソルビトールを液体タンパク質濃縮物に添加した。タンパク質の安定性は、様々な分析法、特に、サイズ排除クロマトグラフィー、動的光散乱、濁度測定及び等電点電気泳動から得られたデータを用いて分析した。
【0156】
材料
MAK195F濃縮物
この実施例において使用されるタンパク質は、MAK195F(12.4mg/mL);NaCl(8.77mg/mL);Na3PO4(1.64mg/mL);Pluronic(R)F68(0.1mg/mL)及び水(適量)を含有する水溶液として、Abbott laboratoriesによって提供されたアフェリモマブ(MAK195F)であった。MAK195F濃縮物は、7.2のpHを有し、等張(約286mosmol/kg)に近かった。MAK195F濃縮物は、0.981mPasの粘度(Schott Ubbelohde粘度測定器を用いて測定)及び1.0086g/cm3の密度(Chemproから得たDMA46を用いて測定)を有していた。
【0157】
アフェリモマブタンパク質は、100キロダルトン(kDa)のおよその分子量を有するマウス抗TNFα抗体(IgG3)のF(ab’)2断片である。アフェリモマブタンパク質は、それぞれ214アミノ酸を含む軽鎖及び233から241アミノ酸を含有する重鎖をもたらすIgG3モノクローナル抗体のペプシン切断によって作製される。Fd’断片の約30%がSerH222においてグリコシル化されている。異なるグリコシル化パターンのために、アフェリモマブは、7.5から8.8の等電点(IEP)範囲の最大7つのイソフォームを有する。
【0158】
濃縮物は、約400gの一部の中に、ドライアイス下で得られた。凍結融解サイクルの繰り返し及び液体状態での長期保存を回避するために、濃縮物を融解し、40から50mL部分で分取し、−80℃で保存し、使用の前に新たに融解した。
【0159】
賦形剤
タンパク質を安定化させるために、D−ソルビトール(Sigma、Product:S−7547、Lot:108H01461);ショ糖(Sigma、ProductS−7903、Lot014K0010)及びD−(+)トレハロース二水和物(Sigma、Product:T5251、Lot:113K3775)という3つの異なる糖を使用した。
【0160】
全ての水溶液は、必要であれば、0.2μmの膜フィルター(Schleicher & Schuell)を通してろ過された二重蒸留水(Fi−stream4BD;Fisons)を用いて調製した。
【0161】
方法
噴霧乾燥
噴霧乾燥実験は、粉末回収用の高性能サイクロン1を用いて、Buchi Mini−Spray DryerB−191(図1)上で行った。加熱装置3及び乾燥チャンバー内に入る前に、800L/分の空気流速で(90%吸引力)、Luwa Ultrafilter2(ファイバーガラス;フィルタークラス:HEPAH13 High Efficiency Particle Absorber)を通して、乾燥空気をろ過した。蠕動式ポンプ5(QLF=約3mL/分;シリコンチューブφ=3mm)によって、乾燥チャンバー4に輸送される前に、0.22μmフィルターユニットを通して、全ての液体供給物をろ過した。微粉化は、社内供給(QAA=700L/時間)からの圧縮空気を用いて、2つの液体ノズル6(開口部直径:0.7mm)によって行われた。2つの液体ノズルには、圧縮空気(4.5バール)及び水冷却システムを用いて、自動清浄システムが搭載された。噴霧乾燥後、乾燥空気グローブボックス(glove box)(RH<2%)の中で、収集容器7から得られた粉末を回収し、ガラス容器(クロロブチルゴム栓)の中に充填し、パラフィルムで密閉し、−80℃で保存した。粉末の収率は、液体供給物中の全ての固体によって除された収集容器内の粉末の量として定義した。サイクロンの内部への粉末の堆積は収集されなかった。
【0162】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
可溶性凝集物を検出するために、サイズ排除クロマトグラフィーを使用した。Amersham Biosciencesによって購入されたTricorn Superose12/300GLカラム(分離域1から300kDa)を、シリーズ200LCポンプ、ISS200自動試料採取装置及び235Cダイオードアレイ検出装置を含むPerkin Elmer High Pressure Liquid Chromatography(HPLC)システムに接続された。粗い粒子のきょう雑を回避するために、Superoseカラムの前に、phenomenexセキュリティーガードプレカラム(AJ0−4489カートリッジを搭載)を取り付けた。移動相(緩衝液A、流速:0.5mL/分)は、塩化ナトリウムが添加され(0.5mol/L)、0.2μmの膜フィルター(Schleicher&Schuell、FP30/0.2CA)を通してろ過され、ヘリウムを用いて約10分間脱気されたリン酸カリウム緩衝液(pH6.9)であった。全ての試料は、直接測定され(例えば、液体供給物)、又は1mg/mLのタンパク質濃度になるように緩衝液Aを用いて注意深く再溶解し(噴霧乾燥された(sd)粉末)、調製直後に分析した。操作当りの注射容量は100μLであり、一般に、再現可能な結果を確保するために、全ての試料を2回(液体供給物)又は3回(噴霧乾燥粉末)測定された。全てのクロマトグラムは、Perkin Elmer TotalChrom Navigatorソフトウェア、バージョン6.2を用いて手動で積算した。
【0163】
示差走査熱量測定(DSC)
Mettler Toledo DSC 822eを用いて、熱的現象を調べた。乾燥空気条件(glove box)下で、アルミニウムのフライパンの中に、粉末5から15mgを秤量した(Mettler、AT DeltaRange(R))。アルミニウムのフライパンを冷却密封し、熱量測定装置中に挿入した(フライパンは、予想されるTg(加熱/冷却速度:10℃/分)を通じて、順次加熱及び冷却する定義された温度プログラム(製剤に依存する。)に曝露した。ガラス遷移温度は、Mettler STARe SoftwareV6.10によって推定され、加熱工程の間に吸熱性遷移の中点として予め定義した。他の不可逆的吸熱現象の妨害を避けるために、第二及び第三の加熱サイクルのみを考慮に入れた。実験全体を通じて、測定セルは乾燥され、N2気体を噴き付けた。
【0164】
広角度X線回折(WAXD)
粉末の結晶性は、40kV/40mA及び25℃でのCuKα放射(λ=0.15418mm)によるPhilipsモデルX’pert MPDを使用するx線粉末回折によって調査した。60から80mgの粉末量をアルミニウム試料ホルダー中に充填し、直ちに走査した。全ての走査は、0.02°/秒の段階サイズを用いて、範囲2θ=0.5°−40°で測定した。Black及びLoveringの方法を基礎とした方法を用いることによって、回折ダイアグラム(下記参照)の結晶及び非晶質の面積から試料の結晶性(結晶性の程度)を計算した。「Black,Lovering Journal of Pharmacy and Pharmacology 29:684−687(1977)」。
【0165】
C=Ic/(Ic+Ia)=AUC結晶/AUC合計=(AUC合計−AUC非晶質)/AUC合計
Cは、結晶性の程度であり(100を乗じた場合、パーセント結晶性と記載される場合もある。)、Ic及びIaは、それぞれ、結晶又は非晶質領域によって散乱されたX線の強度(ピーク及び幅広い輪(halo)の曲線下面積(AUC)に等しい。)を表す。AUC非晶質は、ダイアグラムから結晶ピークを切除し、曲線フィッティングを使用することによって計算した。
【0166】
動的光散乱
可溶性及び不溶性凝集物を検出するために、Zetasizer Nano ZS(Malvern、Germany、ソフトウェア:DTSバージョン:4.2)を用いて、動的光散乱(DLS)測定を行った。Zetasizerは、633nmのレーザー光を使用し、173°での散乱を検出する(裏散乱検出)。Zetasizerは、サイズ測定に対して0.6から6000nmの測定範囲を有する。粒子サイズは、試料中での粒子のブラウン運動を測定することによって測定した。「Malvern Instruments:Malvern Nano Series User Mannual.MAN0317、Issue2.0、March2004」。液体製剤は添加物を一切加えずに検査し、粉末は、元のタンパク質濃度になるように二重蒸留水(0.2μmを通してろ過)を用いて希釈した。低容量キュベット(使い捨ての低容量キュベット、Malvern)を使用することによって、測定当り0.5mLの溶液が必要とされるに過ぎなかった。2mLキュベットを用いた検査は、同じ結果を与えた(データは図示せず。)。2分の平衡化時間(25℃)の後、各試料の3つの測定を行った(それぞれ、5回の実行(実行時間:30秒、実行間の遅延:2秒))。この手順は、全ての粉末/溶液試料に対して3回行った。得られたダイアグラムをスコア表として輸出し、MSExcelを用いてダイアグラムに変換し、サイズ容積及びサイズ強度分布を示す試料当り3つプロットされた曲線を得た。
【0167】
走査型電子顕微鏡(SEM)
20kVでAmray1810T走査型電子顕微鏡を用いた電子顕微鏡写真を介して、粒子サイズ及び形態を調べた。自己接着性フィルムを用いて、A1試料スタブ(stub)(G301、Plano)上に小粉末試料を固定した。1.5分間、20mA/kV(Hummer JR Technics)で、Auを用いてスパッタリングを行った後、試料を顕微鏡下に配置し、異なる倍率(通常、1000x、2000x及び3000x)の写真を撮影した。一般に、3000xの倍率で撮影された写真を評価した。
【0168】
カール・フィッシャー滴定
噴霧乾燥された(sd)粉末の水分含量は、Mitsubishi Moisture Meter(CA−06 Coulometric)及びMitsubishi水蒸発装置(VA−06)を用いて測定した。約70mgの粉末試料は、乾燥空気条件下で(glove box)、特殊な試料ホルダー中に充填した。Mettler AT DeltaRange分析用の秤を用いて、空の試料ホルダーを秤量した。試料ホルダーを蒸発装置ユニットに接続することによって、加熱されたオーブンユニット中に引き込まれているガラスボートの中に粉末を充填した。水を蒸発させ(150℃)、窒素気体流(約200mL/分)を介して、滴定セル中に定量的に移しながら、真の試料重量を計算するために、試料ホルダーを再秤量した。滴定は、0.01μgH2O/分以下の滴定速度で始まった。
【0169】
眼に見えない粒子
例えば、再溶解された噴霧乾燥粉末の粒子きょう雑は、コンピュータ補助粒子計数装置Syringe(Klotz、Germany、Software:SW−CA Version1.2)を用いて観察した。レーザーの前で、250μmの直径まで縮小されたフロースルーセルを介して、液体を吸引した。粒子がレーザー光線に当ると、粒子の検出される強度は低下した。レーザー光の減弱は、粒子サイズの指標であった。全ての粉末は、二重蒸留水(0.2μmを通してろ過)を用いて、元の濃度になるように再構成され、システムを通して0.8mL溶液をポンプで拍出した(システムを洗浄するために1回、粒子計算のために3回)。溶液1mLに対して、結果を計算した。医薬的応用のために、ソフトウェアは、米国薬局方(SPP)又は欧州薬局方(Ph.Eur.)の規制に従って、粒子を8つの異なるサイズ範囲(1から50μm)に段階付けした。
【0170】
等電点電気泳動(IEF)
アフェリモマブのIEF分離は、Fd’断片と軽鎖変形物の電荷の差を基礎とした。アフェリモマブのIEF分離は、アフェリモマブの同一性試験としての役割を主に果たしたが、安定性試験のための手段としても使用することが可能であった。等電点電気泳動は、Serva Blue Power3000電源に取り付けられたPharmacia MultiphorIIチャンバーを用いて行った。6から9のpH勾配(Servalyt Pr ecotes6−9、125×125mm、厚さ0.3mm;Serva、Germany)を有する即時使用ゲルを冷却プレート(4℃、熱伝導媒体としての幾らかのBayolFで被覆されている。)上に配置した。全ての試料を約4mg/mLのタンパク質濃度まで希釈し、10μLをゲル上に配置した。等電点電気泳動プログラムは、200Vで始まり、約195分を要した(終点電圧2000V)。20分間固定した後に、Coomassie Brilliant Blueを用いてゲルを染色し(20分)、次いで、数回脱染色した。使用した溶液が、下表1に列記されている。
【0171】
【表1】
【0172】
水で濯ぎ、室温で一晩乾燥させた後、ProViDoc(R)ソフトウェア(Version3.20)とともにDesaga CAB UVIS VD40ワクステーションを用いて、ゲルを検査及び走査した。
【0173】
濁度
