説明

粉砕システムの監視方法及び監視装置を備える粉砕システム

本発明は、回転する粉砕要素を備える粉砕システムにおける負荷状態の監視方法であって、上記粉砕要素の基本振動を含む第1の周波数領域と上記基本振動の第1高調波が生じる第2の周波数領域とにおいて、粉砕材料によって上記粉砕要素にかかる動力が検知され、上記負荷状態を低減する手段は、上記第1高調波が上記基本振動の大きさとの関連で所定の閾値を上回る場合に導入される監視方法に関する。このような方法では、粉砕システムの負荷状態についての非常に確実且つ正確な監視を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉砕システムの負荷状態の監視方法及びそのような監視装置を搭載する粉砕システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えばローラミルなどの粉砕システムを監視するため、個々の粉砕部材(grinding element)と全ての粉砕システムの振動変化率をセンサによって検知し、ISO 10816-3に基づき10から1000ヘルツの周波数領域における所定の制限値に対する振動変化率の実効値、いわゆる粉砕システムの制御装置におけるRMS値、を監視することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第3621400号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、実施された調査及び計測によると、RMS値を用いた既知の振動監視では、臨界荷重状態(critical load state)の検知が間に合わなかったり検知できなかったりすることや、臨界荷重状態に達していないにもかかわらず反応する場合があるため、RMS値を用いた既知の振動監視は必ずしも信頼できるというわけではない。
【0005】
また、ミルにより生じる作動音を電気音響的に採集し、周波数及び/又は強度に応じて得られた電気信号を評価してミルを過負荷から保護する技術が知られている(特許文献1参照)。
【0006】
しかし、この方法においても、大規模な粉砕システムの監視における信頼性と感度に対する要求を満たさない。
【0007】
以上の点に鑑みて、本発明は、粉砕システムにおける負荷状態の確実且つ正確な監視を可能にする方法及び粉砕システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、本発明の請求項1、11による特徴のそれぞれにより達成される。
【0009】
本発明のさらに有利な構成は従属請求項に記載されている。
【0010】
本発明の基礎となる試験において、粉砕材料(grinding stock)によって粉砕部材にかかる動力の基本振動の第1高調波(first harmonic)は、粉砕システムの負荷状態を監視するための操作パラメータに特に適することが期せずして確認された。粉砕部材にかかる動力の基本振動の周波数と大きさは基本的にミル構造によって決定され、負荷が増加しても常に著しく変化するとは限らない。しかし、その基本振動の第1高調波(換言すると、第一の高調波(first upper harmonic wave))の大きさは、著しく増加した又は同等の臨界荷重状態の高感度指標であることが明らかとなった。これは、第1高調波の大きさが基本振動の大きさとの関連で認識される場合に特に有効である。
【0011】
従って、2つの周波数領域において粉砕部材に作用する動力を検知することが得策である。ここで2つの周波数領域とは、動力の基本振動を含む第1の周波数領域と、基本振動の第1高調波が生じる第2の周波数領域である。特に、基本振動の大きさとの関連で第1高調波が所定値を上回る場合には、粉砕システムの負荷状態を低減するための手段(対策)を導入する。
【0012】
ローラミルの場合、第1の周波数領域は10から30ヘルツ、好ましくは15から25ヘルツ、であることが望ましい。第2の周波数領域は20から60ヘルツ、好ましくは30から50ヘルツであることが望ましい。
【0013】
調整可能な速度で駆動する粉砕部材を用いる場合、本発明の好適な構成によると、粉砕材料によって粉砕部材にかかる動力の監視に加えて、パワーと速度から駆動トルクを測定可能であり、また、粉砕部材の速度を変化させることで粉砕システムの負荷状態を修正できる。
【0014】
本発明の実施形態を、記述と図面を用いて下記に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】関連するころ軸受を備えたローラミルにおける複数の粉砕ローラの内の一つの斜視図を示す。
【図2】図1による粉砕ローラの側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
粉砕ローラ1は、竪型ローラミルの粉砕台(不図示)上で動作し、駆動モータ2によって、本実施形態で示すようにアーバ(arbor)3に囲まれた軸を介して直接駆動されるか、又は粉砕台を介して間接的に駆動される。
【0017】
上記軸は、駆動モータ2に面する側面において固定軸受4に配置され、粉砕ローラ1に面する側面においてフォースフレームとして構成される可動軸受5に配置される。
【0018】
稼働中、軸方向(矢印6)、接線方向(矢印7)、及び垂直方向(矢印8)において動力は粉砕材料によって粉砕ローラ1にかかる。
【0019】
軸方向に作用する動力は、固定軸受4に取り付けられた伸び測定センサ9を用いて検知される。
【0020】
接線方向に作用する動力は、可動軸受5に設けられた伸び測定センサ10を用いて確認される。
