説明

粉末検出装置

【課題】高感度で、かつ安価な粉末検出装置を提供すること。
【解決手段】ダクトなどの筒32の中の一定の領域を通過する粉末33の有無またはその量の少なくとも一方を検出する粉末検出装置であって、前記筒32の中に光を照射する2つの光源34および35と、それぞれの出射光38および39が筒32の中を通過して入射するそれぞれの位置に設置された2つの受光器36および37と、受光器36および37の出力電圧の変化を検出する手段とその出力電圧の変化量が一定の閾値を超える回数を検出する手段とを有する信号処理回路25を備え、2つの光源34および35の出射方向は互いに平行ではなく、それらの光源からの出射光38および39が筒32の中のほぼ同一の部分40を照射するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルなどによる切削によりダクト中を通過する切削粉や、集塵機などによりダクト中を通過する粉塵などの粉末の有無または粉末の量などを検出する粉末検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板には電気部品の実装のために多数の穴あけ加工が必要であり、ドリルによる加工が行なわれている。これらの加工装置では自動化が進められており、ドリルの磨耗などによる破損の検出は不良品の発生を最小限にするためにも不可欠である。従来、ドリルの破損の検出方法の1つとして、下記の特許文献1に示される方法が開発されている。
【0003】
この方法では、加工中に切削粉がダクト中を通過するのを切削粉検出器によって検出し、加工中にその検出器の出力がない場合にドリルが破損したと判断し、破損を検出している。この切削粉検出器の構成方法の1つとして、1組の光源と受光器からなる光学的な検出装置が使用されている。
【0004】
この検出装置は、光源の出射光をダクト中を通過する切削粉に照射し、そこを通過して入射する位置に置かれた受光器の出力変化を測定することにより切削粉の有無を検出する装置である。
【0005】
図4はこのような従来の光学的な検出装置とそれを使用したプリント基板穴あけ用の切削加工装置を示す構成図である。図4において、プリント基板14などへの穴明を行うための穴明機11にドリル12が取り付けられ、設定されたプログラムに従って、移動ステージ13上に設置されたプリント基板14が所定の位置に移動し、穴明け動作を繰り返し行なうことにより多くの穴が明けられる。ここで、穴明けに伴って発生する切削粉19はドリルの近傍に開口が設けられたダクト15によって吸い込まれて排出される。このダクトの途中に、切削粉を検出するための光検出装置20が設けられている。光検出装置20はダクトの検出部16に設けた光を透過させるための透明管21と、透明管21を挟んで対向して配置された光源22と、受光器23と、光源22および受光器23を内蔵し透明管21を挿入する穴を設けた筐体24とを備えている。
【0006】
受光器23の出力は信号処理装置25に入力され、信号処理装置25は、受光器23の出力電圧の変化を検出する手段、受光器23の出力電圧の変化量が一定の閾値を超える回数を検出する手段を備えている。
【0007】
このような切削粉の有無をダクトから検出する方式は、切削装置には通常ダクトが既に設置されているので、検出装置の設置が容易であるという特長がある。また、光学系が簡単であり、光源として発光ダイオードを、受光器としてフォトダイオードを使用できるため検出装置が安価に実現できるという特長がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭59−43262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
最近は小さな穴径でかつ高精度の加工の要求が多くなっている。このため、検出すべき切削粉の大きさが小さく、その量も少ない場合が多い。そこで、従来の上記の検出装置では感度が不十分となり、適用可能な範囲が限られてしまうことや、感度を向上させるために処理回路や装置が複雑化して高価になってしまうことなどの問題がある。
【0010】
さらに、従来の装置では、切削粉の有無によってドリルが破損していないか破損しているかを検出するのもであって、ドリルの破損後でないと破損を検出ができない。加工途中にドリルの破損が生じてしまうと被加工物にも破損が生じてしまうので不良品が発生し、また、破損後のドリルの交換は処理時間がかかってしまう。一般に、破損する前のドリルが劣化した状態では切削粉の大きさや量が変化するので、検出装置の感度を改善できれば劣化状態の検出が可能となり、破損前にドリルの交換が可能となる。また、高感度で安価な粉末の検出装置が得られれば、集塵機などの他の粉末の検出にも応用できる。
【0011】
そこで、本発明の課題は、従来の切削粉の検出装置よりも高感度で、かつ安価な粉末検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明による粉末検出装置は、一定の領域を通過する粉末の有無またはその量の少なくとも一方を検出する粉末検出装置であって、前記領域に光を照射する複数の光源と、前記領域を通過したそれぞれの光を受光する複数の受光器と、前記粉末が前記領域を通過することによる前記受光器の出力電圧の変化を検出する手段と、該出力電圧の変化量が一定の閾値を超える回数を検出する手段とを備え、前記複数の光源の出射方向は互いに平行ではなく、前記複数の光源からの出射光が前記領域中のほぼ同一の部分を照射することを特徴とする。
【0013】
ここで、前記光源は発光ダイオードを備え、前記受光器はフォトダイオードを備えてもよい。
【0014】