濁度は、試料を通して直線的に透過せずに、光を散乱及び吸収させる光学的特性の表れである。濁りは、固体、コロイド及び気泡などのあらゆる懸濁された粒子によって引き起こされ得る。濁度は、明確に定義されたパラメータではないので、乳白光標準(例えば、ヒドラジンゲル)と試料を比較することによって測定した。試料の比濁式濁度単位(NTU)を推定するために、Hach Ratio XR濁度計を使用した。濁度計は、Hydrazin標準を用いて較正した。Nessler管のブランク値を測定した後、元のタンパク質濃度になるように、二重蒸留水(0.2μmを通してろ過)で試料を希釈又は再構成し、次いで、光線の中に配置した。ガラスの不均一性の影響を除外するために、ブランク測定の間に、管の方向に印を付けること、及び試料測定のために同じ方向で管を使用することが重要であった。
【0174】
発色
再溶解された噴霧乾燥粉末の発色の変化を検出するために、透明な液体の色を測定するための発色測定装置であるLICO400(Hach Lange、Switzerland)を使用した。これは、試料に最も近い参照溶液を決定し、試料と参照間の発色の変動を定量した。この研究では、明るさ(L、黒−白)及び色(±a、赤−緑;±b、黄色−青)の座標として色を定義するCIE−Lab色空間を使用した(CIEは、Commission Internationale d’Eclairageの略である。)。LICO400は、欧州薬局方からの標準溶液を用いて較正した。(BG5−7、茶色っぽい−黄色、希釈;B5−9、茶色)。全ての粉末試料は元の濃度になるように再構成し、小容積水晶ガラスキュベット中に200μLを充填した。
【0175】
UV分光光度法
濃縮物又は限外ろ過された分取試料のタンパク質濃度を測定するために、Perkin Elmer Lambda25UV/VIS Spectrometerを使用した。約0.6mg/mLのタンパク質濃度になるように、試料を希釈した。3つの水晶ガラスキュベットに試料溶液を充填し、キュベットの各1つを、波長(λ)=280nm及びλ=320nmで3回測定した。以下の式を用いて、タンパク質濃度を計算するために、(UVWinLab5.0ソフトウェア、Perkin Elmerによって得られた)吸光度の値を使用した。
【0176】
c=[(A280−A320)平均/1.37]*F(mg/mL)
1.37=ε280nm−ε320nm
F=VH2O/Vprot+1
これらの式において、Fは希釈倍数であり、Aは測定された吸光度を表し、εはモル濃度吸光係数(1mg/mL溶液の吸光度、1cmキュベットを使用)及びVは第一の希釈工程における容積を表す。
【0177】
クロスフローろ過
より高い濃縮されたアフェリモマブ溶液を達成するために、Millipore Labscale(R)TFFシステムを用いて、濃縮物を限外ろ過した。30kDaの分子量カットオフ(MWCO)を有するフィルター装置に沿って、当初のアフェリモマブ濃縮物を絶えずポンプで拍出した。タンパク質を除く全ての成分は膜を通過し、外部容器中に集められた。タンパク質自体は環状流に戻された。現在の濃度は、容積の規模によって概ね推定され得る。UV分光光度法を使用することによって、ろ過プロセスが停止された後、正確なタンパク質濃度を計算した。
【0178】
結果
MAK濃縮物の性質決定
融解直後の濃縮物は、約0.9から1%の凝集(分取試料間の差があり得るので、全ての分取試料は融解直後のSECを介して調べられる。)を通常示し、検出可能な断片化を示さなかった。分子量マーカーキット(炭酸脱水酵素、分子量(Mr)=29kDa及びβ−アミラーゼ、Mr=200kDa)を用いた実験によれば、凝集物は主に二量体であった。DLSダイアグラムは、単量体が約10nmの水力学的直径を有することを示した。濃縮物は、相対的に低い眼に見えない粒子のきょう雑及び約5NTUの濁度値を示した。5つのイソフォームの典型的なIEFバンドパターンが見られた。全てのさらなるIEF実験において、純粋な濃縮物がマーカー/標準として使用されたので、あらゆる差は直接検出された。
【0179】
着色測定において、濃縮物は、僅かに茶色がかったほぼ無色の溶液である標準溶液B9に最も近かった。濃縮物は、1.009g/cm3の密度及び0.981mPasの粘度(何れも20℃で測定された。)を有していた。
【0180】
MAK濃縮物の噴霧乾燥
第一の噴霧乾燥実験は、さらなる安定化物質を一切含まない純粋な濃縮物を用いて行った。乾燥プロセスの間のタンパク質損傷の程度を測定した。
【0181】
MAKのプロセス安定性
噴霧乾燥プロセスの間にタンパク質がどのような悪影響を受けるかについて測定するために、第一の実験に対するプロセスパラメータは、Buchi191に対する既存の研究から採用された。例えば、Maury:Tin=130℃、QLF=約3mL/分、QAA=700L/時間、QDA=800L/分、約80℃のToutをもたらした。「Maury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Bioharm.59(3):565−573(2005)」。
【0182】
得られた白色粉末(サイクロン収率:約60%)は、最大13μmの直径を有する球形、ドーナツ型又はギザギザの粒子を含んでいた。再溶解された粉末(22.9mg粉末/mL水)は、12から13mg/mLのタンパク質濃度を有しており、粉末の喪失は噴霧乾燥のプロセス及びサイクロンの分離性能によって引き起こされたものと推測される。タンパク質溶液からのタンパク質又は賦形剤の優先的な喪失は、噴霧乾燥後に非晶質の状態であったので検出することができなかった。噴霧乾燥されたMAK濃縮物のX線回折ダイアグラムは、バルク薬物物質の他の成分(例えば、リン酸ナトリウム及び塩化ナトリウム)によって引き起こされた結晶ピークを示した。ピークパターンは、噴霧乾燥された塩化ナトリウムのピークパターンに極めて近かった。粉末の残留水分含量は1.4から2%であり、プロセスの間の周囲条件(乾燥空気の室内湿度、室温など)に依存していた。
【0183】
SECでは、再溶解された粉末は凝集の顕著な増加(2.5から3%)を示した。しかしながら、安定化物質を加えていないタンパク質溶液に関しては、増加はそれほどでなかった。Mauryは、噴霧乾燥され、透析されたIgG溶液に対して最大17%を見出した。「Maury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59(2):251−261(2005)」。これは、断片が、噴霧乾燥の間に、完全長抗体より低い感受性であるが、凍結融解によって誘導される凝集に関してはそうではないことを示す。「Wang et al.,Journal of Pharm.Sci.96(1):1−26(2007)」。別の可能性は、塩化ナトリウムの存在によって引き起こされた安定化効果が存在したことである。Arakawa他は、溶液中のタンパク質と塩化ナトリウムの間に安定化相互作用を経験したが、Arakawa他は、本明細書において使用されている塩濃度より高い塩濃度のみを調べた。「Arakawa et al.,Biochemistry21:6545−6551(1982)」。凝集の増加は、DLS及びIEFの結果にも見られた。
【0184】
等電点電気泳動の間、新しいバンドが等電点電気泳動の出発点に現れた。これは、ゲル内に浸透できず、従って、その等電点に従って移動できない大きい凝集物が原因である可能性があった(Serva GmbHによれば、Serva GmbHのIEFゲルの孔は、約200から300kDaのカットオフを有する。)。DLSの結果は、μmサイズにさらなるピークを示した。ピークは、サイズ−容量分布の中に認めることは困難であったが、サイズ−強度分布中では明瞭であった。粒子の散乱の強度はその直径の6乗に比例するので、多くの小さな粒子よりずっと多くの光を散乱する大きな粒子は、ほとんどなかった。「Malvern Instruments:Zetasizer Nano Series User Manual.MAn0317、Issue2.0、March2004」。プラセボ濃縮物を用いたDLS実験はその水力学的直径のピークを示さなかったので、明らかに、追加のピークはタンパク質によって引き起こされた。これらの大きな凝集物はSEC中において見られなかったので、不溶性であるに違いない。再溶解された粉末の粒子きょう雑は、全ての粒子画分を通じて増加された。しかしながら、研究室噴霧乾燥装置上でのプロセスは、(注入乾燥空気はろ過されたが)粒子きょう雑を完全には排除できなかった。さらに、試料を採取するための容器の開放も、粒子源であり得た。さらに、再溶解された粉末の濁度は、濃縮物と比べて著しく増加していた(濃縮物:5NTU;濃縮物噴霧乾燥:118NTU)。
【0185】
適切なTinを見つける
130℃のTinがアフェリモマブタンパク質を噴霧乾燥するのに適しているかどうかを見出すために、異なる温度を用いた実験系列を実施した。この系列に対するQLF=約3mL/分でのTin及び得られたToutが、表2に列記されている。意図は、乾燥効率とタンパク質のプロセス安定性との間の満足できる妥協点を見出すことである。
【0186】
【表2】
【0187】
180℃の粒子が100℃の粒子より若干多くの皺を有していたことを除き(但し、差は極めて僅かであった。)、粒子の形態には、差が観察されなかった。水の含量は、Tinの増加とともに減少する傾向があり、100℃と130℃の間に著しく下降する段階があった。検出可能な凝集には著しい差は存在しなかったので、凝集はあまり温度依存性であるようには見受けられなかった。粉末収率は、より高温で小さな改善を示した。これらの結果は全て高いTinの使用を推奨するものであったが、等電点電気泳動(IEF)及び動的光散乱(DLS)の結果はアフェリモマブに対する適切なTinが真ん中の範囲にあることを示唆した。IEF中の凝集バンドの強度は、乾燥空気注入温度に線形的に依存していた。また、DLSダイアグラムは180℃で劣る結果を示した。より高い水力学的直径(約16nm)に、単量体ピークが現れた。凝集物は、IEFにおいて推定されたように、より数が多くなるように見受けられるだけでなく、より大きくなるように見受けられた。さらに、単量体ピークの形状(より小さな分布の方向へ)及びサイズはシフトし、タンパク質に対する大幅な損傷を示唆する。特に小粒子画分(<15μm)において、粒子のきょう雑も、180℃においてより高かった。これらの結果に従って、さらなる研究のために、130℃及び155℃のみが許容されると考えることができる。これら2つの注入温度の結果は似通っているので、130℃のTinを選択した。この温度での操作は、産物品質に対して全体的な許容できる結果を与えながら、タンパク質に対する熱的ストレスを最小限に抑えるはずである。
【0188】
凝集の源
噴霧乾燥プロセスは、タンパク質に対する多数の不活化の原因を含む。幾つかは、製剤を賦形剤で修飾することによって低減することができるのに対して、不活化の他の原因には影響を与えることができない。プロセスの間の凝集の増加の原因を単一のストレス因子に明確に求めることはできない。熱ストレスは、正しいTin(ここでは、約130℃)を選択することによって、ある程度まで調節することができる。不可避なストレスの程度を見出すために、以下の実験を行った。
【0189】
蠕動式ポンプの影響
凝集に対する蠕動式ポンプの剪断ストレスの影響を定量するために、SECを使用した。アフェリモマブ濃縮物10mLを液体供給物として使用した。試料は、配管及びBuchiB−191の蠕動式ポンプを通して試料を拍出し、2つの液体ノズルに入る直前に収集した。液体供給物は、ポンプ拍出過程の前及び後に検査した。凝集の変化は全く認められなかった。研究室の噴霧乾燥装置の蠕動式ポンプはアフェリモマブタンパク質の凝集に影響を及ぼさないこと又は増加させないことが推定され得る。Brennan他(Diabetes34、353−359(1985))によって観察されたポンプにより誘導されたインシュリン凝集は、長期拍出後にインシュリンが溶液を出たときのみに起こった。この研究での配管を通じた通過は最大数分を要するに過ぎないので、損傷の危険は極めて小さい。
【0190】
微粉化プロセスの影響
微粉化の間の剪断ストレスの程度は、濃縮物の2つの試料(2mL)を微粉化し、その後、SEC及びIEFを介して検査することによって検査した。IEFにおいて、試料間に差を観察することはできなかった(さらなるバンド又はバンドパターンの変化はなし)。SECの結果は、凝集の僅かな増加を示した。この増加は、完全な噴霧乾燥プロセスの間ほど高くなかった。従って、凝集の僅かな部分が微粉化によって引き起こされたと結論付けることができるが、Maa他が仮定したように、タンパク質の損傷は剪断力のみならず、大きな空気/液体界面の結果であり得る。「Maa et al.,Biotechnology and Bioengineering54(6):503−512(1997)」。
【0191】
熱液ストレスの影響
タンパク質は熱感受性材料であるが、全てのタンパク質が熱的ストレスに対して等しく感受性であるとは限らない。アフェリモマブ濃縮物がどのくらい温度に対して耐えることができるのか(熱的ストレス)を測定するために、異なる期間にわたって、タンパク質溶液の少量を異なる温度に曝露した。濃縮物の安定性に対する基準はSECデータ、IEFの結果及び溶液の光学的外観であった。凝集の出現後、試験を終了した。結果は、下表3に示されている。