【0021】
垂直方向に作用する動力は、可動軸受5において、可動軸受5のフォースフレームにおけるアーバ3を支持する流体システム11の圧力を用いて確認される。
【0022】
稼働中、竪型ローラミルの全てのローラユニットにおいて、15から25ヘルツ(動力の基本振動に応じて)及び30から50ヘルツ(動力の第1高調波に応じて)の周波数領域における流体システム11の圧力を測定し、また、上記伸び測定センサ9及び10を用いて伸びを測定することで、粉砕材料によって粉砕ローラ1にかかる動力は監視される。
【0023】
2つの周波数領域の内の少なくとも1つにおいて、通常の稼動下において存在する基準値より少なくとも3〜5倍大きい値がローラユニットの3つの測定地点の内の少なくとも2つで生じる場合、これは臨界荷重状態に接近していることを示す。この場合、負荷状態を低減するための適切な手段(対策)が自動的に導入される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する粉砕要素を備える粉砕システム、特に回転する粉砕ローラを備えるローラミル、における負荷状態の監視方法であって、少なくとも一つの負荷特有の操作パラメータを検知し、閾値を上回る場合には負荷状態を低減する手段が導入される監視方法において、
a)前記粉砕要素の基本振動を含む第1の周波数領域と前記基本振動の第1高調波が生じる第2の周波数領域とにおいて、粉砕材料によって少なくとも一つの前記粉砕要素の少なくとも一方向にかかる動力が検知され、並びに、
b)前記負荷状態を低減する手段は、前記第1高調波が前記基本振動の大きさとの関連で所定の閾値を上回る場合に導入される、ことを特徴とする監視方法。
【請求項2】
粉砕台上で動作する粉砕ローラを備えたローラミルの前記負荷状態を監視し、前記粉砕材料によって前記粉砕ローラの軸方向にかかる動力を検知することを特徴とする請求項1に記載の監視方法。
【請求項3】
粉砕台上で動作する粉砕ローラを備えたローラミルの前記負荷状態を監視し、前記粉砕材料によって前記粉砕ローラの接線方向にかかる動力を検知することを特徴とする請求項1に記載の監視方法。
【請求項4】
粉砕台上で動作する粉砕ローラを備えたローラミルの前記負荷状態を監視し、前記粉砕材料によって前記粉砕ローラの垂直方向にかかる動力を検知することを特徴とする請求項1に記載の監視方法。
【請求項5】
固定軸受及び可動軸受に配置された粉砕ローラを用いる負荷状態の監視方法であって、
前記粉砕材料によって前記粉砕ローラの軸方向にかかる動力を前記固定軸受における伸び測定により検知し、前記粉砕材料によって前記粉砕ローラの接線方向にかかる動力を前記固定軸受における伸び測定により検知し、前記粉砕材料によって垂直方向にかかる動力を前記固定軸受における圧力測定により検知することを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の監視方法。
【請求項6】
10から30ヘルツ、好ましくは15から25ヘルツ、の前記第1の周波数領域と、20から60ヘルツ、好ましくは30から50ヘルツ、の前記第2の周波数領域とにおいて、前記粉砕材料によって前記粉砕要素にかかる動力が検知されることを特徴とする請求項1に記載の監視方法。
【請求項7】
前記第1及び/又は第2の周波数領域において、3つの測定地点の内の少なくとも2つの値が通常の稼動下において存在する基準値より少なくとも3から5倍である場合には、前記負荷状態を低減する手段が導入されることを特徴とする請求項5に記載の監視方法。
【請求項8】
調整可能な速度で駆動する粉砕要素を用いる負荷状態の監視方法であって、
前記粉砕材料によって前記粉砕要素にかかる動力の監視に加えて、パワーと速度から駆動トルクが測定され、前記粉砕システムの前記負荷状態が速度の変化により修正されることを特徴とする請求項1に記載の監視方法。
【請求項9】
粉砕台で回転する粉砕要素を用いる負荷状態の監視方法であって、前記粉砕要素は直接駆動されることを特徴とする請求項1に記載の監視方法。
【請求項10】
粉砕台で回転する粉砕要素を用いる負荷状態の監視方法であって、前記粉砕要素は粉砕台を介して駆動されることを特徴とする請求項1に記載の監視方法。
【請求項11】
粉砕システムにおける負荷状態の監視装置と駆動する粉砕要素を備える粉砕システムであって、
前記粉砕システムの負荷特有の操作パラメータを検知するための少なくとも1つのセンサと、検知された操作パラメータの閾値が上回る場合、前記粉砕システムの前記負荷状態を低減する手段とを有し、さらに、前記粉砕要素の基本振動を含む第1の周波数領域と前記粉砕要素の前記基本振動の第1高調波が生じる第2の周波数領域において粉砕材料によって少なくとも1つの前記粉砕要素にかかる動力を検知するセンサを有することを特徴とする粉砕システム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−501837(P2012−501837A)
【公表日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526460(P2011−526460)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061213
【国際公開番号】WO2010/028970
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(504043934)ポリシウス アクチェンゲゼルシャフト (21)
【Fターム(参考)】