また、前記一定の領域は透明な管の中であってもよい。この場合、前記複数の光源と前記複数の受光器は、前記の透明な管の外形が勘合する穴を有する1つの筐体に固定されていてもよい。
【0015】
また、前記複数の受光器の出力を並列に接続して得られる出力電圧の変化を検出してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、発明者が従来の切削粉の検出装置の感度を改善するため実験検討を行った結果、完成させたものである。従来の検出装置では、光源の強度を大きくすると感度の改善ができるが、感度の飽和やノイズの影響があるため改善効果は十分ではない。また、複数の光源と受光器を用い、ダクト中の切削粉が通過する領域に同一方向から光を照射してそれぞれ受光器で受光し、検出する構成により改善が得られるが、この場合でも光源と受光器の数を増やしても十分な感度は得られなかった。
【0017】
これに対して、本発明のように、出射光がダクト中のほぼ同一の部分を照射するような互いに異なる出射角度を有する複数の光源を使用し、その照射された光がそこを通過して入射するそれぞれの位置に複数の受光器を設置して検出することにより、従来よりも検出感度が大幅に改善されることが判明した。その理由は以下であると推定される。
【0018】
切削粉の検出装置の原理は、切削粉の通過により照射光が遮断されて受光器に入射する際の光量変化により切削粉の通過を検出するものである。複数の光源とそれに対応する受光器を使用した場合、従来のように単に複数の光源と受光器を並べてそれぞれダクト中の異なる部分を照射しても、厳密には、それらに対応する受光器の出力電圧はそれぞれ切削粉に対する異なる情報を有する信号となるので、それらの検出信号を加算しても感度の改善効果は小さい。切削粉がダクト中を通過して行くときは、そのダクト中の場所や時間により切削粉の分布は異なると考えられるからである。一方、本発明では、異なる方向から同時にダクト中の同一の部分に光を照射して検出するので、複数の受光器の出力電圧は切削粉に対しほぼ同じ情報を有することになり、それらの加算により感度は大幅に改善される。
【0019】
さらに、切削粉は粉末形状が球とは大きく異なり、扁平状など非対称で複雑な形状をしており、しかもその形状は切削条件により、また時間的にも大きく異なる。そこで、ダクト中に一定の方向から光を照射した場合、通過する切削粉の大きさや量が同じであっても、その切削粉の向きにより照射光の遮断量は異なり、受光器の出力電圧の変化が小さい場合が存在すると推定される。
【0020】
一方、本発明では、異なる方向から同時にダクト中の同一の部分に光を照射して検出するので、複数の受光器の全体では出力電圧の変化は平均化されて安定し、複数の受光器の出力電圧をそのまま、または増幅器を通して加算することにより安定な感度が得られることになる。
【0021】
以上のように、本発明により、従来の切削粉の検出装置よりも高感度で、かつ安価な粉末検出装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による粉末検出装置の一実施の形態を示す構成図である。
【図2】本実施の形態における光源および受光器、信号処理回路の構成を示す図である。
【図3】本実施の形態の一実施例である1つの筐体に固定された光源と受光器を示す図であり、図3(a)は平面断面図、図3(b)は図3(a)のA−A側面断面図である。
【図4】従来の光学的な検出装置とそれを使用したプリント基板穴あけ用の切削加工装置を示す構成図である。
【図5】本実施の形態における光源および受光器、信号処理回路の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1は本発明による粉末検出装置の一実施の形態を示す構成図である。図1において、本実施の形態の粉末検出装置は、ダクトなどの筒32の中の一定の領域を通過する粉末33の有無またはその量の少なくとも一方を検出する粉末検出装置である。筒32の中に光を照射する2つの光源34および35と、それらの光源からのそれぞれの出射光38および39が筒32の所定の領域に入射し、ここを通過してきたそれぞれの光を受光する2つの受光器36および37とが配置されている。さらに、装置は、粉末33が筒32の中を通過することによる受光器36および37の出力電圧の変化を検出する手段とその出力電圧の変化量が一定の閾値を超える回数を検出する手段とを有する信号処理回路25を備え、2つの光源34および35の出射方向は互いに平行ではなく、それらの光源からの出射光38および39が筒32の中のほぼ同一の部分40を照射するように構成されている。
【0025】
ここで、光源34および35はそれぞれ発光ダイオードを備え、受光器36および37はそれぞれフォトダイオードを備えている。
【0026】
また、筒32は透明な管であってもよく、または筒32に光が通過する透明な窓が設けられていてもよい。また、2つの光源34および35と2つの受光器36および37は、筒32の外形が勘合する穴を有する1つの筐体に固定されていてもよい。
【0027】
図2は本実施の形態における光源34および35、受光器36および37、信号処理回路25の構成を示す図である。図2において、光源34および35はそれぞれ発光ダイオード1とその駆動回路2により構成され、受光器36および37はそれぞれフォトダイオード3と増幅回路4とにより構成される。フォトダイオード3の出力は増幅回路4により増幅され、信号処理回路25に入力する。信号処理回路の入力段で各増幅回路の出力は結合され加算される。加算出力は、のコンパレータ6に入力する。発光ダイオード1とフォトダイオード3の間を粉末が通過すると、フォトダイオード3の出力電圧がその通過時間だけ低下するので、直流成分を除去されて増幅回路4から出力される波形はその粉末の大きさと通過速度で決まる幅のパルス状の波形となる。粉末がダクト中の切削粉である場合はそのパルス幅は通常、数μs〜数百μs程度である。コンパレータ6では増幅回路の出力電圧の変化量、すなわち上記のパルスの高さが予め定められた閾値と比較され、その閾値を超えたパルスの回数がカウンタ8により計数され、その結果が判定処理回路9に送られる。判定処理回路9では、粉末の有無、または予め定められた値と比較され校正された粉末の量が出力される。