【0192】
【表3】
【0193】
濃縮物は、約60℃より高い温度に耐えることができなかった。IEFゲルにおいて、濁りの出現には、出発点におけるさらなるバンドの出現が伴った。元のバンドパターンの漂白は可溶性タンパク質の喪失を示唆する。可溶性タンパク質の喪失は、SECファイル中にも検出された。単量体のピークは、温度及び時間が増加するとともに縮んだ(縦座標)。40℃は、24時間にわたって適用された場合でさえ、アフェリモマブ濃縮物に影響を及ぼさなかった。タンパク質の熱的ストレス損傷は、凝集の増加によっては表されず、断片の出現によって表された。凝集ピークは概ね変化しなかった。従って、濃縮物に対して適用された熱ストレスは、断片化及び凝集をもたらしたのに対して、噴霧乾燥の間に微粉化された濃縮物に対して適用された熱ストレスは、主に凝集をもたらした。アフェリモマブ濃縮物は、短期間、最大約50℃の温度に耐えることができた。約60℃において、タンパク質の損傷は迅速に起こった。噴霧乾燥プロセスの間、液滴は湿球温度(Twb)(通常、Toutより25から30℃低い(この研究では、通常80℃))に曝露され、曝露の時間は極めて短かった。「Mumenthaler et al.,Pharm.Res.11(1):12−20(1994)」。
【0194】
まとめ
凝集は、ポンプ拍出操作の間の剪断力によって引き起こされるものとは考えられなかった。微粉化は、噴霧乾燥プロセスの間の凝集の増加の一部に対する原因であった。熱的ストレスは、タンパク質の安定性に対して主要な役割を果たしたが、濃縮物に対して適用された場合、断片化及び不溶性凝集物をもたらした。液滴は、噴霧乾燥の間に約55℃の臨界温度に達したので(Toutを25から30℃下回る(Mumenthaler他によって推定された。)が、極めて短期間に過ぎない。)、凝集の増加は、温度及び微粉化の相互作用によって引き起こされるものと思われた。「Mumenthaler1994」。
【0195】
賦形剤を用いた噴霧乾燥実験
アフェリオマブタンパク質の安定化を最適化するために、様々な賦形剤を検査した。最終目的は、乾燥プロセス及びその後の保存の間でにおける十分な安定性であった。
【0196】
10から150mMソルビトールの添加
本例では、表4に示されているように、安定化物質:タンパク質の最良のモル比を決定するために、10、25、50、100又は150mMソルビトールをアフェリモマブ濃縮物に添加した。結果は、図2及び3に示されている。150mMソルビトール溶液に関して、Tgはプロセス及び室温さえずっと超えて下降し、極めて低い収率から明らかなように、この混合物を適切に噴霧乾燥することはできない。混合物は、乾燥チャンバーを通過する間に乾燥されることはできず、サイクロン分離装置に入るときにはなお粘っているので、大部分がサイクロンの壁に接着し、収集することができない。「Maury et al.,Eur.Journal of Pharm. and Biopharm.59(3):565−573(2005)」。
【0197】
【表4】
【0198】
小さな収率のために、これらの試料のカール・フィッシャー滴定(KF)及び広角x線回折(WAXD)分析は実行することができなかった。10mMが不十分であったことを除き、凝集の増加はソルビトールの量にあまり依存していなかった。ソルビトールの様々な量は粒子の形態に影響を及ぼさなかったが、混合物中に存在する賦形剤が多いほど、粒子は丸い形状を採った(図4参照)。(対照として)純粋なソルビトール溶液を噴霧乾燥することは不可能だったが、様々なソルビトール濃度のプラセボ粉末は全て、球形の粒子を示した。
【0199】
ソルビトールの正味重量が高くなるほど、結晶性の程度は減少した。IEFの結果は、さらなるバンドは、存在するにしても、不明瞭に検出できるに過ぎないという点で、純粋な濃縮物の結果と概ね合致していた。10mM混合物も、予期されないDLSダイアグラムを示した。μmサイズの明瞭なピークはサイズ・容積分布において殆ど検出できなかったので、大きな凝集物の量は極めて少なかった。しかしながら、添加されたソルビトールの25、50及び100mMはほぼ同一のダイアグラムを示した。粒子のきょう雑はソルビトール(固体)の量に線形的に依存しているようであり、10mMと25mMの間に最も大きな段階を示す。しかしながら、差は、より小さな粒子サイズに主として限定された。15μmより大きな粒子に対する値は、多かれ少なかれ等しかった。従って、25又は50mMソルビトールの添加によって、アフェリモマブ濃縮物の十分な安定化が実行可能であるように見受けられた。これら2つの混合物は、水含量及びその結果として得られるTgを除き、大きな差を示さなかった。
【0200】
10から100mMトレハロースの添加
高いソルビトール量を用いて見出された結果のため、トレハロース検査系列からは150mM混合物を除外した。トレハロース二水和物としてトレハロースを添加したので、混合物は、アフェリモマブ濃縮物15mL中に、56.7と567mgの間のトレハロース二水和物を含み、トレハロース:MAKの質量比は表5中に見ることができる。図5と6から明らかなように、25mMと100mMの間で、結果は同様であった。収率は、ソルビトールと比べて若干高い総濃度を平均した。トレハロースを用いて、極めて優れた安定化が得られ、また、収率は全ての濃度にわたって安定であった。増加した凝集は最小限であり、10mM混合物に関してのみ、SEC中の凝集の僅かな増加が見られた(0.2%)。
【0201】
【表5】
【0202】
それにも関わらず、DLSダイアグラムから明らかなように、全ての混合物中に不溶性の凝集が生じた。単量体の量はソルビトールの結果と同等であった。粒子の結晶性及び球状性は、トレハロースの量と共に直接変動した。純粋なトレハロースの噴霧乾燥は球状粒子を与えるので、トレハロースの添加は、粒子により丸い形状を採らせた(図7参照)。ソルビトール実験から明らかなように、粒子のきょう雑は賦形剤濃度によって影響を受けるように見受けられたが、同じく、小さな粒子サイズ(<15μm)に限定された。トレハロースの高いTgの故に(乾燥されたトレハロースに対するTgは、115℃である。)、トレハロース混合物のTgも高く、これは粉末安定性研究に対する利点であり得る。「Adler et al.,Journal of Pharm.Sci.88(2):199−208(1999)」。適切なプロセス及び保存時安定性を有する粉末を作製するために、25mM及び50mMがトレハロースの最も有望な割合であるように見受けられた。得られた粉末は、ソルビトール粉末より少ない残留水を示した。これらの混合物を用いて満足できる結果が得られたので、150mMトレハロースを用いるその後の検査という選択肢は放棄した。
【0203】
10から100mMショ糖の添加
アフェリモマブ濃縮物への25mMから100mMショ糖の添加を検査した(表6参照)。25mMから100mMまでのショ糖の添加は、70から80%の高い粉末収率を与えた(図8及び9)。Tgは、25mMで最適に達した。凝集の増加は、全濃度を通じて大幅に異ならなかった。同じく、結晶性(C)の程度はショ糖の量とともに線形的に減少した。様々な粉末の残留水含量は、トレハロース混合物に対して観察された残留水分含量より、平均して若干高かった。粒子の球状性はショ糖の量によって影響を受けた。タンパク質はギザギザの球形を形成する傾向があったのに対して、ショ糖は球形粒子を形成する傾向があった。
【0204】
【表6】
【0205】
DLSファイルにおいて、単量体の量は10mMと比べて100mMショ糖においてより低かったが、この印象は強度・サイズ分布ダイアグラムに限定された。100mMショ糖に対する容量・サイズ分布では、凝集ピークの検出は困難であった。10mM混合物では、より大きな凝集物(>1μm)を認めることができた。これらのさらなるピークは、ショ糖混合物の残りには現れなかった。IEFゲルは、実質的な異常を一切示さなかった。さらなるバンドは、50及び100mMに対して、不明瞭に検出できるに過ぎず、濃縮物の元のバンドパターンを明確に認めることができた。粒子のきょう雑は、10mMから100mMまで減少し、10mMと25mMの間に最も大きな段階を示した。粒子サイズが大きくなるほど、差はより小さくなり、15μmより大きな粒子に対して、全ての混合物は類似の粒子量を示した。これらの結果全てを考慮に入れると、アフェリモマブ濃縮物への10mMショ糖の添加は不十分であり、最良の結果は25mM及び50mMにおいて得られた。
【0206】
まとめ
異なる量の3つの賦形剤に対する結果を比較すると、噴霧乾燥プロセスの間にタンパク質の保存を与えるために、賦形剤10mMが十分ではないことは明白である。従って、全ての賦形剤に関して最も好ましい結果は、25mM及び50mMを用いて得られた。100mM又は150mMでさえ、結果を改善しなかった(150mMソルビトールに関しては、全く逆)。凝集の増加に対する結果は、ソルビトールに関して若干高かった。結果の残り(ショ糖及びトレハロース)は、幅広く似通っていた。トレハロース及びショ糖は、アフェリモマブタンパク質を同じ程度まで保護し、ソルビトールより優れていた。
【0207】
保存時安定性試験
噴霧乾燥された粉末を、異なる温度及び残留水分条件に3ヶ月間曝露した。検査条件は、冷蔵庫(5℃、湿度なし)、60%相対湿度で25℃(中欧、北アメリカと類似)及び75%相対湿度で40℃(東南アジアと類似)であった。
【0208】
調製及び検査計画
純粋な濃縮物及び噴霧乾燥されたプラセボを保存した。プラセボ粉末は、アフェリモマブタンパク質を除き、ベラム(verum)粉末(噴霧乾燥されたタンパク質−賦形剤混合物)と同じ固体を含んだ。液体供給物のバッチサイズを推定するために、分析検査のために必要とされる粉末の量を予め計算した。同じ条件下で、50mLの液体供給物の3つ又は4つのバッチを噴霧乾燥し、Viton(R)密封蛍光弾性体及びDuroplast(R)ネジ蓋を有する小さなAl−バイアル中に計算された量がそこから充填された1つのバルクとして、得られた粉末を一緒に混合した。予備試験において、少量の水蒸気透過性を示すに過ぎなかったので(10日以上、室温で65%室内湿度下において保存したときに、噴霧乾燥された乳糖の水含量の変化は観察されなかった。)、Viton(R)密封蛍光弾性体を有するAlバイアルを選択した。各検査時において(t=1、2及び3ヶ月)、各混合物の2つの同じ試料(Alバイアル)を様々な空調されたチャンバーから取り出した。一方を分析のために使用し、他方を凍結装置に移し、(実施される可能性がある追加試験のための予備として)−80℃で保存した。これによって、合計152の容器が得られた(毎月チャンバーから取り出すための48(各温度に対して、ベラム4つ、ベラムの予備4つ、プラセボ4つ、プラセボの予備4つ)に加えて、さらなる熱処理なしに−80℃で保存された8つの容器(純粋な濃縮物又は新たに噴霧凍結された粉末))。
【0209】
アフェリモマブ濃縮物
SECの結果(表7参照)。SECクロマトグラムは、5℃において、濃縮物が凝集による僅かな損傷を受けるに留まったが、これらの凝集物は主に二量体でないように見受けられる。凝集物ピークの幅広い平坦域は、三量体/オリゴマーの存在を示した。断片化の発生及びクロマトグラムの減少するAUCによって明らかなように、より高い温度及びより長い保存期間は著しい分解をもたらす。
【0210】
【表7】
【0211】
異なる画分の保存時安定性の速度論を研究した。単量体の量は全ての温度で常に下降したのに対して、凝集は、25℃及び40℃で約2ヶ月後に、断片化に切り替わるように見受けられた。40℃において、凝集は、クロマトグラム中の分離したピークとしてもはや検出できず、3ヶ月後には、ピークパターンとして断片化ピークが優勢となった。40℃での著しい損傷は、試料を巨視的に分析することによって既に観察することができた。1ヶ月後に、40℃で保存された濃縮物は濁りを示したのに対して、5℃及び25℃の試料は裸眼で見ることができない発色の小さなシフトを示すに過ぎなかった。
【0212】
濁度の測定は、同等の結果を示した。濁度の明瞭なシフトは、ベラム(タンパク質を含有する試料)及びプラセボ濃縮物中に、40℃でのみ検出することができた。1ヶ月後、濃縮物は、150NTUを上回る値を示し、翌月にもなお増加した。光学的な濁りのために、40℃試料に対して、DLS測定を終結した。より低い温度では、変化は検出できなかった。粒子測定は、断片化及び凝集についてのさらなる情報を与えた。微粒子画分は減少したのに対して(25μm未満の粒子)、大きな粒子の数は常に増大した(おそらく、(クロマトグラムの減少するAUCによって仮定されるように)SECによって検出されなかった不溶性凝集物に相当する。)。これらも、試料の可視的濁りの原因となる粒子であるはずである。
【0213】
現在まで、25℃での損傷は極めて深刻であるようには見受けられなかった。しかし、IEFゲルを分析すると、この印象は誤っていることが判明した。1ヶ月後に、バンド強度の小さなシフトを既に認めることができ、3ヶ月後に、バンドパターンは元のバンドパターンから明瞭に異なっていた。最も高い等電点(IEP)(pH8.6から8.7)を有するイソフォームに対するバンドは完全に消失した。40℃の保存は、1ヶ月後に著しい損傷を引き起こし、保存検査の間さらに悪化した。
【0214】
従って、アフェリモマブ濃縮物は、低温で保存されたときに相対的に安定であった。しかし、濃縮物がより高い温度に置かれると、様々な経路を介して分解が起こった。長期間にわたって保存された場合、室温(25℃)でさえストレス因子であった。
【0215】
噴霧乾燥された粉末の安定性
噴霧乾燥を介して長期的な安定化を与えるために、追加の賦形剤を加えたアフェリモマブ濃縮物は、25℃で保存された濃縮物に対する結果に劣らない分解を示すべきである。追加の検査として、Alバイアルの密封(これまで、短期間に対してのみ検査された。)及び/又は噴霧乾燥された粉末の安定性に対する水分の影響を調べるために、噴霧乾燥プロセス直後及び3ヶ月の保存後にカール・フィッシャー滴定を行った。
【0216】
濃縮物+25mMソルビトール
5℃及び25℃で保存された試料は、(表8に示されているように)3ヶ月にわたって優れた安定性を示す。SECの結果では、明瞭な変動は認められなかった(デルタ凝集は1%未満である。)。40℃では、大幅な分解が起こり、凝集は強い増加を示し、二量体ピークに加えて大きな多量体が出現した。3ヶ月後、明瞭な断片ピークを検出することができた。
【0217】
【表8】
【0218】
5℃及び25℃で保存された試料は発色に一切シフトを示さなかったのに対して、40℃の試料(再溶解された)の色は1ヵ月後に僅かに変化し、時間が経過するに連れて、目に見える濁りさえ示した。プラセボ試料は何れの時間又は温度においても発色を変化させなかったので、この濁りはタンパク質によって引き起こされた。濁度測定の間の最も顕著な結果も、40℃において得られた。噴霧乾燥直後の約20NTUから始まり、40℃の試料は3ヶ月に120NTUを超える値に達した。しかしながら、20NTUは、示された純粋な濃縮物より顕著に高かった。40℃はTgより大きいので、ソルビトール混合物に対する臨界的パラメータであり、従って、ガラス状態はもはや維持することができない。
【0219】
粒子のきょう雑は類似の結果を示した。5℃及び25℃で検出可能な小さな変化のみが存在した。40℃/75%RHで保存された試料は、特に、小さな粒子に対して顕著な増加を示した。これは、僅かな濁りを観察することなく、粉末を再溶解することができないという事実によるものであった。プラセボ試料では、粒子の数はベラム試料中よりずっと少なく、特別な粒子サイズに限られなかった。予備研究は絶対的な水蒸気不透過性を示唆したが、粉末を保存するために使用されるAlバイアルは絶対的な水蒸気不透過性を確実には示さなかった。
【0220】
カール・フィッシャー滴定は、噴霧乾燥プロセスの直後及び保存の3ヶ月後に行った。初期値が僅かに高いことを除き、プラセボ試料は等しい結果を示したので、水の取り込みはタンパク質依存的でなかった。5℃の粉末は湿気の小さな増加を示したので、水の取り込みは空調されたチャンバーの室内湿度に依存していた。プラセボ試料に対する値は、ベラム試料に対する値より僅かに高かったので、ソルビトールとMAKの組み合わせは純粋な賦形剤より吸湿性であった。温度、残留水分及び容器の水蒸気透過性は、x線回折ダイアグラムに対して全く影響を与えなかった。3ヶ月後、最初のダイアグラム(t=0)に比べて回折パターンになお差は存在しなかった。
【0221】
粉末の巨視的外観でさえ、湿度によって影響を受けた。多くの試料はなお流動可能なバルク材料であったが、40℃の試料は融合した(特に、プラセボ試料)。40℃の試料で見られた凝集の増加は、DLSの結果を用いて確認した。5℃及び25℃は典型的なパターン(10nmに単量体ピーク及びμmサイズに小さな凝集ピーク)をなお示したが、40℃の試料に対しては異なるパターンが見られた。サイズ・容積分布においてさえ、単量体ピークに小さな肩が生じ、3ヶ月後にさらに顕著となった多量体ピークに相当した。IEFゲルにおいて、40℃で2時間の保存後に変化を検出することができ、より低温では見られないさらなるバンドが出発点に現れる。
【0222】
濃縮物+25mMトレハロース
トレハロース混合物は、優れた安定性を示した(表9)。5℃及び25℃/60%室内湿度での保存の間、分析全体にわたって実質的な変化を検出することはできなかった。40℃/75%RHでのみ、粉末は僅かに異なる結果を示した。凝集は、40℃でのみ増加した。3ヶ月後、合計約2%の総凝集の増加が検出された。より低い温度は、タンパク質に対して著しい損傷をもたらさなかった。しかし、40℃でさえ、3ヶ月後の単量体の量はなお95%を上回っていた。安定化剤としてトレハロースを用いると、断片の形成は観察されず、少なくとも、クロマトグラム中に存在する顕著なピークは存在しなかった。IgG断片は、完全な抗体より、保存の間に温度によって誘導される凝集に対する感受性がより低い可能性があり得る。
【0223】
【表9】
【0224】
類似の結果が、濁度測定の間に得られた。5℃及び25℃での保存の間に、濁度の変化は認めることができず、40℃の試料でさえ、濁度の小さな増加を示したに過ぎない。プラセボ試料はゼロに近いNTU値を有していたので、同じく、濁りの大半はタンパク質によって引き起こされた。粒子のきょう雑は、より高い温度又はより高い残留水分によって影響を受けなかった。ベラムとプラセボ試料の間の差を除き、粒子の数は、概ね、保存の3ヶ月にわたって、同じ水準に留まった。これは、再溶解された粉末の光学的外観によっても確認された。全ての試料は透明な溶液をもたらし、発色測定さえ、保存の間に全く差を示さなかった。
【0225】
安定性検査のために使用されたAl容器は、粉末から湿気を完全に除外することはできなかった。従って、25℃及び40℃での高湿条件は、粉末の湿気の増加をもたらす。5℃で保存された粉末は、変化しない水含量を示した。温度及び増加した室内湿度というストレス因子は何れも、粉末試料の結晶性に対して全く影響を及ぼさなかった。回折ダイアグラムは不変のままであった。WAXDダイアグラムでは、塩化ナトリウムのピークパターンがなお優勢であった。SEC及び濁度測定の結果は、DLSを用いて得られた結果と合致した。低温及び低い残留水分はタンパク質が搭載された粉末に害を与えなかった。全ての試料が同じパターンを示し、40℃で保存された混合物でさえ、異常なピーク又はピークの肩を示さなかった。40℃で保存された混合物は、約10nmにおける大きなピーク及びμmサイズにおけるさらなるピークとともに見られる通常のパターンを示した。
【0226】
IEFの結果では、等電点電気泳動の出発点にさらなるバンドを示す唯一のゲルは、40℃/75%RH試料を用いたゲルであった。そこでさえ、3ヶ月後に、僅かな青色のスポットが見られたに過ぎない(「40℃」の直下)。全ての温度及び湿度条件にわたって、トレハロースは、アフェリモマブタンパク質に対して極めて優れた安定化能を示した。
【0227】
濃縮物+25mMショ糖
アフェリモマブ濃縮物中のショ糖の溶液は、特に、5℃及び25℃/60%RHにおいて、優れた保存安定性を示す(表10)。凝集の変化は、これらの条件で全く観察されなかった。5℃及び25℃に対する全てのクロマトグラムは類似していた。異なる結果は、3ヶ月にわたって約2.5%の凝集の増加が検出された40℃/75%RH試料に対してのみ見ることができた。しかし、なお、この時点での単量体の量は約95%であった。
【0228】
【表10】
【0229】
全ての再溶解された粉末は光学的に無色透明の外観を示し、アフェリモマブ濃縮物又は液体供給物と区別することはできなかった。発色測定は、高温保存(40℃)の後でさえ、3ヶ月にわたって色の変化を一切示さなかった。溶液は、参照溶液R6又はB5(視覚的な補助を用いてのみ同定可能な赤又は茶色がかった光度に希釈された液体であった。)になお最も近かった。濁度計の補助を得ても、幅広い変化は観察されなかった。40℃/75%RHでの保存後、当初の12NTから20NTUまで濁度の増加が存在したが、濁度の結果は噴霧乾燥直後に20NTUを既に示していたソルビトール及びトレハロースに対する結果より優れていた。プラセボ試料は、極めて低い濁度を示したに過ぎず、安定性試験期間全体にわたって著しい変化がなかった。
【0230】
ベラム試料に対する眼に見えない粒子のきょう雑は、濁度と同様、プラセボ試料に対するきょう雑より大幅に高かった。しかしながら、大きな粒子画分(10μmより大きな粒子)には、小さな変化が観察されたに過ぎない。40μmより大きな粒子の数は通常ゼロに近く、10μmより大きな粒子の数は(mL溶液当り)100以下又は100付近であり、従って、総粒子きょう雑はそれほど高くなかった。高温保存での全ての分解は、カール・フィッシャー分析の結果と合致していた。空調された保存チャンバー中の残留水分が高くなるほど、粉末によって取り込まれる水の量は多くなった。ショ糖試料は、ベラムとプラセボ粉末間で大きな差を示さなかった。
【0231】
より高い残留水分条件下で水含量は増加したが、水の吸収は粉末の結晶性に対して一切影響を有していなかった。3ヶ月後のWAXDダイアグラムは、全ての温度に対して同じ回折パターン(噴霧乾燥直後に得られたWAXDダイアグラム(t=0)と同じ)を示した。DLSダイアルガム及びIEFゲル中には、最小限の分解のみが検出された。40℃及び75%RHで3ヶ月後、ショ糖試料は噴霧乾燥直後のものと極めて似通った光散乱ダイアグラムを示した。10nm水力学的直径に明瞭な単量体ピークが存在し、μmサイズに極めて小さなピークが存在した(拡大された部分に見られる。)。同じく、40℃及び75%RHが、濃縮物のIEFバンドパターンと異なるIEFバンドパターンをもたらす唯一の条件であった。等電点電気泳動の出発点の僅かなバンドは幾つかの大きな凝集物を示したが、DLSダイアグラム中に見られるように、それらの数は実質的に重要でなかった。
【0232】
比較とまとめ
安定性実験は異なる安定化剤が異なる結果をもたらすことを示した。賦形剤又は保存条件を変更することは、粒子の形態に対して影響を有するようには見受けられなかった。噴霧乾燥直後の噴霧乾燥ソルビトール混合物の走査型電子顕微鏡画像は、40℃及び75%RH下で3ヶ月間保存されたトレハロース試料とは殆ど区別できなかった。5℃は著しいタンパク質損傷を引き起こさなかった。アフェリムマブ濃縮物でさえ、これらの条件下で3ヶ月にわたって実質的な分解を示さなかった。25℃60%RH又は40℃75%RHで保存されると、凝集及び断片化を示すことによって純粋な濃縮物は応答した。
【0233】
トレハロースとショ糖は、幅広く均一な結果を示した。粉末は、極めて優れた安定性を有していた。40℃及び75%RHでさえ、小さな変化が検出されたに過ぎない。しかしながら、吸湿性はトレハロース及びショ糖に対して異なる結果を示すパラメータの1つであった。トレハロースを含む噴霧乾燥粉末は、全般に、ショ糖混合物と比べて、噴霧乾燥後により低い水含量を示した。安定性検査のために使用されたAl容器は水蒸気に対して完全には不透過性でなかったので、噴霧乾燥されたショ糖はトレハロースより吸湿性が高いという事実のために、ショ糖粉末は3ヶ月後により高い水含量も有していた。
【0234】
濁度測定では、ショ糖とトレハロースの間に別の差が見られる。ショ糖混合物は、トレハロース粉末より、噴霧乾燥直後により小さなNTUを示した。濁度測定は、別の予想されない特徴も明らかにした。噴霧乾燥プロセスは、高温での保存より、タンパク質−賦形剤混合物に対してより大きなストレスを与えるように見受けられた。噴霧乾燥されると、粉末は、少なくとも噴霧乾燥粉末のTg未満で保存されたときに十分な安定性を示した。
【0235】
ソルビトールも、安定化の可能性を有していた。ソルビトールは、5℃及び25℃で優れた結果を示した。しかしながら、ソルビトールを含む噴霧乾燥粉末は、長期間にわたって、より高い温度に耐えられなかった。これらの結果に対する重要なパラメータは、ソルビトールの低いTgであるように思われる。この温度を超えると(40℃の保存に対する結果から明らかなように)、ガラス状製剤が粘性のある液体に転化され、その運動性を増強し、様々な分解経路を開く。
【0236】
噴霧乾燥プロセスの間の濁りの増加を低減するための試み
濁度は噴霧乾燥プロセスの間に変動性を示すパラメータであることが明らかとなったので、乾燥プロセス後の濁度値を最小限の水準まで低下させる試みで、プロセスパラメータを再び変動させた。これらの実験に関して、アフェリモマブタンパク質に対して最小限の損傷をもたらすことを既に証明している前の乾燥実験から得られるプロセスパラメータを使用した。この目的のために、130℃及び100℃のTinを用いて、賦形剤トレハロース及びショ糖の25mM及び50mMを添加した噴霧乾燥実験を行った。上述したように、100℃のTinは130℃のTinを用いて得られたものに近い分析結果を示した。Tinを減少させることはタンパク質に対する熱的ストレスを低下させ、従って、より低いNTU値をもたらすことができた。同様の考察を、50mM及び25mMの賦形剤に対して与えた。両製剤は、以前の検査において同様の結果を示した。賦形剤の量を増加させることによって、より優れたNTU値をもたらすことができた。プロセス設定の変更は何れも、以前の試験において実質的な変化を示さなかったので、これらの実験に対して使用された唯一の分析法は濁度測定であった。