【0028】
ドリルの破損または劣化の検出装置としてダクト中の切削粉を検出する場合には、上記計数されたパルスの回数および1回のドリル穴あけ毎のその回数の変動量が予め定めた劣化基準回数の範囲および予め定めた劣化基準変動量の範囲と比較され、その結果によりドリルの劣化や破損の情報が出力される。
【0029】
ここで、本実施の形態では、2つの受光器36および37の出力が加算されて出力されるが、この場合、それらの受光器の出力を並列に接続して信号処理回路25に入力しても良く、または、図5に示すように増幅回路4を共通にして、1つの増幅回路4に受光器36および37の2つのフォトダイオードを接続しても良い。同様に1つの駆動回路2に光源34および35の2つの発光ダイオードを接続しても良い。
【0030】
また、上記の実施の形態では光源、受光器はそれぞれ2個で構成されているが、それぞれ3個、またはそれ以上の数の光源、受光器を用いることにより、さらに感度の向上が得られる。
【0031】
次に、上記の実施の形態の粉末検出装置の具体的な実施例について説明する。
【0032】
図3は、上記の実施の形態の一実施例である1つの筐体に固定された光源と受光器を示す図であり、図3(a)は平面断面図、図3(b)は図3(a)のA−A側面断面図である。本実施例は、図4に示したプリント基板穴あけ用の切削加工装置の切削粉の検出装置に用いることができる粉末検出装置であり、図3において、2つの光源34および35と2つの受光器36および37は、図4に示した従来の光検出装置に使用した透明管21の外形が勘合する穴を有する1つの筐体45に固定されている。筐体45には透明管21を挟んで対向する2組の空洞46および47が設けられ、その空洞46および47のそれぞれの両端に光源34と受光器36、および光源35と受光器37が設置されている。この配置により、2つの光源34および35の出射光は、透明管21の中のほぼ同一の中心部分48を照射することとなり、その透過光はそれぞれ受光器36および37に入射する。
【0033】
上記の本実施例による切削粉用の検出装置を試作し、同様に2組の光源と受光器を用いた従来の構成の検出装置の感度と比較したところ、1.5倍以上の感度改善が得られた。
【0034】
以上のように、本発明により、従来の切削粉の検出装置よりも高感度で、かつ、構成部品などは従来と同様に安価な部品で構成可能な粉末検出装置が得られることが確認できた。
【0035】
なお、本発明は上記の実施の形態や実施例に限定されるものではないことはいうまでもなく、適用する粉末検出装置に合わせて、光源、受光器、筐体などの数や配置、形状、構成などを設計変更することが可能である。粉末の通過する一定の領域が大きい場合は光源、受光器は別々の筐体に搭載して分離して配置することも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 フォトダイオード
2 駆動回路
3 フォトダイオード
4 増幅回路
6 コンパレータ
8 カウンタ
9 判定処理回路
11 穴明機
12 ドリル
13 移動ステージ
14 プリント基板
15 ダクト
16 検出部
19 切削粉
20 光検出装置
21 透明管
22、34、35 光源
23、36、37 受光器
24、45 筐体
25 信号処理回路
32 筒
33 粉末
38、39 出射光
40 部分
46、47 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の領域を通過する粉末の有無またはその量の少なくとも一方を検出する粉末検出装置であって、前記領域のほぼ同一の部分領域を横切るように互いに平行でない複数の方向から光ビームを照射する複数の光源と、前記部分領域を通過したそれぞれの光ビームを受ける複数の受光器と、前記複数の受光器の出力レベルを結合する手段と、前記粉末が前記部分領域を通過することによって生ずる結合レベルの変化を検出する手段と、該レベルの変化量が一定の閾値を超える回数を検出する手段とを含むことを特徴とする粉末検出装置。
【請求項2】
前記光源は発光ダイオードを備え、前記受光器はフォトダイオードを備えることを特徴とする請求項1に記載の粉末検出装置。
【請求項3】
前記一定の領域は透明な管の中であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粉末検出装置。
【請求項4】
前記複数の光源と前記複数の受光器は、前記の透明な管の外形が勘合する穴を有する1つの筐体に固定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の粉末検出装置。
【請求項5】
前記結合手段は、各々の前記フォトダイオードの出力を合わせて増幅する増幅手段を含む請求項2記載の粉末検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−149706(P2011−149706A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8749(P2010−8749)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(390040280)株式会社オプティコン (6)
【Fターム(参考)】