【0237】
トレハロースの添加
25mM及び50mMトレハロースを含むアフェリモマブ濃縮物を、100℃及び130℃のTinで噴霧乾燥した。各実験から少なくとも3つの噴霧乾燥粉末が濁度に関して検査できるように、あらゆる製剤は複数で噴霧乾燥した。粉末収率は、Tinによっても、又は賦形剤の量によっても、大幅な差を示さなかった。平均収率は約70%であり、130℃のTin及び賦形剤の25mM添加に対してより高い値を示した。濁度測定の結果は、より変動した。
【0238】
25mM及び50mMトレハロースに対するNTU値は大幅に異ならなかったので、賦形剤の量は濁度に対して大きな影響を有していなかった。しかしながら、異なるTinは異なる濁度をもたらす。130℃のTinは、より低いNTU値及び標準偏差をもたらす。100℃のTinでは、NTU値は一般により高く、より大きな変動も示した。130℃及び25mMトレハロースの添加に対する値も、安定性検査の間に得られた濁度の結果と合致していた。
【0239】
ショ糖の添加
25mM及び50mMショ糖の添加とのアフェリモマブ濃縮物の混合物を、100℃及び130℃のTinで噴霧乾燥した。ショ糖の異なる濃度は、噴霧乾燥プロセスの粉末収率に対して大きな影響を有するようには見受けられなかった。全ての混合物が約70%の粉末収率を与え、130℃粉末は僅かにより小さな標準偏差を示した。さらに顕著なのは、濁度測定から得られた結果であった。25mM及び50mMに対するNTU値は極めて近く、100℃のTinにおいて、50mMショ糖に僅かに向かい(より低い濁度を示す。)、Tin=130℃に関しては、ショ糖の25mM添加に向かった。これらの傾向は大きくなかったので、賦形剤の量は噴霧乾燥された粉末の濁度に対して大きな影響を有していなかった。より明瞭なのは、Tinに関する決定であった。100℃は、時には50NTUを超える大幅により高いNTU値を与え、これは、130℃粉末に対しては、40℃での保存の3ヶ月の間にさえ到達されなかった。さらに、100℃のTinで得られた大きな標準偏差は、再現性のある結果を約束しなかった。130℃のTinで噴霧乾燥されると、再溶解された粉末は20NTU付近の再現性のある低い濁度を示す。これらの値も、安定性検査の間に得られた結果と合致する。
【0240】
まとめ
噴霧乾燥プロセスの間の濁度の増加は、Tinを減少させることによって低下させることができない。トレハロース含有粉末及びショ糖混合物は、100℃で、より高いNTU値を示した。Tinとして130℃を使用すると、25mM賦形剤の添加は、50mMより僅かに低い濁度値を与えた。従って、前の実験(130℃及び25mM添加物)から結論されたプロセスパラメータは、アフェリモマブタンパク質の噴霧乾燥に対して最適であるように思われる。濁度に関しては、ショ糖がトレハロースより僅かに良好な成績を収めた。25mMショ糖を含有するアフェリモマブ濃縮物から噴霧乾燥された粉末は15NTUの平均を示したのに対して、類似のトレハロース混合物は17NTUの平均を示した。
【0241】
より濃縮されたMAK195F溶液の噴霧乾燥
トレハロース、ショ糖又はソルビトールを用いて、12.4mg/mLMAK195Fを含むアフェリモマブ濃縮物を実験室規模で首尾よく噴霧乾燥させ、安定な粉末を得た。乾燥プロセスの規模を大きくするためには、プロセスの時間が極めて重要な要素である。「Masters,Spray Drying in Practice.SprayDryConsult International ApS;Charlottenlund(2002)」。より大きなロットに対するプロセスの時間を短縮するために、液体供給物中のより高いタンパク質濃度は、他のプロセスパラメータに対して大幅な影響を与えずに、噴霧乾燥機のタンパク質処理量を増強させた。より高く濃縮されたMAK195F溶液を達成するために、アフェリモマブ濃縮物を限外ろ過した。このろ過プロセスの間、水、塩及び界面活性剤は低下したのに対して、タンパク質は膜を横切ることはできなかった。これはタンパク質濃度の増加をもたらしたが、他の溶質の濃度は変化させなかった。
【0242】
アフェリモマブ濃縮物50.6mg/mL
第一の限外ろ過プロセスにおいて、濃縮物は50.6mg/mLタンパク質/mLの濃度に達した(UV分光法によって推定)。溶液は光学的に透明で、ほぼ無色(僅かに茶色味を帯びていた。)であり、元のアフェリモマブ濃縮物(12.4mg/mL)とは巨視的にはほとんど区別できなかった。SEC及びDLSは、元の濃縮物からの変化を示さなかった。
【0243】
凝集は元の濃縮物(約1%)になお近く、DLSプロファイルは元の濃縮物のものと正確に合致しており、約10nmに単一のピークを示すに過ぎなかった。タンパク質は、その濃度を増加させることによって悪影響を受けなかった。より高いタンパク質濃度を用いると、幾らかの測定可能な物理的特性が変化し得る。濃縮物50.6mg/mLは、1.017g/cm3の密度及び1.375mPasの粘度を示し(何れも、20℃で測定)、何れも元の濃縮物と比べて若干高かった。濃縮物50.6mg/mLに対する濁度の値も、元の溶液より高く、それぞれ、118NTU及び約5NTUであった。溶液中の高分子(タンパク質)の量が増加し、従って、光強度を低減させるために光を散乱又は吸収し得るより多くの高分子が存在したので、この増加は予想された。
【0244】
粒子測定は、限外ろ過プロセスの間に著しい変化を示さなかった。濃縮物50.6mg/mLの全ての粒子画分は、濃縮物12.4mg/mLと同じ又はより少ない粒子きょう雑を示した。また、IEFゲルはさらなるバンドを示さなかった。溶液中のMAK195Fの濃度を50.6mg/mLまで増加させることはタンパク質及びその機能に関して実質的な損傷又は他の変化をもたらさなかったと仮定できる。
【0245】
濃縮物50.6mg/mLを噴霧乾燥する 賦形剤なしの噴霧乾燥
濃縮物50.6mg/mLは、噴霧乾燥された場合に、濃縮物12.4mg/mLと全く同じように損傷を受けやすかった。噴霧乾燥プロセスの間、凝集は約2%まで増加した(1%の増加)。粉末収率は約55%であったが、水含量は相対的に高い(3.5%)。さらに、粉末の高い静電荷のために、粉末の取り扱い(充填など)は幾分困難であった。
【0246】
DLSダイアグラムは、明瞭な単量体ピーク及び小さな凝集物(オリゴマー)に相当する小さな肩を示した。噴霧乾燥された元の凝集物(12.4mg/mL)とは反対に、μmサイズのピークの形態の大きな凝集物は検出されなかった。検出可能な小さな凝集物のみが存在したので、IEFゲルの実質的な変化は噴霧乾燥プロセスの間には見られなかった。
【0247】
限外ろ過プロセスの間、タンパク質濃度は増加したのに対して、他の溶質(NaCl、Na3PO4及びPluronic(R)F68)は全て、元の濃度を維持した。この変化の1つの影響は、噴霧乾燥された製剤のX線回折パターン中に見ることができる。タンパク質は噴霧乾燥後に完全に非晶質であったので、塩化ナトリウムによって引き起こされた結晶ピークの大きさは大幅に減少した。液滴中の固体のより高い量によって引き起こされたより大きな粒子に対する傾向を除き、粒子形態に対する影響は検出できなかった。
【0248】
賦形剤なしに濃縮物50.6mg/mLを噴霧乾燥することによっても、極めて高い粒子きょう雑がもたらされる。濃縮物12.4mg/mL噴霧乾燥と比べて、25μm未満の全ての粒子画分は粒子のより高い量を含有していた。
【0249】
噴霧乾燥前に賦形剤を添加することによって、これらの結果は改善されるはずである。安定性試験におけるように、濃縮物12.4mg/mLに対する25mM混合物と等しい質量比で賦形剤を添加した。
【0250】
ソルビトールの添加
濃縮物12.4mg/mLに対する25mM混合物に従って、0.35:1のソルビトール:MAK195F質量比でソルビトールを添加した。噴霧乾燥された混合物の粉末収率は、約60%であった。粉末は20℃のTg及び2.3%の水含量を有していた。これらの値は、濃縮物12.4mg/mLとの類似の混合物に対して得られた結果と広く合致していた(67%粉末収率、2.0%RH、Tg=19℃)。噴霧乾燥粉末を再溶解することによって、当初のMAK195F濃縮物50.6mg/mLと全く同様に、参照溶液B2(僅かに茶色味を帯びている。)と最も近い発色を有する透明で、ほぼ無色の溶液をもたらす。
【0251】
噴霧乾燥後、再溶解された粉末は凝集の小さな増加を示した。SECは、純粋な濃縮物50.6mg/mLに対する約1%と比べて、1.3%の凝集レベルを示した。同じく、これは、ソルビトールの25mM添加を有する噴霧乾燥された濃縮物12.4mg/mLと比べて実質的な変化でなかった。
【0252】
不溶性凝集物の量は、DLSの結果において見られたように、大幅には増加しなかった。明確な単量体ピークが10nmの水力学的直径に、及び凝集ピークがμmサイズにおいて検出された。液体供給物の固体含量が2.8倍増加したので、再溶解された粉末の眼に見えない粒子のきょう雑が増加した。特に、小さな粒子画分(<10μm)は極めて高いきょう雑レベルを示したのに対して、大きな粒子(>10μm)の数はより低く濃縮された溶液のものと類似のレベルに留まった。
【0253】
液体供給物中のタンパク質濃度を変化させることは、粒子の形状に対して小さな影響を有するに過ぎなかった。粒子はギザギザの球形の典型な形状を示すが、より大きな粒子に対する傾向があるように見受けられた。アフェリモマブ12.4mg/mLを含有する溶液に対する粒子の直径は約2.5から13μmであったので、より高度に濃縮された溶液を噴霧乾燥することは15μmより大きな粒子を部分的にもたらす。
【0254】
トレハロースの添加
0.7:1の賦形剤:MAK105F比は、濃縮物12.4mg/mLに対する25mM賦形剤の添加を用いて、安定性試験系列から採用された。二糖としてのトレハロースは単糖であるソルビトールの約2倍高い分子量を有するので、賦形剤の量は、この実験ではソルビトール実験より高かった。液体供給物溶液の固体含量のこの増加によって、前記噴霧乾燥実験と同じ程度高い粉末収率を得ることが難しくなった。高い固体含量を有する噴霧乾燥溶液は高性能サイクロンの粉末排出口を目詰まりさせるリスクをもたらし、収率は50%未満に減少した(この実験では、約45%)。高い静電荷のために、粉末は取り扱いが困難であった。粉末は、3.6%の水含量及び約66℃のTgを有し、類似の低濃度混合物(3.3%RH、Tg=56℃)に幾分合致していた。再溶解された噴霧乾燥粉末は、僅かに茶色がかった参照溶液B2と最も近い発色を有していた。
【0255】
トレハロースの安定化能は優れていた。可溶性凝集物の増加は、SECクロマトグラムにおいては検出することができなかった。凝集は1%のレベルに維持され、元の濃縮物50.6mg/mLとは区別できなかった。DLSファイルにおいて見られるように、不溶性凝集物の量もきわめて低く、単量体ピーク及びμmサイズのピークによって表される大きな凝集物の少量を示す。
【0256】
眼に見えない粒子のきょう雑は、より低い濃度の混合物(トレハロースを加えた濃縮物12.4mg/mL)に関してより高かった。これは、高い固体含量(MAK195K濃縮物12.4mg/mLを用いた混合物におけるより約3倍高い。)によって説明することができた。
【0257】
液体供給物中のタンパク質濃度及び固体含量の変化は、粒子形状に対して大きな影響を有していなかった。粒子の形状は、より濃縮された粉末中への、単離されたより大きな粒子の出現を除き、実質的な変化を一切示さなかった。
【0258】
ショ糖の添加
0.7:1のショ糖:MAK195Fの質量比(濃縮物12.4mg/mL及び25mM賦形剤と同様)を維持するために、全ての噴霧乾燥実験に対するショ糖の量は、4.08倍(50.6/12.4)増加されなければなかった。上から明らかなように、この質量比を用いると、噴霧乾燥プロセスの間にほぼ完全なタンパク質の保存が達成された。固体のこの高い量を含む溶液の噴霧乾燥は、特に高性能サイクロンに対して、極めて小さな直径を有するサイクロンの粉末出口を目詰まりさせるリスクをもたらす。従って、粉末収率は、プロセスの安定性に一切影響を有することなく、時々50%未満に減少した。
【0259】
濃縮物50.6mg/mLは元の濃縮物12.4mg/mLとは異なる発色を有するので、より高度に濃縮されたタンパク質溶液を基礎とする再溶解された噴霧乾燥粉末も発色を示したと予想される。トレハロース混合物は、僅かに茶色がかった参照溶液B1に最も近い発色を有した。
【0260】
1%のレベルに留まった凝集は、液体濃縮物50.6mg/mL又は元の濃縮物12.4mg/mLとはあまり異ならなかった。
【0261】
DLS分析は、約10nmの水力学的直径に単量体ピークを示し、μmサイズにおける周知の小さな凝集ピークは大きな凝集物の少数に相当した。眼に見えない粒子のきょう雑は、全ての粒子サイズ画分を通じて、低濃縮混合物より僅かに高かった。
【0262】
粒子の形態は、同じ賦形剤:MAK195F比を含む前実験において得られた結果と異ならなかった。液体供給物中のより高い固体含量の結果、より低濃縮の製剤中には存在しない単離されたより大きな粒子が幾つか見られた。粉末の残留水分は、2.6%であり、製剤のTgは約60℃であった。何れの値も、安定性検査における類似の低濃度製剤に対して得られたものと同等であった(2.6%RH、Tg=63℃)。
【0263】
まとめ
液体供給物のタンパク質濃度を50.6mg/mLまで増加させることは、得られる粉末に対して実質的な影響を一切有していなかった。分析検査のほぼ全てが、賦形剤:MAK195Fに対して等しい質量比を有する濃縮物12.4mg/mLを用いる噴霧乾燥実験と同等の結果をもたらす。従って、賦形剤の安定化能は、質量比賦形剤:MAK195Fに依存し、モル比には依存しなかった。
【0264】
低濃度液体供給物(12.4mg/mL)を用いた実験におけるのと同様、トレハロース及びショ糖は、アフェリモマブの噴霧乾燥の間に、プロセス安定性に関してほぼ同じ結果をもたらす。抗体断片を安定化させるためのソルビトールの使用は、特に凝集において僅かに劣る結果を示した。高濃度粉末のIEF比較は、実質的な差を示さず、全ての混合物は、さらなるバンド(大きな凝集物)がない元のアフェリモマブバンドパターンを示した。
【0265】
賦形剤の異なる量によれば、顕著なWAXDダイアグラムの差が存在した。使用した全ての糖(及びタンパク質)は、噴霧乾燥後に完全に非晶質であったので、主要な結晶成分としての塩化ナトリウムの量が結晶ピークの外観を調節した。アフェリモマブ濃縮物12.4mg/mLは38%w/w(固体に関する)の塩化ナトリウム濃度を有し、32の°2θに明瞭な塩化ナトリウムのピークを示した。噴霧乾燥された濃縮物では、塩化ナトリウムの濃度は約14%w/wであり、結晶ピーク高の減少をもたらした。賦形剤としてトレハロース及びショ糖を添加することによって、塩化ナトリウム濃度は9%の値まで減少した。その結果、結晶ピークは、タンパク質及び安定化剤によって引き起こされ非晶質の輪(halo)を目立たなくすることはもはやなかった。ソルビトールの質量比は二糖の質量比より低かったので、塩化ナトリウムの結晶ピークは、ソルビトール混合物のWAXDダイアグラム中になお見ることができた。
【0266】
浸透圧の計算
アフェリモマブ濃縮物は、元来、非経口投与のために開発及び調合されたので、等張性は重要な要因であった。「Reinhart et al.,Crit Care Medicine29(4):765−769(2001)」。静脈内適用のための溶液は、血液と概ね同じ浸透圧(286mosmol/kg)を有するべきである。「Kommentar zum Europaischen Arzneibush,Wiss.Verlagsgesellschaft Stuttgart mbH,Band2(5.2)(2006)」。浸透圧は、「Deutscher Arzneimittelcodex,dt.Apotheker Verlag Stuttgart,Band1(AnlageB)、1−6(2006)」から得られる以下の式を使用して、凝固点降下を介して計算することができる。
【0267】
1%(w/V)溶液の凝固点降下の計算:
【0268】
【数3】
【0269】
混合物のデルタTの計算:
【0270】
【数4】
【0271】
混合物の浸透圧の計算:
【0272】
【数5】
【0273】
上式において、デルタTは純水と比較した当該物質の1%(w/V)溶液の凝固点降下を表し、Lisoは等張濃度での凝固点降下であり、及びMrは分子量である。Liso値は、異なる電解質に対して変動する(表11参照)。血清の凝固点降下は0.52℃(286mosmol/kgの浸透圧に等しい。)であるので、純水と比較した混合物の1%溶液の凝固点降下に対する値(デルタTmix)は、0.52℃を超えないはずである。高い分子量を有するアフェリモマブは、製剤の凝固点降下に対して実質的な影響を有さず、従って、計算には含まれなかった。
【0274】
【表11】
【0275】
これらの式を用いて、様々な濃縮物及び混合物が表12に記載されている浸透圧の計算値を与える。
【0276】
【表12】
【0277】
生理学的な浸透圧を維持するために、より高度に濃縮されたMAK195F溶液が使用された場合には、塩化ナトリウムの量を低下させる必要があった。元の塩化ナトリウム濃度は、8.8mg/mLであった。この研究において推定される賦形剤:MAK195F質量比を用いて(濃縮物12.4mg/mL中の25mM賦形剤)、タンパク質濃度を約130mg/mLに上昇させることができたが、但し、全ての塩化ナトリウムは製剤から除去された。これにより、約300mosmol/kgの浸透圧がもたらされた。
【0278】
まとめ
この研究は、噴霧乾燥を含む抗体粉末を調製するための典型的な方法を示す。具体的には、この例では、IgG断片;アフェリモマブ=MAK195F溶液を乾燥バルク材料へ転化した。様々な賦形剤及びプロセス条件をスクリーニングすることによって、保存時安定性と組み合わされたプロセス安定性を与える噴霧乾燥法が開発された。
【0279】
タンパク質の物理的又は化学的分解を検出することができる様々な方法(例えば、SEC及びDLSを介して可溶性及び不溶性凝集、DSCを介して熱的現象並びにカール・フィッシャー滴定を介して噴霧乾燥粉末の水分)を使用することによって安定性を分析した。幾つかのストレス因子によって引き起こされるように乾燥プロセスの間に分解が起こり、又は高温での長期保存の結果であった。IgG断片は、タンパク質に糖を添加することによって安定化された。乾燥及びその後の保存の間の安定化能に関して、トレハロース、ショ糖及びソルビトールを研究した。
【0280】
研究の第一部では、タンパク質濃縮物を性質決定した後、乾燥プロセスの間の濃縮物の感受性をチェックするために、一切賦形剤なしに噴霧乾燥した。さらに、正しいプロセスパラメータを見出すための検査系列を実施した。純粋な濃縮物を噴霧乾燥することは、タンパク質に損傷をもたらす。特に、その後の保存が計画された場合に、凝集の増加は大幅であった(約2%)。Tinを変動させることは、凝集を低下させるのに、又は最小の凝集が起こるプロセスパラメータを見出すのに役立つはずである。
【0281】
噴霧乾燥プロセスの間のタンパク質の損傷は、様々なストレス因子(例えば、熱、微粉化、剪断力)の相互作用によって引き起こされるようであった。これらのストレス因子は何れも、噴霧乾燥プロセスと同等のタンパク質の崩壊を単独では引き起こすことができなかった。
【0282】
10mMと150mMの間の様々な濃度のタンパク質濃縮物に、安定化する糖を添加した。液体供給物の固体含量は極めて高く、サイクロン分離装置は目詰まりする傾向があったので(これは、低い粉末収率をもたらした。)、150mMは不適切であるように見受けられた。賦形剤の10mM添加は、検査された全ての糖に関して不十分であった。最良の結果は、25mMの添加によって得られた(トレハロース及びショ糖に関しては、賦形剤:MAK195F=0.7:1の質量比、ソルビトールに関しては0.35:1の質量比に等しい。)。50mMは同等の結果をもたらすが、目的は、可能な程度まで添加物の量を最小化することであった。噴霧乾燥プロセスに対する安定化能を比較すると、トレハロースとショ糖は類似の結果をもたらす。ソルビトールは、二糖より少し劣るようであった。しかし、これは、小さな質量比では創設されず、さらなるソルビトールの添加が結果を改善しなかった。プロセス安定性に関しては、好ましくはトレハロース又はショ糖の25mMの添加が推奨される。
【0283】
25mM混合物がプロセス安定性のために最も効果的であったので、短期安定性検査(3ヶ月)のために25mM混合物を使用した。類似のプラセボ混合物及び液体濃縮物と一緒に、一般的に使用される3つの異なる天候(冷蔵庫:5℃、中欧:25℃/60%RH、東南アジア:45℃/75%RH)に噴霧乾燥粉末を曝露した。予想通り、液体濃縮物は高温の全てに耐えることができず、1ヶ月後には、著しいタンパク質の損傷がもたらされた(凝集、断片化及び光学的濁度)。賦形剤を加えた噴霧乾燥粉末は、3ヶ月にわたって良好な安定性を示した。トレハロース及びショ糖製剤は、40℃/75%RHで保存された場合に、大幅な損傷を受けたに過ぎない(2%の凝集増加)。凝集の小さな増加(0.5%)を除き、25℃/60%RHでさえ、粉末に影響を与えなかった。プロセス安定性に対する結果が示唆したように、ソルビトールは保存時にも最も弱い安定化剤であった。5℃及び25℃で保存された混合物は他の賦形剤とともに同様に安定であったが、40℃はソルビトール−タンパク質混合物に対する臨界的パラメータであった。40℃は混合物のTgを超えたので、タンパク質の固定化によって引き起こされる保存安定性はもはや保証され得ない。これは、この研究の何れの予備研究においても観察されなかった約12%の凝集の増加をもたらす。眼に見えない粒子及び濁りの測定は、満足できない結果をもたらす。これらの試料の多くは、視覚的な濁り又は凝固さえ示した。安定性研究の主要な問題は、粉末を保存するために使用したAl容器であった。Al容器は完全な水蒸気不透過性を示さなかったので、吸湿性粉末の残留水含量を一定に保つことができなかった。
【0284】
賢明な製剤を用いると、ほぼ全てのタンパク質変化を最小レベルにまで低下させることができた。大幅な変化をなお示す唯一のパラメータは濁度であった。保存プロセスではなく、噴霧乾燥プロセスが、濁度の増加をもたらす。より多くの賦形剤の添加又はより低い乾燥温度の使用によってこの増加を低下させるための試みは失敗した。約5NTU(濃縮物)から15ないし20NTU(噴霧乾燥混合物)への濁度の増加を避けることはできなかった。しかし、他の分析法は、タンパク質−糖製剤の噴霧乾燥の間に、大幅な変化を示さなかった。
【0285】
この研究の最後の部分では、噴霧乾燥機のより高い処理量を達成することを最終目標として、液体供給物中のタンパク質濃度を増加させた。50.6mg/mLのタンパク質濃度を用いる実験を行った。限外ろ過のプロセス及びより濃縮されたタンパク質溶液(糖添加物の同定された最良の質量比を有する。)の噴霧乾燥は、アフェリモマブタンパク質の安定性に対して実質的な影響を及ぼさなかった。多くの結果(より高い固体含量による粒子のきょう雑又は濁度を除く。)が濃縮物12.4mg/mLを用いた類似の実験と同等であった。100mg/mLの濃度の噴霧乾燥は、サイクロン出口の目詰まりを防ぐことができれば実行可能なはずである。元の緩衝液は十分な塩化ナトリウムを含有しており、塩化ナトリウムは安定化剤に対する交換で除去することができるので、低眼圧症又は高眼圧症のリスクをもたらさずに、より濃縮された粉末を非経口的に投与することができる。最大130mg/mLのタンパク質濃度が可能であり得る。
【0286】
抗体製剤の組成
先述のように、Buchi Mini−Spray Dryer B−191に対して、噴霧乾燥実験を行った。要約すれば、加熱装置及び乾燥チャンバーに入る前に、Luwa Ultrafilter2(ファイバーガラス;フィルタークラス:HEPA H13)を通して、乾燥空気をろ過した。全ての液体供給物は、蠕動式ポンプ(QLF=約3mL/分;シリコンチューブφ=3mm)によって乾燥チャンバーに輸送される前に、0.22μmフィルターユニットを通してろ過した。乾燥窒素(QAA=700L/h)を使用して、2つの液体ノズルによって微粉化を行った。噴霧乾燥後、得られた粉末を収集容器から回収し、ガラス容器(ブロモブチルゴム栓)中に満たし、パラフィルムで密封した。組成が、表13に要約されている。タンパク質の性質決定は、UV/VIS、SEC、IEC、PCS、DSC、XRD及びカール・フィッシャー法を使用することによって行った。
【0287】
【表13】
【0288】
上で論述されているように、製剤及びプロセスパラメータは、12mg/mLの濃度を使用し、モデル化合物としてMAK195Fを用いて評価した。図10は、噴霧乾燥されたMAK195F製剤に対するSEC物理的安定性データを図示する2つの棒グラフを含む:(A)ソルビトール、トレハロース及びショ糖(濃度=25mM)の効果並びに(B)40℃/75%RHでの3ヶ月の保存後のタンパク質凝集の量に対する安定化剤濃度の効果。図10Aに与えられているデータから、トレハロース及びショ糖が最も安定な産物を与えるのに対して、ソルビトールは十分な長期のタンパク質安定性を与えなかったことが明らかである。安定化剤の最小量は、賦形剤:タンパク質=0.7:1の質量比に等しい25mMで測定された(図10B参照)。図10Aでは、各グループ中の棒は、左から右に、それぞれ、MAK195F(バルク)、MAK195F+ソルビトール、MAK195F+トレハロース及びMAK195F+ショ糖を表す。図10Bでは、各グループ中の棒は、左から右に、それぞれ、ソルビトール、トレハロース及びショ糖を表す。
【0289】
12、50及び100mg/mLの範囲のタンパク質濃度を使用することによって、これらのパラメータは再現された。全ての製剤が許容可能な粉末を与えた。表14に示されている平均残留水分は、4.6重量%(MAK195F)及び5.5重量%(アダリムマブ)の間であり、したがって、1%を下回る典型値を有する凍結乾燥された製剤と比べて、かなり高かった。それにも関わらず、ガラス遷移温度はMAK195Fに関しては60℃で、完全な両抗体に対しては約70℃で測定され、少なくとも5℃の保存温度での適切な安定性を示唆した。これらの高濃度(100mg/mL)噴霧乾燥MAK195F、アダリムマブ及びABT−325製剤の予備的分析データが、図11に示されている。図11は、(A)SEC法を使用することによる物理的安定性に対する処理及び40℃/75%RHでの3ヶ月の保存の影響及び(B)200mMトレハロース溶液中の噴霧乾燥された高濃度MAK195F、アダリムマブ及びABT−325に関して、IEC法によって測定された化学的安定性(処理後に100%標準化された。)に対する影響。図11Aでは、各グループ中の棒は、左から右に、それぞれ、MAK195F(95mg/mL、噴霧乾燥)、アダリムマブ(100mg/mL、噴霧乾燥);ABT−325(100mg/mL、噴霧乾燥)及びABT−325(100mg/mL、凍結乾燥)を表す(ABT−325(100mg/mL、凍結乾燥)に対して、1ヶ月保存データが存在せず、MAK195F(95mg/mL、噴霧乾燥)に対して、3ヶ月保存データが存在しないことを除く。)。
【0290】
【表14】
【0291】
全ての検査された製剤に対するデータは、40℃で最長3ヶ月間、処理及び保存の間のタンパク質の許容される物理的安定性を示し、ABT−325凍結乾燥物と等しい。しかしながら、対応するPCSデータ(図示せず)は、タンパク質の特性に対する効果を示唆し、これは、さらに詳しく分析しなければならない。化学的安定性に関して、図11B中のデータは、標準的な凍結乾燥された製剤と比べて、噴霧乾燥された製剤に対して同等の結果を示した。図11Bでは、各グループ中のバーは、左から右に、それぞれ、ABT−325(100mg/mL、噴霧乾燥)、ABT−325(100mg/mL、凍結乾燥)及びアダリムマブ(100mg/mL、噴霧乾燥)を表す。
【0292】
まとめ
これは、最大100mg/mLまでの濃度で、mAb溶液から噴霧乾燥抗体粉末を一般的に首尾よく製造できることを示している。MAK195F、アダリムマブ及びABT−325に対して提示されたデータは、タンパク質の物理的又は化学的安定性に関して、プロセッシングの間にも、加速された安定性研究の間にも著しい効果を示さなかった。しかしながら、噴霧乾燥されたタンパク質の観察された多分散をより詳しく分析すべきである。
【0293】
さらに、長期保存を達成するために、製剤の中に安定化剤の十分な量が必要とされる。それにも関わらず、この技術の汎用性の故に、この技術はバルク薬物物質製剤に関して並びに新しい剤形及び投与経路に向けて興味深い展望を与える。
【0294】
参照による組み込み
本願を通じて引用され得る全ての引用されている参考文献(文献参考文献、特許、特許出願及びウェブサイトを含む。)の内容は、参照により、本明細書に明示的に組み込まれる。本発明の実施は、別段の記載がなければ、本分野において周知である噴霧乾燥及びタンパク質製剤の慣用技術を使用する。
【0295】
均等物
当業者は、定型的な実験操作のみを用いて、本明細書に記載されている発明の具体的な実施形態に対する多くの均等物を認識し、又は確認することができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるものとする。本願を通じて引用されている全ての参考文献、特許及び公開された特許出願の内容は、参照により、本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質又はペプチド粉末が調製されるように、タンパク質又はペプチドの約50mg/mL超及び少なくとも1つの賦形剤を含む溶液を噴霧乾燥する工程、
を含む、タンパク質又はペプチド粉末を調製する方法。
【請求項2】
溶液がタンパク質又はペプチドの約100mg/mL超を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体粉末が調製されるように、抗体又はその抗原結合部分の約50mg/mL超及び少なくとも1つの賦形剤を含む溶液を噴霧乾燥すること、
を含む、抗体粉末を調製することを含む請求項1から2の何れか一項に記載の方法。
【請求項4】
溶液が抗体又はその抗原結合部分の約100mg/mL超を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
抗体又はその抗原結合部分が免疫グロブリンG(IgG)である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合部分がMAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147である、請求項3から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
粉末が周囲温度及び湿度で少なくとも3ヶ月間安定である、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
粉末が40℃で少なくとも3ヶ月間安定である、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
賦形剤がトレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物である、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
溶液が約0.27:1.0と約2.8:1.0の間の賦形剤:タンパク質比を含む、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
溶液が約0.27:1.0と約1.4:1.0の間の賦形剤:タンパク質質量比を含む、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
溶液が約0.27:1.0と約0.7:1.0の間の賦形剤:タンパク質質量比を含む、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
溶液が約0.7:1.0の賦形剤:タンパク質質量比を含む、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
溶液が約20と約30mMの間の賦形剤を含む、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
溶液が約25mMの賦形剤を含む、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
約100℃と約180℃の間の注入空気温度(Tin)及び約60℃と約110℃の間の排出空気温度(Tout)で噴霧乾燥させることを含む、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
約130℃のTin及び約80℃のToutで噴霧乾燥させることを含む、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
噴霧乾燥が、
溶液液滴を形成させるために溶液を微粉化すること;
粉末を形成させるために気体で液滴を乾燥させること;及び
気体から粉末を回収すること;
を含む、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
圧力ノズル微粉化装置を用いて溶液を微粉化することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
サイクロンを用いて、気体から抗体粉末を分離及び回収することを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から20の何れか一項に記載の粉末を調製する工程、及び医薬として許容される担体と抗体粉末を混合する工程を含む、医薬組成物を調製する方法。
【請求項22】
医薬として許容される担体が非経口、経口、経腸又は局所投与に対して許容される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
医薬として許容される担体が液体を含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
医薬として許容される担体が水を含む、請求項21、22又は23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24の何れか一項に記載の方法に従って調製された、抗体又はその抗原結合部分の有効量を含む医薬調製物。
【請求項26】
請求項1から24の何れか一項に記載の方法に従って調製された、タンパク質又はペプチドの有効量を含む医薬調製物。
【請求項27】
組成物が約6%未満の残留水分を含む、タンパク質又はペプチド及び賦形剤を含む安定な粉末化された組成物。
【請求項28】
タンパク質又はペプチドが抗体又はその抗原結合部分を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
抗体又はその抗原結合部分がIgG抗体である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
抗体又はその抗原結合部分がMAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147である、請求項1から29の何れか一項に記載の組成物。
【請求項31】
粉末化された組成物が周囲温度及び湿度において少なくとも3ヶ月間安定である、請求項1から30の何れか一項に記載の組成物。
【請求項32】
粉末化された組成物が40℃において少なくとも3ヶ月間安定である、請求項1から31の何れか一項に記載の組成物。
【請求項33】
賦形剤がトレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物である、請求項1から32の何れか一項に記載の組成物。
【請求項34】
組成物が約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0又は約0.7:1の賦形剤:抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し、及び賦形剤がトレハロース又はショ糖である、請求項1から33の何れか一項に記載の組成物。
【請求項35】
組成物が、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0、約0.7:1又は約0.35:1の賦形剤:抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し、及び賦形剤がソルビトールである、請求項1から34の何れか一項に記載の組成物。
【請求項36】
粉末の残留水分含量が約3%未満である、請求項1から35の何れか一項に記載の組成物。
【請求項37】
タンパク質若しくはペプチド又は抗体若しくはその抗原結合部分がその生物学的活性を保持する、請求項1から36の何れか一項に記載の組成物。
【請求項38】
請求項1から37の何れか一項に記載の安定な粉末化された組成物の有効量を医薬として許容される担体と混合する工程、
を含む、医薬組成物を製造する方法。
【請求項39】
担体が液体を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
担体が水を含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
医薬組成物が非経口、経口、経腸又は局所投与に対して適合される、請求項1から40の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項42】
粉末化された組成物の安定性に著しく影響を与えずに、周囲温度を上回る温度で安定な粉末化された組成物をさらに処理することを含む、請求項1から41の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項43】
安定な粉末化された組成物を溶融押し出しすることを含む、請求項1から42の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項44】
粉末化された組成物を被覆することを含む、請求項1から43の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項45】
徐放又は遅延放出医薬組成物を形成するために、粉末化された組成物をPLGAで被覆することを含む、請求項1から44の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項46】
腸溶コーティングで被覆することを含む、請求項1から45の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項47】
タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の活性が、賦形剤によって、有機溶媒による沈殿、変性又は酸化に対して保護される、請求項1から46の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項48】
タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の活性が、PEG400、エタノール、DMSO、NMP又は氷酢酸による沈殿、変性又は酸化に対して賦形剤によって保護される、請求項1から47の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項49】
請求項1から24および38から48の何れか一項に記載の方法に従って調製された医薬組成物。
【請求項1】
タンパク質又はペプチド粉末が調製されるように、タンパク質又はペプチドの約50mg/mL超及び少なくとも1つの賦形剤を含む溶液を噴霧乾燥する工程、
を含む、タンパク質又はペプチド粉末を調製する方法。
【請求項2】
溶液がタンパク質又はペプチドの約100mg/mL超を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗体粉末が調製されるように、抗体又はその抗原結合部分の約50mg/mL超及び少なくとも1つの賦形剤を含む溶液を噴霧乾燥すること、
を含む、抗体粉末を調製することを含む請求項1から2の何れか一項に記載の方法。
【請求項4】
溶液が抗体又はその抗原結合部分の約100mg/mL超を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
抗体又はその抗原結合部分が免疫グロブリンG(IgG)である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合部分がMAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147である、請求項3から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
粉末が周囲温度及び湿度で少なくとも3ヶ月間安定である、請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
粉末が40℃で少なくとも3ヶ月間安定である、請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
賦形剤がトレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物である、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
溶液が約0.27:1.0と約2.8:1.0の間の賦形剤:タンパク質比を含む、請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
溶液が約0.27:1.0と約1.4:1.0の間の賦形剤:タンパク質質量比を含む、請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
溶液が約0.27:1.0と約0.7:1.0の間の賦形剤:タンパク質質量比を含む、請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
溶液が約0.7:1.0の賦形剤:タンパク質質量比を含む、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
溶液が約20と約30mMの間の賦形剤を含む、請求項1から13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
溶液が約25mMの賦形剤を含む、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
約100℃と約180℃の間の注入空気温度(Tin)及び約60℃と約110℃の間の排出空気温度(Tout)で噴霧乾燥させることを含む、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
約130℃のTin及び約80℃のToutで噴霧乾燥させることを含む、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
噴霧乾燥が、
溶液液滴を形成させるために溶液を微粉化すること;
粉末を形成させるために気体で液滴を乾燥させること;及び
気体から粉末を回収すること;
を含む、請求項1から17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
圧力ノズル微粉化装置を用いて溶液を微粉化することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
サイクロンを用いて、気体から抗体粉末を分離及び回収することを含む、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から20の何れか一項に記載の粉末を調製する工程、及び医薬として許容される担体と抗体粉末を混合する工程を含む、医薬組成物を調製する方法。
【請求項22】
医薬として許容される担体が非経口、経口、経腸又は局所投与に対して許容される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
医薬として許容される担体が液体を含む、請求項21又は22に記載の方法。
【請求項24】
医薬として許容される担体が水を含む、請求項21、22又は23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1から24の何れか一項に記載の方法に従って調製された、抗体又はその抗原結合部分の有効量を含む医薬調製物。
【請求項26】
請求項1から24の何れか一項に記載の方法に従って調製された、タンパク質又はペプチドの有効量を含む医薬調製物。
【請求項27】
組成物が約6%未満の残留水分を含む、タンパク質又はペプチド及び賦形剤を含む安定な粉末化された組成物。
【請求項28】
タンパク質又はペプチドが抗体又はその抗原結合部分を含む、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
抗体又はその抗原結合部分がIgG抗体である、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
抗体又はその抗原結合部分がMAK195F、アダリムマブ、ABT−325、ABT−308又はABT−147である、請求項1から29の何れか一項に記載の組成物。
【請求項31】
粉末化された組成物が周囲温度及び湿度において少なくとも3ヶ月間安定である、請求項1から30の何れか一項に記載の組成物。
【請求項32】
粉末化された組成物が40℃において少なくとも3ヶ月間安定である、請求項1から31の何れか一項に記載の組成物。
【請求項33】
賦形剤がトレハロース、ショ糖、ソルビトール、ポリエチレングリコール、少なくとも1つのアミノ酸、ヒスチジン、アラニン、アルギニン、グリシン又はこれらの混合物である、請求項1から32の何れか一項に記載の組成物。
【請求項34】
組成物が約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0又は約0.7:1の賦形剤:抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し、及び賦形剤がトレハロース又はショ糖である、請求項1から33の何れか一項に記載の組成物。
【請求項35】
組成物が、約0.27:1.0から約2.8:1.0、約0.27:1.0から約1.4:1.0、約0.27:1.0から約0.7:1.0、約0.7:1又は約0.35:1の賦形剤:抗体又はその抗原結合部分の質量比を有し、及び賦形剤がソルビトールである、請求項1から34の何れか一項に記載の組成物。
【請求項36】
粉末の残留水分含量が約3%未満である、請求項1から35の何れか一項に記載の組成物。
【請求項37】
タンパク質若しくはペプチド又は抗体若しくはその抗原結合部分がその生物学的活性を保持する、請求項1から36の何れか一項に記載の組成物。
【請求項38】
請求項1から37の何れか一項に記載の安定な粉末化された組成物の有効量を医薬として許容される担体と混合する工程、
を含む、医薬組成物を製造する方法。
【請求項39】
担体が液体を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
担体が水を含む、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
医薬組成物が非経口、経口、経腸又は局所投与に対して適合される、請求項1から40の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項42】
粉末化された組成物の安定性に著しく影響を与えずに、周囲温度を上回る温度で安定な粉末化された組成物をさらに処理することを含む、請求項1から41の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項43】
安定な粉末化された組成物を溶融押し出しすることを含む、請求項1から42の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項44】
粉末化された組成物を被覆することを含む、請求項1から43の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項45】
徐放又は遅延放出医薬組成物を形成するために、粉末化された組成物をPLGAで被覆することを含む、請求項1から44の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項46】
腸溶コーティングで被覆することを含む、請求項1から45の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項47】
タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の活性が、賦形剤によって、有機溶媒による沈殿、変性又は酸化に対して保護される、請求項1から46の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項48】
タンパク質、ペプチド、抗体又はその抗原結合部分の活性が、PEG400、エタノール、DMSO、NMP又は氷酢酸による沈殿、変性又は酸化に対して賦形剤によって保護される、請求項1から47の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項49】
請求項1から24および38から48の何れか一項に記載の方法に従って調製された医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−509972(P2011−509972A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542619(P2010−542619)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050385
【国際公開番号】WO2009/090189
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(502104228)アボット ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (89)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050385
【国際公開番号】WO2009/090189
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(502104228)アボット ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー (89)
【Fターム(参考)】
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